JP2013208990A - 動力伝達装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】大型化を抑制しつつ簡易な構造で車速のアシスト領域を向上させることができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】前輪側を駆動する主駆動系3とは別に後輪側を駆動する副駆動系5に用いられる動力伝達装置5において、動力伝達装置5が、容量の同じ2つの電動モータ7,9と、この2つの電動モータ7,9から出力された駆動力を減速させる減速機構11と、この減速機構11で減速された駆動力が入力される分配機構13と、電動モータ7,9と出力軸19,21との間に設けられたクラッチ機構23とを有した。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両に適用される動力伝達装置に関する。
従来、動力伝達装置としては、前輪側を原動機で駆動する主駆動系と、後輪側を駆動する副駆動系とを備え、副駆動系が、電動モータと、減速機構と、分配機構としての差動機構と、出力軸としての後車軸と、減速機構と差動機構との間に設けられ減速機構と差動機構との間に伝達される動力を断続するクラッチ機構とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この動力伝達装置では、車両の発進(0km/h)から30km/h程度までの発進低車速領域において、電動モータを駆動して作動される。このように車両の低速領域において、副駆動系を作動して車両の主駆動系による駆動をアシストすることにより、車両の発進をスムーズに行うことができる。
特開2006−189064号公報
ところで、上記特許文献1のような動力伝達装置では、車両の発進(0km/h)から30km/h程度までの発進低車速領域において、副駆動系を電動モータのみによって作動させ、車両の主駆動系による走行を安定してアシストすることができる。
しかしながら、車両の低速領域でも、電動モータで駆動される副駆動系のアシストが解除された後の30km/hから、日常一般路走行車速領域として例えば60km/h程度までの車速領域では、主駆動系による駆動車両の走行が依然として不安定となる場合が生じていた。
このため、動力伝達装置による日常一般路走行車速領域をアシストすべく、電動モータの出力を上げるために、電動モータの容量を増やすことが考えられるが、電動モータの容量を増やそうとすると、電動モータ自体と、電動モータ周辺の取付構造などを大幅に大型化する必要があった。
そこで、この発明は、大型化を抑制しつつ簡易な構造で車速のアシスト領域を向上させることができる動力伝達装置の提供を目的としている。
本発明は、前後車輪の一方側を駆動する主駆動系とは別に前後車輪の他方側を駆動する副駆動系に用いられる動力伝達装置であって、前記動力伝達装置は、容量の同じ2つの電動モータと、この2つの電動モータから出力された駆動力を減速させる減速機構と、この減速機構で減速された駆動力が入力される分配機構と、前記電動モータと出力軸との間に設けられたクラッチ機構とを有することを特徴とする。
この動力伝達装置では、副駆動系が容量の同じ2つの電動モータを有するので、1つの電動モータを大型化させることなく、電動モータの出力を増加させることができ、簡易な構造でありながら装置の大型化を抑制することができる。
また、2つの電動モータを有するので、減速機構のギヤ比を小さくしても、車両の発進に必要な出力(左右車軸の駆動トルク)を十分に得ることができ、車両の発進から車両の走行を安定してアシストできる車速領域を拡大することができる。
従って、このような動力伝達装置では、容量の同じ2つの電動モータを有するので、装置の大型化を抑制しつつ、車速のアシスト領域を向上させることができる。
本発明によれば、大型化を抑制しつつ簡易な構造で車速のアシスト領域を向上させることができる動力伝達装置を提供することができるという効果を奏する。
本発明の実施の形態に係る動力伝達装置が適用された車両の動力系を示す概略図である。 本発明の実施の形態に係る動力伝達装置の断面図である。 (a)本発明の実施の形態に係る動力伝達装置の電動モータを組付ける前の側面図である。(b)は本発明の実施の形態に係る動力伝達装置の電動モータを組付けたときの側面図である。 本発明の実施の形態に係る動力伝達装置の車速に対するトルク変化と、比較例としての動力伝達装置の車速に対するトルク変化とを示す図である。
図1〜図4を用いて本実施の形態に係る動力伝達装置について説明する。
本実施の形態に係る車両駆動システム1は、車両の前輪側に配置された主駆動系3と、車両の後輪側に配置された副駆動系4とを備える。動力伝達装置5は、前輪側を駆動する主駆動系3とは別に、後輪側を駆動する副駆動系4に用いられている。
