(特徴1)第1の電極対は、外部から信号が入力される第1の信号電極と、第1の信号電極に間隔を空けて対向する第1の基準電極とを備えていてもよい。第2の電極対は、外部から信号が入力される第2の信号電極と、第2の信号電極に間隔を空けて対向する第2の基準電極とを備えていてもよい。第1の信号電極は、第2の信号電極と同一の形状を有していてもよい。第1の基準電極は、第2の基準電極と同一の形状を有していてもよい。第1の信号電極と第1の基準電極との間隔は、第2の信号電極と第2の基準電極との間隔に等しくてもよい。
(特徴3)本明細書では、さらに、上記のセンサ装置を備えるセンサシステムを開示する。このセンサシステムは、上記のいずれかのセンサ装置と信号供給装置と比較装置とを備えていてもよい。信号供給装置は、第1の電極対と第2の電極対とに信号を供給してもよい。比較装置は、信号供給装置から第1の電極対に信号が供給されている間の第1の電極対の静電容量に相関する第1の相関値と、信号供給装置から第2の電極対に信号が供給されている間の第2の電極対の静電容量に相関する第2の相関値とを比較して、比較結果を出力してもよい。
第1の相関値と第2の相関値とは、同一の特性に相関する値である。従って、第1の相関値と第2の相関値とは、正の相関がある。しかしながら、例えば、第1の電極対と第2の電極対の一方が破損している場合や第1の電極対と第2の電極対の一方に異物が付着している場合のように、液体の特性とは異なる要因によって、これら電極対の一方の静電容量が変化する場合がある。この場合、第1の相関値と第2の相関値との相関関係が崩れ、両者の相関係数は低くなる。この関係から、比較装置から出力される比較結果を用いて、第1の相関値と第2の相関値との一方が、液体の特性に相関していないことを判断することができる。これにより、液体の特性に相関していない相関値を用いて、液体の特性が検出されることを防止することができる。
(特徴5)本明細書では、さらに、上記のセンサ装置を備える他のセンサシステムを開示する。このセンサシステムは、上記のいずれかのセンサ装置と、センサ装置と接続され、センサ装置から出力される信号に基づいて液体の特性を特定する特定装置を備えていてもよい。特定装置は、センサ装置に信号を供給する信号供給部と、センサ装置の等価回路に対応する1又は複数の基準素子から構成される基準等価回路と、信号供給装置から基準等価回路に信号が供給されたときにその基準等価回路から出力される信号に基づいて、センサ装置から出力される信号を補正する演算部を備えていてもよい。
(特徴6)上記の特定装置は、センサ装置及び信号供給部に供給される電源の電圧を測定する電源電圧測定部と、特定装置の温度を測定する温度測定部をさらに備えていてもよい。そして、演算部は、電源電圧測定部で測定された電源電圧と、温度測定部で測定された温度に基づいて、センサ装置から出力される信号をさらに補正してもよい。
(第1実施例)
センサシステム2は、ガソリンとエタノールとの混合燃料を燃料とする自動車に搭載される。センサシステム2は、混合燃料中のエタノールの濃度を検出するために用いられる。図1に示すように、センサシステム2は、センサ装置10と特定装置50とを備える。
センサ装置10は、基板11と2個の電極対21,31とを備える。図1では、基板11の表面20と裏面30とが並べて記載されている。実際には、センサ装置10は、1個の基板11を備える。
電極対21は、基板11の表面20上に配置されている。電極対21は、信号電極22と基準電極24とを備える。信号電極22は、複数個(図1では8個)の横電極部分22a(なお、図1では1個の横電極部分22aのみに符号を付している)と、縦電極部分22bとを備える。縦電極部分22bは、基板11の長手方向(燃料タンクの深さ方向)に、直線状に伸びている。縦電極部分22bの上端は、基板11の上端に位置する。縦電極部分22bは、複数個の横電極部分22aの一方の端(図1の左側の端)に接続されている。これにより、複数個の横電極部分22aは、縦電極部分22bに電気的に接続される。複数個の横電極部分22aは、互いに平行に、かつ、縦電極部分22bに対して垂直に配置されている。複数個の横電極部分22aは、基板11の長手方向に等間隔に配置されている。
信号電極22の右側には、基準電極24が信号電極22に対応して配置されている。基準電極24は接地されている。基準電極24は、複数個(図1では8個)の横電極部分24a(なお、図1では1個の横電極部分24aのみに符号を付している)と、縦電極部分24bとを備える。縦電極部分24bは、基板11の長手方向に伸びている。縦電極部分24bの上端は、基板11の上端に位置する。縦電極部分24bは、複数個の横電極部分24aに接続されている。これにより、複数個の横電極部分24aは、縦電極部分24bに電気的に接続される。複数個の横電極部分24aは、互いに平行に、かつ、縦電極部分24bに対して垂直に配置されている。複数個の横電極部分24aは、基板11の長手方向に等間隔に配置されている。基板11の上端から下端に沿って見たときに、横電極部分22aと横電極部分24aとは、交互に配置されている。
