以下に添付図面を参照して、本願の開示する受信装置のいくつかの実施例を詳細に説明する。以下では、受信装置が、自動車等の移動体に搭載される場合の例について説明するが、これらの実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
まず、実施例1に係る受信装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、実施例1に係る受信装置の構成を示すブロック図である。なお、図1では、受信装置の特徴を説明するために必要な構成要素を示しており、一般的な構成要素についての記載を適宜省略している。
図1に示すように、実施例1に係る受信装置1は、チューナ部11と、FFT部12と、等化処理部13と、復調部14とを備える。
チューナ部11は、アンテナ5から入力される受信信号を検波・増幅する処理部である。また、チューナ部11は、検波・増幅後の受信信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換してFFT部12へ出力する処理も行う。
FFT部12は、チューナ部11から入力される直交周波数分割多重信号(以下、「受信信号」と記載する)をFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)処理することで、受信信号を時間領域における信号から周波数領域における信号へ変換する高速フーリエ変換部である。また、FFT部12は、FFT処理後の受信信号を等化処理部13へ出力する処理も行う。
等化処理部13は、FFT部12から入力される受信信号のキャリアごとに伝送路応答を推定し、推定した伝送路応答に基づいて、FFT部12から入力される受信信号を補正する処理部である。また、等化処理部13は、補正後の受信信号を復調部14へ出力する処理も行う。かかる等化処理部13の具体的な構成については図2を用いて説明する。
復調部14は、等化処理部13から入力される等化処理後の受信信号をOFDM復調し、復調後の信号を出力装置7へ出力する。出力装置7は、たとえば、デジタルテレビ放送の映像を表示するディスプレイ装置やデジタルテレビ放送の音声を出力するスピーカ等である。
次に、等化処理部13の構成について図2を用いて説明する。図2は、等化処理部13の構成を示すブロック図である。なお、図2では、等化処理部13の特徴を説明するために必要な構成要素を示しており、一般的な構成要素についての記載を適宜省略している。
図2に示すように、等化処理部13は、第1ノイズ除去部31と、アップサンプリング部32と、キャリア補間部33と、第1等化部34と、仮判定部35と、仮伝送路応答推定部36と、重付け部37と、シンボル方向平均化フィルタ38とを備える。また、等化処理部13は、第2ノイズ除去部39と、第2等化部40とを備える。
なお、図2では、FFT部12から入力される受信信号のうち、パイロット信号であるスキャッタード・パイロット信号(以下、「SP信号」と記載する)を「SP」で示し、データ信号を「data」で示している。図2に示すように、等化処理部13では、FFT部12から入力される受信信号のうち、SP信号が第1ノイズ除去部31へ、データ信号が第1等化部34、仮伝送路応答推定部36および第2等化部40へそれぞれ入力される。
第1ノイズ除去部31は、SP信号に含まれるノイズ成分を除去し、ノイズ除去後のSP信号をアップサンプリング部32へ出力する処理部である。ここで、第1ノイズ除去部31の構成について図3を用いて説明する。図3は、第1ノイズ除去部31の構成を示すブロック図である。
第1ノイズ除去部31は、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムと呼ばれる最適化アルゴリズムに従ってタップ係数を自己適応させる適応フィルタである。具体的には、図3に示すように、第1ノイズ除去部31は、キャリア方向平均化フィルタ31aと、LMS部31bとを備える。
キャリア方向平均化フィルタ31aは、たとえばFIR(Finite Impulse Response)フィルタであり、LMS部31bから入力されるタップ係数を用いてSP信号をキャリア方向に平均化する処理を行う。LMS部31bは、キャリア方向平均化フィルタ31aのタップ係数をLMSアルゴリズムに従って更新する係数更新部である。第1ノイズ除去部31は、これらキャリア方向平均化フィルタ31aおよびLMS部31bを用いてSP信号のノイズ除去を行う。
ここで、第1ノイズ除去部31が実行するノイズ除去処理の内容について図4Aおよび図4Bを用いて説明する。図4Aおよび図4Bは、ノイズ除去処理の一例を示す説明図である。ここでは、図4Aを用いてタップ係数の更新処理について説明し、図4Bを用いてSP信号の平均化処理について説明する。なお、図4Aおよび図4Bでは、タップ数が4つである場合の例について示しているが、キャリア方向平均化フィルタ31aのタップ数は、4つに限定されない。
たとえば、図4Aに示すように、SP信号SP3に対応するタップ係数を更新する場合について考える。かかる場合、第1ノイズ除去部31では、まず、キャリア方向平均化フィルタ31aが、SP信号SP3の周囲に存在する4つのSP信号SP1,SP2,SP4,SP5と、各SP信号SP1,SP2,SP4,SP5に対応するタップ係数Wとを用いた重み付き平均値を算出する。
