以下、本発明を適用したエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明を適用したエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法は、亜酸化窒素(N2O、一酸化二窒素とも言う。)の分解により発生する分解熱から電力や動力といったエネルギーを取り出すものであり、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能としたものである。
亜酸化窒素は、常温、大気圧下で安定したガスである。一方、その温度が約500℃以上になると、発熱しながら自己分解(熱分解)する。このように亜酸化窒素の分解は、発熱を伴ったもの(発熱反応)である。そして、この分解に伴う温度上昇(分解熱)によって高温化した亜酸化窒素の分解ガスは約1600℃にもなることから、亜酸化窒素は高いエネルギーを内蔵した物質と言える。
また、亜酸化窒素は、触媒を用いて分解したときに、その分解開始温度を例えば350〜400℃程度に引き下げることができる。そして、亜酸化窒素の分解後は、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。また、触媒を用いて分解された亜酸化窒素は、発熱しながら窒素(N2)と酸素(O2)との混合ガス(分解ガス)となる。
本発明者らは、このような知見に基づいて、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用することで、上述した地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用が可能であることを見出し、更に鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
以下、本発明の実施形態として図1に示すエネルギー取出装置及びこれを用いたエネルギー取出方法について説明する。なお、図1は、本発明を適用したエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法を説明するための模式図である。
本発明は、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱からエネルギーを取り出すものであり、特に、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用することで、電力や動力といったエネルギーを効率良く取り出すことを可能としたものである。
具体的に、本発明を適用したエネルギー取出装置は、図1に示すように、温度差を電力又は動力に変換する変換部(変換手段)1と、変換部1の高温側1aを加熱する加熱部(加熱手段)2と、変換部1の低温側1bを冷却する冷却部(冷却手段)3と、亜酸化窒素を分解する亜酸化窒素分解用触媒(以下、単に触媒という。)4が配置された分解反応部5と、亜酸化窒素が充填された高圧ガス容器6と、高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)を冷却部3に供給する第1の供給ライン7と、冷却部3から排出された亜酸化窒素ガスを分解反応部5に供給する第2の供給ライン8と、分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)を加熱部2に供給する第3の供給ライン9と、加熱部2から分解ガスを排出する排出ライン10とを概略備えている。
変換部1には、例えば、温度差(熱エネルギー)を電力(電気エネルギー)に変換する熱電変換素子や、温度差(熱エネルギー)を動力(運動エネルギー)に変換するスターリングエンジン、ヒートパイプタービン、熱電変換素子とスターリングエンジンとを有する構成体などを用いることができる。
この変換部1では、加熱部2に接する高温側1aの温度(tH)と、冷却部3に接する低温側1bの温度(tL)との温度差(tH−tL)が大きいほど、大きな出力(W)を得ることが可能である。
そこで、本発明では、分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解する。そして、この分解に伴う温度上昇(分解熱)によって高温化した亜酸化窒素の分解ガスを第3の供給ライン9を介して加熱部2に供給する。このとき、加熱部2では、高温の分解ガスが内部を通過する間に、変換部1の高温側1aとの間で熱交換が行われる。これにより、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、上記変換部1の高温側1aを加熱することができる。
また、本発明では、高圧ガス容器6から亜酸化窒素ガスが放出されて断熱膨張する。そして、この断熱膨張に伴う温度降下(冷却熱)によって低温化した亜酸化窒素ガスを第1の供給ライン7を介して冷却部3に供給する。このとき、冷却部3では、低温の亜酸化窒素ガスが内部を通過する間に、変換部1の低温側1bとの間で熱交換が行われる。これにより、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記変換部1の低温側1bを冷却することができる。
以上のようにして、本発明では、上記変換部1の高温側1aと低温側1bとの間に大きな温度差を発生させることが可能となっている。特に、本発明は、1種類のガスから2水準の温度域(温度域間の温度差)を得ることを特徴としており、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな出力を得ることが可能となっている。
加熱部2は、入側に第3の供給ライン9と、出側に排出ライン10とが接続されて、その内部を分解ガスが通過する間に、変換部1の高温側1aとの間で熱交換を行う高温側の熱交換器である。また、この加熱部2には、その用途に応じて様々なタイプ・大きさの熱交換器を用いることが可能である。例えば、熱交換器の種類としては、チューブ式(二重管式、多管式(シェル&チューブ式)、スパイラル式等)や、プレート式、再生式などを挙げることができ、これらの中から、その用途に合わせて適宜選択して使用すればよい。
冷却部3は、入側に第1の供給ライン7と、出側に第2の供給ライン8とが接続されて、その内部を亜酸化窒素ガスが通過する間に、変換部1の低温側1bとの間で熱交換を行う低温側の熱交換器である。また、この冷却部3には、その用途に応じて様々なタイプ・大きさの熱交換器を用いることが可能である。例えば、熱交換器の種類としては、チューブ式(二重管式、多管式(シェル&チューブ式)、スパイラル式等)や、プレート式、再生式などを挙げることができ、これらの中から、その用途に合わせて適宜選択して使用すればよい。
分解反応部5は、その内側に触媒4を収納した本体部(分解反応室)5aを備え、この本体部5aの一端側に亜酸化窒素ガスが導入されるガス導入口5bと、この本体部5aの他端側に分解ガスが排出されるガス排出口5cとが設けられた構造を有している。
なお、分解反応部5は、耐熱性及び耐酸化性に優れた材質のものを使用することが好ましく、特に、分解ガスによって高温高圧に晒されるガス排出口5c側の部材等については、高温高圧下での熱疲労や酸化等に十分耐え得るものを使用することが好ましい。そのような材料としては、例えばステンレス鋼やNi基合金、Co基合金などを挙げることができる。また、セラミックスやシリコンカーバイト(SiC)などを遮熱材として用いることができる。さらに、これらの複合材料を用いてもよい。また、分解反応部5は、水冷や空冷などによって強制的に冷却する機構を備えたものであってもよい。
触媒4には、広い温度域(特に低温域)で亜酸化窒素を効率良く分解することができ、なお且つ、高温下での熱疲労や酸化等に十分耐え得るものを使用することが好ましい。このような亜酸化窒素の分解効率が高く、耐熱性及び耐酸化性に優れた触媒として、例えば後述する「特開2002−153734号公報」や「特開2002−253967号公報」に開示されたものなどを使用することができる。
具体的には、以下の〔1〕〜〔6〕に示す何れかの触媒を用いることができる。
〔1〕 アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及びロジウム(Rh)が担体に担持されている触媒。
〔2〕 マグネシウム(Mg)及びロジウム(Rh)がアルミナ(Al2O3)担体に担持されている触媒。
〔3〕 アルミニウム(Al)の少なくとも一部とマグネシウム(Mg)により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体に、ロジウム(Rh)が担持されている触媒。〔4〕 亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、アルミニウム(Al)及びロジウム(Rh)が担体に担持されている触媒。
〔5〕 亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属及びロジウム(Rh)がアルミナ(Al2O3)担体に担持されている触媒。
〔6〕 アルミニウム(Al)の少なくとも一部と、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体にロジウム(Rh)が担持されている触媒。
また、本発明では、シリカ(SiO2)、シリカアルミナ(SiO2-Al2O3)から選ばれる担体に、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)からなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒などを好適に用いることができる。
このような触媒4を用いることによって、亜酸化窒素を100%に近い分解効率で窒素と酸素に分解することが可能である。特に、シリカ(SiO2)又はシリカアルミナ(SiO2-Al2O3)からなる担体にロジウム(Rh)を担持した触媒を用いた場合には、一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)などといったNOxガスの発生がほとんど無く、亜酸化窒素をほぼ完全に窒素と酸素に分解することが可能である。
さらに、触媒4には、アルミナをウォッシュコートしたコージェライト及びメタルハニカム又は多孔質セラミックスの担体に、窒素酸化物の分解に有効なロジウムを、質量分率で2〜3%含浸させたものや、アルミナやコージェライト又は炭化珪素のセラミックス製ハニカム構造体に、アルミナからなる担体層を形成させ、この担体層に窒素酸化物の分解に有効なロジウムなどが担持されたものなどを例示することができるが、これらに必ずしも限定されるものではない。
また、その他の触媒4としては、例えばアジピン酸の製造工程や硝酸の製造工程などで排出される排ガス中の亜酸化窒素を分解除去する際に使用される触媒なども用いることができる。このような触媒としては、例えば、MAl2O3(Mは、Pd、Cu,Cu/Mg,Cu/Zn,Cu/Zn/Mgの何れかである。)で表され、Mを10〜30質量%の割合で含むアルミナ担体に、貴金属を0.1〜2質量%の割合で担時させたものを挙げることができる。
触媒4の形状については、特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、ペレット状、ハニカム状、多孔質状、粉砕状、メッシュ状、板状、シート状のものなど、任意の形状の中から最適な形状及びサイズのものを適宜選択して使用すればよい。
また、触媒4の本体部5aへの充填方法や、触媒4に合わせた本体部5aの形状等についても、上記分解反応部5の設計に合わせて、任意に実施することができる。
分解反応部5は、触媒4の経時的な劣化に合わせて、触媒4を(場合によっては本体部5aごと)交換可能な構成としてもよい。また、性能が低下した触媒4から貴金属成分を抽出精製して回収した後、この回収された貴金属を新しい担体に担時させたものを再生触媒として使用することも可能である。
分解反応部5には、上記触媒4を加熱するヒータ(予熱手段)11が設けられている。
このヒータ11は、亜酸化窒素の分解を開始する前、すなわち分解反応部5に亜酸化窒素ガスを供給する前に、亜酸化窒素ガスが分解可能な温度(分解開始温度)まで触媒4を予め加熱(予熱)するためのものである。
例えば図1に示すヒータ11は、本体部5aの内側に触媒4の周囲に接触した状態で配置されている。また、ヒータ11は、電力供給ライン12を介して電源(図示せず。)と接続されており、この電源からの電力供給によって発熱することが可能となっている。また、ヒータ11としては、抵抗加熱方式や誘導加熱方式のものなどを使用することができる。
なお、触媒4の加熱方法については、このような本体部5aの内側に配置されたヒータ11によって触媒4を加熱する方法に限らず、本体部5aの外側に配置されたヒータ11によって触媒4を加熱する方法を用いることも可能である。この場合、ヒータ11によって本体部5aを加熱し、この本体部5aからの輻射や熱伝導等によって触媒4を加熱することが可能である。
また、触媒4の加熱方法としては、触媒4に電力を直接供給することによって当該触媒4を加熱する方法を用いることも可能である。それ以外にも、触媒4の加熱方法については、特に限定されるものではなく、触媒4を加熱する方法の中から適宜選択して用いることができる。
高圧ガス容器6は、亜酸化窒素ガスを供給する亜酸化窒素ガス供給源であり、この高圧ガス容器6には、例えば、ボンベ、タンク、カードルなどを用いることができる。そして、この高圧ガス容器6は、亜酸化窒素ガス開閉弁13を介して上記第1の供給ライン7と接続されている。
亜酸化窒素ガス開閉弁13は、第1の供給ライン7を開閉し、高圧ガス容器6からの亜酸化窒素ガスの供給/遮断を行うためのもの(開閉手段)である。また、亜酸化窒素ガス開閉弁13には、第1の供給ライン7を開閉するだけでなく、その開度(圧力等を含む。)が調整可能なものなどを用いることができる。
さらに、亜酸化窒素ガス開閉弁13には、その流量制御が可能な流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いることもできる。そして、この亜酸化窒素ガス開閉弁13は、後述する制御部17と電気的に接続されており、この制御部17によって亜酸化窒素ガス開閉弁13を駆動制御することが可能となっている。
なお、この亜酸化窒素ガス開閉弁13については、上述した流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いた構成に限らず、第1の供給ライン7を開閉するバルブ(開閉弁)とは別に、第1の供給ライン7内を流れる亜酸化窒素ガスの流量を調整するレギュレータ(流量調整器)等が設けられた構成とすることも可能である。
第1の供給ライン7は、その一端側が高圧ガス容器6に接続され、その他端側が冷却部3の入側に接続された配管(流路)である。第2の供給ライン8は、その一端側が冷却部3の出側に接続され、その他端側が分解反応部5の入側(ガス導入口5b)に接続された配管(流路)である。そして、これら第1及び第2の供給ライン7,8は、高圧ガス容器6から放出された亜酸化窒素ガス(N2O)を分解反応部5に供給する亜酸化窒素ガス供給ライン(亜酸化窒素ガス供給手段)を構成している。
第3の供給ライン9は、その一端側が分解反応部5の出側(ガス排出口5c)に接続され、その他端側が加熱部2の入側に接続された配管(流路)である。排出ライン10は、その一端側が加熱部2の出側に接続された配管(流路)である。
本発明は、上記分解反応部5において、上記触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせるために、上記分解反応部5に窒素ガス(N2)を供給する窒素ガス供給ライン(窒素ガス供給手段)14と、上記分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量を調整する流量調整部(流量調整手段)15と、上記触媒4の温度を測定する温度測定部(温度測定手段)16と、各部の制御を行う制御部(制御手段)17とを備えている。
窒素ガス供給ライン14は、その一端側が上記第1の供給ライン7に接続された配管(流路)であり、その他端側には、窒素ガスが充填された高圧ガス容器18が接続されている。また、窒素ガス供給ライン14は、上記第1の供給ライン7内を流れる亜酸化窒素ガス中に窒素ガスを導入(添加)することによって、この亜酸化窒素ガスの濃度を調整する濃度調整手段としての機能を有している。
高圧ガス容器18は、窒素ガスを供給する窒素ガス供給源であり、この高圧ガス容器18には、例えば、ボンベ、タンク、カードルなどを用いることができる。そして、この高圧ガス容器18は、窒素ガス開閉弁19を介して窒素ガス供給ライン14と接続されている。
窒素ガス開閉弁19は、窒素ガス供給ライン14を開閉し、高圧ガス容器18からの窒素ガスの供給/遮断を行うためのもの(開閉手段)である。また、窒素ガス開閉弁19には、窒素ガス供給ライン14を開閉するだけでなく、その開度(圧力等を含む。)が調整可能なものなどを用いることができる。
さらに、窒素ガス開閉弁19には、第1の供給ライン7に供給される窒素ガスの供給量を調整するため、その流量制御が可能な流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いることが好ましい。そして、この窒素ガス開閉弁19は、制御部17と電気的に接続されており、この制御部17によって窒素ガス開閉弁19を駆動制御することが可能となっている。
なお、この窒素ガス開閉弁19については、上述した流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いた構成に限らず、窒素ガス供給ライン14を開閉するバルブ(開閉弁)とは別に、窒素ガス供給ライン14内を流れる窒素ガスの流量を調整するレギュレータ(流量調整器)等が設けられた構成とすることも可能である。
流量調整部15は、上記分解反応部5のガス導入口5bと第2の供給ライン8との間に配置されている。この流量調整部15は、上記分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの流量(導入量)を調整可能なものであればよく、例えばレギュレータ(流量調整器)や流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)などを用いることができる。そして、この流量調整部15は、制御部17と電気的に接続されており、この制御部17によって流量調整部15を駆動制御することが可能となっている。
なお、流量調整部15では、この流量調整部15内を流れる亜酸化窒素ガスの流量を計測する流量計(流量計測手段)を設けて、又は、このような流量計付きのレギュレータやコントロールバルブ等を用いて、上記分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの流量調整を精度良く行うことも可能である。
温度測定部16は、上記触媒4の温度を直接又は間接的に測定するものであり、制御部17と電気的に接続されて、この制御部17へと測定結果(測定データ)を出力する。
例えば図1に示す温度測定部16は、分解反応部5の本体部5aに取り付けられて、触媒4に接触しながら、この触媒4の下流側の温度を測定することが可能となっている。
触媒4を用いた亜酸化窒素の分解では、この触媒4中を亜酸化窒素が通過する間に亜酸化窒素が分解されるため、一般的に触媒4の上流(ガス導入口5b)側の温度よりも下流(ガス排出口5c)側の温度の方が高くなる。したがって、分解ガスによって高温高圧に晒される触媒4やガス排出口5c側の部材等の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)、特に亜酸化窒素は分解ガス中に酸素を含むことから、この酸素との反応(酸化)を防ぐ上で、上述した触媒4の下流(ガス排出口5c)側の温度を測定することが好ましい。
一方、温度測定部16は、上述した図1に示す構成に限らず、触媒4の上流(ガス導入口5b)側の温度を測定する構成としてもよい。これは、亜酸化窒素ガスの分解を開始する前に、上記ヒータ11によって加熱された触媒4が上記分解開始温度まで加熱されたか否かを検出する上で好ましい。そして、この温度測定部16による測定結果に基づいて、触媒4が上記分解開始温度まで加熱されたときに、上記ヒータ11による加熱を停止すればよい。これにより、上記ヒータ11による加熱を効率良く行うことが可能である。
