以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<光電変換素子>
図1に、本発明の光電変換素子の一例である実施の形態の光電変換素子の模式的な断面図を示す。図1に示す本実施の形態の光電変換素子は、光透過性支持体101と、光透過性支持体101上に設けられた導電層103と、導電層103上に設けられた厚さ方向の断面が台形状の光電変換層104と、光電変換層104の表面を覆うようにして設けられた多孔質絶縁層105と、多孔質絶縁層105上に設けられた触媒層106および遮光層108と、遮光層108上に設けられた封止材109と、封止材109上に設けられたカバー材102と、光透過性支持体101とカバー材102との間の封止材109で仕切られた領域に充填されたキャリア輸送材112とを備えている。
なお、光透過性支持体101と導電層103との積層体から透明電極基板110が構成されている。
また、光電変換層104の両隣には、それぞれ、厚さ方向の断面が台形状の隔壁部201が設けられており、隔壁部201は導電層103上に設置されている。また、導電層103には、導電層103を分離するスクライブライン111が設けられており、触媒層106および遮光層108には、触媒層106および遮光層108をそれぞれ分離するスクライブライン113が設けられている。
ここで、遮光層108は、触媒層106の上面から、触媒層106の傾斜した側面、多孔質絶縁層105の傾斜した側面、導電層103の上面、隔壁部201の傾斜した側面、隔壁部201の上面および隔壁部201の傾斜した側面を経て、導電層103の上面に至るようにして設けられている。
また、遮光層108は、触媒層106の傾斜した側面、導電層103の上面および隔壁部201の傾斜した側面上に設置された遮光層108の部分によって形成された凹部を有しており、封止材109は当該遮光層108の凹部を埋めるように設けられている。
<光透過性支持体>
光透過性支持体101は、光透過性を有して、その上に形成される部材を支持することができる部材である。光透過性支持体101としては、光透過性を有する絶縁性材料などを用いることができ、たとえば、ソーダガラス、溶融石英ガラス若しくは結晶石英ガラスなどのガラス基板、または可撓性フィルムなどの樹脂基板などを用いることができる。なお、光透過性支持体101は、必ずしもすべての波長領域の光に対して透過性を有する必要はない。
光透過性支持体101に用いられ得る可撓性フィルムとしては、たとえば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノキシ樹脂またはテフロン(登録商標)などを用いることができる。
光透過性支持体101の厚さは、0.2mm以上5mm以下であることが好ましい。光透過性支持体101の厚さが0.2mm以上5mm以下である場合には、光透過性支持体101による入射光の吸収を抑え、かつ光電変換素子を支持することができる程度の強度が発現する傾向にある。
<導電層>
導電層103は、光透過性を有する導電性の部材である。導電層103としては、たとえば、インジウム錫複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)または酸化亜鉛(ZnO)などを用いることができる。なお、導電層103も、必ずしもすべての波長領域の光に対して透過性を有する必要はない。
導電層103の厚さは、0.02μm以上5μm以下であることが好ましい。導電層103の厚さが0.02μm以上5μm以下である場合には、導電層103による入射光の吸収を抑え、かつ導電層103の抵抗の増加を抑えることができる傾向にある。
導電層103の抵抗は、40Ω/sq以下であることが好ましい。この場合には、光電変換素子の特性を向上させることができる傾向にある。
導電層103には、導電層103の抵抗を低くするために、金属リード線が設けられていてもよい。金属リード線としては、たとえば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよびチタンからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むものなどを用いることができる。なお、金属リード線を設けることによって、受光面からの入射光量の低下を招くのを避けるために、金属リード線の太さは、0.1mm以上4mm以下とすることが好ましい。
<透明電極基板>
光透過性支持体101上に導電層103が積層された透明電極基板110としては、たとえば、ソーダ石灰フロートガラスからなる光透過性支持体101上にFTOからなる導電層103が積層された透明電極基板を挙げることができる。透明電極基板110としては、たとえば市販品の透明電極基板を用いてもよい。
<光電変換層>
光電変換層104は、光エネルギを電気エネルギに変換する層であり、たとえば、多孔質半導体層に色素または量子ドットなどの光増感剤を吸着させた層などを用いることができる。
多孔質半導体層は、複数の孔を有する半導体層であり、多孔質半導体層としては、たとえば、多数の微細孔を有する粒子状または膜状などの種々の形態のものを用いることができる。
多孔質半導体層を構成する材料としては、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化ニッケル、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、リン化インジウム、銅−インジウム硫化物(CuInS2)、CuAlO2およびSrCu2O2からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。なかでも、多孔質半導体層を構成する材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫および酸化ニオブからなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましく、光電変換素子の光電変換効率、安定性および安全性を向上させる観点からは、酸化チタンを用いることが特に好ましい。
多孔質半導体層に用いられ得る酸化チタンとしては、たとえば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸、水酸化チタンおよび含水酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。アナターゼ型とルチル型の2種類の結晶系は、その製法や熱履歴によりいずれの形態にもなり得るが、アナターゼ型を用いることが好ましい。
多孔質半導体層の形態としては、多孔質半導体層の安定性、結晶成長の容易さ、および製造コストなどの観点から、半導体粒子を焼結することによって形成された多結晶焼結体を用いることが好ましい。
多結晶焼結体からなる多孔質半導体層の結晶粒の平均粒径は、入射光を高い効率で電気エネルギに変換するために、投影面積に対して十分に大きい実効表面積を得る観点から、5nm以上50nm未満であることが好ましく、10nm以上30nm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、平均粒径とは、X線回折測定から得られるスペクトル(XRD(X線回折)の回折ピーク)にシェラーの式を適用することにより決定した値をいう。
光電変換層104の光散乱性は、多孔質半導体層を形成する半導体粒子の粒子径(平均粒径)により調整することができる。