つづいて、LMS部31bは、キャリア方向平均化フィルタ31aによって算出された重み付き平均値(すなわち、SP信号SP3の推定値)と、SP信号の実測値とに基づいてタップ係数WA〜WDを更新する。
すなわち、SP信号は、振幅や位相が既知の信号であり、LMS部31bは、SP信号の推定値と既知の値との誤差を求め、かかる誤差が小さくなるようにタップ係数Wを更新する。更新後のタップ係数Wは、キャリア方向平均化フィルタ31aへ出力される。かかる処理をキャリア方向、言い換えれば、周波数軸方向に沿って順次行うことによって、第1ノイズ除去部31は、各SP信号に対応するタップ係数Wを更新する。
そして、キャリア方向平均化フィルタ31aは、図4Bに示すように、更新後のタップ係数W’を用いて上記の平均化処理を再度行い、平均化処理後のSP信号をアップサンプリング部32(図2参照)へ出力する。このように、周辺のSP信号を用いた重み付け平均処理を行うことで、周辺のSP信号との相関を持たないAWGN(Additive White Gaussian Noise)等のノイズ成分を元のSP信号から除去することができる。
このように、実施例1に係る受信装置1では、第1ノイズ除去部31を用いてSP信号のノイズ除去を行う。これにより、実施例1に係る受信装置1では、ノイズ除去後のSP信号を用いた後段処理を精度良く行うことができる。
たとえば、従来では、仮判定処理の結果に基づいて算出される仮伝送路応答推定値についてノイズ除去を行っていた。すなわち、従来では、仮判定処理の結果に基づいて算出される仮伝送路応答推定値を用いてタップ係数の更新処理を行い、かかる仮伝送路応答推定値に対してキャリア方向への平均化処理を行っていた。ところが、仮判定処理の結果に誤りがある場合、仮伝送路応答推定値も不正確となり、正しいタップ係数が求められず、伝送路応答の推定精度が低下するおそれがあった。
これに対し、実施例1に係る受信装置1では、仮判定部35よりも前段、具体的には、アップサンプリング部32の前段において、既知のSP信号についてノイズ除去処理を行う。このため、伝送路応答の推定精度を向上させることができ、受信データを信頼性高く復調することが可能となる。
また、実施例1に係る受信装置1では、キャリア補間部33よりも前段において、SP信号のノイズ除去処理を行うことで、ノイズ除去されたSP信号を用いて処理を行えることになり、後述するキャリア補間部33による伝送路応答推定値h1の算出処理も精度良く行うことができる。
なお、ここでは、SP信号があらかじめ1キャリアごとに詰まった状態で第1ノイズ除去部31へ入力される場合の例について説明したが、SP信号は、データ信号が存在していた場所に所定の値(たとえば、ゼロ)が挿入された状態で第1ノイズ除去部31へ入力されてもよい。かかる場合、等化処理部13は、第1ノイズ除去部31の前段においてSP信号間に挿入された値を除去してSP信号を1キャリアごとに詰めるダウンサンプリング処理を行うこととしてもよい。
また、第1ノイズ除去部31は、伝送路応答の推定精度をさらに高めるために、12キャリアに1つの割合で挿入されるSP信号をたとえば3キャリアに1つの割合に擬似的に増やすシンボル補間処理を行うこととしてもよい。かかる点については、後述する。
図2に戻り、等化処理部13の構成についての説明を続ける。第1ノイズ除去部31によってノイズが除去されたSP信号は、アップサンプリング部32へ出力される。
アップサンプリング部32は、SP信号間にゼロを挿入することによって、SP信号間の間隔を元の間隔に戻す処理を行う。アップサンプリング後のSP信号は、キャリア補間部33へ出力される。
キャリア補間部33は、たとえば、SINCフィルタであり、アップサンプリング後の各SP信号を滑らかに繋ぐように補間するキャリア補間処理を行うことで、受信信号の歪み(すなわち、伝送路応答)を推定する処理部である。キャリア補間部33によって得られる伝送路応答推定値h1は、第1等化部34および重付け部37へそれぞれ入力される。
なお、実施例1に係る受信装置1では、キャリア補間部33の前段においてSP信号のノイズ除去処理を行っている。このため、帯域の比較的広いSINCフィルタをキャリア補間部33として用いたとしても、かかるSINCフィルタを通過するノイズ成分は少なく、後段の仮判定処理等に与える影響を抑えることができる。
第1等化部34は、伝送路応答推定値h1を用いてデータ信号の歪みを補正する等化処理を行う処理部である。第1等化部34は、データ信号を伝送路応答推定値h1で除することによってデータ信号の歪みを補正する。等化処理後のデータ信号は、仮判定部35へ入力される。
仮判定部35は、等化処理後のデータ信号を用い、各データ信号の送信時におけるIQ平面上の位置を推定する仮判定処理を行う処理部である。仮判定処理後のデータ信号(以下、「仮判定値」と記載する)は、仮伝送路応答推定部36および重付け部37へ入力される。