そして、動力伝達装置5は、容量の同じ2つの電動モータ7,9と、この2つの電動モータ7,9から出力された駆動力を減速させる減速機構11と、この減速機構11で減速された駆動力が入力される分配機構13と、この分配機構13からの駆動力を左右輪15,17に出力する出力軸19,21と、電動モータ7,9と出力軸19,21との間に設けられ電動モータ7,9と出力軸19,21との間に伝達される動力を断続するクラッチ機構23とを有する。
また、2つの電動モータ7,9は、軸方向に減速機構11を挟んで対向配置されている。
さらに、減速機構11は、回転軸心が2つの電動モータ7,9のモータ軸25,27と平行に配置されモータ軸25,27に接続される入力軸29と、回転軸心が入力軸29と平行に配置され第1ギヤ組31を介して入力軸29に接続される中間軸33と、回転軸心が中間軸33と平行に配置され第2ギヤ組35を介して中間軸33に接続され分配機構13に駆動力を出力する減速出力軸としての出力部材37とからなる。
また、2つの電動モータ7,9のモータ軸25,27の先端側の外周には外スプライン部が形成され、減速機構11の入力軸29の軸方向両端の中空部に形成された内スプライン部にそれぞれ連結されている。これら連結する内外スプライン部には、グリースなどの摩耗防止剤が塗布されている。
さらに、減速機構11は、ケーシング39内に収容され、入力軸29は、中空状に形成され、ケーシング39と入力軸29の両端側外周との径方向間には、ケーシング39の内部と外部とを区画するシール部材41,43が配置されている。
また、ケーシング39は、各軸29,33,37の一端側がそれぞれベアリングを介して支持される一側ケーシング部40と、各軸29,33,37の他側がそれぞれベアリングを介して支持される他側ケーシング部42とからなる。
さらに、両ケーシング部40,42は、複数のボルト44によって一体結合されて、内部に必要な潤滑油が封入されている。
また、減速機構11は、外接噛み合い式のヘリカルギヤからなる。
さらに、2つの電動モータ7,9のモータ軸25,27は、それぞれの回転軸心28,28が分配機構13の回転軸心14より鉛直方向の下側に位置されている。
また、2つの電動モータ7,9は、電源45に接続される接続端子47,49および結線部分を収容する接続ボックス48,50が設けられ、接続端子47,49は、電動モータ7,9より鉛直方向の上側に位置されている。
さらに、2つの電動モータ7,9は、分配機構13の回転軸方向位置の中心に対して軸方向両側にそれぞれ配置されている。
また、減速機構11と分配機構13とは、ケーシング39に収容され、ケーシング39の軸方向の両側面、つまり一側ケーシング部40と他側ケーシング部42の端面には、2つの電動モータ7,9が取り付けられる取付フランジ部51,53が設けられている。
さらに、クラッチ機構23は、出力軸19,21の軸方向で2つの電動モータ7,9間に配置されている。
また、2つの電動モータ7,9は、小型で簡易な構成かつ低コストなブラシ付きの直流モータからなる。
まず、図1を用いて本発明の実施の形態に係る動力伝達装置5が適用された車両の動力系について説明する。
図1に示すように、車両駆動システム1を備えた車両は、内燃機関などからなる原動機55とモータ/ジェネレータ57とを駆動源とし、前輪側を駆動する主駆動系3と、2つの電動モータ7,9を駆動源とし、後輪側を駆動する副駆動系4とに大別される。
本実施の形態に係る車両駆動システム1における主駆動系3は、駆動源としてのエンジン55及びモータ/ジェネレータ57と、変速機構としてのトランスミッション59と、発電機としてのジェネレータ61と、前輪側の左右輪の差動を許容するフロントデフ63と、前車軸65,67と、前輪69,71などで構成されている。
この主駆動系3では、車両が設定速度以上である場合、駆動源として原動機55が選択され、原動機55からの駆動力がトランスミッション59を介してフロントデフ63に伝達され、フロントデフ63に連結された前車軸65,67から前輪69,71に配分される。これにより、車両は、原動機55による前輪駆動の2輪駆動状態となる。このとき、原動機55の回転は、ジェネレータ61を介して電源45に充電されることも可能である。
一方、主駆動系3では、車両が設定速度以下である場合、駆動源としてモータ/ジェネレータ57が選択され、モータ/ジェネレータ57からの駆動力が図示外の減速機構を介してフロントデフ63に伝達され、フロントデフ63に連結された前車軸65,67から前輪69,71に配分される。これにより、車両は、モータ/ジェネレータ57のモータ機能による前輪駆動の2輪駆動状態となる。なお、モータ/ジェネレータ57は、車両の停車や減速などにおける減速時にジェネレータとして機能し、車両の減速によるブレーキエネルギーがモータ/ジェネレータ57を介して電源45に充電される。
