JP2013205562A - 眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】眼鏡レンズの製造において、レンズ基材上に形成される被膜の面内の膜厚ばらつきを低減するための手段を提供すること。
【解決手段】レンズ基材上の被塗布面に被膜形成用組成物を塗布した後、該組成物の固化処理を行うことにより被膜を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法。前記被塗布面は凹面であり、前記塗布を、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から前記被膜形成用組成物を供給することにより行い、前記塗布後のレンズ基材を凹面が鉛直下方を向くように方向変更し、かつ前記固化処理が終了するまで凹面が鉛直下方を向いた状態を維持する。
【選択図】なし
【解決手段】レンズ基材上の被塗布面に被膜形成用組成物を塗布した後、該組成物の固化処理を行うことにより被膜を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法。前記被塗布面は凹面であり、前記塗布を、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から前記被膜形成用組成物を供給することにより行い、前記塗布後のレンズ基材を凹面が鉛直下方を向くように方向変更し、かつ前記固化処理が終了するまで凹面が鉛直下方を向いた状態を維持する。
【選択図】なし
Description
本発明は、眼鏡レンズの製造方法に関するものであり、詳しくは、面内の膜厚ばらつきが低減された被膜を有する高品質な眼鏡レンズを提供可能な眼鏡レンズの製造方法に関するものである。
眼鏡レンズは、一般に、レンズ基材により所望の屈折率を実現した上で、レンズ基材上に設けられる被膜により各種性能(調光性能、反射防止能、耐久性向上等)が付与される(例えば特許文献1〜3参照)。
レンズ基材上に形成される被膜の膜厚が面内各部で異なることは、眼鏡レンズにおいて光学的な歪み、干渉縞、クラック等の各種不良の原因となる。したがって高品質な眼鏡レンズを得るためには、レンズ基材上に均一な膜厚で被膜を形成することが求められる。
そこで本発明の目的は、眼鏡レンズの製造において、レンズ基材上に形成される被膜の面内の膜厚ばらつきを低減するための手段を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の新たな知見を得るに至った。
眼鏡レンズの製造工程において、レンズ基材上に被膜を形成する成膜方法としては、特許文献1に記載のスピンコート法や、特許文献2、3に記載されているスプレーコート法のように、鉛直上方を向いた被塗布面に上方から塗布液を供給した後に、塗布液を固化(加熱硬化、乾燥等)する方法が広く用いられている。しかし本発明者らが検討したところ、このような成膜方法により被膜が形成された眼鏡レンズでは、中心部に膜厚不均質からなる歪みが生じることにより光学性能が低下する現象が見られ、特に、厚膜の被膜を形成した眼鏡レンズにおいて、この現象が顕在化することが確認された。
本発明者らは、この原因は、レンズ基材上の凹面に被膜を形成する際、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から塗布液を塗布した後に該塗布液が固化する前に、凹面の面形状に起因して塗布液が凹面の中心部に流動することにある点にあると考え更に検討を重ねた。その結果、塗布液を塗布した後に凹面を反転させ鉛直下方に向けることにより、凹面に塗布された塗布液が中心部に流動して中心部の膜厚が厚くなることにより発生する歪みを防ぐことができることを新たに見出した。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
眼鏡レンズの製造工程において、レンズ基材上に被膜を形成する成膜方法としては、特許文献1に記載のスピンコート法や、特許文献2、3に記載されているスプレーコート法のように、鉛直上方を向いた被塗布面に上方から塗布液を供給した後に、塗布液を固化(加熱硬化、乾燥等)する方法が広く用いられている。しかし本発明者らが検討したところ、このような成膜方法により被膜が形成された眼鏡レンズでは、中心部に膜厚不均質からなる歪みが生じることにより光学性能が低下する現象が見られ、特に、厚膜の被膜を形成した眼鏡レンズにおいて、この現象が顕在化することが確認された。
