JP2013193024A - イオン濃度調整装置 - Google Patents

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裕嗣 矢野
Akira Yoshida
陽 吉田
Takeshi Kawazu
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Abstract

【課題】バッチ処理を行うことなく、陽イオン用および陰イオン用の吸着電極各1枚と、対向電極が1枚で構成されたイオン濃度調整装置にて、陽イオンおよび陰イオン用の吸着電極と1枚の対向電極とに、同時に電圧印加することによってイオンの吸着処理および脱着処理が可能なイオン濃度調整装置を提供する。
【解決手段】水溶液が収容される容器10と、容器10内に配置され、水溶液中のイオンの吸着および脱離が可能な第1吸着電極1と、容器10内に第1吸着電極1と間隔をあけて配置され、水溶液中のイオンの吸着および脱離が可能な第2吸着電極2と、容器10内に第1,第2吸着電極1,2に対向するように配置された対向電極3とを備える。上記対向電極3の第1部3aが第1吸着電極1に対向すると共に、対向電極3の第2部3bが第2吸着電極2に対向する。
【選択図】図1

Description

この発明は、イオン濃度調整装置に関する。
従来の電気二重層を利用したイオン濃度調整装置では、陽イオン用および陰イオン用の各イオン吸着電極間に電圧を印加して、水中のイオンを移動させることによりイオン量の制御を行い、軟水化および硬水化を行うものがある(例えば、国際公開第2007/037193号パンフレット(特許文献1)参照)。
しかしながら、上記従来のイオン濃度調整装置では、吸着速度を上げるために印加電圧を高くすると、イオン吸着電極表面で水の電気分解が発生することにより、電気二重層の形成による電子のやり取りが効率的に行われ、イオンの吸着および脱着が行われなくなるために、硬度成分のみを増減させることができなくなるという問題がある。
また、上記従来のpH調整装置(例えば、国際公開第2006/132160号パンフレット(特許文献2)参照)では、イオンの吸着処理および吸着電極の再生処理を少なくとも1回以上は行わなければならないので、処理中に水溶液を一時保持したり入れ替えたりするバッチ処理用のシステムが必要であった。また、陽イオン用および陰イオン用の吸着電極各1枚と、対向電極が1枚で構成されたイオン濃度調整装置では、対向電極は陽イオン用もしくは陰イオン用のいずれか一方の吸着電極との間で電圧印加する必要があったため、硬度を調整するためにはバッチ処理を行う必要があった。
国際公開第2007/037193号パンフレット 国際公開第2006/132160号パンフレット
そこで、この発明の課題は、バッチ処理を行うことなく、陽イオン用および陰イオン用の吸着電極各1枚と、対向電極が1枚で構成されたイオン濃度調整装置にて、陽イオンおよび陰イオン用の吸着電極と1枚の対向電極とに、同時に電圧印加することによってイオンの吸着処理および脱着処理が可能なイオン濃度調整装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明のイオン濃度調整装置は、
水溶液が収容される容器と、
上記容器内に配置され、上記水溶液中のイオンの吸着および脱離が可能な第1吸着電極と、
上記容器内に上記第1吸着電極と間隔をあけて配置され、上記水溶液中のイオンの吸着および脱離が可能な第2吸着電極と、
上記容器内に上記第1,第2吸着電極と対向するように配置された対向電極と
を備え、
上記対向電極の一方側が上記第1吸着電極に対向すると共に、
上記対向電極の他方側が上記第2吸着電極に対向していることを特徴とする。
ここで、「対向電極」は、必ずしも1つの部材からなるものに限らず、例えば、2つの対向電極を同一平面上に隣接して配置して、その2つの対向電極の間で電気的に接続したものでもよい。
上記構成によれば、対向電極の一方側が第1吸着電極に対向すると共に、対向電極の他方側が第2吸着電極に対向することによって、第1吸着電極と第2吸着電極との間の電界の相互干渉を抑制でき、同一水溶液中で対向電極を隔壁構造にすることなく、同一容器内の水溶液中において陽イオンおよび陰イオンの吸着および脱離が行われる領域を切り分けることが可能になる。これによって、容器内の第1吸着電極が第1吸着電極に対向する対向電極の一方側との領域で陽イオンを吸着させ、容器内の第2吸着電極が第2吸着電極に対向する対向電極の他方側との領域で陰イオンを吸着させて、同一水溶液中で同電気量の陽イオンと陰イオンを除去し、水溶液の硬度成分を減少させることができる。また、容器内の第1吸着電極が第1吸着電極に対向する対向電極の一方側との領域で陽イオンを脱離させ、容器内の第2吸着電極が第2吸着電極に対向する対向電極の他方側との領域で陰イオンを脱離させて、同一水溶液中に同電気量の陽イオンと陰イオンを放出し、水溶液の硬度成分を増加させることができる。このとき、水の電気分解により第1吸着電極に対向する対向電極の一方側にHが生成され、第2吸着電極に対向する対向電極の他方側にOHが生成されても、同一水溶液内で同量のHとOHが発生して中和されるので、pHは変化しない。
なお、第1吸着電極と対向電極の一方側との間および第2吸着電極と対向電極の他方側との間に、対向電極側のみに水の電気分解が起きる電圧を印加することで、軟水,硬水を生成する処理時間の短縮化が可能になる。また、第一吸着電極と対向電極の一方側との領域と、第2吸着電極と対向電極の他方側との領域との領域間に順に水溶液を流すことにより陽イオンおよび陰イオンを効率よく増減させることが可能となる
