JP2013203625A - シリコン結晶インゴット製造用離型材およびシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法 - Google Patents

シリコン結晶インゴット製造用離型材およびシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】離型材の熱応力に対する耐久性を向上させ、シリコン結晶の成長中に離型材が容器から剥離しないようにする。
【解決手段】有機バインダーを含む水溶液に窒化珪素の粉末を懸濁させたスラリーを、耐熱性の容器の内側壁面に塗布し、耐熱性の容器に塗布されたスラリーを不活性雰囲気下で加熱して焼結させる。このようにして形成されたシリコン結晶インゴット製造用離型材は、炭素と珪素の原子比[C/Si]が2.5以下となり、部位毎の焼結密度が均一になる。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶融した原料シリコンを保持するための容器に形成されるシリコン結晶インゴット製造用離型材、および容器にシリコン結晶インゴット製造用離型材を形成する方法に関する。
多結晶シリコンのインゴットを製造する方法としては、従来、キャスト法、ブリッジマン法、カイロポーラス法等の様々な製造法が知られている。これらは何れも、真空中または不活性雰囲気下において、容器(るつぼ)に溶融した状態で保持された原料シリコンを、該容器中において凝固させていく製造法である。
これらの方法でインゴットを製造する際には、シリコン融液と容器との融着を防ぐとともに、固化時の熱応力によるインゴットの破損を防ぐため、容器の内側壁面に離型材を形成する必要がある。
離型材にも様々な種類があるが、その中でも窒化珪素(Si34)からなるSi34離型材は、特にシリコン融液と反応しにくいという特徴があり、多結晶シリコンインゴットの製造において広く用いられている。このSi34離型材は、Si34粉末をポリビニルアルコール(PVA)などの有機バインダーを含む水溶液に懸濁させてスラリー化したものを容器の内側壁面に塗布した後、酸化性雰囲気下で加熱することにより、スラリー中の水やバインダーを除去(脱脂)するとともに、Si34粉末を焼結させることにより形成していた(特許文献1参照)。
特開2007−261832号公報
しかしながら、従来の形成方法では、スラリーに含まれる有機バインダーが充分に除去されず、残留炭素不純物となって離型材内に多く残ってしまっていた。この残留炭素不純物は、離型材の部位毎の焼結密度を不均一にするため、離型材の熱応力に対する耐久性を著しく低下させる要因となっていた。熱応力に対する耐久性が低いということは、結晶成長中の高温下において、離型材が容器から剥離してしまう可能性が高いことを示す。この状態で離型材が剥離してしまうと、その破片がシリコン融液の液面を浮遊することとなり、多結晶シリコンの個々の粒子が大きく成長する妨げとなってしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、離型材の熱応力に対する耐久性を向上させ、シリコン結晶の成長中に離型材が容器から剥離しないようにすることを目的とする。
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、溶融した原料シリコンを保持するための耐熱性の容器の内側壁面に形成されるシリコン結晶インゴット製造用離型材において、主に窒化珪素からなり、不純物として炭素が含まれ、炭素と珪素の原子比[C/Si]が2.5以下であることを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材において、酸素が含まれ、酸素と珪素の原子比[O/Si]が0.2以上であることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材において、平均膜厚が0.3mm超1.0mm未満であることを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、シリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法において、有機バインダーを含む水溶液に窒化珪素の粉末を懸濁させたスラリーを、耐熱性の容器の内側壁面に塗布し、前記容器に塗布された前記スラリーを不活性雰囲気下で加熱して焼結させることを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法において、前記スラリーを焼結させてできた窒化珪素膜を酸化させることを特徴としている。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法において、前記容器に前記スラリーを塗布して焼結させる工程を2回以上繰り返すことを特徴としている。
