JP2013206638A - 電極−電解質膜接合体形成用シート - Google Patents

電極−電解質膜接合体形成用シート Download PDF

Info

Publication number
JP2013206638A
JP2013206638A JP2012072651A JP2012072651A JP2013206638A JP 2013206638 A JP2013206638 A JP 2013206638A JP 2012072651 A JP2012072651 A JP 2012072651A JP 2012072651 A JP2012072651 A JP 2012072651A JP 2013206638 A JP2013206638 A JP 2013206638A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
electrolyte membrane
proton conductive
conductive material
catalyst
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012072651A
Other languages
English (en)
Inventor
Naoki Deguchi
直幹 出口
Koichiro Miyajima
浩一郎 宮嶋
Kinya Shiraishi
欣也 白石
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Artience Co Ltd
Original Assignee
Toyo Ink SC Holdings Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Ink SC Holdings Co Ltd filed Critical Toyo Ink SC Holdings Co Ltd
Priority to JP2012072651A priority Critical patent/JP2013206638A/ja
Publication of JP2013206638A publication Critical patent/JP2013206638A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Inert Electrodes (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Abstract

【課題】固体高分子形燃料電池における電極−電解質膜接合体を形成するためのシートにおいて、特に、触媒層の厚膜化時における成膜性の悪化を要因とした触媒層の剥落と発電特性の低下のない電極−電解質膜接合体形成用シート、及び該シートの製造方法並びに該シートを用いた燃料電池を提供すること。
【解決手段】基材上に、触媒粒子、プロトン伝導性材料、分散媒を含んでなる触媒層、およびプロトン伝導性材料層が、順次積層されてなる電極−電解質膜接合体形成用シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池における電極−電解質膜接合体を形成するためのシートに関し、特に、触媒層の厚膜化時における成膜性の悪化を要因とした触媒層の剥落と発電特性の低下のない電極−電解質膜接合体形成用シート、及び該シートの製造方法並びに該シートを用いた電極−電解質膜接合体ならびに燃料電池に関するものである。
燃料電池は、電解質膜の両面に触媒層を配置し、水素と酸素の電気化学反応により発電するシステムであり、発電時に発生するのは水のみである。燃料電池は、従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しないために、次世代のクリーンエネルギーシステムとして注目されている。
固体高分子形燃料電池は、他の燃料電池と比較し、軽量化、高出力密度等を達成できる観点から、様々な研究がなされている。固体高分子形燃料電池は、電解質膜としてプロトン伝導性電解質膜を用い、その両面に触媒層及びガス拡散基材(電極基材)を順に配置し、さらにこれをセパレータで挟んだ構造をしている。電解質膜の両面に触媒層を配置し、次いでその両面に電極基材を配置したもの(即ち、電極基材/触媒層/電解質膜/触媒層/電極基材の層構成のもの)は、電極−電解質膜接合体と称されている。
従来より、電極−電解質膜接合体の製造方法としては、例えば、(1)片面に印刷法又はスプレー法を適用して触媒層を形成した2個の電極基材を用い、該電極基材の触媒層面が電解質膜の両面に接するように配置し、熱プレスする方法(特許文献1及び2)、(2)電解質膜の両面に印刷法又はスプレー法を適用して触媒層を形成し、各々の触媒層面に電極基材が接するように配置し、熱プレスする方法(例えば、特許文献3)、(3)基材上に印刷法を適用して形成した触媒層を高温高圧下に電解質膜に転写し、基材を剥離し、次いで電解質膜の両面に転写された触媒層面に電極基材が接するように配置し、熱プレスする方法(例えば、特許文献4)等が知られている。
電池反応の中心となる触媒層に使用される電極触媒としては、高い触媒活性を持つ白金等の貴金属が従来から用いられており、これらの微粒子が炭素粒子に担持された触媒担持炭素粒子として使用される(特許文献5)。上記各種の製造方法で使用される触媒層形成用ペースト組成物は、いずれも該触媒担持炭素粒子をプロトン伝導性材料とともに分散媒に分散させたものである。
これらの触媒層形成用ペースト組成物は、塗膜乾燥時における触媒層の収縮がクラック形成を促し、微細なひび割れを生じやすく、触媒層剥落等の恐れがあり、作業性、製造上での問題があった。
クラックの発生を回避する方法としては、例えば、触媒層形成用ペースト組成物塗工面と基材シート面とを異なる湿度雰囲気に曝し、双方の収縮速度をほぼ一致させた状態で乾燥させる方法(特許文献6)、触媒層形成用ペースト組成物を電極基材上に塗布した後、複数の燃料電池セルの電極基材をほぼ同一の水分量に保持した後、真空下で乾燥して水分を除去する方法(特許文献7)、触媒層形成用ペースト組成物に、沸点が120℃〜150℃の範囲内であって水と自由な割合で混合する有機溶媒を混合する方法(特許文献8)等が提案されている。
しかしながら、特許文献6、7及び8に記載の方法はいずれも電極触媒担持体として炭素粒子を使用したものに限定され、炭素粒子以外の電極触媒担持体を使用する場合に、広く適用することは難しい。電極触媒担持体が炭素粒子である場合、高い割合で電極触媒を担持することが可能であるが、電極触媒担持体が炭素粒子以外である場合は、電極触媒担持体上の電極触媒の担持率が少なく、白金担持炭素粒子と比較すると、十分な性能が得られないことが現状である。従って、電極触媒担持体として、炭素粒子以外のものを使用する場合に、炭素粒子を使用した場合に近い発電特性を得るためには、単位面積当たりの電極触媒担時体の量を増加させることにより、触媒層中の電極触媒の保持量を増加させる必要がある。電極触媒担持体の量を増加させるには触媒層の厚みを増加させることが有効であるが、同時に、クラック発生の防止はさらに困難となる。
さらに、白金の資源的な制約と非常に高価というコスト面の問題から、固体高分子形燃料電池の触媒層中での触媒利用度をより高め、かつ、高温雰囲気下での電圧掃引による白金粒子同士の固着、粒成長を防止するという目的で白金担時率20wt%程度の低白金担持炭素粒子を使用し、白金使用量を低減するための研究も盛んに行われているが、やはり、一定量の白金保持量を達成するために触媒層の厚膜化は避けられず、上記と同様の問題を抱えている。
また、近年では、白金を一切使用しない触媒粒子の開発(例えば、非特許文献1や特許文献9など)も積極的に進められているが、白金と比較すると、その性能はまだ十分ではなく、白金を使用した場合に近い電池性能を得るためには、触媒層の厚みを増加させ、触媒層中の触媒粒子量を増加させる必要があるが、やはり、上記と同様の問題を抱えている。
特公昭62−61118号公報 特公昭62−61119号公報 特公平2−48632号公報 特開平10−64574号公報 特開2006−179427号公報 特開2004−259509号公報 特開2004−259509号公報 特開2010−140699号公報 特開2011−6283号公報
SCIENCE(VOL.332、第443〜447頁、2011年)
本発明は、固体高分子形燃料電池において、触媒層の厚膜化時における成膜性の悪化を要因とした触媒層の剥落と発電特性の低下のない電極−電解質膜接合体形成用シート、及び該シートの製造方法、並びに該シートを用いた燃料電池を提供することを目的とする。
更には、白金担持炭素粒子と比較して触媒活性に劣る触媒粒子を使用する際でも、触媒層の厚膜化時における成膜性の悪化を要因とした触媒層の剥落が防止され、触媒粒子保持量が多い電極−電解質膜接合体形成用シート、及び該シートの製造方法、並びに該シートを用いた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の実施態様は、基材上に、触媒粒子、プロトン伝導性材料、分散媒を含んでなる触媒層、およびプロトン伝導性材料層が、順次積層されてなる電極−電解質膜接合体形成用シートに関する。
また、本発明の実施態様は、プロトン伝導性材料層中のプロトン伝導性材料が、フッ素系プロトン伝導性高分子材料、炭化水素系プロトン伝導性材料、無機プロトン伝導性材料、有機−無機ハイブリッドプロトン伝導性材料およびこれらの混合物からなる群から選択されるプロトン伝導性材料である前記の電極−電解質膜接合体形成用シートに関する。
また、本発明の実施態様は、基材上の触媒粒子保持量が0.5mg/cm2〜7.0mg/cm2であり、かつ触媒層の厚さが20〜250μmである前記の電極−電解質膜接合体形成用シートに関する。
また、本発明の実施態様は、プロトン伝導性材料層の厚さが0.5〜60μmである前記の電極−電解質膜接合体形成用シートに関する。
また、本発明の実施態様は、触媒粒子が炭素系触媒粒子である前記の電極−電解質膜接合体形成用シートに関する。
また、本発明の実施態様は、電極−電解質膜接合体形成用シートの製造方法であって、
(1)基材上に、触媒粒子、プロトン伝導性材料、分散媒を含んでなる前記触媒層形成用ペースト組成物を塗布後、乾燥し、触媒層を形成する工程
(2)上記(1)で形成した触媒層上に、プロトン伝導性材料と分散媒を含んでなるプロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物を塗布後、乾燥し、プロトン伝導性材料層を形成する工程
を順次行う前記の電極―電解質膜接合体形成用シートの製造方法に関する。
また、本発明の実施態様は、前記の電極−電解質膜接合体形成用シートが、電解質膜の少なくとも片面に転写、もしくは接合されてなる電極−電解質膜接合体に関する。
また、本発明の実施態様は、前記記載の電極−電解質膜接合体を含んでなる固体高分子形燃料電池に関する。