本発明者らは、この原因は、レンズ基材上の凹面に被膜を形成する際、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から塗布液を塗布した後に該塗布液が固化する前に、凹面の面形状に起因して塗布液が凹面の中心部に流動することにある点にあると考え更に検討を重ねた。その結果、塗布液を塗布した後に凹面を反転させ鉛直下方に向けることにより、凹面に塗布された塗布液が中心部に流動して中心部の膜厚が厚くなることにより発生する歪みを防ぐことができることを新たに見出した。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]レンズ基材上の被塗布面に被膜形成用組成物を塗布した後、該組成物の固化処理を行うことにより被膜を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法であって、
前記被塗布面は凹面であり、
前記塗布を、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から前記被膜形成用組成物を供給することにより行い、
前記塗布後のレンズ基材を凹面が鉛直下方を向くように方向変更し、かつ前記固化処理が終了するまで凹面が鉛直下方を向いた状態を維持することを特徴とする、前記眼鏡レンズの製造方法。
[2]レンズ基材上の前記被塗布面の他方の面は凸面であり、前記方向変更により鉛直上方を向いた凸面に被膜形成用組成物を塗布することを更に含み、かつ、
前記固化処理において凸面に塗布した被膜形成用組成物も固化する[1]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[3]前記被膜形成用組成物は熱硬化性を有し、前記固化処理を加熱により行う[1]または[2]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[4]前記塗布を、スプレーコートおよびスピンコートからなる群から選ばれる塗布方法により行う[1]〜[3]のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
[1]レンズ基材上の被塗布面に被膜形成用組成物を塗布した後、該組成物の固化処理を行うことにより被膜を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法であって、
前記被塗布面は凹面であり、
前記塗布を、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から前記被膜形成用組成物を供給することにより行い、
前記塗布後のレンズ基材を凹面が鉛直下方を向くように方向変更し、かつ前記固化処理が終了するまで凹面が鉛直下方を向いた状態を維持することを特徴とする、前記眼鏡レンズの製造方法。
[2]レンズ基材上の前記被塗布面の他方の面は凸面であり、前記方向変更により鉛直上方を向いた凸面に被膜形成用組成物を塗布することを更に含み、かつ、
前記固化処理において凸面に塗布した被膜形成用組成物も固化する[1]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[3]前記被膜形成用組成物は熱硬化性を有し、前記固化処理を加熱により行う[1]または[2]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[4]前記塗布を、スプレーコートおよびスピンコートからなる群から選ばれる塗布方法により行う[1]〜[3]のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
本発明によれば、面内で膜厚に大きなばらつきのない被膜を有する、高品質な眼鏡レンズを提供することができる。