請求項7に記載の発明は、請求項4から6の何れか一項に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法において、前記スラリーを400度以上1200度以下の温度で加熱して焼結させることを特徴としている。
本発明によれば、窒化珪素中の炭素濃度が低下することにより、離型材の部位毎の焼結密度が均一になって熱応力に対する耐久性が向上するので、結晶成長中の高温下において離型材が容器から剥離しなくなる。このため、この離型材を用いれば、剥離した離型材によってシリコン結晶の成長が妨げられることがなくなるので、結晶粒子の大きい高品質なシリコン結晶インゴットを製造することができる。
<実施形態>
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔シリコン結晶インゴットの製造方法〕
まず、本実施形態のシリコン結晶インゴット(ここでは多結晶インゴット)の製造方法について説明する。本実施形態のシリコン結晶インゴットの製造工程は大きく分けて離型材形成工程、結晶成長工程からなる。また、離型材形成工程は、スラリー準備工程、スラリー塗布/加熱工程、酸化工程からなる。
離型材形成工程の最初の工程であるスラリー準備工程では、窒化珪素(Si34)粉末と有機バインダー(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール、アクリル酸エステル系共重合樹脂など)を混合したものを水に加えて攪拌し、スラリーを作製する。
スラリー準備工程の後は、スラリー塗布/加熱工程に入る。ここでは、作製したスラリーを、刷毛やスプレーでるつぼ(容器)の内側壁面に塗布し、スラリーを塗布したるつぼを炉に入れる。そして、炉内に不活性ガス(窒素(N2)やアルゴン(Ar)など)を充填し、るつぼを不活性雰囲気下で高温に加熱することにより、スラリーに含まれる水やPVAを除去(脱脂)するとともに、Si34粉末を焼結させる。このようにして、るつぼの内側壁面に窒化珪素(Si34)膜が形成される。
その後、炉内温度を室温まで低下させ、るつぼを取り出す。そして、るつぼの内側壁面に形成されたSi34膜の表面に更にスラリーを塗布し、るつぼを炉に入れる。そして、不活性雰囲気下で脱脂・焼結を行う。このように、1回の離型材形成工程において、このスラリー塗布/加熱工程を2回以上繰り返すことにより、Si34膜を所定の膜厚となるまで厚くする。
スラリー塗布/加熱工程の後は、酸化工程に入る。ここでは、炉内温度を室温まで低下させ、炉内の不活性ガスを酸化性ガス(空気や酸素(O)など)で置換し、るつぼを酸化性雰囲気下で加熱することにより、るつぼの内側壁面に形成されたSi34膜を酸化させる。酸化させる際の加熱温度や加熱時間は、上記スラリー塗布/加熱工程で形成したSi34膜の厚さに応じて適宜変更する。
このようにして、るつぼの内側壁面に本実施形態の多結晶シリコン製造用離型材(以下離型材R)が形成される。
離型材形成工程の後は、結晶成長工程に移る。結晶成長工程では、シリコン原料を離型材Rが形成されたるつぼに充填し、不活性雰囲気下でシリコン原料を融点以上の温度となるまで加熱して溶融させる。シリコンが融解してできたシリコン融液の温度が安定した後、炉内に不活性ガス(例えばアルゴン(Ar))を流しながらシリコン融液の液面に種結晶を浸漬する。そして、所定の速さでシリコン融液を冷却し、シリコン融液を液面から凝固させて行く。シリコン融液が全て凝固し、室温まで低下したところでるつぼから多結晶シリコンのインゴットを取り出す。
以上、本実施形態の多結晶シリコンのインゴットを製造する方法について説明したが、この製造方法で製造できるのは多結晶シリコンに限られない。すなわち、るつぼの形状やサイズ、種結晶の形状、サイズ、浸漬時の温度、浸漬位置、融液の量、温度、対流の速さ、冷却の速度、断熱材の構造、充填された不活性ガスの温度、圧力、対流の速さなどの要素を最適化することで、単結晶シリコンを製造することも可能である。
<具体例>
次に、上記シリコン結晶インゴットの製造方法の具体例について説明する。