本発明により、触媒層の厚膜化時における成膜性の悪化を要因とした触媒層の剥落と発電特性の低下のない電極−電解質膜接合体形成用シート及び該シートの製造方法、並びに該シートを用いた燃料電池の提供が可能となる。
また、本発明により、白金担持炭素粒子と比較して触媒活性に劣る触媒粒子を使用する際でも、触媒層の厚膜化時における成膜性の悪化を要因とした触媒層の剥落が防止され、触媒粒子保持量が多い電極−電解質膜接合体形成用シート、及び該シートの製造方法、並びに該シートを用いた燃料電池を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(電極−電解質膜接合体形成用シート)
本発明の電極−電解質膜接合体形成用シートは、基材の片面上に触媒層を形成し、該触媒層上にプロトン伝導性材料層が更に積層されてなるものである。これを電解質膜上の少なくとも片面に転写、もしくは接合したものは、固体高分子形燃料電池用カソードとして好適に用いることができる。
(基材)
基材としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを挙げることができる。
また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂フィルムを用いることもできる。
更に、基材は、高分子フィルム以外に、カーボンペーパー、カーボンクロス等の炭素繊維からなるシートであってもよく、公知又は市販のものを用いることができる。
基材の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から、通常6〜300μm程度、好ましくは15〜200μm 程度、より好ましくは30〜100μm程度とするのがよい。
基材は、電極−電解質膜接合体の製造方法により、選択される。基材上に形成された触媒層を電解質膜上へ転写して形成する場合は、剥離性の観点から、高分子フィルムやフッ素系樹脂フィルムを用いることが好適である。一方、基材上に形成された触媒層を、基材も含めて電解質膜上に接合する場合は、ガス拡散の観点から、カーボンペーパーやカーボンクロス等の炭素繊維からなるシートを用いることが好適である。
(触媒層)
本発明の触媒層は、触媒粒子、プロトン伝導性材料を含有してなるものである。その厚さは20〜250μmであることが好ましく、また、触媒粒子保持量が0.5mg/cm2〜7.0mg/cm2であることが好ましい。本明細書では、このように、触媒層ペースト組成物が塗布された基材のことを触媒層形成済み基材と記載することがある。
基材上の触媒粒子保持量が0.5mg/cm2〜7.0mg/cm2であるとは、触媒層形成済み基材をある一定面積で切り出し、その切り出した触媒層形成済み基材における触媒層のみの重量を測定することにより、触媒層中に含まれる触媒粒子量を算出し、切り出した触媒層形成済み基材の面積で割り付けた値が、上記の範囲にあることを指す。触媒層形成済み基材における触媒層のみの重量は、例えば、予め基材の重量を測定しておき、触媒層形成後の重量変化を測定することで算出することができる。触媒層中に含まれる触媒粒子量は、例えば、触媒層形成用ペースト組成物の不揮発成分値と、該不揮発成分値中の触媒粒子の重量%より算出することができる。本明細書では、このように算出された基材上の触媒粒子保持量を、単に、触媒粒子保持量と記載することがある。
(プロトン伝導性材料層)
本発明のプロトン伝導性材料層は、プロトン伝導性材料を含んでなる。その厚さは0.5〜60μmであることが好ましい。
プロトン伝導性材料層の膜厚は、例えば、予め触媒層の膜厚を測定した触媒層形成済み基材の触媒層上に、プロトン伝導性材料層形成用ペーストを用いてプロトン伝導性材料層を積層後、触媒層とプロトン伝導性材料層の積層の膜厚を測定し、予め測定しておいた触媒層の膜厚を減じることにより算出することができる。
(触媒粒子)
本発明で用いられる触媒粒子とは、電極触媒が、電極触媒担時体としての炭素粒子もしくは酸化物粒子あるいは窒化物粒子上に担持してなるもの、及び炭素系触媒粒子のことを指し、公知もしくは市販のものが挙げられる。
電極触媒とは、白金もしくは白金以外の金属、あるいはそれらの合金を指し、固体高分子形燃料電池用のカソード触媒として、酸素還元反応活性を有していれば良い。本発明の燃料電池用電極触媒に用いられる合金としては、特に限定されないが、白金及び遷移金属からなるものが好ましく、遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、及び亜鉛から選択される1種以上がより好ましく例示される。この中でも、特に、白金−コバルト合金が好ましい。
本発明に用いられる電極触媒が、固体高分子形燃料電池用のカソード触媒として酸素還元反応活性を有しているとは、酸素雰囲気下で回転ディスク電極法によるリニアスイープボルタメトリーを測定したとき、酸素還元反応活性電位(ORR活性電位)が0.7V(vsRHE;可逆水素電極)以上であることを意味する。ORR活性電位は、酸素雰囲気下、2000rpm回転で、電流密度が−10μA/cm2時の電位とした。ORR活性電位は、その電圧が高いほど酸素還元反応の触媒能が高く、固体高分子形燃料電池用カソードとして好適である。
電極触媒の電極触媒担時体上への担持率は限定的ではない。電極触媒として白金、電極触媒担持体として炭素粒子を用いた場合は、触媒粒子に対して、通常1〜70重量%程度までの担持が可能であるが、電極触媒担持体として炭素粒子以外のものを用いた場合は、製造上の理由から、触媒粒子に対して、通常1〜20重量%程度となる。
また、電極触媒の電極触媒担持体上への担持率と、触媒粒子保持量より、触媒層中の電極触媒保持量を算出することができる。
炭素系触媒粒子とは、有機顔料、及び貴金属元素を含有しない大環状化合物からなる群から選ばれる有機色素の1種以上を含む前駆体の熱変性物で構成され、固体高分子形燃料電池用のカソード触媒として、酸素還元反応活性を有していれば良い。更に、炭素系触媒粒子としては、前駆体として炭素粒子、樹脂成分、又は天然材料なども含有可能である。それらを含んだ状態で熱処理すると、より複雑な熱分解挙動を示し、有機顔料だけでは昇華しやすい材料も熱処理において残存しやすくなり、炭素系触媒粒子の原料として使用可能となる。
ちなみに、大環状化合物とは、9又はそれ以上の原子(全てが異原子である場合を含
む)、及び、3又はそれ以上の結合原子を有する化合物と定義されている(Coordination Chemistry of Macrocyclic Compounds, G.A.Melson, Plenum Pres, New York & London, 1979)。本発明において、大環状化合物とは、基本骨格の中に4個の窒素原子が平面上に並んだN4構造を有するものをいい、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザアヌレン系化合物などが該当する。
本発明における炭素粒子としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック)、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン等が挙げられる。炭素粒子は、種類やメーカーによって、粒子径、形状、BET比表面積、細孔容積、細孔径、嵩密度、DBP吸油量、表面酸塩基度、表面親水度、導電性など様々な物性やコストが異なるため、使用する用途や要求性能に合わせて最適な材料を選択する。
市販の炭素粒子としては、例えば、
ケッチェンブラックEC−300J、及びEC−600JD等のアクゾ社製ケッチェンブラック;
トーカブラック#4300、#4400、#4500、及び#5500等の東海カーボン社製ファーネスブラック;
プリンテックスL等のデグサ社製ファーネスブラック;
Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULT
RA、Conductex SC ULTRA、975 ULTRA、PUER BLACK100、115、及び205等のコロンビヤン社製ファーネスブラック;
#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、及び#5400B等の三菱化学社製ファーネスブラック;
MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、及びBlackPearls2000等のキャボット社製ファーネスブラック;
Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、及びSuperP−Li等のTIMCAL社製ファーネスブラック;
デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35等の電気化学工業社製アセチレンブラック;
VGCF、VGCF−H、VGCF−X等の昭和電工社製カーボンナノチューブ;
名城ナノカーボン社製カーボンナノチューブ;
xGnP−C−750、xGnP−M−5等のXGSciences社製グラフェンナノプレートレット;
Easy−N社製ナノポーラスカーボン;
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明における酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明における窒化物粒子としては、例えば、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ、窒化タンタル、窒化クロム、窒化バナジウム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
市販の固体高分子形燃料電池用触媒粒子としては、例えば、
TEC10E50E、TEC10E70TPM、TEC10V30E、TEC10V50E、TEC66E50等の白金担持炭素粒子;
TEC66E50、TEC62E58等の白金−ルテニウム合金担持炭素粒子;
をいずれも田中貴金属工業社より購入することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明における炭素系触媒粒子の製造方法において用いられる有機顔料としては、印刷インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用レジストインキ等に使用される種々の顔料が挙げられる。このような顔料としては溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料が挙げられるが、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ジオキサジン顔料等は、固体高分子形燃料電池用カソード触媒の酸素還元反応活性要因として考えられている金属元素や、窒素元素を効率的に導入しやすいため、より好ましい。
