JP2013204399A - 杭式海洋構造物の施工方法及び杭式海洋構造物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】海洋構造物1は躯体2の四隅に形成したレグウェルにスパッドを嵌挿させ、その間に複数の杭打設用孔を形成する。杭打設用孔の底部をダイアフラムで封止した。海洋構造物1の施工方法では、スパッド5を嵌挿させたレグウェルと杭打設用孔とを備えた躯体2を海上の所定位置に曳航して海上に支持する工程と、スパッド5を躯体2に対して昇降ジャッキ6によって降下させて海底に打設することで躯体2を海面より上方の波浪の影響を受けない高さ位置に上昇させる工程と、この位置で躯体2内の容器16にバラスト水を注入して躯体2の重量を増大させる工程と、躯体2に設けた杭打設用孔を通して杭10をスパッド5より深く海底に打設して杭10を躯体2に固定する工程とを備えた。
【選択図】図7
Description
例えば、第一の杭式の構造物の施工方法は、現地でまず杭を海上から海底に打設して杭の上でコンクリート上部工を製作するようにしている。また、海中に仮受け杭を打設して、その上に上部桁と一体になった鋼管トラス構造を据え付け、この鋼管トラス構造を導枠にして鋼管杭を打設して上部工を製作するようにしたものもある。
そして、躯体に埋め込んだ吊り込みアンカーボルトにPC棒鋼を取り付けて杭頭部の溝形鋼に固定し、更にPC棒鋼を締め付けて躯体全体を引き上げるようにした。
このような施工方法の一例として特許文献2に記載されたものがある。特許文献2に記載された水上杭打ち装置は、四隅にスパッドを装着したSEPの躯体に杭打設用孔を所定間隔で形成して導枠とし、SEPを所定の作業場所に曳航する。そして、スパッドを海底まで降ろし、所定位置の杭打設孔に杭を挿入して海底に打ち込むようにした。
また、特許文献1に記載された第二の杭式の構造物は、その躯体を海上に浮かせて杭打設用孔に杭を打設する構造であるため、波浪の厳しい海域では波浪の影響を受けて躯体が動揺するため、躯体の杭打設用孔を通した杭打ち等の作業の稼働効率が著しく低下するという欠点がある。
また、本発明による杭式海洋構造物は、躯体と、躯体に形成されていて杭を打設可能な杭打設用孔と、躯体に形成した孔に昇降ジャッキによって昇降可能に挿入されていて上昇位置では躯体は水上にあり且つ降下位置では躯体は水上より上昇した波が当たらない高さ位置にあるようにしたスパッドと、躯体内に設けられていてバラスト水を注入して躯体の重量を増大可能なバラスト水容器とを備えていて、スパッドを降下させることで躯体を水面より上昇した波の当たらない高さ位置に保持し、杭打設用孔から杭を打設して躯体に固定するようにしたことを特徴とする。
躯体に杭打設用孔を多数形成すると浮体としての浮力不足になるおそれがあるが、杭打設用孔に封止材を固定して水が浸入しないようにすることで浮力を増大させることができる。
これによって、杭の打設に際し、杭打設用孔内に杭を挿入することで封止材が破れるため、封止材を除去する作業が不要になり水上での作業が効率的になる。
これによって、躯体あたりの杭打設本数が増大すると共に比較的コストの高いスパッドを回収して再利用できる。
躯体に設けた隔壁によって杭打設用孔同士や杭打設用孔とスパッド用の孔を連結できるため杭頭断面力に抵抗することができる躯体を本設構造物として利用可能になる。
スパッド用の孔にスペーサを設けてスパッドを嵌挿するようにしたことで、孔に対してスパッドを昇降させた状態、例えばスパッドを上昇させた状態で、スパッドを固定支持できるからスパッドが変形したりすることを防止でき、スパッドとその孔との溶接等の接合作業が高精度で容易になる。
スペーサによって杭打設用孔に対する杭の芯出しを容易に行うことができ、その後のシアキー接合や溶接を精度よく行える。