まず、スラリー準備工程において、宇部興産製のSN−E10グレードのSi34粉末97gに、PVAを、Si34粉末の重量に対して5%添加して混合したものを、150gの水に加え、更に、この水溶液に分散剤(例えば酒石酸)を適量加えて攪拌し、離型材Rの材料となるスラリーを作製した。
次に、スラリー塗布/加熱工程において、開口気孔率11%の石英焼結体で形成したるつぼの内側壁面全体に上記スラリーを刷毛で塗布した。そして、るつぼを炉に入れ、炉内にN2ガスを充填し、不活性雰囲気下、炉内温度950℃、加熱時間3時間という加熱条件でるつぼを加熱することにより、るつぼに塗布されたスラリー中のPVAおよび水を除去(脱脂)するとともに、Si34粉末を焼結させ、るつぼ内側壁面全体にSi34膜を形成した。ここで、「炉内温度950℃」とは、加熱により最終的に到達した最高温度が950℃という意味であり、「加熱時間3時間」とは、炉内温度が最高温度となってから3時間加熱するという意味である。
最初となる1回目のスラリー塗布/加熱工程を経て、るつぼの内側壁面は、膜厚0.1mm程度のSi34膜に被覆された。この後、2回目の同工程を経て、Si34膜の膜厚は0.1〜0.2mm程度厚くなった。上記1回目のスラリー塗布/加熱工程のようにるつぼ内側壁面に直接スラリーを塗布する場合は、スラリーを厚く塗ることが困難であるが、2回目以降の同工程のように形成済みのSi34膜の表面にスラリーを塗布する場合は、スラリーを厚く塗ることが容易であるため、2回目以降のスラリー塗布/加熱工程では、1回目の同工程に比べて厚くSi34膜を形成できる。このようにして、1回目に形成されたSi34膜の膜厚と2回目に形成されたSi34膜の膜厚の合計を0.2〜0.3mm程度とした。なお、このスラリー塗布/加熱工程を繰り返すほど、るつぼを被覆するSi34膜の膜厚が厚くなることが確認されている。本具体例では、スラリー塗布/加熱工程を2〜4回繰り返すことにより、次工程へ移る直前の最終的なSi34膜の膜厚を0.20〜1.0mm程度とした。
次に、酸化工程において、炉内のN2ガスを空気と置換し、酸化性雰囲気下、炉内温度950℃、加熱時間3時間という加熱条件でるつぼを加熱することにより、るつぼ内側壁面に形成されたSi34膜を酸化させ、離型材Rを形成した。離型材Rの見かけ上の平均密度(=離型材Rの重量/(るつぼ内側壁面の面積×離型材Rの厚さ))は1.4〜1.7g/cm3であった。
次に、結晶成長工程において、上記離型材形成工程を経たるつぼにフレーク状または粉状のシリコン原料5kgを充填し、るつぼを炉に入れて、炉内へ通じる冷却パイプにArガスを10L/min流しながらヒーター温度が1550〜1600℃となるように加熱した。シリコン原料が溶融した後は、るつぼ底部の温度が約1530℃になるように保持した。シリコンがすべて溶融してから約3時間後、炉内にArガスを流しながらシリコン融液に種結晶を浸漬し、10℃/hの速さでシリコン融液を冷却してシリコンを融液面から凝固させていった。この間、融液面をCCDカメラで観察し、浮遊しているSi34片の有無を確認した。
〔焼結条件と離型材の耐久性1〕
次に、焼結条件(炉内雰囲気)の違いからくる離型材の熱応力に対する耐久性の差について説明する。下記表1は、それぞれ異なる6種類の離型材(比較例1〜3、実施例1〜3)について、形成方法、測定強度比([C/Si]、[O/Si])、インゴット製造時における剥離の有無、製造されたインゴットの破損の有無を纏めたものである。
Figure 2013203625
説明するにあたり、まず、6つの同じるつぼを用意し、表1に示すように、各るつぼにそれぞれ異なる方法で6種類の離型材(比較例1〜3、実施例1〜3)を形成した。具体的には、比較例1の離型材は、空気雰囲気下でスラリー塗布/加熱工程を2回繰り返し、酸化工程を経ずに形成し、比較例2の離型材は、空気雰囲気下でスラリー塗布/加熱工程を2回繰り返した後、空気雰囲気下での酸化工程を経て形成した。比較例3の離型材は、N2雰囲気下でスラリー塗布/加熱工程を2回繰り返し、酸化工程を経ずに形成した。
一方、実施例1の離型材は、N2雰囲気下でスラリー塗布/加熱工程を3回繰り返した後、空気雰囲気下での酸化工程を経て形成した。さらに実施例2および実施例3の離型材は、N2雰囲気下でスラリー塗布/加熱工程をそれぞれ3回、4回と繰り返した後、空気に酸素ガスを付加することで酸素濃度を高めた酸素富化空気下での酸化工程を経て形成した。各形成方法とも、スラリー塗布/加熱工程、酸化工程における加熱条件は、炉内温度950℃、加熱時間3時間とした。この6種類の離型材のうち、実施例1〜3の離型材が本実施形態の離型材Rに相当する。