一般的には、平均粒径の大きい半導体粒子で形成した多孔質半導体層は、光散乱性が高く、入射光を散乱させ、光捕捉率を向上させることができる。一方、平均粒径の小さい半導体粒子で形成した多孔質半導体層は、光散乱性は低いが、色素の吸着点をより多くし、吸着量を増加させることができる。また、これらの平均粒径の異なる半導体粒子を混ぜ合わせたものを使用して多孔質半導体層を形成してもよい。このように、使用する色素などの光増感剤の種類によって、光の散乱性を調整した多孔質半導体層を形成することができる。
また、光電変換層104としては、平均粒径が50nm未満の半導体粒子から形成した多結晶焼結体上に、平均粒径が50nm以上、より好ましくは平均粒径が50nm以上600nm以下の半導体粒子から形成した多結晶焼結体を設置することによって、光電変換層104を形成してもよい。
光電変換層104に用いられる多孔質半導体層の比表面積は、10m2/g以上200m2/g以下であることが好ましい。光電変換層104に用いられる多孔質半導体層の比表面積が10m2/g以上である場合には、後述する色素などの光増感剤を多孔質半導体層により多く吸着させることができるため、光電変換素子の光電変換効率を向上させることができる。また、光電変換層104に用いられる多孔質半導体層の比表面積が200m2/g以下である場合には、光電変換層104の保持に必要な強度を担保することができる傾向にある。
光電変換層104の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。光電変換層104の厚さが0.1μm以上50μm以下である場合には光電変換素子の光電変換効率を向上させることができる。
<光増感剤>
光電変換層104の多孔質半導体層に吸着させる光増感剤としては、たとえば、種々の可視光領域および/または赤外光領域に吸収を有する有機色素または金属錯体色素などの1種類以上の色素を用いることができる。
有機色素としては、たとえば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ペリレン系色素およびインジゴ系色素からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
金属錯体色素としては、たとえば、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、TeおよびRhからなる群から選択された少なくとも1種の金属に分子が配位結合した色素を用いることができる。このような金属錯体色素としては、たとえば、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、メロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素またはルテニウム系金属錯体色素などを用いることができる。
なかでも、フタロシアニン系色素、メロシアニン系色素またはルテニウム系金属錯体色素を用いることが好ましく、ルテニウム系金属錯体色素を用いることがより好ましく、以下の式(1)〜(3)で表わされるルテニウム系金属錯体色素を用いることが特に好ましい。
また、多孔質半導体層に色素を強固に吸着させるためには、色素分子中に、カルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基およびホスホニル基からなる群から選択された少なくとも1種のインターロック基を有する色素を用いることが好ましい。インターロック基を有する色素としては、カルボン酸基およびカルボン酸無水基の少なくとも一方を有する色素を用いることが特に好ましい。
なお、インターロック基は、励起状態の色素と多孔質半導体層の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供するものである。
また、光電変換層104の多孔質半導体層に吸着させる光増感剤としては、たとえば、CdS、CdSe、PbSおよびPbSeからなる群から選択された少なくとも1種の量子ドットを用いることもできる。
<多孔質絶縁層>
多孔質絶縁層105は、多孔質の絶縁層であって、光電変換層104と、触媒層106および遮光層108との間の絶縁を確保するために設置される。多孔質絶縁層105は、一般的には、光電変換層104と触媒層106との間に設けられる。
多孔質絶縁層105としては、たとえば、ガラス、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化チタンおよびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択された少なくとも1種の高抵抗の材料からなる層を用いることができる。
多孔質絶縁層105は、電解質を介して電荷移動が可能な多孔質状に形成されることが好ましく、この場合、多孔質絶縁層105の形成に用いられる粒子の平均粒径は5nm以上500nm以下であることが好ましく、10nm以上300nm以下であることがより好ましい。
<触媒層>
触媒層106は、キャリア輸送材112と電子授受を行なうことができる層であり、触媒層106が高い触媒能と導電性を併せ持つ場合には、後述する対極導電層を兼ねることができる。
触媒層106としては、たとえば、白金およびカーボンの少なくとも一方を用いることが好ましい。触媒層106に用いられ得るカーボンとしては、たとえば、カーボンブラック、グラファイト、ガラス炭素、アモルファス炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。
<遮光層>
遮光層108は、封止材109が吸収する波長領域の光の少なくとも一部を吸収する層であり、光透過性支持体101の厚さ方向の断面視において、封止材109の周縁の一部を凹状に取り囲んでいる。なお、遮光層108は、封止材109が吸収する波長領域の光のすべてを吸収する必要はなく、封止材109が吸収する波長領域の光の95%以上を吸収することが好ましい。
遮光層108を構成する材料としては、封止材109への垂直光、散乱光などの回り込み光および入射角が垂直でない光の入射を抑制することによって、封止材109の劣化を防止することができる材料であれば、特に限定されない。
遮光層108を構成する材料としては、たとえば、インジウム錫複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン、タングステン、金、銀、銅およびニッケルからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
また、遮光層108を構成する材料としては、たとえば、ヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤を混合した有機高分子、紫外線吸収性官能基を持つモノマーからなる有機高分子、および無機材料(ガラス、セラミックまたはこれらに顔料および/または蛍光体を混入したものなどであってもよい)からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
また、遮光層108は、導電層103に対向する対極導電層を兼ねることもできる。遮光層108が対極導電層を兼ねる場合には、遮光層108の形成が必要な箇所まで対極導電層を形成することによって、遮光層108としてもよい。
