JP2013206786A - 絶縁被覆体 - Google Patents

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博史 原田
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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂を用いて単層で構成しても、耐薬品性に優れる絶縁被覆層を備えた、絶縁被覆体の提供。
【解決手段】芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、液晶高分子(B)を15質量部以上含む、芳香族ポリスルホン組成物を用いて得られた絶縁被覆層で、被覆対象物が被覆されてなることを特徴とする絶縁被覆体。
【選択図】なし

Description

本発明は、極性有機溶媒に対する耐ストレスクラック性に優れた絶縁被覆体に関する。
絶縁電線などの、電気絶縁物で被覆された絶縁被覆体は、各種電気機器に組み込まれる導体部品やコイルに用いられる。
高出力(高電圧、高電流)の用途においては、絶縁被覆体の絶縁被覆層に、ある程度の厚さが必要となるが、この場合絶縁被覆層は、これを形成するための絶縁組成物を用いて、キャスティング及び焼付けからなるプロセスで形成しようとすると、何回にも渡ってこれらプロセスを繰返し行う必要があり、工業的に行うことが困難となってしまう。そこで、熱可塑性樹脂を含む絶縁組成物を用いて、溶融押し出しやプレス加工によって絶縁被覆層を形成するのが好適である。
また、種々の機器又は設備に組み込まれて使用される絶縁被覆体には、高出力機器内で使用されるときに必要な耐熱性、火災時を想定した高度の難燃性(仮に燃焼したとしても、有害ガスを発生させない、又は有害ガスの発生量を少量に抑制することも重要である)、環境耐性としての耐湿熱性が求められる。このような耐熱性、難燃性、耐環境性及び熱可塑性を有し、溶融押出しやプレス加工等のプロセスによって絶縁被覆層を形成可能であり、コスト的にも有利な材料としてポリスルホンが挙げられる。
ポリスルホンを含む絶縁被覆層を備えた絶縁被覆体としては、最外層がポリエーテルスルホンからなり、その他の層がポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミド及びH種ポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる多層の絶縁被覆層が導体上に形成された絶縁被覆体が開示されている(特許文献1参照)。この絶縁被覆体は、曲げ加工性及び耐傷性を有する。しかし、ポリスルホンは耐薬品性に乏しく、極性有機溶媒等の薬品との接触によりクラックが発生し易い(耐ストレスクラック性が低い)。例えば、絶縁電線の場合、これを巻線してコイルを作製し、エポキシ樹脂等を含むワニスに浸漬した後、ワニスを硬化させるときには、絶縁被覆層にクラックが発生し易い。
これに対して、ポリエーテルスルホンを主体として形成された下層、並びにポリエーテルスルホンと、ポリフェニレンスルフィド及びポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種の結晶性樹脂と、を配合したポリマーアロイ、又は変性ポリエーテルエーテルケトンを主体として形成された上層からなる絶縁被覆層を、導体に形成した絶縁被覆体が開示されている(特許文献2参照)。このような絶縁被覆体は、ポリエーテルスルホンを主体として形成された下層が、薬品に接触し難いため、耐薬品性が改善されている。
特開2008−4530号公報 特開2010−123390号公報
しかし、特許文献2に記載の絶縁被覆体は、絶縁被覆層として2層構造が必要であり、製造工程が複雑化して非効率的であるという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂を用いて単層で構成しても、耐薬品性に優れる絶縁被覆層を備えた、絶縁被覆体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、液晶高分子(B)を15質量部以上含む、芳香族ポリスルホン組成物を用いて得られた絶縁被覆層で、被覆対象物が被覆されてなることを特徴とする絶縁被覆体を提供する。
本発明の絶縁被覆体においては、前記芳香族ポリスルホン組成物が、前記芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、前記液晶高分子(B)を25質量部以上含むことが好ましい。
本発明の絶縁被覆体においては、前記芳香族ポリスルホン組成物が、前記芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、前記液晶高分子(B)を55質量部以下含むことが好ましい。
本発明の絶縁被覆体においては、前記芳香族ポリスルホン(A)が、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
(1)−Ph−SO−Ph−O−
(式中、Ph及びPhはそれぞれ独立にフェニレン基であり、前記フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
本発明の絶縁被覆体においては、前記液晶高分子(B)が液晶ポリエステルであることが好ましい。
本発明の絶縁被覆体においては、前記液晶ポリエステルが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、下記式(i)−1で表される繰返し単位を30モル%以上含むことが好ましい。
Figure 2013206786
本発明によれば、熱可塑性樹脂を用いて単層で構成しても、耐薬品性に優れる絶縁被覆層を備えた、絶縁被覆体が提供される。
本発明に係る絶縁被覆体は、芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、液晶高分子(B)を15質量部以上含む、芳香族ポリスルホン組成物を用いて得られた絶縁被覆層で、被覆対象物が被覆されてなることを特徴とする。
前記絶縁被覆層は、芳香族ポリスルホン組成物として、芳香族ポリスルホン(A)に対して、液晶高分子(B)を特定の比率以上含むものを用いたものから形成することで、単層でも優れた耐薬品性を示す。ここで、「耐薬品性」とは、絶縁被覆層が、残留応力が生じている場合も含めて応力が加えられた状態で、極性有機溶媒等の薬品と接触しても、クラックの発生が抑制される(耐ストレスクラック性が高い)ことを意味する。また、前記絶縁被覆層は、芳香族ポリスルホン(A)を用いているので、熱可塑性に加え、十分な耐熱性、難燃性、耐環境性(耐湿性)及び絶縁性を有している。したがって、本発明に係る絶縁被覆体は、高出力(高電圧、高電流)の各種電気機器に組み込まれる導体部品やコイル等への適用に好適である。
前記芳香族ポリスルホン(A)は、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)と、スルホニル基(−SO−)と、酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。