副駆動系4は、主駆動系3により駆動されるジェネレータ61或いはモータ/ジェネレータ57によって充電されるバッテリや蓄電池などからなる電源45と、この電源45に連結され車両駆動システム1の作動を制御するコントローラ73と、駆動源としての2つの電動モータ7,9と、減速機構11と、後輪側の左右輪の差動を許容するリヤデフである分配機構13と、後車軸である出力軸19,21と、後輪15,17などで構成されている。
動力伝達装置5は、容量の同じ2つの電動モータ7,9と、この2つの電動モータ7,9から出力された駆動力を減速させる減速機構11と、この減速機構11で減速された駆動力が入力される分配機構13と、この分配機構13からの駆動力を左右輪15,17に出力する出力軸19,21と、電動モータ7,9と出力軸19,21との間の駆動系路に設けられ電動モータ7,9と出力軸19,21との間に伝達される動力を断続するクラッチ機構23とからなる。
動力伝達装置5は、コントローラ73からの制御信号により、2つの電動モータ7,9の駆動回転と駆動停止、およびクラッチ機構23の断続が制御される。
なお、コントローラ73は、車速センサ、加速度センサ、ブレーキセンサ、スロットル開度センサ、左右輪差回転センサ、前後輪差回転センサ、操舵角センサ、ヨーモーメントセンサ、油温センサ、外気温センサなどの各種センサ75の情報が入力され、車両駆動システム1における各機構に制御情報を出力して各機構の作動を制御する。
動力伝達装置5は、車両が設定速度以下、もしくは例えば、雪道などの悪路で主駆動系3の前輪69,71でスリップを検知したなどの場合、電源45からコントローラ73を介して電力が2つの電動モータ7,9に供給されて、電動モータ7,9が起動される。
この2つの電動モータ7,9の駆動力は、減速機構11を介して分配機構13に伝達され、分配機構13に連結された出力軸19,21から後輪15,17に配分される。これにより、車両は、主駆動系3の前輪駆動と、副駆動系5の後輪駆動のアシストによる4輪駆動状態、もしくは副駆動系5による後輪駆動の2輪状態となる。このとき、2つの電動モータ7,9の出力は、コントローラ73によって制御される。
なお、減速機構11と分配機構13との間には、クラッチ機構23が設けられている。このクラッチ機構23は、2つの電動モータ7,9が起動されると、接続状態に制御され2つの電動モータ7,9の駆動力が減速機構11で減速されてクラッチ機構23を介して分配機構13に伝達され、後輪15,17側に伝達される。
一方、クラッチ機構23は、電動モータ7,9が作動されていない状態であると、接続解除状態に制御され減速機構11と分配機構13との動力伝達が遮断され、車両の走行による後輪15,17側からの回転を減速機構11及び2つの電動モータ7,9に入力させないようにしている。次に、図2〜図4を用いて動力伝達装置5について詳述する。
動力伝達装置5は、ケーシング39と、2つの電動モータ7,9と、減速機構11と、分配機構13と、クラッチ機構23と、アクチュエータ77とを備えている。
ケーシング39は、一側ケーシング部40と他側ケーシング部42とがボルト44などの固定手段によって一体的に固定され、内部が主に減速機構11を収容する入力側収容部と、主に分配機構13及びクラッチ機構23を収容する出力側収容部となっている。このケーシング39の入力側収容部の軸方向両側面には、2つの電動モータ7,9が取り付けられる取付フランジ部51,53が設けられている。
2つの電動モータ7,9は、それぞれブラシ付きの直流モータからなり、同じ容量、すなわち最大出力が同一に設定されており、好ましくはロータとハウジングおよび取付部の形状が同一であり、大まかな部品の共用化がなされる2つの電動モータであるとよい。
また、2つの電動モータ7,9は、分配機構13の回転中心に対して軸方向両側にそれぞれ配置されるように、軸方向に減速機構11を挟んで対向配置されている。このように2つの電動モータ7,9を配置することにより、径方向に小型な電動モータ7,9が径方向にオーバーラップして配置されることがなく、装置の径方向への大型化を抑制することができると共に、装置の軸方向の重量バランスの均等化に寄与して、電動モータ7,9の回転による振動を抑制することができる。
この2つの電動モータ7,9には、それぞれコントローラ73(図1参照)を介して電源45(図1参照)に接続される接続端子47,49及び接続ボックス48,50が設けられ、コントローラ73の制御によって電源45から電力が供給される。また、図3に示すように、2つの電動モータ7,9のモータ軸25,27は、それぞれの回転軸心28が分配機構13の回転軸心14より鉛直方向の下側に位置されている。このように2つの電動モータ7,9を配置することにより、電動モータ7,9の最低地上高を確保しつつ、電動モータ7,9の上方のスペースを確保することができる。この上方のスペースには、接続端子47,49や接続ボックス48,50が設けられている。このような2つの電動モータ7,9は、減速機構11の入力軸29の軸方向両端に一体回転可能にそれぞれ連結されている。
