JP2013201178A - 射出用シートおよび射出用シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被射出材として高粘度の材料を対象物に向けて射出することができる射出用シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その圧力発生部材42に複数の射出孔46が形成されたノズルシート45を接着剤49を用いて貼着して射出用シートSが製造される。射出用シートSを使用して被射出材たる金属ペースト43を射出すると、圧力発生部材42に含まれている樟脳が加熱されて急激な体積膨張によって圧力波を発生したときに、ノズルシート45と圧力発生部材42との間の隙間に圧力波が逃げることが防がれる。その結果、発生した圧力波は効率良く上方の金属ペースト43に伝達され、射出孔46に装填された金属ペースト43を精度良く対象物に向けて射出することができる。
【選択図】図4
【解決手段】透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その圧力発生部材42に複数の射出孔46が形成されたノズルシート45を接着剤49を用いて貼着して射出用シートSが製造される。射出用シートSを使用して被射出材たる金属ペースト43を射出すると、圧力発生部材42に含まれている樟脳が加熱されて急激な体積膨張によって圧力波を発生したときに、ノズルシート45と圧力発生部材42との間の隙間に圧力波が逃げることが防がれる。その結果、発生した圧力波は効率良く上方の金属ペースト43に伝達され、射出孔46に装填された金属ペースト43を精度良く対象物に向けて射出することができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、被射出材を対象物に向けて射出してパターン形成などを行うのに用いる射出用シートおよびその製造方法に関する。
従来より、半導体ウェハーやフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板等の基板に金属配線(電気配線)を形成する手法としては、基板上にフォトレジスト膜(感光性樹脂膜)を形成してパターン露光および現像処理を行い、その状態で銅などの配線材料となる金属の層を形成するいわゆるフォトリソグラフィ技術が広く使用されてきた(例えば、特許文献1)。
また、近年、金属を含む液滴をインクジェットノズルから吐出して所定の配線パターンを形成するというインクジェット技術を用いた金属配線形成の開発も進められている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、フォトリソグラフィ技術を用いて金属配線を形成する場合には、フォトレジストの塗布、露光、現像、エッチング、金属層の蒸着等、多数の工程を必要とするため、処理に長時間を要することとなる。また、これらの処理はそれぞれ専用の処理ユニットで行われるため、多数の処理ユニットが必要となって配線形成に要するコストが増大することともなっていた。
一方、インクジェット技術を用いて金属配線を形成する場合には、金属を含む液滴が低粘度(通常0.01Pa・s(パスカル秒)以下)であるため、着液後に基板上で濡れ広がりが生じ、微細な配線パターンを形成することは困難であった。この問題を解決するために、基板上の回路パターンに沿って親水化処理(または撥水化処理)を施し、液滴の濡れ広がりを抑制するという手法が考えられるが、かかる処理には長時間を要するために実用化はされていない。
このため、特許文献2には、液滴を着液すべき領域を凸形状の堤防部で囲み、その囲まれた領域にインクジェットノズルから金属を含む液滴を吐出して濡れ広がりを防止する技術が提案されている。しかし、かかる技術を採用したとしても、堤防の形成自体にフォトリソグラフィ技術を用いているために、上記と同様の問題が生じる。
また、インクジェットノズルからは高粘度の液滴を吐出することが出来ないため、特に厚い電気配線を形成する場合には複数回の重ね塗りが必要となり、処理時間がさらに長くなることとなる。
これらの課題を解決するためには、より高粘度の材料(例えば、金属ペースト)を直接吐出することができれば、濡れ広がりを抑制しつつ厚い配線も可能となるのであるが、従来そのような技術は存在していなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被射出材として高粘度の材料を対象物に向けて射出することができる射出用シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被射出材を射出するのに用いる射出用シートの製造方法において、透明基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層する工程と、樹脂のノズルシートに複数の射出孔を形成する工程と、前記ノズルシートを前記圧力発生部材に接着剤を用いて貼着する工程と、前記複数の射出孔に被射出材を装填する工程と、を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る射出用シートの製造方法において、前記接着剤は、シリコーン系接着剤またはポリイミド系接着剤であることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、被射出材を射出するのに用いる射出用シートの製造方法において、透明基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層する工程と、前記圧力発生部材の表面に溶剤を塗布して粘度を増加させる工程と、樹脂のノズルシートに複数の射出孔を形成する工程と、前記ノズルシートを前記圧力発生部材に貼着する工程と、前記複数の射出孔に被射出材を装填する工程と、を備えることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る射出用シートの製造方法において、前記ノズルシートの複数の射出孔は、エキシマレーザを用いた穴加工によって形成されることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る射出用シートの製造方法において、前記ノズルシートの複数の射出孔は、電子ビームを用いた穴加工によって形成されることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る射出用シートの製造方法において、前記ノズルシートの複数の射出孔は、パンチング加工によって形成されることを特徴とする。
また、請求項7の発明は、被射出材を射出するのに用いる射出用シートの製造方法において、透明基材に止め穴加工によって複数の射出孔を形成し、前記複数の射出孔に圧力発生部材および被射出材を装填することを特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る射出用シートの製造方法において、前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする。