本発明における炭素系触媒粒子の製造方法において用いられる貴金属元素を含有しない大環状化合物としては、中心金属がコバルト、鉄、ニッケル、マンガン、銅、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、スズ、アルミニウム、マグネシウムから選ばれる一種であり、それらに有機系配位子が結合したフタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザアヌレン系化合物が挙げられる。また、貴金属元素を含有しない大環状化合物は、電子吸引性官能基や電子供与性官能基を導入されていても問題ない。中でも、コバルトフタロシアニン系化合物、ニッケルフタロシアニン系化合物、鉄フタロシアニン系化合物は、安価で、高い酸素還元反応活性も有することで知られていることから、それらより合成した炭素系触媒粒子は、安価で高い酸素還元反応活性を有する炭素系触媒粒子となるため原料としてより好ましい。
本発明における炭素系触媒粒子の製造方法において用いられる樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシルメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等が挙げられる。又、これらの樹脂の変性体、混合物、又は共重合体であっても良い。
具体的には、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、及びビニルピロリドン等を構成単位として含む共重合体が挙げられる。
本発明における炭素系触媒粒子の製造方法において用いられる天然材料としては、未変性又は変性の、多糖類、天然ワックス、天然樹脂、および植物油からなる群から選ばれる天然材料等が挙げられる。
(炭素系触媒粒子の作製)
本発明における炭素系触媒粒子の製造方法としては、有機顔料、及び貴金属元素を含有しない大環状化合物からなる群から選ばれる有機色素の一種以上を含む前駆体を作製する工程と、前記前駆体を熱処理する工程とを含む方法が挙げられる。
前駆体を作製する方法としては、1種類の有機色素を単独で用いる場合もあるが、2種類以上の有機色素を用いる場合や、炭素粒子、樹脂成分、又は天然材料などと併用する場合もある。2種類以上の成分を混合、または複合化させる場合、乾式混合や湿式混合などの方法があり、混合装置としては、以下のような乾式処理機や湿式処理機が使用できる。
乾式処理機としては、例えば、
2本ロールや3本ロール等のロールミル、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等の高速攪拌機、マイクロナイザーやジェットミル等の流体エネルギー粉砕機、アトライター、ホソカワミクロン社製粒子複合化装置「ナノキュア」、「ノビルタ」、「メカノフュージョン」、奈良機械製作所社製粉体表面改質装置「ハイブリダイゼーションシステム」、「メカノマイクロス」、「ミラーロ」等が挙げられる。
又、乾式処理機を使用する際、母体となる原料粉体に、他の原料を粉体のまま直接添加しても良いが、より均一な混合物を作成するために、前もって他の原料を少量の溶媒に溶解、又、分散させておき、母体となる原料粉体の凝集粒子を解しながら添加する方法が好ましい。更に、処理効率を上げるために、加温することが好ましい場合もある。
本発明における製造方法において使用される樹脂成分、又は天然材料の中には、常温では固体であるが、融点、軟化点、又はガラス転移温度が100℃未満と低い材料があり、こういった材料を用いる場合、常温で混合するより、加温下で溶融させて混合する方がより均一に混合できる場合もある。
湿式処理機としては、例えば、
ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;
エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社製「フィルミックス」等のホモジナイザー類;
ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;
湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械製作所社製「マイクロス」等のメディアレス分散機;
又は、その他ロールミル、ニーダー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、湿式処理機としては、装置からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。又、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
又、各原料の溶媒への濡れ性、分散性を向上させるために、一般的な分散処理剤を一緒に添加し、分散、混合することができる。
又、湿式混合の場合、湿式処理機を用いて作製した分散体を乾燥させる工程が必要となる。この場合、用いる乾燥装置としては、棚式乾燥機、回転乾燥機、気流乾燥機、噴霧乾燥機 撹拌乾燥機、凍結乾燥機などが挙げられる。
本発明における製造方法では、炭素系触媒粒子の原料となる有機色素や、その他の炭素粒子、樹脂成分、又は天然材料などに対して、最適な混合装置又は分散装置を選択することにより、酸素還元反応活性の優れた炭素系触媒粒子を得ることができる。
更に、前駆体として有機色素に樹脂成分を併用する場合、有機色素分散体、又は溶液中でモノマーを重合させ、樹脂成分と有機顔料を複合化させた状態で取り出し、使用することもできる。
最後に、有機顔料、及び貴金属元素を含有しない大環状化合物からなる群から選ばれる有機色素の一種以上を含む前駆体を熱処理する工程においては、加熱温度は処理される有機顔料によって異なるものであるが、500〜1000℃、好ましくは600〜900℃であることが好ましい。
更に、熱処理工程における雰囲気に関しては、有機色素をできるだけ不完全燃焼により炭化させ、有機色素由来の窒素元素や金属元素などを炭素粒子表面に残存させる必要性があるため、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気や、窒素やアルゴンに水素が混合された還元性ガス雰囲気などが好ましい。また、熱処理時の炭素粒子中の窒素元素量低減を抑制するために、窒素元素を多量に含むアンモニアガス雰囲気で熱処理を行なうことも可能である。
また、熱処理工程に関しては、一定の温度下、1段階で処理行なう方法だけでなく、分解温度の異なる有機色素を2種類以上混合する場合や、有機色素以外の炭素粒子、樹脂成分、又は天然材料などを混合し使用する場合などは、それぞれの成分の熱分解挙動に合わせて、加熱温度の異なる条件で数段階に分けて熱処理を行なうことも可能である。そうすることで、酸素還元反応活性要因の一つとして考えられている有機色素由来の窒素元素や金属元素などを、より効率的に多量に残存させられることがある。
(プロトン伝導性材料)
本発明におけるプロトン伝導性材料とは、フッ素系プロトン伝導性高分子材料、炭化水素系プロトン伝導性材料、無機プロトン伝導性材料、有機−無機ハイブリッドプロトン伝導性材料、イオン液体、およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
フッ素系プロトン伝導性高分子材料としては、ナフィオン(商品名)、フレミオン(商品名)、アシプレックス(商品名)等がある。炭化水素系プロトン伝導性材料はリン酸含浸ポリベンズイミダゾール、アルキルスルホン酸含浸ポリベンズイミダゾール、スルホン化4−フェノキシベンゾイル−1、4−フェニレン(SPBP)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)、スチレン−エチレン/ブチレン/エチレンブロック共重合体等がある。無機プロトン伝導性材料としては、酸化タングステンや酸化スズの水和物などの金属水和酸化物、SiO2−H3PO4やSiO2−TiO2−P25などの多元系シリカ、TiO2−H3PO4などの金属リン酸化合物、リンタングステン酸やリンモリブデン酸などのヘテロポリ酸複合体、CsHSO4やCsH2PO4などの無機酸素酸塩などが例示できる。有機−無機ハイブリッド材料としては、シリカとポリエチレンオキシド(PEO)やポリプロピレンオキシド(PPO)、またはポリテトラメチレンオキシド(PTMO)などのポリエーテルポリマーからなるハイブリッド材料や、さらにこれらにタングストリン酸などの固体酸を添加したものが例として挙げられる。
(分散媒)
本発明において、触媒層形成用ペースト組成物及びプロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物に用いられる分散媒としては、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤等があるがこれらに限定されない。また、2種類以上の分散媒を混合して用いても良い。
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、sec−アミルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、t−アミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、等が挙げられる。
脂肪族系としては、n−ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが挙げられ、芳香族系としては、トルエンが挙げられ、その他に、ジメチルカーボネートが挙げられる。
上記溶剤の中ではアルコール系、グリコール系、及びケトン系溶剤が好ましく、更にその中では、乾燥性、被膜形成性の点から、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンが好ましい。
(触媒層形成用ペースト組成物の作成)
本発明において、触媒層形成用ペースト組成物は、例えば、触媒粒子と、プロトン伝導性材料を分散媒に分散することにより製造することができる。各成分の添加順序等については、これに限定されるわけではない。また、必要に応じて、分散処理剤や樹脂成分、分散媒をさらに追加しても構わない。分散処理は、例えば、上記の湿式処理機を用いて実施することができるがこれらに限らない。
触媒粒子は、触媒層形成用ペースト組成物全体に対して、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上の量で用いられる。また、触媒粒子の分散媒中への分散を容易にする観点から、触媒粒子は、分散体中に好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下の量で用いられる。