なお、触媒4の温度を測定する箇所については、上記の箇所に必ずしも限定されるものではなく、例えば、触媒4の平均的な温度を測定するため、触媒4の中央部分の温度を測定したり、これら複数箇所の温度を別々に測定したりすることも可能である。
また、温度測定部16は、触媒4の温度を直接測定する構成に限らず、例えば触媒4を収納した本体部5aの温度を測定することによって、触媒4の温度を間接的に測定することも可能である。
また、温度測定部16は、上述した触媒4の温度を直接又は間接的に測定する構成に限らず、上記分解反応部5のガス排出口5cから排出される分解ガスの温度を直接又は間接的に測定する構成としてもよい。さらに、これら触媒4と分解ガスとの両方の温度を測定する構成としてもよい。
なお、温度測定部16については、例えば熱電対を使用した温度計や、放射温度計等の非接触式の温度計、データロガーなどを用いることができるが、これらのものに必ずしも限定されるものではなく、それ以外にも触媒4や分解ガスの温度が測定可能なものの中から適宜選択して使用することができる。
制御部17は、例えば、コンピュータ(CPU)等からなり、温度測定部16からの測定結果(測定データ)に基づいて、内部に記録された制御プログラムに従って、上述した亜酸化窒素ガス開閉弁13、窒素ガス開閉弁19及び流量調整部15の駆動を制御することが可能となっている。
具体的に、上記分解反応部5において、上記触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせるためには、分解ガスの温度を制御することが重要となる。
すなわち、分解ガスの温度が高くなり過ぎると、上述したように分解ガスによって高温高圧に晒される触媒4やガス排出口5c側の部材等の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)を招く可能性がある。一方、分解ガスの温度が低くなり過ぎると、亜酸化窒素の自己分解を継続させることが困難となる可能性がある。また、亜酸化窒素が分解されずに分解反応部5のガス排出口5cから排出されたり、場合によっては、上述したNOxガスが発生したりする。これらのガスは、上述した地球温暖化や大気汚染の原因ともなる。
したがって、制御部17は、このような問題が生じることがないよう、上記分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素の分解が継続される範囲で、分解ガスの温度制御を行うことが好ましい。
ここで、分解ガスの温度を制御する方法としては、(1)分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量を調整する方法と、(2)亜酸化窒素ガスの濃度を調整する方法とを挙げることができる。
このうち、上記(1)を用いた方法では、上記温度測定部16からの測定結果に基づいて、上記制御部17が流量調整部15を制御し、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量調整を行う。
具体的に、分解ガスの温度を上げる場合には、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量を相対的に上げる制御を行う。これにより、分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの導入量を増やし、この分解反応部5で分解される亜酸化窒素ガスの分解量(分解熱)の増加により分解ガスの温度を相対的に上げることが可能である。
一方、分解ガスの温度を下げる場合には、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量を相対的に下げる制御を行う。これにより、分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの導入量を減らし、この分解反応部5で分解される亜酸化窒素ガスの分解量(分解熱)の減少により分解ガスの温度を相対的に下げることが可能である。
以上のようにして、本発明では、上記制御部17により分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることが可能である。
一方、上記(2)を用いた方法では、上記温度測定部16からの測定結果に基づいて、上記制御部17が上記窒素ガス開閉弁19を制御し、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7に供給される窒素ガスの流量調整を行う。
具体的に、分解ガスの温度を上げる場合には、亜酸化窒素ガスの濃度を相対的に上げる制御を行う。すなわち、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7に供給される窒素ガスの流量を相対的に下げる、又は、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7への窒素ガスの供給を停止する制御を行う。これにより、第1の供給ライン7内を流れる亜酸化窒素ガスへの窒素ガスの添加を止める又はその添加量を少なくして、この亜酸化窒素ガスの濃度を相対的に高くすることができる。そして、これに伴って分解反応部5で分解される亜酸化窒素ガスの分解量(分解熱)が増加することにより分解ガスの温度を相対的に上げることが可能である。
一方、分解ガスの温度を下げる場合には、亜酸化窒素ガスの濃度を相対的に下げる制御を行う。すなわち、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7に供給される窒素ガスの流量を相対的に上げる、又は、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7への窒素ガスの供給を開始する制御を行う。これにより、第1の供給ライン7内を流れる亜酸化窒素ガスに窒素ガスを添加する又はその添加量を増やして、この亜酸化窒素ガスを窒素ガスで希釈しながら、亜酸化窒素ガスの濃度を相対的に低くすることができる。そして、これに伴って分解反応部5で分解される亜酸化窒素ガスの分解量(分解熱)が減少することにより分解ガスの温度を相対的に下げることが可能である。
なお、上記(2)を用いた方法では、上述した窒素ガス以外にも、例えばヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)などの不活性ガスや、空気(乾燥空気を含む。)等を亜酸化窒素ガス中に添加することによって、この亜酸化窒素ガスの濃度を調整することも可能である。
以上のようにして、本発明では、分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることが可能である。
なお、本発明では、上記(1),(2)を用いた方法を組み合わせて、上述した分解ガスの温度制御を行うことも可能である。そして、これら上記(1),(2)を用いた方法では、上述した分解ガスの温度制御を簡便な構成で、なお且つ、安定的に行うことが可能である。一方、本発明では、上記(1),(2)を用いた方法に必ずしも限定されるものではなく、それ以外の方法を用いて、分解ガスの温度制御を行ってもよい。
また、本発明では、上記分解ガス中のNOx濃度を計測するNOx計(NOx計測手段)を設けてもよい。この場合、上記分解ガス中に含まれる未分解の亜酸化窒素(N2O)や、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)などといったNOxガスの濃度を計測することで、上述した分解ガスの温度制御を精度良く行うことが可能である。
さらに、本発明では、分解ガス中に含まれるNOxを除去する手段(NOx除去手段)を設けることも可能である。NOx除去手段としては、例えば、NOxを含む分解ガス中にアンモニア(NH3)を添加し、脱硝用触媒によりアンモニアとNOxとを選択的に反応(還元)させて、水(H2O)と窒素(N2)とに分解する脱硝装置などを用いることができる。なお、脱硝用触媒については、従来公知のものの中から最適なものを選択して使用すればよい。また、NOx除去手段としては、分解ガス中に含まれるNOxを直接分解可能なNOx分解用触媒を用いてもよい。
また、上記分解反応部5において、上記触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を停止する場合は、上記分解反応部5への亜酸化窒素ガスの供給を停止した後に、上記分解反応部5に窒素ガスを供給することが好ましい。
これは、上記分解反応部5への亜酸化窒素ガスの供給を停止した直後は、触媒4内に分解ガスが滞留しており、この分解ガスに含まれる酸素によって触媒4が劣化してしまう虞があるためである。
この場合、制御部17は、上記亜酸化窒素ガス開閉弁13を閉塞する制御を行うことによって、上記分解反応部5への亜酸化窒素ガスの供給を停止し、上記窒素ガス供給ライン14から供給される窒素ガスのみを上記分解反応部5に導入させる。
これにより、上記分解反応部5に導入された窒素ガスが、触媒4内に滞留した分解ガスを押し出し、この触媒4内に滞留した分解ガスを除去することができる。そして、制御部17は、上記分解反応部5に一定の時間、すなわち触媒4内に滞留した分解ガスを除去するのに十分な時間だけ窒素ガスを導入した後、上記窒素ガス開閉弁19を閉塞する制御を行い、上記分解反応部5への窒素ガスの供給を停止する。
これにより、触媒4の酸素による劣化を防ぐことができ、この触媒4の寿命を延ばすことができる。また、上述した触媒4を交換する頻度を減らす(交換サイクルを延長する)ことが可能である。さらに、この方法を用いた場合、亜酸化窒素ガスの分解を一時停止させた後に、亜酸化窒素ガスの分解を容易に再開することが可能である。
なお、上述した亜酸化窒素ガスの分解を停止させる場合は、上記窒素ガス以外にも、例えばHe、Ne、Xe、Ar、Krなどの不活性ガスや、空気(乾燥空気を含む。)等を分解反応部5に導入することも可能である。
ここで、図2に示すフローチャートを参照しながら、上記図1に示すエネルギー取出装置における具体的な動作(制御方法)の一例について説明する。
上記図1に示すエネルギー取出装置では、先ず、ステップS101において、亜酸化窒素の分解を開始する前に、ヒータ11を駆動し、触媒4を加熱(予熱)する。
次に、ステップS102において、温度測定部16が測定した触媒4の温度に基づいて、制御部17が、分解開始温度まで触媒4が加熱されたか否かの判定を行う。そして、触媒4が分解開始温度まで加熱されたと判定された場合には、ステップS103へと進み、このステップS103において、ヒータ11の駆動を停止する。一方、触媒4が分解開始温度まで加熱されていないと判定された場合には、触媒4が分解開始温度となるまで、ヒータ11による触媒4の加熱を継続する。
次に、ステップS104において、分解反応部5に亜酸化窒素ガスを供給し、この分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を行う。なお、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量や濃度等については、予め設定された値となっている。
次に、ステップS105において、温度測定部16が測定した触媒4(又は分解ガス)の温度に基づいて、制御部17が、触媒4(又は分解ガス)の温度が予め設定された値(範囲)を超えたか否かの判定を行う。そして、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)を超えたと判定された場合には、ステップS106に進む。一方、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)にあると判定された場合には、ステップS110に進む。
次に、ステップS106において、制御部17が、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いか低いかの判定(比較)を行う。
そして、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いと判定された場合には、ステップS107に進み、このステップS107において、制御部17が、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量、若しくは、この亜酸化窒素ガスの濃度を下げる方向に調整を行う。そして、調整後は、ステップS109に進む。
一方、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも低いと判定された場合には、ステップS108に進み、このステップS108において、制御部17が、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量、若しくは、この亜酸化窒素ガスの濃度を上げる方向に調整を行う。そして、調整後は、ステップS109に進む。
これらステップS107又はステップS108における調整では、例えば、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量の設定値、若しくは、この亜酸化窒素ガスの濃度の設定値を調整可能な範囲で所定の段階数に分けて、その設定値を現段階よりも1段階下げて又は上げて行う。
次に、ステップS109において、温度測定部16が測定した触媒4(又は分解ガス)の温度に基づいて、制御部17が、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったか否かの判定を行う。そして、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったと判定された場合には、ステップS110に進む。
一方、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻らない場合には、ステップS106に戻り、再び触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いか低いかの判定(比較)を行った後、ステップS107又はS108に進み、上記分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量の設定値、若しくは、この亜酸化窒素ガスの濃度の設定値を更に1段階下げる又は上げる方向に調整を行う。そして、ステップS109に進み、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったか否かの判定を行い、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻るまで、そのような調整を繰り返す。また、このような調整を繰り返した結果、調整可能な範囲を超えた場合には、制御部17が異常と判定して強制的にステップS110に進むものとする(図2において図示せず。)。
次に、ステップS110において、制御部17が、亜酸化窒素ガスの供給を停止するか否かの判定を行う。亜酸化窒素ガスの供給を停止する場合としては、例えば、外部から停止命令を受けたときや、上記ステップS109において異常と判定されたときなどを挙げることができる。そして、亜酸化窒素ガスの供給を停止する場合は、ステップS111に進む。一方、亜酸化窒素ガスの供給を停止しない場合は、ステップS105に戻り、温度測定部16による触媒4(又は分解ガス)の温度測定を継続する。
次に、ステップS111において、亜酸化窒素ガスの供給を停止した後に、ステップS112に進み、このステップS112おいて、分解反応部5に窒素ガスを供給する。これにより、窒素ガスが触媒4内に滞留した分解ガスを押し出し、この触媒4内に滞留した分解ガスを除去することができる。
以上のようにして、上記図1に示すエネルギー取出装置では、分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。
なお、本発明では、上述した温度測定部16が測定した測定データ及びそれに基づく制御部17の判定結果を、例えば、図示を省略するモニタに表示したり、プリンタに出力したりしてもよい。また、上述した制御部17による自動制御に限らず、例えば、オペレータ等による手動制御を行ってもよい。
また、上記ステップS109において異常と判定された場合には、必要に応じてその旨を告知するようにしてもよい。告知方法については、特に限定されるものではなく、例えば、警報を発したり、表示を行ったりすることができる。
本発明で用いられる亜酸化窒素は、工業的に製造することが可能である。具体的に、亜酸化窒素を工業的に製造する方法については、例えば、以下の(1)〜(3)を用いた方法を挙げることができる。
(1)アンモニア直接酸化法
2NH3 + 2O2 → N2O + 3H2O
(2)硝酸アンモニウム熱分解法
NH4NO3 → N2O + 2H2O
(3)スルファミン酸法
NH2SO3H + HNO3 → N2O + H2SO4 + H2O
なお、工業的に製造された亜酸化窒素については、例えば、純度99.9(3N)〜99.999(5N)%の高純度亜酸化窒素、純度97.0%以上(日本薬局方)の医療用亜酸化窒素、純度98%以上の工業用亜酸化窒素などを挙げることができる。
その他にも、亜酸化窒素の製造方法については、以下の(4)〜(10)を用いた方法を挙げることができる。
(4)尿素分解法
2(NH2)2CO+2HNO3+H2SO4 → 2N2O+2CO2+(NH4)2SO4+2H2O
(5)ヒドロキシルアミンからの製法
4NO + 2NH2OH → 3N2O + 3H2O2NH2OH +NO2 + NO → 2N2O + 3H2O2NH2OH + O2 → N2O + 3H2O
(6)有機反応からの副生N2O
アジピン酸の製造工程からの副生N2Oの回収。
グリオキザールの製造からの副生N2Oの回収。
(7)亜硝酸又は亜硝酸塩の還元
亜硝酸又は亜硝酸塩の溶液を温亜硫酸、ナトリウム、アマルガム、塩化第一錫等を還元剤として還元する。
(8)硝酸の還元
硝酸を亜鉛又は錫で還元するか、亜硫酸ガスで還元する。
(9)硝酸塩の還元
2KHNO3 + 6HCOOH → N2O + 4CO2 + 5H2O+ 2HCOOK
(10)次亜硝酸の脱水
H2N2O2 +H2SO4 →H2SO4・H2O+ N2O
そして、製造された亜酸化窒素は、ガスメーカにて上記高圧ガス容器6に充填された後、上記図1に示すエネルギー取出装置へと送られて使用される。一方、高圧ガス容器6は、使用後にガスメーカに返却されて、再充填されることによって繰り返し使用することが可能である。
また、亜酸化窒素ガスの供給方法については、上記高圧ガス容器6を用いて供給する(高圧ガス容器6を交換する)方法に限らず、例えばタンカーやタンクローリーなどの輸送手段を用いて、上記高圧ガス容器6に供給する方法を用いることが可能である。さらに、亜酸化窒素ガスをパイプラインを通じて、上記高圧ガス容器6に供給する方法を用いることも可能である。
なお、窒素ガスの供給方法についても、上記高圧ガス容器18を用いて供給する(高圧ガス容器18を交換する)方法に限らず、上述した亜酸化窒素ガスの供給方法と同様の方法を用いて供給することが可能である。
本発明では、上記触媒4を用いることによって、亜酸化窒素ガスの分解開始温度を引き下げることができる。そして、亜酸化窒素ガスの分解後は、この亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行うことが可能である。
したがって、本発明では、亜酸化窒素ガスの分解開始前に、上記触媒4を予熱しておくだけでよい。そして、亜酸化窒素ガスの分解後は、この亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、上記触媒4の温度を、亜酸化窒素ガスを分解するのに必要な温度以上に保ちながら、亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることが可能である。
具体的に、上記触媒4の温度は、触媒活性の観点から200〜600℃の範囲が好ましく、分解反応容易性の観点から350〜450℃の範囲がより好ましい。すなわち、本発明では、上記触媒4の温度がこのような範囲となるように、上記ヒータ11による予熱や、上記制御部17による分解ガスの温度制御を行うことが好ましい。
