JP2013211372A - 電解コンデンサ用電解液 - Google Patents

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Abstract

【課題】エッチングされた陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻き回したコンデンサ素子に電解液を含浸し、ケース内に収納するアルミニウム電解コンデンサにおいて、高いリップル電流に対応して、比抵抗を低抵抗化するのに、電解液を製造中、ある程度水を添加しても、またはある程度水が生成しても、陽極箔の酸化膜と水とが反応する水和劣化とそれに伴う漏れ電流の増大を抑制して、高リップル対応で高温対応の長寿命のコンデンサを得ることを目的としている。
【解決手段】本発明は、多価アルコール類を主溶媒し、長鎖のカルボン酸とホウ酸を含む酸を溶質とする電解コンデンサ用電解液において、有機ホスホン酸部分とカルボン酸部分とを有している有機ホスホン酸またはそのアンモニウム塩の少なくとも一種類を添加した電解コンデンサ用電解液を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、電解コンデンサ用電解液に関するものである。特に、アルミニウム電解コンデンサ電解コンデンサ用電解液に関するものである。
アルミニウム電解コンデンサは、表面をエッチング処理し化成による酸化膜を形成した陽極箔と、表面をエッチング処理し酸化膜を形成しない、あるいは低圧化成による酸化膜を形成した陰極箔とを電解紙等のセパレータを介して巻き回したコンデンサ素子に電解液を含浸し、このコンデンサ素子をケース内に収納後、陽極箔および陰極箔から引き出した引き出しリードタブを、蓋を貫通する外部端子にそれぞれ接続し、蓋をケースに取り付けて密閉した構造になっている。
ところで、従来、コンデンサ素子に含浸する電解液は、例えば、エチレングリコール等の多価アルコールを主成分とする溶媒に、ホウ酸、高級ジカルボン酸等を溶解した成分を用いていた。
ホウ酸を溶質とする電解液は、高級二塩基酸としてアゼライン酸やセバシン酸、1,6―デカンジカルボン酸、ドデカンニ酸、7−ビニル-ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸等を溶解した電解液を用いた場合に比べ、火花電圧を比較的高くとれる、つまり使用電圧が高くとれる。しかし、比抵抗が大きいだけではなく、その分子内の結晶水とエチレングリコールとホウ酸とで起こるエステル化反応によって多量の水が発生する。このため、アルミニウム電解コンデンサは、90℃を越えるような高温状態で使用すると、エステル化反応によって発生した水と陽極箔の酸化膜とが反応して水和劣化し漏れ電流が増大し、主として水の電気分解により生じた水素ガスが多量に発生し、ケース内の圧力が容易に上昇し、蓋やケースに設けた防爆機構が比較的早い時期に作動し、寿命が短い欠点があった。
そのため、電解液にリン酸を添加して水和劣化を抑える方法が行われてきているが、完全ではなく、
特許文献1のように、リン酸を縮重合したり、特許文献2のように、電解液にリン酸のほか多糖類を添加したりして、電解液中の水と陽極箔の酸化膜との反応を抑制する方法が記載されている。
特開平06−151253号公報 特開平07−240350号公報
特に最近の電子機器等に用いる電源は、小型化設計のため、その電源に使用されるアルミニウム電解コンデンサに、高いリップル電流を流すようになり、この高いリップル電流により、アルミニウム電解コンデンサが発熱し、高温状態になりやすい。この発熱を押さえるために、電解液の比抵抗を低抵抗化するのが好ましいが、低抵抗化するのに電解液に水を添加すると、上記と同様に、陽極箔の酸化膜と水とが反応して水和劣化し、漏れ電流が増大してしまう。
また、低抵抗化に寄与するとして電解液に添加される1,6―デカンジカルボン酸、ドデカンニ酸、7−ビニル-ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸などの長鎖のカルボン酸は、疎水性が高く、水和劣化した酸化皮膜と結合し、容量減少やtanδ(誘電正接)の増大を生じやすい。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、高いリップル電流に対応して、比抵抗を低抵抗化するのに、加える長鎖のカルボン酸のほか、電解液を製造中、ある程度水を添加しても、またはある程度水が生成しても、陽極箔の酸化膜と水とが反応する水和劣化とそれに伴う漏れ電流の増大を抑制して、高リップル対応で高温対応の長寿命の中高圧用コンデンサを得ることを目的としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、下記の電解コンデンサ用電解液を提供するものである。
(1)多価アルコール類を主溶媒し、長鎖のカルボン酸とホウ酸を含む酸を溶質とする電解コンデンサ用電解液において、有機ホスホン酸部分とカルボン酸部分とを有している有機ホスホン酸またはそのアンモニウム塩の少なくとも一種類を添加した電解コンデンサ用電解液。
(2)多価アルコール類を主溶媒し、長鎖のカルボン酸とホウ酸を含む酸を溶質とする電解コンデンサ用電解液において、ホスホノ酢酸、ホスホノプロピオン酸、ホスホノヘプタン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ヒドロキシメチルホスホノ酢酸、ヒドロキシブチルホスホノ酢酸、ホスホノヒドロキシ酪酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ホスホノエタンジカルボン酸、アミノホスホノ酢酸、アミノメチルホスホノ酢酸またはそのアンモニウム塩の少なくとも一種類を添加した電解コンデンサ用電解液を提供するものである。