プロトン伝導性材料は、触媒層形成用ペースト組成物中の触媒粒子に対して、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上の量で用いられる。また、ガス透過を容易する観点からプロトン伝導性材料は、触媒層形成用ペースト組成物中の触媒粒子に対して、好ましくは200重量%以下、より好ましくは150重量%以下、さらに好ましくは100重量%以下の量で用いられる。
(プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物の作製)
本発明において、プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物は、例えば、プロトン伝導性材料を分散媒に分散もしくは溶解させたものを使用しても良いし、市販のプロトン伝導性材料分散溶液等を使用しても良い。また、必要に応じて、分散処理剤や樹脂成分、分散媒をさらに追加しても構わない。分散処理は、例えば、上記の湿式処理機を用いて実施することができるがこれらに限らない。
プロトン伝導性材料は、プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物全体に対して、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上の量で用いられる。プロトン伝導性材料の分散媒中への分散もしくは溶解を容易にする観点から、プロトン伝導性材料は、分散体中に好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下の量で用いられる。
触媒層形成用ペースト組成物及びプロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物の塗布方法としては、例えば、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコータースクリーン印刷等の一般的な方法を適用できるが、特に限定されない。
本発明における電極−電解質膜接合体形成用シートは、触媒層形成用ペースト組成物を基材上に塗布後、乾燥し、触媒層形成後、プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物を該触媒層上に塗布し、乾燥することにより、プロトン伝導性材料層を積層することで得られる。触媒層及びプロトン伝導性材料層が形成される乾燥温度は通常40〜120℃ 程度、好ましくは75〜95℃程度であるが、特に限定されない。乾燥時間は乾燥温度等に応じて適宜決定すればよく、通常5分〜2時間程度、好ましくは30分〜1時間程度である。
(電解質膜)
本発明における電極−電解質膜接合体形成用シートを転写、もしくは接合するための電解質膜としては、公知又は市販のものを使用でき、例えば、ナフィオン(商品名)、フレミオン(商品名)、アシプレックス(商品名)等が挙げられるが、これらに限定されない。
電解質膜の膜厚は、通常20〜250μm程度、好ましくは20〜80μm程度である。
(電極−電解質膜接合体)
本発明における電極−電解質膜接合体は、上記のように作製した電極−電解質膜接合体形成用シートを電解質膜上の片面に転写、もしくは接合したカソードと、水素の酸化を促進するアノードをもう一方の面に有しており、固体高分子形燃料電池に好適に使用することができる。
(アノード)
本発明におけるアノードは、水素の酸化を促進する触媒層と、該触媒層上に配置された電極基材から構成される。水素の酸化を促進する触媒層は、水素の酸化を促進する触媒粒子とプロトン伝導性材料を含有しており、水素の酸化を促進する触媒粒子に用いられる電極触媒としては、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム又はこれらの合金があり、特に炭素粒子上に担持された状態で好適に使用することができる。
本発明におけるアノードは、例えば、水素の酸化を促進する触媒粒子とプロトン伝導性材料を分散媒に分散することによりペースト組成物を作製し、該ペースト組成物を基材上の片面に塗布、乾燥したものを、電解質膜のカソード側とは反対面に位置するように転写後、電極機材を熱プレスにより接着することにより製造することができるが、これに限定されない。
アノード触媒層の電極触媒保持量は通常0.01〜2.0mg/cm2程度、好ましくは0.1〜1.0mg/cm2程度である。
また、アノードの膜厚は、通常1〜20μm程度、好ましくは3〜10μm程度である。
(固体高分子形燃料電池)
本発明の形態の燃料電池は、電極−電解質膜接合体を挟むように、対向配置されたセパレータと集電板より構成される。
上記セパレータは、燃料ガス(水素)や酸化剤ガス(酸素)等の反応ガスの供給、排出を行う。そして、アノード及びカソードの触媒粒子にガス拡散基材(電極基材)を通じてそれぞれ均一に反応ガスが供給されると、両電極に備えられた電極触媒とプロトン伝導性電解質膜との境界において、気相(反応ガス)、液相(プロトン伝導性電解質膜)、固相(両電極が持つ電極触媒)の三相界面が形成される。そして、電気化学反応を生じさせることで直流電流が発生する。
上記電気化学反応において、
カソード側:O2+4H++4e-→2H2
アノード側:H2→2H++2e-
の反応が起こり、アノード側で生成されたH+(プロトン)はプロトン伝導性電解質膜中をカソード側に向かって移動し、e-(電子)は外部の負荷を通ってカソード側に移動する。
一方、カソード側では酸化剤ガス中に含まれる酸素と、アノード側から移動してきたH+及びe-とが反応して水が生成される。この結果、上述の燃料電池は、水素と酸素とから直流電力を発生し、水を生成することになる。
なお、本発明の電極−電解質膜接合体形成用シートは、上記の燃料電池用途だけでなく、金属−空気電池、排ガス浄化、水処理浄化などの触媒膜の製造にも用いることが可能である。
以下、実施例により本発明方法を更に詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例
により本発明の範囲が限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を、「wt%」は「重量%」をそれぞれ表すものとする。
(ORR活性評価)
本発明で使用される触媒粒子は、以下のようにしてORR活性評価を実施することにより、固体高分子形燃料電池用のカソード触媒として使用できることを確認した。
1.インキ化
触媒粒子0.01gを秤量し、プロトン伝導性材料として20wt%ナフィオン分散溶液(和光純薬工業社製、DE2020CStype)を0.02g、分散溶媒として、純水を0.02g、エタノール1.31g、ブタノール0.13gを添加したあと、超音波(45Hz)で15分間分散処理を行ない評価用インキを作製した。
2.作用電極の作製
回転電極(グラッシーカーボン電極の半径0.15cm)表面を鏡面に研磨したあと、電極表面に上記評価用インキ7.5μLを滴下し、1500rpmにてスピンコートし、自然乾燥により作用電極を作製した。
3.リニアスイープボルタメトリー(LSV)測定
上記で作製した作用電極と、対極(白金)、参照電極(Ag/AgCl)が取り付けられた電解槽に電解液(0.5M硫酸水溶液)を入れ、電解液中に酸素を十分にバブリングした後、作用電極を2000rpmで回転させながら、+0.8V(vsAg/AgCl)から−0.2V(vsAg/AgCl)の走査範囲でLSV測定を行なった。ちなみに、電解液中に窒素でバブリングを行なったあと、酸素雰囲気下での測定と同走査範囲でLSV測定を行なった数値をバックグランドとした。
ORR活性電位は、電流密度は−10μA/cm2到達時点の電位を読み取り、可逆水素電極を基準とした電位に換算して算出した。
(触媒粒子の調製)
本発明に用いた触媒粒子は以下のように調製した。なお、白金担持炭素粒子(白金担持カーボン)は、田中貴金属工業社製の白金担持率19.2wt%、BET比表面積460m2/gのものを使用した。
1.白金担持シリカゲル
テトラアンミン白金(II)ジクロライド溶液を用い、シリカゲル上にイオン交換によ
る担持を行った。シリカゲルは市販のクロマトグラフ用wakogel(和光純薬工業 社製、30〜50メッシュ、BET比表面積587m2/g)を用い、120℃で5時 間乾燥した後、デシケーター中に保存したものを使用した。テトラアンミン白金(II)
ジクロライド溶液を用い、アンモニアを1.0mmolを含み、白金濃度を10mmo l/lに調整した水溶液100mlを準備し、300ml共栓付三角フラスコに取り、 上記シリカゲル1.00gを加え、30℃に保たれた恒温振とう水槽中で30時間振と うし、白金錯陽イオンをシリカゲル上に担持した。白金錯陽イオンを担持させたシリカ ゲルは、母液と分離した後、200mlの純水で濾過洗浄して風乾、その後 120℃ で6時間乾燥した。その後 100%水素気流中、 350℃にて3時間加熱して還元 をし、白金担持シリカゲルを得た。このようにして得られた白金担持シリカゲルについ て、ICP(発光分光分析;SPECTRO社製 SPECTRO ARCOS FH S12)を用いて、白金担持量を算出したところ、白金担持量5.9wt%であった。
2.白金担持窒化チタン
ナノ粒子のTiN(日清エンジニアリング社製、比表面積44m2/g)5.03gを、ジフェニルエーテル250mlに入れ、超音波分散機にて30分間混合し、TiNの分散液を調製した。ジフェニルエーテル1000ml中に白金アセチルアセトナートを5.06g、ヘキサデカンジオール26gを入れ、110℃窒素気流中で30分間混合し、白金錯体を含む有機溶液を調製した。得られた溶液に界面活性剤としてオレイン酸8500ml、オレイルアミン酸8000ml入れ、220℃窒素気流中で30分間混合し、オレイン酸およびオレイルアミン酸で構成され、白金イオンを内包したミセルを含む溶液を調製した。上記溶液に水素化トリエチルホウ素リチウムテトラヒドロフラン溶液を100ml加え、270℃窒素気流中30分間混合することで、上記ミセル中に白金イオンを還元し、界面活性剤に覆われた白金微粒子の分散液を調製した。得られた分散液を200℃まで徐冷し、そこに上記TiN分散液を混合して、270℃窒素気流中30分間混合し、界面活性剤で覆われた白金微粒子をそれぞれのTiN粉末表面に吸着させた。TiN微粒子を室温にてろ過し、エタノールでの洗浄を数回行った。60℃にて乾燥後、電気炉にて400℃にて加熱処理し、TiN微粒子表面の有機物を除去することで、白金担持窒化チタンを得た。このようにして得られた白金担持窒化チタンについて、ICPを用いて、白金担持量を算出したところ、白金担持量8.8wt%であった。
3.白金−コバルト合金担持カーボン