橋梁上部工等の他の部材を比較的大きなスパンで手延べ式送り出し工法で施工する際、海洋構造物の躯体をベースとして受けることができるため、送り出しする橋梁上部工等の他の部材の張り出しを大きく設けることができる。
この場合、杭式海洋構造物の水上での供用期間を長く設定できるため本設構造物として利用できる。
しかも、躯体を高い位置に支持して躯体にバラスト水を注入することで躯体の重量を増大させて安定させた状態で効率的な作業を行える。
図1乃至図5は本発明の実施形態による杭式海洋構造物を示す図である。
図1及び図2に示す杭式海洋構造物1は、SEP(自動昇降式作業台船)と同様な構成を備えた躯体2を示すものである。この躯体2は例えば図1及び図2に示すように鋼材の骨組みからなる長方形枠板状を有している。そして、躯体2の上面2aの四隅にはスパッド5挿入用の孔としてレグウェル3が下面2bを貫通してそれぞれ形成され、これらレグウェル3内には脚状のスパッド5が嵌挿されている。
スパッド5には躯体2の上側に昇降ジャッキ6が取り付けられており、昇降ジャッキ6によって躯体2に対してスパッド5をレグウェル3を通して昇降移動させるようになっている。
そして、躯体2において、左右方向の隅部に設けた各一対のレグウェル3の間には上下面2a、2bを貫通する杭打設用孔7が所定間隔で複数個それぞれ形成されている。
また、図3に示すように、躯体2の上面2aには杭打設用孔7を通して杭10を海底に打設するための杭打ち機11が設置可能である。そして、図4に示すように、各杭打設用孔7の底部(下面2b)には杭打設用孔7を液密に封止するための封止材としてダイアフラム12が固着されている。躯体2に杭打設用孔7を多数設けることで浮体としての浮力が不足する場合でも、杭打設用孔7の下端にダイアフラム12を設けて海水の浸入を防ぐことができて躯体2の浮力を増大させることができる。ダイアフラム12は杭10を杭打設用孔7に挿入することで破れるように強度が比較的小さく柔軟性のあるゴム等の弾性シートで形成されている。
また、図5は躯体2の杭打設用孔7内に杭10を打設した状態を示す図であり、レグウェル3にもスパッド5を取り除いて杭10を打設することができるようになっている。
まず、図1乃至図3に示すSEPと同様な構成を備えた躯体2を浮体構造物として先行して製作する。躯体2にはその四隅に形成したレグウェル3内にスパッド5の下端を装着して上方に延ばすと共に、スパッド5における躯体2の上面2a近傍に昇降ジャッキ11を設置する。そして、躯体2の上面2aに杭打ち機11またはクレーン等の施工機械を設置する。
この状態で、図6(a)に示すように、躯体2をシンキングバージ13に積載し、曳航船14によって海上を曳航する。そして、図6(b)に示すように、作業位置である所定の海域に輸送する(ステップ1)。躯体2を所定の海域に輸送した後、シンキングバージ13を沈下させて躯体2を浮遊させ、シンキングバージ13を回収する(ステップ2)。
なお、図6(c)に示すように、シンキングバージ13を使用せずに、躯体2を海上に直接浮遊させた状態で直接曳航船14で所定の海域まで曳航させてもよい(ステップ3)。
躯体2を所定の高さまで上昇させた後、図7(b)に示すように、図示しないポンプを使用して躯体2の内部に設けた容器16内に海水Wをバラスト水として注入することで躯体2の重量を増大させる。これによって、スパッド5によって躯体2の海面からの高さを大きく設定しても、躯体2の重量が大きいために波浪の影響を受けることなく躯体2を安定して支持させることができる。
なお、図9において、杭10を打設した後、躯体2の杭打設用孔7と杭10との間隙にグラウト(モルタルまたはセメントペースト)17を充填してシアキー接合する。或いは杭10の頭部と杭打設用孔7とを溶接によって固定してもよい。
