JP2013208339A - ミシン - Google Patents

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Abstract

【課題】縫糸の伸縮性、太さに応じて切断後に被縫製物に残る糸端の長さを安定させることができるミシンを提供する。
【解決手段】本発明は、被縫製物Sを載置し且つ縫針8の下端を通す針穴18を備えた針板15と、針板15の下方に設けてあり、縫針8に挿通した上糸のループを捕捉する剣先を備え、縫針8の上下動に連動して回転する釜機構と、針板15の下方且つ釜機構の上方に位置し、上糸及び下糸を切断する糸切り機構50と、を備え、糸切り機構50は、互いに近接する方向に移動し且つ近接移動により重なり合うことで、釜機構に捕捉した上糸を下糸と共に切断する上移動刃54及び下移動刃52と、を備え、少なくとも下移動刃52は、駆動力伝達機構60に着脱可能に保持しているとともに上移動刃54と重なり合う位置に隆起部58fを形成している。
【選択図】図2

Description

本発明は、縫糸を切断する糸切り機構を備えたミシンに関する。
従来、針板の下方且つ釜機構の上方に位置して縫糸を切断する糸切り機構を有するミシンがある。このミシンの糸切り機構は、例えば、下移動刃と上移動刃とを備える。下移動刃は、釜機構が捕捉して押し広げた上糸のループに突入し、上糸を下糸と共に捕捉する。上移動刃は、下移動刃と相対的に近接することによって下移動刃が捕捉する上糸及び下糸を下移動刃と協働して切断する(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1のミシンでは、上移動刃と下移動刃とは、互いに同期して接近・離反することで、針板に設けた針穴の下方位置で各移動刃により上糸及び下糸を切断する切断位置とすることで切断後に被縫製物に残る糸端を最短にすることができる。
ミシン用の縫糸は、一般的には市販のものを用い、被縫製物の厚さ、素材等により異なる種類を使用する。例えば、被縫製物の厚みが大きい場合、縫糸は太いものを使用する。縫糸は、太さのほかに伸縮率も種類により異なり、被縫製物に合わせて使用する。
特開平05−000198号公報
伸縮率の高い縫糸は、切断位置で各移動刃により上糸及び下糸を切断する時に伸縮する。特許文献1のミシンは、針板に設けた針穴の下方位置を切断位置として切断後に被縫製物に残る糸端を最短にする。故に、伸縮率の高い縫糸を使用した場合、切断後に被縫製物に残った糸は、縮んで被縫製物から抜けてしまうという問題があった。
本発明は、縫糸の伸縮性、太さに応じて切断後に被縫製物に残る糸端の長さを安定させることができるミシンを提供することを目的とする。
上記課題を解決する為、第1発明のミシンは、ミシン主軸の回転により上下動する縫針と、被縫製物を載置し且つ前記縫針の下端を通す穴を備えた針板と、前記針板の下方に設けてあり、前記縫針に挿通した上糸のループを捕捉する剣先を備え、前記縫針の上下動に連動して回転する釜機構と、前記針板の下方且つ前記釜機構の上方に位置し、上糸及び下糸を切断する糸切り機構と、を備えるミシンにおいて、前記糸切り機構は、互いに近接する方向に移動し且つ当該移動により重なり合うことで、前記釜機構に捕捉した上糸を下糸と共に切断する刃部を夫々有する第一切断刃及び第二切断刃と、前記第一切断刃と前記第二切断刃を互いに近接する方向に移動させる駆動力を前記第一切断刃と前記第二切断刃に伝達する駆動力伝達機構と、を備え、少なくとも前記第二切断刃の前記刃部は、前記駆動力伝達機構から伝達される前記駆動力を受ける前記第二切断刃の基部に着脱可能に保持しているとともに前記第一切断刃と重なり合う位置に隆起部が形成してあり、前記隆起部の高さが異なる複数種類の形状を交換可能であることを特徴とする。