また、請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれかの発明に係る射出用シートの製造方法において、前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする。
また、請求項10の発明は、射出用シートであって、請求項1から請求項9のいずれかの発明に係る射出用シートの製造方法によって製造されている。
請求項1および請求項2の発明によれば、複数の射出孔を形成したノズルシートを圧力発生部材に接着剤を用いて貼着するため、圧力発生部材から発生した圧力波がノズルシートと圧力発生部材との間の隙間に逃げることが防止され、被射出材として高粘度の材料を対象物に向けて精度良く射出することができる。
請求項3の発明によれば、圧力発生部材の表面に溶剤を塗布して粘度を増加させ、その圧力発生部材に複数の射出孔を形成したノズルシートを貼着するため、圧力発生部材から発生した圧力波がノズルシートと圧力発生部材との間の隙間に逃げることが防止され、被射出材として高粘度の材料を対象物に向けて精度良く射出することができる。
また、請求項4から請求項6の発明によれば、請求項1から請求項3の発明と同様の効果を得ることができる。
請求項7の発明によれば、透明基材に止め穴加工によって複数の射出孔を形成し、それら複数の射出孔に圧力発生部材および被射出材を装填するため、圧力発生部材から発生した圧力波がノズルシートと圧力発生部材との間の隙間に逃げることが防止され、被射出材として高粘度の材料を対象物に向けて精度良く射出することができる。
また、請求項8および請求項9の発明によれば、請求項1から請求項7の発明と同様の効果を得ることができる。
また、請求項10の発明によれば、請求項1から請求項9のいずれかの発明に係る射出用シートの製造方法によって製造しているため、射出用シートから被射出材として高粘度の材料を対象物に向けて精度良く射出することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明に係る射出用シートSを使用するパターン形成装置1の概略構成について説明する。図1は、パターン形成装置1の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、図1のパターン形成装置1の正面図である。なお、図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
まず、本発明に係る射出用シートSを使用するパターン形成装置1の概略構成について説明する。図1は、パターン形成装置1の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、図1のパターン形成装置1の正面図である。なお、図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
このパターン形成装置1は、高粘度の金属ペーストを基板Wに向けて射出することにより、基板W上に金属配線のパターンを形成する装置である。パターン形成装置1は、基板Wを保持するステージ10と、ステージ10をX方向に沿って移動させるステージ移動機構20と、ステージ10に保持された基板Wに向けて金属ペーストを射出する射出装置5と、を備える。射出装置5は、本発明に係る射出用シートSを支持しつつ搬送する支持搬送機構50と、射出用シートSにレーザー光を照射して金属ペーストを射出するレーザー光照射部60と、を備える。また、パターン形成装置1は、射出装置5を含む上記の各部を制御してパターン形成処理を実行させる制御部3を備える。
ステージ10は、射出装置5の上方に設けられており、その下面に基板Wを保持する。射出装置5は、ステージ10の下面に保持された基板Wに向けて金属ペーストを射出する。ステージ10の下面に基板Wを保持する機構としては、例えば基板Wの端縁部を機械的に保持するクランプ機構または基板Wの裏面を真空吸着する吸着機構(いずれも図示省略)をステージ10に備えるようにすれば良い。
第1実施形態のパターン形成装置1において、パターン形成の対象となる基板Wとしては、半導体ウェハー、液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)を含むフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、樹脂またはセラミックスのプリント基板など、電気配線を形成する対象となる公知の種々の基板を用いることができる。基板Wの形状も特に限定されるものではなく、半導体ウェハーのように円形状であっても良いし、ガラス基板のように矩形状であっても良い。基板Wは、表面を下側に向けてステージ10の下面に保持される。なお、本明細書において、基板Wの表面とはパターン形成が行われる面であり、裏面はその反対側の面である。
ステージ移動機構20は、固定設置された基台21の下側にモータ22、ボールネジ23およびガイドシャフト24を取り付けて構成される。ボールネジ23およびガイドシャフト24はX方向に沿って延設されている。ボールネジ23は、モータ22の回転軸に連結されており、モータ22によって回転される。ステージ10の上側に固定されたスライドブロック12は、ボールネジ23に螺合されるとともに、ガイドシャフト24に摺動自在に嵌合されている。モータ22がボールネジ23を回転させると、それに螺合するスライドブロック12とともにステージ10がガイドシャフト24に案内されてX方向に沿って滑らかに移動する。
射出装置5は、ステージ10の下方に設けられており、上方に向けて金属ペーストを射出する。射出装置5は、支持搬送機構50およびレーザー光照射部60を備えて構成される。支持搬送機構50は、主動ローラ51および従動ローラ52を備える。主動ローラ51および従動ローラ52は、ともに回転軸がY方向に沿うように所定間隔を隔てて互いに平行に設けられている。主動ローラ51および従動ローラ52の周面の最高高さ位置は相等しい。2つのローラのうち少なくとも主動ローラ51には図示を省略する駆動モータが連結されている。その駆動モータによって主動ローラ51はY方向に沿った回転軸を中心に図2の紙面上面から見て時計回りに回転される。一方の従動ローラ52はY方向に沿った回転軸を中心に回転自在とされている。なお、従動ローラ52にも別途駆動モータを設けるようにしても良いし、リンク機構などにより主動ローラ51と連動して従動ローラ52が回転するようにしても良い。