電極対31は、基板11の裏面30上に配置されている。電極対31は、信号電極32と基準電極34とを備える。信号電極32は、複数個(図1では8個)の横電極部分32a(なお、図1では1個の横電極部分32aのみに符号を付している)と、縦電極部分32bとを備える。信号電極32は、信号電極22と同一形状を有する。また、信号電極32は、基板11を挟んで、信号電極22と同一の位置に位置している。基準電極34は、信号電極32に対応して配置されている。基準電極34は接地されている。基準電極34は、複数個(図1では8個)の横電極部分34a(なお、図1では1個の横電極部分34aのみに符号を付している)と、縦電極部分34bとを備える。基準電極34は、基準電極24と同一形状を有する。また、基準電極34は、基板11を挟んで、基準電極24と同一の位置に位置している。この構成では、信号電極32と基準電極34との間隔は、信号電極22と基準電極24との間隔に等しい。より詳細には、隣り合う横電極部分32aと横電極部分34aとの間隔は、隣り合う横電極部分22aと横電極部分24aとの間隔に等しい。従って、電極対21と電極対31とが同一の環境下に配置される場合(例えば燃料タンク内に配置されている場合)、通常では、電極対21の静電容量と電極対31の静電容量は等しくなる。なお、最も上方に位置する横電極部分22aは、最も上方に位置する横電極部分24aよりも上方に位置し、最も上方に位置する横電極部分32aは、最も上方に位置する横電極部分34aよりも上方に位置する。
特定装置50は、発振回路52と、2個の抵抗器R1,R2と、2個のスイッチS1,S2と、整流部56と、増幅部58と、演算部60と、温度検出部62とを備える。発振回路52は、予め決められた周期(例えば、10Hz〜3MHz)の信号(交流電圧)を発生する。
発振回路52は、抵抗器R1を介して、スイッチS1,S2のそれぞれに接続されている。スイッチS1,S2は、図示省略した制御部によって、ONとOFFに切り替えられる。スイッチS1がONの場合、信号電極22と発振回路52とは接続され、スイッチS1がOFFの場合、信号電極22と発振回路52とは接続されない。即ち、スイッチS1がONの間、発振回路52から信号電極22に、信号が供給される。スイッチS2がONの場合、信号電極32と発振回路52とは接続され、スイッチS2がOFFの場合、信号電極32と発振回路52とは接続されない。即ち、スイッチS2がONの間、発振回路52から信号電極32に、信号が供給される。
抵抗器R1と信号電極22,32との間には、整流部56が接続されている。整流部56には、信号電極22,32に供給される信号と同一の信号が入力される。整流部56は、入力された信号を整流して、増幅部58に出力する。増幅部58は、入力された信号を増幅して、演算部60(MCU)に出力する。
制御部は、スイッチS1,S2を制御することによって、センサシステム2を、第1の状態から第4の状態のいずれかの状態に切り替える。第1の状態では、スイッチS1はONであり、スイッチS2はOFFである。第1の状態では、発振回路52から信号電極22に信号が入力される。この結果、電極対21に電荷が蓄えられる。電極対21の静電容量は、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。抵抗器R1の抵抗値が一定であることから、エタノールの濃度に相関して、信号電極22に供給される信号の振幅が変化する。整流部56には、信号電極22に供給される信号と同一の信号が入力される。この結果、演算部60には、電極対21の静電容量に相関する信号が入力される。
第2の状態では、スイッチS1はOFFであり、スイッチS2はONである。第2の状態では、発振回路52から信号電極32に信号が供給される。この結果、電極対31に電荷が蓄えられる。電極対31の静電容量は、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。抵抗器R1の抵抗値が一定であることから、エタノールの濃度に相関して、信号電極32に供給される信号の振幅が変化する。整流部56には、信号電極32に供給される信号と同一の信号が入力される。この結果、演算部60には、電極対31の静電容量に相関する信号が入力される。
