以下、下記の順序に従って本発明を説明する。
(1)本実施形態の構成:
(2)第1のオフセット調整処理:
(3)第2のオフセット処理の第1実施形態:
(4)第2のオフセット処理の第2実施形態:
(5)第2のオフセット処理の第3実施形態:
(6)出力レベル記憶処理:
(7)まとめ:
(1)本実施形態の構成:
図1は、本実施形態に係る水栓装置1の概略を断面的に示した図であり、図2は、本実施形態に係る水栓装置1の構成を示すブロック図である。水栓装置1は、対象物10(人体や物体等)を検出して自動的な吐水を行うものであり、洗面台に備え付けられる洗面器2に対して吐水を行う。
洗面器2は、洗面カウンタ3の上面に設けられる。洗面カウンタ3上には、洗面器2のボール面2aに対して水を吐出するためのスパウトを構成する水栓4が設けられる。水栓4は、水を吐出する吐水口4aを有し、この吐水口4aから吐出される水が洗面器2のボール面2a内に吐出されるように設けられる。
水栓4が吐水口4aから吐出する水は、給水路5により供給される。給水路5は、水道管等の給水源から供給される水を吐水口4aへと導く。洗面器2には、排水路6が接続されている。排水路6は、吐水口4aから洗面器2のボール面2a内に吐出された水を排出する。
水栓装置1は、給水バルブとしての電磁弁11と、マイクロ波ドップラセンサ12と、制御部13とを備える。電磁弁11は、給水路5に設けられ、給水路5の開閉を行う。電磁弁11が開くと、給水路5から供給される水が吐水口4aから吐出される吐水状態となり、電磁弁11が閉じると、給水路5から供給される水が吐水口4aから吐出されない止水状態となる。
電磁弁11は、制御部13に接続されており、電磁弁11の開閉動作は、制御部13によって制御される。電磁弁11は、制御部13からの制御信号に従って電気的に制御され、給水路5の開閉を行う。このように、電磁弁11は、吐水口4aから吐水される水の給水路5を開閉する給水バルブとして機能する。
マイクロ波ドップラセンサ12は、吐水口4aに接近する対象物10を検出する。この吐水口4aの吐水先が、マイクロ波ドップラセンサ12の検知領域となる。マイクロ波ドップラセンサ12は、マイクロ波を送信し、送信したマイクロ波を受けた人体等の対象物10から反射したマイクロ波を受信することにより、対象物10の位置や動き等を検出する。
マイクロ波ドップラセンサ12は、水栓4の吐水口4a近くの内部に設けられ、洗面台の使用者側(図1において左側)に向けてマイクロ波を送信するように配置される。マイクロ波ドップラセンサ12は、吐水口4aに人体が近づいてきたことや、吐水口4aに近づいた人体から吐水口4aに向けて手が差し出されたこと等を検出するために用いられる。
マイクロ波ドップラセンサ12は、接続ケーブル8を介して制御部13に接続される。制御部13は、マイクロ波ドップラセンサ12の出力する信号を入力され、この信号に基づいて対象物10の位置や動き等を検知する。
なお、本実施形態では、ドップラセンサとしてマイクロ波を用いるマイクロ波ドップラセンサ12が採用されているが、例えば超音波やミリ波を用いるドップラセンサ等であってもよい。また、ドップラセンサはマイクロ波のみならず、他の周波数の電波を伝播波に用いてもよいし、光等を伝播波に用いてもよい。
制御部13は、マイクロ波ドップラセンサ12の出力する信号に基づいて電磁弁11の開閉動作を制御する。このため、制御部13には、接続ケーブル8を介して上記のとおりマイクロ波ドップラセンサ12からの出力信号が入力される。また、制御部13からは、信号線9を介して電磁弁11に対する制御信号が出力される。
以上のように、本実施形態の水栓装置1は、電磁弁11と、マイクロ波ドップラセンサ12と、制御部13とを備えており、制御部13がマイクロ波ドップラセンサ12のセンサ出力に基づいて電磁弁11の開閉動作を制御している。また、制御部13は、吐水口4aに接近する対象物10の検出を行うことで、水栓装置1の使用者の動き等に応じた吐水を行う。以下、本実施形態の水栓装置1の電気的構成の詳細について説明する。
図2に示すように、マイクロ波ドップラセンサ12は、発振回路部21と、送信部22と、受信部23と、ミキシング部24とを有する。発振回路部21は、マイクロ波ドップラセンサ12が送信する電波(マイクロ波)を得るための電気信号を生成する。発振回路部21は、電気信号として、例えば10.525GHzの周波数を有する信号を生成し、送信信号S1として出力する。
送信部22は、発振回路部21が出力する送信信号S1を受け、この送信信号S1を送信する。例えば、発振回路部21により生成される信号が10.525GHzの周波数を有する信号である場合、送信部22は、10.525GHzのマイクロ波を送信する。
受信部23は、送信部22から送信されたマイクロ波が検出対象となる対象物10によって反射された反射波を受信する。受信部23は、受信した反射波(マイクロ波を含む電波)を電気信号に変換し、受信信号S2として出力する。なお、送信部22および受信部23は、信号の送受信を行うためのアンテナを有する。
ミキシング部24は、発振回路部21から出力される送信信号S1と、受信部23から出力される受信信号S2とを混合(ミキシング)して、センサ出力S3として出力する。ミキシング部24が出力するセンサ出力S3は、制御部13に入力される。
