JP2013213239A - ステンレス鋼の酸洗方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、塩酸をベースとする酸液を用いて、ステンレス鋼の表面に生成されたスケールを除去したり、スマット付着がなく白色を成すようにするための酸洗方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のステンレス鋼の酸洗方法は、塩酸と過酸化水素からなる窒素レス、弗素レスの混合酸液を用いるとともに、前記酸液の真新しい新液にて酸洗処理する新液酸洗工程と、前記新液酸洗工程にて酸洗処理に使用された後の酸液である処理済酸液にて少なくとも1回以上前記処理済液酸洗工程を行うことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、スレンレス鋼の表面に生成された酸化スケールを除去し、スマットの付着の無い白色の外観を得るためのステンレス鋼の酸洗方法に関する。特に硝酸や弗酸のような酸洗後の廃液処理等のコストが多大に掛かる酸液を用いることなく、酸洗処理によりステンレス鋼を所望の表面状態に酸洗でき、かつ酸液を繰返し使用することによる酸洗力の低下があったとしても、酸洗後のステンレス鋼の表面状態に影響を及ぼさないよう容易に酸液管理することができる酸洗方法に関する。
ステンレス鋼は普通鋼に比べ優れた耐食性を有しており、その耐食性を活かして屋外の構造物においても多く使用されている。そのため、土木構造物として使用する際には、一般にステンレス鋼の表面を白色の外観に酸洗した状態で商流している。このステンレス鋼の製造工程において、熱間加工や熱処理工程を経るとステンレス鋼の表面には酸化スケール(以下、スケールという)と呼ばれる酸化層が生成されるが、酸洗処理をすることによりスケールを除去し、白色の外観を得ることができる。
ステンレス鋼のうち、丸棒や平鋼のようなステンレス鋼材については、機械研磨等の機械加工により容易にステンレス鋼の表面に生成されたスケールを除去することは、さほど問題にはならない。しかし、アングルやチャンネルといったステンレス形鋼や配管継手等の鍛造粗形部品等は、断面形状が複雑であるため、機械研磨等の機械加工で容易に、かつ完全にスケールを除去することは、技術面からもコスト面からも難しい。また機械研磨等の機械加工後のステンレス鋼の表面粗さが大きい場合には、表面に錆が生じやすくなるといった問題があり、錆を生じにくくするためには、かなり表面の表面粗さを滑らかにし、鏡面化する必要がある。
これに対し酸洗処理は、酸液をステンレス鋼の表面に生成されたスケールとステンレス鋼との隙間に浸透させ、スケールを鋼材表面から溶解や剥離により除去するためステンレス鋼の断面形状によらずステンレス鋼の表面のスケールを除去できるとともに、ステンレス鋼の表面を白色の外観にすることができ、しかも酸洗処理後のステンレス鋼の表面に生成される不働態被膜により、耐食性の低下も抑えられるといった効果もある。
また酸洗処理後のステンレス鋼の表面は、溶解により細かな凹凸断面を有する状態となるため、丸棒等の条鋼では、引抜加工前に潤滑性を高めるための前処理としても利用されている。このように、酸洗処理はステンレス形鋼や丸棒といった条鋼、さらには熱間鍛造品等の粗形部材を工業的に製造するうえで、非常に有用な工程であるといえる。
そこで、ステンレス鋼を酸洗するために、さまざまな酸液が提案されている。特に多く用いられているのは、硝酸と弗酸を混合した硝弗酸である。この硝弗酸は、酸洗力が強く、酸洗処理を繰り返すことによる劣化もしにくいうえ、酸洗後のステンレス鋼の表面における白色度にバラツキが少なく安定しているのが特徴である。
しかしながら、硝弗酸は、酸液としては優秀ではあるものの、硝酸根の窒素(N)を含有する。このため、廃水処理において大規模で複雑な設備が必要となり、かつ廃水中の窒素処理のための大量に薬品を要する。さらには、酸洗中に窒素酸化物のガスが生成するため、複雑な局所排気設備が必要となり、窒素酸化物の無害化のために大量の薬品を有する。
また硝弗酸は、使用済み酸液や酸洗工程から生じる洗浄水廃水にも窒素が含まれるため、廃水処理する際、弗酸に含まれる弗素(F)イオンを弗化カルシウムとして固定し汚泥として除去し、かつ埋め立て処理する必要がある。このように、硝弗酸を酸液として用いることは、環境にとって優しいとは言えない。また厳しい環境規制をクリアするにあたり、大規模な廃液設備と排気設備、そしてそれらを稼動し続けるためには多大な費用がかかるといった問題があった。よって、硝弗酸を用いることなく効率的に酸洗処理できる酸洗方法が求められていた。
そこで、硝弗酸に代わる酸液として、窒素(N)レスや弗素(F)レスであり、安価な塩酸をベースとする酸液が採用されている。塩酸ベースの酸液を用いてステンレス鋼を酸洗すると、ステンレス鋼の表面に生成したスケールが除去され、かつスマットの付着のない白色の表面を得ることができる。
