JP2013211639A - アンテナ及びそれを用いた移動体通信機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 通信する相手方向への指向性と通信距離を確保しながら、RW装置の通信面と成す角度によって通信が不可能となるのを防ぎ、複数の方向から通信可能とするアンテナとそれを用いた移動体通信機を得る。
【解決手段】 長軸と短軸を有する矩形状の鍔部に立設する胴部を備えた片鍔磁心と、前記片鍔磁心の胴部に巻回されたコイルと、前記片鍔磁心の鍔部側に広がって設けられた磁性シートを集磁部材とし、前記片鍔磁心の鍔部の一方の長手側面に面して磁性シートを設け、前記片鍔磁心に設けられたコイルの巻軸方向は、アンテナが収容される移動体通信機のディスプレイ装置又は入力キー装置が現れる主面と平行及び垂直以外の角度を成すアンテナ。
【選択図】 図1

Description

本発明は、携帯電話等の小型の無線通信装置に用いられる磁界誘導を用いた小電力無線通信:RFID(Radio Frequency Identification)用途のアンテナ装置であって、特には13.56MHzの通信周波数帯を利用した近距離通信規格:NFC(Near Field Communication)に対応した近距離無線通信用アンテナ装置に関する。
近距離無線通信を行うシステムとしては、例えば、ICカードシステムが広く知られている。図10は近接通信を行うシステム構成の一例を示すブロック図である。ICカードシステムにおいて、読み書き装置からトランスポンダへのデータ転送を例にその構成と動作を説明する。
読み書き装置であるリーダ/ライタ280(以下単にRW装置という)の近距離無線通信用アンテナ1aが電磁波を発生することにより、RW装置280の周囲に磁界が形成される。そこにトランスポンダとなるICカード285を近づけると、ICカード285内に設けられた近距離無線通信用アンテナ1bと磁界結合し、電磁誘導による電力伝送によって集積回路68は電源の供給を受けるとともに、RW装置280との間で予め設定されたプロトコル(例えばISO14443、15693、18092等)に従ってデータ伝送が行なわれる。
RW装置280は、半導体70とノイズフィルタ(第1フィルタ)71と整合回路72とローパスフィルタ(第2フィルタ)73を備える。半導体70には、送信回路、受信回路、変調回路、復調回路、コントローラ等を含むが図示していない。
アンテナ共振回路66は、近距離無線通信用アンテナ1a及び抵抗(図示せず)と、共振コンデンサ65を含む。アンテナ共振回路66の共振周波数は、通信に利用される固有の周波数(例えば13.56MHz)に設定され、前記周波数においてアンテナ共振回路66のインピーダンスの実部は実質的に短絡状態にある。アンテナ共振回路66はインピーダンス整合回路72を介して半導体70と接続される。
半導体70内の送信回路の変調回路と接続する出力端Txは、EMC対策用の第1フィルタ71を介して前記インピーダンス整合回路72と接続される。また半導体70内の受信回路の復調回路と接続する入力端Rxは、抵抗と直列に接続したキャパシタを備えた第2フィルタ73を介して、前記第1フィルタ71と前記インピーダンス整合回路72との接続点に接続する。
送信回路や受信回路はコントローラによって動作状態に制御される。送信回路には、発振器から同調周波数に対応する周波数(例えば13.56MHz)の信号が与えられ、所定のプロトコルに基づいて変調されてアンテナ共振回路66へ供給される。アンテナ共振回路66の近距離無線通信用アンテナ1aは、ICカード285の近距離無線通信用アンテナ1bと所定の結合係数にて磁気的に結合しており、ICカード285へ送信信号(搬送波信号)を送信する。また、ICカード285からの搬送波信号は、第2フィルタ73の抵抗によって抑圧された後に受信回路によって受信される。
この様なシステムに用いられる近距離無線通信用アンテナ(以下単にアンテナと呼ぶ)として、フレキシブル基板の面上に導線を螺旋状に巻回して螺旋状のコイルを配置したループアンテナや、磁心にコイルを配置したチップアンテナが用いられる。
近年、トランスポンダを携帯電話やスマートフォン等の移動体通信機に内蔵することが行われている。この様な形態において、トランスポンダとRW装置280とを通信させる場合、移動体通信機を手に持った状態でRW装置280の送受信面にかざして、アンテナどうしを対向させることが行われる。