一方、亜酸化窒素自体は約500℃以上で自己分解することから、上記分解反応部5を自己分解温度以上に保つことで、上記触媒4を用いずに亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることも可能である。しかしながら、上記触媒4を用いずに亜酸化窒素ガスを自己分解させた場合には、分解副生物としてNOxガスが発生することがわかっている。したがって、本発明では、上記NOxガスの発生を防ぐため、上記触媒4を用いることが好ましい。なお、上記触媒4は、亜酸化窒素ガスの自己分解温度以上であっても使用することが可能である。
亜酸化窒素ガスの温度については、亜酸化窒素ガスが液化しない温度であればよく、通常は常温以下で使用することが可能である。一方、亜酸化窒素ガスは、常温よりも高い温度に予熱して使用することも可能である。例えば、亜酸化窒素ガスの濃度が低い場合には、この亜酸化窒素ガスを予熱することによって、亜酸化窒素ガスの分解を促進させることが可能である。
亜酸化窒素ガスの濃度については、特に限定されるものではなく、例えば1〜100%の範囲で調整されたもの、また、より多くのエネルギーを得る必要がある場合には、50%超〜100%の範囲で調整されたもの、さらに、70%超〜100%の範囲で調整されたものを使用することが可能である。また、上述した亜酸化窒素ガスの濃度調整を行うことによって、亜酸化窒素ガスの分解反応速度等を調整することが可能である。
また、本発明では、上述した亜酸化窒素の濃度調整を行うことによって、分解ガスを呼吸気ガスとして利用することが可能である。具体的に、空気は、その体積の約8割が窒素(N2)で、約2割が酸素(O2)であるため、例えば、上記燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素(N2O)と窒素(N2)の割合を体積比(モル比)で、N2O:N2=1:1とする。すなわち、上記燃料ガス中に窒素ガスを添加し、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を50%とすれば、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素が最終的に窒素と酸素に分解されたときに、亜酸化窒素1モルは窒素1モルと酸素0.5モルに分解されるため、この分解ガス中に含まれる窒素(N2)と酸素(O2)の割合は、体積比(モル比)で、N2:O2=4:1となる。これにより、分解ガス中に含まれる窒素(N2)と酸素(O2)の割合を空気組成に近づけることができるため、この分解ガスを呼吸気ガスとして利用することが可能となる。
具体的に、上記分解ガスを呼吸気ガスとして用いる場合には、その酸素濃度を18〜24%程度の範囲とすることが好ましく、その場合、亜酸化窒素ガスの濃度を44〜63%程度の範囲とすることが好ましい。
また、本発明では、亜酸化窒素ガスの濃度が44%未満のもの、すなわち亜酸化窒素ガスの濃度が低いものを使用することが可能である。この場合、亜酸化窒素ガスの分解によって発生するエネルギー(エネルギー密度)は低くなるものの、この亜酸化窒素ガスの分解反応を緩やかなものとすることで、上述した分解ガスによって高温高圧に晒される触媒4や分解反応部5などの各部材の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)を抑制することが可能である。すなわち、本発明では、上述した触媒4や分解反応部5等の各部材料の耐熱性及び耐酸化性を考慮して、亜酸化窒素ガスの濃度を調整することが可能である。
一方、本発明では、亜酸化窒素ガスの濃度が63%超のもの、すなわち亜酸化窒素ガスの濃度が高いものを使用することが可能である。この場合、亜酸化窒素ガスの分解によって発生するエネルギー(エネルギー密度)を高めることができ、上記変換部1での出力向上を図ることが可能である。
特に、本発明では、亜酸化窒素ガスの濃度が100%のものを使用した場合でも、上記触媒4を用いて亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることが可能である。なお、本発明では、高純度(例えば純度99.9(3N)〜99.999(5N)%)の亜酸化窒素ガスだけでなく、その製造コスト等を考慮して、それよりも純度の低い(例えば純度97%未満)亜酸化窒素ガスを使用することも可能である。
上述した窒素ガスによる亜酸化窒素ガスの濃度調整は、亜酸化窒素ガスの分解前に亜酸化窒素ガス中に窒素ガス等を添加する方法であっても、亜酸化窒素ガスの分解後に分解ガス中に窒素ガス等を添加する方法であってもよい。さらに、予め濃度調整が行われた亜酸化窒素ガスを用いてもよい。
すなわち、上記窒素ガス供給ライン14は、上述した第1の供給ライン7に接続されたものに限らず、上記第2の供給ライン8や第3の供給ライン9、排出ライン10などに接続されたものであってもよい。
なお、上記亜酸化窒素ガス中に含まれる亜酸化窒素以外の成分については、上述した亜酸化窒素の濃度調整のために添加された窒素等の他にも、後述する亜酸化窒素の製造時に混入した未反応物や、副生成物、空気、不可避不純物などを挙げることができる。
また、本発明では、上記分解ガス中の酸素濃度を計測する酸素濃度計(酸素計測手段)を設けてもよい。この場合、上記分解ガス中に含まれる酸素の濃度を計測し、この計測結果に基づいて、上述した分解ガスの温度制御を精度良く行うことが可能である。
なお、上記分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの空間速度(Space Velocity)は、その設計に合わせて最適な値に設定すればよく、例えば、10〜140,000hr−1の範囲、好ましくは100〜10,000hr−1の範囲で設定することが可能である。
また、本発明では、上記排出ライン10から排出された分解ガスを燃料の燃焼に利用することも可能である。なお、燃料については、上記分解ガス中に含まれる酸素を用いて燃焼可能なものであればよく、例えば石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料の他にも、バイオマス燃料などの代替燃料を使用することができる。その他にも気体燃料、液体燃料、固体燃料の中から適宜選択して用いることが可能である。
以上のように、本発明では、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能とすると共に、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱から電力や動力といったエネルギーを効率良く取り出すことを可能としたエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法を提供することが可能である。
特に、本発明では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解によって発生する分解熱とを利用することで、上記変換部1の高温側1aと低温側1bとの間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、本発明では、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな出力を得ることが可能である。
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態として図3に示すエネルギー取出装置20について説明する。なお、図3は、このエネルギー取出装置20の構成を示す断面模式図である。
図3に示すエネルギー取出装置20は、温度差を電力に変換する熱電変換素子(変換手段)21を備えた発電装置であり、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用して電力を得るものである。
熱電変換素子21は、ペルチェ素子又はゼーベック素子と呼ばれるものであり、例えば、2種類の異なる金属又は半導体を接合し、これらの間に温度差を与えたときに起電力が発生する現象(ゼーベック効果という。)を利用したものである。この熱電変換素子21は、平行平板状に形成されて、一方の面(図3では上面)が高温側伝熱面21aを形成し、他方の面(図3では下面)が低温側伝熱面21bを形成している。
また、図3に示すエネルギー取出装置20は、熱電変換素子21の高温側伝熱面21aとの間で熱交換を行う高温側熱交換器(加熱手段)22と、熱電変換素子21の低温側伝熱面21bとの間で熱交換を行う低温側熱交換器(冷却手段)23とを備えている。
そして、図3に示すエネルギー取出装置20のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。したがって、この図3に示すエネルギー取出装置20において、上記図1に示すエネルギー取出装置と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。若しくは、その図示を省略するものとする。
このエネルギー取出装置20は、図3に示すように、低温側熱交換器23の上に熱電変換素子21と、この熱電変換素子21の上に高温側熱交換器22とが配置された構造を有している。また、熱電変換素子21は、これら高温側熱交換器22と低温側熱交換器23との間に挟み込まれることによって、上面の高温側伝熱面21aが高温側熱交換器22に接触し、且つ、下面の低温側伝熱面21bが低温側熱交換器23に接触した状態となっている。
高温側熱交換器22は、入側に上記第3の供給ライン9と、出側に上記排出ライン10とが接続されて、その内部を分解ガスが通過する箱体を構成している。また、高温側熱交換器22の下面は、熱伝導率が高く、耐熱性及び耐酸化性に優れた例えば銅製の高温側伝熱板22aによって構成されている。さらに、高温側熱交換器22の内部には、例えば銅製のヒートシンク22bが高温側伝熱板22aに接触した状態で配置されている。
低温側熱交換器23は、入側に上記第1の供給ライン7と、出側に上記第2の供給ライン8とが接続されて、その内部を亜酸化窒素ガスが通過する箱体を構成している。また、低温側熱交換器23の上面は、熱伝導率が高い例えばアルミニウム製の低温側伝熱板23aによって構成されている。さらに、低温側熱交換器23の内部には、例えばアルミニウム製のヒートシンク23bが低温側伝熱板23aに接触した状態で配置されている。
高温側熱交換器22の上には、上記触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)24が立設した状態で取り付けられている。この分解反応器24は、上記第3の供給ライン9と共に、継手やフランジ等を介して接続された例えばステンレス製の配管によって構成されている。
また、分解反応器24の外周部には、上記ヒータ11が上記触媒4の周囲を囲むように配置されている。上記ヒータ11には、例えばニクロム線等の電熱線を用いたバンド型又はテープ型のヒータが用いられている。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置20の動作について説明する。
なお、このエネルギー取出装置20では、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
このエネルギー取出装置20では、先ず、上記高圧ガス容器6(図3において図示せず。)から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して低温側熱交換器23に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが低温側熱交換器23の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21の低温側伝熱面21bとの間で熱交換が行われる。すなわち、この低温側熱交換器23では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記熱電変換素子21の低温側伝熱面21bに対する冷却が行われる。
次に、低温側熱交換器23から排出された亜酸化窒素ガスが第2の供給ライン8を通して分解反応器24に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応器24の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。
次に、分解反応器24で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)が第3の供給ライン9を通して高温側熱交換器22に供給される。
そして、この分解ガスが高温側熱交換器22の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21の高温側伝熱面21aとの間で熱交換が行われる。すなわち、この高温側熱交換器22では、亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱を利用して、上記熱電変換素子21の高温側伝熱面21aに対する加熱が行われる。そして、分解ガスは、排出ライン10から排出されることになる。
以上のように、このエネルギー取出装置20では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素ガスの分解より発生する分解熱とを利用することで、上記熱電変換素子21の高温側伝熱面21aと低温側伝熱面21bとの間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
なお、本発明は、上記図3に示すエネルギー取出装置20の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、上記エネルギー取出装置20では、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23との間に、複数の熱電変換素子21を並列に配置した構成とすることも可能である。また、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23との間に熱電変換素子21が挟み込まれた発電モジュールを直列に複数並べて配置し、これら発電モジュールの間で亜酸化窒素ガス及び分解ガスを流すようにしてもよい。
また、上記高温側熱交換器22及び低温側熱交換器23の構成についても、上記熱電変換素子21との間で熱交換が行える構成であればよく、上記エネルギー取出装置20の設計に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。同様に、上記分解反応器24の構成についても、上記エネルギー取出装置20の設計に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態として図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bについて説明する。なお、図4は、このエネルギー取出装置30Aの構成を示す断面模式図であり、図5は、このエネルギー取出装置30Bの構成を示す断面模式図である。
図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bは、温度差を動力に変換するスターリングエンジン(変換手段)31A,31Bを備えた発動装置であり、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用して動力を得るものである。
このうち、図4に示すエネルギー取出装置30Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aを備えている。具体的に、このスターリングエンジン31Aは、回転自在に支持されたクランク軸32と、クランク軸32の一端に取り付けられたフライホイール33と、クランク軸32と高温側コンロッド34aを介して連結された高温側ピストン35aと、高温側ピストン35aが往復自在に配置された高温側シリンダ36aと、クランク軸32と低温側コンロッド34bを介して連結された低温側ピストン35bと、低温側ピストン35bが往復自在に配置された低温側シリンダ36bとを備え、高温側ピストン35aと低温側ピストン35bとは、90度の位相差を持ってクランク軸32に連結されている。
また、スターリングエンジン31Aには、高温側シリンダ36aと低温側シリンダ36bとの間を連通させる連通管(流路)37が設けられている。これにより、高温側シリンダ36a内の高温空間(膨張空間)SHと、低温側シリンダ36b内の高温空間(圧縮空間)SLとの間を作動流体(例えば空気や水素、ヘリウムなど。)が移動することが可能となっている。
さらに、スターリングエンジン31Aは、高温空間SH側の作動流体を加熱する加熱器(加熱手段)38と、低温空間SL側の作動流体を冷却する冷却器(冷却手段)39と、これら加熱器38と冷却器39との間の連通管37内に配置されて、作動流体に対する蓄熱/放熱を行う再生器(蓄熱器)40とを備えている。
そして、このスターリングエンジン31Aでは、作動流体が高温空間SHと低温空間SLとの間を往復し、圧力変化を生じさせると同時に、膨張・圧縮を繰り返すことで、高温側ピストン35a及び低温側ピストン35bの往復運動をクランク軸32の回転運動に変換し、動力を得ることが可能となっている。
一方、図5に示すエネルギー取出装置30Bは、ディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bを備えている。具体的に、このスターリングエンジン31Bは、回転自在に支持されたクランク軸41と、クランク軸41の一端に取り付けられたフライホイール42と、クランク軸41と出力側コンロッド43aを介して連結された出力ピストン44と、出力ピストン44が往復自在に配置された出力側シリンダ45aと、クランク軸41と置換側コンロッド43bを介して連結されたディスプレーサ46と、ディスプレーサ46が往復自在に配置された置換側シリンダ45bとを備え、出力ピストン44とディスプレーサ46とは、90度の位相差を持ってクランク軸41に連結されている。
置換側シリンダ45bの内部は、ディスプレーサ46を挟んだ一方側の高温空間(膨張空間)SHと、他方側の高温空間(圧縮空間)SLとに仕切られている。また、置換側シリンダ45bには、高温空間SHと低温空間SLとの間を連通させる連通管(流路)47aが設けられている。これにより、高温空間SHと低温空間SLとの間を作動流体(例えば空気や水素、ヘリウムなど。)が移動することが可能となっている。また、出力側シリンダ45aは、連通管(流路)47bを介して置換側シリンダ45bの一方の空間(例えば低温空間SL)と連通されている。
さらに、スターリングエンジン31Bは、高温空間SH側の作動流体を加熱する加熱器(加熱手段)48と、低温空間SL側の作動流体を冷却する冷却器(冷却手段)49と、これら加熱器48と冷却器49との間の連通管47内に配置されて、作動流体に対する蓄熱/放熱を行う再生器(蓄熱器)50とを備えている。
そして、このスターリングエンジン31Bでは、作動流体が高温空間SHと低温空間SLとの間を往復し、圧力変化を生じさせると同時に、膨張・圧縮を繰り返すことで、出力ピストン44及びディスプレーサ46の往復運動をクランク軸41の回転運動に変換し、動力を得ることが可能となっている。
図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bのそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置及び図3に示すエネルギー取出装置20と同様の構成を概略備えている。したがって、この図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bにおいて、上記図1に示すエネルギー取出装置及び図3に示すエネルギー取出装置20と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものする。若しくは、その図示を省略するものとする。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置30A,30Bの動作について説明する。
