以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係るパターン形成装置1の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、図1のパターン形成装置1の正面図である。なお、図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
このパターン形成装置1は、高粘度の金属ペーストを基板Wに向けて射出することにより、基板W上に金属配線のパターンを形成する装置である。パターン形成装置1は、基板Wを保持するステージ10と、ステージ10をX方向に沿って移動させるステージ移動機構20と、ステージ10に保持された基板Wに向けて金属ペーストを射出する射出装置5と、を備える。射出装置5は、基材の表面に圧力発生部材および金属ペーストを積層した積層体Sを支持しつつ搬送する支持搬送機構50と、その圧力発生部材にレーザー光を照射して加熱するレーザー光照射部60と、を備える。また、パターン形成装置1は、射出装置5を含む上記の各部を制御してパターン形成処理を実行させる制御部3を備える。
ステージ10は、射出装置5の上方に設けられており、その下面に基板Wを保持する。射出装置5は、ステージ10の下面に保持された基板Wに向けて金属ペーストを射出する。ステージ10の下面に基板Wを保持する機構としては、例えば基板Wの端縁部を機械的に保持するクランプ機構または基板Wの裏面を真空吸着する吸着機構(いずれも図示省略)をステージ10に備えるようにすれば良い。
第1実施形態のパターン形成装置1において、パターン形成の対象となる基板Wとしては、半導体ウェハー、液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)を含むフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、樹脂またはセラミックスのプリント基板など、電気配線を形成する対象となる公知の種々の基板を用いることができる。基板Wの形状も特に限定されるものではなく、半導体ウェハーのように円形状であっても良いし、ガラス基板のように矩形状であっても良い。基板Wは、表面を下側に向けてステージ10の下面に保持される。なお、本明細書において、基板Wの表面とはパターン形成が行われる面であり、裏面はその反対側の面である。
ステージ移動機構20は、固定設置された基台21の下側にモータ22、ボールネジ23およびガイドシャフト24を取り付けて構成される。ボールネジ23およびガイドシャフト24はX方向に沿って延設されている。ボールネジ23は、モータ22の回転軸に連結されており、モータ22によって回転される。ステージ10の上側に固定されたスライドブロック12は、ボールネジ23に螺合されるとともに、ガイドシャフト24に摺動自在に嵌合されている。モータ22がボールネジ23を回転させると、それに螺合するスライドブロック12とともにステージ10がガイドシャフト24に案内されてX方向に沿って滑らかに移動する。
射出装置5は、ステージ10の下方に設けられており、上方に向けて金属ペーストを射出する。射出装置5は、支持搬送機構50およびレーザー光照射部60を備えて構成される。支持搬送機構50は、主動ローラ51および従動ローラ52を備える。主動ローラ51および従動ローラ52は、ともに回転軸がY方向に沿うように所定間隔を隔てて互いに平行に設けられている。主動ローラ51および従動ローラ52の周面の最高高さ位置は相等しい。2つのローラのうち少なくとも主動ローラ51には図示を省略する駆動モータが連結されている。その駆動モータによって主動ローラ51はY方向に沿った回転軸を中心に図2の紙面上面から見て時計回りに回転される。一方の従動ローラ52はY方向に沿った回転軸を中心に回転自在とされている。なお、従動ローラ52にも別途駆動モータを設けるようにしても良いし、リンク機構などにより主動ローラ51と連動して従動ローラ52が回転するようにしても良い。
2つのローラ51,52には、シート状の積層体Sが架け渡されている。図3は、第1実施形態の積層体Sの構造を示す図である。第1実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に加熱により圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その上に被射出材としての金属ペースト43の層を積層して構成される。基材41としては、可撓性を有するとともにレーザー光照射部60から出射されるレーザー光に対して透明な樹脂フィルムが用いられており、例えばポリイミドのフィルムを採用することができる。
また、圧力発生部材42には、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる昇華性材料が含まれており、そのような昇華性材料としては例えば樟脳(カンフル:C10H16O)を用いることができる。樟脳は、液体を経ずに固体から気体へと相転移する昇華性を有しており、加熱されると急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。圧力発生部材42には、昇華性材料としての樟脳の他に、グリセリン(C3H5(OH)3)およびカーボンパウダーが含まれている。基材41の表面に形成される圧力発生部材42の層の厚さは特に限定されるものではないが、本実施形態では約10μmとしている。
金属ペースト43は、主成分としての金属粒子を有機溶剤等によってペースト状とした高粘度材料である。基板Wに形成すべき金属配線の種類に応じて適切な金属粒子を含む金属ペースト43を選択することができる。例えば、基板Wに銅配線を形成する場合であれば銅ペーストを用い、アルミ配線を形成する場合であればアルミペーストを用いることができる。高粘度材料としての金属ペースト43の粘度は、0.1Pa・s(パスカル秒)以上1000Pa・s以下とされる。圧力発生部材42の層の上に積層される金属ペースト43の層の厚さも特に限定されるものではないが、本実施形態では約10μmとしている。
可撓性を有する基材41の表面に圧力発生部材42および金属ペースト43を積層した積層体Sは変形自在である。このため、2つのローラ51,52に架け渡された積層体Sは各ローラの円筒表面に沿って変形する。そして、積層体Sが架け渡された状態で主動ローラ51が回転すると、両ローラ51,52間の積層体Sに弱い張力が作用し、積層体SがXY平面(水平面)に沿って張られた状態となる。さらに主動ローラ51が回転すると、それとともに積層体Sも移動および変形し、従動ローラ52も回転する。具体的には、従動ローラ52よりも上流側の積層体Sは上昇し、主動ローラ51よりも下流側の積層体Sは下降し、両ローラ51,52間の積層体SはX方向に沿って移動する。
