まず、本発明者達が行った予備的実験について説明する。本発明者達は、成膜温度と膜質との関係を調べた。その結果を図1に示す。膜質の指標として、耐フッ酸性を意味するウェットエッチングレート(Wet Etching Rate:WER)を用いた。使用したフッ酸の濃度は、0.5%であった。3種類のCVD法で成膜した酸化膜および熱酸化膜では、低い温度で成膜した酸化膜の方が、ウェットエッチングレートが大きく、それだけ緻密ではなく膜質の良くない酸化膜であることがわかる。
成膜温度の低温化は必要であるが、低い温度で成膜すると、膜質が劣化してしまうという問題点がある。その対策のひとつとして、プラズマ励起を利用した低温で酸化膜を形成することが考えられるが、膜中にプラズマのダメージが残ることが考えられ、また、チャージアップを起こして、デバイスに影響を及ぼす可能性がある。また、O3酸化という方法も考えられるが、O3は容易にO2に分解してしまうため、操作性・制御性に難点がある。
再び、図1を参照すれば、原子状酸素を用いて形成した酸化膜のウェットエッチングレートは、900℃では熱酸化膜と同等であり、成膜温度を低くしても、殆ど変化しないことがわかる。
図2は複数の低温酸化膜形成技術の酸化力を示したものである。酸化力は、5分間酸化したときに形成される酸化膜の膜厚を用いて測定した。横軸は成膜温度、縦軸が膜厚である。成膜温度が300℃のときは、O2プラズマ>O3>原子状酸素(O)の順に酸化力が強いが、それ以上の温度になると原子状酸素による酸化力が上昇し、400℃を超えると原子状酸素による酸化力がO3による酸化力よりも大きくなり、450℃の成膜温度では原子状酸素による酸化が最も酸化力が強いことがわかる。
原子状酸素は、ある温度以上に加熱された大気圧未満の圧力(減圧)下にある加熱ユニット内を水素含有ガスと酸素含有ガスとが通過するときに発生する。そのようにして発生した原子状酸素を処理室内に導入することで、膜質の優れたシリコン酸化膜を低温で成膜できることが期待できる。
加熱された減圧雰囲気下にある処理室内に酸素ガスと水素ガスとを導入した際に発生する反応種である原子状酸素(O)の発生量と処理室内温度との関係をCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)解析により求めた。図3に、そのCFD解析結果を示す。図3の横軸は、Inlet(ガス供給口)からの距離(ガス滞留時間と同義)を示しており、縦軸は原子状酸素(O)のモル分率を示している。
図3より、処理室内の温度が高い場合は、反応速度が速く、短時間で最大の原子状酸素の発生量が得られている。これに対し、処理室内の温度が下がるに従い、反応速度が遅くなり、処理室入り口(Inlet)付近では原子状酸素の発生量が少なく、ガスの流れ方向下流にかけて反応が進み、原子状酸素の発生量が最大となる時間に遅れが生じている。また、最大で得られる原子状酸素の発生量は、処理室内の温度に依存しており、低温処理では最大で得られる原子状酸素の発生量が相対的に低下する。なお、酸化力は原子状酸素の発生量に依存するため、最大で得られる原子状酸素の発生量が相対的に低下する低温処理においては、シリコン酸化膜の成長速度が相対的に遅くなる。
これらのことから、基板を第1の温度に加熱する第1の加熱源を有する反応室(処理室)の前段に、第2の加熱源を有する反応予備室を設置し、大気圧未満の圧力に設定され、且つ、第2の加熱源により第1の温度よりも高い第2の温度に加熱された反応予備室内に、酸素含有ガスと水素含有ガスとを導入して反応種である原子状酸素を生成することにより、低温処理が必要となる被処理物である基板を収容した反応室へ、高温処理した際に得られる反応種である原子状酸素と同等の濃度の原子状酸素を供給できることが考えられる。また、これにより、処理温度を低温化させても、高温処理した際のシリコン酸化膜と同等の膜質、及びシリコン酸化膜特性が得られ、また、低温処理においても、成膜速度を向上できることも考えられる。
その一例を示す。基板を第1の温度に加熱する第1の加熱源を有する処理室と、処理室の前段に設置され、第2の加熱源を有する反応予備室と、を有する基板処理装置を用いて基板としてのウエハに対して酸化処理を行う場合において、反応予備室内にてO2ガスとH2ガスとを減圧下で予備加熱して反応させて反応種を生成しこの反応種を減圧下の処理室内に供給した場合(以下、予備加熱ありの場合)と、予備加熱することなくO2ガスとH2ガスとを直接減圧下の処理室内に供給した場合(以下、予備加熱なしの場合)の、処理室内における反応種である原子状酸素(O)の発生量をCFD解析により求めた。なお、反応予備室内の温度、圧力は、それぞれ900℃、60Paとし、処理室内の温度、圧力は、それぞれ600℃、60Paとした。図4に、そのCFD解析結果を示す。図4の左側の図は、予備加熱ありの場合の反応予備室内における原子状酸素(O)の発生量を示しており、図4の右側の図は、予備加熱ありの場合と予備加熱なしの場合の処理室内における原子状酸素(O)の発生量を示している。図4の左側の図の横軸は、Inlet(反応予備室内へのガス供給口)からの距離(ガス滞留時間と同義)を示しており、縦軸は原子状酸素(O)のモル分率を示している。また、図4の右側の図の横軸は、Inlet(処理室内へのガス供給口)からの距離(ガス滞留時間と同義)を示しており、縦軸は原子状酸素(O)のモル分率を示している。
図4より、予備加熱ありの場合、予備加熱なしの場合に比べ、処理室内に導入される原子状酸素(O)の絶対量が増加しており、これにより、低温のウエハ処理においても高い酸化力を得ることが可能と考えられる。
本発明者達は、基板を第1の温度に加熱する第1の加熱源を有する処理室と、処理室の前段に設置され、第2の加熱源を有する反応予備室と、を有する基板処理装置を用いて、反応予備室内にてO2ガスとH2ガスとを減圧下で予備加熱して反応させて反応種を生成しこの反応種を減圧下の処理室内に供給した場合に、反応種である原子状酸素(O)が処理室内に供給されない場合があることを見出し、その原因を究明した。その結果、反応予備室内の圧力や処理室内の圧力を所定の範囲内にすると共に、反応予備室内に、O2ガスとH2ガスだけでなく不活性ガスも供給して、O2ガスとH2ガスとを不活性ガスで希釈した状態で反応させて上記反応種を生成させることが好ましいことを見出した。本発明は、本発明者達が見出した上記知見に基づくものである。
本発明者達は、化学反応解析ソフトウェアを用いて、反応予備室内の反応のシミュレーションを行った。
反応予備室を、図5に示す形状および大きさ、すなわち、直径8.4cm、長さ15.8cmの円柱状の形状に規定した。円柱の側面を水平に配置し、円柱の上面および底面の一方からO2ガス、H2ガス、N2ガス(不活性ガス)を供給し、円柱の上面および底面の他方から生成された反応種および未反応のO2ガスおよびH2ガス、ならびにN2ガスを排出する構成とした。O2ガスの供給流量を0.5slm、H2ガスの供給流量を0.5slm、反応予備室内の温度を900℃、反応予備室内の圧力を5〜8Torrという条件に設定したときのシミュレーション結果を図6に示す。横軸は反応予備室のInletからの距離(ガス滞留時間と同義)を示しており、縦軸は発生する原子状酸素(O)のモル分率を示している。図6より、O2ガスとH2ガスとの反応による原子状酸素の発生量はガスの合流直後でピークを迎え、その後減衰し、反応予備室のOutletでは原子状酸素の量が激減することがわかる。また、圧力が高いほど原子状酸素が減少しやすく、圧力が低いほど原子状酸素の減少度合いが小さいことがわかる。本発明者達は、圧力が低いというのは、O2ガスとH2ガスとが衝突して反応する確率が小さいことであると考えて、反応予備室内に、O2ガスとH2ガスだけでなく不活性ガスをも供給して、O2ガスとH2ガスとを不活性ガスで希釈した状態で、つまり、O2ガスとH2ガスの分圧を低くした状態で、反応させることにより、原子状酸素の減少度合いを小さくできると考えた。
図7に、図5と同様な反応モデルにて、不活性ガスを添加した場合のシミュレーション結果を示す。実線は、O2ガスを0.5slm、H2ガスを0.5slm供給し、不活性ガスであるN2ガスを供給しない場合を示し、破線は、O2ガスを0.5slm、H2ガスを0.5slm供給し、不活性ガスであるN2ガスを1.0slm供給した場合のシミュレーション結果を示している。O2ガスを0.5slm、H2ガスを0.5slm供給し、N2ガスを供給しない場合に比べて、O2ガスを0.5slm、H2ガスを0.5slm供給し、さらにN2ガスを1.0slm供給した場合の方がOutletに向かって原子状酸素の減少度合いが小さいことがわかる。このように、反応予備室内に、O2ガスとH2ガスだけでなく不活性ガスをも供給して、O2ガスとH2ガスとを不活性ガスで希釈した状態で反応させることにより、原子状酸素の減少度合いを小さくできることがわかる。
次に説明する本発明の好ましい実施の形態では、上記に鑑みて、反応予備室内に不活性ガスをも供給できるようにして、反応予備室内に酸素含有ガスと水素含有ガスだけでなく、不活性ガスをも供給した状態で、反応予備室内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて生成させた原子状酸素(O)等を含む反応種を生成している。
次に、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図9は、本発明の好ましい一実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、図9(a)は処理炉部分を縦断面図で示す図であり、図9(b)は処理炉部分を図9(a)のA−A’線断面図で示す図である。
図9に示されているように、処理炉202は第1の加熱源(第1の加熱手段)としての第1のヒータ207を有する。第1のヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。第1のヒータ207は、抵抗加熱型のヒータ( 抵抗加熱による熱源)であり、後述する処理室201内のウエハ200を第1の温度に加熱するように構成されている。
第1のヒータ207の内側には、第1のヒータ207と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ203が配設されている。プロセスチューブ203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成されており、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ203の筒中空部には処理室(反応室)201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。プロセスチューブ203により反応容器(処理容器)が形成される。
プロセスチューブ203内には、第1ガス導入部としての第1ノズル233aが、プロセスチューブ203下部の側壁を貫通するように設けられている。第1ノズル233aは、処理室201を構成しているプロセスチューブ203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル233aの側面にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248aが設けられている。このガス供給孔248aは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。第1ノズル233aには反応ガス供給管232fが接続されている。