2つのローラ51,52には、本発明に係る射出用シートSが架け渡されている。図3は、第1実施形態の射出用シートSを上面から見た平面図である。また、図4は、図3の射出用シートSのA−A切断面を示す断面図である。第1実施形態の射出用シートSは、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その圧力発生部材42の層の上に複数の射出孔46が穿設されたノズルシート45を接着して構成される。複数の射出孔46のそれぞれには金属ペースト43が装填されている。また、ノズルシート45は接着剤49を用いて圧力発生部材42に貼着される。透明な基材41としては、可撓性を有するとともにレーザー光照射部60から出射されるレーザー光に対して透明な樹脂フィルムが用いられており、例えばポリイミドのフィルムを採用することができる。基材41の厚さは数10μmである。
また、圧力発生部材42には、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる昇華性材料が含まれており、そのような昇華性材料としては例えば樟脳(カンフル:C10H16O)を用いることができる。樟脳は、液体を経ずに固体から気体へと相転移する昇華性を有しており、加熱されると急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。圧力発生部材42には、昇華性材料としての樟脳の他に、グリセリン(C3H5(OH)3)およびカーボンパウダーが含まれている。基材41の表面に形成される圧力発生部材42の層の厚さは特に限定されるものではないが、本実施形態では約10μmとしている。
ノズルシート45は、樹脂フィルム(本実施形態では、基材41と同じくポリイミドのフィルム)を用いて構成されたシート状の部材に複数の射出孔46が穿設されたものである。シート状のポリイミドフィルムに複数の射出孔46が格子状(より厳密には、正方格子状)に穿設されてノズルシート45が構成されている。第1実施形態においては、各射出孔46の形状を孔径50μmの円形とし、隣り合う射出孔46の間隔(配列ピッチ)を100μmとしている。また、ノズルシート45の厚さは数10μmとしている。なお、第1実施形態の射出孔46の形状、大きさおよび配置間隔は一例であって、これらは特に限定されるものではなく、パターン形成に要求されている精度(解像度)に応じて適宜のものとすることができる。複数の射出孔46の穿設間隔を短くして配置密度を高くすると高精度なパターン形成が可能となり、逆に穿設する間隔を大きくして配置密度を低くするとパターン形成の精度も低くならざるを得ない。
このようなノズルシート45が圧力発生部材42の層の上に接着剤49を用いて接着され、そのノズルシート45の複数の射出孔46に金属ペースト43が装填される。金属ペースト43は、主成分としての金属粒子を有機溶剤等によってペースト状とした高粘度材料である。基板Wに形成すべき金属配線の種類に応じて適切な金属粒子を含む金属ペースト43を選択することができる。例えば、基板Wに銅配線を形成する場合であれば銅ペーストを用い、アルミ配線を形成する場合であればアルミペーストを用いることができる。高粘度材料としての金属ペースト43の粘度は、0.1Pa・s(パスカル秒)以上1000Pa・s以下とされる。
射出孔46に装填された金属ペースト43の厚さは約10μm程度であり、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。すなわち、ノズルシート45は圧力発生部材42の層の上に接着されており、射出孔46の下端開口は圧力発生部材42によって閉塞されている。一方、金属ペースト43は射出孔46の下端には装填されておらず、金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成されることとなる。このため、射出用シートSにおいて、金属ペースト43と圧力発生部材42とは非接触である。
図4に示すように、射出用シートSは、可撓性を有するポリイミドのフィルムにて形成された基材41と、同じくポリイミドのフィルムにて形成されたノズルシート45との間に圧力発生部材42を挟み込んで積層されたものであるため、変形自在である。このため、2つのローラ51,52に架け渡された射出用シートSは各ローラの円筒表面に沿って変形する。そして、射出用シートSが架け渡された状態で主動ローラ51が回転すると、両ローラ51,52間の射出用シートSに弱い張力が作用し、射出用シートSがXY平面(水平面)に沿って張られた状態となる。さらに主動ローラ51が回転すると、それとともに射出用シートSも移動および変形し、従動ローラ52も回転する。具体的には、従動ローラ52よりも上流側の射出用シートSは上昇し、主動ローラ51よりも下流側の射出用シートSは下降し、両ローラ51,52間の射出用シートSはX方向に沿って移動する。
両ローラ51,52間で水平面に沿って張られた射出用シートSの直上、すなわちその張られた射出用シートSに対向する位置に基板Wはステージ10によって保持される。そして、両ローラ51,52間で張られた射出用シートSとステージ10に保持された基板Wの表面との間隔が数100μmとなるようにパターン形成装置1は構成されている。
図1,2に戻り、両ローラ51,52間で水平面に沿って張られた射出用シートSの下方には、レーザー光照射部60が設けられる。レーザー光照射部60はレーザー光源61を内蔵している。また、レーザー光照射部60の上面には出射孔62が形設されている。レーザー光源61から出力されたレーザー光は出射孔62から鉛直方向上方に向けて((+Z)方向に向けて)出射される。
また、レーザー光照射部60は、レーザー光走査機構65によってY方向に沿って往復移動される。レーザー光走査機構65は、モータ68、ボールネジ66およびガイドシャフト67を備えている。ボールネジ66およびガイドシャフト67はY方向に沿って延設されている。ボールネジ66は、モータ68の回転軸に連結されており、モータ68によって回転される。レーザー光照射部60は、ボールネジ66に螺合されるとともに、ガイドシャフト67に摺動自在に嵌合されている。このため、モータ68がボールネジ66を回転させると、それに螺合するレーザー光照射部60がガイドシャフト67に案内されてY方向に沿って滑らかに移動する。
レーザー光照射部60は両ローラ51,52間の射出用シートSの下方に設けられており、レーザー光照射部60から上方に向けて出射されたレーザー光は基材41の裏面から射出用シートSに照射される。基材41は透明であるため、照射されたレーザー光は基材41を透過して圧力発生部材42に吸収される。その結果、レーザー光照射部60からのレーザー光照射によって圧力発生部材42が加熱されることとなる。
制御部3は、パターン形成装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。図5は、制御部3の構成を示すブロック図である。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU31、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM32、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM33および制御用プログラムやデータなどを記憶しておく磁気ディスク34をバスライン39に接続して構成されている。