仮伝送路応答推定部36は、仮判定部35によって推定されたデータ信号の送信時の位置(仮判定値)と、実際に受信したデータ信号の位置とから、実際に受けていた歪みの量を推定する処理部である。仮伝送路応答推定部36は、入力されるデータ信号を仮判定値で除することによって仮伝送路応答推定値h2を算出する。算出された仮伝送路応答推定値h2は、重付け部37へ入力される。
重付け部37は、仮伝送路応答推定部36によって算出された仮伝送路応答推定値h2に対して仮判定値の大きさに応じた重み付けを行う処理部である。ここで、重付け部37が行う重付け処理について図5を用いて説明する。図5は、重付け処理の一例を示す説明図である。
ノイズの量が一定であると仮定すると、データ信号に含まれるノイズ成分の割合は、データ信号の電力が小さいほど多くなる。この点について式(1)〜(3)を用いて説明する。
nをキャリア番号、r(n)を受信信号、d(n)を送信信号、n(n)をノイズ、H(n)を伝送路応答、H^(n)を仮伝送路応答推定値(すなわち、h2)とすると、受信信号r(n)は、
式(1)のようにあらわされる。
また、式(1)を伝送路応答H(n)について解くと、
式(2)のようにあらわされ、さらに、式(2)を仮伝送路応答推定値H^(n)について解くと、
式(3)のようにあらわされる。
式(3)に示すように、実際の伝送路応答H(n)と仮伝送路応答推定値H^(n)との誤差は、n(n)/d(n)であらわされる。このことより、ノイズn(n)の大きさが同じである場合には、送信信号d(n)が小さいほど(すなわち、電力が小さいデータ信号ほど)、仮伝送路応答推定値H^(n)の誤差が大きくなることがわかる。
そこで、実施例1に係る受信装置1では、電力が小さいデータ信号の重みを電力が大きいデータ信号の重みよりも小さくすることとした。
具体的には、h
dataをデータ信号から算出される仮伝送路応答推定値(すなわち、仮伝送路応答推定値h2)、h
SPをSP信号から算出される伝送路応答推定値(すなわち、伝送路応答推定値h1)、d
dataを仮判定値とすると、重付け処理後の仮伝送路応答推定値h3は、
式(4)のようにあらわされる。
すなわち、図5に示すように、重付け部37は、仮判定値が大きい場合(すなわち、データ信号の電力が大きい場合)には、仮伝送路応答推定値hdataの重みを大きくし、伝送路応答推定値hSPの重みを小さくする。一方、重付け部37は、仮判定値が小さい場合(すなわち、データ信号の電力が小さい場合)には、伝送路応答推定値hSPの重みを大きくすることによって、信頼性の低い仮伝送路応答推定値hdataの重みを小さくする。
このように、実施例1に係る受信装置1では、電力が小さいデータ信号の重みを小さくすることによって仮伝送路応答を推定し直すこととした。これにより、伝送路応答の推定精度を向上させることができ、受信信号を信頼性高く復調することが可能となる。
なお、ここでは、仮伝送路応答推定部36によって算出された仮伝送路応答推定値h2に対して、重付け部37が重付け処理を行う場合の例について説明したが、仮伝送路応答推定部36が重付け処理まで行い、重付け処理後の仮伝送路応答推定値h3を出力することとしてもよい。
図2に戻り、シンボル方向平均化フィルタ38について説明する。シンボル方向平均化フィルタ38は、重付け部37から取得した仮伝送路応答推定値h3に対して、シンボル方向、言い換えれば、時間方向への平均化を行う処理部である。かかるシンボル方向平均化フィルタ38によるシンボル方向平均化処理について図6を用いて説明する。図6は、シンボル方向平均化処理の一例を示す説明図である。
図6に示すように、仮伝送路応答推定値h3は、1シンボルごとに重付け部37から出力される。シンボル方向平均化フィルタ38は、たとえば20シンボル分の仮伝送路応答推定値h3を平均した値を仮伝送路応答推定値h4として第2ノイズ除去部39へ出力する。具体的には、シンボル方向平均化処理前の仮伝送路応答推定値をh3_n(nはシンボル番号)とすると、シンボル方向平均化処理後の仮伝送路応答推定値h4は、h4=(h3_1+h3_2+…h3_n)/nであらわされる。
このように、実施例1に係る受信装置1では、シンボル方向平均化フィルタ38が、仮伝送路応答推定値h3をシンボル方向に平均化して出力することとした。これにより、シンボル間における相関を持たないAWGN等のノイズ成分を低減することができ、伝送路応答の推定精度を高めることができる。
なお、シンボル方向平均化フィルタ38としては、たとえば、SINCフィルタ等のデジタルフィルタを用いることができる。
等化処理部13は、シンボル方向平均化フィルタ38の時定数、すなわち、平均化に用いるシンボル数を仮伝送路応答推定値h3の変動量に応じて変更してもよい。たとえば、シンボル方向平均化フィルタ38は、仮伝送路応答推定値h3の変動量が少ない場合には、時定数を大きく、言い換えれば、平均化に用いるシンボル数を多くする。一方、シンボル方向平均化フィルタ38は、仮伝送路応答推定値h3の変動量が多い場合には、時定数を小さく、言い換えれば、平均化に用いるシンボル数を少なくする。これにより、変動が激しいときは応答性を重視し、変動が穏やかな時は安定性を重視することで、ノイズ成分をより適切に低減することができる。