しかし、塩酸をベースとする酸液の新液(酸洗していない未使用の状態をいう)でしばらくステンレス鋼の酸洗を繰り返すと、ステンレス鋼表面から溶解や剥離したスケールに含まれるCu成分が、イオンとして酸液中に溶け込み、Cuイオン濃度が上昇する。
このCuイオンは、ステンレス鋼とCuのイオン化傾向の差から、酸洗中にステンレス鋼表面に析出し、スマットとよばれる黒ずんだ茶褐色の酸洗不良部を形成する。ステンレス鋼は、意図的にCuを添加する場合以外においても、溶解に用いたスクラップ等に起因し、一般にCu成分を含有している。連続鋳造、圧延や熱処理といった製造工程において、ステンレス鋼表面にスケールが形成される際、イオン化傾向に示される様にFe成分やCr成分はCu成分よりも酸化しやすいため、優先的に酸化しスケールを形成する一方、取り残されたCu成分は、スケールと金属素地との境界界面や、スケール中にCu-Ni等の金属粒等の状態で濃化する。
この濃化したCuは、酸洗工程において、スケールと共に鋼材表面から除去されるが、その際Cu成分は酸液中にCuイオンとして溶出する。そのため、酸洗を繰り返すと酸液中のCuイオン濃度は高まり、鋼材表面に金属Cuとして析出しやすくなるため、酸洗処理後のステンレス鋼の表面はどんどん悪化する。このスマットは、Cuイオンが酸液に溶け込んだ後、再びステンレス鋼の表面に再付着することにより生じる黒ずみのような跡であり、一旦ステンレス鋼の表面に付着してしまうと、なかなか取れないのが特徴である。尚、スマットの付着は、鋼材の美観を損なうと共に、耐食性の面でも不具合を生じるため、容認できない。
このスマットの付着を除去しようとすると、異なる他の酸液(例えば、硫酸等)で除去するといった方法もあるが、酸液の種類を増やせばそれだけそれぞれの酸液を貯蔵するタンクやそれら酸液の濃度や温度等を管理する必要となり、新たな装置の設置や操業管理等を行うことになるため、作業上や管理上、複雑化を招いてしまう。よって、本発明者らは、塩酸ベースの酸液を使用するだけで酸洗できる方法を鋭意研究するに至った。
特開平8−158079号公報 特開2004−156073号公報
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、本発明者らは、塩酸をベースとする酸液を用い、かつ、ステンレス鋼の酸洗工程における仕上段階では前記酸液の新液を使用することで、熱間圧延や熱間鍛造後の表面に付着したスケールやスマットが確実に除去できると考えていたため、初期段階では、仕上酸洗工程で使用された後の酸液を回収し、酸洗に用いることで解決できるものと考えていた。
しかしながら、実験を繰返し行った結果、塩酸ベースの酸液では、スマットが一旦ステンレス鋼の表面に付着してしまうと、塩酸ベースとする酸液の新液を仕上酸洗工程で用いたとしてもそのスマットを除去することができないことを見出した。
さらに、本発明者らは、塩酸ベースからなる混合酸液の未使用の新液を仕上酸洗工程にではなく、スケール付着したステンレス鋼の最初の酸洗に用い、以降の酸洗工程には使用済の処理済酸液を用いて少なくとも1回以上酸洗を行えば、不完全な酸洗処理に伴うスマットの付着もなくスケール除去され、かつ所望する白色度も達成できることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、本発明者らは、上記課題を解決するために、廃液処理を厳しく規制され環境への影響も避けられない硝弗酸を使用して酸洗する代わりに、窒素(N)レスであり、かつ弗素(F)レスでもある酸液として安価な塩酸をベースとする酸液を用いること、さらに、塩酸ベースの酸液を用いてステンレス鋼の酸洗処理を継続して行う際に問題になるステンレス鋼中から溶け込むCuイオンの影響を極力抑えて、効率的に表面を酸洗することができる酸洗方法を提供するものである。
本発明は、塩酸と過酸化水素からなる混合酸液を用いるとともに、前記混合酸液の未使用の新液(酸洗に使用していない未使用の混合酸液をいう)により酸洗処理する新液酸洗工程と、前記新液酸洗工程にて酸洗処理に使用された後の混合酸液である処理済酸液にて、前記新液酸洗工程後に少なくとも1回以上処理済液酸洗工程とを行うことを特徴とするステンレス鋼の酸洗方法にある。
また本発明の他の態様は、前記処理済酸液は、前記処理済酸洗工程の一部又はすべてで、前記処理済酸液に過酸化水素を追酸した再生酸液を用いることを特徴とするステンレス鋼の酸洗方法にある。
さらに本発明の他の態様は、前記処理済酸洗工程は、処理済酸液にて酸洗処理するにあたり、後工程の処理済液酸洗工程ほど前記処理済酸液の塩酸濃度を低くすることを特徴とするステンレス鋼の酸洗方法にある。
なお追酸する過酸化水素は、酸洗工程における酸化剤としての役割を有し、この過酸化水素を適量添加することにより酸洗にて使用され劣化した酸液を活性化させるために用いる。ここでいう適量添加とは、処理するステンレス鋼を所望する表面状態にするために、ステンレス鋼の表面積に対して最低必要な酸液の量や酸液濃度、酸液温度等を随時調整して使用することができる。