本願第1発明のミシンによれば、針板の下方で且つ釜機構の上方に位置する糸切り機構が、上糸と下糸とを切断する。糸切り機構は、互いに重なり合うことで上糸と下糸とを切断する第一切断刃と第二切断刃とを備える。第一切断刃と第二切断刃とは、互いに連動して近接する。互いに近接する第一切断刃と第二切断刃は、所定の交点位置で重なり合うことで、上糸と下糸との切断を行う。
本願第1発明のミシンでは、少なくとも第二切断刃の刃部が駆動力伝達機構から伝達される前記駆動力を受ける前記第二切断刃の基部に着脱可能に保持しているとともに、第一切断刃と重なり合う位置に隆起部が形成してある。着脱可能な第二切断刃の刃部は、隆起部の高さの異なるものが複数種類で交換可能である。これにより、上糸と下糸との切断を行う際に、隆起部の高さによって第二切断刃が第一切断刃と重なり合う位置と切断強度とを調整することができる。ミシンは、縫糸の伸縮性、太さに応じた第二切断刃を用いることにより、切断後に被縫製物に残る糸端の長さを安定することができる。
本願第2発明のミシンは、第1発明に記載のミシンにおいて、前記第二切断刃の前記刃部は、螺子によって前記第二切断刃の前記基部に着脱可能に保持していることを特徴とする。
本願第2発明のミシンによれば、第二切断刃の刃部が螺子で第二切断刃の基部に保持している。これにより、ミシンは第二切断刃が第一切断刃と重なり合う際のがたつきの発生を抑制し且つ容易に第二切断刃の交換作業を行うことができる。
本願第3発明のミシンは、第1又は第2発明に記載のミシンにおいて、前記第一切断刃は、前記第二切断刃の種類に応じた形状を交換可能に前記第一切断刃の基部に着脱可能に保持していることを特徴とする。
本願第3発明のミシンによれば、ミシンは、第一切断刃を第二切断刃の種類に応じて交換することができる。
本発明のミシンは、縫糸の伸縮性、太さに応じて切断後に被縫製物に残る糸端の長さを安定させることができる。
ミシンの斜視図である。 糸切り機構近傍の左側面からの拡大図である。 (A)は糸切り動作の初期段階の拡大斜視図、(B)は糸切り動作の上糸ループ作成状態の説明図である。 (A)は糸切り動作の上糸捕捉直前の拡大斜視図、(B)は下移動刃と上移動刃の拡大平面図である。 (A)は糸切り動作の上糸捕捉状態の拡大斜視図、(B)は糸捕捉状態の要部の拡大斜視図である。 下移動刃の拡大斜視図である。 別の下移動刃の拡大斜視図である。 糸切り機構の上方からの斜視図である。 糸切り機構の正面図である。 糸切り機構の斜視図である。 糸切り機構の平面図である。 第2リンク片、駆動力調整機構の分解斜視図である。 糸切り機構の駆動時における駆動力伝達機構の動作について説明した左側面図である。 糸切り機構の駆動時における駆動力伝達機構の動作について説明した左側面図である。 糸切り機構の駆動時における駆動力伝達機構の動作について説明した左側面図である。 糸切り機構の駆動時における駆動力伝達機構の動作について説明した左側面図である。 別の下移動刃を用いた場合の図16に相当する糸切り機構の駆動時における駆動力伝達機構の動作について説明した左側面図である。
本発明の一実施形態に係るミシンについて、図面を参照して説明する。以下の説明では、図1の紙面上側、下側、右側、左側、表側、背面側は夫々ミシン1の上側、下側、右側、左側、前側、後側である。
図1〜図5を参照して、ミシン1の構成を説明する。ミシン1は、ベッド部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。ベッド部2は、ミシン1の土台である。脚柱部3は、ベッド部2の右端から鉛直上方に延びる。アーム部4は、脚柱部3の上端から左方に延び、ベッド部2の上面に対向する。