減速機構11は、ケーシング39内の入力側収容部に収容され、入力軸29と、第1ギヤ組31と、中間軸33と、第2ギヤ組35と、減速出力軸としての出力部材37とを備えている。接続端子47,49や接続ボックス48,50は、2つの電動モータ7,9とコントローラ73を介して電源との配線を連結するために所定の大きさを有する接続部という技術的構成物である。
入力軸29は、中空状に形成され、回転軸心が2つの電動モータ7,9のモータ軸25,27と平行に配置されている。また、入力軸29は、軸方向の両側外周でベアリング79,81を介してケーシング39に回転可能に支持され、軸方向の両端面からそれぞれ電動モータ7,9のモータ軸25,27が一体回転可能にスプライン連結されている。また、入力軸29の軸方向両側の外周とケーシング39の内周との径方向間には、ケーシング39の内部と外部とを区画するシール部材41,43が配置されている。この入力軸29の外周には、第1小径ギヤ部83が連続する一部材で形成され、第1小径ギヤ部83と第1大径ギヤ部85とで第1ギヤ組31が構成されている。
第1ギヤ組31は、入力軸29に設けられた第1小径ギヤ部83と、中間軸33に設けられた第1大径ギヤ部85とからなる。第1大径ギヤ部85は、中間軸33と一体回転可能に圧入などの固定手段で固定され、第1小径ギヤ部83と噛み合っている。この第1ギヤ組31は、2つの電動モータ7,9から出力される駆動力を入力軸29から減速させて中間軸33に出力する。
中間軸33は、回転軸心が入力軸29と平行に配置され、軸方向の両側外周でベアリング87,89を介してケーシング39に回転可能に支持されている。この中間軸33の外周には、第2小径ギヤ部91が連続する一部材で形成され、第2小径ギヤ部91と第2大径ギヤ部93とで第2ギヤ組35が構成されている。
第2ギヤ組35は、中間軸33に設けられた第2小径ギヤ部91と、出力部材37に設けられた第2大径ギヤ部93とからなる。第2大径ギヤ部93は、出力部材37の外周に連続する一部材で形成され、第2小径ギヤ部91と噛み合っている。この第2ギヤ組35は、中間軸33から出力される第1ギヤ組31で減速された駆動力をさらに減速させて出力部材37に出力する。
出力部材37は、筒状に形成され、回転軸心が中間軸33と平行に配置されている。また、出力部材37は、内周側でベアリング95,97を介して分配機構13のデフケース99と相対回転可能に配置されている。この出力部材37は、中間軸33から第2ギヤ組35を介して減速された駆動力が入力される。
このような減速機構11は、第1ギヤ組31と第2ギヤ組35とが外接噛み合い式のヘリカルギヤからなり、2段式の減速機構となっている。この減速機構11の入力軸から減速出力軸までのギヤ比は、例えば、従来では電動モータが1つである場合に1/36であるとすると、本実施の形態のように、同じ容量の電動モータが2つである場合では1/18に設定されている。
ここで、電動モータが1つで減速機構11のギヤ比が1/36であるときの車速に対するトルクの変化C2と、同じ容量の電動モータが2つで減速機構11のギヤ比が1/36であるときの車速に対するトルクの変化C3と、同じ容量の電動モータが2つで減速機構11のギヤ比が1/18であるときの車速に対するトルクの変化C1とを図4に示す。
図4から明らかなように、本実施の形態の同じ容量の電動モータが2つで減速機構11のギヤ比が1/18であるときの車速に対するトルクの変化C1では、車速のアシスト領域を日常一般路走行車速領域として約2倍である例えば60km/h程度まで拡大することができると共に、0km/hから30km/hの発進低車速領域で減速機構11のギヤ比を小さくしたにも関わらずトルクが低下することがなく、むしろ伝達トルクを増大することができる。このような減速機構11で減速された駆動力は、分配機構13に伝達される。
分配機構13は、ケーシング39内の出力側収容部に収容され、デフケース99と、ピニオンシャフト101と、ピニオン103と、一対のサイドギヤ105,107とを備えた差動機構からなる。
デフケース99は、回転軸心が減速機構11の出力部材37と平行に配置され、軸方向両側に形成されたボス部でそれぞれベアリング109,111を介してケーシング39に回転可能に支持されている。このデフケース99には、ピニオンシャフト101と、ピニオン103と、一対のサイドギヤ105,107とが収容されている。
ピニオンシャフト101は、端部をデフケース99に係合してピンなどの抜け止め部材で抜け止めされデフケース99と一体に回転駆動される。このピニオンシャフト101には、ピニオン103が支承されている。