なお、このエネルギー取出装置30A,30Bでは、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bでは、先ず、上記高圧ガス容器6(図4及び図5において図示せず。)から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却器39,49に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが冷却器39,49の内部を通過する間に、上記スターリングエンジン31A,31Bの低温空間SL中を流れる作動流体との間で熱交換が行われる。すなわち、この冷却器39,49では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記スターリングエンジン31A,31Bの低温空間SL中を流れる作動流体に対する冷却が行われる。
次に、冷却器39,49から排出された亜酸化窒素ガスが第2の供給ライン8を通して分解反応器24に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応器24の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。
次に、分解反応器24で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)が第3の供給ライン9を通して加熱器38,48に供給される。そして、この分解ガスが加熱器38,48の内部を通過する間に、上記スターリングエンジン31A,31Bの高温空間SH中を流れる作動流体との間で熱交換が行われる。すなわち、この加熱器38,48では、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、上記スターリングエンジン31A,31Bの高温空間SH中を流れる作動流体に対する加熱が行われる。そして、分解ガスは、排出ライン10から排出されることになる。
以上のように、このエネルギー取出装置30A,30Bでは、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用することで、上記スターリングエンジン31A,31Bの高温空間SHと低温空間SLとの間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。
なお、本発明は、上記図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bの構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、上記図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bは、更に、上記スターリングエンジン31A,31Bの駆動により発電する発電機51を備えた発電装置とすることも可能である。この場合、上記スターリングエンジン31A,31Bによって得られた動力を発電機51によって電力に変換することが可能である。
また、上記図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bは、上記図4に示す2ピストン型(α型)や、上記図5に示すディスプレーサ型(γ型:ディスプレーサと出力ピストンとが異なるシリンダに配置されたタイプ)に限らず、それ以外にも、ディスプレーサ型(β型:ディスプレーサと出力ピストンとが同一のシリンダに配置されたタイプ)、ダブルアクティング型など、様々な形式のものを使用することが可能である。
また、上記加熱器38,48及び冷却器39,49の構成についても、上記スターリングエンジン31A,31Bの高温空間SH及び低温空間SLとの間で熱交換が行える構成であればよく、上記スターリングエンジン31A,31Bの設計(形式)に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。また、上記再生器40,50については、必ずしも必須な構成ではなく、場合によって省略することも可能である。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態として図6に示すエネルギー取出装置60について説明する。なお、図6は、このエネルギー取出装置60の構成を示す断面模式図である。
図6に示すエネルギー取出装置60は、温度差を動力に変換するヒートパイプタービン(変換手段)61を備えた発動装置であり、更に、このヒートパイプタービン61の駆動により発電する発電機を備えた発電装置であり、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用して動力を得た後、この動力を電力に変換するものである。
ヒートパイプタービン61は、例えば、内部を真空脱気した状態で凝縮性の作動流体(蒸気源)Lが封入された略円筒状のヒートパイプ(容器本体)62を備えている。このヒートパイプ62は、起立した状態で配置され、その下部側に貯留された作動流体Lを加熱して蒸発させる蒸発部63を有している。
一方、ヒートパイプ62の上部側には、蒸発した作動流体L(蒸気)によってタービン翼64aがタービン軸64bと一体に回転駆動されるタービン部64が設けられている。
発電機60Gは、このタービン部64のタービン軸64bと連結されている。
また、ヒートパイプ62には、作動流体Lが貯留された部分と、タービン翼64よりも上方側の部分との間を連通させる連通管(流路)65が設けられている。そして、ヒートパイプ62は、この連通管65の中途部に作動流体Lを冷却して凝縮させる凝縮部66を有している。また、ヒートパイプ62の内面には、例えば金属網や炭素繊維等の極細線材からなる毛細管構造のウィック67が設けられている。
さらに、ヒートパイプタービン61は、蒸発部63中の作動流体Lを加熱する加熱器(加熱手段)68と、凝縮部66中の作動流体Lを冷却する冷却器(冷却手段)69とを備えている。
このヒートパイプタービン61では、ヒートパイプ62の内部に温度差が生じることにより、蒸発部63で蒸発した作動流体Lが凝縮部66に流動して凝縮することを繰り返しながら、作動流体Lが循環することになる。すなわち、作動流体Lの潜熱の吸収・放出によって熱輸送が行われる。そして、このヒートパイプタービン61では、蒸発した作動流体Lをタービン翼64aに吹き付けて、それによりタービン軸64bを回転させて動力を得ることが可能となっている。さらに、タービン軸64bと連結された発電機60Gを回転駆動することで電力を得ることが可能となっている。
なお、作動流体Lとしては、水(水蒸気)を使用することができる。また、作動流体Lとしては、アンモニアや、ノルマルペンタン等の有機媒体など、水よりも沸点が低いものなどを使用することも可能である。
図6に示すエネルギー取出装置60のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置及び上記図3に示すエネルギー取出装置20と同様の構成を概略備えている。したがって、この図6に示すエネルギー取出装置60において、上記図1に示すエネルギー取出装置及び上記図3に示すエネルギー取出装置20と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものする。若しくは、その図示を省略するものとする。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置60の動作について説明する。
なお、このエネルギー取出装置60では、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
図6に示すエネルギー取出装置60では、先ず、上記高圧ガス容器6(図6において図示せず。)から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却器69に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが冷却器69の内部を通過する間に、上記ヒートパイプタービン61の凝縮部66を冷却する。すなわち、この冷却器69では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記凝縮部66中を流れる作動流体Lに対する冷却が行われる。
次に、冷却器69から排出された亜酸化窒素ガスが第2の供給ライン8を通して分解反応器24に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応器24の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。
次に、分解反応器24で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)が第3の供給ライン9を通して加熱器68に供給される。そして、この分解ガスが加熱器68の内部を通過する間に、上記ヒートパイプタービン61の蒸発部63を加熱する。すなわち、この加熱器68では、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、上記蒸発部63中の作動流体Lに対する加熱が行われる。そして、分解ガスは、排出ライン10から排出されることになる。
以上のように、このエネルギー取出装置60では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用することで、上記ヒートパイプタービン61の蒸発部63と凝縮部66との間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな出力(動力及び電力)を得ることが可能である。
なお、本発明は、上記図6に示すエネルギー取出装置60の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、上記図6に示すエネルギー取出装置60は、上記ヒートパイプタービン61を備えた構成に限定されるものではない。すなわち、ヒートパイプタービンについては、例えばサイフォン式やウィック式など、様々な形式のものを使用することが可能である。また、ヒートパイプの流路構成についても、単管型やループ型など、様々な形式のものを使用することが可能である。
また、上記加熱器68及び冷却器69の構成についても、上記ヒートパイプタービン61の蒸発部63や凝縮部66との間で熱交換が行える構成であればよく、上記ヒートパイプタービン61の設計(形式)に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
次に、本発明の第4の実施形態として図7に示すエネルギー取出装置70について説明する。なお、図7は、このエネルギー取出装置70の概略構成を示す模式図である。
図7に示すエネルギー取出装置70は、構成体(変換手段)71を備えたエネルギー取出装置であり、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用してエネルギーを取り出すものであり、この実施形態では電力を得るようになっている。
エネルギー取出装置70は、図7に示すように、構成体71と、高温側の加熱部(加熱手段)72と、低温側の冷却部(冷却手段)73と、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)24とを備えている。エネルギー取出装置70のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。
構成体71は、図7に示すように、熱電変換素子21と、スターリングエンジン31とスターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)とを備えている。
熱電変換素子21は、図7に示すように、高温側熱交換器(加熱手段)22及び低温側熱交換器(冷却手段)23にそれぞれ熱伝導可能に挟まれて連結され、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。そして、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23によって熱電変換素子21に生じる温度差を利用して電力を得るようになっている。
スターリングエンジン31は、例えば、第2の実施形態に係る2ピストン型のスターリングエンジン31Aやディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bを適用することが可能であり、冷却器39A及び加熱器38Aが設けられている。
冷却部73は、熱電変換素子21に設けられた低温側熱交換器23と、冷却側接続ライン8Aと、スターリングエンジン31に設けられた冷却器39Aとを備え、亜酸化窒素の流れ方向上流側から低温側熱交換器23、冷却側接続ライン8A、冷却器39Aの順に接続された構成とされ、入側に上記第1の供給ライン7が接続され、出側に上記第2の供給ライン8が接続されていて、その内部を亜酸化窒素ガスが流通するようになっている。
冷却器39Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた冷却器39又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた冷却器49に相当するものである。
加熱部72は、スターリングエンジン31に設けられた加熱器38A、加熱側接続ライン9A、熱電変換素子21に設けられた高温側熱交換器22とを備え、分解ガスの流れ方向上流側から加熱器38A、加熱側接続ライン9A、高温側熱交換器22の順に接続された構成とされ、入側に上記第3の供給ライン9が接続され、出側に上記排出ライン10が接続されていて、その内部を分解ガスが通過するようになっている。
加熱器38Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた加熱器38又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた加熱器48に相当するものである。
分解反応器24は、第2の供給ライン8と第3の供給ライン9の間に配置され、分解反応器24の外周部には、ヒータ11が触媒4の周囲を囲むように配置されている。
図7に示すエネルギー取出装置70のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置及び上記図3に示すエネルギー取出装置20と同様の構成を概略備えている。したがって、この図7に示すエネルギー取出装置70において、上記図1に示すエネルギー取出装置及び上記図3に示すエネルギー取出装置20と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものする。若しくは、その図示を省略するものとする。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置70の動作について説明する。
なお、このエネルギー取出装置70では、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
このエネルギー取出装置70では、先ず、上記高圧ガス容器6(図7において図示せず)から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却部73に供給される。
そして、この亜酸化窒素ガスは、冷却部73を通過する。冷却部73では、まず、低温側熱交換器23に導入されて、上記熱電変換素子21と低温側熱交換器23の間で熱交換が行われる。すなわち、この低温側熱交換器23では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する冷却が行われる。
次に、低温側熱交換器23に導入された亜酸化窒素は、低温側熱交換器23から排出されて冷却側接続ライン8Aを通して冷却器39Aに導入され、この亜酸化窒素ガスが冷却器39Aの内部を通過する間に、上記スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体と冷却器39Aの間で熱交換が行われる。この冷却部73では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体に対する冷却が行われる。
次に、冷却部73から排出された亜酸化窒素ガスが第2の供給ライン8を通して分解反応器24に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応器24の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応器24で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9を通して加熱部72に供給される。
そして、この分解ガスが加熱部72を通過する間に、加熱器38Aにおいて、上記スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体と加熱器38Aの間で熱交換が行われる。すなわち、この加熱器38Aでは、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、上記スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体に対する加熱が行われる。
次に、分解ガスは、加熱器38Aから排出されて高温側接続ライン9Aを通して高温側熱交換器22に導入されて、上記熱電変換素子21と高温側熱交換器22の間で熱交換が行われる。すなわち、この高温側熱交換器22では、亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する加熱が行われる。そして、分解ガスは、排出ライン10から排出されることになる。
スターリングエンジン31の作動については、図4又は図5において説明した2ピストン型のスターリングエンジン31A又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bの場合と同様である。
以上のように、このエネルギー取出装置70では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、上記熱電変換素子21に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
また、このエネルギー取出装置70では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、上記スターリングエンジン31の高温空間と低温空間との間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、スターリングエンジン31の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
なお、本発明は、図7に示すエネルギー取出装置70の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、上記エネルギー取出装置70では、冷却部73が、熱電変換素子21に設けられた低温側熱交換器23と、冷却側接続ライン8Aと、スターリングエンジン31に設けられた冷却器39Aとを備える場合について説明したが、例えば、低温側熱交換器23と冷却器39Aとを一体構造とすることで、冷却側接続ライン8Aを備えない構成としてもよい。
また、加熱部72が、スターリングエンジン31Aに設けられた加熱器38Aと、加熱側接続ライン9Aと、熱電変換素子21に設けられた高温側熱交換器22とを備える場合について説明したが、例えば、高温側熱交換器22と加熱器38Aとを一体構造とすることで、加熱側接続ライン9Aを備えない構成としてもよいし、加熱側接続ライン9Aの一部から放熱可能な構成としてもよい。
また、上記エネルギー取出装置70では、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23との間に、複数の熱電変換素子21を並列に配置した構成とすることも可能である。また、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23との間に熱電変換素子21が挟み込まれた発電モジュールを直列に複数並べて配置し、これら発電モジュールの間で亜酸化窒素ガス及び分解ガスを流すようにしてもよい。
また、高温側熱交換器22及び低温側熱交換器23の構成についても、熱電変換素子21との間で熱交換が行える構成であればよく、エネルギー取出装置70の設計に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