図11に移動体通信機にアンテナを配置した状態を示す。アンテナ1を収容する移動体通信機は、通常、平板状の矩形に形成される場合が多く、ディスプレイ装置110又は入力キー装置115が現れる第1主面と、前記第1面と対向する第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを連接する側面を有し、アンテナを前記第2主面に近接するように筐体20内の基板30に配置される。
図12に通信時における移動体通信機とRW装置の位置関係を示す図である。ここで示すアンテナ1は、例えば円柱状の胴部11の周りにコイル13が巻回され、胴部11に連なる鍔部12を備えた片鍔磁心10で構成されたチップアンテナである。筐体20内に配置されたアンテナ1は、通信の際に、胴部11の自由端側がRW装置280の送受信面120へ向けられる。
RW装置280及びトランスポンダ100のアンテナは、通信時において互いのコイルの巻軸方向が一致するのが理想だが、移動体通信機100を手に持った状態でRW装置280の送受信面120にかざす場合には、移動体通信機100は送受信面120に対して幾らかの傾斜θ2をもって対向することとなる。この為、一方のコイルから他方のコイルに鎖交する磁束は、通常、理想状態よりも減少し、通信に十分な磁束をコイルに鎖交させることが難しくなる。それを補うようにアンテナは通信性能の向上が求められる。
通信性能の向上に対して、特許文献1には、コイルを巻設する磁心と集磁部材とを組み合わせて、通信性能を向上させることが開示される。図13に移動体通信機の内部に構成されたアンテナの断面図を示す。移動体通信機100の筐体20a、20b内の基板30に開孔を設け、そこに挿通された磁心10にコイル13を設け、磁心の端部が当接または近接する位置に、コイルの巻回方向に対してほぼ垂直に広がる集磁部材15a、15bを設けて、筐体20a、20bの厚み方向に通過するRW装置のアンテナからの磁束を集磁部材で集磁して、磁心を透過する磁束を増加させる。
特開2007−116609号
特許文献1のアンテナでは、磁心10の端部に、磁束透過方向に対してほぼ垂直に広がる集磁部材15a,15bを設けることによって、RW装置280のアンテナからの磁束を集磁し、磁心10を透過する磁束の磁束密度を高めて、アンテナ1の利得を高めようとする。
しかしながら、移動体通信機100を片手で持った状態で、通信する相手方のRW装置280の送受信面120にかざす場合に、前記送受信面120に対して移動体通信機100が傾斜して対向することによる、コイルに導入される磁束の低下による通信性能の劣化について課題認識は無い。
集磁部材15a,15bによって磁心10を透過する磁束が増えるが、開示された構成においてはコイル13の巻軸と直交する磁束に対しては集磁部材15a、15bによる集磁機能は得られず、磁心10にはコイル巻軸方向に透過する磁束がほとんど現れない為に受信できない。移動体通信機100とRW装置280との位置、角度が一定とならない場合に、方向によっては通信性能が劣化し、アンテナ1に起電力が発生しない角度が生じてしまう等、通信が不可能となる場合があった。
また集磁部材15a,15bが、磁心10の端部が当接または近接する位置に、磁束の透過方向に対してほぼ垂直に広がる様に設けられるが、移動体通信機100のトランスポンダ側からの送信時には、集磁部材15a,15bにより磁束の漏洩が抑えられてしまい、通信距離が減じられるという不都合もある。
更に特許文献1のアンテナでは、磁束透過方向を筐体の厚みと一致するように、基板30に穴をあけて磁心10を配置するが、基板30に配置される他の部品のための空間が減じられてしまう。また、磁心10の上下端に集磁部材15a、15bを設けるが、それらと、筐体20a,20b内の金属性部材との干渉が生じないように、磁束透過方向に金属性部材を避けて配置することや、金属性部材の一部を抜いて構成することが必要であった。
一般的な移動体通信機においては、通信可能とする方向が、通常、ディスプレイ装置や入力キー装置が現れる主面の反対面に限られている場合が多い。特許文献1のアンテナで示された態様であっても、通信回路と入力キー装置が設けられた主筐体とディスプレイ装置が設けられた副筐体を備えたクラムシェル型の移動体通信機(図示せず)では、通信可能な主面は移動体通信機の反対面の一面側に限定されてしまう。
移動体通信機の利用者からすれば、通信の度に通信可能な方向の確認が求められることはわずらわしく、利便性の向上のために、複数の方向から通信可能な移動体通信機が求められていた。