ピニオン103は、デフケース99の周方向等間隔に複数配置され、それぞれピニオンシャフト101に支承されてデフケース99の回転によって公転する。また、ピニオン103の背面側とデフケース99との径方向間には、ピニオン103の公転時に発生する径方向への移動を受ける球面ワッシャが配置されている。このピニオン103は、一対のサイドギヤ105,107に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ105,107に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト101に自転可能に支持されている。
一対のサイドギヤ105,107は、それぞれに形成されたボス部でデフケース99に相対回転可能に支持され、ピニオン103と噛み合っている。また、サイドギヤ105,107とデフケース99との軸方向間には、ピニオン103との噛み合い反力によるサイドギヤ105,107の軸方向への移動を受けるスラストワッシャが配置されている。
この一対のサイドギヤ105,107は、内周側にスプライン形状の連結部113,115が設けられ、後輪15,17(図1参照)側に連結された出力軸19,21(図1参照)がそれぞれサイドギヤ105,107と一体回転可能に連結され、デフケース99に入力された駆動力を出力軸19,21を介して後輪15,17に出力する。なお、出力軸19,21の外周とケーシング39の内周との径方向間には、ケーシング39の内部と外部とを区画するシール部材117,119が配置されている。
このような分配機構13に伝達される駆動力は、減速機構11の出力部材37とデフケース99との間に設けられたクラッチ機構23によって断続される。なお、このような出力部材37とデフケース99との間にクラッチ機構23が配置された機構は、いわゆるフリーランニングデフとなっている。
クラッチ機構23は、出力軸19,21(分配機構13の回転軸方向位置の軸心)の軸方向で2つの電動モータ7,9間に配置され、断続部121と、押圧部材123とを備えている。断続部121は、複数の外側クラッチ板と複数の内側クラッチ板とからなる。複数の外側クラッチ板は、出力部材37の内周に形成されたスプライン形状の係合部に軸方向移動可能で出力部材37と一体回転可能に係合されている。複数の内側クラッチ板は、複数の外側クラッチ板に対して軸方向に交互に配置され、デフケース99の外周に形成されたスプライン形状の係合部に軸方向移動可能でデフケース99と一体回転可能に係合されている。
この断続部121は、複数の外側クラッチ板と複数の内側クラッチ板とで構成された多板クラッチであり、滑り摩擦を伴い伝達トルクを中間制御可能な制御型の摩擦クラッチとなっている。このような断続部121は、押圧部材123によって押圧されて接続される。
押圧部材123は、デフケース99のボス部の外周側で断続部121に対して軸方向に隣接配置され、出力部材37内に軸方向移動可能に配置されている。また、押圧部材123とデフケース99との軸方向間には、押圧部材123を断続部121の接続解除方向に付勢する皿バネなどからなる付勢部材125が配置されている。この付勢部材125により、断続部121の接続解除状態では、押圧部材123が断続部121を押圧することがなく、断続部121における引きずりトルクの発生を抑制することができる。この押圧部材123は、アクチュエータ77によって断続部121の接続方向に軸方向移動され、断続部121を接続させる。
アクチュエータ77は、ロータ127と、パイロットクラッチ129と、アーマチャ131と、電磁石133と、カム機構135とを備えている。ロータ127は、磁性材料からなり、デフケース99のボス部の外周側で軸方向移動が規制されて配置され、電磁石133とパイロットクラッチ129との軸方向間に配置されている。また、ロータ127には、磁束ループを形成させるための非磁性材料からなる磁路形成部材が溶接などの固定手段によってロータ127と一体的に設けられている。このロータ127は、電磁石133のコアとの径方向間に微小隙間を持って対向するエアギャップが設けられており、電磁石133のコアからロータ127への磁束の受け渡しが可能となっている。このようなロータ127には、パイロットクラッチ129が隣接配置されている。
パイロットクラッチ129は、出力部材37内でロータ127とアーマチャ131との軸方向間に配置されている。このパイロットクラッチ129は、出力部材37の内周に形成された係合部に軸方向移動可能で出力部材37と一体回転可能に連結する複数の外側プレートと、カムリング139の外周に複数の外側プレートに対して軸方向間に交互に配置され軸方向移動可能でカムリング139と一体回転可能に連結する複数の内側プレートとで構成されている。このようなパイロットクラッチ129は、アーマチャ131が電磁石133の励磁によって吸引移動されることにより接続される。
アーマチャ131は、磁性材料からなり、軸方向にパイロットクラッチ129を挟んでロータ127と対向配置され、出力部材37内で軸方向移動可能に配置されている。このアーマチャ131は、電磁石133が励磁されたときに形成される磁束ループによって電磁石133側に吸引移動され、パイロットクラッチ129を接続させる。