また、エネルギー取出装置70が、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機を備える場合について説明したが、上記スターリングエンジン31によって得られた動力を電力に変換せずに使用することも可能である。
また、エネルギー取出装置70は、上記図4に示す2ピストン型(α型)や、上記図5に示すディスプレーサ型(γ型:ディスプレーサと出力ピストンとが異なるシリンダに配置されたタイプ)に限らず、それ以外にも、ディスプレーサ型(β型:ディスプレーサと出力ピストンとが同一のシリンダに配置されたタイプ)、ダブルアクティング型など、様々な形式のものを使用することが可能である。
また、加熱器38A及び冷却器39Aの構成についても、スターリングエンジン31の高温空間及び低温空間との間で熱交換が行える構成であればよく、上記スターリングエンジン31の設計(形式)に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
また、分解反応器24の構成についても、エネルギー取出装置70の設計に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
以下、「特開2002−153734号公報」に記載の亜酸化窒素分解用触媒について説明する。
工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は10%以下であり、一方手術室から排出される余剰麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、余剰麻酔ガス排除装置で圧縮空気によって多少は希釈されているとはいえ70%以下であり、非常に高濃度である。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は低濃度から高濃度の亜酸化窒素の分解に対応できる触媒である。
また、本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、比較的低温での分解処理が可能であり、水分が共存する場合においても水分による活性劣化を受けにくく、しかもNOxの発生量を許容濃度以下に抑制することができ、従来の分解触媒に対し、約1/10〜1/100以下にまでNOxの発生量を低減することができる。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、アルミニウム、マグネシウム及びロジウムの3種の金属を必須成分として含有する次の〔1〕〜〔3〕のいずれかの触媒、〔1〕アルミニウム、マグネシウム及びロジウムが担体に担持されている触媒、〔2〕マグネシウム及びロジウムがアルミナ担体に担持されている触媒、〔3〕アルミニウムの少なくとも一部とマグネシウムにより、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体に、ロジウムが担持されている触媒、及び、アルミニウム及びロジウムの2種の金属と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を必須成分として含有する次の〔4〕〜〔6〕のいずれかの触媒、〔4〕亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、アルミニウム及びロジウムが担体に担持されている触媒、〔5〕亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、ロジウムがアルミナ担体に担持されている触媒、〔6〕アルミニウムの少なくとも一部と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体にロジウムが担持されている触媒、から選ばれる少なくとも1種の触媒を用いることができる。
〔1〕の触媒に用いられる担体としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体を用いることができ、〔4〕の触媒に用いられる担体としては、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズから選ばれる担体を用いることができる。担体は、表面積がそれぞれ30〜300m2/g程度のものを用いることができ、形状については特に制限はないが、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
〔1〕の触媒において、担体に担持するアルミニウムとマグネシウムは、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、マグネシウムは金属原子換算で、触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。
また、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムとマグネシウムを担持させた担体を焼成することによって生成することができる。スピネル構造とはXY2O4の化学式を持つ酸化物に見られる構造で立方晶系に属し、AlとMgはMgAl2O4のスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成していることが、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOxの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
〔4〕の触媒において、担体に担持する、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とアルミニウムは、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。
また、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルはMAl2O4(M=Zn、Fe、Mn、Ni)のスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成していることが、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOxの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
〔2〕の触媒に用いられる担体はアルミナであり、アルミナに特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。アルミナに担持するマグネシウムは、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。
〔5〕の触媒に用いられる担体はアルミナであり、アルミナに特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。アルミナに担持する、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。
〔3〕の触媒は、アルミニウムの少なくとも一部とマグネシウムにより、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体を用いる。〔3〕の触媒におけるアルミニウムとマグネシウムの原子比は、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、マグネシウムは金属原子換算で触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。
〔6〕の触媒は、アルミニウムの少なくとも一部と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体を用いる。〔6〕の触媒におけるアルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の原子比は、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒に含まれるロジウムは、〔1〕〜〔6〕のいずれの触媒を用いる場合も、金属原子換算で触媒全体の0.05〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜6.0質量%であることがよい。ロジウムの担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない。
次に本発明の亜酸化窒素の分解触媒の製造方法について説明する。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒は各種の製造方法を用いることができ、例えば(1)含浸法、(2)共沈法、(3)混練法、等を用いることができる。以下に、この3つの製造方法を例に挙げて、本発明の亜酸化窒素の分解触媒の製造方法を説明する。
(1)含浸法を用いる触媒の製造方法
含浸法を用いると、前記の〔1〕〜〔6〕の触媒を製造することができる。〔1〕の触媒を製造する場合には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体に、先ずアルミニウム及びマグネシウムの無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔4〕の触媒を製造する場合には、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体に、先ずアルミニウム及び、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔2〕の触媒を製造する場合には、アルミナ担体にマグネシウムの無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔5〕の触媒を製造する場合には、アルミナ担体に、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。アルミニウム塩、マグネシウム塩及び、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩は、好ましくはいずれも硝酸塩を用いるのがよい。
〔1〕の触媒を製造する場合、アルミニウムとマグネシウムの担体に担持する量としては、アルミニウムがマグネシウム対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、またマグネシウムの担持量が、触媒全体の0.1〜20.0質量%となるようにすることが好ましい。〔4〕の触媒を製造する場合、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担体に担持する量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担持量が、触媒全体の0.1〜40.0質量%となるようにすることが好ましい。〔2〕の触媒を製造する場合には、マグネシウムが、アルミニウムに対する原子比で1/2以下となるように担持することが好ましく、またマグネシウムの担持量が、触媒全体の0.1〜20.0質量%となるようにすることが好ましい。また、〔5〕の触媒を製造する場合には、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が、アルミニウムに対する原子比で1/2以下となるように担持することが好ましく、また亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担持量が、触媒全体の0.1〜40.0質量%となるようにすることが好ましい。
担体に目的とする金属塩を担持した後、担体を乾燥して焼成処理することによって、例えばアルミニウム及びマグネシウムを含有し、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができ、この担体を〔1〕の触媒の担体として用いる。また、同様にして、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有し、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができ、この担体を〔4〕の触媒の担体として用いる。例えば〔1〕の触媒におけるアルミニウム塩及びマグネシウム塩を含浸させた後の乾燥温度、〔4〕の触媒におけるアルミニウム塩と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩を含浸させた後の乾燥温度はそれぞれ特に制限はないが、好ましくは80〜150℃の温度範囲がよく、さらに好ましくは100〜130℃の温度範囲がよい。また、乾燥雰囲気は特に制限はなく、窒素や空気を用いることができる。乾燥時間は特に制限はないが、含浸法を用いた場合、通常2〜4時間程度でよい。
含浸して乾燥させた後の担体の焼成処理は、400〜900℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは、500〜700℃である。焼成温度が400℃より低い場合は、結晶化が十分ではなく、900℃以上では担体の比表面積の減少を招き好ましくない。焼成時間は特に限定されないが、1〜10時間程度がよく、好ましくは2〜4時間程度であり、段階的に焼成温度を変化させてもよい。長時間の焼成は、その効果が飽和するので経済的に好ましくなく、短時間の焼成ではその効果が薄い場合がある。また、焼成は焼成炉やマッフル炉等を用いて行うことができ、この時の流通ガスとしては、窒素または空気のいずれを使用してもよい。
次に、前記の焼成して得られた担体にロジウム塩を担持する。ロジウム塩としては、無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を用いることができ、硝酸塩を用いることが好ましい。ロジウム塩を担持する工程は、例えばアルミニウム、マグネシウム及びロジウムの3種の金属を必須成分として含有する触媒を製造する場合には、前記の方法を用いて得られたアルミニウムの少なくとも一部がマグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に対して行うことが好ましいが、担体にアルミニウムとマグネシウムを含浸担持する工程、あるいはアルミナ担体にマグネシウムを含浸担持する工程と同時に行ってもよい。また、ロジウムの担持量は、触媒全体の0.05〜10質量%となるようにすることが好ましい。
同様に、ロジウム塩を担持する工程は、アルミニウム及びロジウムの2種の金属と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を必須成分として含有する触媒を製造する場合には、前記の方法を用いて得られたアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に対して行うことが好ましいが、担体にアルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含浸担持する工程、あるいはアルミナ担体に、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含浸担持する工程と同時に行ってもよい。また、ロジウムの担持量は、触媒全体の0.05〜10質量%となるようにすることが好ましい。ここで、予めアルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を用いれば、この担体に前記と同様にしてロジウム塩を担持することにより〔3〕の触媒を製造することができる。また、予めアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を用いれば、この担体にロジウム塩を担持することにより〔6〕の触媒を製造することができる。
次に、このロジウムを担持させた触媒前駆体を前記と同様の乾燥条件で乾燥し、乾燥した触媒前駆体を焼成する。この焼成温度は200〜500℃であることが好ましく、さらに好ましくは300〜400℃がよい。焼成して得られた触媒は亜酸化窒素分解触媒として使用することができるが、さらに還元処理をすることが好ましく、還元処理をすることで、より活性の高いロジウム含有触媒を得ることができる。還元処理は、例えば、(1)ヒドラジンで還元後に再乾燥し、焼成する方法、または(2)水素還元する方法、によって行うことができ、水素還元する方法を用いることが好ましい。水素還元する方法を用いる場合は、還元温度は200〜500℃であることが好ましく、より好ましくは300〜400℃がよい。還元時間は特に限定されないが、1〜10時間程度で処理することができ、好ましくは2〜4時間程度である。また、焼成処理をせずに還元処理を行ってもよく、この場合も活性の高いロジウム含有触媒を得ることができる。焼成処理をせずに還元処理を行って触媒を製造する方法としては、200〜500℃の温度で水素還元する方法が好ましい。
(2)共沈法を用いる触媒の製造方法
共沈法を用いると、前記の〔3〕及び〔6〕の触媒を製造することができる。共沈法を用いて〔3〕の触媒を製造する方法としては、例えばアルミニウムとマグネシウムの硝酸塩を含む水溶液にアンモニア水を滴下して中和沈殿させ、必要に応じて熟成放置し、ろ過水洗し、洗浄水の電導度などで十分に水洗したことを確認する。次に、含浸法と同様の条件で10〜12時間程度乾燥後、得られた乾燥体を粉砕し、粒度を揃えて成型する。さらに窒素または空気雰囲気において、含浸法と同様の条件で焼成処理することにより、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を得る。
アルミニウムとマグネシウムの量としては、アルミニウムがマグネシウムに対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。こうして得られたアルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様に行うことができる。
また、共沈法を用いて〔6〕の触媒を製造する方法としては、例えばアルミニウムの硝酸塩と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の硝酸塩を含む水溶液にアンモニア水を滴下して中和沈殿させ、必要に応じて熟成放置し、ろ過水洗し、洗浄水の電導度などで十分に水洗したことを確認する。次に、含浸法と同様の条件で10〜12時間程度乾燥後、得られた乾燥体を粉砕し、粒度を揃えて成型する。さらに窒素または空気雰囲気において、含浸法と同様の条件で焼成処理することにより、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を得る。
アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。こうして得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様に行うことができる。
(3)混練法を用いる触媒の製造方法
混練法を用いると、〔3〕及び〔6〕の触媒を製造することができる。混練法を用いて〔3〕の触媒を製造する方法としては、例えば、アルミナ及び/または水酸化アルミニウムと、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び/またはマグネシウム塩に、例えば必要に応じて水を加え、機械的に混合して得られる混合物を乾燥し、さらに含浸法と同様の条件で焼成処理を行い、前記のスピネル型結晶性複合酸化物を得ることができる。アルミニウムとマグネシウムの量としては、アルミニウムがマグネシウムに対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。
こうして得られたアルミニウムの少なくとも一部がマグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する焼成体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様の方法を用いることができる。また、ロジウム塩はアルミナ等を機械的に混合する際にあらかじめ加えてもよい。