アーム部4は、左端部下方に被縫製物Sを上方から押える押え足17を備える。アーム部4は、内部に針棒7を保持する。図2に示すように、針棒7の下端には、縫針8を装着している。針棒7と縫針8とは、メインモータ13の駆動に従って上下に往復移動する。アーム部4は、左端部前方に天秤9を備える。天秤9は、針棒7に従って上下動する。アーム部4は、上面に操作部10を固定する。操作部10は、前面に液晶パネル11を備える。作業者は、液晶パネル11を見ながら操作部10を操作し各種指示をミシン1に入力する。
ミシン1は、テーブル20の下面に制御装置30を備える。制御装置30はロッド21を介して踏み込み式のペダル22に接続する。作業者は、ペダル22をつま先側又は踵側に操作する。制御装置30は、ペダル22の操作方向及び操作量に応じてミシン1の動作を制御する。
脚柱部3は、右側面上部にメインモータ13を備える。アーム部4は、内部にミシン主軸14を備える。ミシン主軸14は、回転可能な状態でアーム部4の内部を左右方向に延びる。ミシン主軸14の右端は、メインモータ13に接続する。ミシン主軸14の左端は、針棒上下動機構(図示略)に接続する。メインモータ13は、ミシン主軸14を駆動して針棒7と天秤9とを上下動する。天秤9は、縫針8に挿通する上糸23を引き上げる。
図2に示すように、ベッド部2は、上面左端に針板15を備える。針板15は、略中央部に針穴18を有する。縫針8は、下降時に下端が針穴18を通過する。図3〜図5に示すように、ベッド部2は、針板15の下部に釜機構40と糸切り機構50とを備える。
釜機構40は、剣先(図示略)を備え、下糸用ボビン(図示略)を収容する。釜機構40は、メインモータ13の駆動により回転する。釜機構40の剣先は、縫針8が下死点から上昇する時に形成する上糸23のループを捕捉する。釜機構40は、剣先が捕捉した上糸23のループを押し広げる。ミシン1は、釜機構40が押し広げた上糸23のループと下糸24を絡めることで、被縫製物Sに縫目を形成し、縫製を行う。尚、釜機構40は、従来の構成と同じであるので、具体的な構成等の説明を省略する。
図2〜図6を参照し、糸切り機構50について説明する。糸切り機構50は、釜機構40の上方且つ針板15の針穴18の下方に近接して設けてある。糸切り機構50は、下移動刃52と、上移動刃54と、軸56とを備える。下移動刃52は、釜機構40の外周を回動可能である。下移動刃52は、針穴18に対し後方の待機位置から図2の時計回り方向に回動することで前端が針穴18の下方を通過する。上移動刃54は、釜機構40の外周を回動可能である。上移動刃54は、針穴18に対し前方の待機位置から図2の反時計回り方向に回動することで先端が針穴18の下方を通過すると共に下移動刃52の上側と重なる。軸56は、下移動刃52と上移動刃54とを同軸上に回動可能に保持する。
下移動刃52は、環状のリング部52aと、刃部58と、糸捕捉部58aとを備える。リング部52aは、軸56に対し回転可能である。リング部52aは、外周に後述する第1リンク片68と接続する取付部52bを備える。刃部58は、リング部52a外周から左方且つ略円弧状に突出するように設けてある。刃部58は、リング部52aにおいて取付部52bに対し周方向反対側に位置する。刃部58は、リング部52aと一体の取付フランジ部52cに螺子80によって着脱(交換)可能である。取付フランジ部52cは、リング部52aの外周に沿って左方且つ略円弧状に突出する。螺子80は、取付フランジ部52cの外周面2箇所で刃部58を固定しており、着脱操作の容易性を確保し且つがたつきの発生を抑制している。