芳香族ポリスルホン(A)は、後述する絶縁被覆層が耐熱性、難燃性及び耐薬品性に特に優れ、さらに機械強度が高く、ガスの発生量が抑制される点から、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、さらに、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)や、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
(1)−Ph−SO−Ph−O−
(式中、Ph及びPhはそれぞれ独立にフェニレン基であり、前記フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
(2)−Ph−R−Ph−O−
(式中、Ph及びPhはそれぞれ独立にフェニレン基であり、前記フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rはアルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子である。)
(3)−(Ph−O−
(式中、Phはフェニレン基であり、前記フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数であり、nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
Ph〜Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p−フェニレン基であってもよいし、m−フェニレン基であってもよいし、o−フェニレン基であってもよいが、p−フェニレン基であることが好ましい。
前記フェニレン基の水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記フェニレン基の水素原子を置換していてもよいアリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記フェニレン基の水素原子を置換していてもよいハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記フェニレン基の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に好ましくは2個以下、より好ましくは1個であり、2個である場合、これら置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
Rである前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基及び1−ブチリデン基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1〜5である。
芳香族ポリスルホン(A)は、これを構成する全繰返し単位の合計量(芳香族ポリスルホン(A)を構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、繰返し単位(1)を50モル%以上有することが好ましく、80モル%以上有することがより好ましく、繰返し単位として実質的に繰返し単位(1)のみを有することがさらに好ましい。なお、芳香族ポリスルホン(A)は、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。
芳香族ポリスルホン(A)は、これを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合反応させることにより、製造することができる。
例えば、繰返し単位(1)を有する芳香族ポリスルホン(A)は、前記ジハロゲノスルホン化合物として、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」ということがある。)を用い、前記ジヒドロキシ化合物として下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
また、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)とを有する芳香族ポリスルホン(A)は、前記ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、前記ジヒドロキシ化合物として下記一般式(6)で表される化合物(以下、「化合物(6)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
また、繰返し単位(1)と繰返し単位(3)とを有する芳香族ポリスルホン(A)は、前記ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、前記ジヒドロキシ化合物として下記一般式(7)で表される化合物(以下、「化合物(7)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
(4)X−Ph−SO−Ph−X
(式中、X及びXは、それぞれ独立にハロゲン原子である。Ph及びPhは、前記と同義である。)
(5)HO−Ph−SO−Ph−OH
(式中、Ph及びPhは、前記と同義である。)
(6)HO−Ph−R−Ph−OH
(式中、Ph、Ph及びRは、前記と同義である。)
(7)HO−(Ph−OH
(式中、Ph及びnは、前記と同義である。)
化合物(4)において、X及びXは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、前記フェニレン基の水素原子を置換していてもよいハロゲン原子と同じものが挙げられる。
本発明においては、目的とする芳香族ポリスルホン(A)の種類に応じて、前記ジハロゲノスルホン化合物及びジヒドロキシ化合物は、いずれも、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重縮合反応は、塩基性化合物を用いて、溶媒(以下、「重合溶媒」という。)中で行うことが好ましい。塩基性化合物としては、炭酸のアルカリ金属塩が好ましい。炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸アルカリであってもよいし、酸性塩である重炭酸アルカリ(炭酸水素アルカリ)であってもよいし、正塩及び酸性塩の混合物であってもよい。
炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく、重炭酸アルカリとしては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましい。
本発明において、塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合溶媒は、原料モノマー(ジハロゲノスルホン化合物、ジヒドロキシ化合物)や芳香族ポリスルホンの溶解性が高く、且つ高沸点であることにより反応温度を高く設定できることから、有機極性溶媒であることが好ましく、求核反応時の溶媒和効果が小さいことから、非プロトン性溶媒であることがより好ましく、その例としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;1−メチル−2−ピロリドン等のアミド;スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等のスルホン;1,3-ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン等の、窒素原子に結合している水素原子が置換されていてもよい尿素骨格を有する化合物が挙げられる。