また、プロセスチューブ203の天井部すなわち天井壁には、第2ガス導入部としての第2ノズル233bが設けられている。第2ノズル233bには反応ガス供給管232eが接続されている。第2ノズル233bはプロセスチューブ203の外壁の下部より頂部に沿って設けられており、頂部において処理室201内と連通している。第2ノズル233bの先端部(下流端部)にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248bが設けられている。ガス供給孔248bは、処理室201内のウエハ200の積載方向下方に向かって開口している。
反応ガス供給管232e,232fには、開閉弁であるバルブ243e,243fがそれぞれ設けられている。反応ガス供給管232e,232fは、その上流側において反応ガス供給管232に接続されている。すなわち、反応ガス供給管232は、その下流側で反応ガス供給管232e,232fに分岐するように構成されている。反応ガス供給管232の上流側には、後述する反応予備室301を構成する反応予備容器300が接続されている。なお、反応ガス供給管232の反応予備室301近傍には、その内部の圧力、すなわち反応予備室301の2次側(下流側)の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245cが設けられている。主に、反応ガス供給管232,232e,232f、バルブ243e,243fにより反応ガス供給系が構成される。また、反応ガス供給管232,232e,232f、およびノズル233a,233bにより、反応予備室301と処理室201とを接続し、両室を連通させる接続部としての配管部330(連通部)が構成され、この配管部330により、反応予備室301内から処理室201内へガスを流す流路が形成される。
反応予備容器300には、さらに第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232bが接続されており、この第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232bより反応予備室301内に、異なる2種類のガスを供給可能なように構成されている。
第1ガス供給管232aには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給管232cが接続されている。この第1不活性ガス供給管232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。第1ガス供給管232aの先端部(下流端部)には、反応予備室301が接続されている。なお、第1ガス供給管232aの第1不活性ガス供給管232cとの接続部よりも下流側の反応予備室301近傍には、その内部の圧力、すなわち反応予備室301の1次側(上流側)の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245aが設けられている。主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243aにより第1ガス供給系が構成され、主に、第1不活性ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243cにより、第1不活性ガス供給系が構成される。
第2ガス供給管232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給管232dが接続されている。この第2不活性ガス供給管232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。第2ガス供給管232bの先端部(下流端部)には、反応予備室301が接続されている。なお、第2ガス供給管232bの第2不活性ガス供給管232dとの接続部よりも下流側の反応予備室301近傍には、その内部の圧力、すなわち反応予備室301の1次側(上流側)の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245bが設けられている。主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243bにより、第2ガス供給系が構成され、主に、第2不活性ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243dにより、第2不活性ガス供給系が構成される。
第1ガス供給管232aからは、酸化性ガス、すなわち、酸素含有ガスとして、例えば酸素(O2)ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243aを介して反応予備室301内に供給される。すなわち、第1ガス供給系は酸化性ガス供給系(酸素含有ガス供給系)として構成される。このとき同時に、第1不活性ガス供給管232cから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243cを介して第1ガス供給管232a内に供給される。
第2ガス供給管232bからは、還元性ガス、すなわち、水素含有ガスとして、例えば水素(H2)ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243bを介して反応予備室301内に供給される。すなわち、第2ガス供給系は還元性ガス供給系(水素含有ガス供給系)として構成される。このとき同時に、第2不活性ガス供給管232dから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243dを介して第2ガス供給管232b内に供給される。
反応予備容器300は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成されており、円筒形状に形成されている。反応予備容器300の筒中空部には反応予備室301が形成されており、反応予備室301は、その内部で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させるように構成されている。反応予備容器300には、複数ここでは2つのインレットと1つのアウトレットが設けられている。反応予備容器300の各インレットには、上述の第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232bがそれぞれ接続されており、反応予備室301内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給することが可能なように構成されている。反応予備容器300のアウトレットには、上述の反応ガス供給管232が接続されており、反応予備室301内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて生成させた原子状酸素(O)等の酸素を含む反応種を反応ガス供給管232内へ供給することが可能なように構成されている。反応予備容器300の周囲には、第2の加熱源(第2の加熱手段)としての第2のヒータ302が、反応予備容器300の円筒側面を覆うように設けられている。第2のヒータ302は円筒形状であり、同じく円筒形状である反応予備容器300と同心円状に設けられている。第2のヒータ302は、反応予備室301内を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱するよう構成されている。なお、第2のヒータ302は、第1のヒータ207とは独立して制御可能に構成されている。また、第2のヒータ302および反応予備容器300の周囲には、断熱部材303が設けられている。
なお、上述のように、第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232b、反応ガス供給管232の反応予備室301近傍には、圧力センサ245a,245b,245cがそれぞれ設けられている。上述のように、圧力センサ245a,245bは、反応予備室301の1次側(上流側)の圧力、すなわち反応予備室301のインレット側の圧力を検出するように構成されており、圧力センサ245cは、反応予備室301の2次側(下流側)の圧力、すなわち反応予備室301のアウトレット側の圧力を検出するように構成されている。
なお、ウエハ200に対する処理中は、圧力センサ245a,245b,245cにより、反応予備室301の1次側の圧力と、反応予備室301の2次側の圧力がモニターされ、反応予備室301内の圧力が大気圧未満の所定の圧力に維持されているかどうかが監視される。このとき、圧力センサ245cにより、反応ガス供給管232内の圧力や、バルブ243e,243fが開いているときの反応予備室301と処理室201との間の配管部330内の圧力も大気圧未満の所定の圧力に維持されているかどうか監視される。
なお、反応予備室301内の圧力が大気圧未満の所定の圧力に維持されているかどうかを監視するには、反応予備室301の少なくとも2次側の圧力をモニターすればよく、1次側の圧力のモニタリングは必ずしも行わなくてよい。この場合、反応予備室301の1次側の圧力センサ245a,245bを省略してもよい。ただし、反応予備室301の1次側の圧力と2次側の圧力との両方の圧力をモニターする方が、より確実に反応予備室301内の圧力が大気圧未満の所定の圧力に維持されているかどうかを監視でき、より適正な量の反応種を生成することが可能となり、また、安全性をより高めることが可能となる。
プロセスチューブ203の下部には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。プロセスチューブ203と排気管231との接続部に排気口が形成される。排気管231には、圧力検出器としての圧力センサ245及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ242は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することにより処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することにより、処理室201内の圧力調整を行うことができるように構成されているバルブである。これらの構成により、真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ242の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気することが可能となっている。また、反応予備室301内および配管部330内も、処理室201および排気管231を介して真空ポンプ246により真空排気されるので、圧力センサ245cにより検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ242の弁の開度を調節することにより、反応予備室301内および配管部330内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気することが可能となっている。主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ242により排気系が構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