本発明は、電解コンデンサ用電解液に添加される有機ホスホン酸は、有機ホスホン酸部分と、カルボン酸部分とを有している。そして、そのカルボン酸部分では、長鎖ではないので親水性が良好で、電解液に添加される長鎖のカルボン酸が水和劣化した酸化皮膜と結合するのを妨害し、それによって容量減少やtanδ(誘電正接)の増大を抑制しやすい。また、その有機ホスホン酸部分では、陽極箔の酸化膜と水とが反応する水和劣化とそれに伴う漏れ電流の増大を抑制して、高リップル対応で高温対応の長寿命の中高圧用コンデンサを得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に述べる電解液は、主に溶媒と溶質とからなる。
溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどの多価アルコール類のほか、β―ブチロラクトン、γ―ブチロラクトン、δ―バレロラクトン、γ―カプロラクトン、ε―カプロラクトン、γ―ヘプタラクトン、γ―ノナラクトン、δ―ノナラクトン、δ―デカラクトン、γ―ウンデカラクトンなどのラクトン類も用いることができる。これらの溶媒は単独もしくは混合して用いることができる。
溶質としては、ホウ酸、アゼライン酸、2−メチルアゼライン酸、3−tert−オクチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、7−ビニル-ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸、カプリル酸等のカルボン酸またはそれらのアンモニウム塩等のほか、ジエチルアミン、トリエチルアミン、マンニトール、ソルビトール、ポリビニルアルコールなどを含め一種以上を溶解して用いることができる。
さらに、有機ホスホン酸またはそのアンモニウム塩として、有機ホスホン酸部分とカルボン酸部分とを有しているものを少なくとも一種類を溶解する。
有機ホスホン酸部分とカルボン酸部分とを有している有機ホスホン酸の例として、たとえば、ホスホノ酢酸、ホスホノプロピオン酸、ホスホノヘプタン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ヒドロキシメチルホスホノ酢酸、ヒドロキシブチルホスホノ酢酸、ホスホノヒドロキシ酪酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ホスホノエタンジカルボン酸、アミノホスホノ酢酸、アミノメチルホスホノ酢酸等が使用できる。
これらの有機ホスホン酸またはそのアンモニウム塩の溶解量は、0.01〜3wt%の範囲が好ましく、特に0.1〜2wt%の範囲が良好なコンデンサ特性が得られ望ましい。溶解量が0.01wt%未満では、水和防止を改善する効果が少ない。溶解量が3wt%を越える場合には、効果が飽和する上に溶媒に溶解しにくくなる場合がある。
本発明の電解液の調合は、前記の溶媒に前記の溶質さらに本発明の有機ホスホン酸またはそのアンモニウム塩を溶解して130℃付近まで加熱し、常温まで冷却後、攪拌しながらアンモニアガスを通すか、または、アミンを添加して電解液のpHを6〜7付近に調整する。
(電解液の作製)
まず、実施例について、溶媒としては、エチレングリコールを使用し、溶質としては1,6−デカンジカルボン酸6wt%、ドデカンニ酸1wt%、ホウ酸アンモニウム3wt%、ポリビニルアルコール2wt%、マンニトール5wt%に、表1に示す有機ホスホン酸またはそのアンモニウム塩を添加した。この有機ホスホン酸またはそのアンモニウム塩とエチレングリコールとで残り83wt%となるようエチレングリコールを調節した。
また、合わせてそれらを添加しないものを比較例として、電解液を調合した。なお各電解液のpHは約6.5とした。また、この表1に示す電解液について、液温30℃での比抵抗と液温105℃での火花発生電圧を測定し、合わせて表1に示した。
Figure 2013211372
表1より、実施例は比較例と比べて、比抵抗、火花発生電圧とも同等の結果を得た。
(コンデンサの作成)
陽極箔としては、純度99.9%、厚さ100μmのアルミニウム箔の表面をエッチングする。エッチング後、陽極箔を700Vの電圧で化成し、陽極箔を得た。この陽極箔と陰極箔とを電解紙の間に挟み、巻回して、500V−330μFのコンデンサ素子を作成した。また、そして、用意した電解液をコンデンサ素子に含浸し、アルミニウムケースに入れて封口し、次に、85℃で、3時間、530V印加して、再化成して、アルミニウム電解コンデンサを作成した。
試料数は各40個とした。コンデンサの初期特性および105℃雰囲気中での高温負荷試験3,000時間後の、20℃の雰囲気中で24h放置後における静電容量、tanδおよび漏れ電流を測定し、その平均値を表2に示す。
Figure 2013211372
表2から明らかな通り、実施例は、3,000h後も、容量変化率、tanδ、漏れ電流とも比較例と比べて安定した特性を示しており、発明の効果が大きいことがわかる。

Claims (2)

  1. 多価アルコール類を主溶媒し、長鎖のカルボン酸とホウ酸を含む酸を溶質とする電解コンデンサ用電解液において、有機ホスホン酸部分とカルボン酸部分とを有している有機ホスホン酸またはそのアンモニウム塩の少なくとも一種類を添加した電解コンデンサ用電解液。
  2. 多価アルコール類を主溶媒し、長鎖のカルボン酸とホウ酸を含む酸を溶質とする電解コンデンサ用電解液において、ホスホノ酢酸、ホスホノプロピオン酸、ホスホノヘプタン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ヒドロキシメチルホスホノ酢酸、ヒドロキシブチルホスホノ酢酸、ホスホノヒドロキシ酪酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ホスホノエタンジカルボン酸、アミノホスホノ酢酸、アミノメチルホスホノ酢酸またはそのアンモニウム塩の少なくとも一種類を添加した電解コンデンサ用電解液。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN117476368A (zh) * 2023-11-24 2024-01-30 深圳市东联发科技有限公司 一种具有高稳定性和长寿命的铝电解电容器

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