本発明は、レンズ基材上の被塗布面に被膜形成用組成物(以下、「塗布液」ともいう。)を塗布した後、該組成物の固化処理を行うことにより被膜を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法に関する。ここで前記被塗布面は凹面であり、本発明の眼鏡レンズの製造方法では、前記塗布を、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から前記被膜形成用組成物を供給することにより行い、前記塗布後のレンズ基材を凹面が鉛直下方を向くように方向変更し、かつ前記固化処理が終了するまで凹面が鉛直下方を向いた状態を維持する。これにより、凹面上に塗布された被膜形成用組成物が、凹面の面形状に起因して中心部に流動することを防ぐことができ、その結果、レンズ基材上に、面内の膜厚ばらつきが低減された被膜を形成することが可能となる。
以下、本発明の眼鏡レンズの製造方法について、更に詳細に説明する。
以下、本発明の眼鏡レンズの製造方法について、更に詳細に説明する。
本発明の眼鏡レンズの製造方法において、被膜形成用組成物が塗布される被塗布面は凹面であって、レンズ基材表面であってもよく、レンズ基材上に形成された被膜表面であってもよい。レンズ基材としては、特に限定されるものではなく、眼鏡レンズのレンズ基材に通常使用される材料、具体的にはプラスチック、無機ガラス、等からなるものを用いることができる。レンズ基材の厚さおよび直径は、特に限定されるものではないが、通常、厚さは1〜30mm程度、直径は50mm〜100mm程度である。
上記被塗布面(凹面)への被膜形成用組成物の塗布は、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から前記被膜形成用組成物を供給することにより行われる。例えば、回転する凹面に対して、該凹面上方に配置された塗布ノズルから被膜形成用組成物を吐出することにより塗布する方法(スピンコート)、スプレーノズルから被膜形成用塗布液を下方に向けて噴霧することで、スプレーノズル下方に位置する凹面へ塗布する方法(スプレーコート)により、上記塗布を行うことができる。このような塗布の後、本発明ではレンズ基材を凹面が鉛直下方を向くように方向変更する。凹面を鉛直上方に向けたまま塗布液の固化を行うと固化までの間に凹面中心部に塗布液が流動してしまうのに対し、上記のように方向変更を行うことで、中心部に塗布液が溜まり、中心部の肉厚が厚くなり周縁部の肉厚が薄くなることを防ぐことができる。こうして本発明によれば、レンズ基材上に、面内で膜厚に大きなばらつきのない被膜を有する眼鏡レンズを得ることができる。上記方向変更は、作業者の手により手動で行ってもよく、ロボットアーム等を用いて自動で行ってもよい。
本発明において、上記塗布が直接または被膜を介して間接的に行われるレンズ基材表面は凹面であるが、レンズ基材の他方の面は凹面以外の形状であることが好ましく、例えば平面または凸面であることができる。本発明では、凹面の他方の面に被膜を形成してもよく形成しなくてもよいが、他方の面が凸面であり当該凸面に被膜を形成する場合には、前記方向変更により凹面を下方に向けた後に凸面へ塗布液を塗布することが好ましい。これは以下の理由による。
凸面では、凹面とは逆に、塗布液を塗布した後に鉛直下方に向けると重力の影響により中心部に塗布液が溜まる傾向があるため、塗布液の塗布後、固化処理までの間、凸面を鉛直上方に向いた状態に維持することが、凸面に形成される被膜の膜厚の均一性を高めるうえで好ましい。本発明では前記方向変更の後は、塗布液の固化処理が終了するまで凹面は鉛直下方に向いた状態で維持される。これは即ち、方向変更後は凹面の他方の面は鉛直上方を向いた状態で維持されることを意味する。したがって、方向変更後の凸面上に塗布液を塗布すれば、固化処理までの間、凸面は鉛直上方を向いた状態にあるため、凹面上の被膜の膜厚の均一性とともに、凸面上の被膜の膜厚の均一性も高めることが可能となる。なお、凸面への塗布の詳細は、凹面への塗布について先に説明した通りである。