なお、ウエハ200に対する処理中は、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ242の弁の開度が調節され、処理室201内の圧力が大気圧未満の所定の圧力となるように調整(制御)される。このとき、圧力センサ245a,245b,245cにより、反応予備室301の1次側の圧力と2次側の圧力がモニターされ、圧力センサ245cにより配管部330内の圧力がモニターされ、反応予備室301内の圧力や配管部330内の圧力が大気圧未満の所定の圧力となるように調整(制御)される。
ここで、反応予備室301内の圧力が大気圧未満の所定の圧力、すなわち、3999Pa以下、好ましくは2666Pa以下の圧力に維持されている場合、所定の温度、例えば450℃以上の温度下では、O2ガスとH2ガスとが反応し、原子状酸素(O)等の反応種を生成することが可能となる。特に、反応予備室301内の圧力が1333Pa以下の圧力に維持されている場合、所定の温度、例えば450℃以上の温度下では、O2ガスとH2ガスとが適正に反応し、H2Oを生成することなく、適正な量の原子状酸素(O)等のH2O非含有の反応種を生成することが可能となる。なお、原子状酸素(O)等の反応種の生成効率は、同じ温度下では、反応予備室301内の圧力を1333Pa以下とした場合が最も高く、反応予備室301内の圧力を2666Pa以下とした場合が次に高く、反応予備室301内の圧力を3999Pa以下とした場合がその次に高い。なお、反応予備室301内の圧力が大気圧未満であれば、生成効率は低いが、原子状酸素(O)等の反応種を生成することはできる。すなわち、反応予備室301内の圧力は、大気圧未満、好ましくは、3999Pa以下、より好ましくは2666Pa以下、さらに好ましくは1333Pa以下とするのがよい。更に、3999Pa以下では、例えば450℃以上の熱が加わった場合でも、O2ガスとH2ガスとの反応確率が比較的低く、連鎖反応に至るに必要な反応熱による熱量供給がなされず、また、局所的な体積膨張に伴う圧力変動が吸収されることから、O2ガスとH2ガスの混合気体の爆発範囲から外すことが可能となる。
逆に、反応予備室301内の圧力が3999Paを超えると、例えば450℃以上の熱が加わった場合に、O2ガスとH2ガスとの反応が進み過ぎ、H2Oが比較的多く生成されてしまい、原子状酸素(O)等の反応種の生成量が減少し、この反応種を反応の主体とする処理を適正に行うことができなくなる。更に、この温度および圧力下では、H2/O2比によっては、爆発の危険が生じてしまう。
そこで、本実施形態では、反応予備室301内の圧力が大気圧未満の所定の圧力、すなわち、3999Pa(30Torr)以下の圧力に維持されている場合は、反応予備室301内へのH2ガスの供給を可能とし、反応予備室301内の圧力が3999Pa以下の圧力に維持されていない場合、すなわち3999Paを超過した場合は、反応予備室301内へのH2ガスの供給を不可能としている。
例えば、反応予備室301内の圧力が3999Paを超過した場合において、バルブ243bが閉状態の場合は、これを開状態とできないようにし、反応予備室301内へのH2ガスの供給を行えないようにする。このときバルブ243aが閉状態の場合、これを開状態とできないようにし、反応予備室301内へのO2ガスの供給を行えないようにしてもよい。また、反応予備室301内の圧力が3999Paを超過した場合において、バルブ243bが既に開状態の場合は、これを閉状態とし、反応予備室301内へのH2ガスの供給を停止させることで、ウエハ200に対する処理を停止させる。このときバルブ243aが既に開状態の場合は、これを閉状態とし、反応予備室301内へのO2ガスの供給を停止させるようにしてもよい。ただしこの場合、H2/O2比によっては爆発範囲に入ることも考えられるので、O2ガスの供給停止をH2ガスの供給停止よりも遅らせる等して、O2ガスの供給停止のタイミングを適正に調整することが好ましい。
一方、反応予備室301内の圧力が3999Pa以下の圧力に維持されている場合は、バルブ243bを開状態とすることができる状態に保ち、反応予備室301内へのH2ガスの供給を可能な状態に維持する。バルブ243aについても同様、開状態とすることができる状態に保ち、反応予備室301内へのO2ガスの供給を可能な状態に維持する。
このように、本実施形態では、ウエハ200に対する処理中は、圧力センサ245a,245b,245cを用いて、反応予備室301内の圧力をモニターすることで、反応予備室301内の圧力が大気圧未満の所定の圧力である場合にのみ反応予備室301内へのH2ガスの供給を可能にするといった具合に、圧力センサ245a,245b,245cをインターロックのトリガーとして使用している。なお、このインターロック制御は後述するコントローラ280により行う。
なお、ウエハ200に対する処理中、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ242をフィードバック制御する際、圧力センサ245a,245b,245cにより検出された圧力情報を考慮するようにしてもよい。すなわち、ウエハ200に対する処理中、圧力センサ245,245a,245b,245cにより検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ242をフィードバック制御して、処理室201内の圧力が大気圧未満の所定の圧力となるように、また、反応予備室301内の圧力や配管部330内の圧力が大気圧未満の所定の圧力となるように制御するようにしてもよい。主に、圧力センサ245,245a,245b,245c、APCバルブ242により、圧力制御部(圧力調整部)が構成される。
プロセスチューブ203の下方には、プロセスチューブ203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、プロセスチューブ203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、プロセスチューブ203の下端と当接するシール部材としてOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述する基板保持具としてのボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に対して搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
基板保持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料により構成されており、複数枚のウエハ200を水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、第1のヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるように構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
プロセスチューブ203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づき第1のヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、第1ノズル233aと同様に、プロセスチューブ203の内壁に沿って設けられている。また、反応予備室301内にも、温度検出器としての温度センサ263aが設置されており、温度センサ263aにより検出された温度情報に基づき第2のヒータ302への通電具合を調整することで、反応予備室301内の温度が所望の温度となるように構成されている。
なお、ウエハ200に対する処理中は、温度センサ263により検出された温度情報に基づき第1のヒータ207への通電具合が調整され、処理室201内および処理室201内のウエハ200が第1の温度となるように制御され、また、温度センサ263aにより検出された温度情報に基づき第2のヒータ302への通電具合が調整され、反応予備室301内が第1の温度よりも高い第2の温度となるように制御される。
図19に示されているように、制御部(制御手段)であるコントローラ280は、CPU(Central Processing Unit)280a、RAM(Random Access Memory)280b、記憶装置280c、I/Oポート280dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM280b、記憶装置280c、I/Oポート280dは、内部バス280eを介して、CPU280aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ280には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置281が接続されている。
記憶装置280cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置280c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、上述の一連のウエハ処理における各手順(各ステップ)をコントローラ280に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM280bは、CPU280aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
I/Oポート280dは、上述のマスフローコントローラ241a,241b,241c,241d、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f、圧力センサ245,245a,245b,245c、APCバルブ242、第1のヒータ207、第2のヒータ302、温度センサ263,263a、真空ポンプ246、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
CPU280aは、記憶装置280cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置281からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置280cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU280aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、マスフローコントローラ241a,241b,241c,241dによるガス流量調整、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243fの開閉動作、圧力センサ245,245a,245b,245cによる圧力モニタリング、APCバルブ242の開閉動作及びAPCバルブ242による圧力センサ245に基づく圧力調整、圧力センサ245a,245b,245cに基づくインターロック動作、温度センサ263に基づく第1のヒータ207の温度調整、温度センサ263aに基づく第2のヒータ302の温度調整、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