両ローラ51,52間で水平面に沿って張られた積層体Sの直上、すなわち基材41の表面側にてその張られた積層体Sに対向する位置に基板Wはステージ10によって保持される。そして、両ローラ51,52間で張られた積層体Sとステージ10に保持された基板Wの表面との間隔が数100μmとなるようにパターン形成装置1は構成されている。
両ローラ51,52間で水平面に沿って張られた積層体Sの下方には、レーザー光照射部60が設けられる。レーザー光照射部60はレーザー光源61を内蔵している。また、レーザー光照射部60の上面には出射孔62が形設されている。レーザー光源61から出力されたレーザー光は出射孔62から鉛直方向上方に向けて((+Z)方向に向けて)出射される。
また、レーザー光照射部60は、レーザー光走査機構65によってY方向に沿って往復移動される。レーザー光走査機構65は、モータ68、ボールネジ66およびガイドシャフト67を備えている。ボールネジ66およびガイドシャフト67はY方向に沿って延設されている。ボールネジ66は、モータ68の回転軸に連結されており、モータ68によって回転される。レーザー光照射部60は、ボールネジ66に螺合されるとともに、ガイドシャフト67に摺動自在に嵌合されている。このため、モータ68がボールネジ66を回転させると、それに螺合するレーザー光照射部60がガイドシャフト67に案内されてY方向に沿って滑らかに移動する。なお、レーザー光走査機構65および支持搬送機構50によってレーザー光照射部60を積層体Sに対して相対移動させる移動手段が構成され、レーザー光走査機構65およびステージ移動機構20によってレーザー光照射部60をステージ10に保持された基板Wに対して相対移動させる移動手段が構成される。
レーザー光照射部60は両ローラ51,52間の積層体Sの下方に設けられており、レーザー光照射部60から上方に向けて出射されたレーザー光は基材41の裏面から積層体Sに照射される。基材41は透明であるため、照射されたレーザー光は基材41を透過して圧力発生部材42に吸収される。その結果、レーザー光照射部60からのレーザー光照射によって圧力発生部材42が加熱されることとなる。
制御部3は、パターン形成装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。図4は、制御部3の構成を示すブロック図である。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU31、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM32、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM33および制御用プログラムやデータなどを記憶しておく磁気ディスク34をバスライン39に接続して構成されている。
また、バスライン39には、ステージ10に保持された基板WをX方向に沿って移動させるステージ移動機構20、積層体Sを支持しつつX方向に沿って移動させる支持搬送機構50、レーザー光照射部60をY方向に沿ってスキャンさせるレーザー光走査機構65、および、積層体Sの圧力発生部材42にレーザー光を照射して加熱するレーザー光照射部60等が電気的に接続されている。制御部3のCPU31は、磁気ディスク34に格納された制御用プログラムを実行することにより、これらの各動作機構を制御して基板W上に所定のパターンの金属配線を形成する。
さらに、バスライン39には、表示部35および入力部36が電気的に接続されている。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部36は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部35に表示された内容を確認しつつ入力部36からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部35と入力部36とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
上記の要部構成以外にもパターン形成装置1は、基板W、積層体Sおよびレーザー光照射部60のそれぞれの位置を検出するための位置センサを備えている(いずれも図示省略)。位置センサとしては、基板W等の位置を直接検知する光学センサやモータの回転量から検知するエンコーダ等を使用することができる。また、パターン形成装置1は、未処理の積層体Sを送り出すフィード機構および使用済みの積層体Sを回収する回収機構を備えている。さらに、パターン形成装置1には、基板Wおよび積層体Sの周辺雰囲気を調整する機構を備えるようにしても良い。
次に、基板Wに金属配線のパターン形成を行う処理手順について説明する。図5は、パターン形成の処理手順を示すフローチャートである。パターン形成装置1での処理に先立って、積層体Sが形成される(ステップS1,S2)。ステップS1では、長尺シート状(帯状)の基材41の表面に圧力発生部材42を積層する。第1実施形態では、基材41としてポリイミドのフィルムを用いている。透明なポリイミドのフィルムを長尺シート状に加工してなる基材41の表面の全面に均一な厚さで圧力発生部材42の層を形成する。層として形成される前の圧力発生部材42は、昇華性材料である樟脳およびカーボンパウダーをグリセリンと混合して生成されるスラリー状ものであり、塗布法によって基材41の表面に塗布することが可能である。
このような塗布法としては、公知の種々の手法を用いることが可能であり、第1実施形態ではドクターブレード法によって圧力発生部材42を基材41の表面に塗布している。ドクターブレード法は、圧力発生部材42のスラリーを基材41の表面に供給しつつ、その表面と正確に所定間隔を隔てて設けられたブレードによってスラリーを平坦に均すことにより、均一な厚さの圧力発生部材42の層を形成する塗布法である。この場合、塗布後に圧力発生部材42の乾燥処理を行うようにしても良い。こうして、基材41の表面の全面には厚さ約10μmの圧力発生部材42の層が均一な厚さにて形成される。なお、基材41の表面に圧力発生部材42を積層する塗布法としては、基材41の表面に均一な厚さで塗布できるものであれば良く、ドクターブレード法の他に、スリットコート法やバーコート法などを用いることできる。