また、バスライン39には、ステージ10に保持された基板WをX方向に沿って移動させるステージ移動機構20、射出用シートSを支持しつつX方向に沿って移動させる支持搬送機構50、レーザー光照射部60をY方向に沿ってスキャンさせるレーザー光走査機構65、および、射出用シートSの圧力発生部材42にレーザー光を照射して加熱するレーザー光照射部60等が電気的に接続されている。制御部3のCPU31は、磁気ディスク34に格納された制御用プログラムを実行することにより、これらの各動作機構を制御して基板W上に所定のパターンの金属配線を形成する。
さらに、バスライン39には、表示部35および入力部36が電気的に接続されている。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部36は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部35に表示された内容を確認しつつ入力部36からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部35と入力部36とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
上記の要部構成以外にもパターン形成装置1は、基板W、射出用シートSおよびレーザー光照射部60のそれぞれの位置を検出するための位置センサを備えている(いずれも図示省略)。位置センサとしては、基板W等の位置を直接検知する光学センサやモータの回転量から検知するエンコーダ等を使用することができる。また、パターン形成装置1は、未処理の射出用シートSを送り出すフィード機構および使用済みの射出用シートSを回収する回収機構を備えている。さらに、パターン形成装置1には、基板Wおよび射出用シートSの周辺雰囲気を調整する機構を備えるようにしても良い。
次に、射出用シートSの製造方法について説明する。図6は、射出用シートSの製造手順を示すフローチャートである。ステップS1では、長尺シート状(帯状)の透明な基材41を用意し、その表面に圧力発生部材42を積層する。第1実施形態では、基材41としてポリイミドのフィルムを用いている。透明なポリイミドのフィルムを長尺シート状に加工してなる基材41の表面の全面に均一な厚さで圧力発生部材42の層を形成する。層として形成される前の圧力発生部材42は、昇華性材料である樟脳およびカーボンパウダーをグリセリンと混合して生成されるスラリー状のものであり、塗布法によって基材41の表面に塗布することが可能である。
このような塗布法としては、公知の種々の手法を用いることが可能であり、例えば第1実施形態ではドクターブレード法によって圧力発生部材42を基材41の表面に塗布している。ドクターブレード法は、圧力発生部材42のスラリーを基材41の表面に供給しつつ、ブレードによってスラリーを平坦に均すことにより、均一な厚さの圧力発生部材42の層を形成する塗布法である。
基材41の表面に圧力発生部材42のスラリーが均一に塗布された後、その乾燥処理を行うことによって、基材41の表面の全面に厚さ約10μmの圧力発生部材42の層が均一な厚さにて形成される。乾燥処理後の圧力発生部材42は固相である。なお、基材41の表面に圧力発生部材42を積層する塗布法としては、基材41の表面に均一な厚さで塗布できるものであれば良く、ドクターブレード法の他に、スリットコート法やバーコート法などを用いるようにしても良い。
また、ステップS2では、ノズルシート45に複数の射出孔46が形成される。第1実施形態では、ノズルシート45としてもポリイミドのフィルムを用いている。そのポリイミドのフィルムに穴加工を施すことによって複数の射出孔46を穿設する。図7は、ノズルシート45の穴加工の一例を示す斜視図である。第1実施形態では図7に示すように、メタルマスク71を用いてエキシマレーザにより穴加工を行っている。
メタルマスク71には、複数の開口72が格子状に穿設されている。このようなメタルマスク71によってノズルシート45をマスキングしつつ、矢印AR7にて示すようにエキシマレーザをメタルマスク71の上方から照射することにより、ノズルシート45のうちの開口72に対応する位置に射出孔46が形成される。従って、メタルマスク71に穿設された複数の開口72と同じ格子状のパターンにてノズルシート45に複数の射出孔46が形成されることとなる。なお、ステップS1の工程とステップS2の工程とは、いずれを先行して行うようにしても良いし、並行して行っても良い。
次に、基材41上に積層された圧力発生部材42の表面に接着剤49を塗布する(ステップS3)。ステップS3にて圧力発生部材42に塗布される接着剤49としては、シリコーン系接着剤またはポリイミド系接着剤を採用することができる。なお、ステップS3の時点では、圧力発生部材42は乾燥されて固相となっているため、接着剤49の塗布に支障は無い。
続いて、接着剤49が塗布された圧力発生部材42に射出孔46が形成されたノズルシート45を圧着する(ステップS4)。図8は、ノズルシート45を圧力発生部材42に貼着する様子を説明する図である。圧力発生部材42の表面には接着剤49が塗布されており、そこに矢印AR8に示すように複数の射出孔46が形成されたノズルシート45が圧着される。これにより、複数の射出孔46を有するノズルシート45が圧力発生部材42に貼着され、ノズルシート45と基材41との間に圧力発生部材42の層が挟み込まれるように積層された射出用シートSが形成される。なお、接着剤49は、貼着されるノズルシート45に設けられた射出孔46に対応する位置以外に塗布するのが望ましい。
そして、ノズルシート45の複数の射出孔46に被射出材としての金属ペースト43が装填される(ステップS5)。金属ペースト43は、金属粒子を含む高粘度材料であり、上記の圧力発生部材42と同様に塗布法によって複数の射出孔46に装填することが可能である。金属ペースト43を射出孔46に装填する塗布法としても、公知の種々の手法を用いることが可能であるが、第1実施形態ではドクターブレード法を用いている。すなわち、金属ペースト43を連続して吐出するノズルがノズルシート45に対して相対移動しつつ、当該ノズルに付設されたブレードがその下端をノズルシート45の上面に接触させながら相対移動することにより、複数の射出孔46に金属ペースト43が押し込まれるとともに、射出孔46以外の領域では金属ペースト43がブレードによって掻き取られる。このようにしてノズルシート45の複数の射出孔46に金属ペースト43が装填される。なお、ノズルシート45の上面の射出孔46以外の領域に金属ペースト43が若干残留していても良い。
以上のようにして、図4に示したような構造の射出用シートSが製造される。ところで、金属ペースト43が射出孔46に装填される際に、射出孔46の下側開口は圧力発生部材42によって閉塞されている。このため、射出孔46の上側開口から高粘度の金属ペースト43が押し込まれると、その射出孔46の内部に残留していた空気がそのまま金属ペースト43と圧力発生部材42との間に閉じこめられることとなる。その結果、金属ペースト43が残留空気によって射出孔46の底まで入り込まなくなり、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される(図4参照)。