前記したごとく、酸洗は、酸液をステンレス鋼の表面に生成されたスケールとステンレス鋼との隙間に浸透させ、スケールを鋼材表面から溶解や剥離により除去し、不働態皮膜に覆われた白色の外観を得る技術である。酸洗に用いられる酸液には、スケールの除去とスマット形成の抑制という、2つの異なる機能が要求され、それぞれ化学的な原理が異なる。
ここで、発明の構成をより詳細に説明するため、一般的な酸洗の化学的な原理をふまえ、発明に至った経緯を説明する。ステンレス鋼のスケールは、FeやCrの酸化物であるため、化学的に安定しており、スケールそのものを酸により全て溶解し除去するのは難しい。そこで、スケール除去を目的とした酸洗酸液は、スケールとステンレス鋼金属素地との間のCrが欠乏した金属素地界面を、酸により溶かすことでスケールを剥離し、鋼材表面から除去している。そのため、ステンレス鋼金属素地を溶解する力が強い酸が、酸液の成分として選択され、工業的にも入手しやすい塩酸や弗酸、硫酸といった酸が用いられている。
発明者は、ポテンショスタットを用いた電気化学的な測定結果から、塩酸がステンレス鋼を溶解する速度が速いことに着目し、塩酸をベースに酸洗方法を鋭意検討することにした。
しかし、検討を進めるうちに、塩酸をベースとする酸液は、スケールの除去には有効なものの、硝弗酸等既存の酸洗酸液と比較して、スマットが形成されやすいという重大な欠点を有していることが判明した。
スマットの形成は、酸液中に溶け込んだCuイオンが、FeやCrを主成分とするステンレス鋼とのイオン化傾向の差から、ステンレス鋼により還元され、ステンレス鋼の表面に金属Cuとして析出する化学反応に起因している。いわば、スマットは意図せずステンレス鋼表面に形成されたCuメッキというべきものである。
未使用の酸液においては、酸液にCuイオンは存在しないため、何ら問題は生じない。しかし、酸洗を繰り返すうちに、前述したようにスケールに覆われた鋼材からCuが溶出するため、酸液中にCuイオンが供給され、スマット形成の問題が生じる。
スマットの形成は、塩化銅の酸化還元電位を鑑みると、酸洗中のステンレス鋼の電位をある程度貴にすることで抑制できることが、容易に想像できる。そこで、発明者はポテンショスタットを用いた実験から、各種温度濃度の塩酸に対し、ステンレス鋼の電位を変化させ、スマットが付着せず、かつスケールも除去できる電位領域を見出した。さらに、その電位を実現するために必要となるステンレス鋼の酸化剤として過酸化水素を選択し、必要濃度も調べあげた。
塩酸濃度を高くするほど、ステンレス鋼は溶けやすくなるためスケールを除去しやすくなるが、スマットを形成しやすくなり、スマット形成を防ぐための酸化剤の量も増える。過酸化水素濃度を高くするとステンレス鋼が溶けにくくなるためスケールが残りやすくなると共に、過酸化水素自体が自己分解しやすくなる。そのため、各鋼種各温度において、良好な塩酸濃度、過酸化水素濃度が存在する。
この酸液の最適化は、同じ酸液を繰り返し用いて酸洗する場合、スマットの形成を遅らせる効果を示したが、遅らせているのみであり、酸洗を繰り返すうちに酸液中のCuイオン濃度は高まっていき、いずれはスマットが生成してしまう。
このように、発明者は酸液の温度・濃度の最適化に取り組んだものの、酸液が劣化していくことによりスマットが付着しやすくなり、品質が安定しない問題の根本的な解決には至らなかった。
この経験から、発明者は酸液をいくら改良しても、改善はするものの、ステンレス鋼からは各種イオンが溶出するため、繰り返し酸洗するうちに酸液の機能は低下してゆき、スマットの形成やスケール残りといった不具合がいずれ発現し、品質が不安定となる問題の根本的な解決には至らないとの認識を強くした。
そこで、酸洗の仕方に着目し、第一の発明を成し遂げた。以下に第一の発明に関し、その詳細を説明する。先ず、前述の繰り返しになるが、未使用の酸液を使用し、酸液を使い捨てれば、スケール残りやスマットの形成といった問題は発生しない。酸液を繰り返し使用するのは、コストや環境負荷の問題を緩和するためである。
そこで、酸液新液を使い捨てるのではあるのだが、鋼材を酸液に浸漬するのではなく、鋼材に酸液新液を噴霧等により供給して使い捨て、鋼材単位面積当たりの酸液の使用量を減らすことが容易に思いつく。しかし、この方法では、まだ酸洗能力がある酸液を捨ててしまうことになり、コストや環境負荷の問題を緩和効果は乏しく、工業的には難しさがあり、酸液を繰り返し使用することが求められる。
そこで、次に未使用の新液(酸洗に使用していない未使用の混合酸液をいう)により酸洗処理する新液酸洗工程と、前記新液酸洗工程にて酸洗処理に使用された後の混合酸液である処理済酸液にて、前記新液酸洗工程前に少なくとも1回以上処理済液酸洗工程とを行うことを特徴とするステンレス鋼の酸洗方法を発案し評価した。
発明者らは、一度酸洗に用いた酸洗能力の低下した酸液で予め酸洗し、最後に新液で仕上げれば、スケール残りやスマットの形成は生じないだろうと考えていた。しかし、実際にやってみると、最初は問題ないものの、鋼材を次々と酸洗するうちにスマットの形成が生じるようになった。