次に、ステップS2に進み、基材41の表面に形成された圧力発生部材42の上に被射出材としての金属ペースト43を積層する。金属ペースト43は、金属粒子を含む高粘度材料であり、上記と同様に塗布法によって圧力発生部材42の上に塗布することが可能である。金属ペースト43の塗布法としても、公知の種々の手法を用いることが可能であるが、第1実施形態ではドクターブレード法によって金属ペースト43を圧力発生部材42の層の上に塗布している。このようにして、基材41の表面の全面には厚さ約10μmの圧力発生部材42の層が形成され、その層の全面にはさらに厚さ約10μmの金属ペースト43の層が均一な厚さにて形成されて積層体Sが作成されることとなる。なお、金属ペースト43を積層する塗布法もドクターブレード法に限定されるものはなく、公知の種々の手法を採用することが可能である。
こうして形成された積層体Sが主動ローラ51および従動ローラ52に架け渡されるとともに、処理対象となる基板Wがステージ10の下面に保持される(ステップS3)。積層体Sは、圧力発生部材42および金属ペースト43が積層された基材41の表面側が両ローラ51,52間で上方を向くようにセットされる。基板Wは、両ローラ51,52間における基材41の表面側にて積層体Sに対向する位置に、パターン形成が行われる表面を下側に向けてステージ10に保持される。すなわち、基板Wは積層体Sの上方にて積層体Sに対向配置される。
続いて、基板Wとレーザー光照射部60との相対位置関係がパターン形成のための初期位置となるように、制御部3の制御によりステージ移動機構20およびレーザー光走査機構65がそれぞれ基板Wおよびレーザー光照射部60を移動させる。具体的には、相対位置関係のX方向の調整はステージ移動機構20が基板Wを移動させることによって行われ、Y方向の調整はレーザー光走査機構65がレーザー光照射部60を移動させることによって行われる。なお、第1実施形態では、基材41の全面に均等に圧力発生部材42および金属ペースト43が積層されているため、処理開始前に積層体Sを移動させる必要はないが、両ローラ51,52間で積層体Sが水平に張られた状態となるように、主動ローラ51が若干回転して積層体Sに弱い張力を作用させておく。また、両ローラ51,52間の積層体Sと基板Wの表面との間隔は数100μmとしておく。
基板Wおよび積層体Sの初期配設が完了した後、制御部3がレーザー光照射部60によるレーザー光照射の制御を開始する(ステップS4)。また、それと同時に、制御部3はレーザー光走査機構65を制御してレーザー光照射部60のY方向の走査を開始する(ステップS5)。レーザー光照射部60がY方向に走査しているときには、基板Wおよび積層体Sは停止している。
制御部3の記憶部(RAM33または磁気ディスク34)には、基板Wに形成すべき金属配線のパターンのデータが予め格納されている。制御部3は、その格納されたパターンデータに従って、レーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。より具体的には、基板W上の所定のX方向位置にてレーザー光照射部60がY方向に沿って走査しているときに、パターン形成すべきY方向位置にレーザー光照射部60が到達した時点で制御部3がレーザー光源61からレーザー光を出射させる。また、パターン形成を行わないY方向位置にレーザー光照射部60が到達したときには制御部3はレーザー光源61からのレーザー光照射を停止させる。制御部3はこのような制御を記憶部に格納したパターンデータに従って行う。
レーザー光照射部60のレーザー光源61から鉛直方向上方に向けて出射されたレーザー光は積層体Sの裏面側から入射する。積層体Sの最下層を構成する基材41は透明であるため、レーザー光照射部60から照射されたレーザー光は基材41を透過して圧力発生部材42に到達して吸収される。その結果、レーザー光照射を受けた圧力発生部材42の領域では急激な温度上昇が生じる。すなわち、レーザー光照射部60が基材41の裏面からレーザー光を照射して圧力発生部材42の一部を加熱するのである。これにより、圧力発生部材42のレーザー光照射領域は短時間のうちに150℃以上にまで加熱される。なお、レーザー光照射領域の大きさは特に限定されるものではないが、例えば直径50μm程度の円形とすることができる。
図6は、圧力発生部材42が加熱されて被射出材たる金属ペースト43が射出される様子を説明する図である。レーザー光照射部60から基材41を透過して圧力発生部材42の一部にレーザー光が照射されると、その一部(レーザー光照射領域)はレーザー光を吸収して短時間のうちに150℃以上にまで昇温する。特に、圧力発生部材42は黒色のカーボンパウダーを含有しているため、効率良くレーザー光を吸収して昇温する。
圧力発生部材42が昇温すると、圧力発生部材42に含まれている昇華性材料である樟脳が急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。その結果、図6(a)に示すように、レーザー光照射によって加熱された圧力発生部材42の一部では、樟脳の昇華に起因した急激な体積膨張により、圧力波が発生する。そして、図6(b)に示すように、発生した圧力波により、その直上の金属ペースト43が上方に向けて、すなわち積層体Sに対向配置された基板Wに向けて射出されるのである。
このように、第1実施形態においては、レーザー光照射部60が積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射して圧力発生部材42の一部を加熱することにより、その圧力発生部材42の一部に急激な体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43をステージ10に保持された基板Wに向けて射出させる。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。また、樟脳であれば、昇華したときに有害なガスや汚染物質を発生することもない。
上方に向けて射出された金属ペースト43は基板Wの表面に到達し、その位置にて基板Wの表面に付着する。このようにして、金属配線を形成するための金属ペースト43が基板Wに供給される。なお、金属ペースト43は基板Wの下側から付着することとなるが、金属ペースト43が粘度が0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料であるため、積層体Sに再度落下する液ダレのおそれはなく、また基板Wの表面に沿って濡れ広がりが生じることも防止される。
レーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う射出処理はレーザー光照射部60が走査終了位置に到達するまで行われる。そして、レーザー光照射部60が走査終了位置に到達した時点で基板W上の所定のX方向位置における1ライン分の処理が完了となるため、ステップS6からステップS7へと進み、パターン形成処理が終了したか否かが判断される。この判断は、制御部3が上述のパターンデータを参照することによって行われる。
そして、パターン形成処理が終了していない場合には、ステップS8およびステップS9の処理が実行される。すなわち、ステップS8では制御部3がステージ移動機構20を制御して基板WをX方向に沿って所定距離だけ移動させる。これにより、レーザー光照射部60が基板Wに対してX方向に相対移動することとなり、基板W上の新たなX方向位置におけるレーザー光照射部60の走査が可能となる。また、ステップS9では制御部3が支持搬送機構50を制御して積層体SをX方向に沿って所定距離だけ移動させる。これにより、レーザー光照射部60は積層体Sに対してもX方向に相対移動することとなる。このようにしているのは、積層体SをX方向に移動させなければ、既にレーザー光を照射して使用済みとなっている積層体Sの箇所に再度レーザー光を照射する可能性があるためである。ステップS8,S9の処理は、順序が逆であっても良いし、同時に実行されても良い。
このような基板Wおよび積層体Sのステップ送りが終了した後、再びステップS5に戻って、制御部3がレーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。そして、上記と同様の手順がステップS7でパターン形成処理が終了したと判断されるまで繰り返される。その結果、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿ってレーザー光照射部60から積層体Sにレーザー光を照射させて圧力発生部材42の一部を加熱することとなり、そのパターンに沿って金属ペースト43が上方に射出されて基板Wの表面に付着する。
図7は、パターン形成処理が終了した時点での積層体Sの平面図である。また、図8は、パターン形成処理が終了した時点での基板Wの平面図である。この例では、「A」というアルファベット文字のパターンに沿ってレーザー光照射部60から積層体Sにレーザー光が照射され、そのパターンに沿って圧力発生部材42が体積膨張したために、「A」のパターンにて金属ペースト43が射出されている。その結果、図8に示すように、基板Wの表面には「A」というアルファベット文字のパターンに沿って金属ペースト43が付着することとなる。そして、パターン形成装置1でのパターン形成処理が終了した後、基板Wの表面にパターンに沿って付着した金属ペースト43を乾燥させることによって金属配線が形成される。
以上のように、第1実施形態においては、まず、透明な基材41の表面に加熱により圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その上に被射出材たる金属ペースト43を積層して積層体Sを形成している。続いて、その積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、レーザー光照射部60からのレーザー光照射をオンオフして圧力発生部材42におけるレーザー光照射位置が所定のパターンを描くように、制御部3がレーザー光走査機構65、ステージ移動機構20およびレーザー光照射部60を制御する。こうして積層体Sの基材41の裏面から所定のパターンに沿ってレーザー光を照射して圧力発生部材42の一部を加熱し、圧力発生部材42のレーザー光照射領域に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
第1実施形態の射出装置5は、昇温すると急激に体積膨張する樟脳を含む圧力発生部材42をレーザー光照射によって加熱し、圧力発生部材42に急激な体積膨張に起因した圧力を生じさせ、その圧力を利用して被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出している。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。
また、パターン形成装置1は、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
特に、第1実施形態のパターン形成装置1は、レーザー光照射部60を基板Wに対して相対移動させつつ、レーザー光照射部60にレーザー光照射をオンオフさせて、基材41の裏面から所定のパターンに沿ってレーザー光を照射して圧力発生部材42の一部を加熱している。そして、圧力発生部材42のレーザー光照射領域に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出しているため、基板W上に所定のパターンに沿って正確に金属ペースト43を付着させることができる。
また、高粘度の金属ペースト43を直接射出して基板Wに供給しているため、パターン形成に要する工程数が少なく、処理時間も短くすることができる。その結果、基板Wに対するパターン形成に要する処理コストの増大を抑制することができる。なお、高価なインクジェットノズルなども不要となり、このことも処理コスト増大の抑制につながる。
また、パターン形成装置1においては、高粘度の金属ペースト43を直接基板Wに供給することができるため、いわゆる濡れ広がりが生じることはない。さらに、基板Wに厚い電気配線を形成する場合であっても、高粘度の金属ペースト43を1回射出するだけで配線形成が可能となり、処理に要する時間を短くすることができる。
また、第1実施形態のパターン形成装置1においては、射出装置5がステージ10に保持された基板Wよりも下方に設けられており、金属ペースト43が上方に向けて射出される。このため、射出時に発生した金属ペースト43のミスト等は下方の積層体Sに落下することとなるため、そのようなミストが基板Wに付着して汚染源となるのを防止することができる。