凸面では、凹面とは逆に、塗布液を塗布した後に鉛直下方に向けると重力の影響により中心部に塗布液が溜まる傾向があるため、塗布液の塗布後、固化処理までの間、凸面を鉛直上方に向いた状態に維持することが、凸面に形成される被膜の膜厚の均一性を高めるうえで好ましい。本発明では前記方向変更の後は、塗布液の固化処理が終了するまで凹面は鉛直下方に向いた状態で維持される。これは即ち、方向変更後は凹面の他方の面は鉛直上方を向いた状態で維持されることを意味する。したがって、方向変更後の凸面上に塗布液を塗布すれば、固化処理までの間、凸面は鉛直上方を向いた状態にあるため、凹面上の被膜の膜厚の均一性とともに、凸面上の被膜の膜厚の均一性も高めることが可能となる。なお、凸面への塗布の詳細は、凹面への塗布について先に説明した通りである。
レンズ基材上に塗布される被膜形成用組成物は、眼鏡レンズに求められる性能に応じて所望の機能性膜を形成可能な処方とすればよい。そのような機能性膜としては、耐久性向上のためのハードコート、反射防止能付与のための反射防止膜、偏光性能付与のための偏光膜、調光性能付与のためのフォトクロミック膜、レンズ基材と機能性膜または機能性膜同士の密着性を向上するためのプライマー等を挙げることができ、これら機能性膜形成のための塗布液処方およびその調製方法は、いずれも公知である。
前記方向変更が行われ、任意に凹面の他方の面に塗布が行われたレンズ基材は、凹面を鉛直下方に向けた状態を維持しつつ、被膜形成のための固化処理に付される。固化処理は、被膜形成用組成物の種類に応じて、加熱、光照射、乾燥等によって行うことができる。加熱により固化処理が行われる被膜形成用組成物とは、即ち熱硬化性組成物であり、光照射により固化処理が行われる被膜形成用組成物とは、即ち光硬化性組成物である。熱硬化性組成物は、硬化のための加熱処理の初期には液が加温されることで粘度が低下するため、凹面を鉛直上方に向けておくと液が中央部により一層流動しやすくなる。これに対し本発明では凹面を鉛直下方に向けた状態で加熱(固化処理)を行うことができるため、加熱初期の液の流動により膜厚の均一性が低下することを防ぐことができる。この点から、本発明は、被膜形成用組成物として熱硬化性組成物を用いる態様に適用することが有効である。
一方、ポリウレタン樹脂等の樹脂成分が溶媒(水、有機溶媒、またはそれらの混合溶媒)中に分散している組成物は、溶媒を乾燥除去することにより固化が進行する。風乾、加熱乾燥等の乾燥処理によって固化する被膜形成用組成物としては、このような、溶媒が乾燥除去されることにより固化する性質を有する組成物が挙げられる。例えば、層間の密着性を高めるためのプライマー層は、上記性質を有する組成物から形成することができる。
以上説明した工程により形成される被膜の膜厚は特に限定されるものではないが、例えば中心肉厚として1μm〜100μm程度であることができる。例えばハードコートについては、眼鏡レンズの耐傷性を向上するためには、5μm以上、更には10μm以上、例えば10μm以上30μm以下の厚膜にすることが好ましいが、厚膜にするほど面内の膜厚ばらつきの影響が顕在化し各種不良(光学的歪み、干渉縞、クラック発生等)が発生しやすくなる傾向がある。これに対し本発明によれば面内の膜厚ばらつきの少ない被膜を形成することができるため、厚膜のハードコートを有しつつ各種不良の発生のない高品質な眼鏡レンズを得ることができる。
以下、実施例により本発明を更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
1.ハードコート形成用塗布液の調製
有機ケイ素化合物γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM−403)17質量部にメタノールを溶媒として30質量部添加した。
これを10分間撹拌した後にpH調整剤として1mol/Lの硝酸を1.2質量部添加し、さらに10分間撹拌した。こうして得られた溶液にコロイダルシリカ(GRACE社製ルドックスAM)44質量部を添加し24時間室温で撹拌した。
24時間撹拌後、硬化剤としてアルミニウムアセチルアセトナート1質量部とレベリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製FZ−77)0.1質量部を添加し、さらに48時間室温撹拌してハードコート形成用塗布液を調製した。
有機ケイ素化合物γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM−403)17質量部にメタノールを溶媒として30質量部添加した。