そこで本発明では、通信する相手方向への指向性と通信距離を確保しながら、RW装置の通信面と成す角度によって通信が不可能となるのを防ぎ、複数の方向から通信可能とするアンテナとそれを用いた移動体通信機を提供することを目的とする。
第1の発明は、長軸と短軸を有する矩形状の鍔部に立設する胴部を備えた片鍔磁心と、前記片鍔磁心の胴部に巻回されたコイルと、前記片鍔磁心の鍔部側に広がって設けられた磁性シートを集磁部材とするアンテナであって、前記片鍔磁心の鍔部の長手側面に面して磁性シートが設けられ、前記片鍔磁心に設けられたコイルの巻軸方向は、アンテナが収容される移動体通信機のディスプレイ装置又は入力キー装置が現れる主面と平行及び垂直以外の角度を成すことを特徴とするアンテナである。
本発明のアンテナでは、片鍔磁心は、移動体通信機の幅方向と片鍔磁心の鍔部の長軸方向を合わせ、短軸方向が移動体通信機の主面間を渡るように、かつ、胴部が移動体通信機の側面側に向かい、胴部に巻回されたコイルの巻軸の軸線が、移動体通信機の表裏主面間で規定される筐体の厚み方向とならない様に、片鍔磁心を傾けて筐体内部の端部側に配置される。
片鍔磁心の鍔部の長手の外縁に沿って設けられた集磁部材となる磁性シートは、移動体通信機の主面(ディスプレイ装置や入力キー装置が現れる面やその反対面)と面するように配置される。磁性シートは、片鍔磁心の鍔部の長手側面のそれぞれに面して設けるのが好ましい。また、それらは移動体通信機を構成する筐体等の剛体に貼り付けて固定するのが好ましい。この場合、磁性シートが成す面は剛体の形状に倣うものとなる。
この様な構成によって、移動体通信機に内蔵されたアンテナを用いたトランスポンダは、ディスプレイ装置や入力キー装置が現れる面、その反対面、及びそれらの面を繋ぐ側面において通信可能であって、トランスポンダとRW装置との位置、角度を一定とするのが難しい移動体通信機を手に持った状態での通信においても、送受信面と成す角度によって通信が不可能となるのを防ぎ、良好な通信を可能とする。移動体通信機はRW装置との対向方向の自由度が増すので、その利用者の使い勝手が向上する。
また、通信性能を向上させるには、アンテナに用いる磁心を大型化するのが好ましいが、その分、移動体通信機内での磁心の実装に大きな面積が必要となる。本発明によれば、鍔部を、その短軸方向が移動体通信機器の主面に向かう様に配置するので、基板に配置される他の部品のための空間が減じられるのを抑えることが出来る。また、磁心の長軸方向の長さを増しても、磁路断面積を前記空間の減少を抑えられ、磁心を透過する磁束を増加させることが出来る。
本発明においては、片鍔磁心の胴部は、鍔部とほぼ同じ形状の矩形状に形成されているのが好ましい。また、前記片鍔磁心の胴部の自由端側に傾斜面を有するのも好ましい。胴部の一部を傾斜面とすることで、磁束に対する指向性が増し、感度の向上を図ることが出来る。さらに本発明ではコイルの巻軸方向に集磁部材を有さないため、送信時における通信距離が減じられることもない。
第2の発明は、第1の発明のアンテナを筐体内に収めた移動体通信機であって、前記移動体通信機はディスプレイ装置又は入力キー装置が現れる第1主面と、前記第1面と対向する第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを連接する側面を有し、片鍔磁心の胴部を前記側面に近接させてアンテナを配置したことを特徴とする移動体通信機。
本発明によれば、通信する相手方向への指向性と通信距離を確保しながら、RW装置の送受信面と成す角度によって通信が不可能となるのを防ぎ、複数の方向から通信可能とするアンテナとそれを用いた移動体通信機を提供することが出来る。
また、アンテナは移動体通信機内において、磁心の実装において面積を必要とする鍔部を、その短軸方向が移動体通信機の主面に向かうように配置するので、基板に配置される他の部品のための空間の減少が少なくて済み、移動体通信機の大型化を防ぐこともできる。