電磁石133は、ケーシング39内に固定配置され、電磁コイルとコアとを備えている。電磁コイルは、合成樹脂などの絶縁部材によってモールド成形され、コアの内部に配置されている。コアは、磁性材料からなり、ロータ127とで電磁コイルの周囲を囲むように配置されてロータ127と共に磁束を透過して磁束ループを形成させる。このコアは、電磁コイルとケーシング39の外部に配置された通電を制御するコントローラ73(図1参照)とを接続するリード線137が外部に引き出され、コントローラ73による制御によって断続部121で必要な摩擦トルクを生じさせるように電磁コイルに通電される。この電磁コイルの通電により、パイロットクラッチ129が接続され、カム機構135でスラスト力が発生される。
カム機構135は、カムリング139と、カムリング139と押圧部材123とに周方向に形成された複数のカム面間に介在されたカムボール141とからなる。カムリング139は、デフケース99のボス部の外周に軸方向移動可能に配置されている。また、カムリング139とロータ127の軸方向間には、カム機構135で生じるスラスト反力を受けるスラストベアリングが配置されている。このカムリング139の外周には、パイロットクラッチ129の複数の内側プレートが軸方向移動可能で一体回転可能に係合されている。
カムボール141は、カムリング139と押圧部材123とに周方向に形成された複数のカム面を対向させ、これらのカム面間に介在されている。このカムボール141は、パイロットクラッチ129の接続によってカムリング139と押圧部材123との間に差回転が生じることにより、パイロットクラッチ129に生じる摩擦トルクに応じた強さで押圧部材123を断続部121側へ軸方向押圧移動させるカムスラスト力を発生させる。
このように構成されたクラッチ機構23では、電磁石133の電磁コイルへの通電により、コア、ロータ127、パイロットクラッチ129、アーマチャ131を介した磁力線が循環されて磁束ループが形成され、アーマチャ131が電磁石133側に吸引移動されてパイロットクラッチ129が締結される。このパイロットクラッチ129の締結トルクは、カム機構135を介して軸方向推力に変換され、押圧部材123が付勢部材125の付勢力に抗して断続部121を押圧して断続部121が接続される。この断続部121の接続により、出力部材37とデフケース99とが接続されて減速機構11で減速された駆動力が分配機構13に伝達される。
この断続部121の接続状態は、電磁石133への通電を停止することにより、付勢部材125の付勢力によって押圧部材123が断続部121の接続解除方向に軸方向移動されて解除される。この断続部121の接続解除により、出力部材37とデフケース99との間の動力伝達が遮断され、車両の走行による後輪15,17(図1参照)の回転が減速機構11に入力されることがなく、車両の燃費向上を図ることができる。
このように構成された動力伝達装置5では、車両が設定速度以下、もしくは例えば、雪道などの悪路で主駆動系3の前輪69,71(図1参照)でスリップを検知したなどの場合、電源45(図1参照)からコントローラ73(図1参照)を介して電力が2つの電動モータ7,9に供給されて、電動モータ7,9が起動される。このとき、クラッチ機構23では、電源45からコントローラ73を介して電磁石133に通電され、断続部121が接続状態となり、減速機構11から分配機構13への動力伝達が可能となる。
この2つの電動モータ7,9は、車両の状況に応じてコントローラ73によって供給される電力が制御され、車速に応じた駆動力を減速機構11に出力する。この減速機構11に伝達された駆動力は、第1ギヤ組31と第2ギヤ組35とで減速され、クラッチ機構23の断続部121を介して分配機構13に伝達される。この分配機構13に伝達された駆動力は、出力軸19,21(図1参照)を介して後輪15,17(図1参照)に配分され、車両の走行をアシストする。
動力伝達装置5が容量の同じ2つの電動モータ7,9を有するので、1つの電動モータを大型化させることなく、電動モータの出力を増加させることができる共に、各電動モータ7,9を分離して配置することができ、装置の大型化を抑制することができる。
また、2つの電動モータ7,9を有するので、減速機構11のギヤ比を小さくしても、車両の発進に必要な出力を得ることができ、車両の発進から車両の走行を安定してアシストできる車速領域を拡大することができる。
従って、動力伝達装置5が容量の同じ2つの電動モータ7,9を有するので、装置の大型化を抑制しつつ簡易な構造で、車速のアシスト領域を向上させることができる。
また、2つの電動モータ7,9は、軸方向に減速機構11を挟んで対向配置されているので、装置の径方向の大型化を抑制することができると共に、2つの電動モータ7,9の配置バランスを向上でき、振動の発生を抑制することができる。