センサ出力S3には、定在波信号とドップラ信号とが含まれる。定在波信号は、対象物10との距離、つまり対象物10の位置の検出に用いられ、ドップラ信号は、対象物10の動きの検出に用いられる。
次に、制御部13について説明する。図2に示すように、制御部13は、ローパスフィルタ部31と、アンプ部32と、ドップラ信号検出部33と、定在波信号検出部34と、対象物検出部35と、電磁弁制御部36と、センサ制御部37と、記憶部38とを有する。また、対象物検出部35は、人体動作検出部39と、人体位置検出部40とを含む。また、制御部13は、時間を計測するためのタイマ41を有する。
制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリや入出力インターフェイス等の各種機能部分を備え、これら各種機能部分は、データ通信用のバス等により互いに通信可能に接続される。制御部13が有するCPUは、メモリの1つであるROM(Read Only Memory)に記憶される制御プログラム等に従って所定の演算を行う演算部として機能する。
制御部13は、入出力インターフェイスとして、少なくとも、マイクロ波ドップラセンサ12からの入力信号を受けるための入力インターフェイス、および電磁弁11に対する制御信号を出力するための出力インターフェイスを有する。
ローパスフィルタ部31は、入力された信号から、ノイズなどの影響による不必要な周波数帯域の成分を除去するローパスフィルタ部31を有する。ローパスフィルタ部31は、マイクロ波ドップラセンサ12から入力されるセンサ出力S3から、対象物の検知処理に不必要な周波数帯域の成分を除去した信号S4を生成し、この信号S4をアンプ部32に出力する。
アンプ部32は、ローパスフィルタ部31から出力された信号S4の入力を受け、入力された信号を増幅した増幅信号S5を生成し、この増幅信号S5をドップラ信号検出部33に出力する。
ドップラ信号検出部33は、アンプ部32が出力した増幅信号S5の入力を受ける。ドップラ信号検出部33は、入力された増幅信号S5の周波数成分のうち、人体検出に不要な周波数帯域の成分を除去するフィルタを有し、このフィルタにより、増幅信号S5から人体検出に不要な周波数帯域の成分を除去する。人体検出に不要な周波数帯域は、例えば、50Hzを上回る周波数帯域である。ドップラ信号検出部33は、増幅信号S5から人体検出に不要な周波数帯域の成分を除去した信号を、人体検出用のドップラ信号S6として出力する。
すなわち、アンプ部32が出力する増幅信号S5は、定在波信号である直流成分とドップラ信号である交流成分とを含んでおり、この増幅信号S5から人体検出に不要な周波数帯域の成分を除去することにより、ドップラ信号が抽出される。より具体的には、ドップラ信号検出部33は、増幅信号S5をA/D変換によりデジタル信号とした後、マイクロコンピュータ等によるソフト処理としてデジタルフィルタ演算等を行うことにより、ドップラ信号S6を抽出する。
ここで、ドップラ信号S6に基づいて行う対象物10(人体等)の動き検出について説明する。次式(1)は、ドップラ周波数シフトに係る基本式である。マイクロ波ドップラセンサ12は、次式(1)に基づく演算処理を行うことにより、対象物10の動きを検出する。
基本式:ΔF=FS−Fb=2×FS×ν/c ・・・(1)
ΔF:ドップラ周波数(センサ出力S3に含まれるドップラ信号の周波数)
FS:送信周波数(送信信号S1の周波数)
Fb:反射周波数(受信信号S2の周波数)
ν:対象物の移動速度
c:光速(300×106m/s)
上記式(1)に示すように、送信部22から送信された送信周波数FSのマイクロ波は、速度νで移動している対象物10によって反射される。この対象物10からの反射波を、マイクロ波ドップラセンサ12の受信部23が受信する。受信部23により受信される反射波の周波数は、相対運動によるドップラ周波数シフトを受け、送信周波数FSとは異なる反射周波数Fbとなっている。
以上説明したように、ミキシング部24において送信信号S1と受信信号S2とがミキシングされた信号から、ローパスフィルタ部31が高周波成分を除去することによって、センサ出力S3からドップラ周波数以外の周波数成分が除去された信号が抽出される。そして、ドップラ信号検出部33によって人体検出のための周波数帯域(例えば50Hz以下)の成分が抽出され、人体検出用のドップラ信号S6が得られる。
そして、ドップラ信号検出部33から出力されたドップラ信号S6は、対象物検出部35が有する人体動作検出部39に入力される。人体動作検出部39は、入力されたドップラ信号S6に基づき、対象物10の動きから、対象物10が吐水口4aから吐出される水を受ける程度の位置に達したこと等を検出する。
一方、定在波信号検出部34も、アンプ部32から出力された増幅信号S5の入力を受ける。定在波信号検出部34は、入力された増幅信号S5から定在波信号を検出する。上記のとおりアンプ部32から出力される増幅信号S5は、定在波信号である直流成分とドップラ信号である交流成分とを含む。この増幅信号S5から、ドップラ信号の成分が除去されることにより、定在波信号が抽出される。
