JP2013207096A - 電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、電解コンデンサに関する。
タンタル及びアルミニウムのような弁金属(バルブメタル)箔及び当該金属箔の表面に形成した誘電体層を利用した電解コンデンサが広く使用されている。電解コンデンサは、金属箔にエッチング処理を施すことによって誘電体層の表面積を増大できるため、小型化及び大容量化が可能である。電解コンデンサは、例えば以下のように製造される。金属箔の表面をエッチング処理して多数のエッチングピットを形成した後、当該表面を化成処理して酸化被膜(誘電体層)を形成し、陽極箔とする。この陽極箔と、別途、金属箔をエッチング処理して形成した陰極箔とをセパレータを介して巻回し、コンデンサ素子とする。次に、形成したコンデンサ素子に電解液を含浸させ、又は導電性ポリマーから構成される電解質を化学酸化重合などにより形成した後、全体を外装ケースに収容して電解コンデンサが得られる。この電解コンデンサにおいて、電解質は陽極箔の表面に形成された誘電体層及び陰極箔と接触した状態にあり、陽極箔の表面に均一に対向できない陰極箔に代わって真の陰極として機能する。
近年の用途拡大により、電解コンデンサに対する更なる特性の向上及び小型化の要求が高まっている。その一つである耐電圧特性の向上は、セパレータ性能の向上により達成可能であるが、小型化のためにはセパレータの薄膜化が避けられない。このため、セパレータ性能の向上による耐電圧特性の向上及び小型化の両立には限界がある。
一方、特許文献1(特開平10-223481号公報)には、ポリビニルアルコール(PVA)が付着したセパレータを使用し、エチレングリコールを含む電解液をゲル化させた電解コンデンサが開示されている。特許文献1には、この電解コンデンサが静電容量、tanδ特性及び耐電圧特性に優れること、電解液が40%以下のホウ酸を含有した場合に更に耐電圧特性が向上すること、が記載されている。特許文献2(特開2003-100557号公報)には、セパレータにビニル基を有する化合物(例えばPVA)を含有させ、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体をコンデンサ素子内に含有させた電解コンデンサが開示されている。特許文献2には、この電解コンデンサが耐電圧特性に優れることが記載されている。特許文献3(特開2001-102259号公報)には、コンデンサ素子内にPVAを存在させた固体電解コンデンサが開示されている。特許文献3には、陽極箔及び陰極箔を巻回して形成したコンデンサ素子をPVA水溶液に浸漬した後、ホウ酸アンモニウムなどのホウ酸系化成液に浸漬した状態で電圧印加して、巻回時に損傷した誘電体層を修復する(修復化成する)ことにより、電解コンデンサの静電容量及びESR(等価直列抵抗)特性が向上することが記載されている。
しかし、ホウ酸及びその塩は特に欧州において化学物質規制の対象となっており、これらを使用することなく、各種特性に優れる電解コンデンサを実現することが望まれる。
本発明は、各種特性に優れる新規な電解コンデンサの提供を目的とする。
本発明の電解コンデンサは、誘電体層が表面に形成された陽極箔と、陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記誘電体層及び前記陰極箔と接触した状態にある電解質と、を備える。前記電解質は、ビニルアルコール系重合体と、下記式(I)で示される部分構造を分子内に3以上有する有機ホウ素化合物とを含む。
式(I)において、mは0又は1であり、nは1〜3の整数である。R1及びR2は互いに独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基である。R1及びR2は互いに結合していてもよい。
本発明によれば、各種特性に優れる新規な電解コンデンサが得られる。
本発明の電解コンデンサの一例を図1に示す。図1に示す電解コンデンサ11は、ケース12と、ケース12内に収容されたコンデンサ素子1と、同じくケース12内に収容され、コンデンサ素子1内に存在する電解質(図示せず)と、ケース12を封止し、コンデンサ素子1が収容されたケース12内を密閉状態とする絶縁材料からなる封止部材13とを備える。ケース12及び封止部材13は、公知の電解コンデンサにおける各部材と同様の材料から構成され、同様の形状及び構造を有すればよい。電解質は、コンデンサ素子1の外部に存在してもよい。
コンデンサ素子1の一例を図2に示す。図2に示すコンデンサ素子1は、陽極箔2と陰極箔3とがセパレータ4を介して巻回された構造を有する。陽極箔2及び陰極箔3には導電性のリード5が接続されており、リード5には端子6が接続されている。電解コンデンサ11の状態において、端子6及びリード5を介してコンデンサ素子1に電荷が蓄積され、コンデンサ素子1から電荷が放出される。リード5及び端子6は、公知の電解コンデンサにおける各部材と同様の材料から構成され、同様の形状及び構造を有すればよい。コンデンサ素子1における陽極箔2、陰極箔3及びセパレータ4の巻回の状態は、公知の電解コンデンサにおけるコンデンサ素子と同様であればよい。
陽極箔2の表面には誘電体層が形成されている。誘電体層は、例えば陽極箔2を構成する金属の酸化物から構成される。陽極箔2における誘電体層が形成された表面は、陽極箔2の表面積を増大させるために粗面化されている、例えば電気化学的なエッチング処理により無数のエッチングピットが形成されていることが一般的である。誘電体層である酸化被膜は、化成処理、例えばホウ酸アンモニウムなどの化成剤を含む水溶液中で電圧を印加する処理により形成される。