さらに、減速機構11は、電動モータ7,9のモータ軸25,27に接続される入力軸29と、第1ギヤ組31を介して入力軸29に接続される中間軸33と、第2ギヤ組35を介して中間軸33に接続され分配機構13に駆動力を出力する出力部材37とからなるので、電動モータ7,9と分配機構13との干渉を防止することができる。
また、2つの電動モータ7,9のモータ軸25,27は、減速機構11の入力軸29の軸方向両端にそれぞれスプライン連結されているので、入力軸29の両端側から電動モータ7,9を連結させることができ、装置の組付性を向上することができる。
さらに、減速機構11の入力軸29は、中空状に形成され、ケーシング39と入力軸29との径方向間には、ケーシング39の内部と外部とを区画するシール部材41,43が配置されているので、入力軸29に2つの電動モータ7,9を組み付ける前の状態で、ケーシング39の内部と外部とを区画することができ、ユニット性を向上することができる。加えて、減速機構11とケーシング39とがユニット化された状態で、2つの電動モータ7,9を入力軸29に組み付けることができ、装置の組付性を向上することができる。
また、減速機構11は、外接噛み合い式のヘリカルギヤからなるので、装置の径方向を小型化して装置のレイアウトの自由度を向上することができる。加えて、減速機構11の構造を簡易化することができると共に、コストを低減することができる。
さらに、2つの電動モータ7,9のモータ軸25,27は、それぞれの回転軸心28,28が分配機構13の回転軸心14より鉛直方向の下側に位置されているので、分配機構13の上部側の水平方向であって2つの電動モータ7,9の上方にスペースを確保して装置をコンパクト化することができ、車両への搭載性を向上することができる。
また、2つの電動モータ7,9は、電源45に接続される接続端子47,49や接続ボックス48,50が設けられ、接続端子47,49や接続ボックス48,50は、電動モータ7,9より鉛直方向の上側に位置されているので、2つの電動モータ7,9の上方に確保された上述したスペースに接続部としての接続端子47,49や接続ボックス48,50を配置することにより、2つの電動モータ7,9の最低地上高を確保しつつ、装置の外形周りへの張り出しを抑制し、装置の大型化を防止することができる。
さらに、2つの電動モータ7,9は、分配機構13の回転中心に対して軸方向両側にそれぞれ配置されているので、装置の重量バランスや回転バランスを均等化することができ、装置のバランスを向上することができる。
また、ケーシング39の軸方向の両側面には、2つの電動モータ7,9が取り付けられる取付フランジ部51,53が設けられているので、減速機構11の軸方向両側でケーシング39の高度を向上させることができ、2つの電動モータ7,9の回転振動を抑制し、減速機構11の噛み合い状態を良好にして、ケーシングへの噛み合い振動の伝搬による音振を抑制することができる。また、ケーシング39の軸方向の投影面内に2つの電動モータ7,9を含めた全ての機構が配置され、装置を小型化することができる。
さらに、クラッチ機構23は、出力軸19,21の軸方向で2つの電動モータ7,9間に配置されているので、装置を軸方向に小型化して構造を簡易化することができる。
また、2つの電動モータ7,9は、ブラシ付きの直流モータからなるので、電動モータ自体が大型化することがないと共に、電動モータの構造を簡易化することができる。
なお、本発明の実施の形態に係る車両駆動システムでは、主駆動系が前輪側を駆動し、副駆動系が後輪側を駆動しているが、これに限らず、主駆動系が後輪側を駆動し、副駆動系が前輪側を駆動してもよい。
また、クラッチ機構は、多板クラッチなどの摩擦クラッチに限らず、軸方向或いは径方向に対向する一対の噛み合い歯からなる噛み合いクラッチ、ロータ又はスプラグなどを用いた1ウェイクラッチ、もしくは2ウェイクラッチであってもよい。
さらに、アクチュエータは、電磁式アクチュエータに限らず、油圧式アクチュエータなどクラッチ機構を断続できるものであればどのような形態であってもよい。
また、クラッチ機構は、減速機構と分配機構との間に設けられているが、これに限らず、例えば、分配機構とクラッチ機構とを一体にしてもよい。詳細には、分配機構の左右出力軸それぞれに減速機構の減速出力軸を連結する一対のクラッチ機構を設け、減速機構からの動力をそれぞれのクラッチ機構を断続して駆動力の分配を行ってもよい。
また、クラッチ機構は、減速機構と分配機構との間に設けられているが、これに限らず、減速機構の入力軸側や中間軸側、或いは左右の出力軸の少なくとも一方側などに設けることができる。
さらに、減速機構は、プラネタリギヤ機構を用いてもよい。この場合には、出力軸と同軸上に配置してもよい。
また、電動モータのモータ軸は、出力軸の交差方向に配置されてもよい。加えて、2つの電動モータは、小型であるので、隣接して直列配置されてもよい。