具体的には、定在波信号検出部34は、交流成分除去回路として機能するローパスフィルタ回路を有する。定在波信号検出部34は、ローパスフィルタ回路により、増幅信号S5からドップラ信号成分を除去することで、定在波信号を抽出する。つまり、定在波信号検出部34は、アンプ部32から出力される増幅信号S5から交流成分を除去することで、定在波信号S7を抽出して出力する。
なお、定在波信号検出部34においては、対象物10に対する距離の検出精度を向上するための信号処理が適宜採用される。具体的には、例えば次のような処理が行われる。
定在波信号は、マイクロ波ドップラセンサ12と対象物10との距離が長いほど信号レベル(電圧レベル)が小さくなるように周期的に変化する信号である。このように周期的に信号レベルが変化する定在波信号においては、1/2周期ごとに振幅が大きな腹部と振幅が小さな節部とが交互に存在するため、対象物10に対する距離について十分な検出精度が得られない場合がある。ここで、定在波信号の信号レベルは、周期的に変化する波形の振幅値に相当する。
そこで、定在波信号検出部34において、まず、上記のとおりローパスフィルタ回路によって得られる定在波信号から、位相をシフトさせた信号を生成する。次に、ローパスフィルタ回路から出力された定在波信号、および位相をシフトさせた信号の各信号を、全波整流する。そして、全波整流した各信号を、加算し、合成信号とする。このようにして得られた合成信号は、マイクロ波ドップラセンサ12と対象物10との距離に応じた信号レベルの信号となる。
このような信号処理を行うことにより、合成信号として、マイクロ波ドップラセンサ12が配置される水栓4の吐水口4aと対象物10としての人体との距離が近いほどレベルが大きくなる信号が得られる。これにより、対象物10に対する距離について検出精度の向上を図ることができる。なお、この信号処理においては、加算されて合成される、互いに位相が異なる定在波信号の数が多いほど、算出される合成信号は滑らかな曲線となり、より高い検出精度を得ることができる。
このような対象物10に対する距離の検出精度向上のための信号処理を行う場合、定在波信号検出部34においては、例えば、定在波信号の位相をシフトさせるための位相シフト回路や、信号の全波整流を行うための全波整流回路や、全波整流した信号を加算して合成するための加算回路等が備えられる。
定在波信号検出部34から出力された定在波信号S7は、対象物検出部35が有する人体位置検出部40に入力される。人体位置検出部40は、入力された定在波信号S7に基づき、対象物10が吐水口4aに対して所定の範囲内に入ったことや、対象物10が吐水口4aに対して所定の範囲内から出たこと等を検出する。
電磁弁制御部36は、対象物検出部35から出力される検出信号に基づいて、電磁弁11の開閉動作を制御する。具体的には、電磁弁制御部36は、対象物検出部35の人体動作検出部39においてドップラ信号検出部33から入力されたドップラ信号S6に基づいて対象物10が吐水口4aから吐出される水を受ける程度の位置に達したことが検出されると、電磁弁11を開動作させる。
センサ制御部37は、マイクロ波ドップラセンサ12の動作を制御する。センサ制御部37によるマイクロ波ドップラセンサ12の動作の制御には、マイクロ波ドップラセンサ12のサンプリング周期(以下単に「サンプリング周期」という。)の制御が含まれる。
サンプリング周期とは、マイクロ波ドップラセンサ12を所定の周期で間欠的に動作させる際の動作周期である。例えば、マイクロ波ドップラセンサ12の動作を2msec間隔で周期的に行う場合、サンプリング周期は2msecとなる。この場合、マイクロ波ドップラセンサ12においては、2msecごとに、受信部23によって対象物10から反射波が受信され、センサ出力S3が出力される。
サンプリング数が多いほど、高い精度でデータの検出を行うことができるが、消費電力が多くなる。逆に、サンプリング数が少ないほど、データの検出精度は低くなるが、消費電力が少なくなる。
記憶部38は、水栓装置1の制御プログラムや後述するような水栓装置1における吐水制御に用いられる各種データ等を記憶する。記憶部38は、例えばCPUに接続されるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等により構成される。
図3〜図5は、ドップラ信号S6や定在波信号S7に基づいて行う対象物10の接近状況を検出する手法の1例を示す図である。図3は対象物10を検出するための閾値A,B,F1を説明する図であり、図4は閾値C,F2を説明する図であり、図5はサンプリング周期を説明する図である。
図3(a)に示すように、対象物検出部35は、対象物10の接近を待機している待機時は定在波信号S7の振幅に係る閾値Aを用いて対象物10を検出し、対象物10の接近を検知した後、吐水開始を待機している予備検知時は定在波信号S7の振幅に係る閾値Bとドップラ信号S6の周波数に係る閾値F1を用いて対象物10を検出し、吐水中は定在波信号S7の振幅に係る閾値Cとドップラ信号S6の周波数に係る閾値F2を用いて対象物10を検出している。