本発明において、重合溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重縮合反応は、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物との脱ハロゲン化水素重縮合反応であり、仮に副反応が生じなければ、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比が1:1に近いほど、塩基性化合物の使用量が多いほど、重縮合の反応温度が高いほど、また、重縮合の反応時間が長いほど、得られる芳香族ポリスルホン(A)は、重合度が高く、還元粘度が高くなり易い。しかし実際には、例えば、塩基性化合物としてアルカリ金属塩を用いた場合に副生する水酸化アルカリ等により、ハロゲノ基のヒドロキシル基への置換反応や解重合等の副反応が生じ、この副反応により、得られる芳香族ポリスルホン(A)の重合度が低下し、還元粘度が低下し易いので、この副反応の度合いも考慮して、所定の還元粘度を有する芳香族ポリスルホン(A)が得られるように、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比、塩基性化合物の使用量、重縮合の反応温度、及び重縮合の反応時間を調整することが好ましい。
前記ジハロゲノスルホン化合物の例としては、ジハロゲノベンゼノイド化合物が挙げられ、その具体例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4−クロロフェニル−3’,4’−ジクロロフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジフェニルが挙げられる。
ジハロゲノスルホン化合物としては、ハロゲン原子が、それに対しパラ位に結合したスルホニル基を有するものが好ましい。
前記ジヒドロキシ化合物の例としては、2価フェノール化合物(フェノール骨格を有する2価の化合物)が挙げられ、その具体例としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、4,4’−スルホニル−2,2’−ジフェニルビスフェノール、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、フェニルヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−ジヒドロキシジフェニル、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−ジフェニル−4,4’−ビスフェノール、4,4’’’−ジヒドロキシ−p−クオターフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4’−オキシジフェノールが挙げられる。
ジハロゲノスルホン化合物及びジヒドロキシ化合物は、それぞれ、その一部又は全部に代えて、例えば、4−ヒドロキシ−4’−(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル等の、フェノール性ヒドロキシル基及びハロゲン原子を有する化合物を用いてもよい。
典型的な芳香族ポリスルホン(A)の製造方法(以下、「製造方法1」ということがある。)では、第1段階として、ジハロゲノスルホン化合物と、ジヒドロキシ化合物とを、重合溶媒に溶解させ、第2段階として、第1段階で得られた溶液に塩基性化合物を加えて、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合反応させ、第3段階として、第2段階で得られた反応混合物から、未反応の塩基性化合物、副生成物(塩基性化合物としてアルカリ金属塩を用いた場合には、ハロゲン化アルカリ)、及び重合溶媒を除去して、芳香族ポリスルホン(A)を得る。
第1段階の溶解温度は、好ましくは40〜180℃である。また、第2段階の重縮合の反応温度は、好ましくは180〜400℃である。仮に副反応が生じなければ、反応温度が高いほど、目的とする重縮合反応が速やかに進行するので、得られる芳香族ポリスルホン(A)は、重合度が高くなり、その結果、還元粘度が高くなる傾向にある。しかし、実際には、反応温度が高いほど、上記と同様の副反応が生じ易くなり、この副反応により、得られる芳香族ポリスルホン(A)の重合度が低下するので、この副反応の度合いも考慮して、所定の還元粘度を有する芳香族ポリスルホン(A)が得られるように、反応温度を調整することが好ましい。
第2段階の重縮合反応は、副生する水を除去しながら徐々に昇温し、温度が重合溶媒の還流温度に達した後、好ましくは1〜50時間、さらに保温することにより行うとよい。仮に副反応が生じなければ、重縮合の反応時間が長いほど、目的とする重縮合反応が進行するので、得られる芳香族ポリスルホン(A)は、重合度が高くなり、その結果、還元粘度が高くなる傾向にある。しかし、実際には、反応時間が長いほど、上記と同様の副反応も進行し、この副反応により、得られる芳香族ポリスルホン(A)の重合度が低下するので、この副反応の度合いも考慮して、所定の還元粘度を有する芳香族ポリスルホン(A)が得られるように、反応時間を調整することが好ましい。
第3段階では、まず、第2段階で得られた反応混合物から、未反応の塩基性化合物及び前記副生成物を、ろ過や遠心分離等で除去することにより、芳香族ポリスルホン(A)が重合溶媒に溶解してなる溶液を得る。次いで、この溶液から、重合溶媒を除去することにより、芳香族ポリスルホン(A)が得られる。重合溶媒の除去は、例えば、前記溶液から直接重合溶媒を留去することにより行ってもよいし、前記溶液を芳香族ポリスルホン(A)の貧溶媒と混合して、芳香族ポリスルホン(A)を析出させ、ろ過や遠心分離等で芳香族ポリスルホン(A)を分離することにより行ってもよい。
芳香族ポリスルホン(A)の貧溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、ヘプタン及び水が挙げられ、除去し易いことからメタノールが好ましい。
また、比較的高融点の重合溶媒を用いた場合には、第2段階で得られた反応混合物を冷却固化させた後、これを粉砕し、得られた粉体から、水を用いて、未反応の塩基性化合物及び前記副生成物を抽出除去すると共に、芳香族ポリスルホン(A)の溶解性が低く、かつ重合溶媒の溶解性が高い抽出溶媒を用いて、重合溶媒を抽出除去することで、芳香族ポリスルホン(A)を得てもよい。
反応混合物を冷却固化及び粉砕して得られた前記粉体は、抽出効率及び抽出時の作業性の点から、中心粒径が好ましくは50〜2000μm、より好ましくは100〜1500μm、さらに好ましくは200〜1000μmである。中心粒径が大き過ぎると抽出効率が悪く、小さ過ぎると抽出時に固結したり、抽出後のろ過時や乾燥時に目詰まりを起こしたりすることがある。なお、ここで「中心粒径」とは、メジアン径D50のことであり、粒径を2極化した際に、それぞれが等量となる数値のことである。