第3の状態では、スイッチS1とスイッチS2とが共にONである。第3の状態では、電極対21と電極対31とは並列に接続される。第3の状態では、発振回路52から信号電極22,32に信号が供給される。この結果、電極対21,31に電荷が蓄えられる。抵抗器R1の抵抗値が一定であることから、電極対21,31の静電容量は、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。このため、エタノールの濃度に相関して、信号電極22,32に供給される信号の振幅が変化する。整流部56には、信号電極22,32に供給される信号が入力される。この結果、演算部60には、電極対21の静電容量と電極対31の静電容量の和に相関する信号が入力される。
第4の状態では、スイッチS1とスイッチS2とは共にOFFである。第4の状態では、整流部56は、抵抗器R1と直列に接続される。この場合、電極対21,31には信号は供給されない。この結果、演算部60には、整流部56を介して、混合燃料中のエタノールの濃度によって変化しない信号を入力される。
制御部は、第1の状態から第4の状態まで、連続的に切り替える。また、制御部は、第1の状態から第4の状態までの切り替えを、繰り返し実行する。制御部は、センサシステム2の現在の状態を、演算部60に伝達する。
温度検出部62は、抵抗器R2を介して、例えば5Vの直流電圧を出力する直流電源54に接続されている。温度検出部62は、温度によって抵抗値が変化する測温抵抗体を備える。温度検出部62は、測温抵抗体を用いて混合燃料の温度を検出し、検出された混合燃料の温度を、演算部60に入力する。
第3の状態では、演算部60は、増幅部58から入力される信号と、温度検出部62から入力される混合燃料の温度と、を用いて、混合燃料中のエタノールの濃度を特定する。例えば、演算部60は、演算部60に記憶されている静電容量と混合燃料の温度とエタノールの濃度との関係を示すデータベースを用いて、混合燃料中のエタノールの濃度を特定する。第3の状態では、電極対21と電極対31とは並列に接続されている。この構成によれば、2個の電極対21,31の静電容量の和を用いて、エタノールの濃度を特定することができる。このため、電極対21と電極対31のうちの一方の静電容量を用いてエタノールの濃度を特定する構成と比較して、エタノールの濃度の変化に対する静電容量の変化を大きく(即ちセンサ装置10の感度を高く)することができる。このため、演算部60は、エタノールの濃度を適切に検出することができる。
また、電極対21,31の静電容量は、混合燃料の温度によって変化する。演算部60は、エタノールの濃度を検出する際に、混合燃料の温度を用いる。この構成によれば、演算部60は、混合燃料の温度による電極対21,31の静電容量の変化を補正することができる。このため、演算部60は、エタノールの濃度をより適切に検出することができる。なお、演算部60で検出されたエタノールの濃度は、ECU(Engine Control Unit)70に出力される。ECU70は、入力されたエタノールの濃度を用いて、インジェクタ等を制御する。即ち、ECU70は、演算部60で検出された適切なエタノールの濃度に基づいて、インジェクタ等を制御することができる。このため、エンジンに適切に混合燃料を供給することができる。
第1の状態において、演算部60に入力される信号(以下では、「第1の相関値」と呼ぶ)は、電極対21の静電容量に相関する。第2の状態において、演算部60に入力される信号(以下では、「第2の相関値」と呼ぶ)は、電極対31の静電容量に相関する。第1の状態において電極21に入力される信号と、第2の状態において電極31に入力される信号とは同一である。センサシステム2は、第1の状態から第2の状態に連続的に切り替えられる。即ち、演算部60には、第1の相関値と第2の相関値とが連続的に入力される。センサシステム2が正常に動作している状況では、連続的に入力される第1の相関値と第2の相関値は略等しくなる。
演算部60は、第1の相関値と第2の相関値とが連続して入力されると、入力された第1の相関値と第2の相関値とを比較する。第1の相関値と第2の相関値とが異なる場合とは、第1の相関値と第2の相関値との少なくとも一方の相関値は、混合燃料のエタノールの濃度に相関していない場合である。この場合、第1の相関値と第2の相関値との相関関係が崩れている。この場合、演算部60は、電極対21と電極対31の少なくとも一方の電極対に、破損、異物の付着等の不具合が発生していると判断する。この場合、演算部60は、電極対21と電極対31の少なくとも一方の電極対に不具合が発生していることを示す信号を、ECU70に出力する。この構成によれば、センサ装置10に不具合が発生していることを判断することができる。この結果、ECU70が、誤ったエタノールの濃度に基づいて各部を制御することを防止することができる。