本発明の一実施態様に係るアンテナの斜視図である。 本発明の一実施態様に係るアンテナに用いる磁心の斜視図である。 本発明の一実施態様に係るアンテナのa−a’断面図である。 本発明の一実施態様に係るアンテナを用いた移動体通信機の斜視図である。 本発明の一実施態様に係るアンテナを用いた移動体通信機のb−b’断面部分拡大図である。 本発明の他の実施態様に係るアンテナに用いる磁心の斜視図である。 本発明の一実施態様に係るアンテナの’断面図である。 通信時における移動体通信機とRW装置との位置関係を説明するための図である。 通信距離の評価システムを説明する為の図である。 近接通信を行うシステム構成の一例を示すブロック図である。 アンテナが配置された移動体通信機を説明するための透視図である。 通信時における移動体通信機とRW装置との位置関係を説明するための図である。 従来のアンテナを説明する為の断面部分拡大図である。
本発明のアンテナについて図面を用いて説明する。図1に本発明の一実施例に係るアンテナの外観斜視図を、図2に本発明の一実施例に係るアンテナに用いる片鍔磁心の外観斜視図を、図3に本発明の一実施例に係るアンテナのa−a’断面図を、図4に本発明のアンテナを用いた移動体通信機の外観斜視図を、図5に移動体通信機のb−b’断面の部分拡大図を示す。
このアンテナ1は、重なり方向の断面積が異なる胴部11と鍔部12を備えた片鍔磁心10と、胴部11に設けられたコイル13と、集磁部材15とを基本構成とする。前記集磁部材15は磁性シート15a、15bとして構成され、片鍔磁心10の鍔部12の側面の長軸方向に沿って磁性シート15a、15bが近接し、片鍔磁心10の胴部11とは反対側に広がって構成される。
片鍔磁心10は、コイル13の巻軸方向に見て長方形に形成される。その鍔部12の短軸方向が移動体通信機100の表裏面間を渡るように、かつ移動体通信機100のディスプレイ装置110又は入力キー装置115が現れる主面に対して傾斜して配置され、コイル13の巻軸200は前記主面と平行及び垂直以外の角度を成す。本実施態様における片鍔磁心10の鍔部12は、前記巻軸200と直交する平面16を有し、磁性シート15a,15bの面とが成す挟角θ1、θ1’は90°、180°含まず、磁性シート15a,15bに対しても前記コイル13の巻軸の軸線200が所定の角度をもって傾斜する。
前記アンテナの巻軸200の軸線の方向を移動体通信機100の筐体の主面と平行及び垂直以外の角度とし、更に片鍔磁心10の鍔部12の長手側面の少なくとも一方に面して磁性シートを配置することで、起電力が得られない角度が生じないようにしている。
図5に示す様に、集磁部材15として、片鍔磁心10の鍔部12の長軸方向であって、対向する2か所の側面に面して磁性シート15a、15bを設け、通信回路を構成する機能部品40を搭載する基板30を磁性シート15a、15bの間に配置する構成によれば、アンテナの集磁機能を更に高めて通信性能を向上することが出来、また機能部品40と干渉すること無く磁性シート15a、15bを配置することが出来る。
片鍔磁心10は Ni系フェライトやMn系フェライト等の焼結フェライトで構成されるのが好ましい。焼結フェライトコアは例えば、酸化第二鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を主成分とし、仮焼粉を粉末成形し、焼結して得られるものである。初透磁率μiは10(周波数100kHz)以上の磁気特性を有するのが好ましい。
片鍔磁心10は、予め胴部11と鍔部12を有する様に一体的に成形し、それを焼結して形成する場合や、焼結体を研削等の手段によって所定の形状に加工して片鍔磁心10とする場合がある。また、それぞれ別体として構成された鍔部12と胴部11をと接着剤で張り合わせて構成しても良い。
また、図6に示す他の態様の片鍔磁心の様に、胴部11の鍔部側と反対の自由端側に傾斜面14を設けるのも好ましい。図7に示すアンテナの断面図の様に、胴部11における自由端側の傾斜面14により、様々な角度からの磁束透過を向上させることが出来る。
片鍔磁心10の鍔部12の長軸方向の側面に近接して配置される磁性シート15a、15bは可撓性を備えるものであり、用いられる磁性体材料はNi系、Mn系、Li系などの軟磁性フェライト、Fe−Si系、Fe基やCo基のアモルファス系、超微結晶軟磁性材料などの磁性合金があげられる。前記磁性体材料で構成された磁性体部材が、粘着層によりポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムに支持されて磁性シートとして供される。
磁性体部材は複数の小片部に分かれて構成されていても良い。小片部は粘着層により保持され、磁性体部材がフェライト等の柔軟性を持たないセラミックで構成されても、容易に磁性シート自体に可撓性を付与することが出来る。