重合溶媒を抽出除去するための抽出溶媒としては、例えば、重合溶媒がジフェニルスルホンである場合には、アセトン及びメタノールの混合溶媒が挙げられる。ここで、アセトン及びメタノールの混合比は、通常、抽出効率と芳香族ポリスルホン(A)の粉体の固着性とから決定できる。
別の典型的な芳香族ポリスルホン(A)の製造方法(以下、「製造方法2」ということがある。)では、第1段階として、ジヒドロキシ化合物と塩基性化合物とを、重合溶媒中で反応させ、副生する水を除去し、第2段階として、第1段階で得られた反応混合物に、ジハロゲノスルホン化合物を加えて、重縮合反応を行い、第3段階として、製造方法1の場合と同様に、第2段階で得られた反応混合物から、未反応の塩基性化合物、副生成物(塩基性化合物としてアルカリ金属塩を用いた場合には、ハロゲン化アルカリ)、及び重合溶媒を除去して、芳香族ポリスルホン(A)を得る。
製造方法2においては、第1段階で、副生する水を除去し易くするために、水と共沸する有機溶媒を加えて、共沸脱水を行ってもよい。水と共沸する有機溶媒の例としては、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン及びシクロヘキサンが挙げられる。共沸脱水の温度は、好ましくは70〜200℃である。
製造方法2において、第2段階の重縮合の反応温度は、好ましくは180〜400℃であり、製造方法1の場合と同様に、副反応の度合いも考慮して、所定の還元粘度を有する芳香族ポリスルホン(A)が得られるように、重縮合の反応温度及び反応時間を調整することが好ましい。
芳香族ポリスルホン(A)は、例えば、その鎖状構造の末端にフェノール性ヒドロキシル基及びフェノール性ヒドロキシル基の塩(以下、これらをまとめて「末端フェノール性ヒドロキシル基類」という。)を有していてもよい。このような芳香族ポリスルホン(A)を用いることで、後述する液晶高分子(B)と芳香族ポリスルホン(A)との親和性が向上し、その結果、芳香族ポリスルホン組成物の分散性が向上して、取り扱い性が向上し、特性がより良好な絶縁被覆層が得られる。
前記フェノール性ヒドロキシル基の塩とは、ヒドロキシル基からプロトンが解離してなるオキシアニオン基と、対カチオンとから構成され、対カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンの等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニア又は第1〜3級アミンがプロトン化されてなるアンモニウムイオン又は4級アンモニウムイオンが挙げられる。なお、対カチオンが、アルカリ土類金属イオン等の多価カチオンである場合、対アニオンは、複数のオキシアニオン基を含んで構成されていてもよいし、オキシアニオン基と、塩化物イオン、水酸化物イオン等の他のアニオンとを含んで構成されていてもよい。
芳香族ポリスルホン(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、芳香族ポリスルホン(A)を、末端フェノール性ヒドロキシル基類を有するものとする場合には、末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量が検出限界値以上である芳香族ポリスルホン(A)(以下、「芳香族ポリスルホン(A2)」ということがある。)の1種又は2種以上を用い、芳香族ポリスルホン(A)全体の、末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量が、所望の量となるように調節することができる。また、末端フェノール性ヒドロキシル基類を有しない、又は末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量が検出限界値未満である芳香族ポリスルホン(A)(以下、「芳香族ポリスルホン(A1)」ということがある。)の1種又は2種以上と、芳香族ポリスルホン(A2)の1種又は2種以上とを併用して、芳香族ポリスルホン(A)全体の、末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量が、所望の量となるように調節してもよい。
芳香族ポリスルホン(A)の末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量は、例えば、電位差滴定法により測定できる。そして、芳香族ポリスルホン(A)の末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量の検出限界値は、約4×10−7モル/gである。ここで、末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量が検出限界値未満である芳香族ポリスルホン(A)は、本発明において、末端フェノール性ヒドロキシル基類の影響を無視できるものであり、末端フェノール性ヒドロキシル基類を有しない芳香族ポリスルホン(A)と同様に取り扱うことが可能なものである。
芳香族ポリスルホン(A2)の末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量は、好ましくは6×10−5モル/g以上、より好ましくは8×10−5モル/g以上であり、好ましくは2×10−4モル/g以下、より好ましくは1.7×10−4モル/g以下である。下限値以上であることで、芳香族ポリスルホン(A2)を用いたことによる効果がより高くなり、上限値以下であることで、後述する芳香族ポリスルホン組成物の粘度がより高くなり、さらに絶縁被覆層の機械強度がより向上する。なお、ここで示した末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量は、このフェノール性ヒドロキシル基類を有する芳香族ポリスルホン(A2)1g中でのモル数である。芳香族ポリスルホン(A2)の上記のような末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量は、芳香族ポリスルホン(A1)を併用する場合に好適であり、後述するように、芳香族ポリスルホン組成物における芳香族ポリスルホン(A2)の比率を好ましい範囲に設定する場合に、特に好適である。
ただし、本発明においては、芳香族ポリスルホン(A2)を用いなくても、芳香族ポリスルホン組成物の分散性に問題が生じることはない。
芳香族ポリスルホン(A)における芳香族ポリスルホン(A2)の比率は、0〜50質量%であることが好ましく、0〜35質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることがさらに好ましい。上限値以下とすることで、後述する芳香族ポリスルホン組成物を溶融加工して成形する際に、滞留安定性が向上して、押出機からの押し出し等をより安定して行うことができる。
芳香族ポリスルホン(A2)は、上記の製造方法(製造方法1及び2)において、所定量の末端フェノール性ヒドロキシル基類を有する芳香族ポリスルホン(A)が得られるように、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比、塩基性化合物の使用量、重縮合の反応温度、及び重縮合の反応時間を調整することで製造できる。