これを10分間撹拌した後にpH調整剤として1mol/Lの硝酸を1.2質量部添加し、さらに10分間撹拌した。こうして得られた溶液にコロイダルシリカ(GRACE社製ルドックスAM)44質量部を添加し24時間室温で撹拌した。
24時間撹拌後、硬化剤としてアルミニウムアセチルアセトナート1質量部とレベリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製FZ−77)0.1質量部を添加し、さらに48時間室温撹拌してハードコート形成用塗布液を調製した。
2.凹面へのハードコート形成にかかる実施例・比較例
[実施例1、2]
レンズ基材として、一方の面が凹面、他方の面が凸面のメニスカス形状のプラスチックレンズ(HOYA株式会社製 商品名「ハイラックス」)を使用した。凹面を鉛直上方に向けて配置したレンズの上方から、上記1.で調製した塗布液をスプレーコーターによって塗布した。塗布後、直ちにレンズを反転させて凹面を鉛直下方に向けた後、表1に示す時間放置した後にレンズを加熱炉(炉内温度:80℃)に配置し加熱硬化処理(固化処理)を施し硬化被膜(ハードコート)を得た。上記反転から硬化処理終了まで、凹面が鉛直下方を向いた状態を保持した。
レンズ基材として、一方の面が凹面、他方の面が凸面のメニスカス形状のプラスチックレンズ(HOYA株式会社製 商品名「ハイラックス」)を使用した。凹面を鉛直上方に向けて配置したレンズの上方から、上記1.で調製した塗布液をスプレーコーターによって塗布した。塗布後、直ちにレンズを反転させて凹面を鉛直下方に向けた後、表1に示す時間放置した後にレンズを加熱炉(炉内温度:80℃)に配置し加熱硬化処理(固化処理)を施し硬化被膜(ハードコート)を得た。上記反転から硬化処理終了まで、凹面が鉛直下方を向いた状態を保持した。
[比較例1、2]
塗布後にレンズを反転させずに硬化処理終了まで凹面が鉛直上方を向いた状態を保持した点、および塗布後に表1に示す時間レンズを放置した後に加熱炉に移送した点以外、実施例1、2と同様の方法でレンズ凹面上に硬化被膜を形成した。
塗布後にレンズを反転させずに硬化処理終了まで凹面が鉛直上方を向いた状態を保持した点、および塗布後に表1に示す時間レンズを放置した後に加熱炉に移送した点以外、実施例1、2と同様の方法でレンズ凹面上に硬化被膜を形成した。
評価方法
以下の方法で、実施例1、2、比較例1、2で作製した眼鏡レンズを評価した。結果を下記表1に示す。
(1)中心膜厚、面内平均膜厚の測定
光干渉式膜厚測定器により、レンズ凹面に形成した硬化被膜の膜厚を、レンズ幾何中心、およびレンズ幾何中心から縦方向、横方向にそれぞれ等距離間隔で6点の合計13点(図1参照、○で示した位置が測定点である。)において測定し、その平均値を算出した。
(2)中心部歪みの有無
レンズを目視観察し、レンズ中心部が歪んで見えるか否かを評価した。
以下の方法で、実施例1、2、比較例1、2で作製した眼鏡レンズを評価した。結果を下記表1に示す。
(1)中心膜厚、面内平均膜厚の測定
光干渉式膜厚測定器により、レンズ凹面に形成した硬化被膜の膜厚を、レンズ幾何中心、およびレンズ幾何中心から縦方向、横方向にそれぞれ等距離間隔で6点の合計13点(図1参照、○で示した位置が測定点である。)において測定し、その平均値を算出した。
(2)中心部歪みの有無
レンズを目視観察し、レンズ中心部が歪んで見えるか否かを評価した。
上記表1に示す結果から、塗布後にレンズを反転し凹面を下方に向けることにより、凹面上に形成される被膜において平均膜厚が平均膜厚と大きく乖離することを防ぐことができ、その結果、レンズ中心部に歪みのない高品質な眼鏡レンズが得られることが確認された。なお実施例2で作製した眼鏡レンズでは、実施例1で作製した眼鏡レンズと比べて中心膜厚のわずかな減少が見られる。これはレンズを反転した後にレンズを放置した時間が長かったため中心部から周縁部に向かって液が流動したことによるものであるが、レンズを反転しなかった比較例1、2と比べて面内膜厚ばらつきに対する影響はきわめて小さい。この結果からも、凹面への塗布後にレンズを反転させることが面内で膜厚ばらつきの少ない硬化被膜を凹面上に形成するための有効な手段であることが確認できる。