その原因を調査したところ、新液酸洗工程と、前記新液酸洗工程にて酸洗処理に使用された後の混合酸液である処理済酸液にて、前記新液酸洗工程前に少なくとも1回以上処理済液酸洗工程からなる構成では、前工程である処理済液酸洗工程において、鋼材のスケール状態等の原因によりスケール除去不足が生じると、後工程にてスケールを除去することになり、後工程の酸液は消耗する。その消耗した酸液は回収され、前工程で用いられるため、さらに前工程ではスケールを除去し難くなり、後工程の酸液は消耗する。このように、何本も鋼材を酸洗すると、得られる品質が不安定になる方向へフィードバックがかかるため、この構成は工業上のぞましくない。
ここで、発明者らは、塩酸と過酸化水素からなる酸液の持つ特徴に着目した。その特徴とは、塩酸濃度を高くするほど、ステンレス鋼は溶けやすくなるためスケールを除去しやすくなるが、一方でスマットを形成しやすくなり、スマット形成を防ぐための酸化剤の量も増える。過酸化水素濃度を高くするとステンレス鋼が溶けにくくなるためスケールが残りやすくなると共に、過酸化水素自体が自己分解しやすくなる。つまり、各鋼種各温度において、良好な塩酸濃度、過酸化水素濃度が存在することである。
これらの特徴に着目し、塩酸と過酸化水素からなる混合酸液を用いるとともに、前記混合酸液の未使用の新液(酸洗に使用していない未使用の混合酸液をいう)により酸洗処理する新液酸洗工程と、前記新液酸洗工程にて酸洗処理に使用された後の混合酸液である処理済酸液にて、前記新液酸洗工程後に少なくとも1回以上処理済液酸洗工程とを行う第一の発明を成し遂げた。
すなわち、酸洗処理した酸液を回収し、後工程で用いることで、鋼材の単位面積あたりに用いる新液の量を少なくすると共に、スマットが形成されない塩酸濃度と過酸化水素濃度を維持することで、品質を確保するものである。第一の発明では、酸洗を行うどの鋼材に対しても酸洗工程は、新液から始まるため、前工程においてスケール残りが生じても、その品質不良はその操業時点のみにて収束し、品質が不安定になる方向にフィードバックがかからない。そのため、工程が安定する。
第二の発明は、第一の発明を改良したもので、後工程で用いる酸液程、酸液中のCuイオン濃度が増加することに対応したものである。そのため何回も酸を回収し用いるためには、スマットの形成抑制のためには、必要に応じて適切な量の過酸化水素を追酸することが望ましい。
第三の発明は、第一の発明や第二の発明をさらに改良したもので、後工程ほど塩酸濃度を低くすることで、スマット形成を抑制するため必要となる過酸化水素の量を低減するものである。塩酸濃度が高い前工程でスケールの除去は進んでいるため、後工程においてはスケール除去性能を若干犠牲にし、Cuイオンの増加によるスマット形成を、より少ない過酸化水素添加量で抑制するものである。
第二の発明も第三の発明も、第一の発明と同様に、酸洗を行うどの鋼材に対しても酸洗工程は、新液から始まるため、前工程においてスケール残りが生じても、その品質不良はその操業時点のみにて収束し、品質が不安定になる方向にフィードバックがかからない。そのため、工程が安定する。
この第一から第三の発明により、鋼材単位面積あたりの酸液新液の使用量を低減し、かつ、スケール残りやスマットの形成といった品質不具合も無く、操業を繰り返しても品質が低下することがない酸洗が可能となった。
さらに、本発明に用いている塩酸と過酸化水素からなる酸液は、30℃前後での使用が可能であるため、温度調節に要するエネルギーも節約でき、設備の材質にも塩化ビニールが使用可能であるため安価に設備を設けることができ、窒素(N)フリー、弗素(F)フリーで、排ガス処理や廃酸処理もしやすいといった優れた特徴を有している。本発明は、この優れた酸液のもつ課題を、酸洗の構成を工夫することで解決し、工業的に適用可能とするものである。
本発明の酸洗方法によれば、熱間圧延や熱処理工程等を経たステンレス鋼の表面に生成したスケールを除去できるとともに、一旦付着したら塩酸の新液でも除去することが困難なスマットを付着させることなく、ステンレス鋼の表面を白色にすることができる。
また本発明に使用される酸液は、あくまで塩酸をベースとする酸液を終始使用する酸洗方法であるので、一旦付着すると塩酸ベースの酸液では除去しにくいスマットを除去するだけの目的で、他の酸洗液を用いるような他工程をわざわざ追加して酸洗処理する必要もなく、そのための他の酸洗液用の設備やその酸洗液の濃度や温度を管理する必要も生じない。
そのうえ、前記新液酸洗工程から前記処理済液酸洗工程へとステンレス鋼を酸洗処理する工程の流れに沿うように、酸液が上工程から下工程へ流れて酸洗処理する工程となっている。そのため、特許文献1及び特許文献2に記載されている公知技術のように処理済酸液を下工程から上工程へと導いたり、未使用の酸液を仕上工程で用いて、次工程の水洗工程へ流れ込んで無駄に捨ててしまったり、また下工程に上工程で酸洗に使用された酸液が流れ込まないようにするといった設備上の配慮や複雑な構成をとる必要がなく、酸洗設備の構造を簡単に設けることができる。