また、同一容器内でHとOHが生成される反応領域を切り分けることも可能になるので、例えば、HまたはOHの反応領域が近接すると、水の電気分解によりHやOHを発生させるよりも、HとOHが平衡状態によりHOに戻る方がエネルギー的に低いため、このHまたはOHの反応領域では水の電気分解が発生しないので、吸着処理および脱着処理の効率が悪くなる。このため、容器のくびれ等によりHとOHが生成される反応領域を分けることによって、同一水溶液内で硬度の制御効率を良くしたり、pHの制御を同時に行ったりすることができる。したがって、バッチ処理を行うことなく、同一水溶液内で軟水と硬水を同時に生成したり酸性水とアルカリ性水を同時に生成したりできる。また、HまたはOHが生成される反応領域を分けることができると、水流によりフロー制御を行った場合には、各領域での流量を同じに設定すれば、陽イオン用の処理領域と陰イオン用の処理領域をそれぞれ通過することができるため、一方のイオンを処理した水溶液から他方のイオンも処理できるため、効率よくイオンの増減を行うことができる。これにより、同一水溶液内で同時処理が可能となるため、処理中に水溶液を一時保持したり入れ替えたりするバッチ処理用のシステムを追加することなく、処理時間を短縮化することが可能になる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記第1吸着電極と上記対向電極との間に、上記対向電極に対して相対的に正電圧または負電圧となるように電圧を印加するか、または、電圧を印加しないかを切り替える一方、上記第2吸着電極と上記対向電極との間に、上記対向電極に対して相対的に正電圧または負電圧となるように電圧を印加するか、または、電圧を印加しないかを切り替える電圧印加手段を有する。
上記実施形態によれば、電圧印加手段によって、第1吸着電極と対向電極との間に、対向電極に対して相対的に正電圧または負電圧となるように電圧を印加するか、または、電圧を印加しないかを切り替える一方、第2吸着電極と対向電極との間に、対向電極に対して相対的に正電圧または負電圧となるように電圧を印加するか、または、電圧を印加しないかを切り替えることによって、簡単な電圧制御で、pH変化のない軟水、pH変化のない硬水、硬度が下がった酸性水、硬度変化のない酸性水、硬度変化のないアルカリ性水、硬度が上がったアルカリ性水を生成することが可能になる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記対向電極の一方側の一面が上記第1吸着電極に対向すると共に、
上記対向電極の他方側の一面が上記第2吸着電極に対向しており、
上記対向電極の上記一方側の他面が上記第2吸着電極に対向していない一方、
上記対向電極の上記他方側の他面が上記第1吸着電極に対向していない。
上記実施形態によれば、対向電極の一方側の一面が第1吸着電極に対向すると共に、対向電極の他方側の一面が第2吸着電極に対向しており、対向電極の一方側の他面が第2吸着電極に対向していない一方、対向電極の他方側の他面が第1吸着電極に対向していないので、第1吸着電極と第2吸着電極との間の電界の相互干渉を確実に防止できる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記対向電極の上記一方側と上記他方側は、別体であって、上記一方側と上記他方側との間で電気的に接続されている。
上記実施形態によれば、対向電極の別体の一方側と他方側が、一方側と他方側との間で電気的に接続されていることによって、対向電極の製作や配置などの自由度が高くなる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記容器内は、上記第1吸着電極と上記対向電極の上記一方側とが対向する第1の領域と、上記第2吸着電極と上記対向電極の上記他方側とが対向する第2の領域とに区画され、
上記容器内の上記第1の領域と上記第2の領域との間に設けられ、上記第1の領域内の上記水溶液中のイオンが上記第2の領域内の上記水溶液中に移動することを抑制すると共に、上記第2の領域内の上記水溶液中のイオンが上記第1の領域内の上記水溶液中に移動することを抑制するイオン移動抑制手段を設けた。
上記実施形態によれば、容器内の第1の領域と第2の領域で生成したHとOHが、第1の領域と第2の領域との近傍領域で反応し、水の電気分解を抑制することによってイオンの吸着能力および脱着能力を劣化させてしまうことを抑制することが可能になる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記容器内の上記第1の領域または上記第2の領域の一方に外部から水溶液が流入した後、上記イオン移動抑制手段を介して上記第1の領域または上記第2の領域の他方から外部に流出するように形成された流路と、
上記流路に流れる上記水溶液の流量を制御する流量制御手段と
を備えた。
ここで、「流量を制御する」とは、流れの方向の制御も含む。
上記実施形態によれば、容器内の第1の領域または第2の領域の一方に外部から水溶液が流入した後、イオン移動抑制手段を介して第1の領域または第2の領域の他方から外部に流出するように流路を形成することによって、第1の領域でイオンの吸着処理もしくは脱着処理された水溶液に対し、第2の領域で先の処理されたイオンと異なったイオンを吸着もしくは脱着することにより、イオンの吸着および脱着の効率を良くすることができる。また、容器内の第1の領域内で生成された機能水と第2の領域で生成された機能水を、流量制御手段を用いて外部に容易に取り出すことができる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記イオン移動抑制手段は、上記容器内の上記第1の領域と上記第2の領域との間に設けられた絞り開口を有する隔壁である。
上記実施形態によれば、容器内の第1の領域と第2の領域との間に設けられた絞り開口を有する隔壁をイオン移動抑制手段として用いることによって、簡単な構成で第1の領域と第2の領域との間で流路の流れを許容しつつイオンの移動を抑制できる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記第1吸着電極と上記第2吸着電極は、上記対向電極の中心点に対して点対称に配置されている。