また、圧力発生部材42が黒色のカーボンパウダーを含有しているため、レーザー光照射部60から照射されるレーザー光を効率よく吸収して発熱することにより、圧力発生部材42に含まれる昇華性材料である樟脳を効果的に加熱することができる。圧力発生部材42に含まれる昇華性材料である樟脳は光を透過しやすい、言い換えると光を吸収しにくいので、樟脳自体を直接に光で加熱することは難しい。また、圧力発生部材42に含まれるグリセリンも光を透過しやすい、つまりは光を吸収しにくいので、光照射によってグリセリンを加熱することも困難である。そこで、光を吸収しやすい材料、例えばカーボンパウダーなどの黒色の粒子を圧力発生部材42に含ませて、そのような黒色粒子に光を吸収させて発熱させることにより、樟脳を加熱しているのである。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は、第2実施形態のパターン形成装置1aの概略構成を示す斜視図である。また、図10は、第2実施形態のパターン形成装置1aの正面図である。図9および図10において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付している。
基板Wを保持するステージ10およびステージ10を移動させるステージ移動機構20については第1実施形態と全く同じである。また、射出装置5のレーザー光照射部60およびレーザー光走査機構65についても第1実施形態と同様である。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは積層体Sを支持して搬送する支持搬送機構150である。第1実施形態の支持搬送機構50は可撓性を有する積層体Sを2つのローラによって搬送するローラ搬送方式を採用していたが、第2実施形態の支持搬送機構150は積層体Sをステージに支持して搬送するステージ搬送方式を採用している。
ステージ移動機構20もステージ搬送方式によるものであり、第2実施形態の支持搬送機構150はステージ移動機構20と類似する構成を備えている。すなわち、支持搬送機構150は、モータ152の回転軸に連結されたボールネジ153にステージ151を螺合させて構成されている。モータ152がボールネジ153を回転させると、それに螺合するステージ151がX方向に沿って移動する。なお、ステージ移動機構20と同様に、ステージ151をX方向に沿って案内するガイドシャフトを設けるようにしても良い。
第1実施形態では2つのローラ51,52に沿って積層体Sが撓む必要があったために基材41として樹脂フィルムを用いていたが、第2実施形態では積層体Sに可撓性は不要であるため、基材41はレーザー光照射部60から出射されるレーザー光に対して透明な素材であれば良く、例えばガラス基板などを使用することができる。透明な基材41の表面の全面に均一な厚さの圧力発生部材42の層を形成し、その層の全面に被射出材としての金属ペースト43を均一な厚さにて積層して積層体Sを形成する点は第1実施形態と同じである。なお、第2実施形態では、回転する基材41に圧力発生部材42のスラリーおよび/または金属ペースト43を供給して均一な厚さの層を形成するスピンコート法を用いて層形成を行うようにしても良い。
支持搬送機構150のステージ151は、環状に構成されており、積層体Sの周縁部を保持することによって基板Wと積層体Sとを対向配置する。ステージ151の環状部分の内側は中空であるため、ステージ151がレーザー光照射の障害となることはない。なお、ステージ151をレーザー光に対して透明な素材(例えば、石英ガラス)にて形成する場合には、板状のステージ151にて積層体Sの全面を載置して保持するようにしても良い。
第2実施形態のパターン形成装置1aの残余の構成は第1実施形態と同じである。また、第2実施形態におけるパターン形成の処理手順も第1実施形態(図5)と同様である。このようにしても、レーザー光照射部60から出射されたレーザー光は透明な基材41を透過して圧力発生部材42に照射され、そのレーザー光が照射された圧力発生部材42の一部が加熱されて急激に体積膨張して圧力を生じる。このため、第1実施形態と同様に、パターン形成装置1aは、射出装置5によって0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1および第2実施形態ではレーザー光照射部60からのレーザー光照射によって圧力発生部材42を加熱していたが、第3実施形態においてはヒータによって圧力発生部材42を加熱するようにしている。
図11は、第3実施形態の積層体Sを下側から見た図である。図12は、図11の積層体SのA−A切断面を示す断面図である。第3実施形態では、射出装置5を構成する複数のヒータ160が積層体Sに付設されている。具体的には、積層体Sの基材41の下面に複数のヒータ160が付設されている。
複数のヒータ160のそれぞれは電力供給を受けて発熱し、基材41を介して当該ヒータ160の直上に位置している圧力発生部材42を加熱する。すなわち、個々のヒータ160は圧力発生部材42の一部を加熱する加熱手段である。複数のヒータ160に対しては、制御部3の制御下にて個別に電力供給がなされる。従って、制御部3は、複数のヒータ160のうちの一部に電力供給がなされるように制御し、その一部のヒータ160によって形成されるパターンに沿って圧力発生部材42を加熱して体積膨張による圧力を発生させることができる。
第3実施形態においては、基材41の表面に加熱により圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その上に被射出材たる金属ペースト43を積層して積層体Sを形成している。第3実施形態の基材41は、透明である必要はないが、ヒータ160の熱を円滑に圧力発生部材42に伝導させるために熱伝導率が高い素材にて形成するのが好ましく、例えばセラミックスや金属を用いて形成しても良い。圧力発生部材42および金属ペースト43については第1実施形態と同様のものを用いることができる。但し、第3実施形態のようにヒータ160で加熱する場合には、圧力発生部材42に光吸収体として機能する黒色のカーボンパウダーを混合する必要はない。
このような積層体Sの下面(基材41の下面)に複数のヒータ160が格子状に付設される。図11および図12では、理解容易のために複数のヒータ160の付設間隔(ピッチ)を相当に大きくしているが、この付設間隔は特に限定されるものではなく、パターン形成に要求されている精度に応じて適宜のものとすることができる。複数のヒータ160の付設間隔を短くして設置密度を高くすると高精度なパターン形成が可能となり、逆に付設間隔を大きくして設置密度を低くするとパターン形成の精度も低くならざるを得ない。もっとも、ヒータ160の設置密度を高くすると、処理に要するコストも増大するため、精度とコストとのバランスを考慮してヒータ160の設置数を決定するのが好ましい。