対極導電層を兼ねる遮光層108は、たとえば、マスクなどを用いてパターニングする方法、または遮光層108を全面に形成した後にその一部をスクライブなどで除去してパターニングする方法により、所望とする位置に部分的に形成することができる。なお、後者の方法によれば、遮光層108の形成工程のタクトアップを図ることができるだけでなく、大面積化時のパターニングマスクのたわみやズレの問題を回避することもできる。
<封止材>
封止材109は、光電変換素子の内部にキャリア輸送材112を閉じ込めて、キャリア輸送材112の揮発を抑制するとともに、光電変換素子の内部への水などの浸入を抑制することができる部材である。
封止材109としては、たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂およびガラスフリットからなる群から選択された少なくとも1種の材料からなる単層構造または当該単層構造を2層以上積層した積層構造などを用いることができる。
<カバー材>
カバー材102は、キャリア輸送材112の揮発を抑制するとともに、光電変換素子の内部への水などの浸入を抑制することができる部材である。
カバー材102を構成する材料としては、たとえば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融石英ガラス、結晶石英ガラスおよび可撓性フィルムからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができ、なかでも、ソーダ石灰フロートガラスを用いることが好ましい。
<キャリア輸送材>
キャリア輸送材112は、電荷を輸送可能な導電性材料であり、封止材109の内側の導電層103とカバー材102との間に挟持されている。したがって、少なくとも光電変換層104および多孔質絶縁層105の孔の内部にはキャリア輸送材112が充填されている。
キャリア輸送材112としては、たとえば、液体電解質、固体電解質、ゲル電解質および溶融塩ゲル電解質からなる群から選択された少なくとも1種の電解質などを用いることができる。
液体電解質としては、たとえば、酸化還元種を含む液状物を用いることができ、一般に電池や光電変換素子などにおいて使用することができるものを特に限定なく用いることができる。具体的には、酸化還元種とこれを溶解可能な溶剤からなるもの、酸化還元種とこれを溶解可能な溶融塩からなるもの、または酸化還元種とこれを溶解可能な溶剤と溶融塩からなるものを用いることができる。
酸化還元種としては、たとえば、I-/I3-系、Br2-/Br3-系、Fe2+/Fe3+系、キノン/ハイドロキノン系、またはコバルト錯体系などを用いることができる。
具体的には、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)などの金属ヨウ化物とヨウ素(I2)との組み合わせ、テトラエチルアンモニウムアイオダイド(TEAI)、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(TPAI)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド(THAI)などのテトラアルキルアンモニウム塩とヨウ素との組み合わせ、または臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化カルシウム(CaBr2)などの金属臭化物と臭素との組み合わせを用いることが好ましく、なかでも、LiIとI2との組み合わせを用いることが特に好ましい。
また、酸化還元種の溶媒としては、たとえば、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物、エタノールなどのアルコール類、水および非プロトン極性物質からなる群から選択された少なくとも1種などを用いることができ、なかでも、カーボネート化合物およびニトリル化合物の少なくとも一方を用いることが好ましい。
固体電解質としては、たとえば、電子、ホールまたはイオンを輸送できる流動性のない導電性材料を用いることができる。具体的には、ポリカルバゾールなどのホール輸送材、テトラニトロフロオルレノンなどの電子輸送材、ポリロールなどの導電性ポリマー、液体電解質を高分子化合物により固体化した高分子電解質、ヨウ化銅若しくはチオシアン酸銅などのp型半導体、または溶融塩を含む液体電解質を微粒子により固体化した電解質などを用いることができる。
ゲル電解質は、通常、電解質とゲル化剤とからなる。ゲル電解質としては、たとえば、架橋ポリアクリル樹脂誘導体、架橋ポリアクリロニトリル誘導体、ポリアルキレンオキシド誘導体、シリコーン樹脂類、または側鎖に含窒素複素環式四級化合物塩構造を有するポリマーなどの高分子ゲル化剤などを用いることができる。
溶融塩ゲル電解質は、通常、上記のようなゲル電解質と常温型溶融塩とからなる。常温型溶融塩としては、たとえば、ピリジニウム塩類またはイミダゾリウム塩類などの含窒素複素環式四級アンモニウム塩化合物類などが挙げられる。
上記の電解質には、必要に応じて添加剤を加えてもよい。添加剤としては、たとえば、t−ブチルピリジン(TBP)などの含窒素芳香族化合物、またはジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII)、メチルプロピルイミダゾールアイオダイド(MPII)、エチルメチルイミダゾールアイオダイド(EMII)、エチルイミダゾールアイオダイド(EII)、ヘキシルメチルイミダゾールアイオダイド(HMII)などのイミダゾール塩などを用いることができる。
キャリア輸送材112中の電解質濃度は、0.001モル/リットル以上1.5モル/リットル以下であることが好ましく、0.01モル/リットル以上0.7モル/リットル以下であることがより好ましい。
<スクライブライン>
スクライブライン111は導電層103を分離して、スクライブライン111の両側に配置された導電層103間の絶縁を確保している。また、スクライブライン113は触媒層106および遮光層108をそれぞれ分離して、スクライブライン113の両側に配置された触媒層106および遮光層108のそれぞれの間の絶縁を確保している。
<対極導電層>
図1に示す本実施の形態の光電変換素子は、多孔質絶縁層105と遮光層108との間に対極導電層をさらに備えていてもよい。対極導電層は、触媒層106と電気的に接続され、光電変換素子で発生した電流を外部に取り出すことができる層である。
対極導電層を構成する材料としては、たとえば、インジウム錫複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン、タングステン、金、銀、銅およびニッケルからなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましく、チタンを用いることが特に好ましい。
また、触媒層106と対極導電層との積層順序は特に限定されず、触媒層106および対極導電層に用いられる材料との相関により適宜選択することができる。
<取り出し電極>
対極導電層には、必要に応じて、取り出し電極を設けてもよい。取り出し電極を設けることによって、本実施の形態の光電変換素子で発生した電流を取り出し電極から光電変換素子の外部に取り出すことができる。取り出し電極を構成する材料は、光電変換素子で発生した電流を外部に取り出すことが可能なものであれば、特に限定されない。
<光電変換素子の製造方法>