次に、射出用シートSを用いて射出装置5が金属ペーストを射出する処理について説明する。上述のようにして製造された射出用シートSが主動ローラ51および従動ローラ52に架け渡される。射出用シートSは、ノズルシート45が両ローラ51,52間で上方を向くようにセットされる。よって、両ローラ51,52間では、複数の射出孔46の形設方向が鉛直方向を向く。
続いて、処理対象となる基板Wがステージ10の下面に保持される。基板Wは、両ローラ51,52間における射出用シートSのノズルシート45に対向する位置に、パターン形成が行われる表面を下側に向けてステージ10に保持される。すなわち、基板Wは射出用シートSの上方にて射出用シートSに対向配置される。
そして、基板Wとレーザー光照射部60との相対位置関係がパターン形成のための初期位置となるように、制御部3の制御によりステージ移動機構20およびレーザー光走査機構65がそれぞれ基板Wおよびレーザー光照射部60を移動させる。具体的には、相対位置関係のX方向の調整はステージ移動機構20が基板Wを移動させることによって行われ、Y方向の調整はレーザー光走査機構65がレーザー光照射部60を移動させることによって行われる。また、射出用シートSについても支持搬送機構50によって初期位置に移動される。なお、両ローラ51,52間の射出用シートSと基板Wの表面との間隔は数100μmとしておく。
基板W、レーザー光照射部60および射出用シートSの初期配設が完了した後、制御部3がレーザー光照射部60によるレーザー光照射の制御を開始する。また、それと同時に、制御部3はレーザー光照射部60の相対移動を開始させる。具体的には制御部3は、基板Wおよび射出用シートSを停止させたまま、レーザー光走査機構65を制御してレーザー光照射部60をY方向に走査させる。
制御部3の記憶部(RAM33または磁気ディスク34)には、基板Wに形成すべき金属配線のパターンのデータが予め格納されている。制御部3は、その格納されたパターンデータに従って、レーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。すなわち、基板W上の所定のX方向位置にてレーザー光照射部60がY方向に沿って走査しているときに、パターン形成すべきY方向位置にレーザー光照射部60が到達した時点で制御部3がレーザー光源61からレーザー光を出射させる。なお、レーザー光源61がオンとされるのは、ノズルシート45の射出孔46の直下にレーザー光照射部60が位置しているときとなるようにパターンデータは作成されている。よって、ノズルシート45の射出孔46が存在しない領域の直下にレーザー光照射部60が到達したときにはレーザー光源61からのレーザー光照射は停止される。
レーザー光照射部60のレーザー光源61から鉛直方向上方に向けて出射されたレーザー光は射出用シートSの裏面側から入射する。射出用シートSの最下層を構成する基材41は透明であるため、レーザー光照射部60から照射されたレーザー光は基材41を透過して圧力発生部材42に到達して吸収される。その結果、レーザー光照射を受けた圧力発生部材42の領域では急激な温度上昇が生じる。すなわち、レーザー光照射部60が基材41の裏面からレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部の直下に位置する圧力発生部材42を加熱するのである。これにより、圧力発生部材42のレーザー光照射領域は短時間のうちに150℃以上にまで加熱される。なお、レーザー光照射領域の大きさは特に限定されるものではないが、例えば射出孔46の孔径と同程度の直径50μm程度の円形とすれば良い。
図9は、圧力発生部材42が加熱されて被射出材たる金属ペースト43が射出される様子を説明する図である。レーザー光照射部60から基材41を透過して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42にレーザー光が照射されると、その圧力発生部材42はレーザー光を吸収して短時間のうちに150℃以上にまで昇温する。特に、圧力発生部材42は黒色のカーボンパウダーを含有しているため、効率良くレーザー光を吸収して昇温する。
圧力発生部材42が昇温すると、圧力発生部材42に含まれている昇華性材料である樟脳が急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。その結果、図9(a)に示すように、レーザー光照射によって加熱された圧力発生部材42の一部では、樟脳の昇華に起因した急激な体積膨張により、圧力波が発生する。そして、その発生した圧力波によってレーザー光照射領域の直上に位置する射出孔46内の空隙47の圧力が急激に上昇し、図9(b)に示すように、当該射出孔46に装填された金属ペースト43が上方に向けて、すなわちノズルシート45に対向配置された基板Wに向けて射出されるのである。
このように、第1実施形態においては、レーザー光照射部60が射出用シートSの基材41の裏面からレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱することにより、その圧力発生部材42に急激な体積膨張による圧力を生じさせている。そして、その圧力によって当該圧力発生部材42の直上に位置する射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43をステージ10に保持された基板Wに向けて射出させている。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。また、樟脳であれば、昇華したときに有害なガスや汚染物質を発生することもない。
上方に向けて射出された金属ペースト43は基板Wの表面に到達し、その位置にて基板Wの表面に付着する。このようにして、金属配線を形成するための金属ペースト43が基板Wに供給される。なお、金属ペースト43は基板Wの下側から付着することとなるが、金属ペースト43が粘度0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料であるため、射出用シートSに再度落下する液ダレのおそれはなく、また基板Wの表面に沿って濡れ広がりが生じることも防止される。
レーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う射出処理はレーザー光照射部60が走査終了位置に到達するまで行われる。そして、レーザー光照射部60が走査終了位置に到達した時点で基板W上の所定のX方向位置における1ライン分の処理が完了となる。1ライン分の処理が完了したら、基板Wおよび射出用シートSをX方向に沿ってステップ送りする。すなわち、制御部3がステージ移動機構20を制御して基板WをX方向に沿って所定距離だけ移動させる。これにより、レーザー光照射部60が基板Wに対してX方向に相対移動することとなり、基板W上の新たなX方向位置におけるレーザー光照射部60の走査が可能となる。また、制御部3が支持搬送機構50を制御して射出用シートSをX方向に沿って所定距離だけ移動させる。これにより、レーザー光照射部60は射出用シートSに対してもX方向に相対移動することとなる。このようにしているのは、射出用シートSをX方向に移動させなければ、既にレーザー光を照射して使用済みとなっている射出用シートSの射出孔46に再度レーザー光を照射する可能性があるためである。
このような基板Wおよび射出用シートSのステップ送りが終了した後、再び制御部3がレーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。以降、パターン形成処理が終了するまで上記と同様の手順が繰り返される。その結果、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿ってレーザー光照射部60から射出用シートSにレーザー光を照射させて圧力発生部材42の一部を加熱することとなり、そのパターンに沿ってノズルシート45から金属ペースト43が上方に射出されて基板Wの表面に付着して金属配線のパターン形成がなされる。
第1実施形態においては、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その圧力発生部材42に複数の射出孔46が形成されたノズルシート45を接着剤49を用いて貼着している。そして、ノズルシート45の複数の射出孔46に被射出材たる金属ペースト43を装填している。これにより、ノズルシート45と圧力発生部材42とが一体化された射出用シートSが製造される。かかる射出用シートSを使用して被射出材たる金属ペースト43を射出すると、圧力発生部材42に含まれている樟脳が加熱されて急激な体積膨張によって圧力波を発生したときに、ノズルシート45と圧力発生部材42の間の隙間に圧力波が逃げることが防がれる。その結果、発生した圧力波は効率良く上方の金属ペースト43に伝達され、射出孔46に装填された高粘度の金属ペースト43を精度良く基板Wに向けて射出することができる。
また、ノズルシート45と圧力発生部材42とが接着剤49によって貼着された一体型の射出用シートSは、使用後に回収されて廃棄される。すなわち、射出用シートSは使い捨てられる。このため、ノズルシートのみを回収して再利用するために必要な洗浄工程が不要となり、洗浄に要する工数およびコストを削減することができる。さらに、ノズルシートの不十分な洗浄に起因した射出安定性の低下も皆無となる。
また、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成されているため、双方は接触していない。このため、射出された金属ペースト43に圧力発生部材42が付着して基板Wの汚染源となることを防止することができる。
また、圧力発生部材42が黒色のカーボンパウダーを含有しているため、レーザー光照射部60から照射されるレーザー光を効率よく吸収して発熱することにより、圧力発生部材42に含まれる昇華性材料である樟脳を効果的に加熱することができる。圧力発生部材42に含まれる昇華性材料である樟脳は光を透過しやすい、言い換えると光を吸収しにくいので、樟脳自体を直接に光で加熱することは難しい。また、圧力発生部材42に含まれるグリセリンも光を透過しやすい、つまりは光を吸収しにくいので、光照射によってグリセリンを加熱することも困難である。そこで、光を吸収しやすい材料、例えばカーボンパウダーなどの黒色の粒子を圧力発生部材42に含ませて、そのような黒色粒子に光を吸収させて発熱させることにより、樟脳を加熱しているのである。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、射出用シートSの製造方法である。第1実施形態では圧力発生部材42の表面に接着剤を塗布していたが、第2実施形態では圧力発生部材42の表面に溶剤を塗布して増粘している。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、射出用シートSの製造方法である。第1実施形態では圧力発生部材42の表面に接着剤を塗布していたが、第2実施形態では圧力発生部材42の表面に溶剤を塗布して増粘している。
図6のステップS1およびステップS2については第1実施形態と同様である。すなわち、透明な基材41の表面に圧力発生部材42のスラリーを塗布し、それを乾燥させて固相の圧力発生部材42の層を形成する。圧力発生部材42は、昇華性材料である樟脳、カーボンパウダーおよびグリセリン等を含む。また、ノズルシート45には、エキシマレーザを用いた穴加工によって複数の射出孔46が穿設される。
次に、第2実施形態においては、基材41上に積層された圧力発生部材42の表面に溶剤が塗布される。溶剤が塗布されることによって乾燥処理後に固相となっていた圧力発生部材42の表面が溶融し、増粘して粘着性が高まる。このような溶剤としては、アセトン、キシレン、トルエンなどを用いることができる。
そして、溶剤の塗布によって粘着性が高まった圧力発生部材42の表面に射出孔46が形成されたノズルシート45を圧着する。これにより、第1実施形態と同様に、複数の射出孔46を有するノズルシート45が圧力発生部材42に貼着される。続いて、図6のステップS5と同様に、ノズルシート45の複数の射出孔46に被射出材としての金属ペースト43が装填される。第2実施形態では、このようにしてノズルシート45と圧力発生部材42とが一体化された射出用シートSが製造される。
第2実施形態の射出用シートSを使用して被射出材たる金属ペースト43を射出しても、圧力発生部材42に含まれている樟脳が加熱されて急激な体積膨張によって圧力波を発生したときに、ノズルシート45と圧力発生部材42の間の隙間に圧力波が逃げることが防がれる。その結果、発生した圧力波は効率良く上方の金属ペースト43に伝達され、射出孔46に装填された高粘度の金属ペースト43を精度良く基板Wに向けて射出することができる。
また、溶剤によって粘着性が高まった圧力発生部材42とノズルシート45とが貼着された一体型の射出用シートSは、使用後に回収されて廃棄される。すなわち、射出用シートSは使い捨てられる。このため、第1実施形態と同様に、ノズルシートのみを回収して再利用するために必要な洗浄工程が不要となり、洗浄に要する工数およびコストを削減することができる。さらに、ノズルシートの不十分な洗浄に起因した射出安定性の低下も皆無となる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは、射出用シートSの構造および製造方法である。図10は、第3実施形態の射出用シートSの構造を示す断面図である。図10において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付している。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは、射出用シートSの構造および製造方法である。図10は、第3実施形態の射出用シートSの構造を示す断面図である。図10において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付している。