糸捕捉部58aは、刃部58の上移動刃54側に設けてある。糸捕捉部58aは、軸56に近い方を内側として、外側から順に導入溝58eと、隆起部58fと、第1端面58bと、保持部58dと、第2端面58cとを備える。第1端面58bは、下移動刃52の上移動刃54側への近接時に上糸23のループの内側に入り込み、上糸23及び下糸24を糸分けして捕捉する。第1端面58bは、糸分けした上糸23の一方(内側、図4(B)参照)を保持部58dに導入する。保持部58dは、第1端面58bが捕捉した上糸23を導入し保持する。保持部58dは、第1端面58bと第2端面58cとの間に形成した略V字状の切り込み溝である。第2端面58cは、第1端面58bに沿った延長線上に延びる。導入溝58eは、第1端面58bで糸分けした上糸23の他方(外側)と下糸24とを導入して保持するスリット状の溝である。隆起部58fは、導入溝58eよりも下移動刃52の移動方向下流側に連接し、導入溝58eと直交して突出する。隆起部58fは、導入溝58eに導入した他方の上糸23と下糸24とを上移動刃54と協働して切断する。
図7は別の刃部580を示す図である。刃部580は、刃部58と同様に取付フランジ部52cに着脱可能であり、螺子80により固定できる。即ち、刃部58と刃部580は、夫々交換可能である。刃部580は、糸捕捉部580aの隆起部580fの高さが上記の隆起部58fより高い。刃部580は、隆起部580fの高さ以外、刃部58と同様である。従って、刃部580は、上糸23と下糸24を切断する時の切断位置が刃部58よりも上方となる。即ち、切断後に被縫製物に残る糸端の長さは短くなる。
本発明のミシン1では、各移動刃52、54が近接する時、上糸23は、天秤9により引き上げられて、保持部58dを介して下移動刃52に巻きつく。故に、糸捕捉部58aは、上糸23を保持部58dで常に一定の位置で保持できる。即ち、ミシン1は、下移動刃52と上移動刃54との協働で上糸23及び下糸24を切断する時、切断後に縫針8側に残る上糸23の長さを常に一定にできる。縫針8側に残る上糸23の長さが長すぎると、縫製開始時に上糸23が被縫製物の裏面で絡まって固まるので、ミシンは綺麗な縫目が形成できない。一方、縫針8側に残る上糸23の長さが短すぎると、縫製開始時に上糸23が被縫製物から抜けてしまうので、ミシンは縫目が形成できない。ミシン1は、縫針8側に残る上糸23の長さを常に一定にできるので、縫製開始時に上糸23が被縫製物の裏面で固まったり、被縫製物から抜けたりするのを防ぐことができる。
保持部58dは、糸捕捉部58aの延設方向における中間部(第1端面58bと第2端面58cとの間)に、平面視略V字形状に形成してある。故に、ミシン1は、保持部58dに導入した上糸23に対し適宜の摩擦力を付与し、保持部58dから上糸23が離脱するのを防止することができる。
上移動刃54は、環状のリング部54aと、刃部54bとを備える。リング部54aは、軸56に対し回転可能である。リング部54aは、外周に後述する上移動刃側リンク機構64と接続する取付部54cを備える。刃部54bは、リング部54a外周から左方に突出し、且つ左端部が下移動刃52の刃部58と対向するように延びる。刃部54bは、リング部54aにおいて取付部54cに対し周方向反対側に設けてある。刃部54bは、下移動刃52の刃部58(第1端面58b)が糸分けした上糸23の他方及び下糸24を刃部58と協働して切断可能である。刃部54bは、リング部54aと一体の取付フランジ部54dに螺子82によって着脱(交換)可能である。取付フランジ部54dは、リング部52aの外周に沿って左方に延びる。螺子82は、取付フランジ部54dの外周面2箇所で刃部54bを固定しており、着脱操作の容易性を確保し且つがたつきの発生を抑制している。