より具体的には、閾値Aは、図3(b)に示すように、マイクロ波ドップラセンサ12から距離d1まで対象物10が接近したときに検出される定在波信号S7の振幅に対応する値としてある。すなわち、定在波信号S7の振幅は、対象物10がマイクロ波ドップラセンサ12から距離d1よりも遠くに位置するときは閾値Aより小さく、対象物10がマイクロ波ドップラセンサ12から距離d1よりも近くに入ると閾値Aより大きくなる。この閾値Aを用いることにより、対象物10が、洗面台から一定範囲内に接近したことを検出することができる。
閾値Bは、図3(b)に示すように、マイクロ波ドップラセンサ12から距離d2(d2<d1)まで対象物10が接近したときに検出される定在波信号S7の振幅に対応する値としてある。すなわち、定在波信号S7の振幅は、対象物10がマイクロ波ドップラセンサ12から距離d2よりも遠いときは閾値Bより小さく、対象物10がマイクロ波ドップラセンサ12から所定距離d2よりも近くに入ると閾値Bより大きくなる。この閾値Bを用いることにより、対象物10が吐水空間に侵入したことを検出することができる。
閾値F1は、図3(b)に示すように、マイクロ波ドップラセンサ12との相対距離の変動量が一定値以下になったときのドップラ信号S6の周波数に対応する値としてある。すなわち、ドップラ信号S6の周波数は、対象物10のマイクロ波ドップラセンサ12に対する相対速度が一定値以上の場合は閾値F1より大きく、対象物10のマイクロ波ドップラセンサ12に対する相対速度が一定値未満になると閾値Fより小さくなる。この閾値F1を用いることにより、対象物10が、例えば吐水空間においてほぼ静止し、吐水を待機する状態になったことを検出することができる。
閾値Cは、図4(a)に示すように、対象物10が、マイクロ波ドップラセンサ12から距離d3まで離反したときの低周波信号S8(後述)の振幅に対応する値としてある。距離d3は、例えば、マイクロ波ドップラセンサ12から吐水口4aによる吐出領域の辺縁までの距離とする。
ただし、センサ出力S3には水によるマイクロ波の反射の影響も含まれており、吐水領域からの対象物10の離脱を検出するには、これを考慮する必要がある。そこで、センサ出力S3から水によるマイクロ波の反射成分による信号を除去するため、周波数に関する閾値F2を用いる。
図4(b)に示すように、一般に、吐水中に検出される定在波信号S7には、少なくとも、周波数f1にピーク値を有する低周波側の分布と、周波数f2にピーク値を有する高周波側の分布との重ね合わせになっている。低周波側の分布は手で反射されたマイクロ波成分に由来し、高周波側の分布は水で反射されたマイクロ波成分に由来する。
この高周波側の分布を除去しつつ低周波側の分布を残すため、閾値F2以下の周波数成分を残すローパス処理を行っている。むろん、2つの閾値を用いて低周波側の分布に相当する周波数帯域を残すバンドパス処理を行ってもよい。これにより、定在波信号S7から水による反射成分に由来する定在波が除去され、閾値Cを用いて、吐水領域からの対象物10の離脱を検出することが出来るようになる。
このようにして水によるマイクロ波の反射の影響を排除した定在波信号S7を、以下では低周波信号S8と呼ぶことにする。この低周波信号s8の振幅は、図4(a)に示すように、対象物10がマイクロ波ドップラセンサ12から距離d3よりも近いときは閾値Cより大きく、対象物10がマイクロ波ドップラセンサ12から所定距離d3よりも遠くに離反すると閾値Cより小さくなる。このように、閾値Cと閾値F2を用いることにより、対象物10が吐水領域から離脱したことを検出することができる。
後述する吐水検出処理や止水検出処理においては、これら閾値A,B,C,F1,F2を用いて検出した人の接近/離反状況に基づいて、マイクロ波ドップラセンサ12のサンプリング周波数を適宜に調整することにより、サンプリングに係る省電力を実現しつつ、吐水や止水に係る高速な応答性を実現している。
図3(a)や図5に示すように、本実施形態においては、第1の周期T1、第2の周期T2、第3の周期T3(T1>T2>T3)の3種類のサンプリング周期を適宜に切り替えて、吐水検出処理や止水検出処理を実行している。
定在波信号S7の振幅が閾値Aよりも小さい場合(X<A)は、図5(a)に示す第1の周期T1でサンプリングを行う。このように、対象物10が距離d1よりも遠くに有る場合にサンプリング頻度を少なくすることで、サンプリングに係る消費電力を抑制した状態で人の接近を待機することが出来る。
また、定在波信号S7の振幅が閾値Aから閾値Bの範囲内にある場合(A<X<B)、又は、定在波信号S7の振幅が閾値Aよりも大きい場合であってドップラ信号S6の周波数が閾値F1よりも大きい場合は(X>A,fd<F)、図5(b)に示す第2の周期T2でサンプリングを行う。
このように、距離d2〜d1の範囲内に対象物10が接近してから、距離d2よりも近い位置(吐水空間)に対象物10が静止する前までは、サンプリング頻度を中程度にすることにより、吐水を開始するタイミングを検出するのに十分な頻度でサンプリングしつつ対象物10が吐水空間に静止するのを待機することが出来る。
そして、定在波信号S7の振幅値Xが閾値Bよりも大きく、且つ、ドップラ信号S6の周波数が閾値Fよりも小さくなると(X>B、fd<F)、吐水を開始するとともに、図5(c)に示す第3の周期T3でサンプリングを行う。