ケッチェンブラック(ライオン社製EC−600JD、BET比表面積1270m2/g)50gを純水500mlに加え分散させた。この分散液に白金5.0gを含む塩化白金酸溶液を滴下し、十分になじませた。その後、アンモニア溶液で中和し、ろ過した。得られたケーキを再び純水1000ml中で均一に分散させた後、コバルト0.5gを含む硝酸コバルトを純水100ml中に溶解させた分散液を滴下した。これをアンモニア溶液で中和し、ろ過して得られたケーキを真空中で100℃ で10時間乾燥させた。その後、電気炉中で、アルゴン雰囲気中600℃ で、6時間合金処理した。この合金処理した触媒前駆体10gから合金化していない金属を除去するため、3mol/lのギ酸溶液1000ml中に攪拌し、液温60℃ にて1時間保持した後、ろ過した。得られたケーキを真空中で100℃で10時間乾燥させ、白金−コバルト合金担持カーボンを得た。このようにして得られた白金−コバルト合金担持カーボンについて、ICPを用いて、白金−コバルト合金担持量を算出したところ、白金−コバルト合金担持量20.4wt%であった。
4.炭素系触媒粒子
ポリビニルピリジン(シグマ−アルドリッチ社製、Mw:6万)を出発原料としてポリビニルピリジン鉄(II)錯体10gを得、これとケッチェンブラック(ライオン社製EC−300J、BET比表面積800m2/g)10gを、乳鉢により、乾式混合20分行い、その後、電気炉にて窒素雰囲気下(0.5l/min)、800℃1時間(昇温1.5時間)で焼成した。焼成物を、乳鉢によって、乾式粉砕し、150メッシュのふるいで分級した。更に金属除去のため、37%塩酸中で、撹拌とデカンテーションを3回繰り返し、最後に電気炉に窒素雰囲気下(0.5l/min)、700℃、1時間(昇温2時間)で熱処理し、乾式粉砕し150メッシュで分級して炭素系触媒粒子を得た。
(触媒粒子のORR活性評価)
上記で得られた触媒粒子(白金担持シリカゲル、白金担持窒化チタン、白金−コバルト合金担持カーボン、炭素系触媒粒子)と白金担持カーボン(田中貴金属工業社製、白金担持率19.2wt%)について、LSV測定より、ORR活性電位を測定した(表1)。
Figure 2013206638
表1から、いずれの触媒粒子も固体高分子形燃料電池用カソード触媒としての酸素還元反応活性を有していることがわかる。
(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
白金担持カーボン(白金担持率19.2wt%)5.33部に水12.2部を加え、よく混合した後、1−プロパノール69.13部とナフィオン20wt%分散溶液(和光純薬工業社製DE2020CStype)を4部加え、ペイントシェーカーを用いて分散することにより、触媒層形成用ペースト組成物Aを得た。なお、本ペースト組成物の処方指標としては、不揮発成分(NV)値が8%、触媒粒子とナフィオン(商品名)の乾燥重量比が触媒粒子/ナフィオン(商品名)=2/1(以後Pig/Resin=2と表記する)となるように仕込みを行った。
表2の処方に変更した以外は、触媒層形成用ペースト組成物Aと同様にして触媒層形成用ペースト組成物B〜Eを得た。
Figure 2013206638
(プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物の調製)
1.フッ素系プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物
市販の20wt%ナフィオン分散溶液(和光純薬工業社製DE2020CStype)及び5wt%ナフィオン分散溶液(和光純薬工業社製DE520CStype)を必要に応じて使い分けて使用した。
2.炭素系プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物
市販のスルホン化スチレン−エチレン/ブチレン/エチレンブロック共重合体(SEBE)溶液(シグマ−アルドリッチ社製、5wt%1−プロパノール溶液)を使用した。
3.無機系プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物の調製
鱗片状シリカ水スラリー(洞海化学工業社製サンラブリーLFS:HN−050、不揮発成分値約14%)をトルエンに分散し、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランを加えて100℃で終夜還流した。さらに、過酸化水素水を用いて酸化処理を行うことで、スルホン酸基をもつ分子鎖で上記鱗片状シリカを表面修飾した。該表面修飾した鱗片状シリカを十分に乾燥した後、1−プロパノール中に15wt%分散溶液となるように仕込み、マグネチックスターラーよる撹拌と超音波攪拌を繰り返すことで均一な分散液を得た(プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物a)。
4.有機−無機ハイブリッド系プロトン伝導性材料層形成用ペースト
鱗片状シリカ水スラリー(洞海化学工業社製サンラブリーLFS:HN−050、不揮発成分値約14%)をトルエンに分散し、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランを加えて100℃で終夜還流した。さらに、過酸化水素水を用いて酸化処理を行うことで、スルホン酸基をもつ分子鎖で上記鱗片状シリカを表面修飾した。無機基材として該表面修飾した鱗片状シリカを使用し、有機プロトン伝導性材料として市販のスルホン化スチレン−エチレン/ブチレン/エチレンブロック共重合体溶液(シグマ−アルドリッチ社製、5wt%1−プロパノール溶液)を使用した。組成は、乾燥重量比で鱗片状シリカが10部、スルホン化スチレン−エチレン/ブチレン/エチレンブロック共重合体が90部となるように仕込んだ。鱗片状シリカとスルホン化スチレン−エチレン/ブチレン/エチレンブロック共重合体溶液を混合し、マグネチックスターラーによる撹拌と超音波攪拌を繰り返すことで均一な分散液を作製した。得られた分散液を50−80℃で加熱しながらマグネチックスターラーで攪拌し、分散媒を蒸発させながら粘度を調整することで有機−無機ハイブリッド系プロトン伝導性材料層形成用ペーストを得た。得られたペーストの不揮発成分値は10wt%であった(プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物b)。
5.フッ素系及び無機系プロトン伝導性材料の混合ペースト
鱗片状シリカ水スラリー(洞海化学工業社製サンラブリーLFS:HN−050、不揮発成分値約14%)をトルエンに分散し、(3−ルカプトプロピル)トリメトキシシランを加えて100℃で終夜還流した。さらに、過酸化水素水を用いて酸化処理を行うことで、スルホン酸基をもつ分子鎖で上記鱗片状シリカを表面修飾した。無機基材として該表面修飾した鱗片状シリカを使用し、フッ素系プロトン伝導性材料として市販の5wt%ナフィオン分散溶液(和光純薬工業社製DE520CStype)を使用した。組成は、乾燥重量比で鱗片状シリカが10部、ナフィオン(商品名)が90部となるように仕込んだ。鱗片状シリカとナフィオン分散溶液を混合し、マグネチックスターラーによる撹拌と超音波攪拌を繰り返すことで均一な分散液を作製した。得られた分散液を50−80℃で加熱しながらマグネチックスターラーで攪拌し、分散媒を蒸発させながら粘度を調整することでフッ素系及び無機系プロトン伝導性材料層形成用ペーストを得た。得られたペーストの不揮発成分値は10wt%であった(プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物c)。
実施例1
(電極−電解質膜接合体形成用シートの作製)
工程1.触媒層形成用ペースト組成物の塗布
触媒層形成用ペースト組成物AをPTFEシート(中興化成工業社製スカイブドテープ、厚さ0.05mm)基材上に、オートマチックフィルムアプリケーター(安田精機製作所社製)により、触媒層の厚み30μm程度を目標として塗布した。70℃で1時間乾燥させた後、触媒層形成済み基材を得た。触媒粒子保持量を算出したところ、0.63mg/cm2であった。また、Veeco社製触針式表面形状測定器DEKTAK6Mにて触媒層の膜厚を実測したところ34μmであった。
工程2.プロトン伝導性材料層の積層
工程1で得られた触媒層形成済み基材の触媒層上に、プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物として、ナフィオン5wt%分散溶液(和光純薬工業社製DE520CStype)を使用し、プロトン伝導性材料層の厚み20μm程度を目標として塗布した。70℃で1時間乾燥させた後、電極−電解質膜接合体形成用シートを得た。Veeco社製触針式表面形状測定器DEKTAK6Mを用いた膜厚測定より、プロトン伝導性材料層の厚みを算出したところ15μmであった。
(アノードの作製)
固体高分子形燃料電池の性能評価試験を行うためのアノードの電極触媒として、白金を用いた。白金を含むアノード触媒層は下記のようにして作製した。
白金担持カーボン(田中貴金属工業社製TEC10E50E、白金担持率45.7wt%)を5.33部に水12.2部を加え、よく混合した後、1−プロパノール69.13部とナフィオン20wt%分散溶液(和光純薬工業社製DE2020CStype)を4部加え、ペイントシェーカーを用いて分散することにより、アノード用の触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
次に、調製したペースト組成物をPTFEシート(中興化成工業社製スカイブドテープ厚み0.05mm)基材上に、オートマチックフィルムアプリケーター(安田精機製作所社製)により、触媒層の厚み5μm程度を目標として塗布し、70℃で1時間乾燥させた後、アノード用の触媒層形成済み基材を得た。触媒粒子保持量を算出したところ、0.24mg/cm2であり、これより、電極触媒保持量が約0.11mg/cm2と計算された。また、触媒層の膜厚は6.7μmであった。
(電極−電解質膜接合体の作製)
予め8cm角に切り出したプロトン伝導性電解質膜(デュポン社製、ナフィオン212、51μm)の片面に、2cm角に切断した電極−電解質膜接合体形成用シートを、他面に2cm角に切断したアノード用の触媒層形成済み基材を、各々が対面するように配置し、テスター産業社製、卓上型テストプレスSA−302を用いて130℃、100kgf/cm2、60秒の条件で熱プレスすることにより、各々の触媒層をPTFEシート基材より転写した。さらに、各々の触媒層を一対の電極基材(東レ社製、カーボンペーパー、TGP−H−090、260μm)で挟持し、電極−電解質膜接合体を作製した。
(固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験)
上記のように作製した電極−電解質膜接合体を、燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給するための流路を持つセパレータおよび集電板で挟持し、単セルを構成した。燃料電池運転条件として、温度80℃、湿度100%の条件下で、アノード側に水素を300ml/minで流し、カソード側に酸素を300ml/minで流して発電試験を実施したところ、開放電圧1.01V、最大出力密度0.45W/cm2であった。
(成膜性の評価)
また、上記で作製した電極−電解質膜接合体形成用シートの成膜性を下記の評価基準に従い評価したところ、極めて良好な結果であった。