上記実施形態によれば、第1吸着電極と第2吸着電極を対向電極の中心点に対して点対称に配置することによって、第1吸着電極と第2吸着電極との間で互いの電界が直接影響し合うことを抑制できる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記第1吸着電極と上記第2吸着電極は、上記対向電極に対して上下方向に配置されている。
上記実施形態によれば、対向電極に対して第1吸着電極と第2吸着電極を上下方向に配置することによって、水の高低差を用いて開閉弁の制御などにより、イオン移動抑制手段を介して容器内の第1の領域と第2の領域のうちの上方の側から下方の側に流すことが可能になる。
また、一実施形態のイオン濃度調整装置では、
上記第1吸着電極と上記第2吸着電極は、上記対向電極に対して横方向に配置されている。
上記実施形態によれば、対向電極に対して第1吸着電極と第2吸着電極を横方向に配置することによって、容器内の第1の領域と第2の領域を横方向に配置して、第1の領域内の機能水と第2の領域内の機能水を同じ条件(例えば、第1の領域と第2の領域の容積と流出流量が同じ)で外部に流出させることにより、イオン移動抑制手段を介して容器内の第1の領域と第2の領域を水溶液が通過することができ、各領域で水溶液中の異なった電気特性のイオンの吸着および脱着を行うことができる。また、第1の領域と第2の領域の夫々で生成した異なる機能水が混じり合うことなく、異なる機能水を別々に取り出すことが可能になる。
以上より明らかなように、この発明によれば、バッチ処理を行うことなく、陽イオン用および陰イオン用の吸着電極各1枚と、対向電極が1枚で構成されたイオン濃度調整装置にて、陽イオンおよび陰イオン用の吸着電極と1枚の対向電極とに、同時に電圧印加することによりイオンの吸着処理および脱着処理が可能なイオン濃度調整装置を実現することができる。
図1はこの発明の実施の一形態のイオン濃度調整装置の構成を示す模式図である。 図2は上記イオン濃度調整装置において軟水を生成するときの反応を説明するための模式図である。 図3は上記イオン濃度調整装置において硬水を生成するときの反応を説明するための模式図である。 図4は上記イオン濃度調整装置において硬度成分を減少させた酸性水と硬度成分を増加させたアルカリ性水を同時に生成するときの反応を説明するための模式図である。 図5は上記イオン濃度調整装置において硬度成分を減少させた酸性水と硬度成分を増加させたアルカリ性水を同時に生成するときの反応を説明するため模式図である。 図6は上記イオン濃度調整装置において硬度成分を減少させた酸性水を生成するときの反応を説明するための模式図である。 図7は上記イオン濃度調整装置において硬度成分を増加させたアルカリ性水を生成するときの反応を説明するための模式図である。 図8は上記イオン濃度調整装置において硬度変化のないアルカリ性水を生成するときの反応を説明するための模式図である。
以下、この発明のイオン濃度調整装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1はこの発明の実施の一形態のイオン濃度調整装置の構成を示している。
この実施の形態のイオン濃度調整装置は、図1に示すように、水溶液が収容される容器10を備え、絞り開口4aを有する隔壁4によって容器10内を第1の領域11と第2の領域12に区画している。この絞り開口4aを有する隔壁4がイオン移動抑制手段の一例である。ここで、水溶液とは、水道水などの電解質を含んだ水のことであるが、この実施の形態では、水溶液は中性軟水とする。
なお、世界保健機関(WHO)の基準では、軟水の硬度は0〜60[mg/L]未満、中程度の軟水(中硬水)の硬度は60〜120[mg/L]未満、硬水の硬度は120[mg/L]以上である。ここで、硬度は次式により求められる。
硬度[mg/L]=(カルシウム量[mg/L]×2.5)+(マグネシウム量[mg/L]×4.1)
また、上記イオン濃度調整装置は、容器10内の第1の領域11に配置され、水溶液中のイオンの吸着および脱離が可能な第1吸着電極1と、容器10内の第2の領域12に第1吸着電極1と間隔をあけて配置され、水溶液中のイオンの吸着および脱離が可能な第2吸着電極2と、容器10内かつ第1吸着電極1と第2吸着電極2との間に配置された対向電極3と、第1吸着電極1に正電圧または負電圧を印加する第1直流電源E1と、第2吸着電極2に正電圧または負電圧を印加する第2直流電源E2とを備えている。対向電極3に正電圧と負電圧との間の中間電圧などが印加される。
上記第1吸着電極1と第2吸着電極2は、多孔質の炭素材料(例えば活性炭)からなり、対向電極3は、溶解しない電極部材であればよく、カーボンなどでもよいが、水の電気分解が生じやすい金属(例えばPt,Au,Pd,Rh,Irの少なくとも1つの金属(または合金))が好適であり、例えばTiからなる電極の表面をPtで被覆したものでもよい。また、この実施の形態では、第1,第2吸着電極1,2および対向電極3は平板状としているが、電極材料や容器の形状に応じて適宜設定すればよい。
上記対向電極3は、容器10内に隔壁4を貫通して配置され、第1の領域11に位置する一方側である第1部3aと、第2の領域12に位置する他方側である第2部3bとを有している。容器10内の第1の領域11において、対向電極3の第1部3aの一面(図1の右側)が第1吸着電極1に対向すると共に、容器10内の第2の領域12において、対向電極3の第2部3bの一面(図1の左側)が第2吸着電極2に対向している。この対向電極3の第1部3aの他面(図1の左側)が第2吸着電極2に対向していない一方、対向電極3の第2部3bの他面(図1の右側)が第1吸着電極1に対向していない。
また、上記第1直流電源E1は、切替スイッチSW1を介して第1吸着電極1と対向電極3に接続され、切替スイッチSW1を切り替えることにより、第1吸着電極1が陽極または陰極の一方になるように、第1吸着電極1と対向電極3との間に電圧を印加する。
また、上記第2直流電源E2は、切替スイッチSW2を介して第2吸着電極2と対向電極3に接続され、切替スイッチSW1を切り替えることにより、第2吸着電極2が陽極または陰極の一方になるように、第2吸着電極2と対向電極3との間に電圧を印加する。