このように、吐水が開始されると、第3の周期T3でのサンプリングを開始し、その後、閾値F2を用いて水による反射成分の影響を排除したセンサ出力S3から生成された定在波信号S7の振幅が閾値Cよりも大きい場合は(X>C)、第3の周期T3でのサンプリングを継続し、当該振幅が閾値Cよりも小さくなると(X<C)、吐水を停止するとともに、サンプリング周期を第3の周期T3から第2の周期T2に変更する。
これにより、人の手が距離d2より近くに位置した後、人の手が距離d2よりも遠くへ移動するタイミングを可及的速やかに検出できるようになり、止水のタイミングを的確に検出して吐水を停止し、節水効率と使用者の利便性向上とを実現することができる。また、吐水空間から対象物10が離脱すると、サンプリング頻度を少なくしてサンプリングに係る消費電力を抑制することが出来る。
(2)第1のオフセット量調整処理:
以上のように構成された水栓装置1において、センサ制御部37は、マイクロ波ドップラセンサ12のセンサ出力S3に含まれる定在波の出力レベルを検出し、検出した出力レベルに応じたオフセット量で定在波の出力レベルをオフセットさせる第1のオフセット量調整処理を行っている。以下、図面を参照しつつ、第1のオフセット調整処理の1例を説明する。
図6は、第1のオフセット量調整処理の1例を示すフローチャートである。本実施形態において、同図に示す処理は、センサ制御部37が実行する。処理が開始されると、センサ制御部37は、センサ出力S3に含まれる定在波のDCレベルを検出する(S100)。本実施形態においては、例えば、定在波信号S7に基づいて、定在波のDCレベルを検出することが出来る。
次に、検出したDCレベルの基準値からの差分を演算し(S105)、この差分を相殺するオフセットの実行を、マイクロ波ドップラセンサ12に指示する(S110)。これにより、マイクロ波ドップラセンサ12の出力するセンサ出力S3の定在波成分が適宜にオフセットされ、センサ出力S3のDCレベルが出力可能範囲に収まるように調整される。
(3)第2のオフセット量調整処理の第1実施形態:
また、センサ制御部37は、上述した第1のオフセット量調整処理を実行しつつ、下記の第2のオフセット調整処理も実行している。第2のオフセット量調整処理の第1実施形態においては、水栓装置1の動作状態の変化を検出すると、定在波の出力レベルを適宜にオフセットさせる制御を行う。
これにより、動作状態の変化に伴ってセンサ出力S3の出力レベルが急激に変化した場合であっても、この出力レベルが瞬時に適切なオフセット量でオフセットされる。よって、対象物検出において不感期間の発生が防止され、対象物10の接近を検出する検出効率が向上し、水栓装置の反応速度を向上させることができる。
なお、本実施形態においては、好適なオフセット量が動作状態毎に記憶部38に記憶されており、制御部13は、水栓装置1の動作状態の変化を検出すると、記憶部38に記憶されている変化後の動作状態に係る出力レベルに応じて定在波の出力を適宜にオフセットさせる制御を行う。
以下、図7を参照しつつ、第2のオフセット量調整処理の第1実施形態について詳細に説明する。同図は、当該第1実施形態に係る第2のオフセット調整処理の流れを示すフローチャートである。なお、当該第1実施形態においては、マイクロ波ドップラセンサ12の動作を制御するためのセンサ制御部37が、同図に示す第2のオフセット量調整処理の第1実施形態を所定時間置きに周期的に実行している。
図7に示す第2のオフセット量調整処理が開始されると、センサ制御部37は、センサ出力S3(又は、定在波信号S7やドップラ信号S6)に基づいて動作状態が変化したか判断する(S100)。
そして、動作状態の変化を検知した場合は(S100:Yes)、変化後の動作状態に応じたオフセット量を記憶部38から取得し、当該オフセット量を変更し(S105)、動作状態の変化を検知していない場合は(S100:No)、オフセット量の変更を行わない。具体的には、動作状態の変化を検知すると、センサ制御部37は、マイクロ波ドップラセンサ12に対してオフセット量の変更を指示する。
これにより、動作状態に変化が生じてセンサ出力S3の出力レベルが変化した場合に、センサ出力S3の出力レベル(DCレベル)のオフセット量が瞬時に調整される。よって、センサ出力S3の出力レベルの飽和が生じにくくなり、対象物10の接近を検出する検出効率が向上し、水栓装置の反応速度を向上することができる。
ここで、本実施形態に係る動作状態は、水栓装置1の各種の動作状態であって、動作状態が他の動作状態に変化したときに、吐水空間における物理状態が変動するものである。より好適には、制御部13の制御により移行しうる各種の動作状態であって、動作状態の移行によってマイクロ波ドップラセンサ12のセンサ出力が変動するものである。さらに好適には、動作状態が移行したときに、マイクロ波ドップラセンサ12の出力レベルが所定量以上に急激に変動するものである。
このような動作状態の具体的な例としては、水栓装置1が吐水を行う吐水状態や、水栓装置1が吐水を行わずに待機する待機状態が挙げられる。以下、第2のオフセット調整処理の具体例として、待機状態から吐水状態への変化時に行う第2のオフセット調整処理、及び吐水状態から待機状態への変化時に行う第2のオフセット調整処理について説明する。
(4)第2のオフセット量調整処理の第2実施形態:
