JP2013198430A - 特定波長光照射によるカレイ目魚類の養殖方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】養殖領域内に、ピークトップが635±15nmのシングルピークからなる赤色光、ピークトップが465±15nmのシングルピークからなる青色光、ピークトップが520±15nmのシングルピークからなる緑色光、ピークトップが450±15nmのシングルピークとピークトップが550±20nmのシングルピークとを合成してなる白色光のいずれかを照射することを特徴とする、カレイ目魚類の養殖方法である。特に水温が10℃以下の場合に前記青色光、緑色光または白色光を照射すると、その成長増加率が高く、水温が10℃を超える場合には前記青色光、赤色光、白色光の照射によって成長を促進することができる。
【選択図】なし
Description
なお、特許文献2記載の方法は、白色または黄色水槽で飼育することで無眼側の黒化を防止するものである。商品価値を向上させるには、成長率を確保しつつ無眼側の白色を維持しうるカレイ目魚類の養殖方法が望まれる。
さらに、特許文献4に示すように、カレイ目は水温によって雌雄の割合が変動する可能性がある。雌雄が変化することで、商品価値が低下する場合がある。よって、雌雄を変動させることなく成長率を確保しうるカレイ目魚類の養殖方法が望まれる。
魚類は水温の影響を受けやすく水温が低いと成長が遅延若しくは停止する。例えば、マツカワの成長は、水温が10℃より高い場合には良好であるが、水温が10℃以下では摂餌量が激減し、それに伴い成長が低下する。LED光を照射した際の水温による成長率の変化を評価したところ、緩成長の10℃以下の水温の状況で、前記青色光、緑色光、赤色光は自然光よりも成長を促進し、特に前記青色光、緑色光および白色光は赤色光よりも優れて成長を促進することが判明した。
なお、水温が10℃を超えて12〜15℃の範囲では、前記青色光、緑色光、赤色光の照射が自然光を照射した場合よりも成長を促進させた。水温が10℃を超えるとマツカワは自然光のもとでも成長を停止することなく、経過日ごとに体重を増加させるが、自然光に代えて前記青色光や白色光を照射すると、更に日間成長率を増加させることができる。
このことは、水温に対応してLED光の波長を変えることでより成長率を向上させることができることを意味する。10℃以下の水温の場合に前記青色光、緑色光、白色光を照射することで、特に成長が緩慢な時期に魚体を効率的に成長させ、10℃を超え、特に10℃を超えて15℃以下の範囲で前記青色光、赤色光、白色光を照射することで更に魚体を成長させることができる。なお、水温が15℃を超えるとLED光照射を照射した魚体成長率は自然光を照射した場合と略同等であるから、LED光照射を停止することで電力を節約することができる。
直径1000mm、深さ650mmのプラスチック製円柱状の水槽にLED照射装置を取り付けて養殖装置を構成した。この養殖装置を4基設置し、それぞれに深さ650mmとなるように養殖用水を仕込み、これに平均体重34.0±0.9g、平均体長11.1±0.1cmのマツカワをそれぞれ25個体投入した。養殖期間は、10月12日から翌年1月13日までとした。
3基の養殖装置に、LED照射装置から、ピークトップが464nmの青色単色光、ピークトップが518nmの緑色単色光、ピークトップが635nmの赤色単色光のそれぞれを照射した。LED光の照射は、午前9時から午後5時までの8時間とした。また、残り1基の養殖装置は天面を遮光せず自然光が照射される環境とした。4基の養殖装置には、手撒き給餌により一日一回、午後1時に飽食量の給餌を行い、給餌後30分経過後に残餌を回収した。各LEDの光量子束密度は、光源から15cmのところで7.2〜7.4μmol/m2・sであった。
養殖装置内の水温は、自然環境温度に対応して温度5〜22℃の範囲で変動した。養殖期間内の水温を図1に示す。養殖期間を、養殖開始から1ヶ月ごとにI期、II期、III期に区分すると、各期の平均水温は、17.4℃、13.3℃、8.8℃と季節変動を生じた。図2にマツカワの体重と体長の推移を示す。また、図3に各期の摂餌量を、図4に各期の日間成長率を示す。