コンデンサ素子1内には電解質が存在しており、電解質は陽極箔2の誘電体層と陰極箔3と接触した状態にある。電解質は誘電体層及び陰極箔3と接触した状態にあるため、陰極箔3に代わって真の陰極として機能する。電解質と誘電体層の密着性の観点から、誘電体層を含めた陽極箔3におけるエッチングピットの空孔径は0.1μm以上が好ましい。空孔径が過度に小さくなると、電解質がピット内に十分に浸透できず、電解質と誘電体層との密着性が低下して、電解コンデンサ11の特性が低下することがある。
なお、陰極箔3の表面には必要に応じて当該表面に誘電体層が形成されていてもよい。この場合、電解質は、陰極箔3における誘電体層の部分と接した状態となる。誘電体層の有無に拘わらず、陰極箔3の表面は、陽極箔2の表面と同様に粗面化されていることが一般的である。
陽極箔2、陰極箔3及びセパレータ4は、公知の電解コンデンサにおける各部材と同様の材料から構成され、同様の形状及び構造を有すればよい。陽極箔2及び陰極箔3は、例えばアルミニウム、タンタルのような弁金属から構成される。セパレータ4は、例えばガラス繊維、合成高分子繊維などの各種繊維の織布、不織布;マニラ紙、クラフト紙、セルロース紙などの紙類から構成される。セパレータ4の密度及び厚さは、強度及び絶縁性の観点から、それぞれ0.15〜0.9g/cm2、20〜150μmが好ましい。
電解質は、液体、ゲル及び固体のいずれの形態もとりうる。ビニルアルコール系重合体及び上記有機ホウ素化合物を含むことを除き、電解質の具体的な組成及び形態は、公知の電解コンデンサにおける電解質と同様であればよい。
液体の電解質(電解液)の溶媒は、エチレングリコールが好適である。電解液の溶媒は、エチレングリコールと他の溶媒との混合溶媒であってもよく、他の溶媒は、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノールなどのアルコール類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミドなどのアミド類(環状アミドであってもよい);ラクトン類;ニトリル系、オキシド系の溶媒;である。
電解液の溶質は特に限定されないが、例えばアンモニウム塩(例えば第四級アンモニウム塩)、アミン塩、環状アミジン化合物の第四級塩である。アミン塩を構成するアミンは、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミンなどの第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミンなどの第二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミンなどの第三級アミンである。第四級アンモニウム塩を構成する第四級アンモニウムカチオンは、例えばテトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類である。環状アミジン化合物の第四級塩を構成するカチオンは、例えばイミダゾール類、テトラヒドロピリミジン類である。
電解液は、例えば陽極箔、陰極箔及びセパレータを巻回して形成したコンデンサ素子に当該電解液を含浸させることにより、誘電体層及び陰極箔と接した状態でコンデンサ素子内に存在させることができる。
ゲル電解質は、例えば電解液にゲル化剤を加えてゲル化した電解質である。ゲル電解質は、例えば陽極箔、陰極箔及びセパレータを巻回して形成したコンデンサ素子に、ゲル化剤を含む電解液を含浸させ、更にゲル化反応を進行させることにより、誘電体層及び陰極箔と接した状態でコンデンサ素子内に存在させることができる。
固体電解質は、例えば導電性ポリマーであり、この場合、本発明の電解コンデンサは固体電解コンデンサとなる。導電性ポリマーは、重合により導電性ポリマーを形成するモノマーを重合して形成できる。当該モノマーは、例えばチオフェン誘導体;アニリン、ピロール、フラン、アセチレン及びこれらの誘導体である。重合は、例えば化学酸化重合である。
固体電解質は、例えば陽極箔、陰極箔及びセパレータを巻回して形成したコンデンサ素子に、上記モノマー、揮発性溶媒及び酸化剤を含むモノマー溶液(重合溶液)を含浸させた後、重合反応を進行させ、更に揮発性溶媒を揮発させることにより、誘電体層及び陰極箔と接した状態でコンデンサ素子内に存在させることができる。揮発性溶媒は、例えば、ペンタンなどの炭化水素類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;蟻酸エチルなどのエステル類;アセトンなどのケトン類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;アセトニトリルなどの窒素化合物である。これらの中でも、メタノール、エタノール及びアセトンが好ましい。酸化剤は、例えばパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸水溶液、ヨウ素酸水溶液である。
本発明の電解コンデンサにおいて、電解質はビニルアルコール系重合体を含む。ビニルアルコール系重合体による電解コンデンサの特性への作用は明確ではないが、ビニルアルコール系重合体の周囲に存在する水分が、誘電体層にクラックが発生した場合にも速やかに酸化被膜が形成され誘電体層が自己修復する要因となること、ビニルアルコール系重合体がエッチングピット内に浸透することにより電極箔と電解質との密着性が向上することなどが、電解コンデンサの特性に作用している可能性がある。
ビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール単位を構成単位として有する重合体であり、例えばポリビニルアルコール(PVA)である。PVAには公知のPVAを使用でき、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カルリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニルなどのビニルエステル系単量体の重合体をけん化して得られる重合体である。ビニルエステル系単量体は、酢酸ビニルが好ましい。
ビニルアルコール系重合体は、上記ビニルエステル系単量体と、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプロピレン、イソブチレンなどのα−オレフィン類との共重合体をけん化して得られる重合体であってもよい。α−オレフィン類は、エチレンが好ましい。
ビニルアルコール系重合体は、α−オレフィン以外の他の共重合成分を有していてもよい。共重合成分は、例えばアクリル酸及びその塩;アクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩)、N−メチロールアクリルアミド及びその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩)、N−メチロールメタクリルアミド及びその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル塩;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸及びその塩、そのエステル又はその無水物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物である。
ビニルアルコール系重合体における共重合成分の含有率は、5モル%以下が好ましく、2モル%以下がより好ましい。
ビニルアルコール系重合体の重合度は特に限定されないが、100〜3000が好ましい。重合度が過度に小さくなると、電解質がビニルアルコール系重合体を含むことによる効果が不十分になることがある。重合度が過度に大きくなると、ビニルアルコール系重合体がエッチングピットの内部に十分に浸透し難くなり、過度に小さい場合と同様に、電解質がビニルアルコール系重合体を含むことによる効果が不十分になることがある。ビニルアルコール系重合体の重合度の下限は300以上が好ましく、上限は2500以下が好ましい。なお、ここでいうビニルアルコール系重合体の重合度は、JIS K6726:1994に準拠して測定される平均重合度のことであり、ビニルアルコール系重合体を再けん化し、精製した後に、30℃の水中で測定した当該重合体の極限粘度から求めることができる。
ビニルアルコール系重合体のけん化度は特に限定されないが、70〜99.9モル%が好ましい。けん化度が過度に小さくなると、電解質と電極箔との親和性が低下し、両者の密着性が低下することがある。けん化度が過度に大きくなると、電解質におけるPVAの含有量にもよるが、電解質が増粘してエッチングピットの内部に十分に浸透できなくなることがある。ビニルアルコール系重合体のけん化度の下限は80モル%以上が好ましく、上限は99モル%以下がより好ましい。
本発明の電解コンデンサにおいて電解質は液体、ゲル、固体のいずれの形態もとりうるが、電解質に含まれるビニルアルコール系重合体の状態は限定されない。ビニルアルコール系重合体は電解質に溶解していてもよいし、単に電解質と混在した状態にあってもよい。ビニルアルコール系重合体の架橋構造、例えば上記有機ホウ素化合物との架橋構造が形成されていてもよい。
電解質にビニルアルコール系重合体を含ませる方法は特に限定されない。例えば、ビニルアルコール系重合体が予め塗布されたセパレータを用いてコンデンサ素子を形成し、当該素子を用いて電解コンデンサを作製する方法、、ビニルアルコール系重合体から構成される繊維を混抄したセパレータを用いてコンデンサ素子を形成し、当該素子を用いて電解コンデンサを作製する方法、ビニルアルコール系重合体を含む溶液にコンデンサ素子を浸漬し、浸漬後の当該素子を用いて電解コンデンサを作製する方法、ビニルアルコール系重合体を混合した電解質を用いて、又はビニルアルコール系重合体を含むモノマー溶液の重合により固体電解質を形成して電解コンデンサを作製する方法がある。例示した最初の3つの方法を採用した場合においても、電解コンデンサとした後の時間の経過によって、電解質は拡散してきたビニルアルコール系重合体を含むようになる。
ビニルアルコール系重合体が予め塗布されたセパレータは、例えば、ビニルアルコール系重合体の溶媒をコーティング機などを用いてセパレータに塗布し、乾燥して形成できる。ビニルアルコール系重合体から構成される繊維を混抄したセパレータは、例えば、セパレータを構成する主繊維とビニルアルコール系重合体から構成される繊維とを抄紙機で抄造して形成できる。ビニルアルコール系重合体を含む溶液にコンデンサ素子を浸漬する場合、例えば、ビニルアルコール系重合体の濃度を0.001〜5質量%に調整した溶液に、室温〜100℃の温度範囲で5秒以上コンデンサ素子を浸漬する。電解質にビニルアルコール系重合体を混合する場合を含めていずれの場合においても、電解質におけるビニルアルコール系重合体の濃度が0.001〜5質量%となるようにビニルアルコール系重合体の量を調整することが好ましい。すなわち、電解質におけるビニルアルコール系重合体の濃度は0.001〜5質量%が好ましい。当該濃度は0.01〜2質量%がより好ましい。
本発明の電解コンデンサにおいて、電解質は下記式(I)で示される部分構造Xを分子内に3以上有する有機ホウ素化合物(a)を含む。