○(極めて良好):続く電極−電解質膜接合体の作製中、触媒層剥落がない。
△(良好):続く電極−電解質膜接合体の作製中、触媒層剥落が一部生じることがある。
×(不良):触媒層剥落のため、続く電極−電解質膜接合体の作製が困難。
実施例2〜5
プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物を種々変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極−電解質膜形成用シートを作製し、固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験及び成膜性評価を実施した。
比較例1、2
触媒層形成用ペースト組成物の目標膜厚を変更したことと、プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物を積層塗工しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電極−電解質膜形成用シートを作製し、固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験及び成膜性評価を実施した。
比較例3
触媒層形成用ペースト組成物の目標膜厚を変更したことと、プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物は塗工条件(ペースト種及び目標膜厚)を変更したこと以外は、実施例6と同様にして電極−電解質膜形成用シートを作製し、固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験及び成膜性評価を実施した。
触媒層形成用ペースト組成物及びプロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物の塗工条件を表3に、固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験及び成膜性評価を表4に示す(比較のため、実施例1も該表にまとめた)。
Figure 2013206638
なお、上記表における触媒保持量とは触媒粒子保持量のことを指す(以下も同様)。
Figure 2013206638
表3及び表4は、白金担持カーボン(白金担持率19.2wt%)を用いて電極−電解質膜接合体形成用シートを作製し、成膜性及び発電特性を評価した結果をまとめたものである。上記の結果から、高い出力密度を達成するためには、電極−電解質膜接合体形成用シートの触媒粒子保持量を高める必要があるが、プロトン伝導性材料層を積層しなかった場合、比較例2のように、厚膜化による成膜性の悪化により、触媒層剥落が顕著となり、電極−電解質膜接合体を作製することができなくなる。
また、触媒粒子保持量を低下させた場合、比較例1のように、厚膜化による成膜性の悪化は抑えられるが、高い出力密度が得られない点で好ましくない。
さらに、比較例3のように、十分な触媒粒子保持量を有していても、積層したプロトン伝導性材料層の膜厚が厚すぎる場合、ガスの供給が妨げられたり、プロトン伝導抵抗が上昇するなどし、高い出力密度が得られなくなる。
実施例1〜5の結果より、高い触媒粒子保持量と、プロトン伝導性材料層を適正な厚みとすることで、プロトン伝導性材料層形成用ペースト種を変更しても、高い出力密度が得られることがわかる。
実施例6〜8及び比較例4〜9
表5に示すように、触媒層形成用ペースト組成物及びプロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物の塗工条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極−電解質膜形成用シートを作製し、固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験及び成膜性評価を実施した。発電特性評価試験及び成膜性評価結果を表6に示す。
Figure 2013206638
Figure 2013206638
表5及び表6は、触媒粒子を変更して電極−電解質膜接合体形成用シートを作製し、成膜性及び発電性能を評価した結果をまとめたものである。上記の結果から、触媒粒子を変更した場合でも、本発明の有効性が認められる。
なお、触媒層形成用ペースト組成物B及びCは、それぞれの触媒粒子における電極触媒の担持率が低いため、高い出力密度を得るためには、厚膜化により、単位面積当たりの触媒粒子保持量を高くする必要性がある。
実施例9
(電極−電解質膜接合体形成用シートの作製)
工程1.触媒層形成用ペースト組成物の塗布
触媒層形成用ペースト組成物Bを電極基材(東レ社製、カーボンペーパー、TGP−H−090、260μm)上に、オートマチックフィルムアプリケーター(安田精機製作所社製)により、触媒粒子保持量が2.5mg/cm2程度となるように塗布した。70℃で1時間乾燥させた後、触媒層の一部がカーボンペーパー中に含浸した触媒層形成済み基材を得た。実際の触媒粒子保持量を算出したところ、2.72mg/cm2であった。また、カーボンペーパーより突出した触媒層の膜厚を測定したところ37μmであった。
工程2.プロトン伝導性材料層の積層塗工
工程1で得られた触媒層形成済み基材の触媒層上に、プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物として、ナフィオン5wt%分散溶液(和光純薬工業社製DE520CStype)を使用し、プロトン伝導性材料層の厚みが20μm程度を目標として塗布した。70℃で1時間乾燥させた後、電極−電解質膜接合体形成用シートを得た。プロトン伝導性材料層の厚みを算出したところ21μmであった。
(アノードの作製)
固体高分子形燃料電池の性能評価試験を行うためのアノード触媒層は実施例1と同様にして作製した。
(電極−電解質膜接合体の作製)
予め8cm角に切り出したプロトン伝導性電解質膜(デュポン社製、ナフィオン212、51μm)の片面に、2cm角に切断した電極−電解質膜接合体形成用シートを、他面に2cm角に切断したアノード用の触媒層形成済み基材を、各々が対面するように配置し、テスター産業社製、卓上型テストプレスSA−302)を用いて130℃、100kgf/cm2、60秒の条件で熱プレスを行うことで、カソードは電極−電解質膜接合体形成用シートがプロトン伝導性電解質膜に接合され、アノード触媒層は、PTFEシート基材よりプロトン伝導性電解質膜上に転写された。さらに、アノード触媒層上に電極基材(東レ社製、カーボンペーパー、TGP−H−090、260μm)で接合することで、電極−電解質膜接合体を作製した。
(固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験)
実施例1と同様にして評価を行ったところ、開放電圧1.00V、最大出力密度0.29W/cm2であった。
(成膜性の評価)
実施例1と同様の評価基準に従い評価したところ、極めて良好な結果であった。
比較例10、11
プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物を積層塗工しなかったこと以外は、実施例9と同様にして電極−電解質膜形成用シートを作製し、固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験及び成膜性評価を実施した。
実施例9及び比較例10、11の塗工条件を表7に、発電特性評価試験及び成膜性評価の結果を表8に示す。
Figure 2013206638
Figure 2013206638
表7及び表8の結果より、触媒層形成用ペースト組成物を電極基材に塗布・乾燥させ、直接電解質膜に接合することで電極−電解質膜接合体のカソードを作製した場合でも、本発明の有効性が認められる。
なお、上述の方法を用いた場合、電極基材種にもよるが、触媒層の一部が電極基材中に含浸されるため、触媒粒子保持量を高めやすくなる(電極基材によるバインド効果)が、やはり過度の厚膜化を行った場合、成膜性の悪化、触媒層剥離による性能低下は避けられない。
実施例10〜17及び比較例12、13
表9に示すように、触媒層形成用ペースト組成物Eとし、プロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物の塗工条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極−電解質膜形成用シートを作製し、固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験及び成膜性評価を実施した。発電特性評価試験及び成膜性評価結果を表10に示す。
Figure 2013206638
Figure 2013206638
表9及び表10は、触媒粒子として炭素系触媒粒子を用いて、電極−電解質膜接合体形成用シートを作製し、成膜性及び発電性能を評価した結果をまとめたものである。上記の結果から、触媒粒子を炭素系触媒粒子とした場合でも、本発明の有効性が認められる。
なお、上述の炭素系触媒粒子は、近年研究が盛んに行われている、いわゆる貴金属を使用しない触媒粒子のひとつである。固体高分子形燃料電池用カソード触媒としての性能は白金と比較すると十分でなく、未だ研究段階にあるということができる。表9及び表10の結果からも理解できるように、触媒粒子保持量を高めていった場合でも、開放電圧は電極触媒として白金を使用した場合よりも低く、白金と同等レベルの高い出力密度は得ることはできなかった。しかしながら、今後さらに酸素還元反応活性の良好な炭素系触媒粒子が開発されれば、本発明を十分に活用可能である。
実施例18〜20及び比較例14〜16
表11に示すように、触媒層形成用ペースト組成物及びプロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物の塗工条件を変更したこと以外は、実施例9と同様にして電極−電解質膜形成用シートを作製し、固体高分子形燃料電池としての発電特性評価試験及び成膜性評価を実施した。発電特性評価試験及び成膜性評価結果を表12に示す。
Figure 2013206638
Figure 2013206638
表11及び表12の結果より、触媒層形成用ペースト組成物を電極基材に塗布・乾燥させ、直接電解質膜に接合することで電極−電解質膜接合体のカソードを作製した場合でも、本発明の有効性が認められる。