第2のオフセット量調整処理の第2実施形態において、制御部13は、非吐水状態から吐水状態への変化を対象物検出部35が検出すると、記憶部38に記憶されている吐水状態の出力レベルに応じて、センサ出力S3に含まれる定在波の出力レベルをオフセットさせる制御を行うようになっている。
これにより、非吐水状態から吐水状態への変化に伴ってセンサ出力S3の出力レベルが急激に変化しても、吐水状態に適したオフセット量で出力レベルがオフセットされるようになり、センサ出力S3が飽和しにくくなる。よって、対象物10の接近を検出する検出効率が向上し、水栓装置の反応速度を向上させることができる。
以下、図8を参照しつつ、第2のオフセット量調整処理の第2実施形態について詳細に説明する。図8は、第2のオフセット量調整処理の第2実施形態を含む吐水検出処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す吐水検出処理は、制御部13を構成する各部が連動することにより実行している。
なお、同図に示す吐水検出処理と後述する止水検出処理は、水栓装置1の通常動作中はいずれか一方が選択的に実行されるものであり、図8に示す吐水検出処理が終了すると、後述の図9に示す止水検出処理が開始され、逆に、図9に示す止水検出処理が終了すると、図8に示す吐水検出処理が開始される。
図8に示す吐水検出処理が開始されると、まず、サンプリング周期を第1の周期T1に設定する(S200)。具体的には、センサ制御部37が、第1の周期T1へのサンプリング周期の変更を指示する制御信号をマイクロ波ドップラセンサ12に対して出力する。これにより、マイクロ波ドップラセンサ12は、第1の周期T1で間欠的に動作するようになる。
次に、対象物検出部35がマイクロ波ドップラセンサ12のセンサ出力S3をサンプリングし(S205)、センサ出力S3に含まれる定在波の振幅と閾値Aとを比較する(S210)。図2に示す水栓装置1では、実際には、センサ出力S3に基づいて生成された増幅信号S5から抽出された定在波信号S7から定在波の振幅を特定し、この定在波の振幅と閾値Aに対応する値とを比較することになる。
ここで、定在波の振幅が閾値Aよりも小さい場合は(S210:No)、対象物10が周囲に無いものと判断して、サンプリング周期は第1の周期T1のままでステップS205〜の処理を繰り返す。一方、定在波の振幅が閾値Aよりも大きい場合は(S210:Yes)、対象物10が周囲にあるものと判断して、対象物10の動作に対する応答性を向上するため、予備検知のための動作状態へ移行する。
このとき、センサ制御部37は、予備検知のための動作状態へ移行するため、サンプリング周期を第2の周期T2に変更する(S215)。具体的には、センサ制御部37が、第2の周期T2への変更を指示する制御信号をマイクロ波ドップラセンサ12に対して出力し、これにより、マイクロ波ドップラセンサ12が、第2の周期T2で間欠的に動作することとなる。
次に、センサ制御部37は、予備検知のための動作状態に移行してからの時間をカウントするため、カウンタをリセットする(S220)。カウンタによるカウントは、例えば、タイマ41から供給されるクロック信号を利用して行われる。
次に、対象物検出部35がマイクロ波ドップラセンサ12のセンサ出力S3をサンプリングし(S225)、当該センサ出力S3に含まれるドップラ信号の周波数を演算により特定する(S230)。図2に示す水栓装置1では、実際には、センサ出力S3に基づいて生成された増幅信号S5から抽出されたドップラ信号S6に基づいて周波数を特定することになる。
ドップラ信号の周波数の特定は、複数回分のサンプリング結果に対して所定の周波数演算処理を行うことにより行う。対象物検出部35は、この周波数演算処理を行うため、複数回分のサンプリング結果を保持している。所定の周波数演算処理としては、FFT(Fast Fourier Transform)、周波数フィルタ、ピーク・ボトム検出、等が例示される。
次に、対象物検出部35は、センサ出力S3に含まれるドップラ信号の周波数と閾値F1の比較(S235)、及びセンサ出力S3に含まれる定在波信号の振幅と閾値Bの比較を行う(S240)。ここでも、実際には、ドップラ信号S6や定在波信号S7に基づいて特定した周波数や振幅を利用して比較を行うことになる。
ここで、ドップラ信号の周波数が閾値F1よりも大きい場合は(S235:No)、定在波信号の振幅と閾値Bの比較結果に関わらず、カウンタをインクリメントする(S260)。また、ドップラ信号の周波数が閾値F1よりも小さく(S235:Yes)、定在波信号の振幅が閾値Bよりも小さい場合も(S240:No)、カウンタをインクリメントする(S260)。
カウンタをインクリメントすると(S260)、カウンタのカウント値が所定値以上になっているか判断する(S265)。カウンタが所定値以上になっている場合は(S260:Yes)、人が居ないと判断して、サンプリング周期を第1の周期T1に戻すことにより(S200)、対象物10の接近を待機する待機状態へ移行する。一方、カウンタが所定値未満の場合は(S265:No)、ステップS225〜の処理を繰り返すことになる。