なお、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置283(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)を用意し、係る外部記憶装置283を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ280を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置283を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置283を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置280cや外部記憶装置283は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置280c単体のみを含む場合、外部記憶装置283単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
また、本発明は、例えば、既存の基板処理装置(システム)のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更することも可能である。
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200に対して酸化処理等の処理を施す方法の一例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図9に示されているように、複数枚のウエハ200を保持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してプロセスチューブ203の下端をシールした状態となる。
続いて、処理室201内が大気圧未満の所望の圧力となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245により測定され、この測定された圧力情報に基づいてAPCバルブ242がフィードバック制御される(圧力調整)。このとき、反応ガス供給管232e,232fのバルブ243e,243fは開いた状態で、反応予備室301と、その下流側の配管部330(反応ガス供給管232,232e,232f内およびノズル233a,233b内)とを、処理室201を経由して、真空ポンプ246によって真空排気し、反応予備室301と配管部330とを大気圧未満の所定の圧力以下の圧力になるようにする。
このとき、圧力センサ245a,245b,245cにより、反応予備室301の1次側の圧力と2次側の圧力がモニターされ、反応予備室301内の圧力や配管部330内の圧力が大気圧未満の所定の圧力に維持されているかどうかが監視される(圧力モニタリング)。ここで、反応予備室301内の圧力が大気圧未満の所定の圧力、すなわち、例えば、3999Pa(30Torr)以下の圧力に維持されている場合は、反応予備室301内へのH2ガスの供給を可能とし、反応予備室301内の圧力が3999Pa以下の圧力に維持されていない場合、すなわち、例えば、3999Paを超えている場合は、反応予備室301内へのH2ガスの供給を不可能とするようインターロック制御が行われる。なお、反応予備室301内へのO2ガスの供給についても同様にインターロック制御が行われるようにしてもよい。この圧力調整や圧力モニタリングは、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
また、処理室201内および処理室201内のウエハ200が第1の温度となるように第1のヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように温度センサ263が検出した温度情報に基づき第1のヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、このとき、反応予備室301内が第1の温度よりも高い第2の温度となるように第2のヒータ302によって加熱される。この際、反応予備室301内が所望の温度となるように温度センサ263aが検出した温度情報に基づき第2のヒータ302への通電具合がフィードバック制御される。なお、第1のヒータ207による処理室201内およびウエハ200の加熱や第2のヒータ302による反応予備室301内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
続いて、回転機構267によりボート217が回転されることでウエハ200が回転される。なお、ボート217の回転によるウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
次に、以下の手順により、処理室201内に反応種(原子状酸素)を供給してウエハ200に対して酸化処理を施す。
(1)第1ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、第2ガス供給管232bのバルブ243bを閉じ、第1不活性ガス供給管232cのバルブ243cを閉じ、第2不活性ガス供給管232dのバルブ243dを閉じ、反応ガス供給管232e,232fのバルブ243e,243fを開き、APCバルブ242を開いた状態で、処理室201内を排気管231を介して真空ポンプ246により真空引きすると共に、反応予備室301内および配管部330内を処理室201および排気管231を介して真空ポンプ246により真空引きする。真空引きによって、好ましくは、例えば、10Torr(1333Pa)以下の、例えば、1Pa程度の圧力にする。真空引きする時間は、好ましくは、例えば、30秒〜1分とする。
(2)第1ガス供給管232aのバルブ243aを開き、第1ガス供給管232aにO2ガスを流す。O2ガスは第1ガス供給管232aから流れ、マスフローコントローラ241aにより流量調整されて、マスフローコントローラ241aの下流側の第1ガス供給管232a内に供給される。また、第1不活性ガス供給管232cのバルブ243cを開き、第1不活性ガス供給管232cから不活性ガスとしてN2ガスを供給する。N2ガスはマスフローコントローラ241cにより流量調整されて、マスフローコントローラ241cの下流側の第1ガス供給管232a内に供給される。そして、O2ガスとN2ガスが混合され、O2ガスとN2ガスの混合ガスが、第1ガス供給管232aから、第2の温度に加熱された減圧状態の反応予備室301内に供給される。
このとき同時に、第2ガス供給管232bのバルブ243bを開き、第2ガス供給管232bにH2ガスを流す。H2ガスは第2ガス供給管232bから流れ、マスフローコントローラ241bにより流量調整されマスフローコントローラ241bの下流側の第2ガス供給管232b内に供給される。また、第2不活性ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第2不活性ガス供給管232dから不活性ガスとしてN2ガスを供給する。N2ガスはマスフローコントローラ241dにより流量調整されて、マスフローコントローラ241dの下流側の第2ガス供給管232b内に供給される。そして、H2ガスとN2ガスが混合され、H2ガスとN2ガスの混合ガスが、第2ガス供給管232bから、第2の温度に加熱された減圧状態の反応予備室301内に供給される。
O2ガスとN2ガスの混合ガスとH2ガスとN2ガスの混合ガスは、第2の温度に加熱された減圧状態の反応予備室301内で混合され(O2ガス+H2ガス+N2ガス供給)、その結果、反応予備室301内で反応種(原子状酸素)が発生する。反応ガス供給管232e,232fのバルブ243e,243fは開いた状態であり、反応予備室301内で発生する反応種(原子状酸素)を反応ガス供給管232,232e,232f内およびノズル233a,233bを介して処理室201内に供給して、処理室201内のウエハ200に対して酸化処理等の処理を行う。このとき、処理室201内の圧力は、APCバルブ242の開度により調整する。なお、不活性ガスとして、N2ガスを使用したが、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
(3)第1ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、第2ガス供給管232bのバルブ243bを閉じて、O2ガスの供給とH2ガスの供給を停止する。
(4)第1不活性ガス供給管232cのバルブ243cは開いたままとし、第2不活性ガス供給管232dのバルブ243dは開いたままとし、不活性ガスとしてのN2ガスで反応予備室301、配管部330および処理室201をパージする。パージする時間は、好ましくは、例えば、30秒〜1分とする。
(5)以下、(1)〜(4)の工程を1サイクルとして、このサイクルを1回以上、必要回数(n回)行う。
なお、工程(4)のN2ガスによるパージは省略してもよく、その場合は、(1)〜(3)の工程を1サイクルとして、このサイクルを必要回数(n回)行うことになる。また、このサイクルを1回行うケースが(2)の工程を連続的に行うケースに相当し、本実施の形態は、このように、(2)の工程を連続的に行うことでウエハ200に対して酸化処理等の処理を行うケースをも含む。
これにより、反応種(原子状酸素)を発生する反応予備室301内の圧力および反応種(原子状酸素)を供給する配管部330内の圧力を所定の圧力以下の圧力に保持することができ、また、反応予備室301内での原子状酸素の減少度合いを小さくできて、十分な量の反応種(原子状酸素)を成膜に寄与させることができるようになる。なお、工程(2)の時間×サイクル数(n回)と、所望の膜厚を成膜する時間とはほぼ等しいことがわかっており、所望の膜厚の酸化膜を得るためのサイクル数の算出が可能である。サイクル数を制御することで形成される酸化膜の膜厚を制御できる。
なお、工程(3)で、圧力センサ245cの圧力モニター値が、大気圧未満の所定の圧力を超える前に、第1ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、第2ガス供給管232bのバルブ243bを閉じてO2ガスの供給とH2ガスの供給を停止する、その大気圧未満の所定の圧力は、好ましくは3999Pa(30Torr)、より好ましくは2666Pa(20Torr)、さらに好ましくは、1333Pa(10Torr)である。そのために、特に工程(2)では、反応予備室301内の圧力が、大気圧未満、例えば1〜3999Pa、好ましくは1〜2666Pa、より好ましくは1〜1333Paの範囲内の圧力になる時間をある程度維持するように、APCバルブ242の開度、O2ガスの流量やH2ガスの流量やN2ガスの流量等を調整する。また、反応予備室301と処理室201との間の配管部330内の圧力も、大気圧未満、例えば1〜3999Pa、好ましくは1〜2666Pa、より好ましくは1〜 1333Paの範囲内の圧力になる時間をある程度維持するように、APCバルブ242の開度、O2ガスの流量やH2ガスの流量やN2ガスの流量等を制御する。このとき、マスフローコントローラ241aで制御するO2ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccm(0.1〜10slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241bで制御するH2ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccm(0.1〜10slm)の範囲内の流量とする。なお、このとき、H2ガス濃度(H2/(O2+H2))は、例えば0.05〜0.5(5〜50%)の範囲内の濃度とするのが好ましい。すなわち、O2ガス比率がH2ガス比率以上となるような条件、好ましくは、O2ガス比率がH2ガス比率よりも大きくなるような条件、すなわち酸素リッチな条件とするのがよい。また、マスフローコントローラ241c、241dで制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ、例えば100〜10000sccm(0.1〜10slm)の範囲内の流量とする。第2のヒータ302の温度は、反応予備室301内の温度が、第2の温度、例えば400〜1200℃、好ましくは、450〜1100℃ 、より好ましくは600〜1000℃の範囲内の温度となるように設定する。