式(I)において、mは0又は1であり、nは1〜3の整数である。R1及びR2は互いに独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基である。R1及びR2は互いに結合していてもよい。
化合物(a)による電解コンデンサの特性への作用、及び化合物(a)とビニルアルコール系共重合体との共存による電解コンデンサの特性への作用は明確ではないが、化合物(a)とビニルアルコール系重合体の反応性がよいことが、電解コンデンサの特性の向上に作用している可能性がある。
部分構造Xにおいて、R1又はR2でありうる「置換されていてもよいアルキル基」における置換される前のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基である。配位置換後の脱離物(代表的には、R1−OH及びR2−OH)の揮発性(揮発による除去の容易性)の観点から、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基及びイソプロピル基が更に好ましい。
R1又はR2でありうる「置換されていてもよいアルキル基」における置換基は、例えばフェニル基、ナフチル基などのアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子である。「置換されていてもよいアルキル基」における置換基の数は0〜3が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。置換基の数が0の場合、R1又はR2は置換基を有さないアルキル基である。
部分構造XにおけるR1及びR2は互いに結合していてもよい。R1及びR2が互いに結合することにより、R1及びR2がそれぞれ結合している2つの酸素原子と、当該2つの酸素原子が結合しているホウ素原子とを含む環構造を形成することができる。部分構造Xがこのような環構造を有する場合、化合物(a)の熱的安定性が向上し、取扱性が向上する。R1及びR2の具体的な結合の形態は限定されず、例えばR1及びR2の双方が「置換されていてもよいアルキル基」であり、当該アルキル基から水素原子が各々1つずつ取り除かれており、水素原子が取り除かれた原子同士が結合している構造に相当する形態である。
部分構造Xにおいて、mは0又は1であり、nは1〜3の整数である。この条件が満たされる限り、m及びnの組み合わせは特に限定されない。化合物(a)の合成が比較的容易であることから、m=1及びn=3の組み合わせ、m=0及びn=2の組み合わせが好ましく、m=1及びn=3の組み合わせがより好ましい。
部分構造Xの具体例を、以下の式(I−1)〜(I−12)に示す。
化合物(a)は、部分構造Xを分子内に3以上有する。分子内に有する部分構造Xの数が2以下の場合、化合物(a)とビニルアルコール系重合体との反応性が不十分となる。ビニルアルコール系重合体との反応性の観点から、化合物(a)が分子内に有する部分構造Xの数は6以下が好ましく、3又は4がより好ましい。化合物(a)が分子内に有する部分構造Xは、全て同一の構造であっても、一部の部分構造Xが異なっていても、全ての部分構造Xが互いに異なっていてもよい。化合物(a)の合成が容易となる観点からは、全て同一の構造であることが好ましい。
化合物(a)における部分構造X以外の部分(以下、当該部分を「母核」という)の構造は特に制限されないが、母核における部分構造Xと結合している原子に部分構造Xの代わりに水素原子を結合させたときに、置換されていてもよい脂肪族炭化水素となる母核、置換されていてもよい芳香族炭化水素となる母核が好ましい。この置換されていてもよい脂肪族炭化水素には、置換されていてもよい脂環式炭化水素が含まれる。置換されていてもよい脂肪族炭化水素となる母核及び置換されていてもよい芳香族炭化水素となる母核における置換基は、例えば水酸基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、メルカプト基である。置換基の数は0〜3が好ましく、0又は1がより好ましい。
母核の炭素数は1〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。
母核の具体例を、以下の式(II−1)〜(II−5)に示す。式(II−1)〜(II−5)におけるアステリスク(*)は、部分構造Xが結合する場所を示す。なお、式(II−1)〜(II−5)の母核におけるアステリスクの位置には原子が存在しない。化合物(a)としたときに当該位置には、例えば部分構造Xの酸素原子(式(I)におけるmが1の場合)が位置する。
式(II−1)〜(II−5)に示す母核の中でも、化合物(a)を比較的安価に準備できることから、式(II−1)に示す母核が好ましい。
化合物(a)の分子量は200〜5000が好ましく、300〜2500がより好ましく、500〜1500が更に好ましい。化合物(a)の分子量が過度に小さくなると、ホウ素原子上の置換基が低級アルコールなどにより配位置換された場合に沸点が低下して、コンデンサ素子及び/又は電解コンデンサの製造工程において化合物(a)が揮発しやすくなる。なお、低級アルコールは、電解質及び/又は電解質の作製時に使用されることがある。化合物(a)の分子量が過度に大きくなると、各種溶媒への溶解性及びビニルアルコール系重合体との相溶性が低下して、電解質に化合物(a)を含めることが難しくなることがある。また、電解コンデンサの特性向上の効果が小さくなることがある。