そして、このような離型材を形成した各るつぼを用いて多結晶シリコンのインゴットを製造し、製造されたインゴットの上面を目視することにより離型材の剥離の有無をチェックした。すなわち、インゴットの上面にSi34片が確認されれば離型材の剥離ありと判定し、Si34片が確認されなければ剥離なしと判定することとした。
また、インゴットの製造後、室温まで冷却したインゴットおよびるつぼの表面を目視することによりインゴットの破損の有無をチェックした。
試験の結果、表1に示したように、スラリーを空気雰囲気下で加熱して形成した比較例1,2の離型材は、シリコン溶融後、るつぼ内側壁面から剥離して融液面浮遊物となり、インゴットの上面に析出した。
一方、スラリーをN2雰囲気下で加熱して形成した比較例3の離型材は、シリコン溶融後に剥離せず、インゴットの上面にも析出していないことが確認された。しかしながら、比較例3の離型材には、るつぼ内のシリコン融液が浸透したため、るつぼ内で固化したシリコンのインゴットとるつぼが融着し、インゴットが破壊された。すなわち、比較例3の離型材は、熱応力に対する耐久性は高いものの、離型材として充分に機能していないことになる。
一方、スラリーをN2雰囲気下で加熱し、更に酸化させて形成した実施例1〜3の離型材Rは、シリコン溶融後に剥離せず、しかも、シリコン融液が浸透することもなく、インゴットとるつぼとの融着もなかった。
また、上記るつぼと同じ材質の石英焼結板材を6枚用意し、各板材に上記比較例1〜3および実施例1〜3に相当する条件で、6種類のSi34膜をそれぞれ形成した。そして、各板材のSi34膜を形成した面に対して垂直に切断し、各板材に形成されたSi34膜の断面を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で分析した。具体的には、各サンプルにおける測定強度比[C/Si],[O/Si]を各離型材の炭素(C)濃度,酸素(O)濃度と定義し、その値を求めた。以下、求めた値を、対応する離型材から得られた値として説明する。
分析の結果、表1に示したように、上記試験で結晶成長中に剥離しなかった比較例3、実施例1〜3の離型材は、剥離した比較例1〜2の離型材に比べて[C/Si]が低くなっていることが分かる。これは、比較例3の離型材および実施例1〜3の離型材Rを形成する際、Si34粒子に混ざっていた珪素酸化物(例えばSiO2)が、同じくSi34粒子に混ざっていたCと下記の反応式で表される反応を起こしたためと考えられる。すなわち、SiO2がCによって還元され、一酸化珪素(SiO)および一酸化炭素(CO)となってSi34膜から放出されたものと推測される。
SiO2(固)+C(固)→SiO(気)+CO(気)
この結果から、[C/Si]の低下が、Si34膜の部位毎の焼結密度を均一にし、離型材の熱応力に対する耐久性を向上させることに寄与していると考えられる。
また、シリコン融液が浸透しなかった実施例1〜3の離型材Rは、酸化工程を経たことにより、シリコン融液が浸透した比較例3の離型材に比べて[O/Si]が高くなっている。この結果から、[O/Si]の増加が、Si34粒子同士の焼結性を向上させ、離型材にシリコン融液が浸透しにくくすることに寄与していると考えられる。
以上により、N2雰囲気下でスラリーの脱脂・焼結を行った後に、空気雰囲気下もしくは、酸素富化空気下で酸化処理を行うと、焼結密度が均一で熱応力に対する耐久性が高く、焼結密度が高くシリコン融液が浸透しにくい離型材を形成することができるといえる。また、[C/Si]を2.5以下まで低下させ、[O/Si]を0.2以上に高めることにより、その効果がより顕著な離型材Rを形成することができるといえる。
〔焼結条件と離型材の耐久性2〕
次に、焼結条件(焼結温度)の違いからくる離型材の熱応力に対する耐久性の差について説明する。
説明するにあたり、まず、上記具体例で用いたものと同じるつぼを4つ用意し、各るつぼにそれぞれ異なる焼結温度で離型材を形成した。具体的には、各形成方法とも、N2雰囲気下、焼結時間3時間という加熱条件は共通とし、1つ目の離型材は、塗布したスラリーを400℃未満の温度で加熱して形成し、2つ目の離型材は、スラリーを400℃以上700℃未満の温度で加熱して形成した。また、3つ目の離型材は、スラリーを700℃以上〜1200℃未満の温度で加熱して形成し、4つ目の離型材は、1200℃以上の温度で加熱して形成した。この4種類の離型材のうち、2つ目、3つ目の離型材が本実施形態の離型材Rに相当する。