例えば、ジハロゲノスルホン化合物の使用量は、末端フェノール性ヒドロキシル基類を形成するために、ジヒドロキシ化合物に対して、80〜105モル%であることが好ましく、より高分子量の芳香族ポリスルホン(A)が得られる点から、98〜105モル%であることがより好ましい。
また、例えば、塩基性化合物の使用量は、例えば、塩基性化合物が炭酸のアルカリ金属塩である場合には、芳香族ポリスルホン(A)を高分子量化させ、且つ末端フェノール性ヒドロキシル基類を必要量形成するために、ジヒドロキシ化合物のフェノール性ヒドロキシル基に対して、アルカリ金属として、0.95モル倍以上であることが好ましく、例えば、ジハロゲノスルホン化合物の使用量がジヒドロキシ化合物に対して80〜98モル%である場合には、ジヒドロキシ化合物のフェノール性ヒドロキシル基に対して、アルカリ金属として、0.95〜1.005モル倍であることが好ましく、ジハロゲノスルホン化合物の使用量がジヒドロキシ化合物に対して98〜105モル%である場合には、ジヒドロキシ化合物のフェノール性ヒドロキシル基に対して、アルカリ金属として、1.005〜1.40モル倍であることが好ましい。塩基性化合物が炭酸のアルカリ金属塩以外である場合、その使用量は、上記の使用量を参考にして、適宜調節すればよい。塩基性化合物の使用量が多過ぎると、生成した芳香族ポリスルホン(A)の結合の開裂や分解が生じ易くて低分子量化し易く、少な過ぎると、重縮合反応が十分に進行せず、低分子量の芳香族ポリスルホン(A)しか得られなかったり、末端フェノール性ヒドロキシル基類の量が少なくなる。
ただし、製造方法2は、ジハロゲノスルホン化合物の使用量がジヒドロキシ化合物に対して、80〜98モル%である場合に適用することが好ましい。ジハロゲノスルホン化合物の使用量がジヒドロキシ化合物に対して、例えば、98〜105モル%である場合に、製造方法2を適用すると、末端フェノール性ヒドロキシル基類の量が少なくなる。
芳香族ポリスルホン(A)の還元粘度は、0.25〜0.60dl/gであることが好ましい。下限値以上であることで、絶縁被覆層の機械強度や耐薬品性が向上し、ガスの発生量が抑制される。また、上限値以下であることで、例えば、芳香族ポリスルホン(A2)を用いた場合に、末端フェノール性ヒドロキシル基類をより安定して十分な量を有し、溶融粘度が上昇し過ぎず、芳香族ポリスルホン組成物が適度な流動性を有すると共に、物性が安定して、絶縁被覆層の物性がより安定する。そして、これらの効果をバランスよく、より高く得られることから、芳香族ポリスルホン(A)の還元粘度は、より好ましくは0.30〜0.55dl/g、さらに好ましくは0.36〜0.55dl/gである。
芳香族ポリスルホン(A)としては、市販品を用いてもよい。
例えば、芳香族ポリスルホン(A1)の市販品の例としては、住友化学社製のポリエーテルスルホン「スミカエクセル3600P」、「スミカエクセル4100P」、「スミカエクセル4800P」、「スミカエクセル5200P」が挙げられる。
また、芳香族ポリスルホン(A2)の市販品の例としては、住友化学社製のポリエーテルスルホン「スミカエクセル5003P」が挙げられる。
液晶高分子(B)は、溶融状態で液晶性を示す高分子であればよく、液晶ポリエステルであることが好ましい。
前記液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
液晶ポリエステルの典型的な例としては、
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、
(III)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの、
(IV)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの
が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
液晶ポリエステルは、下記一般式(i)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(i)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(i)と、下記一般式(ii)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(ii)」ということがある。)と、下記一般式(iii)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(iii)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
(i)−O−Ar−CO−
(ii)−CO−Ar−CO−
(iii)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(iv)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(iv)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、Ar又はArで表される前記基毎に、それぞれ独立に2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は1〜10であることが好ましい。
繰返し単位(i)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(i)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びArが2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
繰返し単位(ii)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(ii)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが1,3−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びArがジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
繰返し単位(iii)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(iii)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びArが4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
繰返し単位(i)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは40〜70モル%、特に好ましくは45〜65モル%である。
繰返し単位(ii)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(iii)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(i)の含有量が多いほど、液晶ポリエステルの溶融流動性、耐熱性、強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