化合物(a)におけるホウ素原子の含有率(化合物(a)の質量に対する、化合物(a)が有する全てのホウ素原子の質量の割合)は0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜8質量%が更に好ましい。当該含有率が過度に小さくなると、電解コンデンサの特性向上の効果が小さくなることがある。当該含有率が過度に大きくなると、溶液とした際の安定性が低下して、電解質に化合物(a)を含めることが難しくなることがある。
化合物(a)の好ましい具体例を、以下の式(a−1)〜(a−15)に示す。
化合物(a)の合成方法は限定されず、公知の反応を適用して適宜合成できる。例えば、m=1かつn=3の部分構造Xを有する化合物(a)は、反応後に部分構造Xとなる部分が全てアリルオキシ基である合成前駆体を準備し、当該前駆体に対して、ピナコールボランなどのホウ素化合物を用いたヒドロホウ素化反応を進行させることにより、容易に合成できる。例えば、m=0かつn=2の部分構造Xを有する化合物(a)は、反応後に部分構造Xとなる部分が全てビニル基である合成前駆体を準備し、当該前駆体に対して、ピナコールボランなどのホウ素化合物を用いたヒドロホウ素化反応を進行させることにより、容易に合成できる。化合物(a)は、必要に応じて、蒸留などの手法により精製できる。
電解質は、2種以上の化合物(a)を含んでいてもよい。
電解質に化合物(a)を含ませる方法は特に限定されない。例えば、化合物(a)を含む溶液にコンデンサ素子を浸漬し、浸漬後の当該素子を用いて電解コンデンサを作製する方法、化合物(a)を含む電解質を用いて、又は化合物(a)を含むモノマー溶液の重合により固体電解質を形成して電解コンデンサを作製する方法がある。前者の方法を採用した場合においても、電解コンデンサとした後の時間の経過によって、電解質は拡散してきた化合物(a)を含むようになる。なお、必要に応じて、化合物(a)を含む溶液又はモノマー溶液はビニルアルコール系重合体を更に含んでもよい。この場合、電解質に化合物(a)及びビニルアルコール系重合体の双方を含ませる手順の数を減らすことができる。
化合物(a)を含む溶液にコンデンサ素子を浸漬する場合、例えば、化合物(a)の濃度を0.001〜10質量%に調整した溶液に、室温〜100℃の温度範囲で5秒以上コンデンサ素子を浸漬する。化合物(a)を含む電解質を用いる場合、及び化合物(a)を含むモノマー溶液の重合により固体電解質を形成する場合を含めていずれの場合においても、電解質における化合物(a)の濃度が0.001〜1質量%となるように化合物(a)の量を調整することが好ましい。すなわち、電解質における化合物(a)の濃度は0.001〜1質量%が好ましい。当該濃度は、0.005〜0.5質量%がより好ましい。
本発明の電解コンデンサの製造方法は、特に限定されない。当業者であれば、上述した各方法及び公知の方法を組み合わせて本発明の電解コンデンサを製造できる。その一例を以下に示す。
最初に、金属箔をエッチング処理し、その表面を粗面化する。次に、陽極箔となる金属箔を化成処理して、その表面に酸化被膜(誘電体層)を形成する。次に、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを挿入しながら巻回して、コンデンサ素子を形成する。次に、ビニルアルコール系重合体及び化合物(a)を所定の濃度で含む電解液をコンデンサ素子に含浸させる。電解液の組成を調整することによって、巻回時に損傷した誘電体層の修復を実施することもできる。次に、コンデンサ素子をケースに収容して封止部材により封止する。次に、高温で所定の電圧を印加して(エージング処理)、巻回時及びケース収容時に損傷した誘電体層の修復を行う(再化成処理)。コンデンサ素子の形成後、任意の時点で修復化成処理を行ってもよい。
本発明の電解コンデンサの製造時には、エージング処理又はその他の工程において、コンデンサ素子を加熱処理することが好ましい。加熱処理により化合物(a)におけるホウ素原子上の官能基が置換しやすくなり、ビニルアルコール系重合体と化合物(a)との反応性が向上するため、電解質と電極箔との密着性が向上し、電解コンデンサの更なる特性向上を図ることができる。加熱温度は80℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(合成例1)
合成例1では、以下の式(a−3)に示される有機ホウ素化合物(a)を合成した。
合成例1では、以下の式(a−3)に示される有機ホウ素化合物(a)を合成した。
グリセリン4.6質量部、水酸化ナトリウム20質量部、テトラブチルアンモニウムブロミド5.8質量部及び水20質量部を反応器に投入し、攪拌した後、塩化アリル27.6質量部を添加して60℃で12時間更に攪拌した。得られた混合物に酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて攪拌した後、有機層を分液により取り出して濃縮し、減圧蒸留してグリセリントリアリルエーテルを得た。得られたグリセリントリアリルエーテルに対するプロトン核磁気共鳴(1H−NMR、270MHz、重溶媒:重クロロホルム(CDCl3)、基準物質:テトラメチルシラン(TMS))の解析結果を以下に示す。
化学シフトδ(ppm):3.5−3.6(4H、OCHCH* 2O)、3.65−3.75(1H、OCH*CH2O)、4.0−4.1(4H、CH2OCH* 2CH=CH2)、4.1−4.2(2H、CHOCH* 2CH=CH2)、5.1−5.3(6H、OCH2CH=CH* 2)、5.8−6.0(3H、OCH2CH*=CH2)