演算部60は、センサシステム2が正常に動作している状況での第4の状態における演算部60に入力される信号の電圧値を記憶している。演算部60は、センサシステム2が第4の状態で入力される信号の電圧値と演算部60に記憶されている電圧値を比較する。演算部60は、入力される信号の電圧値と演算部60に記憶されている電圧値とが異なっている場合、センサシステム2に不具合(導線の破損、各部52,56,58の故障等)が発生していると判断する。この場合、演算部60は、センサシステム2に不具合が発生していることを示す信号を、ECU70に出力する。この構成によれば、センサ装置10以外のセンサシステム2に不具合が発生していることを判断することができる。この結果、ECU70が、誤ったエタノールの濃度に基づいて各部を制御することを防止することができる。
(第2実施例)
第1実施例と異なる点について主に説明する。図2に示すセンサシステム102は、センサシステム2と同様の各部52,56,58,60,S1,S2を備える一方、抵抗器R1,R2と温度検出部62とセンサ装置10を備えていない。センサシステム102は、さらに、スイッチS3とセンサ装置110と電流−電圧変換部155とを備える。
センサ装置110は、基板11と、2個の電極対21,131とを備える。図2では、図1と同様に、基板11の表面20と裏面30とが並べて記載されている。実際には、センサ装置110は、1個の基板11を備える。なお、電極対21の基準電極24は、電流−電圧変換部155を介して整流部56に接続されている。
電極対131は、基板11の裏面30上に配置されている。電極対131は、信号電極132と基準電極134とを備える。信号電極132の形状と基板11上の位置は、図1位の基準電極34の形状と基板11上の位置と同一である。基準電極134の形状と基板111上の位置は、図1の信号電極32の形状と基板11上の位置と同一である。この構成では、信号電極132と基準電極134との間隔は、信号電極22と基準電極24との間隔に等しい。なお、基準電極134は、電流−電圧変換部155を介して整流部56に接続されている。
発振回路52は、スイッチS1〜S3のそれぞれに接続されている。スイッチS1〜S3は、図示省略した制御部によって、ONとOFFに切り替えられる。スイッチS1がONの場合、信号電極22と発振回路52とは接続され、スイッチS1がOFFの場合、信号電極122と発振回路52とは接続されない。即ち、スイッチS1がONの間、発振回路52から信号電極22に、信号が供給される。スイッチS2がONの場合、信号電極132と発振回路52とは接続され、スイッチS2がOFFの場合、信号電極132と発振回路52とは接続されない。即ち、スイッチS2がONの間、発振回路52から信号電極132に、信号が供給される。スイッチS3がONの場合、電流−電圧変換部155と発振回路52とは直接(電極対21,131を介さずに)接続される。スイッチS3がOFFの場合、電流−電圧変換部155と発振回路52とは直接接続されない。即ち、スイッチS3がONの間、発振回路52から電流−電圧変換部155に、電極対21,131を介さずに信号が供給される。
制御部は、スイッチS1〜S3を制御することによって、センサシステム2を、第1の状態から第4の状態のいずれかの状態に切り替える。第1の状態では、スイッチS1はONであり、スイッチS2はOFFであり、スイッチS3はOFFである。第1の状態では、電極対21と電流−電圧変換部155とが直列に接続される。発振回路52から信号電極22に信号が供給されると、電極対21に電荷が蓄えられる。電極対21の静電容量は、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。電流−電圧変換部155の電流値は、電極対21の静電容量、即ち、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。電流−電圧変換部155は、電流−電圧変換部155の電流値を、信号(電圧値)に変換して、整流部56に出力する。従って、整流部56に入力される信号の電圧値は、電極対21の静電容量によって変化する。この結果、演算部60には、電極対21の静電容量に相関する信号が入力される。
第2の状態では、スイッチS1はOFFであり、スイッチS2はONであり、スイッチS3はOFFである。第2の状態では、電極対131と電流−電圧変換部155とが直列に接続される。発振回路52から信号電極132に信号が供給されると、電極対131に電荷が蓄えられる。電極対131の静電容量は、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。電流−電圧変換部155の電流値は、電極対131の静電容量、即ち、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。電流−電圧変換部155は、電流−電圧変換部155の電流値を、信号(電圧値)に変換して、整流部56に出力する。従って、整流部56に入力される信号の電圧値は、電極対131の静電容量によって変化する。この結果、演算部60には、電極対131の静電容量に相関する信号が入力される。