また、比較例1、2で作製した眼鏡レンズでは凹面上に形成した被膜表面で異物の付着が確認された。これは作業環境に浮遊していた塵や埃が付着したものと考えられる。これに対し、実施例1、2で作製した眼鏡レンズでは、そのような異物の付着は見られなかったことから、塗布後にレンズを反転させ凹面を鉛直下方に向けることは、凹面上に形成される被膜への異物の付着を抑制できる点でも有利であることも確認された。
また、比較例1、2で作製した眼鏡レンズでは凹面上に形成した被膜表面で異物の付着が確認された。これは作業環境に浮遊していた塵や埃が付着したものと考えられる。これに対し、実施例1、2で作製した眼鏡レンズでは、そのような異物の付着は見られなかったことから、塗布後にレンズを反転させ凹面を鉛直下方に向けることは、凹面上に形成される被膜への異物の付着を抑制できる点でも有利であることも確認された。
[実施例3]
塗布方法をスプレーコートからスピンコートに変更した点以外、実施例1と同様の方法でレンズ凸面上に硬化被膜を形成した。形成された被膜を上記方法により評価し、実施例1と同様に、レンズ中心部歪みがなく、比較例1と比べて中心膜厚と平均膜厚の差が低減されたことを確認した。
塗布方法をスプレーコートからスピンコートに変更した点以外、実施例1と同様の方法でレンズ凸面上に硬化被膜を形成した。形成された被膜を上記方法により評価し、実施例1と同様に、レンズ中心部歪みがなく、比較例1と比べて中心膜厚と平均膜厚の差が低減されたことを確認した。
3.凹凸両面へのハードコート形成にかかる実施例
[実施例4]
レンズを反転させた後に、鉛直上方を向いた凸面に対して凹面への塗布と同様にスプレーコートによる塗布を行った点以外、実施例1と同様の処理を行い、凹凸両面に硬化被膜を有する眼鏡レンズを得た。得られた眼鏡レンズを目視で観察したところ、実施例1と同様にレンズ中心部には歪みは見られなかった。
レンズを反転させた後に、鉛直上方を向いた凸面に対して凹面への塗布と同様にスプレーコートによる塗布を行った点以外、実施例1と同様の処理を行い、凹凸両面に硬化被膜を有する眼鏡レンズを得た。得られた眼鏡レンズを目視で観察したところ、実施例1と同様にレンズ中心部には歪みは見られなかった。
本発明は、眼鏡レンズの製造分野に有用である。
Claims (4)
- レンズ基材上の被塗布面に被膜形成用組成物を塗布した後、該組成物の固化処理を行うことにより被膜を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法であって、
前記被塗布面は凹面であり、
前記塗布を、鉛直上方を向いた凹面に対して上方から前記被膜形成用組成物を供給することにより行い、
前記塗布後のレンズ基材を凹面が鉛直下方を向くように方向変更し、かつ前記固化処理が終了するまで凹面が鉛直下方を向いた状態を維持することを特徴とする、前記眼鏡レンズの製造方法。 - レンズ基材上の前記被塗布面の他方の面は凸面であり、前記方向変更により鉛直上方を向いた凸面に被膜形成用組成物を塗布することを更に含み、かつ、
前記固化処理において凸面に塗布した被膜形成用組成物も固化する請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。 - 前記被膜形成用組成物は熱硬化性を有し、前記固化処理を加熱により行う請求項1または2に記載の眼鏡レンズの製造方法。
- 前記塗布を、スプレーコートおよびスピンコートからなる群から選ばれる塗布方法により行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
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WO2009119265A1 (ja) * | 2008-03-27 | 2009-10-01 | Hoya株式会社 | 塗布装置及びプラスチックレンズの製造方法 |
JP2013186349A (ja) * | 2012-03-08 | 2013-09-19 | Hoya Lense Manufacturing Philippine Inc | 光学部材の製造方法 |
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