後述の第2リンク片70の軸穴70aは、右方から駆動軸(図示略)が挿通する。駆動軸は、ベッド部2内で糸切りカム(図示略)と接続する。該糸切りカムは、ベッド部2内に収納する糸切りソレノイド(図示略)と接続する。糸切りカムは、糸切りソレノイドの駆動によってミシン主軸14と連動して回転する軸(図示略)の回転力を駆動軸を介して第2リンク片70に伝達する。駆動軸は、回転力を第2リンク片70を介して下移動刃52と上移動刃54に伝達する。上移動刃54及び下移動刃52は、互いに連動して近接・離反する方向に回動する。
図8乃至図12を参照して、駆動力伝達機構60について説明する。駆動力伝達機構60は、下移動刃側リンク機構62と、上移動刃側リンク機構64と、駆動力調整機構66とを備える。
下移動刃側リンク機構62は、第1リンク片68と、第2リンク片70とを備える。第1リンク片68は、左側面視略楕円形状の板部材である。第1リンク片68は、一端がリング部52aに回動可能に軸支してあり、他端が第2リンク片70の一端に回動可能に軸支してある。
第2リンク片70は、長手方向中央部がやや屈曲した板部材である。第2リンク片70は、軸穴70aと、ネジ穴70b、70cと、切り割り溝70dとを備える。軸穴70aは、第2リンク片70の他端側に設けてある。ネジ穴70bは、第2リンク片70の長手方向中央部に設けてある。ネジ穴70bは、ネジ等の固定具74が螺合する。切り割り溝70dは、軸穴70aの軸方向に対して平行である。ネジ穴70cは、切り割り溝70dに直交して連通する。上述のように、第2リンク片70は、軸穴70aに前記駆動軸(図示略)が挿通する。該駆動軸は、駆動力調整機構66の中央部に設けた軸穴66aに挿通する。第2リンク片70は、軸穴70aに挿通する軸に回動可能に支持してある。第2リンク片70は、駆動軸に対し回動することで糸切り機構50とミシン主軸14との位相を調節することができる。第2リンク片70は、ネジ穴70cにネジ(図示略)を螺合して切り割り溝70dの幅を狭めることで、駆動軸に対し回動不能である。
上移動刃側リンク機構64は、左側面視略L字状に形成してある。上移動刃側リンク機構64は、一端がリング部54aに回動可能に軸支してあり、他端が駆動力調整機構66の一端に回動可能に軸支してある。
図12に示すように、駆動力調整機構66は、左側面視略三角形状に形成してある。駆動力調整機構66は、軸穴66aと、穴部72とを備える。前述のように、軸穴66aは、駆動力調整機構66の中央部に設けてある。駆動力調整機構66は、軸穴66aと第2リンク片70の軸穴70aに挿通した軸を中心に回動可能である。穴部72は、駆動力調整機構66の一端に設けてある。穴部72は、略円弧状の長穴に形成してある。穴部72は、固定具74が挿通可能である。上述のように、固定具74は、第2リンク片70のネジ穴70bに螺合する。
図13〜図16を参照して、糸切り機構50の駆動時における駆動力伝達機構60の動作について説明する。尚、図13〜図16では、隆起部58fを有する刃部58を下移動刃52として用いた場合を示す。隆起部58fの高さは低いので、図13〜図16では省略する。
図示しない糸切りソレノイドが駆動すると、第2リンク片70は、前記駆動軸の回転により左側面視反時計回り方向に回転する。第2リンク片70の回転は、第1リンク片68に伝達する。第1リンク片68は、下方へ移動する。第1リンク片68の移動は、リング部52aを介して下移動刃52に伝達する。下移動刃52は、図13に示す待機位置から時計回り方向に回転する。第2リンク片70の回転に伴い、駆動力調整機構66は第2リンク片70と共に回転する。駆動力調整機構66の回転によって、上移動刃側リンク機構64を介して上移動刃54のリング部54aは左側面視反時計回り方向に回転する。上移動刃54は、図13に示す待機位置から反時計回り方向に回転する。