以下、図2〜図5の模式的断面図を参照して、図1に示す本実施の形態の光電変換素子の製造方法の一例について説明する。まず、図2に示すように、光透過性支持体101の一方の表面上に導電層103を形成する。導電層103を形成する方法は、特に限定されず、たとえば公知のスパッタリング法またはスプレー法などを用いることができる。
なお、導電層103に金属リード線(図示せず)を設ける場合には、たとえば公知のスパッタ法または蒸着法などにより光透過性支持体101上に金属リード線を形成し、金属リード線が形成された光透過性支持体101上に導電層103を形成する方法、または光透過性支持体101上に導電層103を形成し、導電層103上に金属リード線を形成する方法などを用いることができる。
次に、図2に示すように、導電層103にスクライブライン111を形成する。スクライブライン111は、たとえばレーザスクライブ法などにより導電層103を切断して形成することができる。これにより、導電層103は、光電変換層104が形成される領域と、光電変換層104が形成されない領域とに分割される。
次に、図3に示すように、導電層103上に光電変換層104を形成する。ここで、光電変換層104は、たとえば、スクリーン印刷法またはインクジェット法などによって半導体粒子を含有するペーストを塗布した後に焼成する方法、ゾル−ゲル法または電気化学的な酸化還元反応を利用した方法などにより、光電変換層104が形成される導電層103の領域上に形成することができる。なかでも、厚膜の多孔質半導体層を低コストで形成する観点からは、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法により導電層103上に塗布した後に焼成する方法を用いることが好ましい。
より具体的な一例としては、まず、チタンイソプロポキシド(キシダ化学株式会社製)125mLを0.1Mの硝酸水溶液(キシダ化学株式会社製)750mLに滴下して加水分解させ、80℃で8時間加熱してゾル液を調製する。その後、得られたゾル液をチタン製オートクレーブ中、230℃で11時間加熱して、酸化チタン粒子を成長させた後、超音波分散を30分間行ない平均粒径(平均一次粒径)15nmの酸化チタン粒子を含むコロイド溶液を調製する。次いで、得られたコロイド溶液に2倍容量のエタノールを加え、これを回転数5000rpmで遠心分離することにより、酸化チタン粒子を得る。
なお、本明細書における平均粒径は、XRD(X線回折)の回折ピークから求めた値である。具体的には、XRDのθ/2θ測定における回折角の半値幅とシェラーの式から平均粒径を求める。たとえば、アナターゼ型酸化チタンの場合、(101)面に対応する回折ピーク(2θ=25.3°付近)の半値幅を測定すればよい。
次に、上記のようにして得られた酸化チタン粒子を洗浄した後、エチルセルロースとテルピネオールとを無水エタノールに溶解させたものを加え、攪拌することにより、酸化チタン粒子を分散させる。その後、その混合液を真空条件下で加熱してエタノールを蒸発させ、酸化チタンペーストを得る。最終的な組成として、たとえば、酸化チタン固体濃度20質量%、エチルセルロース10質量%およびテルピネオール64質量%となるように濃度を調製する。
半導体粒子を含有する(懸濁させた)ペーストを調製するために用いる溶剤としては、上記以外にも、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのグライム系溶剤、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、イソプロピルアルコール/トルエンなどの混合溶剤、または水などが挙げられる。
次に、上記のスクリーン印刷法またはインクジェット法といった方法により半導体粒子を含有するペーストを導電層103上に塗布し、乾燥した後に焼成することによって、多孔質半導体層が形成される。半導体粒子を含有するペーストの乾燥および焼成は、使用する支持体や半導体粒子の種類により、たとえば温度、時間および雰囲気などの条件を適宜調整して行なうことができる。
上記のペーストの焼成は、たとえば、大気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で、50〜800℃程度の温度で、10秒〜12時間程度加熱することにより行なうことができる。上記のペーストの乾燥および焼成は、単一の温度で1回または温度を変化させて2回以上行なうことができる。
その後、上記のようにして形成された多孔質半導体層に、色素などの光増感剤を吸着させることによって、光電変換層104が形成される。なお、色素などの光増感剤の吸着は、光電変換層104の形成直後には限定されず、たとえば多孔質絶縁層105の形成後または遮光層108の形成後であってもよい。
多孔質半導体層に色素を吸着させる方法としては、たとえば、導電層103上に形成された多孔質半導体層を、色素を溶剤に溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法などを用いることができる。色素を溶解させる溶剤は、色素を溶解するものであればよく、たとえば、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどの窒素化合物類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類、および水からなる群から選択された少なくとも1種を含有するものなどを用いることができる。
色素吸着用溶液中の色素濃度は、使用する色素および溶剤の種類により適宜調整することができるが、吸着機能を向上させる観点からは、5×10-4モル/リットル以上とすることが好ましい。
次に、図3に示すように、光電変換層104の表面を覆うようにして多孔質絶縁層105を形成する。導電層103に形成されたスクライブライン111は、多孔質絶縁層105によって埋められ、スクライブライン111の両側の導電層103間の絶縁性が確保される。
ここで、多孔質絶縁層105は、特に限定されず、たとえば、スクリーン印刷法またはインクジェット法などにより、半導体粒子を含有するペーストを光電変換層104の表面を覆うようにして塗布した後に焼成する方法、ゾル−ゲル法または電気化学的な酸化還元反応を利用した方法などにより、光電変換層104の表面上に形成することができる。なかでも、厚膜の多孔質絶縁層105を低コストで形成する観点からは、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法により光電変換層104の表面上に塗布した後に焼成する方法を用いることが好ましい。
また、光電変換層104および多孔質絶縁層105と同様にして、光電変換層104が形成されない導電層103の領域上に隔壁部201が形成される。
次に、図3に示すように、多孔質絶縁層105上に触媒層106を形成する。触媒層106は、たとえば蒸着法または印刷法などにより形成することができる。たとえば蒸着法により触媒層106を形成した場合には、触媒層106自体が多孔質になるため、色素吸着用溶液や電解質が移動可能な孔を新たに形成する必要がない点で好ましい。なお、触媒層106の形成後に、触媒層106と同様の方法により、触媒層106上に対極導電層を形成してもよい。
次に、図3に示すように、触媒層106上に凹部を有する遮光層108を形成する。これにより、遮光層108には、触媒層106の傾斜した側面、導電層103の上面および隔壁部201の傾斜した側面上に設置された遮光層108の部分によって凹部が形成される。遮光層108は、たとえば蒸着法、印刷法またはスパッタリング法などにより形成することができる。