また、樹脂フィルムに支持された状態であれば、磁性体部材が脱落するのを防ぐことが出来、柔軟性を得ながら曲げの程度を抑制することも出来る。磁性シートを曲げると、隣り合う小片部の間に空間が形成され、磁気ギャップとなる。樹脂フィルムによれば小片部どうしの間隔が広がるのを制限するので集磁部材の透磁率の低下を防ぐことが出来る。好ましくは樹脂フィルムによって磁性体部材を挟み込む。
磁性シートの厚みは、用いる磁性体材料の透磁率等の磁気特性にも依るが、樹脂フィルム等を含めて50μm〜300μmであるのが好ましい。
磁性体材料として軟磁性フェライトを用いる場合、ドクターブレード法等の公知のシート化技術により得たグリーンシートを所定の形状に加工し、単層のままで焼結してシート状の磁性体部材とする。また複数層を積層して用いる場合もある。異なる軟磁性フェライトを用いたグリーンシートを積層して、磁気特性を異ならせて構成することもある。
また、グリーンシートにスリットや貫通孔、あるいは窪みなど設けておいて焼結後に小片に分割容易とする場合もある。磁性体部材を複数の小片で構成すれば柔軟性を付与することが出来るため、磁性シートの配置は平坦な面に限定されず、例えば曲面に倣って配置するなど、配置の自由度を増すことが出来るので好ましい。
なお小片の形状寸法は、磁性体部材の大きさや要求される変形能により、特に限定されず、不定形であっても構わない。なおスリットや貫通孔等の加工のし易さからすれば、0.5mm×0.5mm〜5mm×5mmの矩形状とするのが好ましい。
アモルファス系、超微結晶軟磁性材料などの磁性合金は、通常、リボン状で供せられるので、それを所定の形状のシートに加工して、単層、あるいは複数層に積層して磁性体部材とすることが出来る。この場合もシートに貫通孔、あるいは窪みなど設けておき、平面コイルと一体化した、しかる後に小片に分割してもよい。この場合は渦電流の発生を抑えて、アンテナの特性劣化を防ぐことが出来る。
また磁性材料を粉状あるいは薄片状として、樹脂やゴムに分散させた後にシート化して樹脂フィルムを用いずに磁性シートとしても良い。
コイル13は、巻回の中央部が空芯部となり、導線を巻径方向に拡径する螺旋状に、かつ巻軸方向には複数層となるように導線が巻回される場合や、円筒状に巻回する場合がある。コイル13に用いる導線は単線のエナメル線を用いるのが好ましく、融着力を持つオーバーコート(融着層)が形成されたエナメル線(自己融着線)がより好ましい。融着層は熱又は溶剤により活性化するものであり、コイル13を自己融着コイルとすることで組立工程における取り扱いが容易と成る。またその線径は30μm〜80μmであるのが好ましい。
実施例のアンテナは、図1等で示したものと略同じであるので、共通する部分については、その詳細な説明を省略する場合がある。
片鍔磁心10を構成する磁性材料は、Fe2O3;46.5mol%,ZnO;20.0mol%,NiO;22.5mol%,CuO;11.0mol%の組成であり、初透磁率が110であるNi系フェライトを用いた。
磁性材料を構成する素原料を準備し、焼成後に前記組成量となる様に調整された原料粉末を仮焼した粉末にバインダー等を加えた後、造粒し、成形して、断面が矩形で断面積の異なる部分が積み重なった成形体とした。この成形体を1100℃の温度で焼結した後、胴部の一端側と鍔部の一端側を砥石で研削して平坦として、図2で示した片鍔磁心10とした。鍔部12の厚みは1.15mm、胴部11の厚みは1.15mm、全体の厚みが2.3mmであり、鍔部12は長軸方向が14mm、短軸方向が7mm、胴部11は長軸方向が12mm、短軸方向が5mmである。
磁性シート15aとして片鍔磁心10と同じNi系フェライトを用いた。ドクターブレード法より得たグリーンシートを所定の形状に加工し、単層のままで焼結して長さ14mm、幅5mmで、厚みが0.16mmの平板状の磁性体部材とし、それを50μm厚みの樹脂フィルムに貼り付けて構成している。
片側磁心10の胴部11に、線径60μm(導体径50μ、被覆層厚み5μm)のエナメル線を用いた8ターンのコイル13を配置した。更に、片側磁心10の一方の長手側面に磁性シート15aを貼り付けて、コイル13の巻軸200と直交する平面16と、磁性シート15aの平面とが成す挟角θ1を90°、120°、135°としたアンテナ1を準備した。