さらに、本発明の酸洗方法によれば、新液酸洗工程後のステンレス鋼の表面の酸洗状態が悪い(たとえば、ステンレス鋼の表面にスケール付着が厚くて取り除かれていない等)場合であっても、すぐさま上工程である新液酸洗工程への新液投入量を増やしたり、処理済酸液に酸化剤である過酸化水素を追酸した再生酸液を投入して、処理済液酸洗工程で使用する処理済酸液の濃度を高くする、あるいは処理済酸液を活性化させることが容易である。それは、本発明の酸洗方法の工程が、上工程から下工程へ流れて酸洗処理する工程となっているためであり、上工程の酸洗状態の変化に対し、下工程である処理済液酸洗工程の処理済酸液に必要な活性状態等を確保できるような構成になっていることによるところが大きい。
すなわち、下工程での処理済液酸洗工程における酸液の濃度や清浄度を変更するためには、上工程である新液酸洗工程における酸液の使用量を増量さえすれば、下工程である処理済液酸洗工程にて供給される酸液の濃度や清浄度が容易に変更できるのでという構成の利点があるため、ステンレス鋼の流れに沿って表面状態を見ながら、速やかに酸液の状態を最適に導くことができる。そのうえ、処理済液酸洗工程を複数回施すことで、ステンレス鋼の表面積あたりに使用する酸液の使用量を減らす構成にしたとしても、同様にステンレス鋼の表面状態に応じた酸洗状態をスピーディーに作り出すことができる。
したがって、本発明によれば、従来は硝酸や弗酸を用いた混合酸液を用い酸洗処理する方法であったため、発生する窒素(N)や弗素(F)を除去する廃液処理や排気処理を施す必要があったが、本発明の酸洗方法であれば、窒素(N)や弗素(F)を発生しない塩酸をベースとする安価な混合酸液を使用するため、環境にやさしく、かつ大規模な処理設備と費用を要しない。
またステンレス鋼の表面に生成したスケールを除去できるとともに、一旦付着したら新液でも除去することが困難なスマットを付着することなく、ステンレス鋼の表面を白色にすることができる。さらに、酸洗処理に使用する酸液を繰返し酸洗に使用することができる酸洗方法であるため、処理済液酸洗工程の回数を複数回行うことにより、ステンレス鋼の表面積あたりに必要な酸洗薬品量を減らしコストを低減することも可能である。
本発明の酸洗方法を用いた酸洗装置の構成を示す図である。 比較例1の酸洗方法の酸洗装置の構成を示す図である。 比較例2の酸洗方法の酸洗装置の構成を示す図である。
以下、本発明の各態様について具体的に説明する。本発明の酸洗方法を適用可能なステンレス鋼は、特に限定しないが、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS329J3Lにおいて特に適用が好ましい。尚、耐食性に優れるステンレス鋼程、高い塩酸濃度が必要となる。
本発明の酸洗方法に用いる酸液は塩酸と過酸化水素からなる混合酸液であるが、塩酸と過酸化水素のみを混合した酸液に他に、さらに、塩化ナトリウム等のアルカリ金属の塩化物やアルカリ土類金属の塩化物を添加してもよい。特に耐食性が高いステンレス鋼を酸洗する場合において、スケールの除去効果を高めるのに有効である。
本発明の酸洗方法は、塩酸ベースの混合液である未使用の新液や処理済酸液をステンレス鋼の表面に噴霧ノズルを用いて噴霧する方法の他、噴射、浸漬、かけ流し等の方法を用いてもよい。なおここでは、酸液に圧力をかけることなく霧状に吹きかけることを噴霧といい、酸液に圧力をかけて吹き付けることを噴射とする。上述のいずれの方法をとることができるが、噴霧する酸洗方法であれば、使用する酸液量を最小限に止めることができるためランニングコストの面で有利である。更なる酸洗の効果を必要とする場合(例えば、短時間に所望する場合等)は噴射や浸漬することによる柔軟な対応が可能である。
この酸洗方法を施す対象であるステンレス鋼の形状は限られるものではなく、棒線材や平材、形材のような形状の他、圧延や鍛造等による加工方法で製造されたステンレス鋼部材であっても適用できる。
前記新液酸洗工程で使用された混合酸液は、後工程の処理済液酸洗工程で処理済酸液として酸洗に使用することになる。そのため、処理済酸液中にはステンレス鋼を酸洗処理した際に溶け出すCuイオンを含んでおり、新液の状態に比べその酸洗効果は劣る。そこで、新液酸洗工程と1度の処理済酸洗工程で酸洗を施すだけで、ステンレス鋼の表面のスケールを除去し、所望の白色度を有する表面に酸洗処理できればいいが、酸洗されにくい高耐食ステンレス鋼への酸洗やスケール厚が大きい場合への酸洗に対し、所望する表面状態に至っていない場合が起こり得る。そのような場合は、処理済酸洗工程を複数回行い、所望する表面状態になるように適宜第2、第3の処理済酸洗工程を設けて使用薬品量を大きく増加させることなく表面積あたりの酸洗処理時間を増やすことができる。
本発明の酸洗方法における新液と処理済液の濃度及び温度は、酸洗処理する対象部材の鋼種や所望する酸洗後の表面状態、さらには表面の白色度の他、所望する酸洗時間等により条件は異なり、適宜調整可能である。