Claims (8)

  1. 基材上に、触媒粒子、プロトン伝導性材料、分散媒を含んでなる触媒層、およびプロトン伝導性材料層が、順次積層されてなる電極−電解質膜接合体形成用シート。
  2. プロトン伝導性材料層中のプロトン伝導性材料が、フッ素系プロトン伝導性高分子材料、炭化水素系プロトン伝導性材料、無機プロトン伝導性材料、有機−無機ハイブリッドプロトン伝導性材料およびこれらの混合物からなる群から選択されるプロトン伝導性材料である請求項1記載の電極−電解質膜接合体形成用シート。
  3. 基材上の触媒粒子保持量が0.5mg/cm2〜7.0mg/cm2であり、かつ触媒層の厚さが20〜250μmである請求項1または2いずれか記載の電極−電解質膜接合体形成用シート。
  4. プロトン伝導性材料層の厚さが0.5〜60μmである請求項1〜3いずれか記載の電極−電解質膜接合体形成用シート。
  5. 触媒粒子が炭素系触媒粒子である請求項1〜4いずれかに記載の電極−電解質膜接合体形成用シート。
  6. 電極−電解質膜接合体形成用シートの製造方法であって、
    (1)基材上に、触媒粒子、プロトン伝導性材料、分散媒を含んでなる前記触媒層形成用ペースト組成物を塗布後、乾燥し、触媒層を形成する工程
    (2)上記(1)で形成した触媒層上に、プロトン伝導性材料と分散媒を含んでなるプロトン伝導性材料層形成用ペースト組成物を塗布後、乾燥し、プロトン伝導性材料層を形成する工程
    を順次行う請求項1〜5いずれか記載の電極―電解質膜接合体形成用シートの製造方法。
  7. 請求項1〜5いずれかに記載の電極−電解質膜接合体形成用シートが、電解質膜の少なくとも片面に転写、もしくは接合されてなる電極−電解質膜接合体。
  8. 請求項7に記載の電極−電解質膜接合体を含んでなる固体高分子形燃料電池。
JP2012072651A 2012-03-28 2012-03-28 電極−電解質膜接合体形成用シート Pending JP2013206638A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012072651A JP2013206638A (ja) 2012-03-28 2012-03-28 電極−電解質膜接合体形成用シート