上記第1直流電源E1と第2直流電源E2および切替スイッチSW1,SW2で電圧印加手段を構成している。
また、上記容器10内の第1の領域11側かつ隔壁4の絞り開口4aと反対の側に配管L1の一端を接続している。この配管L1内を流れる水溶液の流量を制御する流量制御手段の一例としての第1流量制御部21を配管L1に配設している。
また、上記容器10内の第2の領域12側かつ隔壁4の絞り開口4aと反対の側に配管L2の一端を接続している。この配管L2内を流れる水溶液の流量を制御する流量制御手段の一例としての第1流量制御部22を配管L2に配設している。
上記第1流量制御部21と第2流量制御部22は、水道圧や水の高低差を利用して、開度制御により流量を調整する開閉弁であってもよいし、配管L1,L2内の水溶液を双方向に流すことが可能なポンプであってもよく、開閉弁とポンプを組み合わせたものでもよい。
上記イオン移動抑制手段である絞り開口4aを有する隔壁4は、第1の領域11内の水溶液中のイオンが第2の領域12内の水溶液中に移動することを抑制すると共に、第2の領域12内の水溶液中のイオンが第1の領域11内の水溶液中に移動することを抑制する。
なお、このイオン移動抑制手段は、絞り開口を有する隔壁ではなく、容器自体がくびれた形態でもよいし、単に隔壁に穴が複数個開いた形態でもよい。第1の領域11と第2の領域12の各断面積よりも境界部における開口の断面積を小さくすることにより、開口近傍の領域で水溶液が混じり合うことが少なくなる。
〔1.pH変化なしに硬度成分を減少させた軟水の生成〕
図2は上記イオン濃度調整装置において軟水を生成するときの反応を説明するための模式図を示している。
図2において、第1流量制御部22により外部からの水溶液を容器10の第1の領域11内に配管L1を介して注入し、容器10の第1の領域11内から第2の領域12内に隔壁4の絞り開口4aを介して流入した後、第2流量制御部22により配管L2を介して流出する。
次に、切替スイッチSW1を切り替えて、第1直流電源E1の正極を対向電極3に接続し、第1直流電源E1の負極を第1吸着電極1に接続する。また、切替スイッチSW2を切り替えて、第2直流電源E2の正極を第2吸着電極2に接続し、第2直流電源E2の負極を対向電極3に接続する。ここで、第1直流電源E1により第1吸着電極1と対向電極3との間に印加する電圧は、水の電気分解が生じる電圧よりも低い電圧とすると共に、第2直流電源E2により第2吸着電極2と対向電極3との間に印加する電圧は、水の電気分解が生じる電圧よりも低い電圧としている。
これにより、容器10の第1の領域11内の水溶液中の陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が陰極の第1吸着電極1に吸着されると共に、第2の領域12内の水溶液中の陰イオン(Clなど)が陽極の第2吸着電極2に吸着されて、容器10の第1の領域11と第2の領域12を流れる間に硬度成分を減少させた機能水(軟水)が生成される。
このとき、第1直流電源E1により第1吸着電極1と対向電極3との間に印加する電圧は、対向電極3側のみで水の電気分解が起こる電圧とすると共に、第2直流電源E2により第2吸着電極2と対向電極3との間に印加する電圧は、対向電極3側のみで水の電気分解が起こる電圧とする方がよい。これによって、容器10の第1の領域11では、陽極となる対向電極3の第1部3aの表面では、
O → 1/2O↑+2H+2e
の反応式で表される反応が生じて、酸素ガス(O)と水素イオン(H)が発生一方、容器10の第2の領域12では、陰極となる対向電極3の第2部3bの表面では、
2HO+2e → H↑+2OH
の反応式で表される反応が生じて、水素ガス(H)と水酸化物イオン(OH)が発生する。
このようにして、第1吸着電極1に対向する対向電極3の第1部3aに水素イオン(H)が生成され、第2吸着電極2に対向する対向電極3の第2部3bに水酸化物イオン(OH)が生成されても、同一水溶液内で同量の水素イオン(H)と水酸化物イオン(OH)が発生して中和されるので、pHは変化しない。吸着もしくは脱着するイオン量は、印加する電流量に正の相関があるため、水の電気分解が生じない電圧よりも対向電極3のみで水の電気分解が発生するように高い電圧を印加する方が処理できるイオン量は多くなり、硬度成分を減少させた機能水(軟水)を生成する処理時間を短縮できる。
上記第1,第2吸着電極1,2が水溶液中の陽イオン,陰イオンを吸着するのは、電場にしたがって荷電粒子が移動して、界面に正負の荷電粒子が対を形成して層状に並ぶという電気二重層理論による。
〔2.pH変化なしに硬度成分を増加させた硬水の生成〕
図3は上記イオン濃度調整装置において硬水を生成するときの反応を説明するための模式図を示している。
図3において、図2と同様に、第1流量制御部22により外部からの水溶液を容器10の第1の領域11内に配管L1を介して注入し、容器10の第1の領域11内から第2の領域12内に隔壁4の絞り開口4aを介して流入した後、第2流量制御部22により配管L2を介して流出する。
次に、切替スイッチSW1を切り替えて、第1直流電源E1の負極を対向電極3に接続し、第1直流電源E1の正極を第1吸着電極1に接続する。また、切替スイッチSW2を切り替えて、第2直流電源E2の負極を第2吸着電極2に接続し、第2直流電源E2の正極を対向電極3に接続する。ここで、第1直流電源E1により第1吸着電極1と対向電極3との間に印加する電圧は、水の電気分解が生じる電圧よりも低い電圧とすると共に、第2直流電源E2により第2吸着電極2と対向電極3との間に印加する電圧は、水の電気分解が生じる電圧よりも低い電圧としている。
これにより、容器10の第1の領域11内の水溶液中の陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が陰極の第1吸着電極1から放出されると共に、第2の領域12内の水溶液中の陰イオン(Clなど)が陽極の第2吸着電極2から放出されて、容器10の第1の領域11と第2の領域12を流れる間に硬度成分を増加させた機能水(硬水)が生成される。