得られたアンテナ1を、移動体通信機100の筐体20を模した試験治具内に収めて固定した。試験治具は所定の厚みを持った樹脂ケースで構成されており、樹脂ケースの平坦な内底面に磁性シート15aを、側面に片鍔磁心10を貼り付けて、アンテナ1を固定して評価試料とした。なお、樹脂ケースの内底面は、移動体通信機のディスプレイ装置又は入力キー装置が現れる主面と平行となる面である。したがって、前記挟角θ1が90°である場合には、コイル13の巻軸200の方向は前記主面と平行となる。θ1が120°のアンテナを実施例1、135°のアンテナを実施例2、θ1が90°のアンテナを比較例1とした。
また図11に示す様に、磁性シートを使用せず、アンテナ1を片鍔磁心10とコイル13とで構成し、片鍔磁心10の胴部11側を樹脂ケースの平坦な内底面に貼り付けて、コイル13の巻軸200の方向が、前記主面と垂直となる評価試料も作製した(比較例2)。
非接触データ通信に必要な信号処理回路および情報を格納したICチップ部品等の電気・電子部品を用いて構成されたNXP Semiconductor社製評価ボードで、図9に示す評価システムを構成し、得られた評価試料を評価した。
ここで、図8、図11で示した様に、移動体通信機100を模した評価試料をRW装置280の送受信面120に対して所定の角度θ2で傾けて通信を行なった。通信可能な距離を評価した結果を表1に示す。通信距離は送受信面120に最も近接するアンテナ1の部位と前記送受信面12との距離(単位;mm)で示す。
表中、通信不可として示した条件では、評価試料と送受信面を密接させても通信が行なえなかった。本発明によれば、角度θ2によって通信距離にばらつきはあるものの、通信が出来ない条件は無かった。
Figure 2013211639
次に、片側磁心10の両方の長手側面に磁性シート15a,15bを貼り付けてアンテナ1を準備した。他は実施例1等と同様にして評価試料を作製し通信可能な距離を評価した。結果を表2に示す。なお、挟角θ1とθ1’は図5で示した関係にある。挟角θ1、θ1’が90°の場合には、磁性シートを増やしても通信不可となる条件があった。一方、実施例の条件では通信距離が増加した。
Figure 2013211639
次に磁性シートを変えたアンテナを作製した。磁性シートに用いた磁性体部材の寸法は、A;長さ14mm、幅5mm、厚み0.16mm、B;長さ14mm、幅8mm、厚み0.16mm、C;長さ14mm、幅10mm、厚み0.16mm、D;長さ14mm、幅15mm、厚み0.16mmの4種類である。他は他の実施例と同じとして通信距離を評価した。結果を表3に示す。角度θ2が0°の場合、磁性シートの幅寸法が大きく、アンテナの鍔部側に広がる面積が大きくなると、通信距離の低下が生じた。他の角度では通信距離は増加した。
Figure 2013211639
1、1a、1b アンテナ
10 片鍔磁心
11 胴部
12 鍔部
13 コイル
15、15a、15b 集磁部材、磁性シート

Claims (5)

  1. 長軸と短軸を有する矩形状の鍔部に立設する胴部を備えた片鍔磁心と、前記片鍔磁心の胴部に巻回されたコイルと、前記片鍔磁心の鍔部側に広がって設けられた磁性シートを集磁部材とするアンテナであって、
    前記片鍔磁心の鍔部の一方の長手側面に面して磁性シートが設けられ、
    前記片鍔磁心に設けられたコイルの巻軸方向は、アンテナが収容される移動体通信機のディスプレイ装置又は入力キー装置が現れる主面と平行及び垂直以外の角度を成すことを特徴とするアンテナ。
  2. 請求項1に記載のアンテナであって、
    前記集磁部材として更に、前記鍔部の他の長手側面に面して設けられた他の磁性シートを備えたことを特徴とするアンテナ。
  3. 請求項1又は2に記載のアンテナであって、
    前記片鍔磁心の胴部は矩形状に形成されていることを特徴とするアンテナ。
  4. 請求項3に記載のアンテナであって、
    前記片鍔磁心の胴部の自由端に傾斜面を有することを特徴とするアンテナ。
  5. 請求項1乃至4に記載のアンテナを筐体内に収めた移動体通信機器であって、
    前記移動体通信機はディスプレイ装置又は入力キー装置が現れる第1主面と、前記第1面と対向する第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを連接する側面を有し、片鍔磁心の胴部を前記側面に近接させてアンテナを配置したことを特徴とする移動体通信機。

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