本発明の酸洗方法を施した後は、ステンレス鋼をそのまま放置したり、乾燥するといった方法もとることができるが、ステンレスの表面に付着した酸液の跡が残り、外観品質を良好に促したい場合には、酸洗後、湯洗や水洗をしたり、エアーで吹き飛ばしたり拭き取る等の方法により表面に付着した酸液を除去することができる。
また水洗や拭き取りの後、表面に残った僅かな酸液や水分をすばやく除去するために、乾燥を施すことができる。その際、空気の吹き付けることにより乾燥させる、ファンによる乾燥の他、ヒーター、バーナーを使った温度上昇による乾燥方法等、他の方法を用いることもできる。これらを施すことにより、ステンレス鋼の表面状態を良好にすることができるし、操業するうえで効率良く処理を施すことができる。
《実施例》
以下、実施例に基づいて本発明の酸洗方法を説明する。図1に示すように、本発明の酸洗処理を行うための酸洗装置1は、新液酸洗装置2と前記新液酸洗装置2に連なる処理済液酸洗装置3からなり、その後工程として、前記酸洗装置1に連続して水洗装置4、乾燥装置5に繋がる酸洗処理及び関連処理が行われるように構成されている。そして、その各装置間を連続して被処理部材90が順次搬送されるように、搬送ローラ群(80、81、82、83、84、85)を設けてある。
前記酸洗装置1の前方には、前工程から、酸洗処理するための被処理部材90が、搬送ローラ群80により、運ばれるように配置されている。この前記被処理部材90の表面には、前工程で行われた熱間加工や熱処理によりスケールが付着し、所謂、黒皮状態で運ばれる。
前記酸洗装置1の前記新液酸洗装置2には、酸液の主成分である塩酸11と酸化剤の過酸化水素12を所定の成分配合で混合し、かつ酸液を所定の濃度及び温度となるように管理する新液層10から新液13が図示しないポンプにより配管を介して供給されるようになっている。そして前記新液酸洗装置2内に供給された前記新液13は、前記新液酸洗装置2内の上下に配置された噴霧ノズル群71から搬送ローラ群81によって搬送ローラ上を搬送される被処理部材90に向かって噴霧され酸洗されるように構成されている。
本実施例では、被処理部材90に噴霧ノズルを用いて新液13を噴霧し酸洗する構成になっている。そして、前記新液酸洗装置2内で被処理部材91に噴霧され酸洗処理に用いられた酸液は、処理済液21として処理済液槽20に回収されるようになっている。
また前記処理済液酸洗装置3には、前記処理済液槽20に回収された処理済液21が混合される。そして、所定の濃度及び温度になるように管理された処理済液22として、図示しないポンプにより配管を介して前記処理済液酸洗装置3内に供給されるようになっている。前記処理済液22は、前記処理済液酸洗装置3内の上下に配置された噴霧ノズル群72から搬送ローラ群82によって搬送ローラ上を搬送される被処理部材91に向かって噴霧され酸洗されるように構成されている。そして、前記処理済液酸洗装置3で酸洗に使用された酸液は廃液41として廃棄されるように構成されている。
本実施例では、処理済液装置3での酸洗は1回の構成になっている。更に酸洗処理回数を増加して酸洗効果を得る必要が場合等においては、処理済液酸洗装置を複数配置し、最後の処理済液を廃液とするように構成することができる。このように前記処理済液酸洗装置3を複数配置する場合は、前記処理済液22が上工程側の処理済液装置から下工程側の処理済液酸洗装置へと使用されるよう構成されている。
また前記新液酸洗処理装置2と同様、前記処理済酸洗装置3内で行われる酸洗処理に、噴霧ノズルを用いて処理済液22を噴霧し酸洗する構成になっている。そして、前記酸洗装置1に連続して配置されている前記水洗装置4では、前記処理済液酸洗装置3内にて酸洗された被処理部材92が、搬送ローラ群83によって搬送ローラ上を搬送され、前記水洗装置4内で常温もしくは温水の水を噴霧する噴射ノズル群83にて被処理部材92の表面に付着した酸液やスケールを洗い落とすように構成されている。この前記水洗装置4内で水洗いに使用された水は、その後、廃水41となるように構成されている。
さらに前記水洗装置4の後方に連続して配置されている前記乾燥装置5では、前記水洗装置4にて水洗いされた被処理部材93の表面にエアーを吹き付けるエアーノズル群84が設けてあり、水洗いされた被処理部材93の表面に付着した水分を吹き飛ばし、被処理部材93の表面を早く乾燥させることができるように構成されている。
そして、前記乾燥装置5にて水分を除去された被処理部材95を次工程に運ぶための搬送ローラ群85が配置されている。なお前記搬送ローラ群(80、81、82、83、84、85)は、ローラによる被処理部材の搬送を行うように構成されているが、この方法による構成に限定されるものではなく、被処理部材を搬送できる構成であればよい。