第3の状態では、スイッチS1とスイッチS2とが共にONであり、スイッチS3はOFFである。第3の状態では、電極対21と電極対131とは並列に接続され、電流−電圧変換部155に直列に接続される。発振回路52から信号電極22,132に信号が供給されると、電極対21,131に電荷が蓄えられる。電極対21,131の静電容量の和は、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。電流−電圧変換部155の電流値は、電極対21,131の静電容量、即ち、混合燃料中のエタノールの濃度と相関して変化する。従って、電流−電圧変換部155は、電流−電圧変換部155の電流値を、信号(電圧値)に変換して、整流部56に出力する。整流部56に入力される信号の電圧値は、電極対21,131の静電容量の和、即ち、エタノールの濃度と相関する。この結果、演算部60には、電エタノールの濃度と相関する信号が入力される。
第3の状態では、演算部60は、増幅部58から入力される信号を用いて、混合燃料中のエタノールの濃度を特定する。この構成では、センサシステム2と同様に、エタノールの濃度の変化に対する静電容量の変化を大きく(即ちセンサ装置110の感度を高く)することができる。このため、演算部60は、エタノールの濃度を適切に検出することができる。
第4の状態では、スイッチS1とスイッチS2とは共にOFFであり、スイッチS3はONである。第4の状態では、電流−電圧変換部155は、発振回路52に直接(電極対21,131を介さずに)接続され、電極対21,131には信号は入力されない。この結果、演算部60には、電流−電圧変換部155及び整流部56を介して、混合燃料中のエタノールの濃度によって変化しない信号を入力される。
制御部は、第1の状態から第4の状態まで、連続的に切り替える。また、制御部は、第1の状態から第4の状態までの切り替えを、繰り返し実行する。制御部は、センサシステム2の現在の状態を、演算部60に伝達する。
第1の状態において、演算部60に入力される信号(以下では、「第1の相関値」と呼ぶ)は、電極対21の静電容量に相関する。第2の状態において、演算部60に入力される信号(以下では、「第2の相関値」と呼ぶ)は、電極対131の静電容量に相関する。第1の状態において電極21に入力される信号と、第2の状態において電極131に入力される信号とは同一である。センサシステム102は、第1の状態から第2の状態に連続的に切り替えられる。即ち、演算部60には、第1の相関値と第2の相関値とが連続的に入力される。センサシステム102が正常に動作している状況では、連続的に入力される第1の相関値と第2の相関値は略等しくなる。
演算部60は、第1の相関値と第2の相関値とが連続して入力されると、入力された第1の相関値と第2の相関値とを比較する。第1の相関値と第2の相関値とが異なっている場合とは、第1の相関値と第2の相関値との少なくとも一方の相関値は、混合燃料のエタノールの濃度に相関していない場合である。この場合、演算部60は、電極対21と電極対131の少なくとも一方の電極対に、破損、異物の付着等の不具合が発生していると判断する。この構成によれば、センサシステム2と同様に、ECU70が、誤ったエタノールの濃度に基づいて各部を制御することを防止することができる。
また、演算部60は、センサシステム2が第4の状態で入力される信号の電圧値と演算部60に記憶されている電圧値を比較する。演算部60は、入力される信号の電圧値と演算部60に記憶されている電圧値とが異なっている場合、センサシステム2に不具合(導線の破損、各部52,56,58の故障等)が発生していると判断する。この場合、演算部60は、センサシステム102に不具合が発生していることを示す信号を、ECU70に出力する。この構成によれば、センサ装置110以外のセンサシステム102に不具合が発生していることを判断することができる。この結果、ECU70が、誤ったエタノールの濃度に基づいて各部を制御することを防止することができる。
(第3実施例)
第3実施例のセンサシステムについて、図3を参照して説明する。図3に示すように、第3実施例のセンサシステムは、液質センサ装置80aと、液位センサ装置80bと、これらセンサ装置80a,80bに接続された特定装置88を備えている。