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012072651A JP2013206638A (ja) 2012-03-28 2012-03-28 電極−電解質膜接合体形成用シート

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013206638A true JP2013206638A (ja) 2013-10-07

Family

ID=49525538

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012072651A Pending JP2013206638A (ja) 2012-03-28 2012-03-28 電極−電解質膜接合体形成用シート

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013206638A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101865212B1 (ko) * 2016-01-22 2018-06-07 한국과학기술연구원 연료전지용 VN 촉매 지지체, 이를 포함하는 Pt/VN 촉매 및 이의 제조방법
JP2018163842A (ja) * 2017-03-27 2018-10-18 凸版印刷株式会社 膜電極接合体の製造方法および触媒インク
CN111326742A (zh) * 2018-12-14 2020-06-23 中国科学院大连化学物理研究所 一种复合电极及其制备和应用
JP2021184374A (ja) * 2020-05-22 2021-12-02 トヨタ自動車株式会社 燃料電池用の積層体

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101865212B1 (ko) * 2016-01-22 2018-06-07 한국과학기술연구원 연료전지용 VN 촉매 지지체, 이를 포함하는 Pt/VN 촉매 및 이의 제조방법
JP2018163842A (ja) * 2017-03-27 2018-10-18 凸版印刷株式会社 膜電極接合体の製造方法および触媒インク
JP7172021B2 (ja) 2017-03-27 2022-11-16 凸版印刷株式会社 膜電極接合体の製造方法
JP2023002824A (ja) * 2017-03-27 2023-01-10 凸版印刷株式会社 膜電極接合体の製造方法および触媒インク
JP7384263B2 (ja) 2017-03-27 2023-11-21 Toppanホールディングス株式会社 触媒インク
CN111326742A (zh) * 2018-12-14 2020-06-23 中国科学院大连化学物理研究所 一种复合电极及其制备和应用
JP2021184374A (ja) * 2020-05-22 2021-12-02 トヨタ自動車株式会社 燃料電池用の積層体
JP7272319B2 (ja) 2020-05-22 2023-05-12 トヨタ自動車株式会社 燃料電池用の積層体

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6354393B2 (ja) 燃料電池用水性触媒ペースト組成物、及び燃料電池
JP6225545B2 (ja) 炭素触媒造粒体、炭素触媒造粒体の製造方法、及び該炭素触媒造粒体を用いた触媒インキ並びに燃料電池
CN101219402B (zh) 担载催化剂,其制备方法,及利用它的燃料电池
JP6244936B2 (ja) 炭素触媒及びその製造方法、及び該炭素触媒を用いた触媒インキ並びに燃料電池
TW201929304A (zh) 觸媒、其製備的方法、包含此觸媒的電極、包含此電極的膜-電極組件以及包含此膜-電極組件的燃料電池
JP2006142293A (ja) 金属触媒,金属触媒の製造方法,電極,電極の製造方法,および燃料電池
JP2009140927A (ja) 燃料電池用独立電極触媒層及びこれを用いた膜−電極接合体の製造方法
JP6736929B2 (ja) 燃料電池用ペースト組成物、及び燃料電池
US20150111124A1 (en) Catalyst slurry for fuel cell, and electrode, membrane electrode assembly and fuel cell using the same
JP2017210638A (ja) 水電解用炭素触媒及びその製造方法、及び該炭素触媒を用いた水電解用触媒インキ並びに水電解装置
JP6809135B2 (ja) コーティング用組成物、コート層付セパレータ、コート層付集電板及び燃料電池
WO2022124407A1 (ja) 電極触媒層、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池
JP2013206638A (ja) 電極−電解質膜接合体形成用シート
JP6040954B2 (ja) 燃料電池用触媒の製造方法
JP6186959B2 (ja) 触媒インキの製造方法、触媒インキ、触媒電極、燃料電池、および空気電池
Asteazaran et al. Research on methanol-tolerant catalysts for the oxygen reduction reaction
JP6237338B2 (ja) スルホン化炭素触媒及びその製造方法、及び該スルホン化炭素触媒を用いた触媒インキ並びに燃料電池
JP5520968B2 (ja) アルカリ膜燃料電池のための触媒被覆膜(ccm)および触媒膜/層、ならびにそれらを作製する方法
JP6855771B2 (ja) 固体高分子形燃料電池用触媒ペースト組成物、及び固体高分子形燃料電池
JP5387791B1 (ja) 炭素触媒、炭素触媒の製造方法、及び該炭素触媒を用いた触媒インキ並びに燃料電池
JP5916528B2 (ja) インク、該インクを用いて形成される電極触媒層およびその用途
JP5672645B2 (ja) 燃料電池用電極触媒インク
JP6263969B2 (ja) 酸化物系非白金触媒造粒体、酸化物系非白金触媒造粒体の製造方法、及び該酸化物系非白金触媒造粒体を用いた触媒インキ並びに燃料電池
JP2013191475A (ja) 燃料電池用触媒インキ及び塗布シート
JP5987775B2 (ja) 燃料電池用触媒ペースト組成物、触媒インキ組成物、触媒層もしくは撥水層、電極膜接合体、燃料電池