図14、図15に示すように、糸切り機構50は、下移動刃52の前端が針穴18の下方を先に通過し、上移動刃54の刃部54bが後から針穴18の下方に達する。図16に示すように、上移動刃54は、下移動刃52の上側と重なることで下移動刃52と協働して上糸及び下糸を針穴18の直下で切断する。
図17に示すように、下移動刃52の刃部580に隆起部580fを形成した場合、上移動刃54は、隆起部580fに対応する刃部540bを使用する。刃部540bは、刃部54bと同様に取付フランジ部54dに着脱可能であり、螺子82により固定できる。即ち、刃部54bと刃部540bは、夫々交換可能である。刃部540bは、隆起部580fと重なる位置が刃部54bよりも上方となる形状を有する。故に、上糸及び下糸を切断する切断位置は、より上方となり針穴18のほぼ直下となる。従って、切断後に被縫製物に残る糸端の長さは、隆起部58fを有する刃部58で切断する場合に比べて短くなる。例えば、伸縮率の低い糸を使用した場合、切断後に被縫製物に残る糸が縮んで被縫製物から抜けることはない。故に、隆起部580fを有する刃部580により上糸及び下糸を切断することで、切断後に被縫製物に残る糸は短くできる。
一方、伸縮率の高い縫糸を使用した場合、切断後に被縫製物に残った糸は、縮んで被縫製物から抜けてしまう。故に、隆起部580fより高さの低い隆起部58fを有する刃部58により上糸及び下糸を切断することで、切断後に被縫製物に残る糸は長くなり、縮んでも被縫製物から抜けることを防止できる。
以上のように、本発明のミシン1は、針板15の下方で且つ釜機構40の上方に位置する糸切り機構50が、上糸23と下糸24とを切断する。糸切り機構50は、下移動刃52と上移動刃54とを備える。下移動刃52は、上移動刃54側への近接時に上糸23のループの内側に入り込み、上糸23及び下糸24を糸分けして捕捉する。下移動刃52及び上移動刃54は相対的に近接した後に重なり合い、互いの協働により上糸23及び下糸24を切断する。
本願第1発明のミシン1は、少なくとも下移動刃52の刃部58がリング部52aと一体の取付フランジ部52cに着脱可能に保持してあるとともに、上移動刃54と重なり合う位置に隆起部58fが形成してある。これにより、ミシン1は、上糸23と下糸24との切断を行う際に、隆起部58fの高さによって下移動刃52が上移動刃54と重なり合う位置と切断強度とを調整できる。ミシン1は、縫糸の伸縮性、太さに応じた下移動刃54を用いることにより、切断後に被縫製物に残る糸端の長さを安定することができる。
本発明のミシン1は、下移動刃52が高さの異なる隆起部58f、580fを有する刃部58、580を複数種類で交換可能である。これにより、ミシン1は、使用する糸の種類、例えば、伸縮性の低い糸又は細い糸を用いた場合には高さの高い隆起部580fを有する刃部580、伸縮性の高い糸又は太い糸の場合には高さの低い隆起部58fを有する刃部58を用いる等、汎用性を向上することができる。ミシン1は、作業者が高さの異なる隆起部58f、580fを有する刃部58、580を任意(適宜)で設定することができる。
本発明のミシン1は、下移動刃52の刃部58が少なくとも一対の螺子80によってリング部52aと一体の取付フランジ部52cに着脱可能に保持してある。故に、ミシン1は、下移動刃52が上移動刃54と重なり合う際のがたつきの発生を抑制し且つ容易に下移動刃52の交換作業を行うことができる。
本発明のミシン1は、上移動刃54が下移動刃52の刃部58、580に応じたものがリング部54aと一体の取付フランジ部54dに着脱可能に保持されている。これにより、ミシン1は、上移動刃54を下移動刃52の刃部58、580に応じて交換することができる。