そして、各るつぼを用いて原料シリコンを溶融させ、原料シリコンが溶融してできたシリコン融液の液面を目視することにより離型材の剥離の有無をチェックした。
試験の結果、400℃未満の温度で加熱した1つ目の離型材は、殆ど焼結されていないために崩れ、材料のSi34粉末がシリコン融液の液面に大量に浮遊してしまった。また、400〜700℃で加熱した2つ目の離型材Rは、剥離はなかったものの、焼結がまだ不十分であり、焼結しなかったSi34粉末が僅かに液面に浮遊しているのが見られた。
一方、700〜1200℃で加熱した3つ目の離型材Rは、十分に焼結されており、液面に浮遊物は発見できなかった。
なお、1200℃以上で加熱した4つ目の離型材は、離型材の形成段階で(離型材焼成炉内で)石英ルツボが変形し始めたため、その歪みにより剥がれてしまった。このため、るつぼにシリコン融液を保持させた状態で剥離の有無をチェックする試験を行えなかった。
以上により、N2雰囲気下でスラリーの脱脂・焼結を行う際に、焼結温度を400℃以上1200℃未満に設定すると、熱応力に対する耐久性が高い離型材Rを形成することができ、焼結温度を更に狭めて700℃以上1200℃未満に設定すると、熱応力に対する耐久性が高い上に、不純物を放出しにくい離型材Rを形成することができるといえる。
〔離型材の平均膜厚と耐久性〕
次に、離型材の平均膜厚の差からくる離型材の熱応力に対する耐久性の差について説明する。
説明するにあたり、まず、上記具体例で用いたものと同じるつぼを2つ用意し、各るつぼにそれぞれ異なる膜厚の離型材を形成した。具体的には、1つ目の離型材は、スラリー塗布/加熱工程を2回経ることで平均膜厚0.3mmとなるように形成し、2つ目の離型材は、スラリー塗布/加熱工程を3回経ることで平均膜厚0.4mmとなるように形成した。各形成方法とも、スラリー塗布/加熱工程、酸化工程における加熱条件は、炉内温度950℃、加熱時間3時間とした。この2種類の離型材のうち、2つ目の離型材が本実施形態の離型材Rに相当する。
そして、各るつぼを用いてインゴットを製造し、インゴットの表面を目視することによりその状態をチェックした。
試験の結果、平均膜厚0.3mmの一つ目の離型材を用いて製造したインゴットには、下部の角に破損が見られた(他の部分は問題なかった)。これは、離型材の、インゴット下部の角に接触する部分の耐久性が十分ではなかったことを示している。一方、平均膜厚0.4mmの2つ目の離型材Rを用いたインゴットには、上記のような破損は見られなかった。従って、インゴットの破損を防ぐためには、離型材の平均膜厚を0.3mm超とする必要があるといえる。
また、これまでインゴットを製造してきた経験上、離型材の平均膜厚を1.0mm以上としたときに離型材が剥離し易くなることが分かっている。従って、離型材の平均膜厚は0.3mm超1.0mm未満とするのがよいといえる。特に、形成時間短縮の観点から、平均膜厚を0.6mmとする(スラリー塗布/加熱工程を4回程度繰り返す)のがより好ましい。
〔補足〕
ところで、結晶成長を行う際、炉のヒーター温度が1550℃に到達する前に(少なくとも1200℃から)、炉内へ通じる冷却パイプに30〜50L/minのArガスを流しながら結晶成長を行ったところ、空気中で焼結し、その後の酸化処理を行わずに形成した比較例1の離型材であっても、るつぼからの剥離が発生しなかった。
また、このようにして製造したインゴットの上面を観察したところ、例えば、上記具体例として、Arガス30L/minで製造したインゴットの上面は、Arガス10L/minで製造したインゴットの上面よりも金属光沢が認められた。これは、インゴット中の[C/Si]が低減したことによるものと推定される。
この事実から、不活性ガスによって融液面上方の空間におけるCの量を低減することにより離型材のCも低減できる可能性が示された。つまり、離型材の剥離を防止するためには離型材形成工程だけでなく結晶成長工程における低炭素化も効果的であるといえる。
以上のように、本実施形態の離型材Rは、主にSi34からなり、CとSiの原子比[C/Si]が2.5以下となっているので、部位毎の焼結密度が均一で、熱応力に対する耐久性が高く、結晶成長中の高温下においてもるつぼ(容器)から剥離しにくい。このため、この離型材Rを用いれば、剥離した離型材によってシリコン結晶の成長が妨げられることがなくなるので、結晶粒子の大きい高品質のシリコン結晶インゴットを製造することができる。