次に、図4に示すように、触媒層106および遮光層108のそれぞれの一部をレーザースクライブ法などにより除去して、スクライブライン113を形成する。
次に、図5に示すように、遮光層108の凹部を埋めるように封止材109を設置する。封止材109は、たとえば、ディスペンサによる塗布、または所定の形状に孔を空けた封止材109を設置することにより、遮光層108の凹部を埋めるようにして設置することができる。
次に、図5に示すように、封止材109上にカバー材102を設置する。なお、カバー材102を設置した後には、加熱および/または紫外線照射によって封止材109を硬化させることによって、透明電極基板110とカバー材102とを貼り合わせて固定する。
次に、図1に示すように、光透過性支持体101とカバー材102との間の封止材109で仕切られた領域にキャリア輸送材112を充填する。キャリア輸送材112の当該領域への充填は、たとえば、カバー材102に予め設けられた電解液注入用孔から注入されることにより行なうことができる。
<光電変換素子モジュール>
図6に、本発明の光電変換素子モジュールの一例である実施の形態の光電変換素子モジュールの模式的な断面図を示す。図6に示す実施の形態の光電変換素子モジュールは、図1に示す光電変換素子の2つ以上が電気的に接続されることにより構成されている。
なお、図6に示す実施の形態の光電変換素子モジュールは、光電変換素子の遮光層108を、その光電変換素子の隣りに配置された光電変換素子の導電層103と順次電気的に接続されるように構成することによって形成することができる。
<作用効果>
実施の形態の光電変換素子および光電変換素子モジュールにおいては、遮光層108の凹部を埋めるようにして封止材109が設けられている。そのため、封止材109の光入射面のすべてが遮光層108で覆われているため、光透過性支持体101から入射してきた光が遮光層108によって遮光される。これにより、封止材109への光照射量を従来よりも低減することができるため、封止材109の光劣化が抑制される。
また、実施の形態の光電変換素子および光電変換素子モジュールにおいては、遮光層108の凹部のみを埋めるようにして封止材109が設けられており、特許文献3に記載のように、光電変換層104の光入射面の全面が遮光層108によって被覆されていないため、光電変換層104への入射光量の低減による光電変換効率の低下を抑えることができる。
以上の理由により、実施の形態の光電変換素子および光電変換素子モジュールにおいては、光電変換層に入射する光量の低減による光電変換効率の低下を抑えつつ、封止部の劣化を抑制することができる。
<実施例1>
図1に、実施例1の光電変換素子の模式的な断面図を示す。実施例1の光電変換素子は以下のようにして作製した。
まず、図1に示すように、ガラスからなる光透過性支持体101上に、SnO2膜からなる導電層103が成膜されてなる幅10mm×長さ10mm×厚さ1.0mmの透明電極基板110(日本板硝子株式会社製、SnO2膜付ガラス)を用意した。
次に、図1に示すように、導電層103をレーザースクライブ法により切断することによって、スクライブライン111を形成した。
次に、多孔質半導体層のパターンを有するスクリーン板とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)を用いて、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名:D/SP)を導電層103面内に、5.5mm×5.5mmの大きさに塗布し、室温で1時間レベリングを行なった。
次に、得られた塗膜を80℃に設定したオーブンで20分間乾燥し、さらに500℃に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて大気中で60分間焼成した。この塗布および焼成工程を2回繰り返して、膜厚11μmの多孔質半導体層を形成した。
次に、多孔質半導体層上にジルコニア粒子(平均粒経50nm)を含むペーストをスクリーン印刷機を用いて5mm×5mmに塗布し、その後、500℃、60分間で焼成を行ない、多孔質半導体層の表面から多孔質絶縁層105の上面の平坦部分までの距離(多孔質絶縁層105の膜厚)が7μmの多孔質絶縁層105を形成した。
次に、多孔質半導体層と多孔質絶縁層105との積層体を四方から取り囲むようにしてスクリーン印刷法によりガラスフリットを印刷し、その後、500℃以上に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて60分間焼成することによって隔壁部201をで形成した。
次に、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度40nm/sで、多孔質絶縁層105上にPtを成膜して、触媒層106を形成した。なお、触媒層の大きさ(形状)および幅方向の位置はそれぞれ多孔質半導体層と同一にした。
次に、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度80nm/sで、多孔質半導体層と多孔質絶縁層105との積層体を含む全面に対して、触媒層106上に膜厚400nmのチタンを成膜した。その後、図1に示す位置に、スクライブライン113をレーザスクライブ法により形成することによって、遮光層108を形成した。
次に、予め調製しておいた色素吸着用溶液に、上記の遮光層108まで積層した積層体を室温で100時間浸漬し、その後、当該積層体をエタノールで洗浄し、約60℃で約5分間乾燥させて、上記の多孔質半導体層に色素を吸着させて光電変換層104を形成した。
ここで、色素吸着用溶液は、上記の式(3)で示される色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium620 1H3TBA)を濃度4×10-4モル/リットルになるように、体積比1:1のアセトニトリルとt−ブタノールとの混合溶剤に溶解させて調製した。
次に、上記の積層体を含む透明電極基板110と、カバー材102を構成するガラス基板とを、積層体の周囲を囲むようにして、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)からなる封止材109を用いて貼り合せ、封止材109に紫外線照射することによって、封止材109を硬化して、これらを固定した。
ただし、カバー材102と積層体を含む透明電極基板110とを固定する際、隔壁部201と積層体と間に形成された凹部に、紫外線硬化樹脂からなる封止材109が設置されるように位置合わせを行ない、封止材109に紫外線を照射することによって封止材109を硬化して、これらを固定した。
さらに、カバー材102を構成するガラス基板に予め設けられていたキャリア輸送材注入用孔(図示せず)から、予め調製しておいたキャリア輸送材112を注入して、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を用いて電解液注入用孔を封止した。これにより、キャリア輸送材112が充填された実施例1の光電変換素子が完成した。