一方、ドップラ信号の周波数が閾値F1よりも小さく(S235:Yes)、定在波信号の振幅が閾値Bよりも大きい場合は(S240:Yes)、電磁弁11を閉状態から開状態へ移行させる(S245)。具体的には、対象物検出部35が電磁弁制御部36に所定の駆動信号を入力する。これにより、吐水口4aから水の吐出が開始される。すなわち、待機状態から吐水状態へと動作状態が変化する。
また、このとき、センサ制御部37は、マイクロ波ドップラセンサ12のオフセット値を変更する(S250)。すなわち、待機状態から吐水状態への動作状態の変化を検知すると、センサ制御部37は、記憶部38に記憶されている吐水状態の出力レベルを示す情報を取得し、マイクロ波ドップラセンサ12に対して、当該吐水状態の出力レベルに応じたオフセット量への変更を指示する。
これにより、待機状態から吐水状態への動作状態の変化が生じても、センサ出力S3の出力レベル(DCレベル)のオフセット量が瞬時に調整される。よって、センサ出力S3の出力レベルの飽和が生じにくくなり、対象物検出において不感期間が発生せず、対象物10の接近を検出する検出効率が向上し、水栓装置の反応速度を向上することができる。
なお、図8に示すフローチャートでは、電磁弁11を開駆動した後にオフセット量の調整を行っているが(S250)、オフセット量の調整を行うタイミングは、電磁弁11の閉駆動の前後いずれであってもよく、ステップS240で条件成立した後であれば、任意のタイミングで実行することが出来る。
(5)第2のオフセット量調整処理の第3実施形態:
第2のオフセット量調整処理の第3実施形態においては、制御部13は、動作状態が待機状態へ変化したことを対象物検出部35が検出した場合に、記憶部38に記憶されている吐水状態の出力レベルに応じて、定在波の出力レベルを適宜にオフセットさせる制御を行うようになっている。
これにより、吐水状態から待機状態への変化に伴ってセンサ出力S3の出力レベルが急激に変化しても、待機状態に適したオフセット量で出力レベルがオフセットされるようになり、センサ出力S3が飽和しにくくなる。よって、対象物10の接近を検出する検出効率が向上し、水栓装置の反応速度を向上させることができる。
以下、図9を参照しつつ、第2のオフセット量調整処理の第3実施形態について詳細に説明する。図9は、止水検出処理の流れを示すフローチャートである。なお、同図に示す止水検出処理も、制御部13を構成する各部が連動することにより実行している。
図9に示す止水検出処理が開始されると、まず、サンプリング周期を第3の周期T3に設定する(S300)。具体的には、センサ制御部37が、第3の周期T3へのサンプリング周期の変更を指示する制御信号をマイクロ波ドップラセンサ12に対して出力する。これにより、マイクロ波ドップラセンサ12は、第3の周期T3で間欠的に動作するようになる。
次に、センサ制御部37は、止水のタイミングを特定するための時間をカウントするためのカウンタをセット(リセット)する(S305)。このカウンタは、後述するように、対象物10が吐水領域の範囲内から離反した状態が所定時間継続しているか判断するために用いられる。なお、このカウンタによるカウントも、例えば、タイマ41から供給されるクロック信号を利用して行われる。
次に、対象物検出部35はマイクロ波ドップラセンサ12のセンサ出力S3をサンプリングし(S310)、当該センサ出力S3に対して閾値F2以下の周波数成分を残すローパス処理を実行する(S315)。これにより、定在波信号S7から、水による反射成分に由来する定在波を除去した、低周波信号S8を生成することができる。
次に、低周波信号S8の振幅と閾値Cの比較を行う(S320)。ここで、低周波信号S8の振幅が閾値Cよりも大きい場合は(S320:No)、対象物10である人の手が吐水領域の範囲内にあることを示しているため、ステップS305に戻って、いったんカウンタt2のカウント値を0にリセットする(S305)。一方、低周波信号S8の振幅が閾値Cよりも小さい場合は(S320:Yes)、対象物10である人の手が吐水領域の範囲内から離脱したことを示しているため、カウンタt2をインクリメントする(S325)。
次に、センサ制御部37は、カウンタt2と、閾値X2を比較する(S330)。ここで、カウンタt2が閾値X2以上の場合は(S330:Yes)、閾値X2に相当する時間以上、対象物10が吐水領域の範囲内から離反した状態が継続していることを示しているため、電磁弁11を開状態から閉状態へ移行させる(S335)。具体的には、対象物検出部35が電磁弁制御部36に所定の駆動信号を入力する。これにより、吐水口4aから水の吐出が停止される。すなわち、吐水状態から待機状態へと動作状態が変化する。
また、このとき、センサ制御部37は、マイクロ波ドップラセンサ12のオフセット値を変更する(S340)。具体的には、センサ制御部37は、吐水状態から待機状態への動作状態の変化を検知すると、記憶部38に記憶されている待機状態の出力レベルを示す情報を取得し、マイクロ波ドップラセンサ12に対して、当該待機状態の出力レベルに応じたオフセット量への変更を指示する。
これにより、吐水状態から待機状態への動作状態の変化が生じたときに、センサ出力S3の出力レベル(DCレベル)のオフセット量が瞬時に調整される。よって、センサ出力S3の出力レベルの飽和が生じにくくなり、対象物10の接近を検出する検出効率が向上し、水栓装置の反応速度を向上することができる。