パターン形成処理を行う際には、複数のヒータ160が付設された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。第3実施形態では、複数のヒータ160が付設された積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿って複数のヒータ160のうちの一部に電力供給がなされるように制御し、そのパターンに沿って圧力発生部材42の一部を急速に加熱して体積膨張させている。その結果、当該パターンに従って圧力発生部材42の一部に体積膨張による圧力が生じ、被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。なお、パターンに対応する複数のヒータ160に同時に電力供給を行うようにしてもよいし、順次に電力供給を行って発熱させるようにしても良い。
このように、第3実施形態においては、加熱手段たる複数のヒータ160と基板Wとを相対移動させる必要はなく、ステージ10が基板Wを定位置に保持していれば足りるため、ステージ移動機構20は必ずしも必要な構成要素ではない。同様に、複数のヒータ160を付設した積層体Sと基板Wとを相対移動させる必要もなく、支持搬送機構50(または支持搬送機構150)も必須の要素ではない。但し、パターン形成処理前に積層体Sと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行うために、ステージ移動機構20および/または支持搬送機構50を設けておく方が好ましい。
第3実施形態においては、複数のヒータ160の一部によって圧力発生部材42の一部が加熱されて急激に体積膨張して圧力が発生し、その圧力によって金属ペースト43を射出している。従って、第1および第2実施形態と同様に、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第3実施形態では積層体Sに付設したヒータによって圧力発生部材42を加熱していたが、第4実施形態においては圧力発生部材42自体に直接通電して加熱するようにしている。
図13は、第4実施形態の積層体Sの構造を模式的に示す図である。第4実施形態では、第3実施形態の複数のヒータ160に代えて、射出装置5を構成する複数の電極260が積層体Sに設けられている。具体的には、図13に示すように、積層体Sの基材41の上面に一対の陽極260aおよび陰極260bからなる電極260を立設している。電極260の高さ(基材41の上面から電極260の上端までの距離)は圧力発生部材42の層の厚さよりも小さくするのが好ましい。また、陽極260aおよび陰極260bはそれぞれ電源261の正極および負極と電気的に接続されている。
圧力発生部材42にはカーボンパウダーが含有されている。このカーボンパウダーは、第1実施形態ではレーザー光の吸収効率を高める光吸収体であったが、第4実施形態では通電によって発熱する添加剤として機能する。カーボンパウダーが含まれていることによって圧力発生部材42は通電によって発熱する抵抗発熱体となる。このため、複数の電極260のそれぞれに電圧を印加すると、当該電極260を構成する陽極260aと陰極260bとの間の圧力発生部材42が通電によって発熱する。すなわち、個々の電極260および電源261は圧力発生部材42の一部を通電加熱する通電加熱手段である。
第3実施形態と同様に、積層体Sには複数の電極260が格子状に設けられている(図11参照)。そして、複数の電極260の設置密度が特に限定されるものでなく、パターン形成に要求されている精度に応じて適宜のものとすることができる点も第3実施形態と同様である。
複数の電極260に対しては、制御部3の制御下にて電源261から個別に電圧が印加される。これを実現する手法としては、複数の電極260のそれぞれと電源261との間に設けられたスイッチ(図示省略)を制御部3によって開閉するようにしても良いし、複数の電極260に個別に設けた電源261自体のオンオフを制御部3が制御するようにしても良い。これにより、制御部3は、複数の電極260のうちの一部に電圧が印加されるように制御し、その一部の電極260によって形成されるパターンに沿って圧力発生部材42を加熱して体積膨張による圧力を発生させることができる。
第4実施形態においては、複数の電極260を取り付けた基材41の表面に加熱により圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その上に被射出材たる金属ペースト43を積層して積層体Sを形成している。圧力発生部材42にはカーボンパウダーが含有されている。第4実施形態の基材41は、透明である必要はないが、短絡防止のために絶縁性を有する素材にて形成する必要があり、例えばセラミックスや樹脂を用いて形成するのが好ましい。金属ペースト43については第1実施形態と同様である。金属ペースト43による短絡を防止するため、電極260と金属ペースト43とが接しない程度の厚さにまで圧力発生部材42を積層することが好ましい。
パターン形成処理を行う際には、複数の電極260が設置された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。第4実施形態では、複数の電極260が設置された積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿って複数の電極260のうちの一部に電圧が印加されるように制御し、そのパターンに沿って圧力発生部材42の一部を通電加熱して体積膨張させている。その結果、当該パターンに従って圧力発生部材42の一部に体積膨張による圧力が生じ、被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。なお、パターンに対応する複数の電極260に同時に電圧を印加するようにしてもよいし、順次に電圧を印加するようにしても良い。
第4実施形態においても、加熱手段たる複数の電極260と基板Wとを相対移動させる必要はなく、ステージ10が基板Wを定位置に保持していれば足りるため、ステージ移動機構20は必ずしも必要な構成要素ではない。同様に、複数の電極260を設置した積層体Sと基板Wとを相対移動させる必要もなく、支持搬送機構50(または支持搬送機構150)も必須の要素ではない。但し、パターン形成処理前に積層体Sと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行うために、ステージ移動機構20および/または支持搬送機構50を設けておく方が好ましい。