なお、キャリア輸送材112である電解液は、溶剤としてアセトニトリルを用い、酸化還元種としてLiI(アルドリッチ社製)が濃度0.1モル/リットル、I2(キシダ化学社製)が濃度0.01モル/リットルになるように、さらに添加剤として、t−ブチルピリジン(アルドリッチ社製)が濃度0.5モル/リットル、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(四国化成工業社製)が濃度0.6モル/リットルになるように添加し、これらを溶解させて形成した。
上記のようにして、実施例1の光電変換素子を10個作製した。これら10個の実施例1の光電変換素子のそれぞれに対して、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいて、照射密度が280mW/cm2の光を500時間連続照射し、その後、目視により封止材109の劣化について外観確認を行なった。
その結果、実施例1の光電変換素子を10個のすべての封止材109において、気泡が侵入している等の変化は見られなかったため、実施例1の光電変換素子の電解液保持率は100%であった。この結果を表1に示す。
<実施例2>
図7に、実施例2の光電変換素子の模式的な断面図を示す。実施例2の光電変換素子は触媒層106上に対極導電層107を備えている点に特徴がある。実施例2の光電変換素子は以下のようにして作製した。
まず、触媒層106までは実施例1と同様の方法で作製し、次いで、所定のパターンが形成されたマスクおよびスパッタリング装置を用いて、触媒層106上にITOを厚さ500nmで成膜して対極導電層107を形成した。
さらに、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度80nm/sで、ITOからなる対極導電層107上に膜厚400nmのチタンを成膜して、遮光層108を形成した。
その後、色素の吸着からキャリア輸送材112の注入および封止材109による封止までは、実施例1と同様の方法を用いて、実施例2の光電変換素子を10個作製した。
上記のようにして、実施例2の光電変換素子を10個作製した。これら10個の実施例2の光電変換素子のそれぞれに対して、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいて、照射密度が280mW/cm2の光を500時間連続照射し、その後、目視により封止材109の劣化について外観確認を行なった。
その結果、実施例2の光電変換素子を10個のすべての封止材109において、気泡が侵入している等の変化は見られなかったため、実施例2の光電変換素子の電解液保持率は100%であった。この結果を表1に示す。
<実施例3>
図8に、実施例3の光電変換素子の模式的な断面図を示す。実施例3の光電変換素子は対極導電層107の全面に遮光層108を備えている点に特徴がある。実施例3の光電変換素子は以下のようにして作製した。
対極導電層107までは、実施例2と同様の方法で作製し、次いで、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて、蒸着速度80nm/sで、対極導電層107の全面に、膜厚400nmのチタンを成膜した。その後、図8に示す位置にスクライブライン113をレーザースクライブ法により形成することで、遮光層108を形成した。
その後、色素の吸着からキャリア輸送材112の注入および封止材109による封止までは、実施例1と同様の方法を用いて、実施例3の光電変換素子を10個作製した。
上記のようにして、実施例3の光電変換素子を10個作製した。これら10個の実施例3の光電変換素子のそれぞれに対して、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいて、照射密度が280mW/cm2の光を500時間連続照射し、その後、目視により封止材109の劣化について外観確認を行なった。
その結果、実施例3の光電変換素子を10個のすべての封止材109において、気泡が侵入している等の変化は見られなかったため、実施例3の光電変換素子の電解液保持率は100%であった。この結果を表1に示す。
<比較例1>
図9に、比較例1の光電変換素子の模式的な断面図を示す。比較例1の光電変換素子は光透過性支持体101から封止材109に入射する光が遮光層108によって遮光されていない点に特徴がある。比較例1の光電変換素子は以下のようにして作製した。
まず、図9に示すように、ガラスからなる光透過性支持体101上に、SnO2膜からなる導電層103が成膜されてなる幅10mm×長さ10mm×厚さ1.0mmの透明電極基板110(日本板硝子株式会社製、SnO2膜付ガラス)を用意した。
次に、図9に示すように、導電層103をレーザースクライブ法により切断することによって、スクライブライン111を形成した。
次に、多孔質半導体層のパターンを有するスクリーン板とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)を用いて、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名:D/SP)を導電層103面内に、5.5mm×5.5mmの大きさに塗布し、室温で1時間レベリングを行なった。
次に、得られた塗膜を80℃に設定したオーブンで20分間乾燥し、さらに500℃に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて大気中で60分間焼成した。この塗布および焼成工程を2回繰り返して、膜厚11μmの多孔質半導体層を形成した。
次に、多孔質半導体層上にジルコニア粒子(平均粒経50nm)を含むペーストをスクリーン印刷機を用いて5mm×5mmに塗布し、その後、500℃、60分間で焼成を行ない、多孔質半導体層の表面から多孔質絶縁層105の上面の平坦部分までの距離(多孔質絶縁層105の膜厚)が7μmの多孔質絶縁層105を形成した。
次に、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度40nm/sで、多孔質絶縁層105上にPtを成膜して、触媒層106を形成した。なお、触媒層の大きさ(形状)および幅方向の位置はそれぞれ多孔質半導体層と同一にした。
次に、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度80nm/sで、触媒層106上に膜厚400nmのチタンを成膜して、対極導電層107を形成した。
次に、予め調製しておいた色素吸着用溶液に、上記の対極導電層107まで積層した積層体を室温で100時間浸漬し、その後、当該積層体をエタノールで洗浄し、約60℃で約5分間乾燥させて、上記の多孔質半導体層に色素を吸着させて光電変換層104を形成した。
ここで、色素吸着用溶液は、上記の式(3)で示される色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium620 1H3TBA)を濃度4×10-4モル/リットルになるように、体積比1:1のアセトニトリルとt−ブタノールとの混合溶剤に溶解させて調製した。
次に、上記の積層体を含む透明電極基板110と、カバー材102を構成するガラス基板とを、積層体の周囲を囲むようにして、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)からなる封止材109を用いて貼り合せ、封止材109に紫外線照射することによって、封止材109を硬化して、これらを固定した。