液質センサ装置80aは、第1実施例のセンサ装置11と略同一の構成を有するが、混合燃料の温度を測定する温度測定部86aをさらに備えている点で相違する。すなわち、液質センサ装置80aは、混合燃料の液質(すなわち、混合燃料中のエタノール濃度)を測定する第1電極対82aと、混合燃料の液質(すなわち、混合燃料中のエタノール濃度)を測定する第2電極対84aと、混合燃料の温度を測定する温度測定部86aを備えている。第1電極対82aと第2電極対84aは、第1実施例のセンサ装置11の電極対21,31と同一の構成を有している。温度測定部86aは、サーミスタ等の抵抗式の感熱素子である。
上記の液質センサ装置80aは、混合燃料を貯留する燃料タンクの上面に配置されている。液質センサ装置80aは、ケース内に収容されており、このケースには、プレッシャーレギュレータからの余剰燃料が供給される。すなわち、燃料タンク内には、燃料タンク内の混合燃料をエンジンに供給するための燃料ポンプと、その燃料ポンプから吐出される混合燃料の圧力を調整するプレッシャーレギュレータが配置されている。プレッシャーレギュレータは液質センサ装置80aを収容するケースと配管で接続されており、プレッシャーレギュレータの余剰燃料が配管を通ってケース内に供給される。ケース内に供給された余剰燃料は、ケースに形成された排出口より燃料タンクに戻される。したがって、液質センサ装置80aは、ケース内に供給された余剰燃料と接触し、この余剰燃料の液質と温度を測定する。なお、燃料ポンプの作動が停止すると、液質センサ装置80aを収容するケースへの余剰燃料の供給が停止する。このため、ケース内の混合燃料は、排出口よりケース外に排出される。その結果、液質センサ装置80aは大気中に露出した状態となる。
液位センサ装置80bは、上述した液質センサ装置80aと同様の構成を備え、燃料タンク内の混合燃料の液位と温度を測定する。すなわち、液位センサ装置80bは、混合燃料の液位を測定する第1電極対82bと、混合燃料の液位を測定する第2電極対84bと、混合燃料の温度を測定する温度測定部86bを備えている。液位センサ装置80bは、燃料タンク内の混合燃料の液位を測定するため、燃料タンク内に配置されている。また、第1電極対82b及び第2電極対84bは、燃料タンクの低面の近傍から燃料タンクの上面の近傍の位置まで配置されている。
特定装置88は、液質センサ装置80aと液位センサ装置80bに接続され、これらのセンサ装置80a,80bが出力する信号が入力される。また、特定装置88は、図示しない外部電源及びエンジンECUに接続されている。特定装置88には、外部電源からの電力が供給される。特定装置88に供給された電力は、液質センサ装置80aの温度測定部86aに供給され、また、液位センサ装置80bの温度測定部86bに供給される。特定装置88は、発振回路98と、センサ出力選択部97と、センサ入力選択部91と、信号増幅部90と、入力選択部92と、ADコンバータ94と、演算部96と、基準等価回路100と、温度補償回路102を備えている。
発振回路98は、外部電源から供給される電力を用いて信号(交流電圧)を生成する。センサ出力選択部97は、発振回路98で生成される信号を出力する対象を選択する。すなわち、センサ出力選択部97は、液質センサ装置80aの電極対82a,84aと、液位センサ装置80bの電極対82b,84bと、基準等価回路100のいずれかに、発振回路98からの信号(交流電圧)を出力する。信号を出力する対象は、演算部96の指令に基づいて、センサ出力選択部97により選択される。センサ入力選択部91は、液質センサ装置80aの電極対82a,84aから出力される信号、液位センサ装置80bの電極対82b,84bから出力される信号、及び、基準等価回路100から出力される信号のいずれかを選択し、選択した信号を信号増幅部90に入力する。信号増幅部90は、センサ入力選択部91で選択された信号を増幅する。入力選択部92は、信号増幅部90から入力される信号と、液質センサ装置80aの温度測定部86aから入力される信号と、液位センサ装置80bの温度測定部86bから入力される信号のいずれかを選択し、選択した信号をADコンバータ94に出力する。ADコンバータ94は、入力選択部92から出力される信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。演算部96は、ADコンバータ94から入力する信号を処理することで混合燃料の液質及び液位を特定し、その特定した液質及び液位をエンジンECUに出力する。また、演算部96は、次に説明するように、基準等価回路100と温度補償回路102の出力を用いて、液質センサ装置80aから出力される信号と液位センサ装置80bから出力される信号を補正(校正)する処理を行う。