次に、別の反応器に塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム1.75質量部、テトラヒドロフラン84質量部及びピナコールボラン8.7質量部を投入し、ここに上記作製したグリセリントリアリルエーテル4.0質量部を添加して室温で1時間攪拌した後、更に1時間加熱還流した。得られた混合物に酢酸エチル及び水を加えて攪拌した後、有機層を分液により取り出して濃縮し、減圧蒸留して、式(a−3)に示される有機ホウ素化合物を得た。得られた有機ホウ素化合物に対するプロトン核磁気共鳴(1H−NMR、270MHz、重溶媒:DMSO−d6、基準物質:テトラメチルシラン(TMS))の解析結果を以下に示す。
化学シフトδ(ppm):0.9−1.0(6H、CH2CH* 2B)、1.27(36H、BOCCH* 3)、1.5−1.7(6H、OCH2CH* 2CH2B)、3.3−3.6(11H、OCHCH* 2O、OCH*CH2O、OCH* 2CH2CH2B)
(合成例2)
合成例2では、以下の式(a−12)に示される有機ホウ素化合物(a)を合成した。
合成例2では、以下の式(a−12)に示される有機ホウ素化合物(a)を合成した。
ペンタエリスリトールトリアリルエーテル50質量部、水酸化ナトリウム36質量部、テトラブチルアンモニウムブロミド7.0質量部及び水36質量部を反応器に投入し、攪拌した後、塩化アリル27.7質量部を添加して60℃で9時間さらに攪拌した。得られた混合物に酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて攪拌した後、有機層を分液により取り出して濃縮し、減圧蒸留してペンタエリスリトールテトラアリルエーテルを得た。得られたペンタエリスリトールテトラアリルエーテルに対するプロトン核磁気共鳴(1H−NMR、270MHz、重溶媒:重クロロホルム(CDCl3)、基準物質:テトラメチルシラン(TMS))の解析結果を以下に示す。
化学シフトδ(ppm):3.47(8H、CCH* 2O)、3.9−4.0(8H、OCH* 2CH=CH2)、5.1−5.3(8H、OCH2CH=CH* 2)、5.8−6.0(4H、OCH2CH*=CH2)
次に、別の反応器に塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム1.5質量部、テトラヒドロフラン88.4質量部及びピナコールボラン17.7質量部を投入し、ここに上記作製したペンタエリスリトールテトラアリルエーテル10.0質量部を添加して室温で1時間攪拌した後、更に1時間加熱還流した。得られた混合物に酢酸エチル及び水を加えて攪拌した後、有機層を分液により取り出して濃縮し、減圧蒸留して、式(a−12)に示される有機ホウ素化合物を得た。得られた有機ホウ素化合物に対するプロトン核磁気共鳴(1H−NMR、270MHz、重溶媒:DMSO−d6、基準物質:テトラメチルシラン(TMS))の解析結果を以下に示す。
化学シフトδ(ppm):0.85−0.95(8H、CH2CH* 2B)、1.27(48H、BOCCH* 3)、1.5−1.7(8H、OCH2CH* 2CH2B)、3.3−3.5(16H、CCH* 2O、OCH* 2CH2CH2B)
(実施例1)
クラフト紙(密度0.75g/cm3、厚さ50μm)からなるセパレータにPVA(重合度1700、けん化度98.5モル%)の水溶液(濃度10質量%)を塗布した後、加熱乾燥して、PVAが付着したセパレータを作製した。これとは別に、公知の手法によりアルミニウム箔の表面をエッチング処理して作製した陰極箔と、同じくアルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、公知の手法により当該表面にAl2O3被膜(誘電体層)を形成して作製した陽極箔とを準備した。陽極箔及び陰極箔には、公知の手法によりリード及び端子を別途接続した。次に、作製したセパレータを介して陽極箔及び陰極箔を巻回し、コンデンサ素子を得た。次に、作製したコンデンサ素子に、エチレングリコール100質量部、1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウム15質量部及び合成例1で合成した有機ホウ素化合物(a−3)1質量部からなる電解液を含浸させた。次に、電解液を含浸させた後のコンデンサ素子を有底円筒の形状を有するアルミニウムケースに収容した後、ゴムからなる封止部材によってケースの開口部を封止した。その後、全体を100℃に昇温し、上記端子を介して電圧を印加することでエージング処理(再化成処理)を実施し、電解コンデンサ(C−1)を得た。
クラフト紙(密度0.75g/cm3、厚さ50μm)からなるセパレータにPVA(重合度1700、けん化度98.5モル%)の水溶液(濃度10質量%)を塗布した後、加熱乾燥して、PVAが付着したセパレータを作製した。これとは別に、公知の手法によりアルミニウム箔の表面をエッチング処理して作製した陰極箔と、同じくアルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、公知の手法により当該表面にAl2O3被膜(誘電体層)を形成して作製した陽極箔とを準備した。陽極箔及び陰極箔には、公知の手法によりリード及び端子を別途接続した。次に、作製したセパレータを介して陽極箔及び陰極箔を巻回し、コンデンサ素子を得た。次に、作製したコンデンサ素子に、エチレングリコール100質量部、1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウム15質量部及び合成例1で合成した有機ホウ素化合物(a−3)1質量部からなる電解液を含浸させた。次に、電解液を含浸させた後のコンデンサ素子を有底円筒の形状を有するアルミニウムケースに収容した後、ゴムからなる封止部材によってケースの開口部を封止した。その後、全体を100℃に昇温し、上記端子を介して電圧を印加することでエージング処理(再化成処理)を実施し、電解コンデンサ(C−1)を得た。