また、本実施形態の離型材Rは、OとSiの原子比[O/Si]が0.2以上となっているので、焼結密度が高く、シリコン融液が浸透しにくい。このため、この離型材Rを用いれば、結晶成長中の高温下においてシリコン融液とるつぼとを確実に遮断し、シリコン結晶インゴットの破損を防ぐことができる。
また、本実施形態の離型材Rは、平均膜厚が0.3mm超1.0mm未満となっているので、シリコン結晶インゴットの下部の角に接触する部分の耐久性が他の部分に劣らず高い。このため、この離型材Rを用いれば、インゴットの下部の破損を防ぐことができる。
また、本実施形態の離型材Rの製造方法では、るつぼに塗布されたスラリーをN2(不活性)雰囲気下で加熱して焼結させるようにしている。このため、離型材R中のCが、離型材R中のOによって酸化され、COガスとして揮発するので、[C/Si](炭素濃度)が低下する。従って、焼結密度が均一で熱応力に対する耐久性の高い離型材Rを形成することができる。
また、本実施形態の離型材Rの製造方法では、スラリーを焼結させてできたSi34膜を酸化させるようにしている。このため、離型材R中の[O/Si](酸素濃度)が高まり、焼結密度が高く、シリコン融液の浸透しにくい離型材Rを形成することができる。
<変形例>
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、N2雰囲気下で焼結を行い、結晶成長をAr雰囲気下で行ったが、酸化処理を除く全工程をAr雰囲気下で行ってもよい。
また、空気雰囲気下で酸化処理を行ったが、O2雰囲気下、或いは、O2と不活性ガスの混合ガス雰囲気下で行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、形成したSi34膜を酸化性雰囲気下で酸化させたが、Si34膜の表面全体にコロイダルシリカ水溶液を塗布し、空気雰囲気下または不活性雰囲気下で加熱することによって酸化させるようにしてもよい。なお、コロイダルシリカの濃度は、25%以下とするのが好ましく、12%以下とすればより好ましい。
また、本実施形態では、スラリーの塗布回数を2〜4回としたが、所定の膜厚を得られるのであれば1回でもよいし、必要に応じて5回以上としてもよい。
また、本実施形態では、るつぼの内側壁面全体にほぼ均一に、すなわち、部位毎に膜厚に差がないように離型材を形成したが、例えば、るつぼの角など、インゴットが割れ易く、最も離型材の耐久性を要する部分のみ、他の部分よりも膜厚が厚くなるようスラリーの塗布・焼結を多く行うようにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (7)

  1. 溶融した原料シリコンを保持するための耐熱性の容器の内側壁面に形成されるシリコン結晶インゴット製造用離型材において、
    主に窒化珪素からなり、
    不純物として炭素が含まれ、
    炭素と珪素の原子比[C/Si]が2.5以下であることを特徴とするシリコン結晶インゴット製造用離型材。
  2. 酸素が含まれ、
    酸素と珪素の原子比[O/Si]が0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材。
  3. 平均膜厚が0.3mm超1.0mm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材。
  4. 有機バインダーを含む水溶液に窒化珪素の粉末を懸濁させたスラリーを、耐熱性の容器の内側壁面に塗布し、
    前記容器に塗布された前記スラリーを不活性雰囲気下で加熱して焼結させることを特徴とするシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法。
  5. 前記スラリーを焼結させてできた窒化珪素膜を酸化させることを特徴とする請求項4に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法。
  6. 前記容器に前記スラリーを塗布して焼結させる工程を2回以上繰り返すことを特徴とする請求項4または5に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法。
  7. 前記スラリーを400度以上1200度以下の温度で加熱して焼結させることを特徴とする請求項4から6の何れか一項に記載のシリコン結晶インゴット製造用離型材の形成方法。
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