このとき、第1直流電源E1により第1吸着電極1と対向電極3との間に印加する電圧は、対向電極3側のみで水の電気分解が起こる電圧とすると共に、第2直流電源E2により第2吸着電極2と対向電極3との間に印加する電圧は、対向電極3側のみで水の電気分解が起こる電圧としてもよい。これによって、第1吸着電極1に対向する対向電極3の第1部3aにOHが生成され、第2吸着電極2に対向する対向電極3の第2部3bにHが生成されても、同一水溶液内で同量のHとOHが発生し、水溶液全体では電気容量は変化しないので、pHは変化しない。水の電気分解が生じない電圧よりも対向電極3のみで水の電気分解が発生するように高い電圧を印加することにより、処理できるイオン量は多くなるため、硬度成分を減少させた機能水(軟水)を生成する処理時間を短縮できる。
図2,図3に示すイオン濃度調整装置によれば、容器10内の対向電極3の一方側が第1吸着電極1に対向する第1の領域11で陽イオンを吸着させ、容器10内の対向電極3の他方側が第2吸着電極2に対向する第2の領域12で陰イオンを吸着させて、同一水溶液中で同量の陽イオンと陰イオンを除去し、pHを変化させずに水溶液の硬度成分を減少させることができる。これに続けて、容器10内の対向電極3の一方側が第1吸着電極1に対向する第1の領域12内で陽イオンを脱離させ、容器内の対向電極の他方側が第2吸着電極に対向する第2の領域11で陰イオンを脱離させて、同一水溶液中に同量の陽イオンと陰イオンを放出し、pHを変化させずに水溶液の硬度成分を増加させることができる。
このように、図2,図3に示す処理を交互に行うことにより、pH変化のない軟水と硬水を連続して生成することができる。
また、イオン濃度調整装置内を一定流量で水溶液を流すことにより、通常処理では各領域で片側のイオンの吸着および脱着を行うのみであったが、第1の領域と第2の領域を通ることにより、陽イオンと陰イオンの両方の吸着および脱着を行うことができ、効率のよい処理が可能になり、硬度変化の大きい軟水および硬水を生成することができる。
また、第1の領域および第2の領域で同極の電圧を印加することにより、硬度成分を減少させた酸性水と硬度成分を増加させたアルカリ性水、もしくは硬度成分の変化のない酸性水と硬度成分の変化のないアルカリ性水を効率よく生成することができる。
〔3.硬度成分を減少させた酸性水と硬度成分を増加させたアルカリ性水を同時に生成〕
図4は上記イオン濃度調整装置において硬度成分を減少させた酸性水と硬度成分を増加させたアルカリ性水を同時に生成するときの反応を説明するための模式図を示している。
図4において、第1流量制御部22により外部からの水溶液を容器10の第1の領域11内に注入すると共に、容器10の第1の領域11内から第2の領域12内に隔壁4の絞り開口4aを介して注入する。このとき、第2流量制御部22は、配管L2を閉じている。
次に、切替スイッチSW1を切り替えて、第1直流電源E1の正極を対向電極3に接続し、第1直流電源E1の負極を第1吸着電極1に接続する。また、切替スイッチSW2を切り替えて、第2直流電源E2の正極を第2吸着電極2に接続し、第2直流電源E2の負極を対向電極3に接続する。ここで、第1直流電源E1により第1吸着電極1と対向電極3との間に印加する電圧は、対向電極3側のみで水の電気分解が起きる電圧とすると共に、第2直流電源E2により第2吸着電極2と対向電極3との間に印加する電圧は、対向電極3側のみで水の電気分解が生じる電圧よりも低い電圧としている。
そうすると、容器10の第1の領域11では、陰極となる第1吸着電極1に水溶液中のCa2+,Mg2+などの陽イオン(図4ではCa2+のみを示す)が吸着されると共に、陽極となる対向電極3の第1部3aの表面では、
O → 1/2O↑+2H+2e
の反応式で表される反応が生じて、酸素ガス(O)と水素イオン(H)が発生する。
このとき、容器10の第1の領域11内の水溶液中の陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が陰極の第1吸着電極1に吸着されて、処理前よりも硬度成分を減少させた機能水の一例としての酸性水が生成される。
一方、容器10の第2の領域12では、陽極となる第2吸着電極2から水溶液中に陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が放出されると共に、陰極となる対向電極3の第2部3bの表面では、
2HO+2e → H↑+2OH
の反応式で表される反応が生じて、水素ガス(H)と水酸化物イオン(OH)が発生する。
このとき、容器10の第2の領域12内の水溶液中に陽極の第2吸着電極2から陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が放出されて、処理前よりも硬度成分を増加させた機能水の一例としてのアルカリ性水が生成される。
上記第1,第2吸着電極1,2が水溶液中のイオンを吸着するのは、電場にしたがって荷電粒子が移動して、界面に正負の荷電粒子が対を形成して層状に並ぶという電気二重層理論による。
この後、第1,第2流量制御部21,22により、容器10の第1の領域11内の硬度成分を減少させた酸性水と第2の領域12内の硬度成分を増加させたアルカリ性水を配管L1,L2を介して別々に取り出す。
例えば、容器10内の第1の領域11と第2の領域12を横方向に配置している場合、第1の領域11と第2の領域12の容積が同じで流出流量を同じにして配管L1,L2を介して外部に夫々流出させることにより、隔壁4の絞り開口4aを介して容器10の第1の領域11と第2の領域12で生成した異なる機能水が混じり合うことなく、異なる機能水を別々に取り出すことが可能になる。