なお、仮伝送路応答推定値h3の変動量としては、たとえばフェージング周波数を用いることができる。すなわち、等化処理部13は、シンボル方向平均化フィルタ38の時定数をフェージング周波数に応じて変化させる。かかる場合、等化処理部13は、フェージング周波数を推定する処理部を備えていればよい。フェージング周波数の推定については、いずれの公知技術を用いても構わない。
また、回路規模の縮小化を考慮する場合には、平均化に用いるシンボル数をたとえば3シンボル等の少ない数に固定したシンボル方向平均化フィルタを用いることとしてもよい。
図2に戻り、第2ノイズ除去部39について説明する。第2ノイズ除去部39は、シンボル方向平均化処理後の仮伝送路応答推定値h4に含まれるノイズ成分を除去し、ノイズ除去後の仮伝送路応答推定値h4(以下、伝送路応答推定値h5と記載する)を第2等化部40へ出力する処理部である。ここで、第2ノイズ除去部39の構成について図7を用いて説明する。図7は、第2ノイズ除去部39の構成を示すブロック図である。
第2ノイズ除去部39は、第1ノイズ除去部31と同様、LMSアルゴリズムに従ってタップ係数を自己適応させる適応フィルタである。具体的には、図7に示すように、第2ノイズ除去部39は、窓関数適用部39aと、キャリア方向平均化フィルタ39bと、LMS部39cと、初期化部39dとを備える。
窓関数適用部39aは、シンボル方向平均化フィルタ38から入力される仮伝送路応答推定値h4に対して窓関数を乗算し、乗算後の仮伝送路応答推定値h4をキャリア方向平均化フィルタ39bおよびLMS部39cへそれぞれ出力する処理部である。
FFT部12(図1参照)による高速フーリエ変換処理は、本来、無限長の信号列を必要とするが、実際には、信号列を任意の有限長で打ち切って処理を行っている。従来では、タップ係数を求める際、かかる打ち切りの影響によるスペクトルが現れ、阻止域(入力信号を阻止する周波数帯域)にバタつきが生じていた(図8A参照)。このようなバタつきが生じると、小信号の検出が困難となるおそれがある。
そこで、実施例1に係る受信装置1は、窓関数適用部39aを用いて仮伝送路応答推定値h4に対して窓関数を乗算することとした。これにより、高速フーリエ変換処理において打ち切られた部分が平滑化される。この結果、図8Bに示すように、阻止域のバタつきを抑えることができ、小信号の検出が可能となる。
窓関数適用部39aが用いる窓関数としては、たとえば方形窓関数、ハニング窓関数、ハミング窓関数、ガウス窓関数といった各種の窓関数を適宜用いることができる。なお、方形窓関数は、メインローブの幅が小さいため主成分の周波数分解能が高い一方、サイドローブが大きいため小電力のスペクトルを検出し難いという特性を持つ。また、ハニング窓関数は、主成分の周波数分解能はやや劣るが、サイドローブが比較的小さいため小電力のスペクトルを検出し易いという特性を持つ。
また、ハミング窓関数は、窓の両端に位置する信号成分がスペクトルに反映されないというハニング窓関数の欠点に対して修正を加えたものである。このハミング窓関数は、ハニング窓関数と同様、主成分の周波数分解能はやや劣るが、サイドローブが比較的小さいため小電力のスペクトルを検出し易いという特性を持つ。また、ガウス窓関数は、主成分の周波数分解能は劣るが、小電力のスペクトルの検出に優れるという特性を持つ。窓関数適用部39aで用いる窓関数は、これら各窓関数の特性と検出したいスペクトルとを考慮して決定すればよい。
図7に戻り、キャリア方向平均化フィルタ39bについて説明する。キャリア方向平均化フィルタ39bは、たとえばFIR(Finite Impulse Response)フィルタであり、LMS部39cから入力されるタップ係数を用いて仮伝送路応答推定値h4をキャリア方向に平均化する処理を行う。
ここで、FIRフィルタは、ある周波数の仮伝送路応答推定値からノイズを除去する場合には、その周辺の周波数の仮伝送路応答推定値を用いた平均化を行うことによってノイズが除去された仮伝送路応答推定値を算出する。したがって、帯域端部(タップ数/2のキャリア周波数の範囲)においては、平均化に用いる仮伝送路応答推定値の数が足りず、ノイズ除去を行うことができない。
そこで、実施例1に係るキャリア方向平均化フィルタ39bは、帯域端部以外の帯域(以下、「帯域中央部」と記載する)に用いるFIRフィルタ(第1フィルタ)と比較してタップ数の少ないFIRフィルタ(第2フィルタ)を、帯域端部用のFIRフィルタとして用いることとした。かかる点について図9を用いて説明する。図9は、キャリア方向平均化フィルタ39bの動作例を示す図である。
図9に示すように、キャリア方向平均化フィルタ39bは、帯域端部用フィルタF1および帯域中央部用フィルタF2の2つのFIRフィルタを備える。帯域端部用フィルタF1のタップ数(図9では、4個)は、帯域中央部用フィルタF2のタップ数(図9では、6個)よりも少ない。
キャリア方向平均化フィルタ39bは、帯域端部用フィルタF1および帯域中央部用フィルタF2を備え、これら帯域端部用フィルタF1および帯域中央部用フィルタF2を用いてキャリア方向平均化処理を並列に実行する。そして、キャリア方向平均化フィルタ39bは、帯域端部用フィルタF1および帯域中央部用フィルタF2が帯域端部を処理中の間、帯域端部用フィルタF1からの出力値(ノイズ除去後の仮伝送路応答推定値)を受け取る。また、処理中の帯域が帯域端部から帯域中央部へ移ると、キャリア方向平均化フィルタ39bは、入力を切り替えて、帯域中央部用フィルタF2からの出力値を受け取る。そして、処理中の帯域が再び帯域端部へ移ると、キャリア方向平均化フィルタ39bは、入力を再度切り替えて、帯域端部用フィルタF1からの出力値を受け取る。