さらに、カバー材102を構成するガラス基板に予め設けられていたキャリア輸送材注入用孔(図示せず)から、予め調製しておいたキャリア輸送材112を注入して、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を用いて電解液注入用孔を封止した。これにより、キャリア輸送材112が充填された比較例1の光電変換素子が完成した。なお、キャリア輸送材112である電解液は、実施例1と同様のものを使用した。
その後、集電電極部としてAgペースト(藤倉化成株式会社製、商品名:ドータイト)を塗布することによって、比較例1の光電変換素子を作製した。
上記のようにして、比較例1の光電変換素子を10個作製した。これら10個の比較例1の光電変換素子のそれぞれに対して、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいて、照射密度が280mW/cm2の光を500時間連続照射し、その後、目視により封止材109の劣化について外観確認を行なった。
その結果、比較例1の光電変換素子の10個のすべての封止材109の一部からキャリア輸送材112中に気泡が侵入していることが確認された。これは、封止材109の光劣化による接着力の低下、若しくはクラックの発生により、キャリア輸送材112中の溶媒の一部が揮発したものと考えられる。したがって、比較例1の光電変換素子の電解液保持率は0%であった。この結果を表1に示す。
<比較例2>
図10に、比較例2の光電変換素子の模式的な断面図を示す。比較例2の光電変換素子は、特許文献4に記載の光電変換素子に相当する構成であって、封止材109が遮光層401の凹部を埋めるようにして設けられていない点に特徴がある。比較例2の光電変換素子は以下のようにして作製した。
まず、図10に示すように、ガラスからなる光透過性支持体101上に、SnO2膜からなる導電層103が成膜されてなる幅10mm×長さ10mm×厚さ1.0mmの透明電極基板110(日本板硝子株式会社製、SnO2膜付ガラス)を用意した。そして、導電層103が形成されている面上に、電子ビーム蒸着法により、外辺10mm、内辺6mm、厚さ5mmの正方形状のアルミ薄膜を形成することによって、遮光層401を形成した。
その後は、比較例1と同様の方法を用いて、比較例2の光電変換素子を10個作製した。
上記のようにして、比較例2の光電変換素子を10個作製した。これら10個の比較例2の光電変換素子のそれぞれに対して、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいて、照射密度が280mW/cm2の光を500時間連続照射し、その後、目視により封止材109の劣化について外観確認を行なった。
その結果、比較例2の光電変換素子の3個の封止材109の一部からキャリア輸送材112中に気泡が侵入していることが確認された。これは、封止材109の光劣化による接着力の低下、若しくはクラックの発生により、キャリア輸送材112中の溶媒の一部が揮発したものと考えられる。したがって、比較例2の光電変換素子の電解液保持率は70%であった。この結果を表1に示す。
<比較例3>
図9に、比較例3の光電変換素子の模式的な断面図を示す。比較例3の光電変換素子はスパッタリング法により厚さ500nmのITO膜からなる対極導電層107を形成したこと以外は、比較例1と同様にして作製した。
上記のようにして、比較例3の光電変換素子を10個作製した。これら10個の比較例3の光電変換素子のそれぞれに対して、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいて、照射密度が280mW/cm2の光を500時間連続照射し、その後、目視により封止材109の劣化について外観確認を行なった。
その結果、比較例3の光電変換素子の10個のすべての封止材109の一部からキャリア輸送材112中に気泡が侵入していることが確認された。これは、封止材109の光劣化による接着力の低下、若しくはクラックの発生により、キャリア輸送材112中の溶媒の一部が揮発したものと考えられる。したがって、比較例3の光電変換素子の電解液保持率は0%であった。この結果を表1に示す。
<実施例4>
図6に、実施例4の光電変換素子の模式的な断面図を示す。実施例4の光電変換モジュールは以下のようにして作製した。
まず、図6に示すように、ガラスからなる光透過性支持体101上に、SnO2膜からなる導電層103が成膜されてなる幅50mm×長さ50mm×厚さ4.0mmの透明電極基板110(日本板硝子株式会社製、SnO2膜付ガラス)を用意した。
次に、図6に示すように、導電層103をレーザースクライブ法により切断することによって、スクライブライン111を形成した。
次に、多孔質半導体層のパターンを有するスクリーン板とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)を用いて、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名:D/SP)を導電層103面内に、5.5mm×45mmの大きさで7直列になるよう塗布し、室温で1時間レベリングを行なった。
次に、得られた塗膜を80℃に設定したオーブンで20分間乾燥し、さらに500℃に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて大気中で60分間焼成した。この塗布および焼成工程を2回繰り返して、膜厚11μmの多孔質半導体層を形成した。
次に、多孔質半導体層上にジルコニア粒子(平均粒経50nm)を含むペーストをスクリーン印刷機を用いて5.5mm×45mmに塗布し、その後、500℃、60分間で焼成を行ない、多孔質半導体層の表面から多孔質絶縁層105の上面の平坦部分までの距離(多孔質絶縁層105の膜厚)が7μmの多孔質絶縁層105を形成した。
次に、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度40nm/sで、多孔質絶縁層105上にPtを成膜して、触媒層106を形成した。
次に、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度80nm/sで、多孔質半導体層と多孔質絶縁層105との積層体を含む全面に対して、触媒層106上に膜厚400nmのチタンを成膜した。その後、図6に示す位置に、スクライブライン113をレーザスクライブ法により形成することによって、遮光層108を形成した。
次に、予め調製しておいた色素吸着用溶液に、上記の遮光層108まで積層した積層体を室温で100時間浸漬し、その後、当該積層体をエタノールで洗浄し、約60℃で約5分間乾燥させて、上記の多孔質半導体層に色素を吸着させて光電変換層104を形成した。
ここで、色素吸着用溶液は、上記の式(3)で示される色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium620 1H3TBA)を濃度4×10-4モル/リットルになるように、体積比1:1のアセトニトリルとt−ブタノールとの混合溶剤に溶解させて調製した。
次に、上記の積層体を含む透明電極基板110と、カバー材102を構成するガラス基板とを、積層体の周囲を囲むようにして、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)からなる封止材109を用いて貼り合せ、封止材109に紫外線照射することによって、封止材109を硬化して、これらを固定した。