繰返し単位(ii)の含有量と繰返し単位(iii)の含有量との割合は、[繰返し単位(ii)の含有量]/[繰返し単位(iii)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(i)〜(iii)を、それぞれ独立に2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(i)〜(iii)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
液晶ポリエステルは、繰返し単位(iii)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(iii)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することがより好ましい。このようにすることで、液晶ポリエステルは溶融粘度が低くなり易い。
液晶ポリエステルは、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、下記式(i)−1で表される繰返し単位を30モル%以上含むことが好ましい。このような液晶ポリエステルを用いることで、後述する絶縁被覆層の耐熱性や、強度・剛性がより向上する。
Figure 2013206786
液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性よく製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下で行ってもよく、この場合の触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは270℃以上、より好ましくは270℃〜400℃、さらに好ましくは280℃〜380℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、高過ぎると、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
本発明において、芳香族ポリスルホン組成物は、液晶高分子(B)を芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、15質量部以上含み、25質量部以上含むことが好ましい。液晶高分子(B)をこのように含むことにより、芳香族ポリスルホン組成物を用いて得られた絶縁被覆層は、液晶高分子(B)を用いなかった場合よりも耐薬品性が顕著に向上する。
また、芳香族ポリスルホン組成物は、液晶高分子(B)を芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、70質量部以下含むことが好ましく、55質量部以下含むことがより好ましく、50質量部以下含むことがさらに好ましい。液晶高分子(B)をこのように含むことにより、芳香族ポリスルホン組成物を用いて得られた絶縁被覆層は、剛性が高くなり過ぎず、加工性が向上する。
芳香族ポリスルホン組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、芳香族ポリスルホン(A)及び液晶高分子(B)以外に、必要に応じて、充填材、添加剤、並びに芳香族ポリスルホン及び液晶高分子以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでいてもよい。また、これら他の成分は、芳香族ポリスルホン組成物の成形体(絶縁被覆層)への加工中に、添加されてもよい。
前記充填材は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよく、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、粒状充填材であってもよい。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維が挙げられる。
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム、炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母、金雲母、フッ素金雲母及び四ケイ素雲母のいずれであってもよい。
粒状充填材の例としては、ガラスビーズ、ガラス粉、中空ガラス、カオリン、クレー、バーミキュライト;ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、長石粉、酸性白土、ろう石クレー、セリサイト、シリマナイト、ベントナイト、スレート粉、シラン等のケイ酸塩;炭酸カルシウム、胡粉、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;バライト粉、ブランフィックス、沈降性硫酸カルシウム、焼石膏、硫酸バリウム等の硫酸塩;水和アルミナ等の水酸化物;アルミナ、酸化アンチモン、マグネシア、酸化チタン、亜鉛華、シリカ、珪砂、石英、ホワイトカーボン、珪藻土等の酸化物;二硫化モリブデン等の硫化物;窒化ホウ素等の窒化物;炭化ケイ素等の炭化物;金属粉粒体;フッ素樹脂等の有機高分子;臭素化ジフェニルエーテル等の有機低分子量結晶等の材質からなるものが挙げられ、球形フィラーや、アスペクト比が小さい粉粒体も含まれる。
前記添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機又は有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、界面活性剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤が挙げられる。
前記樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
芳香族ポリスルホン組成物は、芳香族ポリスルホン(A)及び液晶高分子(B)を合計で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含み、芳香族ポリスルホン(A)及び液晶高分子(B)のみを含むものであってもよい。下限値以上とすることで、耐薬品性により優れた絶縁被覆層が得られる。
芳香族ポリスルホン組成物は、芳香族ポリスルホン(A)、液晶高分子(B)、及び必要に応じて他の成分を配合して得られ、芳香族ポリスルホン(A)及び液晶高分子(B)の含有量が上記の数値範囲となるように、これら成分を配合すればよい。
芳香族ポリスルホン組成物の製造方法は、公知の方法でよく、特に限定されない。例えば、各配合成分を混合して溶媒に溶解又は分散させた液状物を調製し、この液状物から溶媒を蒸発させて組成物を得る方法や、この液状物を貧溶媒に滴下して組成物を沈澱させて得る方法が挙げられる。そして、工業的見地からは、溶融状態で各配合成分を混練する方法(溶融混練)が好ましい。
溶融混練は、一軸又は二軸の押出機、各種ニーダー等の通常使用される混練装置により行うことができる。なかでも、押出機を用いるのが好ましく、このような押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーの1箇所以上に設けられた供給口とを備えたものが好ましく、さらにシリンダーの1箇所以上にベント部を備えたものがより好ましく、二軸の高混練押出機が特に好ましい。このような押出機を用いて配合成分を溶融混練し、押出されるストランドを連続的に切断することで、ペレット状の芳香族ポリスルホン組成物が得られる。