このように、キャリア方向平均化フィルタ39bが、受信信号(直交周波数分割多重信号)の周波数帯域のうち帯域中央部の受信信号に対応する伝送路応答推定値を平均化するための帯域中央部用フィルタF2と、帯域中央部用フィルタF2のタップ数よりも少ないタップ数を有し、帯域端部の受信信号に対応する伝送路応答推定値を平均化するための帯域端部用フィルタF1とを備える。
これにより、帯域全域について同一のタップ数で平均化を行う場合と比較して、ノイズ除去処理を行うことができない帯域を小さくすることができるため、仮伝送路応答の推定精度を向上させることができる。
ところで、ここでは、帯域端部用フィルタF1を用いたキャリア方向平均化処理と帯域中央部用フィルタF2を用いたキャリア方向平均化処理とを並列に実行する場合の例について説明した。しかし、これに限ったものではなく、キャリア方向平均化フィルタ39bは、帯域端部用フィルタF1を用いたキャリア方向平均化処理と帯域中央部用フィルタF2を用いたキャリア方向平均化処理とをシリアルに実行してもよい。かかる場合、キャリア方向平均化フィルタ39bは、帯域端部用フィルタF1から帯域端部の出力値を、帯域中央部用フィルタF2から帯域中央部の出力値をそれぞれ事後的に受け取ればよい。
このように、キャリア方向平均化フィルタ39bは、帯域端部用フィルタF1および帯域中央部用フィルタF2のうち一方のフィルタを用いた平均化処理を実行した後、他方のフィルタを用いた平均化処理を実行してもよい。このようにすることで、キャリア方向平均化フィルタ39bの回路規模を小さくすることができる。なお、キャリア方向平均化フィルタ39bは、キャリア方向平均化処理を並列に行う場合と同等の処理速度を実現するために、キャリア方向平均化処理を並列に行う場合と比較して処理速度を速くしてもよい。
なお、ここでは、キャリア方向平均化フィルタ39bが、2つのFIRフィルタを備える場合の例について説明したが、FIRフィルタの数は2つ以上であってもよい。すなわち、タップ数の異なるFIRフィルタを3種類以上備えていてもよい。かかる場合、帯域の端に近いほどFIRフィルタのタップ数を少なく設定すればよい。
図7に戻り、第2ノイズ除去部39の構成についての説明を続ける。LMS部39cは、キャリア方向平均化フィルタ39bのタップ係数、具体的には、帯域端部用フィルタF1および帯域中央部用フィルタF2のタップ係数をLMSアルゴリズムに従ってそれぞれ更新する係数更新部である。
LMS部39cは、シンボル方向平均化フィルタ38から入力される仮伝送路応答推定値h4と、キャリア方向平均化フィルタ39bから入力される仮伝送路応答推定値(周辺の仮伝送路応答推定値から得られる推定値)との誤差を求め、この誤差が小さくなるようにタップ係数を更新する。1シンボルには、たとえば5617個のキャリアが含まれている。LMS部39cは、各キャリアについて上記の更新処理を帯域の端から順に行っていき(すなわち、タップ係数の更新を5617回行い)、最終的に得られるタップ係数(タップ係数の収束値)を更新後のタップ係数としてキャリア方向平均化フィルタ39bへ出力する。
ここで、従来では、前段で使用されるSINCフィルタ等のデジタルフィルタに特有のノイズ(有色ノイズ)が発生した場合に、最適なタップ係数を求めることができないおそれがあった。かかる点について、図10を用いて説明する。図10は、従来におけるタップ係数更新処理の一例を示す説明図である。
図10に示すように、従来では、前段のSINCフィルタを通過したノイズ成分Nが、タップ係数の更新を繰り返すにつれて徐々に蓄積され、最終的に、前段のSINCフィルタ(たとえば、キャリア補間部)に近い特性のタップ係数に収束してしまうおそれがあった。このように、タップ係数が適切な値に収束しないと、仮伝送路応答の推定精度が低下するおそれがある。
そこで、実施例1に係るLMS部39cは、タップ係数を更新するごとに、全帯域の通過量を下げる補正を行いながらタップ係数を求めることで、ノイズ成分の蓄積を防止することとした。かかる点について図11および式(5)〜(9)を用いて説明する。図11は、実施例1に係るタップ係数更新処理の一例を示す説明図である。
図11に示すように、1回の更新における信号成分Sの蓄積量をv1、ノイズ成分Nの蓄積量をv2とすると、LMS部39cは、1回の更新ごとに、v2よりも多くv1よりも少ない量v3を全帯域から差し引くことで、ノイズ成分Nの蓄積を防止する。このタップ係数の更新処理についてより具体的に説明する。
タップ係数番号をn、タップ係数をW(n)、入力信号(仮伝送路応答推定値h4)をX(n)、ステップサイズをμ(0<μ<1)、誤差をe(n)とすると、更新後のタップ係数W(n+1)は、
式(5)のようにあらわされる。
なお、タップ係数W(n)は、タップ数をKとすると、
式(6)のようにあらわされる。また、入力信号X(n)は、