第1および第2実施形態では、透明な基材41上に積層された圧力発生部材42の表面に複数の射出孔46が形成されたノズルシート45を貼着していたが、第3実施形態においてはノズルシート145に止め穴加工によって複数の射出孔46を形成し、その射出孔46に圧力発生部材42および金属ペースト43を装填している。
第3実施形態の射出用シートSを製造する際には、まず、ノズルシート145に止め穴加工によって複数の射出孔46を形成する。ノズルシート145の素材としては、透明な樹脂材料、例えば第1実施形態と同様の透明なポリイミドのフィルムを用いることができる。第3実施形態のノズルシート145の厚さは約50μmである。このような厚さ50μmのポリイミドフィルムに止め穴加工を施すことによって複数の射出孔46を形成する。止め穴加工とは、フィルムに孔を貫通させるのではなく、フィルムの厚さを一部を残すように孔を形成する加工である。このような止め穴加工も、第1実施形態と同様にメタルマスクおよびエキシマレーザを用いて行う。具体的には、エキシマレーザのショット数を調整することによって、任意の深さの射出孔46を形成することができる。第3実施形態では、厚さ50μmのノズルシート145に対して射出孔46の深さを30μm〜40μmとしている。すなわち、各射出孔46はノズルシート145を貫通していない。
次に、止め穴加工によって形成された複数の射出孔46に圧力発生部材42が装填される。圧力発生部材42の装填は、第1実施形態と同様の塗布法によって行えば良い。すなわち、昇華性材料である樟脳およびカーボンパウダーをグリセリンと混合して生成されるスラリーをドクターブレード法などの塗布法によって複数の射出孔46に装填する。装填されたスラリーの乾燥処理を行うことによって溶剤成分が揮発して容積が減少し、射出孔46の底部に圧力発生部材42の層が形成される。
その後、第1実施形態と同様にして、ノズルシート145の複数の射出孔46に被射出材としての金属ペースト43が装填される。第3実施形態では、このようにして射出用シートSが製造される。第3実施形態の射出用シートSにおいては、ノズルシート145に形成された止め穴の射出孔46に圧力発生部材42および金属ペースト43を装填しているため、圧力発生部材42から発生した圧力波が逃げる隙間自体がそもそも存在しない。
従って、第3実施形態の射出用シートSを使用して被射出材たる金属ペースト43を射出しても、圧力発生部材42に含まれている樟脳が加熱されて急激な体積膨張によって圧力波を発生したときに、ノズルシート45と圧力発生部材42の間の隙間に圧力波が逃げることが防がれる。その結果、発生した圧力波は効率良く上方の金属ペースト43に伝達され、射出孔46に装填された高粘度の金属ペースト43を精度良く基板Wに向けて射出することができる。
また、止め穴の射出孔46に圧力発生部材42および金属ペースト43を装填した射出用シートSは、使用後に回収されて廃棄される。すなわち、射出用シートSは使い捨てられる。このため、第1実施形態と同様に、ノズルシートを回収して再利用するために必要な洗浄工程が不要となり、洗浄に要する工数およびコストを削減することができる。さらに、ノズルシートの不十分な洗浄に起因した射出安定性の低下も皆無となる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、エキシマレーザを用いた穴加工によってノズルシート45,145に複数の射出孔46を形成するようにしていたが、穴加工はエキシマレーザを用いることに限定されるものではなく、他の手法によっても良い。例えば、電子ビーム(EB)を用いた穴加工によってノズルシート45に複数の射出孔46を形成するようにしても良い。また、金型を用いた打ち抜きにより孔をあけるパンチング加工によってノズルシート45に複数の射出孔46を形成するようにしても良い。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、エキシマレーザを用いた穴加工によってノズルシート45,145に複数の射出孔46を形成するようにしていたが、穴加工はエキシマレーザを用いることに限定されるものではなく、他の手法によっても良い。例えば、電子ビーム(EB)を用いた穴加工によってノズルシート45に複数の射出孔46を形成するようにしても良い。また、金型を用いた打ち抜きにより孔をあけるパンチング加工によってノズルシート45に複数の射出孔46を形成するようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、基材41およびノズルシート45,145の材質をポリイミドのフィルムとしていたが、これに限定されるものではなく、他の透明な樹脂材料であっても良い。特に、使用後の射出用シートSが回収されて廃棄される点を考慮すると、ポリイミドよりも安価なポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのフィルムを基材41およびノズルシート45,145として用いるのが好ましい。
また、第1実施形態では、圧力発生部材42の表面に接着剤49を塗布していたが、複数の射出孔46が穿設されたノズルシート45に接着剤49を塗布するようにしても良い。ノズルシート45に接着剤49を塗布すれば、射出孔46を除く領域のみに接着剤49を容易に塗布することができる。
また、圧力発生部材42の表面にフォトレジスト膜を形成し、複数の射出孔46のパターンを露光して現像処理によって露光部分を除去してレジスト膜に射出孔46を形成するようにしても良い。これは、いわゆるフォトリソグラフィの手法を用いたものであり、複数の射出孔46が形成されたフォトレジスト膜がノズルシート45として機能する。
また、上記各実施形態においては、圧力発生部材42に昇華性材料として樟脳を含ませて圧力発生機能を付与するようにしていたが、他の昇華性材料によって圧力発生部材42に圧力発生機能を付与するようにしても良い。例えば、圧力発生部材42に昇華性材料としてドライアイスを含ませるようにしても良い。他の昇華性材料であっても加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じるため、上記各実施形態と同様の処理を行うことができる。