芳香族ポリスルホン組成物の製造時において、配合成分の混合又は混練時の添加順序は、特に限定されない。例えば、あらかじめ芳香族ポリスルホン(A)に液晶高分子(B)を添加して混合した後に、得られた混合物を混練装置に投入して、溶融混練する方法、混練装置に芳香族ポリスルホン(A)を投入してこれを溶融させたところに、液晶高分子(B)を投入して混練する方法、混練装置に液晶高分子(B)を投入してこれを溶融させたところに、芳香族ポリスルホン(A)を投入して混練する方法が挙げられる。
また、芳香族ポリスルホン(A)として、芳香族ポリスルホン(A1)及び(A2)を併用する場合には、例えば、あらかじめ芳香族ポリスルホン(A1)に芳香族ポリスルホン(A2)及び液晶高分子(B)を添加して混合した後に、得られた混合物を混練装置に投入して、溶融混練する方法、混練装置に芳香族ポリスルホン(A1)を投入してこれを溶融させたところに、芳香族ポリスルホン(A2)及び液晶高分子(B)を投入して混練する方法、混練装置に芳香族ポリスルホン(A2)を投入してこれを溶融させたところに、芳香族ポリスルホン(A1)及び液晶高分子(B)を投入して混練する方法、混練装置に液晶高分子(B)を投入してこれを溶融させたところに、芳香族ポリスルホン(A1)及び(A2)を投入して混練する方法、混練装置に芳香族ポリスルホン(A1)及び(A2)をはじめに投入し、その後に液晶高分子(B)を投入して混練する方法が挙げられる。
絶縁被覆体は、芳香族ポリスルホン組成物を用いて得られた絶縁被覆層で、被覆対象物を被覆することで製造できる。ここで、「被覆対象物」は通常、導体である。
被覆対象物を絶縁被覆層で被覆する方法としては、例えば、芳香族ポリスルホン組成物を用いてあらかじめ成形済みの絶縁被覆層で被覆対象物を被覆する方法(以下、「被覆方法1」という。)、芳香族ポリスルホン組成物で被覆対象物を被覆した後、芳香族ポリスルホン組成物から絶縁被覆層を形成する方法(以下、「被覆方法2」という。)が挙げられる。
被覆方法1の例としては、成形済みの絶縁被覆層を、被覆対象物に重ねて加熱プレスすることにより、絶縁被覆層を被覆対象物に圧着させる方法が挙げられる。このときの加熱プレスの条件は、絶縁被覆層及び被覆対象物の種類に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
被覆方法2の例としては、成形前の芳香族ポリスルホン組成物で被覆対象物を被覆した後、芳香族ポリスルホン組成物をプレス成形することで、被覆対象物上で絶縁被覆層を形成する方法が挙げられる。このときのプレス成形の条件は、芳香族ポリスルホン組成物及び被覆対象物の種類に応じて適宜調節すればよく、加熱プレスでもよく、特に限定されない。また、被覆対象物を被覆した後の芳香族ポリスルホン組成物は、必ずしも成形する必要はなく、例えば、各配合成分を溶媒に溶解又は分散させた液状物である芳香族ポリスルホン組成物を用い、これで被覆対象物を被覆した後に、芳香族ポリスルホン組成物から溶媒を蒸発等で除去することで、被覆対象物上で絶縁被覆層を形成する方法が挙げられる。また、溶媒を除去する代わりに、被覆対象物を被覆している芳香族ポリスルホン組成物に貧溶媒を接触させて、被覆対象物上で析出したものを絶縁被覆層とする方法が挙げられる。
例えば、被覆方法2によって、絶縁被覆体として絶縁被覆電線を製造する方法としては、心線(電線)となる導体を加熱する加熱炉と、押出機を備えた被覆装置とが連続的に配置された電線被覆装置を用い、芳香族ポリスルホン組成物で心線を被覆する工程を有する方法が挙げられる。この場合、被覆装置の押出機において、芳香族ポリスルホン組成物を調製しながら被覆することも可能である。
本発明に係る絶縁被覆体は、絶縁被覆層が耐薬品性に優れるので、従来のように絶縁被覆層を複数層とせずに単層で構成しても、被覆対象物に対して十分な絶縁被覆能を有する。また、絶縁被覆層は、熱可塑性樹脂を含む組成物から構成されるので、溶融押出しやプレス等の厚肉化が容易なプロセスにより、十分な厚さの絶縁被覆層を形成できる。本発明に係る絶縁被覆体は、これら優れた効果を奏することにより、用途が高出力(高電圧、高電流)である電線、コイル、その他の導体部材等の絶縁被覆体として好適であり、さらにこれら絶縁被覆体の製造や、これら絶縁被覆体を用いた装置等の組み立てを自動で行うのにも好適である。
本発明に係る絶縁被覆体の用途として、具体的には、電気・電子機器;OA機器;パーソナルコンピュータ等の情報端末機器;ゲーム機;テレビ等のディスプレイ装置;プリンター;コピー機;スキャナ;ファックス;電子手帳;PDA;電子式卓上計算機;電子辞書;カメラ;ビデオカメラ;携帯電話;スマートフォン;記録媒体のドライブ又は読取装置;マウス;テンキー;CDプレーヤー、DVDプレーヤー、Blu−rayプレーヤー等のディスクプレーヤー;携帯ラジオ又は携帯オーディオプレーヤーのハウジング、カバー、キーボード、ボタン、スイッチ、ディスクトレイ、ディスクカートリッジ、ディスクチェンジャー用トレイ部材等が挙げられる。また、ヘッドランプ、ヘルメットシールド等の車輌外装・外販部品;インナードアハンドル、センターパネル、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、ラゲッジフロアボード、(カーナビゲーション等の)ディスプレイハウジング等の車輌内装部品が挙げられる。また、電気・電子部品として、光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;各種コネクターのシールド部材;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;航空機部品;各種電線、モーター、トランス、インバータ、コンバータ等のコイル部品が挙げられる。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、芳香族ポリスルホン(A)の還元粘度、芳香族ポリスルホン(A)の末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量、及び液晶ポリエステルの流動開始温度は、それぞれ以下の方法で測定した。
(芳香族ポリスルホン(A)の還元粘度の測定)
芳香族ポリスルホン(A)1gをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させて、その容量を1dLとすることで、濃度が1%(w/v)の溶液(以下、「PES溶液」という。)を調製し、このPES溶液を用いて、オストワルド粘度計により、25℃の環境で還元粘度を測定した。還元粘度は、次式により求めた。
還元粘度=PES溶液の滴下時間/DMFの滴下時間−1.00
(芳香族ポリスルホン(A)の末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量の測定)
所定量の芳香族ポリスルホン(A)をジメチルホルムアミドに溶解させ、過剰量のパラトルエンスルホン酸を加えた後、電位差滴定装置を用いて、0.05モル/Lのカリウムメトキシド/トルエン・メタノール溶液で滴定し、残存パラトルエンスルホン酸を中和した後、ヒドロキシル基を中和し、このヒドロキシル基の中和に要したカリウムメトキシドの量(モル数)から、ヒドロキシル基のモル数を求め、これを芳香族ポリスルホン(A)の前記所定量(g)で除することにより求めた。