上述の条件にてO2ガス、H2ガス及びN2ガスを反応予備室301内に供給することで、O2ガス及びH2ガスは加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化されてN2ガスにより希釈された状態で反応し、それにより、原子状酸素(O)等の酸素を含む反応種(酸化種)が生成される(反応種生成)。そして、反応予備室301内で生成されたこの反応種は、未反応のO2ガスやH2ガス、N2ガス等と一緒に反応ガス供給管232,232e,232f、ノズル233b,233aを介して、処理室201内におけるウエハ配列領域の一端側(上端側)、および、ウエハ配列領域に対応するウエハ配列領域側方における領域の複数箇所から供給される。処理室201内に供給された反応種や未反応のO2ガスやH2ガス、N2ガス等は、処理室201内を流下してウエハ配列領域の他端側(下端側)に設けられた排気口を介して排気管231から排気される(反応種供給)。
このとき、APCバルブ242を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば1〜1333Paの範囲内の圧力に維持する。第1のヒータ207の温度は、処理室201内およびウエハ200の温度が、第1の温度、例えば室温〜900℃、好ましくは、200〜600℃の範囲内の温度となるように設定する。なお、第1の温度は第2の温度よりも低い温度とする。
このような条件下の処理室201内に、反応予備室301内で生成された原子状酸素(O)等の反応種や未反応のO2ガスやH2ガス、N2ガスを供給することで、主にこの反応種の作用により、ウエハ200に対して酸化処理が行われ、ウエハ200の表面に酸化膜としてのシリコン酸化膜(SiO2膜)が形成される。なお、処理室201内に供給された未反応のO2ガスやH2ガスの少なくとも一部は、加熱された減圧雰囲気下の処理室201内において熱的に活性化されて反応し、処理室201内においても同様に原子状酸素(O)等の反応種が生成される。そして、処理室201内において生成されたこの反応種もウエハ200に対する酸化処理に寄与することとなる。
酸素含有ガス、すなわち酸化性ガスとしては、酸素(O2)ガスの他、オゾン(O3)ガスや一酸化窒素(NO)ガスや亜酸化窒素(N2O)ガス等を用いてもよい。水素含有ガス、すなわち還元性ガスとしては、水素(H2)ガスの他、重水素(D2)ガスやアンモニア(NH3)ガスやメタン(CH4)ガス等を用いてもよい。すなわち、酸素含有ガスとしては、O2ガス、O3ガス、NOガスおよびN2Oガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができ、水素含有ガスとしては、H2ガス、D2ガス、NH3ガスおよびメタンCH4ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
所定膜厚のシリコン酸化膜が成膜されると、バルブ243a、243bを閉じ、反応予備室301内へのO2ガス、H2ガスの供給を停止して、処理室201内への反応種の供給を停止する。バルブ243c、243dは開いたままで、第1不活性ガス供給管232c、第2不活性ガス供給管232dのそれぞれから不活性ガスとしてのN2ガスを、反応予備室301を介して処理室201内へ供給し排気管231から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、反応予備室301内や処理室201内が不活性ガスでパージされ、反応予備室301内や処理室201内に残留するガスが除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、プロセスチューブ203の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態でプロセスチューブ203の下端からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。このようにして、ウエハ200に対して酸化処理を施す一連の処理が終了する。
本実施形態によれば、反応予備室301内の温度(第2の温度)を処理室201内のウエハ200の温度(第1の温度)よりも高い温度としたので、O2ガスとH2ガスとを反応させて得られる原子状酸素等の反応種の発生量を、比較的低温である第1の温度に設定されたウエハ200を収容した処理室201内に、直接O2ガスとH2ガスとを供給する場合に得られる反応種の発生量よりも、多くすることができる。また、それにより、反応種のウエハ200への供給量を、第1の温度に設定されたウエハ200を収容した処理室
201内に、直接O2ガスとH2ガスとを供給する場合における反応種のウエハ200への供給量よりも、多くすることができる。すなわち、ウエハ200の温度を比較的低温である第1の温度に維持した状態で、同温度に維持したウエハ200を収容した処理室201内に直接O2ガスとH2ガスとを供給する場合よりも、処理室201内における反応種の濃度を高めることができ、多量の反応種をウエハ200に与えることが可能となる。
また、本実施形態によれば、反応予備室301内の温度(第2の温度)を処理室201内のウエハ200の温度(第1の温度)よりも高い温度としたので、O2ガスとH2ガスとを反応させて得られる原子状酸素等の反応種の発生量を、比較的高温である第2の温度に設定されたウエハ200を収容した処理室201内に、直接O2ガスとH2ガスとを供給する場合に得られる反応種の発生量と同等とすることができる。また、それにより、反応種のウエハ200への供給量を、第2の温度に設定されたウエハ200を収容した処理室201内に、直接O2ガスとH2ガスとを供給する場合における反応種のウエハ200への供給量と同等とすることができる。すなわち、ウエハ200の温度を比較的低温である第1の温度に維持した状態で、比較的高温である第2の温度に維持したウエハ200を収容した処理室201内に直接O2ガスとH2ガスとを供給する場合と同等の量の反応種をウエハ200に与えることが可能となる。
このように、本実施形態によれば、ウエハ200に対して低温処理する場合に、ウエハ温度を各種プロセスにおける制約温度以下の低温に保った状態で、ウエハ200に対して高温処理する場合に得られる反応種と同等の濃度の反応種を、ウエハ200に対して供給することが可能となる。これにより、低温処理において、高温処理と同様に膜質を改善することが可能となり、また、高温処理と同様に成膜速度を向上させることも可能となる。
また、本実施形態では、反応予備室301内に、O2ガスとH2ガスだけでなく不活性ガスとしてのN2ガスをも供給して、O2ガスとH2ガスとをN2ガスで希釈した状態で反応させることにより、O2ガスとH2ガスの分圧を低くした状態で両ガスを反応させることができ、反応予備室301内での原子状酸素の減少度合いを小さくできる。その結果、十分な量の原子状酸素(O)等の反応種を処理室201内に供給することが可能となる。
また、本実施形態では、少なくとも圧力センサ245cにより、好ましくは、圧力センサ245a,245b,245cにより、反応予備室301の圧力を監視すると共に、圧力センサ245cにより、バルブ243e,243fが開いているときの反応予備室301と処理室201との間の配管部330内の圧力を監視しながら、ウエハ200に対する処理中は、処理室201内の圧力だけでなく、反応予備室301内の圧力や反応予備室301と処理室201との間の配管部330内の圧力も大気圧未満の圧力に維持している。これにより反応予備室301内で適正な量の原子状酸素(O)等の反応種を生成でき、また、反応予備室301内で生成された原子状酸素(O)等の反応種の失活を抑制しつつ処理室201内に導入することが可能となる。
なお、この反応種の持つエネルギーは、酸化処理の対象であるウエハ200(単結晶シリコン)やポリシリコン膜やシリコン窒化膜等のシリコン含有物質中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−Cの結合エネルギーよりも高いため、この反応種のエネルギーを酸化処理対象であるシリコン含有物質に与えることで、シリコン含有物質中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合は切り離される。Siとの結合を切り離されたN、H、Cl、Cは膜中から除去され、N2、H2、Cl2、HCl、CO2等として排出される。また、N、H、Cl、Cとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、反応種に含まれるOと結びつきSi−O結合が形成される。このようにしてシリコン含有物質は酸化されシリコン酸化膜が形成される。すなわち、本実施形態の酸化処理によれば、膜中窒素、水素、塩素、炭素濃度の極めて低い良質なシリコン酸化膜が得られることとなる。
(各種絶縁膜の改質を目的としたアニール処理への適用)
上述の実施形態では、ウエハに対して酸化処理を行う例について説明したが、本発明は、ウエハ上に形成された各種絶縁膜の膜質の改質を目的としたアニール処理を行う場合にも適用することができる。なお、この改質処理により、各種絶縁膜の膜中不純物を除去することが可能となり、膜中不純物濃度を大幅に低減することが可能となる。なお、各種絶縁膜に対する改質処理は、主に、加熱された減圧雰囲気下の反応予備室内でのO2ガスとH2ガスとの反応により得られる原子状酸素(O)等の反応種の作用により行われる。
例えば、本発明は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法により、ウエハ上に形成されたシリコン酸化膜(SiO2膜)に対してアニール処理を行うことで、シリコン酸化膜を改質する場合にも適用することができる。この改質処理により、シリコン酸化膜の膜中不純物を除去することができ、膜中不純物濃度を大幅に低減することが可能となる。この場合も、ウエハ温度を各種プロセスにおける制約温度以下の低温に保った状態で、高温処理する場合に得られる反応種と同等の濃度の反応種を、シリコン酸化膜に対して供給することが可能となる。これにより、低温処理において、高温処理と同様にシリコン酸化膜の膜質を改善することが可能となる。