まず、基準等価回路100及び温度補償回路102について説明する。基準等価回路100は、基準容量100aと基準抵抗100bを備えている。基準容量100aと基準抵抗100bは、液質センサ装置80aの電極対82a,84aや、液位センサ装置80bの電極対82b,84bによって構成される回路(すなわち、RC回路)に対応する基準等価回路(RC回路)を構成する。基準等価回路100には、発振回路98の信号が入力される。基準等価回路100から出力される信号は、入力選択部92及びADコンバータ94を介して演算部96に入力される。
温度補償回路102は、回路温度測定部102aと電源電圧測定部102bを備えている。回路温度測定部102aは、サーミスタ等の抵抗素子であり、特定装置88の温度を測定する。電源電圧測定部102bは、液質センサ装置80aの温度測定部86a及び液位センサ装置80bの温度測定部86bに供給される電源の電圧を測定する。回路温度測定部102aから出力される信号(特定装置88の温度)と、電源電圧測定部102bから出力される信号は、入力選択部92及びADコンバータ94を介して演算部96に入力される。
次に、演算部96のセンサ出力補正処理を説明する。演算部96は、回路温度測定部102aから出力される信号(すなわち、特定装置88の温度)と、電源電圧測定部102bから出力される信号(すなわち、電源電圧)に基づいて、液質センサ装置80aから出力される信号と液位センサ装置80bから出力される信号を補正する。すなわち、特定装置88の温度が変化すると、発振回路98から出力される信号の周波数が変化する。液質センサ装置80a及び液位センサ装置80bに入力される信号の周波数が変化すると、液質センサ装置80aの電極対82a,84a及び液位センサ装置80bの電極対82b,84bから出力される信号が変化する。このため、演算部96は、特定装置88の温度に基づいて、電極対82a,84a,82b,84bから出力される信号を補正する。例えば、演算部96は、特定装置の温度に応じた補正係数を予め記憶しており、この補正係数を電極対82a,84a,82b,84bから出力される信号に乗じる。
また、液質センサ装置80a及び液位センサ装置80bの温度測定部86a,86bに供給する電源電圧が変化すると、温度測定部86a,86bから出力される信号の電圧が変化する。すなわち、温度測定部86a,86bは、抵抗体であるため、入力する電源の電圧が変化すると、出力する信号の電圧も変化する。このため、演算部96は、電源電圧に基づいて、温度測定部86a,86bから出力される信号の電圧を補正する。例えば、演算部96は、電源電圧に応じた補正係数を温度測定部86a,86bから出力される信号に乗じる。なお、演算部96は、温度測定部86aから出力される信号と、温度測定部86bから出力される信号が大きく相違している場合は、温度測定部86a,86bの少なくとも1つに故障が生じていると判断する。温度測定部86a,86bが故障した旨の信号は、演算部96より外部(エンジンECU等)に出力される。
さらに、演算部96は、基準等価回路100から出力される信号に基づいて、液質センサ装置80aの電極対82a,84a及び液位センサ装置80bの電極対82b,84bから出力される信号を補正する。すなわち、特定装置88の経年変化等によって発振回路98から出力される信号が変化する場合がある。発振回路98から出力される信号が変化すると、基準等価回路100から出力される信号及び電極対82a,84a,82b,84bから出力される信号が変化する。ここで、基準等価回路100の基準容量100aと基準抵抗100bは既知であることから、基準等価回路100に入力された信号の周波数等を特定することができる。したがって、演算部96は、基準等価回路100に入力された信号の周波数等を特定し、その特定した信号の周波数等に基づいて、電極対82a,84a,82b,84bから出力される信号を補正する。なお、演算部96は、電極対82aから出力される信号と、電極対84aから出力される信号が大きく相違している場合や、電極対82bから出力される信号と、電極対84bから出力される信号が大きく相違している場合は、電極対82a,84a,82b,84bに故障が生じていると判断する。電極対82a,84a,82b,84bが故障した旨の信号は、演算部96より外部(エンジンECU等)に出力される。