式(7)のようにあらわされる。また、誤差e(n)は、キャリア方向平均化フィルタ39bからの入力値と、シンボル方向平均化フィルタ38(図2参照)からの入力値(仮伝送路応答推定値h4)との誤差であり、
式(8)のようにあらわされる。
式(5)に示すように、LMS部39cは、更新前のタップ係数W(n)に対して係数α(0<α<1)を乗じる。すなわち、LMS部39cは、更新前のタップ係数W(n)のうち、(1−α)・W(n)がノイズ成分であると見なし、この分だけ全帯域の通過量を下げる補正を行う。
ここで、係数αは、所定の係数をβとすると、
式(9)のようにあらわされる。このように、係数αは、ステップサイズμおよび誤差e(n)に依存する値である。なお、係数βは、たとえば、全成分S+N中におけるノイズ成分Nの割合等に基づいてあらかじめ決定される値である。全成分S+N中におけるノイズ成分Nの割合は、たとえばシミュレーションや実験等によって推定することができる。
かかる係数αを用いることにより、LMS部39cは、ノイズ成分Nの蓄積量v2よりも多く信号成分Sの蓄積量v1よりも少ない量v3を全帯域から差し引くことができ(図10参照)、ノイズ成分Nの蓄積を防止することができる。
なお、実施例1に係る受信装置1は、キャリア補間部33(たとえばSINCフィルタ)の前段に第1ノイズ除去部31を備えており、ノイズ成分が除去されたSP信号を用いてキャリア補間処理を行うこととしている。これにより、キャリア補間部33を通過するノイズ成分を従来と比較して少なくすることができ、キャリア方向平均化フィルタ39bにおいてキャリア補間部33に近い特性のタップ係数に収束してしまう事態を生じにくくすることができる。
ところで、誤差e(n)は、キャリアごとにバラつきが生じ易い。このため、タップ係数の更新を行う場合に、誤差e(n)がバラつくことによってタップ係数の収束に要する時間が長くなる可能性がある。
そこで、LMS部39cは、誤差e(n)に対してキャリア方向(周波数軸方向)への移動平均を行うことで、誤差e(n)のバラつきを抑えることとした。これにより、タップ係数の収束に要する時間を短縮させることができる。
かかる点について図12を用いて説明する。図12は、第2ノイズ除去部39の回路構成の一例を示す図である。なお、図12では、キャリア方向平均化フィルタ39bのタップ数が4つである場合の例について示しているが、キャリア方向平均化フィルタ39bのタップ数は、4つに限定されない。また、図12では、窓関数適用部39aや初期化部39dといった第2ノイズ除去部39の一部の構成を省略して示している。
図12に示すように、キャリア方向平均化フィルタ39bは、ある周波数の伝送路応答を、その周辺4つの周波数の仮伝送路応答推定値に基づいて推定する。たとえば、キャリア方向平均化フィルタ39bは、仮伝送路応答推定値h4_3のキャリアの伝送路応答を推定する場合、このキャリアの周辺に位置する4つのキャリアの仮伝送路応答推定値h4_1,h4_2,h4_4,h4_5に対し、各キャリアに対応するタップ係数W0をそれぞれ乗じ、これによって得られる値をそれぞれ加算する。これによって、仮伝送路応答推定値h4_3のキャリアの伝送路応答推定値が得られる。
LMS部39cは、減算部39c_1と、移動平均部39c_2と、LMS実行部39c_3とを備える。減算部39c_1は、キャリアごとに、シンボル方向平均化フィルタ38(図2参照)によって得られる仮伝送路応答推定値からキャリア方向平均化フィルタ39bによって得られる伝送路応答推定値を減じることによって誤差e(n)を算出する。算出された誤差e(n)は、移動平均部39c_2へ入力される。
移動平均部39c_2は、減算部39c_1からキャリアごとに入力される誤差e(n)に対して移動平均処理を行う。たとえば、移動平均部39c_2は、減算部39c_1から入力される誤差e(n)を所定数記憶しておき、あらたな誤差e(n)が入力された場合に、記憶していた誤差e(n)およびあらたに入力された誤差e(n)の平均値を算出する。なお、ここでは、移動平均処理として単純移動平均を行うものとするが、移動平均部39c_2は、単純移動平均に限らず加重移動平均や指数移動平均などをおこなってもよい。
このように、移動平均部39c_2は、誤差e(n)に対してキャリア方向への移動平均を行うことで、誤差e(n)を平滑化する。また、移動平均部39c_2は、移動平均処理後の誤差e(n)をLMS実行部39c_3へ出力する。そして、LMS実行部39c_3は、移動平均部39c_2から入力される移動平均処理後の誤差e(n)を用い、LMSアルゴリズムに従ってタップ係数を更新する。このように、第2ノイズ除去部39は、移動平均部39c_2を用いて誤差e(n)のバタつきを抑えることで、タップ係数の収束に要する時間を短縮することができ、伝送路応答の推定精度を高めることができる。
なお、誤差e(n)のバタつきを抑える他の手法として、ステップサイズμを小さくすることも考えられる。しかしながら、ステップサイズμを小さくすると、タップ係数の収束に要する時間が長くなってしまうため好ましくない。また、受信信号には、マルチパスノイズのほかに、ある周波数において特有のノイズが生じる場合があるが、実施例1に係る受信装置1のように誤差e(n)の移動平均を行うこととすれば、かかる特有のノイズによる影響を抑えることができる。