さらに、電動モータは、直流モータ、交流モータいずれでもよく、電子ブラシを有するものや、ブラシレスの種類に特定されず、或いはスイッチトリラクタンスモータを用いてもよく、適宜選定することができる。加えて、電動モータにジェネレータ機能をもたせてブレーキエネルギーによって回生を行ってもよい。さらには、電動モータの電源は、主駆動系の駆動源によって回転駆動されて発電が可能なジェネレータから直接供給される構造であってもよい。
1…車両駆動システム
3…主駆動系
4…副駆動系
5…動力伝達装置
7,9…電動モータ
11…減速機構
13…分配機構
15,17…左右輪
19,21…出力軸
23…クラッチ機構
25,27…モータ軸
29…入力軸
31…第1ギヤ組
33…中間軸
35…第2ギヤ組
37…出力部材(減速出力軸)
39…ケーシング
41,43…シール部材
45…電源
47,49…接続端子(接続部)
48,50…接続ボックス(接続部)
51,53…取付フランジ部

Claims (12)

  1. 前後車輪の一方側を駆動する主駆動系とは別に前後車輪の他方側を駆動する副駆動系に用いられる動力伝達装置であって、
    前記動力伝達装置は、容量の同じ2つの電動モータと、この2つの電動モータから出力された駆動力を減速させる減速機構と、この減速機構で減速された駆動力が入力される分配機構と、前記電動モータと出力軸との間に設けられたクラッチ機構とを有することを特徴とする動力伝達装置。
  2. 請求項1記載の動力伝達装置であって、
    前記2つの電動モータは、軸方向に前記減速機構を挟んで対向配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
  3. 請求項1又は2記載の動力伝達装置であって、
    前記減速機構は、回転軸心が前記2つの電動モータのモータ軸と平行に配置され前記モータ軸に接続される入力軸と、回転軸心が前記入力軸と平行に配置され第1ギヤ組を介して前記入力軸に接続される中間軸と、回転軸心が前記中間軸と平行に配置され第2ギヤ組を介して前記中間軸に接続され前記分配機構に駆動力を出力する減速出力軸とからなることを特徴とする動力伝達装置。
  4. 請求項3記載の動力伝達装置であって、
    前記2つの電動モータのモータ軸は、前記減速機構の入力軸の軸方向両端にそれぞれ連結されていることを特徴とする動力伝達装置。
  5. 請求項4記載の動力伝達装置であって、
    前記減速機構は、ケーシングに収容され、前記入力軸は、中空状に形成され、前記ケーシングと前記入力軸との径方向間には、ケーシングの内部と外部とを区画するシール部材が配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
    前記減速機構は、外接噛み合い式のヘリカルギヤからなることを特徴とする動力伝達装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
    前記2つの電動モータのモータ軸は、それぞれの回転軸心が前記分配機構の回転軸心より鉛直方向の下側に位置されていることを特徴とする動力伝達装置。
  8. 請求項7記載の動力伝達装置であって、
    前記2つの電動モータは、電源側に接続される接続部が設けられ、前記接続部は、前記電動モータより鉛直方向の上側に位置されていることを特徴とする動力伝達装置。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
    前記2つの電動モータは、前記分配機構の回転軸方向の中心に対して軸方向両側にそれぞれ配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
    前記減速機構と前記分配機構とは、ケーシングに収容され、前記ケーシングの軸方向の両側面には、前記2つの電動モータが取り付けられる取付フランジ部が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
    前記クラッチ機構は、前記出力軸の軸方向で前記2つの電動モータ間に配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
    前記2つの電動モータは、ブラシ付きの直流モータからなることを特徴とする動力伝達装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016130041A (ja) * 2015-01-13 2016-07-21 株式会社ミツバ 電動駆動装置および電動二輪車
JP2016216683A (ja) * 2015-05-26 2016-12-22 コスモ石油ルブリカンツ株式会社 動力伝達装置用潤滑油組成物
CN106808994A (zh) * 2017-01-19 2017-06-09 重庆长安汽车股份有限公司 混动车辆及其动力传动系统

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