(実施例2)
有機ホウ素化合物(a−3)の代わりに合成例2で合成した有機ホウ素化合物(a−12)を用いた以外は実施例1と同様にして、電解コンデンサ(C−2)を作製した。
有機ホウ素化合物(a−3)の代わりに合成例2で合成した有機ホウ素化合物(a−12)を用いた以外は実施例1と同様にして、電解コンデンサ(C−2)を作製した。
(実施例3)
実施例1と同様に陽極箔、陰極箔及びセパレータを巻回して作製したコンデンサ素子を、PVA(重合度1000、けん化度99.5モル%)の水溶液(濃度0.1質量%、温度30℃)に3分浸漬した後、100℃で10分乾燥させた。次に、乾燥後のコンデンサ素子に実施例1で使用した電解液を含浸させた。次に、含浸後のコンデンサ素子を用いて、実施例1と同様にケースへの収容、ケースの封止及びエージング処理を行って電解コンデンサ(C−3)を得た。
実施例1と同様に陽極箔、陰極箔及びセパレータを巻回して作製したコンデンサ素子を、PVA(重合度1000、けん化度99.5モル%)の水溶液(濃度0.1質量%、温度30℃)に3分浸漬した後、100℃で10分乾燥させた。次に、乾燥後のコンデンサ素子に実施例1で使用した電解液を含浸させた。次に、含浸後のコンデンサ素子を用いて、実施例1と同様にケースへの収容、ケースの封止及びエージング処理を行って電解コンデンサ(C−3)を得た。
(実施例4)
実施例1と同様に陽極箔、陰極箔及びセパレータを巻回して作製したコンデンサ素子をリン酸二アンモニウム水溶液(濃度3質量%)に30分浸漬した後、端子を介して素子に電圧を印加して、修復化成を実施した。次に、修復化成後のコンデンサ素子を合成例1で合成した有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液(濃度0.1質量%、温度30℃)に3分浸漬した後、130℃で1時間乾燥させた。次に、乾燥後のコンデンサ素子を、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)及びパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液に浸漬した後、130℃で1時間加熱して、コンデンサ素子内の陽極箔(誘電体層)及び陰極箔と接した状態にある、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)からなる電解質層を形成した。次に、電解質層を形成した後のコンデンサ素子を用いて、実施例1と同様にケースへの収容、ケースの封止及びエージング処理を行って固体電解コンデンサ(C−4)を得た。
実施例1と同様に陽極箔、陰極箔及びセパレータを巻回して作製したコンデンサ素子をリン酸二アンモニウム水溶液(濃度3質量%)に30分浸漬した後、端子を介して素子に電圧を印加して、修復化成を実施した。次に、修復化成後のコンデンサ素子を合成例1で合成した有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液(濃度0.1質量%、温度30℃)に3分浸漬した後、130℃で1時間乾燥させた。次に、乾燥後のコンデンサ素子を、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)及びパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液に浸漬した後、130℃で1時間加熱して、コンデンサ素子内の陽極箔(誘電体層)及び陰極箔と接した状態にある、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)からなる電解質層を形成した。次に、電解質層を形成した後のコンデンサ素子を用いて、実施例1と同様にケースへの収容、ケースの封止及びエージング処理を行って固体電解コンデンサ(C−4)を得た。
(比較例1)
有機ホウ素化合物(a−3)を電解液に加えなかった以外は実施例1と同様にして、電解コンデンサ(C−5)を得た。
有機ホウ素化合物(a−3)を電解液に加えなかった以外は実施例1と同様にして、電解コンデンサ(C−5)を得た。
(比較例2)
修復化成後のコンデンサ素子に対して、有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液に浸漬することなくPEDOTからなる電解質層を形成した以外は実施例4と同様にして、固体電解コンデンサ(C−6)を得た。
修復化成後のコンデンサ素子に対して、有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液に浸漬することなくPEDOTからなる電解質層を形成した以外は実施例4と同様にして、固体電解コンデンサ(C−6)を得た。
(比較例3)
有機ホウ素化合物(a−3)の代わりにピロメリト酸二無水物を用いた以外は実施例1と同様にして、電解コンデンサ(C−7)を得た。
有機ホウ素化合物(a−3)の代わりにピロメリト酸二無水物を用いた以外は実施例1と同様にして、電解コンデンサ(C−7)を得た。
このように作製した電解コンデンサ(C−1)〜(C−7)の静電容量及び耐電圧特性を以下のように評価した。なお、作製した各電解コンデンサは、いずれもホウ酸を含んでいない。