混練法を用いて〔6〕の触媒を製造する方法としては、例えば、アルミナ及び/または水酸化アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物、水酸化物及び/または金属塩に、例えば必要に応じて水を加え、機械的に混合して得られる混合物を乾燥し、さらに含浸法と同様の条件で焼成処理を行い、前記のスピネル型結晶性複合酸化物を得ることができる。また、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。
こうして得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する焼成体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様の方法を用いることができる。また、ロジウム塩はアルミナ等を機械的に混合する際にあらかじめ加えてもよい。
次に本発明の分解触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法について説明する。本発明の分解触媒を用いて亜酸化窒素の分解反応を行う場合、200〜600℃の温度範囲で行うことができる。好ましくは300〜500℃の温度範囲、さらに好ましくは350〜450℃の温度範囲で、本発明の分解触媒と亜酸化窒素を気相で接触させればよい。200℃より温度が低いと亜酸化窒素の分解が十分ではなく、また、600℃以上では触媒寿命が短くなる傾向があるので好ましくない。触媒床の方式としては、特に制限されるものはないが、固定床が一般的に好ましく用いられる。
また、従来のパラジウムを用いた触媒では水分の影響によって触媒の活性が低下し、水分を除いても元の活性に戻らないのに対し、本発明の分解触媒は、1〜3%の水分共存によって活性は僅かに低下する場合があるものの、水分を除くと再び元の活性に戻るという特徴を有する。
次に本発明の分解触媒を用いて分解することができるガスの組成について説明する。工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、10%以下であり、本発明の分解触媒を用いることにより、排ガス中に含まれる1ppm〜10%の濃度の亜酸化窒素を分解することができる。一方、手術室から余剰麻酔ガス排除装置によって排出される亜酸化窒素の濃度は3〜70%と非常に高濃度の場合がある。また、麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素を分解する場合には、通常酸素が13〜20%存在する反応となり、分解触媒にとって過酷な条件下での反応となる。従って、除熱が可能であり、温度コントロールが十分にできれば、分解処理する亜酸化窒素の濃度に特に制限はないが、亜酸化窒素が窒素と酸素に分解する反応は発熱反応であるため、亜酸化窒素の濃度は3〜50%がよく、好ましくは3〜25%、さらに好ましくは3〜10%であることがよい。
単位触媒当たりの供給ガス量である空間速度(SV:Space Velocity)は、10hr−1〜20000hr−1の範囲であることがよく、好ましくは100hr−1〜10000hr−1の範囲である。
以下、「特開2002−253967号公報」に記載の亜酸化窒素分解用触媒について説明する。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、低濃度から高濃度の亜酸化窒素を分解することができる触媒である。手術室から排出される余剰麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、圧縮空気によって多少は希釈されているとはいえ70%以下であり、非常に高濃度であるが、本発明の亜酸化窒素の分解触媒を用いれば対応することができる。
また、本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、余剰麻酔ガス中に含まれる揮発性麻酔剤による劣化を受けた場合においても、賦活再生をすることによって活性を回復させることができる。しかも比較的低温で亜酸化窒素を分解することができ、水分が共存する場合においても水分による活性劣化を受けにくく、NOxの発生量を許容濃度以下に抑制することができ、従来の分解触媒に対し、約1/10〜1/100以下のレベルまでNOxの発生量を低減することができる。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を必須成分として含有することを特徴とし、次の(1)〜(3)のいずれかの触媒を用いることができる。
(1) シリカまたはシリカアルミナから選ばれる担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒。
(2) シリカ担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒。
(3) シリカアルミナ担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、および(d)マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒。
(1)の触媒に用いられる担体は、シリカまたはシリカアルミナであり、これらの担体に特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。
形状については特に制限はなく、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
(2)の触媒に用いられる担体は、シリカであり特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。形状については特に制限はないが、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
シリカ担体に担持する成分のうち、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属は、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%含有することが望ましい。群(c)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
シリカ担体に担持するアルミニウムは、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムと亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。
スピネル構造とはXY2O4の化学式を持つ酸化物に見られる構造で、立方晶系に属し、AlとZn、Fe、Mnは、それぞれ、ZnAl2O4、FeAl2O4、MnAl2O4のスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の一部もしくは全部とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することによって、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOxの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
(3)の触媒に用いられる担体はシリカアルミナであり特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。シリカアルミナ担体に担持する、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属は、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%含有することが望ましい。群(d)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
(3)の触媒に含まれるアルミニウムは、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、シリカアルミナ担体に、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させ、担体を焼成することによって生成することができる。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒に含まれる、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属は、前記の(1)〜(3)のいずれの触媒を用いる場合も、触媒質量全体の0.05〜10質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜6.0質量%含有することが望ましい。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない場合がある。
次に本発明の亜酸化窒素分解触媒の製造方法について説明する。
本発明の亜酸化窒素分解触媒は各種の製造方法を用いることができ、例えば(1)含浸法、(2)共沈法、(3)混練法、等の方法を用いることができる。以下に含浸法を用いて前記の(2)の触媒を製造する方法について説明するが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。
含浸法を用いて(2)の触媒を製造する方法は以下の3工程を含むことができる。
〔1〕シリカ担体に、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持する工程。
〔2〕工程〔1〕から得られる担体を400〜900℃で焼成する工程。
〔3〕工程〔2〕から得られる焼成された担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持する工程。
工程〔1〕では、シリカ担体に、アルミニウムの無機酸塩、および、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。好ましくは、アルミニウムと群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の塩は、どちらも硝酸塩を用いるのがよい。
アルミニウムと群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を担体に担持する量としては、アルミニウムを群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、また群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の担持量が、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%となるようにすることが好ましい。
工程〔1〕を行った後、好ましくは担体を乾燥し、さらに焼成工程〔2〕を行うことによって、アルミニウムおよび群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を含有し、担持したアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができる。工程〔1〕を行った後の乾燥温度は特に制限はないが、好ましくは80〜150℃の温度範囲がよく、さらに好ましくは100〜130℃の温度範囲がよい。また、乾燥雰囲気は特に制限はないが、空気を用いることが好ましい。乾燥時間は特に制限はないが、含浸法を用いた場合、通常2〜4時間程度でよい。
焼成工程〔2〕は、400〜900℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは、500〜700℃が望ましい。焼成温度が400℃より低い場合は、結晶化が十分ではない場合があり、900℃以上では担体の比表面積が減少する傾向があり好ましくない。焼成時間は特に限定されないが、1〜10時間程度がよく、好ましくは2〜4時間程度がよく、段階的に焼成温度を変化させてもよい。長時間の焼成は、その効果が飽和する場合があり経済的に好ましくなく、短時間の焼成ではその効果が少ないことがある。また、焼成は焼成炉やマッフル炉等を用いて行うことができ、この時の流通ガスとしては、窒素または空気のいずれを使用してもよい。
次に、工程〔2〕で得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の塩を担持する工程〔3〕を行う。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の塩としては、無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を用いることができ、無機酸塩の硝酸塩を用いることが好ましい。
工程〔3〕は、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する工程〔2〕で得られた担体に対して行うことが好ましいが、工程〔1〕と同時に行ってもよい。その場合には、工程〔1〕と工程〔3〕を同時に行った後に工程〔2〕を行い、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。いずれの場合であっても、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量は、触媒質量全体の0.05〜10質量%となるようにすることが好ましい。
次に、工程〔3〕を行った触媒前駆体を、前記と同様の乾燥条件で乾燥する。乾燥した触媒前駆体は還元処理をすることが好ましく、還元処理をすることにより、活性の高い、群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属を含有する触媒を得ることができる。還元処理は、例えば、(1)ヒドラジンで還元後に再乾燥し、焼成する方法、または(2)水素還元する方法、によって行うことができ、水素還元する方法を用いることが好ましい。
水素還元する方法を用いる場合は、還元温度は200〜500℃であることが好ましく、より好ましくは300〜400℃がよい。還元時間は特に限定されないが、1〜10時間程度で処理することができ、好ましくは2〜4時間程度がよい。また、前記の乾燥した触媒前駆体は(1)または(2)の還元処理をせず、窒素または空気中で焼成してもよい。
この時の焼成温度としては、200〜500℃であることが好ましく、より好ましくは300〜400℃がよい。
次に前記の亜酸化窒素分解触媒を用いる亜酸化窒素の分解方法について説明する。
本発明の亜酸化窒素の分解方法は次の4つの方法がある。本発明の亜酸化窒素の分解方法(1)は、亜酸化窒素を含有するガスを、前記の触媒と、200〜600℃で接触させることを特徴とする。また、本発明の亜酸化窒素の分解方法(2)は、触媒が、シリカまたはシリカアルミナからなる担体に、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200〜600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃〜900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
本発明の亜酸化窒素の分解方法(3)は、触媒が、担体がシリカであり、該担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200〜600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃〜900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
また、本発明の亜酸化窒素の分解方法(4)は、触媒が、担体がシリカアルミナであり、該担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、および(d)マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200〜600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃〜900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
本発明の亜酸化窒素の分解方法において、亜酸化窒素を含有するガスと分解触媒との接触温度は、200〜600℃、好ましくは、300〜500℃、さらに好ましくは、350℃〜450℃とすることが望ましい。接触温度が200℃より低い場合、亜酸化窒素の分解が十分ではない場合があり、また、600℃以上では触媒寿命が短くなる傾向がある。また触媒床の方式としては、特に制限されないが、固定床を採用することができる。
亜酸化窒素を含有するガスの組成としては、工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は通常1000ppm以下であるが、手術室の余剰麻酔ガス排除装置によって排出される亜酸化窒素の濃度は約8〜50%と非常に高濃度である。また、余剰麻酔ガス中には通常酸素が13〜20%存在するため、分解触媒にとっては過酷な条件となる。除熱が可能であり、また温度コントロールができれば、分解触媒と接触させる亜酸化窒素濃度に特に制限はないが、亜酸化窒素が窒素と酸素に分解する反応は発熱反応であるため、亜酸化窒素濃度は50%以下がよく、好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは5%程度であることが望ましい。単位触媒当たりの供給ガス量である空間速度(Space Velocity)は、10hr−1〜20000hr−1の範囲が好ましく、より好ましくは100hr−1〜10000hr−1の範囲が望ましい。
また亜酸化窒素を含有するガスは、揮発性麻酔剤を含有することがあるが、本発明の亜酸化窒素分解触媒は揮発性麻酔剤による被毒を受けにくく、しかも揮発性麻酔剤による被毒を受けて触媒活性が低下した場合であっても、本発明の分解方法を用いることにより、触媒活性を回復させ、長期間にわたって亜酸化窒素の分解を行うことができる。従って、亜酸化窒素分解触媒の活性低下が認められた場合には、一旦亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止し、焼成処理を行って触媒を賦活再生した後に、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することができる。
触媒を賦活再生する焼成処理は、500〜900℃の温度で行うことができ、好ましくは600〜800℃、さらに好ましくは650〜750℃の温度で活性が低下した分解触媒を焼成処理すればよい。焼成処理を行う間は、ヘリウムや窒素などの不活性ガスや空気を触媒層に流通させることができ、不活性ガス中に酸素が含まれていてもよい。空気を用いることが簡便で好ましい。焼成処理時間としては10分〜12時間、好ましくは20分〜6時間、さらに好ましくは30分〜2時間程度が望ましい。前記の、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持した触媒のうち、揮発性麻酔剤による被毒を受けにくく、しかも触媒の活性が回復しやすいのは、ルテニウムを含有する触媒であり、以下ロジウム、パラジウムの順に活性が低下する傾向が見られる。従って、群(a)から選ばれる貴金属成分としては少なくともルテニウムを用いることが望ましい。また、焼成処理を行った後に、水素による還元処理を行ってもよい。
本発明の分解方法(3)に用いられる触媒は、シリカ担体に担持する成分のうち、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%含有することが望ましい。群(c)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
シリカ担体に担持するアルミニウムは、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムと亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。
前記の分解方法(4)に用いられる触媒は、シリカアルミナ担体に担持する、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%含有することが望ましい。群(d)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