さらに、演算部96は、燃料ポンプ停止時において、液質センサ装置80aの電極対82a,84aから出力される信号に基づいて、液質センサ装置80aの電極対82a,84aから出力される信号を補正する。すなわち、燃料ポンプ停止時には、液質センサ装置80aを収容するケース内から混合燃料が排出され、液質センサ装置801の電極対82a,84aは大気に露出している。大気(空気)の誘電率は既知であることから、電極対82a,84aの静電容量を推定することができる。一方、液質センサ装置80aの個体差や、液質センサ装置80aの経年変化によって、液質センサ装置80aの静電容量が設計値からずれる場合がある。このような場合は、推定される電極対82a,84aの静電容量と、燃料ポンプ停止時に実際に測定される電極対82a,84aの静電容量とが相違することとなる。そこで、演算部96は、燃料ポンプ停止時に液質センサ装置80aの電極対82a,84aから出力される信号に基づいて、液質センサ装置80aの電極対82a,84aから出力される信号を補正するための補正係数を決定する。これによって、液質センサ装置80aの個体差や、液質センサ装置80aの経年変化による測定値のバラツキが修正される。
さらに、演算部96は、燃料タンクへ燃料を給油して満タンにした状態のときに、液位センサ装置80bの電極対82b,84bから出力される信号に基づいて、液位センサ装置80bの電極対82b,84bから出力される信号を補正する。すなわち、燃料タンクが満タンとされた状態では、液位センサ装置80bの電極対82b,84bの全てが燃料中に浸漬している。一方、液質センサ装置80aの出力から燃料の誘電率は特定することができるため、電極対82b,84bの静電容量を推定することができる。一方、液位センサ装置80bの個体差や、液位センサ装置80bの経年変化によって、液位センサ装置80bの静電容量が設計値からずれる場合がある。このような場合は、推定される電極対82b,84bの静電容量と、燃料満タン時に実際に測定される電極対82b,84bの静電容量とが相違することとなる。そこで、演算部96は、燃料満タン時に液位センサ装置80bの電極対82b,84bから出力される信号に基づいて、液位センサ装置80bの電極対82b,84bから出力される信号を補正するための補正係数を決定する。これによって、液位センサ装置80bの個体差や、液位センサ装置80bの経年変化による測定値のバラツキが修正される。
上記のように第3実施例のセンサシステムでは、各センサ装置80a,80bから出力される信号が補正されるため、燃料タンク内の燃料の液質と液位を精度よく測定することができる。また、センサ装置80a,80bの故障や、特定装置88の故障を自己診断することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
(変形例)
(1)上記の各実施例では、基板11の表裏面に設けられた2個の電極対21,31等は、発振回路52から信号が供給される場合に、同一の静電容量の電荷を蓄える。第1実施例では、電極対21の各電極22,24の形状が電極対31の各電極32,34の形状と同一であり、かつ、2個の電極22,24間の間隔は、2個の電極32,34間の間隔と等しい。しかしながら、基板の表面の電極対の静電容量は、基板の裏面の電極対の静電容量と同一でなくてもよい。この場合、基板の表面の電極対の静電容量と基板の裏面の電極対の静電容量とが相関(正の相関)するように、2個の電極対を設けてもよい。例えば、基板の表面の電極対の静電容量が、基板の裏面の電極対の静電容量の2倍になるように、2個の電極対を設けてもよい。この構成によれば、第1の相関値(基板の表面の電極対の静電容量に相関する値)が、第2の相関値(基板の裏面の電極対の静電容量相関する値)の略2倍でない場合、演算部60は、2個の電極対の少なくとも一方の電極対に、破損、異物の付着等の不具合が発生していると判断してもよい。
(2)上記の各実施例では、各電極対21等の静電容量は、混合燃料のエタノールの濃度に相関して変化する。しかしながら、各電極対の静電容量は、燃料の液位に相関して変化するように、電極対21等を設けてもよい。
(3)上記の各実施例では、演算部60は、第1の相関値と第2の相関値とを比較して、2個の電極対21,31等の少なくとも一方の電極対に、不具合が発生していると判断する。そして、演算部60は、2個の電極対21等の少なくとも一方の電極対に不具合が発生していることを示す信号を、ECU70に出力する。しかしながら、演算部60は、第1の相関値と第2の相関値とを比較して、比較結果を出力してもよい(例えば2個の相関値が等しい場合に「0」を出力し、異なっている場合に「1」を出力してもよい)。この場合、ECU70は、演算部60から入力される値に応じて、2個の電極対21等の少なくとも一方の電極対に、不具合が発生しているのか否かを判断してもよい。あるいは、ECU70は、演算部60から入力される値が「1」の場合にのみ、不具合を報知するランプを点灯させてもよい。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。