また例えば、本発明は、CVD法やMOCVD法やALD法により、ウエハ上に形成された高誘電率絶縁膜(High−k膜)に対してアニール処理を行うことで、高誘電率絶縁膜を改質する場合にも適用することができる。この改質処理により、高誘電率絶縁膜の膜中不純物を除去することができ、膜中不純物濃度を大幅に低減することが可能となる。この場合も、ウエハ温度を各種プロセスにおける制約温度以下の低温に保った状態で、高温処理する場合に得られる反応種と同等の濃度の反応種を、高誘電率絶縁膜に対して供給することが可能となる。これにより、低温処理において、高温処理と同様に高誘電率絶縁膜の膜質を改善することが可能となる。なお、高誘電率絶縁膜としては、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の金属元素を含む金属酸化膜が挙げられる。具体的には例えば、ジルコニウム酸化膜(ZrO2膜)、ハフニウム酸化膜(HfO2膜)、チタン酸化膜(TiO2膜)、アルミニウム酸化膜(Al2O3膜)等のメタル酸化物が例示される。
このように、本発明は、シリコン(Si)等の半導体元素を含む半導体酸化膜だけでなく、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の金属元素を含む金属酸化膜等の各種絶縁膜の改質を目的としたアニール処理を行う場合にも適用することができる。
各種絶縁膜に対するアニール処理における処理条件としては、反応予備室内温度:400〜1200℃、好ましくは、450〜1100℃、より好ましくは、600〜1000℃、反応予備室内圧力:1〜3999Pa、好ましくは1〜2666Pa、より好ましくは1〜1333Pa、O2ガス供給流量:100〜10000sccm(0.1〜10slm)、H2ガス供給流量:100〜10000sccm(0.1〜10slm)、N2ガス供給流量:100〜10000sccm(0.1〜10slm)、H2ガス濃度(H2/(O2+H2)):0.05〜0.5(5〜50%)、ウエハ温度:室温〜900℃、好ましくは、200〜600℃、処理室内圧力:1〜1333Paが例示される。
なお、各種絶縁膜に対するアニール処理においては、上述のように、主に、反応予備室内にて生成された原子状酸素(O)等の反応種の作用により各種絶縁膜の改質処理が行われる。そして、この改質処理により、各種絶縁膜の膜中不純物が除去される。この改質処理によれば、通常の改質処理として行われるO2アニールやN2アニールに比べ、低温で、大幅な膜中不純物除去効果が得られる。また、ウエハ温度を各種プロセスにおける制約温度以下の低温に保った状態で、高温処理する場合に得られる反応種と同等の濃度の反応種を、各種絶縁膜に対して供給することが可能となり、これにより、低温処理において、高温処理と同様に各種絶縁膜の膜質を改善することが可能となる。
なお、この反応種の持つエネルギーは、各種絶縁膜の膜中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−Cの結合エネルギーや、M−N、M−Cl、M−H、M−Cの結合エネルギーよりも高いため、この反応種のエネルギーをアニール処理対象の各種絶縁膜に与えることで、各種絶縁膜中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合やM−N、M−Cl、M−H、M−C結合は切り離される。なお、Mは金属元素を表している。SiやMとの結合を切り離されたN、H、Cl、Cは膜中から除去され、N2、H2、Cl2、HCl、CO2等として排出される。また、N、H、Cl、Cとの結合が切られることで余ったSiやMの結合手は、反応種に含まれるOと結びつきSi−O結合やM−O結合が形成される。また、このとき、各種絶縁膜は緻密化されることとなる。このようにして各種絶縁膜の改質処理が行われる。すなわち、このアニール処理によれば、膜中窒素、水素、塩素、炭素濃度の極めて低い良質な絶縁膜が得られることとなる。
なお、アニール処理による各種絶縁膜の不純物除去効果に注目すると、シリコン酸化膜の改質に本発明を適用した場合、膜中不純物の中でも特にH濃度およびCl濃度を低減することができるのに対し、金属酸化膜の改質に本発明を適用した場合は、膜中不純物の中でも特にH濃度、Cl濃度、C濃度およびN濃度を低減することができることを確認した。
(第1変形例)
また、上述の実施形態では、反応予備室容器300にO2ガスを供給する第1ガス供給管232aと、H2ガスを供給する第2ガス供給管232bとを、それぞれ接続して、反応予備室301内にO2ガスとH2ガスとを別々に供給する例について説明した。しかしながら、本発明は、図10に示すように、O2ガスを供給する第1ガス供給管232aと、H2ガスを供給する第2ガス供給管232bとを合流させ、この合流配管を反応予備室容器300に接続して、O2ガスとH2ガスとを事前に合流配管内で混合させてから、この混合ガスを反応予備室301内に供給するようにしてもよい(第1変形例)。この第1変形例の場合、反応予備容器300には、1つのインレットと1つのアウトレットが設けられることとなる。反応予備容器300のインレットには上述の合流配管が接続され、反応予備室301内にO2ガスとH2ガスとの混合ガスを供給することが可能なように構成されることとなる。第1変形例の場合、反応予備室容器300のインレットを1つ設ければよく(インレットの数を減らすことができ)、反応予備容器300の構成を簡素化することができる。また、反応予備室301の1次側(上流側)の圧力を検出する圧力センサを1つ設ければよく(圧力センサの数を減らすことができ)、圧力制御を簡素化することも可能となる。この第1変形例においても上述の実施形態と同様な作用効果が得られる。なお、図10において、図9で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
(第2変形例)
また、上述の実施形態や第1変形例では、反応予備室301内で生成された反応種を、第1ノズル233aおよび第2ノズル233bの両方を介して、処理室201内に供給する例について説明した。しかしながら、本発明は、反応予備室301内で生成された反応種を、第1ノズル233aおよび第2ノズル233bのうち少なくとも何れか一方を介して、処理室201内に供給するようにしてもよい。例えは、反応予備室301内で生成された反応種を、第1ノズル233aのみを介して処理室201内に供給する場合、反応ガス供給管232eのバルブ243eを閉じ、反応ガス供給管232fのバルブ243fを開くようにする。この場合、図11に示すように、第2ノズル233b、反応ガス供給管232eおよびバルブ243eを省略してもよい(第2変形例)。第2変形例の場合、ガス導入部の構成を簡素化することができる。なお、第2変形例は第1変形例をさらに変形させたものである。この第2変形例においても上述の実施形態および第1変形例と同様な作用効果が得られる。なお、図11において、図9、10で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
(第3変形例)
また、上述の第2変形例では、反応予備室301内で生成された反応種を、第1ノズル233aのみを介して処理室201内に供給する例について説明したが、反応予備室301内で生成された反応種を、第2ノズル233bのみを介して処理室201内に供給するようにしてもよい。この場合、上述の実施形態において、反応ガス供給管232fのバルブ243fを閉じ、反応ガス供給管232eのバルブ243eを開くようにする。この場合、図12に示すように、第1ノズル233a、反応ガス供給管232fおよびバルブ243fを省略してもよい(第3変形例)。第3変形例の場合も、ガス導入部の構成を簡素化することができる。なお、第3変形例は第1変形例をさらに変形させたものである。この第3変形例においても上述の実施形態および第1変形例と同様な作用効果が得られる。なお、図12において、図9、10で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
(第4変形例)
また、上述の実施形態や第1変形例では、反応予備室301内で生成された反応種を、処理室201内におけるウエハ配列領域の一端側(上端側)、すなわち、処理室201の上部(天井部)から供給する際、反応種を、第2ノズル233bのガス供給孔248bを介して処理室201内に供給する例について説明した。しかしながら、本発明は、図13に示すように、処理室201の上部(天井部)から供給する反応種を、ガス供給孔248bおよびシャワー板248cを介して処理室201内に供給するようにしてもよい(第4変形例)。第4変形例のシャワー板248cには複数の通気孔が設けられており、反応種やO2ガスやH2ガスを均一に分散させてから処理室201内に供給することが可能なように構成されている。第4変形例の場合、反応種やO2ガスやH2ガスをより均一に処理室201内に供給することが可能となる。なお、第4形例は第1変形例をさらに変形させたものである。この第4変形例においても上述の実施形態および第1変形例と同様な作用効果が得られる。なお、図13において、図9、10で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
(第5変形例)
また、上述の実施形態や第1変形例では、反応予備室301内で生成された反応種を、処理室201内におけるウエハ配列領域に対応するウエハ配列領域側方における領域から供給する際、反応種を第1ノズル233aのガス供給孔248aを介して処理室201内に供給する例について説明した。しかしながら、本発明は、図14に示すように、ウエハ配列領域側方における領域から供給する反応種を、バッファ管233a’で構成されるバッファ室を介して供給するようにしてもよい(第5変形例)。第5変形例のバッファ管233a’は、プロセスチューブ203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ管233a’のウエハ200と隣接する壁の中央部にはガスを供給するガス供給孔248a’が設けられている。ガス供給孔248a’はプロセスチューブ203の中心を向くように開口している。このガス供給孔248a’は、プロセスチューブ203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。第5変形例の場合、バッファ管233a’内の容積を、第1ノズル233a内の容積よりも大きくしたので、バッファ管233a’内の圧力上昇を抑制することができ、バッファ管233a’内での反応種の失活をより抑制することが可能となる。なお、第5変形例は第1変形例をさらに変形させたものである。この第5変形例においても上述の実施形態および第1変形例と同様な作用効果が得られる。なお、図14において、図9、10で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
(第6変形例)
また、上述の実施形態では、バッチ式ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置について説明したが、本発明は、本実施形態にかかる基板処理装置に限らず、枚葉式の処理炉を有する基板処理装置やコールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。例えば図15に示すように、第1の加熱源が抵抗加熱ヒータではなく、ランプヒータであり、ランプによるウエハへの光照射、すなわち、ウエハの光吸収によるエネルギーにてウエハを加熱する枚葉式コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置にも適用することができる(第6変形例)。第6変形例の処理炉402は、第1の加熱源としてのランプ404と、処理室401を形成する処理容器403と、ランプ404の光を透過させる石英窓406と、1枚のウエハ200を水平姿勢で支持するサセプタ407を備える支持台405とを有する。