また、アルミニウムは、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、シリカアルミナ担体に、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させ、担体を焼成することによって生成することができる。
本発明の亜酸化窒素の分解方法において用いられる触媒に含まれる、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属は、前記の(1)〜(4)のいずれの分解方法を用いる場合も、触媒質量全体の0.05〜10質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜6.0質量%含有することが望ましい。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない場合がある。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
[第1の実施例]
第1の実施例では、亜酸化窒素分解用触媒(昭和電工(株)製、アルミナ担体(日揮ユニバーサル(株)製)にロジウム5%及び亜鉛1%を担持させたもの、粒状、平均粒径:3.2mm)を2.12g(4ml)充填した分解反応器(ニッケル製反応管、1/2インチ径、触媒の層高57mm)を、ヒータ(セラミックス電気管状炉、100V、500W)で約350℃まで加熱し、この分解反応器に濃度100%の亜酸化窒素(N2O)ガスをダウンフローにより供給しながら、亜酸化窒素ガスの分解を行った。
また、亜酸化窒素ガスを分解反応器に供給する際は、流量調整弁により20〜2422cc/minの範囲で流量調整を行った。そして、そのとき分解反応器に供給される亜酸化窒素ガスの線速度(LV:Linear Velocity)[m/min]と、空間速度(SV:Space Velocity)[hr−1]を測定すると共に、亜酸化窒素ガスを分解した後の反応容器内の発熱温度(触媒の温度)の最大値max[℃]を温度測定器で測定した。また、亜酸化窒素ガスを分解した後のNOXの発生量[ppm]を測定し、その亜酸化窒素ガスの分解率[%]を求めた。その測定結果をまとめたものを表1に示す。また、表1の測定結果から、亜酸化窒素ガスの線速度(LV)と反応容器内の発熱温度及び亜酸化窒素ガスの分解率との関係をまとめたグラフを図8に示す。
表1及び図8に示すように、上述した分解反応器に供給される亜酸化窒素ガスの流量調整を行うことによって、濃度100%の亜酸化窒素ガスであっても高い分解率(99%以上)で亜酸化窒素ガスを分解できることがわかった。
また、上記表1中に示すLV=12.75m/min、SV=17190hr−1の条件下で、ヒータによる加熱を停止し、その1時間(hr)後の反応容器内の発熱温度及び亜酸化窒素ガスの分解率とを測定した。
その結果、ヒータの停止後も亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、反応容器内の発熱温度を維持しながら、加熱時と同レベルの分解率(98.7%)で亜酸化窒素ガスの分解を継続できることがわかった。このため、ヒータの停止後から約1時間(hr)経ったところで、亜酸化窒素ガスの供給を停止し、亜酸化窒素ガスの分解を強制終了した。このことからも、亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解をヒータによる加熱を行わずに継続できることがわかった。
[第2の実施例]
第2の実施例では、図9に示すようなエネルギー取出装置を用いて、実際に亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差から電力を得るための試験を行った。
具体的に、この図9に示すエネルギー取出装置は、分解反応器24Aの構成が異なる以外は、上記図3に示すエネルギー取出装置20と同様の構成を有している。すなわち、この図9に示すエネルギー取出装置は、上記触媒4を分解反応器24の内部に収納する代わりに、この分解反応器24(図9においては第3の供給ライン9を構成する。)の上部から立設した状態で接続された分解反応器24の内部に触媒4を収納し、この分解反応器24の周囲にヒータ11を配置した構成を有している。
なお、この図9に示すエネルギー取出装置において、それ以外の上記図3に示すエネルギー取出装置と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
そして、本実施例では、この図9に示すエネルギー取出装置のうち、低温側熱交換器23の内部(A)と、高温側熱交換器22の内部(B)と、低温側伝熱板23a(C)と、高温側伝熱板22a(D)と、分解反応器24A(触媒4)(E)と、第3の供給ライン9(分解反応器24)(F)の各測定点において、温度の計測を行うことにした。
本実施例では、この図9に示すエネルギー取出装置を用いて、亜酸化窒素分解用触媒(昭和電工(株)製、アルミナ担体(日揮ユニバーサル(株)製)にロジウム5%及び亜鉛1%を担持させたもの、粒状、平均粒径:3.2mm)を10g(28ml)充填した分解反応器(ニッケル製反応管、21mm径、触媒の層高80mm)24Aを、ヒータ(バンドヒータ、210W)11で加熱し、この分解反応器24Aに亜酸化窒素ガス(濃度100%)をダウンフローにより供給しながら、亜酸化窒素ガスの分解を行った。また、亜酸化窒素ガスの供給開始から約30秒後に触媒4の温度(F)が350℃以上になったことで、ヒータ11による加熱を停止した。なお、熱電変換素子21には、2種類のペルチェ素子((株)ジーマックス製、商品名:ペルチェモジュールFPH1−12708AC、サイズ:40mm×40mm×3.45mm、及び、ペルチェモジュールFPK2−19808NC、サイズ:40mm×40mm×7mm)を、それぞれ2個ずつ計4つ平面的に並べて、互いを直列に接続したものを用いた。
そして、各測定点A〜Fの温度及び熱電変換素子21の起電力[V](G)について、ヒータ11の停止後の経過時間[min]による変化を測定した結果を図10に示す。なお、熱電変換素子21の温度差は、高温側伝熱板22a(D)と低温側伝熱板23a(C)との間の温度差である。
図10に示すように、ヒータ11の停止後も亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、触媒4の温度(F)を維持しながら、亜酸化窒素ガスの分解が継続されていることがわかる。また、分解後の温度上昇に伴って、高温側伝熱板22a(D)と低温側伝熱板23a(C)との間の温度差が大きくなり、それに伴って熱電変換素子21の起電力(G)が上昇していることがわかる。
次に、本発明の第5の実施形態として図11に示すエネルギー取出装置105について説明する。なお、図11は、このエネルギー取出装置105の概略構成を示す模式図である。
図11に示すエネルギー取出装置105は、熱電変換素子(変換手段)21と、高温側熱交換器(加熱手段)22と、低温側熱交換器(冷却手段)23と、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解熱回収ボイラー発電装置90とを備えている。
エネルギー取出装置105は、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差、亜酸化窒素を分解することで得られる分解熱を利用してエネルギーを取り出すものであり、この実施形態では電力を得るようになっている。なお、エネルギー取出装置105のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。
熱電変換素子21は、図11に示すように、高温側熱交換器(加熱手段)22及び低温側熱交換器(冷却手段)23にそれぞれ熱伝導可能に挟まれて連結され、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。
低温側熱交換器23は、入側に上記第1の供給ライン7が接続され、出側に上記第2の供給ライン8が接続されていて、その内部を亜酸化窒素ガスが流通するようになっている。また、高温側熱交換器22は、入側に上記第3の供給ライン9が接続され、出側には上記排出ライン10が接続されていて、その内部を分解ガスが通過するようになっている。
そして、熱電変換素子21は、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23により生じる温度差を利用して電力を得るようになっている。
そして、排出ライン10に排出された分解ガスは、この実施形態では、図11において破線で示すように、N2O再合成装置Rに供給し、亜酸化窒素に再合成してから高圧タンク6に供給するようになっている。なお、排出ライン10に排出した分解ガスは外気に放出してもよく、N2O再合成装置Rに供給して亜酸化窒素を再合成するか外気に放出するかは任意に設定することができる。
分解反応部5は、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備え、第2の供給ライン8と第3の供給ライン9の間に配置されて、第2の供給ライン8から供給された亜酸化窒素を分解して亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)を得るようになっている。なお、分解反応部5において、上記触媒4を用いて亜酸化窒素を分解した後、この亜酸化窒素を分解したときに得られる分解熱により、継続的に亜酸化窒素を分解可能とされている。
また、第3の供給ライン9の途中には、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体に放熱するためのコイル状に形成された分解ガス放熱部9Cが設けられている。なお、作動媒体は、分解熱回収ボイラー91に放熱される熱を吸熱する熱媒体を構成する。
分解熱回収ボイラー発電装置90は、図11に示すように、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)からの熱回収により蒸気を発生させる分解熱回収ボイラー91と、分解熱回収ボイラー91で発生した蒸気により回転駆動される蒸気タービン92と、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93と、蒸気タービン92からの蒸気を冷却して復水する復水器94と、復水器94からの復水を分解熱回収ボイラー91に給水する給水ポンプ95とを概略備えている。
なお、上記分解熱回収ボイラー91において、上述した本発明の特徴部分については、上記図11に示す構成に必ずしも限定されるものではない。すなわち、上記図11に示す本発明の特徴部分を上記分解熱回収ボイラー91に適用する場合には、ボイラーの形式や大きさ等に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
一方、上記分解熱回収ボイラー91において、上述した本発明の特徴部分以外の構造については、既存の燃焼ガスボイラーなどと同様の構造を有することができる。例えば、本発明が適用される分解熱回収ボイラー91の本発明の特徴部分以外の構造については、従来の丸ボイラーや水管ボイラーなどと同様の形式のものを用いることができる。なお、丸ボイラーについては、例えば、炉筒ボイラー、煙管ボイラー、炉筒煙管ボイラー、立てボイラーなどを挙げることができる。一方、水管ボイラーについては、例えば、自然循環式、強制循環式、貫流式のものなどを挙げることができる。
また、上記分解熱回収ボイラー91は、上記図11に示す構成以外にも、例えば、上記分解熱回収ボイラー91で得られた蒸気を更に加熱して過熱蒸気とする過熱器などの付属設備(機器/部品)、その他必要となる保安設備(機器/部品)等を備えた構成とすることが可能である。
また、上記分解熱回収ボイラー91以外の構成、すなわち、上述した蒸気タービン92や、発電機93、復水器94、給水ポンプ95などについても、既存のものと同様のものを使用することが可能である。さらに、付属設備(機器/部品)や保安設備(機器/部品)等についても同様である。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置105の動作について説明する。
エネルギー取出装置105では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して低温側熱交換器23に供給される。
なお、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
低温側熱交換器23に供給された亜酸化窒素ガスは、低温側熱交換器23の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21との間で熱交換が行われ、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する冷却が行われる。
次に、低温側熱交換器23から排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9に導かれる。
第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を放熱し、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱して蒸気を発生させ、その後、高温側熱交換器22に供給される。
そして、この分解ガスが高温側熱交換器22の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21との間で熱交換が行われて、亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する加熱が行われる。
そして、高温側熱交換器22から排出された分解ガスは、排出ライン10を通してN2O再合成装置Rに供給される。
一方、第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて分解熱で作動媒体を加熱して蒸気を発生し、蒸気は蒸気供給ライン90Aを経由して蒸気タービン92に供給されて、蒸気タービン92を回転駆動する。
そして、蒸気タービン92の駆動により、発電機93において大きな電力を発電することができる。
そして、蒸気タービン92から排出された蒸気は、復水ライン90Bに導かれて、復水器4で冷却して復水された後、給水ポンプ95で分解熱回収ボイラー91に給水されて、再び分解熱回収ボイラー91で分解ガスとの熱交換により蒸気となって循環することになる。
以上のように、このエネルギー取出装置105では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、上記熱電変換素子21に大きな温度差を発生させ、亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用して大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
また、このエネルギー取出装置105では、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、分解熱回収ボイラー91で発生させた蒸気により蒸気タービン92を回転駆動して、蒸気タービン92で駆動力(仕事量)を得ることができる。そして、蒸気タービン92の駆動により電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置105では、熱電変換素子21における発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの分解熱を分解熱回収ボイラー91で熱回収、発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、本発明は、上記図11に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置105では、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93を備える場合について説明したが、蒸気タービン92で得られた動力を電力に変換せずに使用することも可能である。
また、分解熱回収ボイラー91は、上述した発電設備で用いられる大型のものから、例えば超小型ボイラーなどの小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、本発明を適用した分解熱回収ボイラー91で発生する蒸気は、上述した発電用に限らず、種々の用途に用いることが可能であり、作動媒体としての蒸気を発生させるものに限らず、上述した亜酸化窒素を分解したときの分解熱を利用して熱媒体としての水を加熱して温水を製造する構成としてもよい。
また、上述した分解熱回収ボイラー91から蒸気タービン92、復水器94、給水ポンプ95に至る循環系統における作動媒体としては、一般に水(水蒸気)を使用することができる。一方、本発明では、例えば地熱発電等のバイナリーサイクル発電で用いられているアンモニアや、ノルマルペンタン等の有機媒体など、水よりも沸点が低いものなどを使用することも可能である。なお、本発明では、作動媒体として水よりも沸点が高いものを使用することを必ずしも妨げるものではない。
また、上記蒸気タービン92は、その蒸気圧を最大限に利用するため、例えば、蒸気の特性に合わせて高圧タービンと低圧タービンとを複合した構成や、高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンとを複合した構成などの複合式の蒸気タービンを用いることも可能である。また、複合式の蒸気タービンとする場合に、各タービンを直列(同軸)又は並列(多軸)のいずれに構成するかは任意に設定することができる。
また、上述蒸気タービン92を回転して発電機93を駆動する発電系統については、
及び蒸気タービン92と同軸に連結された発電機93を回転駆動する構成に必ずしも限定されるものではない。例えば、蒸気タービン92と、発電機93との間に、変速機やクラッチ等を配置した構成とすることも可能である。
また、蒸気タービン92は、発電設備で用いられる大型のものから小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、発電機93は、回転駆動により発電するものに限らず、蒸気タービン92による回転駆動を往復運動(振動)等に変換するための変換機構等を備えた構成とすることで、往復運動(振動)等により発電するものであってもよい。
また、エネルギー取出装置105は、その用途も工場(工業)用や住宅(家庭)用などに限らず、あらゆる分野で利用可能であり、設置(定置)型や可搬型、携帯型など、その用途に合わせて設計することが可能である。
次に、本発明の第6の実施形態として図12に示すエネルギー取出装置106について説明する。なお、図12は、このエネルギー取出装置106の概略構成を示す模式図である。
第6の実施形態に係るエネルギー取出装置106が、第5の実施形態に係るエネルギー取出装置105と異なるのは、エネルギー取出装置105において、高温側熱交換器22から排出ライン10に排出した排出ガスを、N2O再合成装置Rに直接導入していたのに代えて、エネルギー取出装置106では、排出ライン10の下流側にコイル状の第2の排ガス放熱部10Aが形成され、この第2の排ガス放熱部10Aを分解熱回収ボイラー91に配置して排出ガスが保有する分解熱で分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱する点である。その他は、第5の実施形態と同様であるので、第5の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
以上のように、エネルギー取出装置106では、排出ガスの分解熱を第2の排ガス放熱部10Aにおいて分解熱回収ボイラー91に放熱することにより、分解ガスが保有する分解熱をより効率的に利用することができる。
なお、エネルギー取出装置106において、排出ライン10に排出して第2の排ガス放熱部10Aで分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱した後に、分解ガスを外気に放出する構成としてもよい。
次に、本発明の第7の実施形態として図13に示すエネルギー取出装置107について説明する。なお、図13は、このエネルギー取出装置107の概略構成を示す模式図である。