実施例1〜3、比較例1及び比較例3で作製した電解コンデンサの静電容量は、作製直後の当該コンデンサと、105℃の温度雰囲気下において定格電圧である400Vの電圧を2000時間印加した後の当該コンデンサとに対して、20℃、120Hzで測定した。なお、求めた静電容量は試験数20個の平均値とした。電解コンデンサの耐電圧特性は、作製した電解コンデンサ50個のそれぞれに対して105℃の温度雰囲気下において500Vの電圧を100時間印加し、その間に電気的な短絡(ショート)が発生したコンデンサの個数により評価した。また、電解コンデンサの耐電圧特性に関する総合評価として、上記電圧の印加による静電容量の変化率({電圧印加前の静電容量−電圧印加後の静電容量}/電圧印加前の静電容量×100(%))が0.1%以下であり、かつ耐電圧特性試験において電気的な短絡が発生したコンデンサの個数が5個以内であった場合を「○」、それ以外の場合を「×」とした。
実施例4及び比較例2で作製した電解コンデンサの静電容量は、コンデンサに印加する電圧を定格電圧である25Vとした以外は上記と同様にして求めた。耐電圧特性は、コンデンサに印加する電圧を35Vとした以外は上記と同様にして求めた。電解コンデンサの耐電圧特性に関する総合評価は、上記と同様に行った。
評価結果を以下の表1に示す。
表1に示すように、実施例で作製した電解コンデンサは、比較例で作製した電解コンデンサに比べて電気的な短絡(ショート)の発生個数が少なく、耐電圧特性に優れていた。
(実施例5)
有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液の濃度を1質量%に変更した以外は実施例4と同様にして、電解コンデンサ(C−8)を作製した。
有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液の濃度を1質量%に変更した以外は実施例4と同様にして、電解コンデンサ(C−8)を作製した。
(実施例6)
有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液の濃度を3質量%に変更した以外は実施例4と同様にして、電解コンデンサ(C−9)を作製した。
有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液の濃度を3質量%に変更した以外は実施例4と同様にして、電解コンデンサ(C−9)を作製した。
(実施例7)
有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液の濃度を7質量%に変更した以外は実施例4と同様にして、電解コンデンサ(C−10)を作製した。
有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液の濃度を7質量%に変更した以外は実施例4と同様にして、電解コンデンサ(C−10)を作製した。
(比較例4)
修復化成後のコンデンサ素子に対して、有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液に浸漬することなくPEDOTからなる電解質層を形成した以外は実施例5と同様にして、電解コンデンサ(C−11)を得た。
修復化成後のコンデンサ素子に対して、有機ホウ素化合物(a−3)のエタノール溶液に浸漬することなくPEDOTからなる電解質層を形成した以外は実施例5と同様にして、電解コンデンサ(C−11)を得た。
このように作製した電解コンデンサ(C−8)〜(C−11)の作製直後の静電容量(初期特性)及び等価直列抵抗(ESR)特性を評価した。静電容量は、上述の方法により評価した。ESR特性は、20℃、100kHzで測定した。求めたESR特性は試験数20個の平均値とした。評価結果を以下の表2に示す。なお、作製した各電解コンデンサは、いずれもホウ酸を含んでいない。なお、電解コンデンサ(C−8)〜(C−11)の定格電圧は2.5Vとした。
表2に示すように、実施例の電解コンデンサは、比較例の電解コンデンサに比べて静電容量及びESR特性に優れていた。
本発明の電解コンデンサは、従来の電解コンデンサと同様の用途に使用できる。
1 コンデンサ素子
2 陽極箔
3 陰極箔
4 セパレータ
5 リード
6 端子
11 電解コンデンサ
12 ケース
13 封止部材
2 陽極箔
3 陰極箔
4 セパレータ
5 リード
6 端子
11 電解コンデンサ
12 ケース
13 封止部材
Claims (4)
- 前記有機ホウ素化合物が、前記部分構造を分子内に6以下有する請求項1に記載の電解コンデンサ。
- 前記式(I)におけるmが1であり、nが3である請求項1又は2に記載の電解コンデンサ。
- 前記電解質が導電性ポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012074715A JP2013207096A (ja) | 2012-03-28 | 2012-03-28 | 電解コンデンサ |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2017094242A1 (ja) * | 2015-12-04 | 2018-09-20 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 電解コンデンサ |
WO2019065661A1 (ja) * | 2017-09-28 | 2019-04-04 | 日本ケミコン株式会社 | ゲル電解コンデンサ |
-
2012
- 2012-03-28 JP JP2012074715A patent/JP2013207096A/ja active Pending
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