第4実施形態においては、複数の電極260の一部によって圧力発生部材42の一部が通電加熱されて急激に体積膨張して圧力が発生し、その圧力によって金属ペースト43を射出している。従って、第1実施形態から第3実施形態と同様に、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1実施形態から第4実施形態ではいずれもパターンに沿って圧力発生部材42の一部を加熱していたが、第5実施形態においては圧力発生部材42を予め所定のパターンに沿って基材41の表面に設置し、その圧力発生部材42の全部を一括して加熱するようにしている。
図14は、第5実施形態のパターン形成装置1bの正面図である。同図において、第1および第2実施形態と同一の要素については同一の符号を付している。基板Wを保持するステージ10およびステージ10を移動させるステージ移動機構20については第1実施形態と全く同じである。第5実施形態では、射出装置5が支持部350およびマイクロ波加熱部360を備えて構成される。
支持部350は、第2実施形態のステージ151と同じく環状に構成されており、積層体Sの周縁部を保持することによって基板Wと積層体Sとを対向配置する。支持部350の環状部分の内側は中空であるため、支持部350がマイクロ波照射の障害となることはない。なお、支持部350をマイクロ波が透過する素材(例えば、セラミックスや樹脂)にて形成するのであれば、板状の支持部350にて積層体Sの全面を載置して保持するようにしても良い。
マイクロ波加熱部360は、支持部350の下方に設けられており、支持部350に保持された積層体Sに所定周波数のマイクロ波を照射する。マイクロ波加熱部360は、積層体Sの裏面全面に同時にマイクロ波を照射する。照射されたマイクロ波は積層体Sの基材41を透過して圧力発生部材42を加熱する。このとき、マイクロ波は積層体Sの全面に同時に照射されるため、第5実施形態では圧力発生部材42の全部が一括して加熱されることとなる。すなわち、マイクロ波加熱部360は、圧力発生部材42の全部を一括して加熱する加熱手段である。
第5実施形態においては、基材41の表面に積層された圧力発生部材42の全部が一括して加熱されるため、予め基材41の表面に圧力発生部材42が所定のパターンに設置される。図15は、第5実施形態の積層体Sの構造を模式的に示す図である。図15(a)は積層体Sの平面図であり、図15(b)は図15(a)の積層体のB−B切断面を示す断面図である。同図に示すように、基材41の表面には所定のパターン(この例では「A」というアルファベット文字のパターン)を描くように圧力発生部材42の層が形成される。このような圧力発生部材42のパターンを形成するためには、例えば基材41に対して相対移動するノズルから圧力発生部材42のスラリーを吐出するノズルディスペンス法やスラリーを載せた版から基材41に転写する印刷法などを用いることができる。
そして、圧力発生部材42のパターンの上に、同じパターンを描くように金属ペースト43の層を形成する。すなわち、圧力発生部材42のパターンの上に金属ペースト43のパターンを重ね合わせるのである。金属ペースト43のパターン形成についても、ノズルディスペンス法や印刷法などを用いればよい。
基板Wへのパターン形成処理を行う際には、圧力発生部材42および金属ペースト43が所定のパターンに形成された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。このとき、基板Wは、基材41の表面側にて積層体Sに対向する位置に保持される。また、第5実施形態では、積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3が所定のタイミングにてマイクロ波加熱部360からマイクロ波を照射させることにより、予め所定のパターンに形成された圧力発生部材42が一括して加熱されて体積膨張する。その結果、当該パターンに従って圧力発生部材42に体積膨張による圧力が生じ、圧力発生部材42の上に形成されていた被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。
第5実施形態においても、加熱手段たるマイクロ波加熱部360と基板Wとを相対移動させる必要はなく、ステージ10が基板Wを定位置に保持していれば足りるため、ステージ移動機構20は必ずしも必要な構成要素ではない。同様に、積層体Sと基板Wとを相対移動させる必要もなく、支持搬送機構50(または支持搬送機構150)も必須の要素ではない。但し、パターン形成処理前に積層体Sと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行うために、ステージ移動機構20および/または支持搬送機構50を設けておく方が好ましい。
第5実施形態においては、基材41の表面に圧力発生部材42を予め所定のパターンに形成し、その上に被射出材たる金属ペースト43を積層して積層体Sを形成している。そして、所定のパターンに形成された圧力発生部材42が一括して加熱されて急激に体積膨張して圧力が発生し、その圧力によって金属ペースト43を射出している。従って、第1実施形態から第4実施形態と同様に、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。また、第5実施形態では、圧力発生部材42が一括して加熱されて所定のパターンに形成された金属ペースト43が同時に射出されるため、極めて短時間に基板W上にパターンを形成することができる。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第1実施形態から第5実施形態では被射出材として高粘度の金属ペースト43を射出していたが、第6実施形態では金属粒を射出している。図16は、第6実施形態の積層体Sの構造を模式的に示す図である。基材41の表面に圧力発生部材42の層が形成されている点は第1実施形態と同様である。
第6実施形態においては、圧力発生部材42の層の上に複数の金属粒144を分散させた高粘度材料143の層が形成されている。金属粒144の材質や粒径は特に限定されるものではなく、金属粉末であっても良い。また、高粘度材料143は0.1Pa・s〜1000Pa・sの粘度を有しており、例えば接着剤などを用いることができる。
積層体Sを除く射出装置5およびパターン形成装置1の構成としては、第1実施形態から第5実施形態のいずれをも採用することが可能である。第6実施形態においてパターン形成処理を行うときには、多数の金属粒144を含む高粘度材料143の層が形成された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。そして、所定のパターンに沿って圧力発生部材42が加熱されると体積膨張による圧力が生じ、被射出材である金属粒144を含む高粘度材料143が射出される。射出された高粘度材料143は基板Wの表面に付着し、当該表面に金属粒144のパターンが形成される。