尚、上移動刃54は本発明の「第一切断刃」に相当する。下移動刃52は本発明の「第二切断刃」に相当する。
本発明は上記実施形態に限らず、適宜変更することができる。例えば、駆動力調整機構66は、下移動刃側リンク機構62の第2リンク片70に接続したが、上移動刃側リンク機構64に接続しても良い。駆動力調整機構66は、下移動刃側リンク機構62と上移動刃側リンク機構64とに夫々接続しても良い。
下移動刃52の刃部58、580の隆起部58f、580fの形状は、上記実施形態に限られず、切断後に被縫製物に残る糸端の長さに応じて変更することができる。上移動刃54の刃部は、下移動刃52の刃部の形状に応じて変更すれば良い。
上記実施形態では、上移動刃54は下移動刃52と連動して互いに接近したが、接近しない固定刃を用いても良い。上移動刃54を用いた場合は、特に固定刃を用いた場合よりも針穴18の直下で糸を切断でき、切断後に被縫製物に残る糸端の長さを短くできるという効果を奏することができる。
S 被縫製物
1 ミシン
2 ベッド部
3 脚柱部
4 アーム部
7 針棒
8 縫針
9 天秤
10 操作部
11 液晶パネル
13 メインモータ
14 ミシン主軸
15 針板
17 押え足
18 針穴
20 テーブル
21 ロッド
22 ペダル
23 上糸
24 下糸
30 制御装置
40 釜機構
50 糸切り機構
52 下移動刃(第二切断刃)
52a リング部(基部)
52b 取付部
52c 取付フランジ部
54 上移動刃(第一切断刃)
54a リング部(基部)
54b 刃部
54d 取付フランジ部
56 駆動軸
58 刃部
58a 糸捕捉部
58b 第1端面
58c 第2端面
58d 保持部
58e 導入溝
58f 隆起部
60 駆動力伝達機構
62 下移動刃側リンク機構
64 上移動刃側リンク機構
66 駆動力調整機構
68 第1リンク片
70 第2リンク片
72 穴部
74 固定具
80 螺子
82 螺子

Claims (3)

  1. ミシン主軸の回転により上下動する縫針と、
    被縫製物を載置し且つ前記縫針の下端を通す穴を備えた針板と、
    前記針板の下方に設けてあり、前記縫針に挿通した上糸のループを捕捉する剣先を備え、前記縫針の上下動に連動して回転する釜機構と、
    前記針板の下方且つ前記釜機構の上方に位置し、上糸及び下糸を切断する糸切り機構と、
    を備えるミシンにおいて、
    前記糸切り機構は、
    互いに近接する方向に移動し且つ当該移動により重なり合うことで、前記釜機構に捕捉した上糸を下糸と共に切断する刃部を夫々有する第一切断刃及び第二切断刃と、
    前記第一切断刃と前記第二切断刃を互いに近接する方向に移動させる駆動力を前記第一切断刃と前記第二切断刃に伝達する駆動力伝達機構と、
    を備え、
    少なくとも前記第二切断刃の前記刃部は、前記駆動力伝達機構から伝達される前記駆動力を受ける前記第二切断刃の基部に着脱可能に保持しているとともに前記第一切断刃と重なり合う位置に隆起部を有し、前記隆起部の高さが異なる複数種類の形状を交換可能である
    ことを特徴とするミシン。
  2. 請求項1に記載のミシンにおいて、
    前記第二切断刃の前記刃部は、螺子によって前記第二切断刃の前記基部に着脱可能に保持している
    ことを特徴とするミシン。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のミシンにおいて、
    前記第一切断刃は、前記第二切断刃の種類に応じた形状を交換可能に前記第一切断刃の基部に着脱可能に保持している
    ことを特徴とするミシン。
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