ところで、移動平均部39c_2は、移動平均処理に用いる誤差e(n)の数を固定としてもよいが、周波数に応じて可変としてもよい。たとえば、移動平均部39c_2は、最初は移動平均処理に用いる誤差e(n)の数を少なく設定しておくことによってタップ係数の収束度を優先し、周波数が高くなるに従って、最初は移動平均処理に用いる誤差e(n)の数を多くすることによって誤差e(n)のバラつきの抑制を優先させてもよい。
なお、キャリア方向平均化フィルタ39bは、LMS部39cから入力された更新後のタップ係数を用いてキャリア方向平均化処理を再度実行し、これによって得られた伝送路応答推定値h5を第2等化部40へ出力する。また、更新後のタップ係数は、初期化部39dへも出力される。
初期化部39dは、キャリア方向平均化フィルタ39bの係数を初期化する初期化処理をシンボルごとに行う処理部であり、シンボルごとにLMS部39cに対してタップ係数の初期値を出力する。
ここで、実施例1に係る初期化部39dは、過去のシンボルにおいて用いられたタップ係数(収束値)に基づいて今回のシンボルで用いるタップ係数の初期値を決定する。かかる点について図13Aおよび図13Bを用いて説明する。図13Aは、従来におけるタップ係数初期値決定方法の説明図であり、図13Bは、実施例1に係るタップ係数初期値決定方法の一例を示す説明図である。
図13Aに示すように、従来では、タップ係数の初期値として、固定の値、具体的には、1/タップ数を使用していた。たとえば、タップ数が70の場合には、1シンボルごとに、1/70をタップ係数の初期値として用いていた。
このように、あらかじめ決められた固定の値を初期値として用い、この値からタップ係数の更新を始めることとすると、初期値から収束値までの変動量が多く、タップ係数が収束するまでに要する時間が長くなる可能性がある。
タップ係数の収束値は、シンボルごとに大きく変動することがない。そこで、実施例1に係る初期化部39dは、図13Bに示すように、前回のシンボルにおけるタップ係数の収束値を、今回のタップ係数の初期値として用いることとした。これにより、初期値から収束値までの変動量を少なくすることができ、タップ係数が収束するまでに要する時間を短くすることができる。この結果、タップ係数が収束せずに正確な仮伝送路応答推定値を算出することができないといった事態に陥ることを防止することができるため、伝送路応答の推定精度を向上させることができる。
なお、ここでは、初期化部39dが、前回のシンボルにおけるタップ係数の収束値を、今回のシンボルにおけるタップ係数の初期値として用いる場合の例について説明した。しかし、これに限ったものではなく、初期化部39dは、たとえば、過去複数シンボル分の収束値を保持しておき、これらの収束値を用いて(たとえば平均して)、今回のタップ係数の初期値を決定してもよい。
また、初期化部39dは、過去複数シンボル分の収束値から今回のタップ係数の収束値を予測し、予測した収束値を今回のタップ係数の初期値として用いることとしてもよい。これにより、タップ係数が収束するまでに要する時間をさらに短くすることができる。
また、初期化部39dは、初期化処理を所定回数行うごとに、タップ係数の初期値をあらかじめ決められた所定の値に戻すリセット処理を行うこととしてもよい。かかるリセット処理を行うことによって、仮に、タップ係数の初期値に誤差が蓄積されて不適切な値に変化してしまった場合であっても、元の状態へ戻すことが可能となる。リセット直後の初期値としては、たとえば従来と同様の1/タップ数を用いることができる。以下では、かかるリセット処理について図14を用いて説明する。図14は、リセット処理の一例を示す説明図である。このような処理を行うにあたっては、図4Aに示す構成を2つ有するものとする。
図14に示すように、初期化部39dは、リセット処理を異なるタイミングで実行する2つの処理系統(ラインA,ラインB)を備え、これらラインA,ラインBを用いて初期化処理を並列に行う。
ここで、図14に示す実線の太線は、その処理系統から出力される初期値が使用される期間である。また、図14に示す一点鎖線は、その処理系統から出力される初期値の使用が禁止されている期間(以下、「使用禁止期間」と記載する)である。図14に示すように、リセット処理後の所定期間が、使用禁止期間として設定される。
すなわち、タップ係数の初期値のリセット処理を行った直後においては、従来と同様、タップ係数が収束するまでに長い時間を要する可能性がある。このため、初期化部39dは、現在使用中のライン(たとえば、ラインA)のリセットタイミングが近づくと、かかるリセットタイミングよりも前のタイミングで他のライン(たとえば、ラインB)への切り替えを行う。
同様に、初期化部39dは、現在使用中のラインBのリセットタイミングが近づいた場合には、かかるリセットタイミングよりも前のタイミングでラインAへの切り替えを行う。これにより、リセット直後におけるタップ係数の初期値の使用を回避することができる。
なお、図14では、初期化部39dが、2つの処理系統を備える場合の例について説明したが、初期化部39dは、リセットタイミングがそれぞれ異なる3つ以上の処理系統を備えていてもよい。