(液晶ポリエステルの流動開始温度の測定)
フローテスター(島津製作所社製、CFT−500型)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
<芳香族ポリスルホン(A)の製造>
[製造例1]
撹拌機、窒素ガス導入管、温度計、及び先端に受器を付したコンデンサーを備えた、容量が2000mLの重合槽に、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン620.3g(2.16モル)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン525.0g(2.10モル)、及び重合溶媒としてジフェニルスルホン784.0gを入れ、系内に窒素ガスを流通させながら180℃まで昇温した後、無水炭酸カリウム301.8gを加え、290℃まで徐々に昇温し、290℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、固化した反応マスを、細かく粉砕した後、温水により洗浄して塩化カリウムを除去した。さらに、アセトンとメタノールの混合溶媒での洗浄を数回行い、重合溶媒であるジフェニルスルホンを除去し、次いで水で洗浄した後、150℃で加熱乾燥を行い、粉末状の芳香族ポリスルホン(A1)として、芳香族ポリスルホン(A1)−1を得た。芳香族ポリスルホン(A1)の中心粒径は500μmであり、還元粘度は0.48dl/gであった。また、末端フェノール性ヒドロキシル基類の含有量は、検出限界値未満であった。
<液晶ポリエステルの製造>
[製造例2]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)、及び1−メチルイミダゾール0.194gを仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら30分かけて室温から145℃まで昇温し、145℃で1時間還流させた。
次いで、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて145℃から320℃まで昇温し、320℃で1時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、261℃であった。
次いで、このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(B)−1を得た。この液晶ポリエステル(B)−1の流動開始温度は、327℃であった。
<絶縁被覆体の製造>
[実施例1〜3、比較例1〜3]
(芳香族ポリスルホン組成物の製造)
表1に示す各成分を秤量し、表1に示す割合で配合した後、タンブラーミキサーを用いて25℃で30分ブレンドした後、二軸押出機(池貝鉄工株式会社製「PCM−30」)を用いて、このブレンド物をシリンダー温度340℃で造粒し、芳香族ポリスルホン組成物のペレットを得た。
なお、表1中、「−」はその成分が未配合であることを意味する。また、表1中の「芳香族ポリスルホン(A2)−1」とは、芳香族ポリスルホン(A2)であり、住友化学社製ポリエーテルスルホン「スミカエクセル5003PS」(末端フェノール性ヒドロキシル基類を8.6×10−5モル/g有し、還元粘度が0.51dl/gであるもの)を用いた。
(絶縁被覆体の製造)
得られた芳香族ポリスルホン組成物のペレットを120℃で3時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業社製「UH−1000型」)を用い、シリンダー温度360℃、金型温度150℃でペレットを射出成形して、125mm×13mm×1.6mmの成形体(絶縁被覆層)を作製した。そして、125mm×13mmの大きさに切り出した厚さ1mmのアルミ板を250℃に加熱し、その表面に、作製した前記成形体の表面を、向きを揃えて重ねて圧着させることで、絶縁被覆体を製造した。
<絶縁被覆層の評価>
(耐薬品性)
得られた絶縁被覆体を、アルミ板が下側となるようにスパン間100mmの治具に装着し、絶縁被覆体の下側から上側に向けて、中央部を20mm変位させ、R=72.5mmの変形を絶縁被覆体に与えて、メチルエチルケトン(MEK)を絶縁被覆層の全面に塗布し、絶縁被覆層の変化を目視観察して、耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1中の略号は、それぞれ以下のことを意味する。
R1S:MEK塗布後、1秒で絶縁被覆層が割れた。
R3S:MEK塗布後、3秒で絶縁被覆層が割れた。
CL20:MEK塗布後、20分で絶縁被覆層に僅かにクレージングが発生した。
Figure 2013206786
上記結果から明らかなように、実施例1〜3の絶縁被覆体では、絶縁被覆層に割れ(クラック)が発生せず、絶縁被覆層は単層で構成しても耐薬品性に優れることを確認できた。
これに対して、比較例1〜3の絶縁被覆体では、絶縁被覆層に直ちに割れが発生し、絶縁被覆層は耐薬品性に劣っていた。
本発明は、各種電気機器に組み込まれる絶縁被覆導体に利用可能であり、特に高出力(高電圧、高電流)の条件下で使用される絶縁被覆導体への利用に好適である。

Claims (6)

  1. 芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、液晶高分子(B)を15質量部以上含む、芳香族ポリスルホン組成物を用いて得られた絶縁被覆層で、被覆対象物が被覆されてなることを特徴とする絶縁被覆体。
  2. 前記芳香族ポリスルホン組成物が、前記芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、前記液晶高分子(B)を25質量部以上含むことを特徴とする請求項1に記載の絶縁被覆体。
  3. 前記芳香族ポリスルホン組成物が、前記芳香族ポリスルホン(A)100質量部に対して、前記液晶高分子(B)を55質量部以下含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁被覆体。
  4. 前記芳香族ポリスルホン(A)が、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁被覆体。
    (1)−Ph−SO−Ph−O−
    (式中、Ph及びPhはそれぞれ独立にフェニレン基であり、前記フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
  5. 前記液晶高分子(B)が液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶縁被覆体。
  6. 前記液晶ポリエステルが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、下記式(i)−1で表される繰返し単位を30モル%以上含むことを特徴とする請求項5に記載の絶縁被覆体。
    Figure 2013206786
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