また、圧力発生部材42は、昇華性材料を含むものに限定されず、加熱により圧力を発生するものであれば良い。例えば、圧力発生部材42に爆薬を含ませて構成するようにしても良い。また、圧力発生部材42としてガス吸蔵材料を用いるようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、レーザー光の吸収効率を高めるために圧力発生部材42にカーボンパウダーを含ませていたが、これに限定されるものではなく、カーボンパウダー以外の黒色の粒子を含ませるようにしても良い。要するに、光を吸収しやすい材料、換言すれば光を反射や透過しにくい材料を圧力発生部材42に含ませるようにすれば良い。なお、昇華性材料自体が光を吸収しやすい材料、例えば黒色の昇華性材料であれば、カーボンパウダーのような黒色粒子を圧力発生部材42に含ませなくても良い。
また、上記各実施形態では、基板WをX方向に移動させるとともに、レーザー光照射部60をY方向に移動させることによって相対移動を行っていたが、これに限定されるものではなく、レーザー光照射部60をステージ10に保持された基板Wに対してX方向およびY方向に相対移動させる種々の構成を採用することができる。例えば、基板Wを移動させることなく定位置に保持し、レーザー光照射部60のみをX方向およびY方向に移動させるようにしても良い。
また、金属ペースト43に代えて被射出材として粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の接着剤(例えば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いるようにしても良い。加熱された圧力発生部材42の体積膨張に起因した圧力によって接着剤を射出し、例えばセンサと半導体素子との接合部のような微小領域に塗布することができる。本発明に係る技術によれば、そのような微小領域に高価な接着剤を必要量だけ塗布することができ、無駄な接着剤の消費を抑制することが可能となる。
また、金属ペースト43に代えて金属粒を射出するようにしても良い。具体的には、上記各実施形態において、金属ペースト43に代えて複数の金属粒を分散させた高粘度材料を射出孔46に装填する。金属粒の材質や粒径は特に限定されるものではなく、金属粉末であっても良い。また、高粘度材料は0.1Pa・s〜1000Pa・sの粘度を有しており、例えば接着剤などを用いることができる。パターン形成処理を行うときには、多数の金属粒を含む高粘度材料が複数の射出孔46に装填された射出用シートSと基板Wとを相対向させて配置する。そして、所定のパターンに沿って圧力発生部材42が加熱されると体積膨張による圧力が生じ、被射出材である金属粒を含む高粘度材料が射出される。射出された高粘度材料は基板Wの表面に付着し、当該表面に金属粒のパターンが形成される。なお、高粘度材料に金属粒を分散させるのに代えて、圧力発生部材42の層の上に直接金属粒を分散させ、それを射出孔46から射出するようにしても良い。
さらに、本発明に係る射出用シートSから金属ペースト43を半導体素子のインナーリードに繋がるようなパターンに射出し、その金属ペースト43によってアウターリードを形成するようにしても良い。すなわち、本発明に係る技術を用いて半導体装置のワイヤーボンディングを行うこともできる。
本発明は、基板上に各種電気配線のパターン形成を行う技術に好適に適用することができ、特に高粘度材料を用いてパターン形成を行うのに適している。また、本発明は、微細領域への接着剤の塗布や半導体装置のワイヤーボンディングにも好適に適用することができる。
1 パターン形成装置
3 制御部
5 射出装置
10 ステージ
20 ステージ移動機構
41 基材
42 圧力発生部材
43 金属ペースト
45,145 ノズルシート
46 射出孔
49 接着剤
50 支持搬送機構
60 レーザー光照射部
65 レーザー光走査機構
S 射出用シート
W 基板
3 制御部
5 射出装置
10 ステージ
20 ステージ移動機構
41 基材
42 圧力発生部材
43 金属ペースト
45,145 ノズルシート
46 射出孔
49 接着剤
50 支持搬送機構
60 レーザー光照射部
65 レーザー光走査機構
S 射出用シート
W 基板
Claims (10)
- 被射出材を射出するのに用いる射出用シートの製造方法であって、
透明基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層する工程と、
樹脂のノズルシートに複数の射出孔を形成する工程と、
前記ノズルシートを前記圧力発生部材に接着剤を用いて貼着する工程と、
前記複数の射出孔に被射出材を装填する工程と、
を備えることを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 請求項1記載の射出用シートの製造方法において、
前記接着剤は、シリコーン系接着剤またはポリイミド系接着剤であることを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 被射出材を射出するのに用いる射出用シートの製造方法であって、
透明基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層する工程と、
前記圧力発生部材の表面に溶剤を塗布して粘度を増加させる工程と、
樹脂のノズルシートに複数の射出孔を形成する工程と、
前記ノズルシートを前記圧力発生部材に貼着する工程と、
前記複数の射出孔に被射出材を装填する工程と、
を備えることを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の射出用シートの製造方法において、
前記ノズルシートの複数の射出孔は、エキシマレーザを用いた穴加工によって形成されることを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の射出用シートの製造方法において、
前記ノズルシートの複数の射出孔は、電子ビームを用いた穴加工によって形成されることを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の射出用シートの製造方法において、
前記ノズルシートの複数の射出孔は、パンチング加工によって形成されることを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 被射出材を射出するのに用いる射出用シートの製造方法であって、
透明基材に止め穴加工によって複数の射出孔を形成し、前記複数の射出孔に圧力発生部材および被射出材を装填することを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 請求項1から請求項7のいずれかに記載の射出用シートの製造方法において、
前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 請求項1から請求項8のいずれかに記載の射出用シートの製造方法において、
前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする射出用シートの製造方法。 - 請求項1から請求項9のいずれかに記載の射出用シートの製造方法によって製造された射出用シート。
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