図2に示すように、いずれの光を照射した場合でも、魚体の成長は体長変化よりも体重変化に大きく表された。各期の摂餌量および日間成長率を比較すると、図3、図4に示すようにI期では、青、緑、赤色光および自然光との間に摂餌量および日間成長率に差は認められず、II期およびIII期では、青色光の照射が最も摂餌量が多く、これに緑、赤、自然光の順に続いた。LED光は、青、緑、赤色光のいずれであっても、自然光と同等か自然光よりも魚体の日間成長率を促進させた。特に、水温が8.8℃のIII期では、自然光での日間成長率は0.5%であるが、青色光を照射した場合の日間成長率は0.8と自然光照射の1.6倍に増加した。なお、緑色光を照射した場合は、自然光の日間成長率の1.4倍であった。水温が13.3℃、17.4℃のII基やIII期では自然光照射の場合の日間成長率は0.8%であるが、日間成長率の低い低水温期に青、緑色光によって日間成長率を大きく促進させることができた。
実施例1と同様の養殖装置を4基使用し、それぞれに深さ650mmとなるように養殖用水を仕込み、これに平均体長19.7±0.2mm、平均体重173±5.5gのマツカワをそれぞれ15匹投入した。養殖期間は、4月1日から5月12日までとした。
4基の養殖装置に、LED照射装置から、ピークトップが464nmの青色単色光、ピークトップが518nmの緑色単色光、ピークトップが635nmの赤色単色光、ピークトップが447nmと550nmとからなる白色光とをそれぞれ照射した。LED光の照射は、午前9時から午後5時までの8時間とし、手撒き給餌により一日一回、午後1時に飽食量の給餌を行った。各LEDの放射照度は、光源から15cmのところで0.76〜0.80W/m2であった。
養殖装置内の水温は、自然環境温度に対応して温度6〜17℃の範囲で変動した。養殖期間を、4月1日から4月22日までをI期、4月23日から5月12日までをII期に区分すると、各期の平均水温は、9.3±0.4℃、12.1±0.5℃と季節変動を生じた。図5に、水温と各LED光を照射した際のマツカワの摂餌量の推移を示す。
図5に示すように、水温が10℃を越える4月23日前後を境に摂餌行動が変化する傾向が観察された。赤色光は水温が低いI期では摂餌量が少なく、水温が高くなるII期では摂餌量を急激に増加させたが、青、緑、白色光はI期、II期ともに摂餌量を増加させることができた。図6にI期、II期の各照射光での日間成長率を示す。水温が9.3℃のI期では、青、緑、白色光により1.5%の日間成長率を示した。水温が12.1℃のII期では、赤色光は青色光と略同等の日間成長率を示した。白色光も同様であった。
実施例1と同様な養殖装置を4基使用し、それぞれに深さ530mmとなるように養殖用水を仕込み、これに平均体長17cm、平均体重83gのマツカワをそれぞれ10匹投入した。養殖期間は、12月7日から翌年3月16日までの約14週間とした。水温は13.8℃から15.6℃の間で変動した。
LED光に代えて、18ワットの蛍光灯2本にカラーフィルタを透過させて得た青色光、緑色光、赤色光、および白色光を照射し、2週間ごとに体重を測定した。結果を表1に示し、図7にカラーフィルター透過光の波長分布を示す。
表1に示すように、緑色、青色光が体重増加が大きく、白色光がこれに続き、赤色光は白色光よりも低い結果となった。図7に示すように蛍光灯からの白色光には青、緑、赤色波長が含まれるためこれらが総合的に作用し、緑色光、青色光、白色光は赤色光よりも成長を促進したと考えられる。実施例1では、LED光照射では自然光よりも成長が促進された。しかし、自然光と白色蛍光灯の波長成分はまったく異なることが、成長の結果に差異を及ぼしたことが考えられる。なお、参考のため、実施例1で使用したLED光源の波長を図8に示す。
Claims (4)
- 養殖領域内に、ピークトップが635±15nmのシングルピークからなる赤色光、ピークトップが465±15nmのシングルピークからなる青色光、ピークトップが520±15nmのシングルピークからなる緑色光、ピークトップが450±15nmのシングルピークとピークトップが550±20nmのシングルピークとを合成してなる白色光のいずれかを照射することを特徴とする、カレイ目魚類の養殖方法。
- 水温が10℃以下の場合に、前記青色光、緑色光または白色光のいずれかを照射することを特徴とする、請求項1記載のカレイ目魚類の養殖方法。
- 水温が10℃を超えた場合に、前記青色光、赤色光または白色光のいずれかを照射することを特徴とする、請求項1または2記載のカレイ目魚類の養殖方法。
- 上記カレイ目魚類がマツカワ(学名:Verasper moseri)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカレイ目魚類の養殖方法。
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