ここで、図10(a)に示すように、レグウェル3にスパッド5が挿入された状態で、レグウェル3の内面にスパッド5を位置決め固定するために着脱式のスペーサ19aを予め固定しておくものとする。スペーサ19によってスパッド5を支持できるためスパッド5ががたつくことがなく、昇降ジャッキ6によってスパッド5を昇降させる際にスパッド5の上端部や下端部の変形等を防止できる。
なお、海洋構造物1を構成する躯体2や杭10等の各部材には構造物の供用年数に応じた防食を予め施しておくものとする。
こうして、杭10を打設した躯体2からなる海洋構造物1を施工することができる。なお、必要に応じてこの躯体2の上にコンクリート上部工等を製作することができる。
このようにすれば、橋梁上部工22について例えば手延べ式送り出し工法を用いて比較的大きなスパンで施工できると共に、海洋構造物1をベースとして利用できる。これに対し、従来の仮設SEPを利用したものでは、仮設SEPの支持力が不足するため、転倒の危険があるために橋梁上部工22の張り出しを大きく設けることができなかった。
いま、昇降ジャッキ6とスパッド5によって波がかからない高さまで躯体2を上昇させて杭10の打設等の作業を行うことができるため、波の悪影響を受けないので作業稼働率が高くなる。しかも、躯体2を上昇させた後で躯体2内部にバラスト水を注入するため昇降ジャッキ6の昇降能力はバラスト水の重量を考慮しないで設定できると共に、バラスト水重量によって躯体2の重量が増大して高波浪域であっても安定し支持させることができて、倒壊する等被災することがない。
また、躯体2の杭打設用孔7の底部にダイアフラム12を設置したことで、躯体2に杭打設用孔7を多数設けても杭打設用孔7から海水が浸入することを防止して浮力不足を補うことができる。しかも、このダイアフラム12をゴム等の弾性シートで形成すれば、杭打設用孔7内に杭10を挿入することでダイアフラム12を破ってそのまま海底に打設することができて効率的である。
また、着脱式のスペーサ19a、19bをレグウェル3の内面またはスパッド5や杭10の外面に取り付けることでレグウェル3の内径との関係でスパッド5や杭10の外径の調整が不要になって芯ずれを防止できる。更に、レグウェル3だけでなく、杭打設用孔7にもスペーサを設けることでも、杭10の芯出しをおこなうことができて、グラウトによるシアキー接合や溶接を効率的に行うことができる。
また、躯体2や杭10に必要な防食を施しておくことで、海洋構造物1を本設構造物として長期間にわたって利用可能である。
上述の実施形態では、躯体2の杭打設用孔7に杭10を打設した後、スパッド5を引き抜いてレグウェル3に杭10を打設するようにしたが、必ずしもレグウェル3に杭10を打設する必要はない。
また、上述の実施形態では、躯体2の杭打設用孔7の底部にゴム等の弾性シート等からなるダイアフラム12を固定して海水が浸入しないようにシールすることとしたが、ダイアフラム12は弾性シート等の弾性部材に限定されるものではなく、合成樹脂等のシートでもよい。或いはダイアフラム12に代えて杭打設用孔7に嵌合する蓋を着脱可能に取り付けて封止するようにしてもよい。この場合、蓋を取り除いて杭10を打設するようにしてもよいし、或いは杭打設用孔7内に係止された蓋を杭10で押圧することで、下方に落下させて杭10を打設するようにしてもよい。
また、杭打設用孔7を封止するダイアフラム12や蓋等は封止材であり、この封止材の固定位置は底部(下面2b)に限定されることなく、上部(上面2a)との間のどこでもよい。
この場合、台船24をレグウェル3よりも内側の狭い範囲に配設すれば、躯体2が台船24に載置された状態で、スパッド5を昇降ジャッキ6によって降下させて海底に打ち込むことができる。
また、上述の実施形態による杭式海洋構造物1の施工方法において、所定の海域で躯体2の杭打設用孔7を躯体2に垂直に形成して杭10を直杭として打設するようにしたが、このような構成に代えて、図13に示すように、杭打設用孔7aを鉛直方向に対して角度をつけて斜め方向に形成してもよく、この場合には杭10を斜杭として斜め方向に打設することができる。