また、第2ノイズ除去部39は、1つの処理系統のみを用いてリセット処理を行うこととしてもよい。以下では、1つの処理系統を用いてリセット処理を行う場合の例について図15を用いて説明する。図15は、リセット処理の他の一例を示す説明図である。
図15に示すように、たとえば、通常時におけるタップ係数の更新処理の処理周期がTであるとする。すなわち、第2ノイズ除去部39は、時間Tに1回の更新ペースでタップ係数を更新する。一方、タップ係数の初期値がリセットされた直後において、第2ノイズ除去部39は、処理速度を上げることによって、タップ係数の更新処理を時間T内で複数回実行する。これにより、第2ノイズ除去部39は、次の処理周期において収束値に近い状態の初期値を用いることができる。
このように、LMS部39cは、初期化部39dによるリセット処理後の所定期間において、係数更新処理の処理速度を上記所定期間以外の期間と比較して高くすることで、1つの処理系統のみを用いてリセット処理を行うことができる。そして、1つの処理系統のみを用いてリセット処理を行うこととすれば、回路規模の増大を抑えることができる。
図2に戻り、第2等化部40について説明する。第2等化部40は、第2ノイズ除去部39から受け取った伝送路応答推定値h5を用い、FFT部12(図1参照)から入力されるデータ信号の歪みを補正する等化処理を行う処理部である。第2等化部40は、データ信号を伝送路応答推定値h5で除することによってデータ信号の歪みを補正する。等化処理後のデータ信号は、復調部14(図1参照)へ入力される。
上述してきたように、実施例1に係る受信装置1は、FFT部12と、第1ノイズ除去部31とを備える。FFT部12は、直交周波数分割多重信号に対して高速フーリエ変換処理を行う。そして、第1ノイズ除去部31は、高速フーリエ変換処理後の直交周波数分割多重信号から抽出したSP信号に対してキャリア方向への平均化を行う平均化フィルタを用いたノイズ除去を行うこととした。したがって、実施例1によれば、パイロット信号であるSP信号の受信精度を高めることができる。
また、実施例1では、初期化部39dが、過去のシンボルについての係数更新処理によって得られたタップ係数の収束値に基づいて今回のシンボルにおけるタップ係数の初期値を決定することとした。したがって、実施例1によれば、伝送路応答の推定精度を高めることができる。
また、実施例1では、キャリア方向平均化フィルタ39bが、直交周波数分割多重信号の周波数帯域のうち帯域中央部の直交周波数分割多重信号に対応する伝送路応答推定値を平均化するための帯域中央部用フィルタF2と、帯域中央部用フィルタF2のタップ数よりも少ないタップ数を有し、帯域端部の直交周波数分割多重信号に対応する伝送路応答推定値を平均化するための帯域端部用フィルタF1とを備えることとした。したがって、実施例1によれば、伝送路応答の推定精度を高めることができる。
ところで、SP信号は、たとえば12キャリアに1個の割合で受信信号に対して挿入される。第1ノイズ除去部31は、かかるSP信号を擬似的に増やすシンボル補間処理を行うことによって、SP信号のノイズ除去の精度を高めることとしてもよい。そこで、以下では、第1ノイズ除去部31の変形例について説明する。
図16は、第1ノイズ除去部31の他の構成を示すブロック図である。図16に示すように、第1ノイズ除去部31_1は、キャリア方向平均化フィルタ31aおよびLMS部31bに加え、シンボル補間部31cをさらに備える。
シンボル補間部31cは、FFT部12から入力されるSP信号に対してシンボル補間処理を行い、処理後のSP信号をキャリア方向平均化フィルタ31aおよびLMS部31bへそれぞれ出力する処理部である。ここで、シンボル補間部31cが実行するシンボル補間処理について図17Aおよび図17Bを用いて説明する。図17Aおよび図17Bは、シンボル補間処理の一例を示す説明図である。
なお、図17Aおよび図17Bに示す「黒丸」はSP信号を示しており、「白丸」はデータ信号を示している。また、図17Aおよび図17Bに示す各データは、シンボル方向(同図における縦軸)およびキャリア方向(同図における横軸)に展開されているものとする。
図17Aに示すように、シンボル方向についてみた場合、SP信号は、4シンボルごとにあらわれる。ここで、図17Aの51に示すSP信号と、同図の52に示すSP信号で挟まれるデータ信号(同図の53参照)は、SP信号51およびSP信号52を用いた補間処理の対象となる。
シンボル補間によって補正されたデータ信号を図17Bに「四角」で示す。たとえば、SP信号51およびSP信号52で挟まれた3つのデータ信号53(図17A参照)は、シンボル補間によって補正されることで、擬似的なSP信号として用いることが可能な疑似SP信号となる(図17B参照)。同様に、キャリア方向についてシンボル方向補間処理が行われ、図17Bに示したように、すべての疑似SP信号が生成される。
このように、第1ノイズ除去部31_1は、シンボル補間部31cを用いてSP信号を擬似的に増加させる。これにより、シンボル補間処理を行わない場合よりも多くのSP信号を用いてノイズ除去処理を行うことができるため、ノイズ除去の精度を高めることができる。