なお、図9に示すフローチャートでは、電磁弁11を閉駆動した後にオフセット量の調整を行っているが、オフセット量の調整を行うタイミングは、電磁弁11の閉駆動の前後いずれであってもよく、ステップS330で条件成立した後であれば、任意のタイミングで実行することが出来る。
(6)出力レベル記憶処理:
上述した記憶部38に記憶されている動作状態毎の出力レベルは、所定のタイミングで、センサ制御部37が記憶部38に記憶するようにしてもよい。すなわち、センサ制御部37は、所定のタイミングで自動的に動作状態を変化させ、変化後の動作状態での定在波信号S5の出力レベルを当該動作状態の出力レベルとして記憶するようにしてもよい。以下、動作状態毎の出力レベルを適宜のタイミングで記憶部38に記憶する出力レベル記憶処理について説明する。
図10は、出力レベル記憶処理を説明するためのフローチャートである。同図に示す処理は、制御部13を構成する各部が連動することにより実行している。出力レベル記憶処理が開始されると、センサ制御部37は、水栓装置1が使用者よって使用されるタイミングか否かを判断する(S400)。この判断は、実際に使用者を水栓装置1の周囲に検知しているか否かに基づいて判断しても良いが、水栓装置1の使用頻度を学習する学習手段の学習結果に基づいて特定することもできる。
学習手段は、例えば、吐水回数を時間帯毎に集計して作成する吐水頻度データを記憶部38に記憶しておき、当該吐水頻度データに対して所定の統計処理を行う事により、各時間帯における使用頻度を演算することが出来る。センサ制御部37は、学習手段の演算した使用頻度の最も低い時間帯を、吐水が行われにくい時間帯、すなわち、対象物10である人が水栓装置1を使用する可能性が低い時間帯として特定することができる。
センサ制御部37は、水栓装置1が使用者によって使用される若しくは使用されやすいタイミングであると判断すると(S400:Yes)、使用者によって使用されない若しくは使用されにくいタイミングになるまで、ステップS400の判断処理を繰り返す。
一方、水栓装置1が使用者によって使用されない若しくは使用されにくいタイミングであると判断すると(S400:No)、動作状態を所定の動作状態に変化させる(S405)。そして、定在波信号S7の出力レベルを特定し(S410)、特定した出力レベルを、現在の動作状態における出力レベルとして、記憶部38に記憶する(S415)。
このように、対象物10が吐水口周辺に検出されない若しくは検出されにくいタイミングで自動的に、所定の動作状態における定在波の出力レベルを記憶することにより、使用者に迷惑や不快感を与えること無く、所定の動作状態における定在波の正確な出力レベルを記憶することが出来る。
なお、ステップS405において行う動作状態の変化によって出力レベルが飽和する場合は、上述した第1のオフセット調整処理もしくは第2のオフセット調整処理を実行することにより、出力レベルが制御部13の入力特性の範囲内に入るまで、ステップS410の出力レベルの特定を待機する。
そして、出力レベルが制御部13に入力可能なDCレベルの範囲内に入ると、実際の出力レベルに、第1のオフセット調整処理や第2のオフセット調整処理によって行ったオフセットの総量を加えた値を、現在の動作状態における出力レベルとして記憶部38に記憶する(S415)。
その後、記憶部38に記憶されている全ての動作状態について出力レベルの取得と記憶が完了したか判断する(S420)。全ての動作状態について処理が完了している場合は(S420:Yes)、当該出力レベル記憶処理を終了し、未完了のものがある場合は(S420:No)、所定の動作状態の全てについて処理が完了するまで、ステップS405〜の処理を繰り返す。
以上説明した出力レベル記憶処理を実行することにより、水栓装置1の吐水や洗面器表面の実情に即した、各動作状態における正確な定在波の出力レベルを記憶部に記憶することが出来る。よって、水栓装置の反応速度を向上することができる。
(7)まとめ:
以上説明したように、水栓装置1は、電磁弁11と、吐水口4a周辺の対象物10を検出するマイクロ波ドップラセンサ12と、マイクロ波ドップラセンサ12のセンサ出力S3に基づいて電磁弁11の開閉動作を制御する制御部13と、を備え、制御部13は、センサ出力S3に含まれる定在波信号S7の出力レベルを検出し、この出力レベルに応じたオフセット量で定在波信号S7の出力レベルをオフセットさせるようになっており、更に、制御部13は、動作状態毎の定在波信号S7の出力レベルを記憶する記憶部38を備えており、センサ出力S3に基づいて動作状態の変化を検出すると、記憶部38に記憶されている各動作状態の出力レベルに応じたオフセット量で定在波信号S7の出力レベルをオフセットさせるようになっている。これにより、動作状態が変化した直後でも、対象物10の検出を継続することができ、水栓装置の反応速度を向上することができるようになっている。
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また,本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。