なお、上述の実施形態による海洋構造物1の施工方法において、打設は鋼管杭等の杭10やスパッド5の打撃に用いられるものとして用いたが、本発明では、打設は杭10やスパッド5の打撃の意味に限定されるものではなく、圧入や埋め込み等の意味も含むものとし、掘削グラウト杭等の埋め込み杭や場所打ち杭等のあらゆる工法を含むものとする。
また、上述した実施形態による杭式海洋構造物1とその施工方法では、SEP(自動昇降式作業台船)と同様な構成を備えた躯体2を用いたが、躯体2としてSEPそのものを用いてもよいことはいうまでもない。また、本発明による杭式海洋構造物1とその施工方法は海上だけでなく湖等の淡水上でも適用することができる。
2 躯体
3 レグウェル
5 スパッド
6 昇降ジャッキ
7,7a 杭打設用孔
9 隔壁
10 杭
11 杭打ち機
12 ダイアフラム
16 容器
19a、19b スペーサ
21 受け部
22 橋梁上部工
W バラスト水
Claims (11)
- スパッドを嵌挿させた孔と杭打設用孔とを備えた躯体を水上の所定位置に保持する工程と、
前記スパッドを躯体に対して降下させて打設することで前記躯体を水面より上方に上昇させる工程と、
前記躯体にバラスト水を注入して重量を増大させる工程と、
前記躯体に設けた杭打設用孔から杭を打設して該杭を前記躯体に固定する工程と
を備えたことを特徴とする杭式海洋構造物の施工方法。 - 前記杭打設用孔には該杭打設用孔を液密に封止する封止材が固定されている請求項1に記載された杭式海洋構造物の施工方法。
- 前記封止材は前記杭打設用孔内に杭を挿入することで破れるようにした請求項2に記載された杭式海洋構造物の施工方法。
- 前記杭打設用孔に杭を打設した後、前記スパッドを孔から引き抜いて杭を打設するようにした請求項1乃至3のいずれか1項に記載された杭式海洋構造物の施工方法。
- 前記躯体の杭打設用孔は他の杭打設用孔及び/または前記スパッド用の孔と隔壁によって相互に連結されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載された杭式海洋構造物の施工方法。
- 前記スパッドを挿入する孔と前記スパッドとの間にスペーサを装着するようにした請求項1乃至5のいずれか1項に記載された杭式海洋構造物の施工方法。
- 前記杭打設用孔と杭との間にスペーサを装着し、前記杭打設用孔と杭とをグラウトによるシアキー接合または溶接によって接合するようにした請求項1乃至6のいずれか1項に記載された杭式海洋構造物の施工方法。
- 前記躯体の外面には、橋梁上部工等の他の部材を受けて連結するための受け部を設けた請求項1乃至7のいずれか1項に記載された杭式海洋構造物の施工方法。
- 前記躯体の表面に防食塗装または金属ライニングを行ったか、或いはクラッド鋼を用いた請求項1乃至8のいずれか1項に記載された杭式海洋構造物の施工方法。
- 躯体と、
該躯体に形成されていて杭を打設可能な杭打設用孔と、
前記躯体に形成された孔に昇降可能に挿入されていて上昇位置では前記躯体は水上にあり且つ降下位置では前記躯体は水上より上昇した波が当たらない高さ位置にあるようにしたスパッドと、
前記躯体内に設けられていてバラスト水を注入して前記躯体の重量を増大可能なバラスト水容器とを備えていて、
前記スパッドを降下させることで前記躯体を水面より上昇した波の当たらない高さ位置に保持し、前記杭打設用孔から杭を打設して前記躯体に固定するようにしたことを特徴とする杭式海洋構造物。 - 前記杭打設用孔には該杭打設用孔を液密に封止する封止材が固定されているようにした請求項10に記載された杭式海洋構造物。
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