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態について説明する。第6実施形態では金属粒144を含む高粘度材料143を射出していたが、第7実施形態では金属粒144を直接射出するようにしている。図17は、第7実施形態の積層体Sの構造を模式的に示す図である。基材41の表面に圧力発生部材42の層が形成されている点は第1実施形態と同様である。
第7実施形態においては、圧力発生部材42の層の上に複数の金属粒144を分散させて配置している。第6実施形態と同じく、金属粒144の材質や粒径は特に限定されるものではなく、金属粉末であっても良い。
積層体Sを除く射出装置5およびパターン形成装置1の構成としては、第1実施形態から第5実施形態のいずれをも採用することが可能である。第7実施形態においては、所定のパターンに沿って圧力発生部材42が加熱されると体積膨張による圧力が生じ、その圧力によって被射出材である金属粒144が射出され、金属粒144によるパターンを形成することができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、圧力発生部材42に昇華性材料として樟脳を含ませて圧力発生機能を付与するようにしていたが、他の昇華性材料によって圧力発生部材42に圧力発生機能を付与するようにしても良い。例えば、圧力発生部材42に昇華性材料としてドライアイスを含ませるようにしても良い。他の昇華性材料であっても加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じるため、上記各実施形態と同様の処理を行うことができる。
また、圧力発生部材42は、昇華性材料を含むものに限定されず、加熱により圧力を発生するものであれば良い。例えば、圧力発生部材42を爆薬にて構成するようにしても良い。また、圧力発生部材42としてガス吸蔵材料を用いるようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、レーザー光の吸収効率を高めるために圧力発生部材42にカーボンパウダーを含ませていたが、これに限定されるものではなく、カーボンパウダー以外の黒色の粒子を含ませるようにしても良い。要するに、光を吸収しやすい材料、換言すれば光を反射や透過しにくい材料を圧力発生部材42に含ませるようにすれば良い。なお、昇華性材料自体が光を吸収しやすい材料、例えば黒色の昇華性材料であれば、カーボンパウダーのような黒色粒子を圧力発生部材42に含ませなくても良い。
また、第5実施形態において圧力発生部材42の全部を一括して加熱する加熱手段として、マイクロ波加熱部360に代えて短い発光時間で大きなエネルギーの閃光を照射するフラッシュランプを用いるようにしても良い。
第1および第2実施形態では、基板WをX方向に移動させるとともに、レーザー光照射部60をY方向に移動させることによって相対移動を行っていたが、これに限定されるものではなく、レーザー光照射部60をステージ10に保持された基板Wに対してX方向およびY方向に相対移動させる種々の構成を採用することができる。例えば、基板Wを移動させることなく定位置に保持し、レーザー光照射部60のみをX方向およびY方向に移動させるようにしても良い。
また、レーザー光照射部60をX方向に沿って一列に並ぶ複数本のレーザー光を出射するマルチレーザー光照射部として構成するようにしても良い。このように構成した場合には、レーザー光照射部60をY方向に走査してのパターン形成処理が複数ライン分同時に行われることとなるため、図5のステップS8,S9にて複数ライン分をまとめてステップ送りすることができ、パターン形成に要する処理時間を短縮することができる。
また、第1および第2実施形態では、レーザー光を照射して圧力発生部材42を加熱していたが、レーザー光照射に限定されるものではなく、他の光照射によって圧力発生部材42を加熱するようにしても良い。例えば、光源としてランプを用い、そのランプからの光を集光して圧力発生部材42に照射するようにしても良いし、発光ダイオード(LED)からの光を圧力発生部材42に照射して加熱するようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、射出装置5から上方の基板Wに向けて金属ペースト43を射出するようにしていたが、射出装置5とステージ10との上下関係を反転し、射出装置5から下方の基板Wに向けて金属ペースト43を射出するようにしても良い。
また、第5実施形態では、予め所定のパターンに形成された圧力発生部材42を一括して加熱するようにしていたが、第1および第2実施形態の如くレーザー光照射部60を相対移動させて所定パターンに形成された圧力発生部材42を順次加熱するようにしても良い。
また、第5実施形態では、所定パターンに形成された圧力発生部材42の上に同じパターンの金属ペースト43を重ね合わせるようにしていたが、第1実施形態と同じく圧力発生部材42のパターンが形成された基材41の全面に金属ペースト43を塗布するようにしても良い。このようにしても、所定パターンに形成された圧力発生部材42が一括して加熱されたときに、そのパターンに沿って金属ペースト43が射出されることとなり、基板W上に適切にパターン形成を行うことができる。
また、金属ペースト43に代えて被射出材として粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の接着剤(例えば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いるようにしても良い。加熱された圧力発生部材42の体積膨張に起因した圧力によって接着剤を射出し、例えばセンサと半導体素子との接合部のような微小領域に塗布することができる。本発明に係る技術によれば、そのような微小領域に高価な接着剤を必要量だけ塗布することができ、無駄な接着剤の消費を抑制することが可能となる。
さらに、本発明に係る射出装置5から金属ペースト43を半導体素子のインナーリードに繋がるようなパターンに射出し、その金属ペースト43によってアウターリードを形成するようにしても良い。すなわち、本発明に係る技術を用いて半導体装置のワイヤーボンディングを行うこともできる。