したがって、本発明の酸洗方法による前記酸洗装置1は、前記被処理部材90が前記新液酸洗装置2に送られ、前記新液酸洗装置1内で塩酸11と過酸化水素12からなる未使用の混合酸液の新液13を噴霧される。これにより、噴霧された新液13により前記被処理部材90の表面に付着したスケールを溶かすとともに、スケール表面のワレ目やスケール表面と被処理部材90の金属素地間との隙間へ浸透し、被処理部材90の金属素地からスケールを剥離する。前記被処理部材90からスケールを剥離された前記被処理部材91は、次工程である前記処理済液酸洗装置3へと運ばれる。前記処理済液酸洗装置3では、前記新液酸洗工程2で使用された処理済液21を回収し、処理済液酸洗工程用の酸液として酸洗に使用される。
《比較例1》
本発明の比較例の酸洗方法を図2および図3を使って説明する。図2の比較例1の酸洗装置1aは、新液酸洗装置2aのみから構成されており、その後工程として、前記酸洗装置1aに連続して水洗装置4a、乾燥装置5aに繋がる酸洗処理及び関連処理が行われるように構成されている。そして、その各装置間を連続して被処理部材90aが順次搬送されるように、搬送ローラ群(80a、81a、82a、83a)を設けてある。
前記酸洗装置1aは、本発明の実施例と同様、塩酸11aと過酸化水素12aの混合酸液を所定の濃度及び温度となるように管理された新液槽10aから図示しないポンプにより配管を介して前記新液酸洗装置2a内に供給されるようになっている。そして供給された前記新液13aは、前記新液酸洗装置2a内の上下に配置された噴霧ノズル群71aから搬送ローラ群81aによって搬送ローラ上を搬送される被処理部材90aに向かって噴霧され酸洗されるように構成されている。そして、前記新液酸洗装置2aにて酸洗に使用された酸液は、廃液41aとして廃棄されるように構成されている。
次に前記酸洗装置1aに連続して配置されている前記水洗装置4aでは、本発明の実施例と同様、前記新液酸洗装置2a内にて酸洗された被処理部材91aが、搬送ローラ群81aによって搬送ローラ上を搬送され、前記水洗装置4a内で噴霧ノズル群83aから水を噴霧されて被処理部材91aの表面に付着した酸液やスケールを洗い落とすように構成されている。この前記水洗装置4a内で水洗いに使用された水は、その後、廃水41aとなるように構成されている。
次に前記水洗装置4aの下工程に連続して配置されている前記乾燥装置5aでは、前記水洗装置4aにて付着していた酸液やスケールを水洗いされた被処理部材93aの表面に空気を吹き付けるエアーノズル群84aが設けてある。これにより、水洗いされた被処理部材93aの表面に付着した水分を吹き飛ばし、被処理部材93aの表面を早く乾燥させることができるように構成されている。
このように、比較例1の酸洗方法は、前記被処理部材90aが、前記酸洗装置1aの前記新液酸洗装置2aに送られ、前記新液酸洗装置2a内で、塩酸11aと過酸化水素12aからなる混合酸液の新液13aを噴霧される。そして、前記酸洗装置1aにて酸洗に使用された酸液、すなわち処理済液は、そのまま廃液41aとして廃棄されて酸洗に使用されることがないように構成されている。
《比較例2》
図3の比較例2の酸洗装置1bは、処理済液酸洗装置3bと前記処理済液酸洗装置3bに連なる新液酸洗装置2bからなり、その後工程として、前記酸洗装置1bに連続して水洗装置4b、乾燥装置5bに繋がる酸洗処理及び関連処理が行われるように構成されている。そして、その各装置間を連続して被処理部材90bが順次搬送されるように、搬送ローラ群(80b、81b、82b、83b、84b、85b)を設けてある。
すなわち、比較例2の酸洗装置1bは、本発明の実施例の前記酸洗装置1の配置と比べ、前記新液酸洗装置と前記処理済液酸洗装置とが前後逆に配置している構成を有している。そのため、被処理部材90bは、前記酸洗装置1b内で前記処理済液酸洗装置3bにて処理済液にて酸洗された後、前記新液酸洗装置2bにて新液13bにて酸洗される。その他については、本発明と同様の構成になっている。
《評価》
次に図1に示す本発明の実施例と図2及び図3に示す比較例1および比較例2の酸洗方法を施した結果を説明する。なお本発明の実施例及び比較例に用いた被処理部材は、JIS規格に基づいて鋳造されたSUS304を母材に熱間圧延にて1辺100mm×厚さ6mmに加工され、熱処理(1030℃×5分保持)を施した後、表面にショット加工を施した黒皮部材を切断し、1辺100mm×厚さ6mm×長さ150mmの試験片を用いた。ここでは圧延材を用いたが、鍛造品を用いても良いことは言うまでもない。
また本発明の実施例及び比較例に使用される酸液は、濃度が7%の塩酸と2%の過酸化水素を混合した塩酸ベースの酸液を用いた。そして、前記酸液を30℃の液温で各酸洗工程合計が200秒の噴霧となるように調整し、酸液総量1ml/部材表面積cmで酸洗した。