なお、図4では、第1吸着電極1に予め陰イオンが吸着され、第2吸着電極2に予め陽イオンが吸着されているものとしている(例えば、後述する図5の機能水生成により、第1吸着電極1に陰イオンが吸着し、第2吸着電極2に陽イオンが吸着する)。しかしながら、第2吸着電極2に陽イオンを吸着していない場合は、容器10の第2の領域12内の水溶液は、硬度変化のない機能水の一例としてのアルカリ性水となる。
そして、再び、第1流量制御部22により外部からの水溶液を容器10の第1の領域11内に注入させると共に、容器10の第1の領域11内から第2の領域12内に隔壁4の絞り開口4aを介して注入する。
次に、図5に示すように、切替スイッチSW1を切り替えて、第1直流電源E1の負極を対向電極3に接続し、第1直流電源E1の正極を第1吸着電極1に接続する。また、切替スイッチSW2を切り替えて、第2直流電源E2の負極を第2吸着電極2に接続し、第2直流電源E2の正極を対向電極3に接続する。
そうすると、図4とは逆に、容器10の第2の領域12では、陰極となる第2吸着電極1に水溶液中のCa2+,Mg2+などの陽イオン(図5ではCa2+のみを示す)が吸着されると共に、陽極となる対向電極3の第2部3bの表面では、酸素ガス(O)と水素イオン(H)が発生する。
このとき、容器10の第2の領域12内の水溶液中の陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が陰極の第2吸着電極2に吸着されて、処理前よりも硬度成分を減少させた機能水の一例としての酸性水が生成される。
一方、容器10の第1の領域11では、陽極となる第1吸着電極1から水溶液中に陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が放出されると共に、陰極となる対向電極3の第1部3aの表面では、水素ガス(H)と水酸化物イオン(OH)が発生する。
このとき、容器10の第1の領域11内の水溶液中に陽極の第1吸着電極1から陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が放出されて、処理前よりも硬度成分を増加させた機能水の一例としてのアルカリ性水が生成される。
このように、第1,第2吸着電極1,2の電圧の極性を切り替えて、図4の機能水生成と図5の機能水生成を交互に繰り返すことにより、2つの第1,第2の領域11,12で同時に異なる機能水を生成できる。
図4,図5に示すイオン濃度調整装置によれば、効率的に同一水溶液内で軟水と硬水を同時に生成したり酸性水とアルカリ性水を同時に生成したりできる。
この発明のイオン濃度調整装置は、第1吸着電極1と第2吸着電極2との間の電界の相互干渉を抑制でき、同一水溶液中で第1,第2吸着電極1,2の対極としての対向電極3を隔壁構造にすることなく、同一容器10内でHが生成される領域とOHが生成される領域を切り分けられる構造にしたものである。このように、対向電極3の水溶液に浸かっている部分を切り分けると共に、水溶液中において陽イオンおよび陰イオンの吸着および脱離が行われる領域も切り分け可能な構造にすることで、同一水溶液内で硬度の制御を同時に行ったりpHの制御を同時に行ったりすることができる。
従来のイオン濃度調整装置では、電極間に水の電気分解電圧以下の電圧で処理する必要があったのに対して、この発明のイオン濃度調整装置では、電極間に水の電気分解電圧以上の電圧を印加することができる。
また、電気二重層理論では、電極間の距離が同一であれば、電極間に印加した電圧が大きいほど処理時間を短くすることができる。このため、この発明のイオン濃度調整装置では、同一水溶液内で同時処理が可能となるため、処理中に水溶液を一時保持したり入れ替えたりするバッチ処理用のシステムを追加することなく、処理時間の短縮を行うことができる。
また、上記電圧印加手段(E1,E2,SW1,SW2)によって、第1吸着電極1と対向電極3との間に、対向電極3に対して相対的に正電圧または負電圧となるように電圧を印加するか、または、電圧を印加しないかを切り替える一方、第2吸着電極2と対向電極3との間に、対向電極3に対して相対的に正電圧または負電圧となるように電圧を印加するか、または、電圧を印加しないかを切り替えることによって、簡単な電圧制御で、pH変化のない軟水、pH変化のない硬水、硬度が下がった酸性水、硬度変化のない酸性水、硬度変化のないアルカリ性水、硬度が上がったアルカリ性水を生成することが可能になる。
また、上記対向電極3の第1部3aの一面が第1吸着電極1に対向すると共に、対向電極3の第2部3bの一面が第2吸着電極2に対向しており、対向電極3の第1部3aの他面が第2吸着電極2に対向していない一方、対向電極3の第2部3bの他面が第1吸着電極1に対向していないので、第1吸着電極1と第2吸着電極2との間の電界の相互干渉を確実に防止することができる。
また、上記対向電極は、別体の第1部と第2部からなり、第1部と第2部との間で電気的に接続されていてもよい。この場合、対向電極の製作や配置などの自由度が高くなる。
また、上記容器10内の第1の領域11と第2の領域12との間に設けられたイオン移動抑制手段としての絞り開口4aを有する隔壁4によって、第1の領域11内の水溶液中のイオンが第2の領域12内の水溶液中に移動することを抑制すると共に、第2の領域12内の水溶液中のイオンが第1の領域11内の水溶液中に移動することを抑制する。これにより、容器10内の第1の領域11と第2の領域12で生成した異なる機能水のイオンが混合しあって、機能水の性質が劣化してしまうことを抑制することが可能になる。
また、上記容器10内の第1の領域11と第2の領域12との間に設けられた絞り開口4aを有する隔壁4をイオン移動抑制手段として用いることによって、簡単な構成で第1の領域11と第2の領域12との間でイオンの移動を抑制できる。
また、上記第1吸着電極1と第2吸着電極2を対向電極3の中心点に対して点対称に配置することによって、第1吸着電極1と第2吸着電極2との間で互いの電界が直接影響し合うことを抑制することができる。
〔4.硬度成分を減少させた酸性水と硬度成分を増加させたアルカリ性水を交互に生成〕