ただし、カバー材102と積層体を含む透明電極基板110とを固定する際、隔壁部201と積層体と間に形成された凹部に、紫外線硬化樹脂からなる封止材109が設置されるように位置合わせを行ない、封止材109に紫外線を照射することによって封止材109を硬化して、これらを固定した。
さらに、カバー材102を構成するガラス基板に予め設けられていたキャリア輸送材注入用孔(図示せず)から、予め調製しておいたキャリア輸送材112を注入して、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を用いて電解液注入用孔を封止した。これにより、キャリア輸送材112が充填された実施例4の光電変換素子モジュールが完成した。なお、キャリア輸送材112である電解液は、実施例1と同様のものを使用した。
上記のようにして、実施例4の光電変換素子モジュールを10個作製した。これら10個の実施例4の光電変換素子モジュールのそれぞれに対して、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいて、照射密度が280mW/cm2の光を500時間連続照射し、その後、目視により封止材109の劣化について外観確認を行なった。
その結果、実施例4の光電変換素子モジュールの10個のすべての封止材109において、気泡が侵入している等の変化は見られなかったため、実施例4の光電変換素子モジュールの電解液保持率は100%であった。この結果を表1に示す。
<比較例4>
図11に、比較例4の光電変換素子モジュールの模式的な断面図を示す。比較例4の光電変換素子モジュールは、封止材109が遮光層108の凹部を埋めるようにして設けられていないことを特徴としている。
まず、図11に示すように、ガラスからなる光透過性支持体101上に、SnO2膜からなる導電層103が成膜されてなる幅50mm×長さ50mm×厚さ4.0mmの透明電極基板110(日本板硝子株式会社製、SnO2膜付ガラス)を用意した。
次に、図11に示すように、導電層103をレーザースクライブ法により切断することによって、スクライブライン111を形成した。
次に、多孔質半導体層のパターンを有するスクリーン板とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)を用いて、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名:D/SP)を導電層103面内に、5.5mm×45mmの大きさで7直列になるよう塗布し、室温で1時間レベリングを行なった。
次に、得られた塗膜を80℃に設定したオーブンで20分間乾燥し、さらに500℃に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて大気中で60分間焼成した。この塗布および焼成工程を2回繰り返して、膜厚11μmの多孔質半導体層を形成した。
次に、多孔質半導体層上にジルコニア粒子(平均粒経50nm)を含むペーストをスクリーン印刷機を用いて5.5mm×45mmに塗布し、その後、500℃、60分間で焼成を行ない、多孔質半導体層の表面から多孔質絶縁層105の上面の平坦部分までの距離(多孔質絶縁層105の膜厚)が7μmの多孔質絶縁層105を形成した。
次に、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度40nm/sで、多孔質絶縁層105上にPtを成膜して、触媒層106を形成した。
次に、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて蒸着速度80nm/sで、多孔質半導体層と多孔質絶縁層105との積層体を含む全面に対して、触媒層106上に膜厚400nmのチタンを成膜して、遮光層108を形成した。
次に、予め調製しておいた色素吸着用溶液に、上記の遮光層108まで積層した積層体を室温で100時間浸漬し、その後、当該積層体をエタノールで洗浄し、約60℃で約5分間乾燥させて、上記の多孔質半導体層に色素を吸着させて光電変換層104を形成した。
ここで、色素吸着用溶液は、上記の式(3)で示される色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium620 1H3TBA)を濃度4×10-4モル/リットルになるように、体積比1:1のアセトニトリルとt−ブタノールとの混合溶剤に溶解させて調製した。
次に、上記の積層体を含む透明電極基板110と、カバー材102を構成するガラス基板とを、積層体の周囲を囲むようにして、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)からなる封止材109を用いて貼り合せ、封止材109に紫外線照射することによって、封止材109を硬化して、これらを固定した。
さらに、カバー材102を構成するガラス基板に予め設けられていたキャリア輸送材注入用孔(図示せず)から、予め調製しておいたキャリア輸送材112を注入して、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を用いて電解液注入用孔を封止した。これにより、キャリア輸送材112が充填された実施例4の光電変換素子モジュールが完成した。なお、キャリア輸送材112である電解液は、実施例1と同様のものを使用した。
上記のようにして、比較例4の光電変換素子モジュールを10個作製した。これら10個の比較例4の光電変換素子モジュールのそれぞれに対して、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいて、照射密度が280mW/cm2の光を500時間連続照射し、その後、目視により封止材109の劣化について外観確認を行なった。
その結果、比較例4の光電変換素子モジュールの10個のすべての封止材109の一部からキャリア輸送材112中に気泡が侵入していることが確認された。これは、封止材109の光劣化による接着力の低下、若しくはクラックの発生により、キャリア輸送材112中の溶媒の一部が揮発したものと考えられる。したがって、比較例4の光電変換素子モジュールの電解液保持率は0%であった。この結果を表1に示す。
<結果>
表1に示すように、JIS規格C8938の光照射試験A−5に基づいた280mW/cm2の500時間連続光照射に対して、実施例1〜3の光電変換素子および実施例4の光電変換素子モジュールの方が、比較例1〜3の光電変換素子および比較例4の光電変換素子モジュールよりも、封止材109の電解液保持率が高くなることが確認された。これは、実施例1〜3の光電変換素子および実施例4の光電変換素子モジュールにおいては、封止材109が遮光層108の凹部を埋めるようにして設けられており、封止材109の光入射面のすべてが遮光層108で覆われているが、比較例1〜3の光電変換素子および比較例4の光電変換素子モジュールでは、このような構成を有していないためであると考えられる。
また、実施例1〜3の光電変換素子および実施例4の光電変換素子モジュールにおいては、光電変換層104への光の入射が遮光層108によって遮光されていないため、光電変換層104に入射する光量の低減による光電変換効率の低下を抑えることもできる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図している。