このような各酸洗方法を用いて、上記SUS304の黒皮部材を試験片に施したところ、表1に示すような結果を得た。評価方法としては、試験片の酸洗後のスケール除去の有無(目視で確認しスケールが除去されていれば○、スケール付着が残っていれば×)、スマット付着の有無(目視で確認しスマット付着が無ければ○、スマット付着があれば×)、白色度の良否(目視で確認し鏡面光沢ではなく所望する白色度を有すれば○、満たなければ×、但し、スマット付着が認められた場合は、スマット付着部は白色ではないため評価対象から除外している。)、そして操業上の不可欠な薬品の費用を、鋼材面積辺りに用いた塩酸と過酸化水素の量と一般的な薬品価格から算出した指数(酸液を繰返し使用することによる酸液新液単位あたり酸洗処理量(処理面積)が大きければ、変動費指数は低下し○、小さければ変動費指数は増加し×)、で評価し表1に示す。
本発明の実施例によれば、表1に示すように酸洗回数を増やしても、ステンレス鋼の表面に付着しているスケールを除去できるとともにスマットの付着がなく、表面の白色度も良好な表面状態を得ることができる。また本発明の酸洗方法では、酸洗に使用する酸液の操業に伴う経費や設備費用、設備稼働や管理に生じる費用も抑えることができる。
比較例1の酸洗方法では、塩酸ベースの新液を用い新液酸洗装置内で酸洗することになるため、スケール除去、スマットの付着、白色度ともに評価は○を得ることができる。しかしながら、酸液は新液を1度使った後は廃液となるので、酸液コストが嵩むことになるため×となる。また実際には、多量の薬品および廃酸を取り扱うことになり装置が大型化するため、固定費の面でも不利である。
比較例2の酸洗方法では、最初の酸洗を処理済液を用い、仕上の酸洗に新液を用いる方法である。評価には、1辺100mm×厚さ6mm×長さ150mmの試験片を用いており、試験片を1コ酸洗するごとに1回目、2回目、3回目、4回目と記述した。尚、1回目においては、処理済液が存在しないため、前工程に使用する酸液も後工程と同様に新液である。2回目以降は、前回の後工程にて用いた処理済液を回収し、その回の前工程の酸液として使用した。
最初の1回目の試験片ではスケール除去、スマットの付着、白色度ともに評価は○を得ることができるものの、3回目以降の試験片にはスマットの付着が見られ、たとえ最初の処理済液に追酸したとしても、スマットの付着はなくなることはなかった。つまり、処理済液を酸洗の最初に用いると、前工程でのスケール除去に不具合があると後工程の酸液が想定以上に消耗し、消耗した酸液を回収して前工程に再度用いるため、スマットの形成の抑制ができなくなってゆく。したがって、3回目以降はスマットの付着では×となった。
酸液コストとしては、処理済酸液を用いることなく、新液のみでの酸洗方法によるため、1回の酸洗処理で確実にステンレス鋼の表面を良好に保つ必要があるため、新液を多量に使用するか、時間をかけて酸洗を行う必要があり、結果、トータルコストが高くなってしまう。すなわち、連続的な操業を考慮すると新液による酸洗処理を1回きりとして廃棄することは、現実的ではなく、到底操業として採用されるものではない。
このように、本発明のステンレス鋼部材の酸洗方法は、ステンレス形鋼や丸棒といった条鋼、さらには熱間鍛造品等の粗形部材を工業的に製造するうえで、スレンレス鋼特有の外観品質を要求される部材に使用することができる。
この酸洗方法によれば、ステンレス鋼部材のスケール付着やスマット付着、白色度などの表面状態を良好に施す酸洗方法として好適である。特に、硝酸や弗酸のような窒素(N)イオンや弗素(F)イオンを発生させないで、かつ安価な塩酸ベースの酸液を用いるため環境にも優しく、廃水処理や排気処理のために大規模設備を要しない酸洗方法として有用である。
しかも、本発明のステンレス鋼部材の酸洗方法は、酸洗装置としても小型化、簡略化できる構成を有しており、複雑な装置構成を必要としない点でも有利である。
Figure 2013213239
1、1a、1b 酸洗装置
2、2a、2b 新液酸洗装置
3、3b、3b 処理済液酸洗装置
4、4a、4b 水洗装置
5、5a、5b 乾燥装置
10 新液槽
11、11a 塩酸
12、12a 過酸化水素
13、13a、13b 新液
20 処理済液槽
21、22 処理済液
31 追酸
41、41a 廃液
71〜75 噴霧ノズル群
80〜85、83a、84a、80b〜85b 搬送ローラ群
90〜95、90a、91a、93a、90b 被処理部材

Claims (3)

  1. 塩酸と過酸化水素からなる混合酸液を用いるとともに前記混合酸液の未使用の新液により酸洗処理する新液酸洗工程と、
    前記新液酸洗工程にて使用された後の混合酸液である処理済酸液にて前記新液酸洗工程後に少なくとも1回以上処理済液酸洗工程と、
    を行うことを特徴とするステンレス鋼の酸洗方法。
  2. 請求項1において、
    前記処理済酸液は、前記処理済液酸洗工程の一部又はすべてで、前記処理済酸液に過酸化水素を追酸した再生酸液を用いることを特徴とするステンレス鋼の酸洗方法。
  3. 請求項1または2のいずれかにおいて、
    前記処理済酸洗工程は、少なくとも1回以上処理済酸液にて酸洗処理するにあたり、後工程の処理済液酸洗工程のほど前記処理済酸液の塩酸濃度を低くすることを特徴とするステンレス鋼の酸洗方法。
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