第6変形例によれば、高温に加熱された反応予備室301を用いることにより、原子状酸素(O)等の反応種の発生量を高め、反応種の濃度を著しく高めることができるので、光照射によりウエハを加熱するようなコールドウォール型のチャンバを用いる場合においても、低温処理において、高温処理と同様に膜質を改善することが可能となり、また、高温処理と同様に成膜速度を向上させることも可能となる。なお、光照射によりウエハを加熱するようなコールドウォール型のチャンバを用いる場合、従来はウエハの加熱温度は900℃程度が下限とみられていたが、本発明によれば、900℃以下の低温処理においても、900℃以上の温度で行う酸化処理やアニール処理と同様に膜質を改善することができ、また、成膜速度を向上させることもできる。なお、第6変形例は第1変形例の処理炉の部分を変形させたものである。この第6変形例においても上述の実施形態および第1変形例と同様な作用効果が得られる。なお、図15において、図9、10で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
(第7変形例)
また、上述の第6変形例では、ランプヒータによりウエハを直接加熱するランプ加熱方式の枚葉式コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置に本発明を適用する例について説明したが、本発明は、サセプタを介して間接的にウエハを加熱するサセプタ加熱方式の枚葉式コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。例えば、図16に示すように、第1の加熱源が抵抗加熱ヒータであり、抵抗加熱ヒータによりサセプタを加熱し、加熱されたサセプタからの伝熱によりウエハを加熱する枚葉式コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置にも適用することができる(第7変形例)。第7変形例の処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚のウエハ200を水平姿勢で支持するサセプタ407を備える支持台405と、支持台405に設けられた第1の加熱源としての抵抗加熱ヒータ408と、処理室401内にガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド409とを有する。なお、シャワーヘッド409を設けずに、処理容器403の天井部に直接反応ガス供給管232を接続して、処理容器403の天井部の一箇所から処理室401内にガスを供給するようにしてもよい。第7変形例では、抵抗加熱ヒータ408によりサセプタ407を加熱し、加熱されたサセプタ407からの伝熱によりウエハ200を加熱する。なお、抵抗加熱ヒータ408の代わりにランプヒータを用い、ランプヒータによりサセプタ407を加熱し、加熱されたサセプタ407からの伝熱によりウエハ200を加熱するようにしてもよい。
第7変形例によれば、高温に加熱された反応予備室301を用いることにより、原子状酸素(O)等の反応種の発生量を高め、反応種の濃度を著しく高めることができるので、ヒータにより加熱されたサセプタ407からの伝熱によりウエハ200を加熱するようなコールドウォール型のチャンバを用いる場合においても、低温処理において、高温処理と同様に膜質を改善することが可能となり、また、高温処理と同様に成膜速度を向上させることも可能となる。なお、第7変形例は第1変形例や第6変形例の処理炉の部分を変形させたものである。この第7変形例においても上述の実施形態および第1変形例と同様な作用効果が得られる。なお、図16において、図9、10、15で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
(第8変形例)
また例えば、図17に示すように、シャワーヘッドに反応予備室を設けた基板処理装置、すなわち、シャワーヘッド部に反応予備室の機能を持たせた基板処理装置を用いて成膜する場合にも、本発明は好適に適用できる。本変形例に係る処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、処理室401内にガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド409と、1枚のウエハ200を水平姿勢で支持するサセプタ407を備える支持台405と、支持台405に設けられた第1の加熱源としての抵抗加熱ヒータ408とを有する。シャワーヘッド409は、内部に反応予備室301が形成された反応予備容器300と、反応予備容器300の円筒側面及び上面を囲うように設けられた第2のヒータ302a、302b、302cと、反応予備容器300及び第2のヒータ302a、302b、302cの周囲に設けられた断熱部材303とを有する。シャワーヘッド409のインレットには、酸素含有ガス供給管232aと水素含有ガス供給管232bとが合流した合流配管部が接続されており、アウトレットには、処理室401内にガスをシャワー状に供給するガス分散板304が設けられている。反応予備室301内の圧力のモニタは圧力センサ245aにより行う。なお、図17において、図9、10で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図17に示す変形例によれば、反応予備室301と処理室201(401)とを接続する配管部をなくし、シャワーヘッド409内の反応予備室301と処理室201(401)とを直結したので、反応予備室301内で生成された原子状酸素(O)等の反応種が配管部内で失活することを回避することができる。また、配管部をなくしたので、配管部内の圧力モニタリングや配管部内の圧力調整が不要となり、基板処理装置の構成や圧力制御動作を簡素化することも可能となる。また、本変形例によれば、配管部をなくしたことにより反応種が配管部内で失活する現象が生じないことから、処理室201(401)内の真空排気と、反応予備室301内への酸素含有ガスと水素含有ガスとの供給による反応種の生成および反応種の処理室201(401)内への供給と、を交互に繰り返すことなく、反応予備室301内への酸素含有ガスと水素含有ガスとの供給による反応種の生成および反応種の処理室201(401)内への供給を連続的に行うことで、基板に対して処理を行うことも可能となる。
(第9変形例)
また、上述の実施形態や第1〜第7変形例では、反応予備室301と処理室201(401)とを配管部により接続したタイプの基板処理装置を用いる例について説明したが、本発明は、反応予備室301と処理室201(401)とを直結したタイプの基板処理装置にも好適に適用できる。例えば、図18に示すように、配管部をなくし、反応予備室301と処理室201(401)とを直接に接続するようにしてもよい。この場合、反応予備室301と処理室201(401)との直結部により、反応予備室301と処理室201(401)との接続部が構成されることとなる。反応予備室301内の圧力のモニタは圧力センサ245aにより行う。図18(a)は第3変形例において反応予備室301と処理室201とを直結したタイプの基板処理装置の例であり、図18(b)は、第6変形例において反応予備室301と処理室401とを直結したタイプの基板処理装置の例であり、図18(c)は、第7変形例において反応予備室301と処理室401とを直結したタイプの基板処理装置の例である。なお、図18(c)では、シャワーヘッド409を設けずに、処理容器403の天井部に直接に反応予備容器300(反応予備室301)を接続して、処理容器403の天井部の一箇所から処理室401内にガスを供給する例を示している。
第9変形例によれば、反応予備室301と処理室201(401)とを接続する配管部をなくし、反応予備室301と処理室201(401)とを直結したので、反応予備室301内で生成された原子状酸素(O)等の反応種が配管部内で失活することを回避することができる。すなわち、反応予備室301内で生成された原子状酸素(O)等の反応種を失活させることなく処理室201(401)内へダイレクトに導入することが可能となる。また、配管部をなくしたので、配管部内の圧力モニタリングや配管部内の圧力調整が不要となり、基板処理装置の構成や圧力制御動作を簡素化することも可能となる。
以上、本発明の実施形態および各変形例について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態や各変形例に限定されるものではなく、上述の実施形態や各変形例を適宜組み合わせた形態にも適用することができる。
また、上述の実施形態や各変形例では、第2の温度を第1の温度よりも高い温度とする(第2の温度>第1の温度)例について説明したが、第2の温度を第1の温度と等しくする(第2の温度=第1の温度)ことも可能である。すなわち、反応予備室内の温度を処理室内の温度と等しくすることも可能である。
例えばこの場合、反応予備室内の温度と処理室内の温度とを何れも第1の温度とし、第1の温度に加熱された減圧下にある反応予備室内で酸素含有ガスと水素含有ガスとの反応を開始させ、第1の温度に加熱された減圧下にある処理室内でその反応を進行させるようにすることができ、その温度で得られる原子状酸素の濃度を最大にすることが可能となる。この場合、酸素含有ガスと水素含有ガスとの反応を、処理室内で開始させるのではなく、反応予備室内で開始させることとなり、反応予備室は酸素含有ガスと水素含有ガスとの反応遅れ時間を調整するバッファとしての役割を担うこととなる。
このように、第2の温度を第1の温度と等しくするようにしても、低温領域における酸素含有ガスと水素含有ガスとの反応遅れを改善することが可能となる。すなわち、第2の温度を第1の温度よりも高い温度とする(第2の温度>第1の温度)だけでなく、第2の温度を第1の温度と等しくする(第2の温度=第1の温度)ようにしても、つまり、第2の温度を第1の温度以上の温度とする(第2の温度≧第1の温度)ことにより、低温領域における酸素含有ガスと水素含有ガスとの反応遅れを改善することが可能となる。
以上説明した実施の形態や各変形例では、第1不活性ガス供給管232cおよび第2不活性ガス供給管232dの両方から、不活性ハスを供給したが、いずれか一方のみから不活性ハスを供給してもよい。
図8は、図9を参照して説明した本発明の一実施の形態の縦型処理炉202を用いて、反応予備室301内に、O2ガスを0.5slm、H2ガスを0.5slm供給し、不活性ガスであるN2ガスを供給しない場合と、O2ガスを0.5slm、H2ガスを0.5slm、不活性ガスであるN2ガスを0.4slm供給した場合のシリコン酸化膜の膜厚と、ウエハ200面内におけるシリコン酸化膜の膜厚のばらつき(Range)を示している。なお、本実施例では、上述の実施の形態における(1)〜(3)の工程で構成されるサイクルを一回行うことでシリコン酸化膜を形成した。図8の横軸はウエハポジション、すなわち、垂直方向におけるウエハの位置を示しており、左側の縦軸は、ウエハに形成されたシリコン酸化膜の膜厚を、右側の縦軸は、ウエハに形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内におけるばらつき(Range)を示している。図8より、N2ガスを添加した場合の方が、原子状酸素がN2ガスで希釈されているにもかかわらず、膜厚が上昇しているのが確認された。これは、N2ガスが、反応予備室301内での反応を遅延させたためであると推測される。また、ウエハ200面内の膜厚のばらつき(Range)も、N2ガスを添加した場合の方が、小さくなることが確認された。