図6は上記イオン濃度調整装置において硬度成分を減少させた酸性水を生成するときの反応を説明するための模式図を示している。
図6において、第1流量制御部22により外部からの水溶液を容器10の第1の領域11内に注入させると共に、容器10の第1の領域11内から第2の領域12内に隔壁4の絞り開口4aを介して注入する。このとき、第2流量制御部22は、配管L2を閉じている。
次に、切替スイッチSW1を切り替えて、第1直流電源E1の正極を対向電極3に接続し、第1直流電源E1の負極を第1吸着電極1に接続する。また、切替スイッチSW2を切り替えて、第2直流電源E2の負極を第2吸着電極2に接続し、第2直流電源E2の正極を対向電極3に接続する。ここで、第1直流電源E1により第1吸着電極1と対向電極3との間に印加する電圧は、対向電極3側のみで水の電気分解が起きる電圧とすると共に、第2直流電源E2により第2吸着電極2と対向電極3との間に印加する電圧は、対向電極3側のみで水の電気分解が生じる電圧よりも低い電圧としている。
そうすると、容器10の第1の領域11および第2の領域12では、陰極となる第1,第2吸着電極1,2に水溶液中のCa2+,Mg2+などの陽イオン(図6ではCa2+のみを示す)が吸着されると共に、陽極となる対向電極3の第1部3aおよび第2部3bの各表面では、酸素ガス(O)と水素イオン(H)が発生する。
このとき、容器10の第1の領域11内および第2の領域12内の水溶液中の陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が陰極の第1,第2吸着電極1,2に吸着されて、機能水の一例としての硬度成分を減少させた酸性水が生成される。
この後、第1,第2流量制御部21,22により、容器10の第1の領域11内および第2の領域12内の硬度成分を減少させた酸性水を配管L1,L2を介して取り出す。
例えば、容器10の第1の領域11と第2の領域12を、第1の領域11を上側にして縦方向に配置している場合、水の高低差を用いて開閉弁などの制御により、隔壁4の絞り開口4aを介して容器10内の第1の領域11と第2の領域12のうちの上方の側から下方の側に流すことが可能になる。
そして、再び、第1流量制御部22により外部からの水溶液を容器10の第1の領域11内に注入させると共に、容器10の第1の領域11内から第2の領域12内に隔壁4の絞り開口4aを介して注入する。
次に、図7に示すように、切替スイッチSW1を切り替えて、第1直流電源E1の負極を対向電極3に接続し、第1直流電源E1の正極を第1吸着電極1に接続する。また、切替スイッチSW2を切り替えて、第2直流電源E2の正極を第2吸着電極2に接続し、第2直流電源E2の負極を対向電極3に接続する。
そうすると、容器10の第1の領域11および第2の領域12では、陽極となる第1,第2吸着電極1,2から水溶液中に陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が放出されると共に、陰極となる対向電極3の第1部3aと第2部3bの各表面では、水素ガス(H)と水酸化物イオン(OH)が発生する。
このとき、容器10の第1の領域11内および第2の領域12内の水溶液中に陽極の第1,第2吸着電極1,2から陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が放出されて、機能水の一例としての硬度成分を増加させたアルカリ性水が生成される。
このように、第1,第2吸着電極1,2の電圧の極性を切り替えて、図5の硬度成分を減少させた酸性水の生成と図6の硬度成分を増加させたアルカリ性水の生成を交互に繰り返すことにより異なる機能水を交互に生成できる。
なお、図8は上記イオン濃度調整装置において硬度変化のないアルカリ性水を生成するときの反応を説明するための模式図である。
図8に示すように、第1,第2吸着電極1,2に陽イオンが吸着していない状態で、図7と同様に、第1直流電源E1の負極を対向電極3に接続し、第1直流電源E1の正極を第1吸着電極1に接続すると共に、第2直流電源E2の正極を第2吸着電極2に接続し、第2直流電源E2の負極を対向電極3に接続する。
この場合、容器10の第1の領域11内および第2の領域12内の水溶液中に陽極の第1,第2吸着電極1,2から陽イオン(Ca2+,Mg2+など)が放出されないので、容器10の第1の領域11内および第2の領域12内では、硬度変化のないアルカリ性水が生成される。
図6〜図8において、容器10内の第1の領域11または第2の領域12の一方に外部から水溶液が流入した後、隔壁4の絞り開口4aを介して第1の領域11または第2の領域12の他方から外部に流出するように流路を形成して、第1,第2流量制御部21,22により水溶液の流量を制御することによって、容器10内の第1の領域11内で生成された機能水と第2の領域12で生成された機能水を外部に容易に取り出すことができる。
この発明のイオン濃度調整装置では、一つの容器を、容積が約1/2ずつの第1,第2の領域に区画されるように、容器をくびれさせるか、または、絞り開口を有する隔壁を設けて、対極である対向電極が容器の異なる第1,第2の領域にそれぞれ同じ程度の体積または表面積になるように設置する。そうして、容器のくびれ部分の開口部または絞り開口は、水溶液がある程度自由に交換できるサイズとするが、HまたはOHの各イオンの移動が短絡的に行われないようにする。
このような構造の容器の第1,第2の領域内に第1,第2吸着電極を夫々設置して、対向電極が中間電圧になるようにして、第1,第2吸着電極間に正電圧と負電圧を切り替えることができる電源を備えた構成のイオン濃度調整装置とする。このような構成のイオン濃度調整装置は、バッチ処理を行うことも可能であるが、容器の第1,第2の領域間のくびれの部分または絞り開口の部分で流量を調整することによって、容器内の第1,第2の領域において水溶液を適切に滞留するように設計して、フロー処理を行うことができる。