(本発明の好ましい態様)
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板を第1の温度に加熱する第1の加熱源と、
複数種類のガスを反応させる反応予備室と、
前記反応予備室内を前記第1の温度以上の第2の温度に加熱する第2の加熱源と、
前記反応予備室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系と、
前記反応予備室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記反応予備室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記反応予備室と前記処理室とを接続する接続部と、
前記処理室内および前記反応予備室内の圧力を大気圧未満の圧力となるように調整する圧力調整部と、
大気圧未満の圧力下にあり前記第2の温度に加熱された前記反応予備室内に前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスと前記不活性ガスとを供給して、前記反応予備室内で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとが前記不活性ガスにより希釈された状態で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを反応させて反応種を生成し、この反応種を、大気圧未満の圧力下にあり前記第1の温度に加熱され前記基板を収容した前記処理室内に供給して、前記基板に対して処理を行うように、前記第1の加熱源、前記第2の加熱源、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、不活性ガス供給系および前記圧力調整部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
(付記2)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、さらに、前記処理室内の圧力を検出する第1の圧力検出器と、前記反応予備室内の圧力を検出する第2の圧力検出器と、を有する。
(付記3)
付記2の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、さらに、
前記基板に対して処理を行う際に、
前記反応予備室内の圧力が所定の圧力に維持されている場合に、前記反応予備室内への前記水素含有ガスの供給を可能とし、
前記反応予備室内の圧力が前記所定の圧力を超えている場合には、前記反応予備室内への前記水素含有ガスの供給を不可能とするよう
前記水素含有ガス供給系を制御するように構成される。
(付記4)
付記3の基板処理装置であって、好ましくは、前記所定の圧力が3999Pa以下の圧力である。
(付記5)
付記2の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、さらに、
前記基板に対して処理を行う際に、
前記反応予備室内の圧力が所定の圧力に維持されている場合に、前記反応予備室内への前記水素含有ガスおよび前記酸素含有ガスの供給を可能とし、
前記反応予備室内の圧力が前記所定の圧力を超えている場合には、前記反応予備室内への前記水素含有ガスおよび前記酸素含有ガスの供給を不可能とするよう
前記水素含有ガス供給系および前記酸素含有ガス供給系を制御するように構成される。
(付記6)
付記5の基板処理装置であって、好ましくは、前記所定の圧力が3999Pa以下の圧力である。
(付記7)
付記2の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、さらに、前記基板に対して処理を行う際に、前記接続部内の圧力が大気圧未満の圧力となるよう前記圧力調整部を制御するように構成される。
(付記8)
付記2の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、さらに、前記基板に対して処理を行う際に、前記反応予備室内の圧力が1Pa以上3999Pa以下の圧力となるよう前記圧力調整部を制御するように構成される。
(付記9)
付記2の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、さらに、前記基板に対して処理を行う際に、前記反応予備室内の圧力が1Pa以上2666Pa以下の圧力となるよう前記圧力調整部を制御するように構成される。
(付記10)
付記2の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、さらに、前記基板に対して処理を行う際に、前記反応予備室内の圧力が1Pa以上1333a以下の圧力となるよう前記圧力調整部を制御するように構成される。
(付記11)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、さらに、前記第1の温度を室温以上900℃以下とし、前記第2の温度を400℃以上1200℃以下とするよう前記第1の加熱源および前記第2の加熱源を制御するように構成される。
(付記12)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記制御部は、さらに、前記第1の温度を200以上600℃以下とし、前記第2の温度を600℃以上1000℃以下とするよう前記第1の加熱源および前記第2の加熱源を制御するように構成される。
(付記13)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記第1の加熱源が、抵抗加熱ヒータである。
(付記14)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記第1の加熱源が、ランプヒータである。
(付記15)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記処理が前記基板に対する酸化処理である。
(付記16)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記処理が前記基板上に形成された絶縁膜に対するアニール処理である。
(付記17)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記処理が前記基板上に形成された絶縁膜に対する改質処理である。
(付記18)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記酸素含有ガスが、酸素ガス、オゾンガス、一酸化窒素ガスおよび亜酸化窒素ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスであり、前記水素含有ガスが水素ガス、重水素ガス、アンモニアガスおよびメタンガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスである。
(付記19)
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、前記酸素含有ガスが酸素ガスであり、前記水素含有ガスが水素ガスである。
(付記20)
本発明の他の態様によれば、
処理室内に基板を収容する工程と、
大気圧未満の圧力下にあり第1の温度以上の第2の温度に加熱された反応予備室内に酸素含有ガスと水素含有ガスと不活性ガスとを供給して、前記反応予備室内で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとが前記不活性ガスにより希釈された状態で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを反応させて反応種を生成し、この反応種を、大気圧未満の圧力下にあり前記第1の温度に加熱された前記基板を収容した前記処理室内に供給して、前記基板に対して処理を行う工程と、
を有する基板処理方法が提供される。
(付記21)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内に基板を収容する工程と、
大気圧未満の圧力下にあり第1の温度以上の第2の温度に加熱された反応予備室内に酸素含有ガスと水素含有ガスと不活性ガスとを供給して、前記反応予備室内で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとが前記不活性ガスにより希釈された状態で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを反応させて反応種を生成し、この反応種を、大気圧未満の圧力下にあり前記第1の温度に加熱された前記基板を収容した前記処理室内に供給して、前記基板に対して処理を行う工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
(付記22)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内に基板を収容する手順と、
大気圧未満の圧力下にあり第1の温度以上の第2の温度に加熱された反応予備室内に酸素含有ガスと水素含有ガスと不活性ガスとを供給して、前記反応予備室内で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとが前記不活性ガスにより希釈された状態で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを反応させて反応種を生成し、この反応種を、大気圧未満の圧力下にあり前記第1の温度に加熱された前記基板を収容した前記処理室内に供給して、前記基板に対して処理を行う手順と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
(付記23)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内に基板を収容する手順と、
大気圧未満の圧力下にあり第1の温度以上の第2の温度に加熱された反応予備室内に酸素含有ガスと水素含有ガスと不活性ガスとを供給して、前記反応予備室内で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとが前記不活性ガスにより希釈された状態で、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを反応させて反応種を生成し、この反応種を、大気圧未満の圧力下にあり前記第1の温度に加熱された前記基板を収容した前記処理室内に供給して、前記基板に対して処理を行う手順と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。