上記図4,図5では、酸性硬水とアルカリ性軟水を生成するイオン濃度調整装置について説明したが、酸性硬水は、図6で生成された硬度成分を減少させた酸性水に対して吸着電極と中間電極との間に電気分解を生じない逆極性の電圧を印加することにより、陽極となった第1,第2吸着電極から陽イオンを放出させて、酸性硬水を生成することができる。
また、アルカリ性軟水は、図7で生成された硬度成分を増加させたアルカリ性水に対して第1,第2吸着電極と対向電極との間に電気分解を生じない逆極性の電圧を印加することにより、陰極となった第1,第2吸着電極に陽イオンを吸着させて、アルカリ性軟水を生成することができる。
この発明において、機能水とは、電解質を含む水溶液に電流を流すことで起きる電気化学反応によって有用な機能を獲得した水のことである。
例えば、硬度成分を減少させた酸性水は、除菌、殺菌、ガラスコップのウォータースポットの除去、スケール成分の除去に有用である。また、硬度変化のない酸性水は、除菌、殺菌に有用である。また、硬度変化のないアルカリ性水は、油脂分の洗浄、タンパク質の分解、でんぷんの膨潤作用に有効である。また、硬度成分を増加させたアルカリ性水は、タンパク質の分解に好適であるので、洗濯機の洗濯物や食洗機の食器などのタンパク汚れを除去するのに有用である。
また、上記実施の形態では、第1吸着電極1と第2吸着電極2を対向電極3の中心点に対して点対称に配置したイオン濃度調整装置について説明したが、例えば、対向電極の一面側の1/2が第1吸着電極に対向し、同一面側の他の1/2が第1吸着電極に対向していてもよく、第1部の一面が第1吸着電極に対向すると共に、対向電極の第2部の一面が第2吸着電極に対向していればよい。
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
1…第1吸着電極
2…第2吸着電極
3…対向電極
4…隔壁
4a…絞り開口
10…容器
11…第1の領域
12…第2の領域
21…第1流量制御部
22…第2流量制御部
E1…第1直流電源
E2…第2直流電源
SW1,SW2…切替スイッチ

Claims (10)

  1. 水溶液が収容される容器と、
    上記容器内に配置され、上記水溶液中のイオンの吸着および脱離が可能な第1吸着電極と、
    上記容器内に上記第1吸着電極と間隔をあけて配置され、上記水溶液中のイオンの吸着および脱離が可能な第2吸着電極と、
    上記容器内に上記第1,第2吸着電極と対向するように配置された対向電極と
    を備え、
    上記対向電極の一方側が上記第1吸着電極に対向すると共に、
    上記対向電極の他方側が上記第2吸着電極に対向していることを特徴とするイオン濃度調整装置。
  2. 請求項1に記載のイオン濃度調整装置において、
    上記第1吸着電極と上記対向電極との間に、上記対向電極に対して相対的に正電圧または負電圧となるように電圧を印加するか、または、電圧を印加しないかを切り替える一方、上記第2吸着電極と上記対向電極との間に、上記対向電極に対して相対的に正電圧または負電圧となるように電圧を印加するか、または、電圧を印加しないかを切り替える電圧印加手段を有することを特徴とするイオン濃度調整装置。
  3. 請求項1または2に記載のイオン濃度調整装置において、
    上記対向電極の一方側の一面が上記第1吸着電極に対向すると共に、
    上記対向電極の他方側の一面が上記第2吸着電極に対向しており、
    上記対向電極の上記一方側の他面が上記第2吸着電極に対向していない一方、
    上記対向電極の上記他方側の他面が上記第1吸着電極に対向していないことを特徴とするイオン濃度調整装置。
  4. 請求項1から3までのいずれか1つに記載のイオン濃度調整装置において、
    上記対向電極の上記一方側と上記他方側は、別体であって、上記一方側と上記他方側との間で電気的に接続されていることを特徴とするイオン濃度調整装置。
  5. 請求項1から4までのいずれか1つに記載のイオン濃度調整装置において、
    上記容器内は、上記第1吸着電極と上記対向電極の上記一方側とが対向する第1の領域と、上記第2吸着電極と上記対向電極の上記他方側とが対向する第2の領域とに区画され、
    上記容器内の上記第1の領域と上記第2の領域との間に設けられ、上記第1の領域内の上記水溶液中のイオンが上記第2の領域内の上記水溶液中に移動することを抑制すると共に、上記第2の領域内の上記水溶液中のイオンが上記第1の領域内の上記水溶液中に移動することを抑制するイオン移動抑制手段を設けたことを特徴とするイオン濃度調整装置。
  6. 請求項5に記載のイオン濃度調整装置において、
    上記容器内の上記第1の領域または上記第2の領域の一方に外部から水溶液が流入した後、上記イオン移動抑制手段を介して上記第1の領域または上記第2の領域の他方から外部に流出するように形成された流路と、
    上記流路に流れる上記水溶液の流量を制御する流量制御手段と
    を備えたことを特徴とするイオン濃度調整装置。
  7. 請求項5または6に記載のイオン濃度調整装置において、
    上記イオン移動抑制手段は、上記容器内の上記第1の領域と上記第2の領域との間に設けられた絞り開口を有する隔壁であることを特徴とするイオン濃度調整装置。
  8. 請求項1から7までのいずれか1つに記載のイオン濃度調整装置において、
    上記第1吸着電極と上記第2吸着電極は、上記対向電極の中心点に対して点対称に配置されていることを特徴とするイオン濃度調整装置。
  9. 請求項5から8までのいずれか1つに記載のイオン濃度調整装置において、
    上記第1吸着電極と上記第2吸着電極は、上記対向電極に対して上下方向に配置されていることを特徴とするイオン濃度調整装置。
  10. 請求項5から8までのいずれか1つに記載のイオン濃度調整装置において、
    上記第1吸着電極と上記第2吸着電極は、上記対向電極に対して横方向に配置されていることを特徴とするイオン濃度調整装置。
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