図13に示すエネルギー取出装置107は、熱電変換素子(変換手段)21と、高温側熱交換器(加熱手段)22と、低温側熱交換器(冷却手段)23と、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解ガスタービン発電装置80とを備えている。なお、熱電変換素子21、高温側熱交換器22、低温側熱交換器23、分解反応部5は、第5の実施形態と同様であるので、第5の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
エネルギー取出装置107は、亜酸化窒素を分解することで得られる分解前と分解後の温度差、及び分解ガスが膨張する際の運動エネルギーを取り出すものであり、この実施形態では、温度差及び運動エネルギーから電力を得るようになっている。
低温側熱交換器23は、入側に上記第1の供給ライン7が接続され、出側に上記第2の供給ライン8が接続されていて、その内部を亜酸化窒素ガスが流通するようになっている。また、高温側熱交換器22は、入側に上記第3の供給ライン9が接続され、出側には上記排出ライン10が接続されている。この実施形態では、低温側熱交換器23と高温側熱交換器22とを接続する第3の供給ライン9のうち、分解ガスタービン81の上流側に位置する部分を第3の供給ライン9Bとする。
そして、排出ライン10に排出された分解ガスは、この実施形態では、図13において破線で示すように、N2O再合成装置Rに供給し、亜酸化窒素に再合成してから高圧タンク6に供給するようになっている。なお、排出ライン10に排出した分解ガスは外気に放出してもよく、N2O再合成装置Rに供給して亜酸化窒素を再合成するか外気に放出するかは任意に設定することができる。
分解反応部5は、第2の供給ライン8と第3の供給ライン9Bの間に配置され、第2の供給ライン8から供給された亜酸化窒素を分解して亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)を得るようになっている。なお、分解反応部5において、上記触媒4を用いて亜酸化窒素を分解した後、この亜酸化窒素を分解したときに得られる分解熱により、継続的に亜酸化窒素を分解可能とされている。
分解ガスタービン発電装置80は、図13に示すように、分解ガスタービン81と、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82とを概略備えており、分解ガスタービン81は、第3の供給ライン9の途中(第3の供給ライン9Bの下流側)に配置されている。
上記図13に示す分解ガスタービン81では、亜酸化窒素を分解することによって得られた高温且つ膨張した分解ガスをタービン翼に吹き付けて、それによりタービン軸を回転させて動力を得ることができるようになっている。
そして、上記分解ガスタービン81と連結された発電機82を駆動することによって電力を得ることが可能 である。
分解ガスタービン81の構造については、既存の燃焼ガスタービンが燃焼用空気を圧縮して燃焼器へと送り込む圧縮機を備えた構成であるのに対して、そのような構成が不要となるといった特徴を有している。これにより、上記分解ガスタービン81を簡便な構成とし、その軽量化を図ることが可能である。
また、上記図13に示す分解ガスタービン発電装置80では、分解ガスタービン81、発電機82について、既存のものと同様のものを使用することが可能である。さらに、付属設備(機器/部品)や保安設備(機器/部品)等についても同様である。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置107の動作について説明する。
エネルギー取出装置107では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して低温側熱交換器23に供給される。
なお、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
低温側熱交換器23に供給された亜酸化窒素ガスは、低温側熱交換器23の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21との間で熱交換が行われ、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する冷却が行われる。
次に、低温側熱交換器23から排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9Bに導かれる。この実施形態において、第3の供給ライン9Bは、第3の供給ライン9のうち、分解ガスタービン81の上流側に位置する部分を意味する。
第3の供給ライン9Bに導かれた分解ガスは、分解ガスタービン81を回転駆動する。
そして、分解ガスタービン81の駆動により、発電機82において発電することができる。
そして、分解ガスタービン81から排出された分解ガスは、第3の供給ライン9を通して高温側熱交換器22に供給される。この分解ガスが高温側熱交換器22の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21との間で熱交換が行われて、亜酸化窒素ガスの分解熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する加熱が行われる。
そして、この実施形態では、分解ガスは排出ライン10から排出されて、N2O再合成装置Rに供給される。
以上のように、このエネルギー取出装置107では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、上記熱電変換素子21に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用して大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
また、このエネルギー取出装置107では、この亜酸化窒素の膨張により発生する運動エネルギーを利用して、上記分解ガスタービン81を回転駆動して、分解ガスタービン81で駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、分解ガスタービン81の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置107では、熱電変換素子21における発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの運動エネルギーを分解ガスタービン81で動力に変換し、発電機82により発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、本発明は、上記図13に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置107では、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82を備える場合について説明したが、分解ガスタービン81で得られた動力を電力に変換せずに使用することも可能である。
また、上記分解ガスタービン81において、上述した本発明の特徴部分については、上記図13に示す構成に限定されるものではなく、適用する分解ガスタービン81の形式や大きさ等に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
また、上記分解ガスタービン81は、分解ガスの圧力を最大限に利用するため、例えば、分解ガスの特性に合わせて高圧タービンと低圧タービンとを複合した構成や、高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンとを複合した構成などの複合式の分解ガスタービンを用いることも可能である。また、このような複合式の分解ガスタービンでは、分解ガスを直列(同軸)又は並列(多軸)に配置した構成とすることが可能である。
また、上述した分解ガスタービン81を回転して発電機82を駆動する発電系統については、これら分解ガスタービン81と同軸に連結された発電機82を回転駆動する構成に必ずしも限定されるものではない。例えば、分解ガスタービン81と、発電機82との間に、変速機やクラッチ等を配置した構成とすることも可能である。
また、分解ガスタービン81は、上述した発電設備で用いられる大型のものから、例えば、マイクロガスタービンなどの小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、発電機82は、回転駆動により発電するものに限らず、分解ガスタービン81による回転駆動を往復運動(振動)等に変換するための変換機構等を備えた構成とすることで、往復運動(振動)等により発電するものであってもよい。
また、エネルギー取出装置107は、その用途も工場(工業)用や住宅(家庭)用などに限らず、あらゆる分野で利用可能であり、設置(定置)型や可搬型、携帯型など、その用途に合わせて設計することが可能である。
次に、本発明の第8の実施形態として図14に示すエネルギー取出装置108について説明する。なお、図14は、このエネルギー取出装置108の概略構成を示す模式図である。
図14に示すエネルギー取出装置108は、熱電変換素子(変換手段)21と、高温側熱交換器(加熱手段)22と、低温側熱交換器(冷却手段)23と、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解ガスタービン発電装置80、分解熱回収ボイラー発電装置90とを備えている。なお、熱電変換素子21、高温側熱交換器22、低温側熱交換器23、分解反応部5及び分解ガスタービン発電装置80は第7の実施形態と同様であるので、第7の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。また、分解熱回収ボイラー発電装置90については、第5の実施形態と同様であるので、第5の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
エネルギー取出装置108は、亜酸化窒素を分解することで得られる分解前と分解後の温度差、亜酸化窒素を分解することで得られる分解熱及び分解ガスが膨張する際の運動エネルギーを取り出すものであり、この実施形態では、温度差及び運動エネルギーから電力を得るようになっている。
エネルギー取出装置108では、第3の供給ライン9の途中にコイル状に形成された分解ガス放熱部9Cが設けられていて、分解ガスタービン81から第3の供給ライン9に排出された分解ガスの分解熱が分解熱回収ボイラー91において放熱され、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱し蒸気を発生させるようになっている。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置108の動作について説明する。
エネルギー取出装置108では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して低温側熱交換器23に供給される。
低温側熱交換器23に供給された亜酸化窒素ガスは、低温側熱交換器23の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21との間で熱交換が行われ、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する冷却が行われる。
次に、低温側熱交換器23から排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9Bに導かれる。この実施形態において、第3の供給ライン9Bは、第3の供給ライン9のうち、分解ガスタービン81の上流側に位置する部分を意味する。
第3の供給ライン9Bに導かれた分解ガスは、分解ガスタービン81を回転駆動する。
そして、分解ガスタービン81の駆動により、発電機82において発電することができる。
そして、分解ガスタービン81から排出された分解ガスは、第3の供給ライン9に導かれ、分解ガス放熱部9Cにおいて、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を放熱して、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱して蒸気を発生させ、その後、高温側熱交換器22に供給される。
高温側熱交換器22に供給されタ分解ガスは、高温側熱交換器22の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21との間で熱交換が行われて、亜酸化窒素ガスの分解熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する加熱が行われる。
そして、この実施形態では、分解ガスは、排出ライン10から排出されて、N2O再合成装置Rに供給される。
一方、第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて分解熱で作動媒体を加熱して蒸気を発生し、蒸気は蒸気供給ライン90Aを経由して蒸気タービン92に供給されて、蒸気タービン92を回転駆動する。
そして、蒸気タービン92の駆動により、発電機93において大きな電力を発電することができる。
そして、蒸気タービン92から排出された蒸気は、復水ライン90Bに導かれて、復水器4で冷却して復水された後、給水ポンプ95で分解熱回収ボイラー91に給水されて、再び分解熱回収ボイラー91で分解ガスとの熱交換により蒸気となって循環することになる。
以上のように、このエネルギー取出装置108では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、上記熱電変換素子21に大きな温度差を発生させ、亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用して大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
また、このエネルギー取出装置108では、この亜酸化窒素の膨張により発生する運動エネルギーを利用して、上記分解ガスタービン81を回転駆動して、分解ガスタービン81で駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、分解ガスタービン81の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置108では、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、分解熱回収ボイラー91で発生させた蒸気により蒸気タービン92を回転駆動して、蒸気タービン92で駆動力(仕事量)を得ることができる。そして、蒸気タービン92の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置105では、熱電変換素子21における発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの運動エネルギーを分解ガスタービン81で動力に変換して発電機82により発電し、亜酸化窒素を分解したときの分解熱を分解熱回収ボイラー91で熱回収して発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、本発明は、上記図14に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置108では、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82と、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93とを備える場合について説明したが、分解ガスタービン81と蒸気タービン92で得られた動力の双方又はいずれか一方を電力に変換せずに使用することも可能である。
次に、本発明の第9の実施形態として図15に示すエネルギー取出装置109について説明する。なお、図15は、このエネルギー取出装置109の概略構成を示す模式図である。
第9の実施形態に係るエネルギー取出装置109が、第8の実施形態に係るエネルギー取出装置108と異なるのは、エネルギー取出装置108において、高温側熱交換器22から排出ライン10に排出した排出ガスを、N2O再合成装置Rに直接導入していたのに代えて、エネルギー取出装置109では、排出ライン10の下流側にコイル状の第2の排ガス放熱部10Aが形成され、この第2の排ガス放熱部10Aを分解熱回収ボイラー91に配置して排出ガスが保有する分解熱で分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱する点である。その他は、第8の実施形態と同様であるので、第8の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
以上のように、エネルギー取出装置109では、排出ガスの分解熱を第2の排ガス放熱部10Aにおいて分解熱回収ボイラー91に放熱することにより、分解ガスが保有する分解熱をより効率的に利用することができる。
なお、エネルギー取出装置109において、排出ライン10に排出して第2の排ガス放熱部10Aで分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱した後に、分解ガスを外気に放出する構成としてもよい。
次に、本発明の第10の実施形態として図16に示すエネルギー取出装置110について説明する。なお、図16は、このエネルギー取出装置110の概略構成を示す模式図である。
図16に示すエネルギー取出装置110は、スターリングエンジン31(変換手段)と、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)と、加熱器(加熱手段)38Aと、冷却器(冷却手段)39Aと、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解熱回収ボイラー発電装置90とを備えている。
エネルギー取出装置110は、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用してエネルギーを取り出すものであり、この実施形態では電力を得るようになっている。なお、エネルギー取出装置110のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。上記図1に示すエネルギー取出装置と同等の部位については、図1と同じ符号を付し、又は図示を省略するとともに、その説明を省略する。
スターリングエンジン31は、例えば、第2の実施形態に係る2ピストン型のスターリングエンジン31Aやディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bを適用することが可能であり、冷却器39A及び加熱器38Aが設けられている。
また、スターリングエンジン31の作動については、図4又は図5において説明した2ピストン型のスターリングエンジン31A又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bの場合と同様である。
冷却器39Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた冷却器39又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた冷却器49に相当するものであり、冷却器39Aの入側には第1の供給ライン7が接続され、出側には第2の供給ライン8が接続されていて、冷却器39Aの内部を亜酸化窒素ガスが流通するようになっている。
加熱器38Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた加熱器38又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた加熱器48に相当するものであり、加熱器38Aの入側には第3の供給ライン9が接続され、出側には排出ライン10が接続されていて、加熱器38Aの内部を分解ガスが通過するようになっている。
分解反応部5は、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備え、第2の供給ライン8と第3の供給ライン9の間に配置されて、第2の供給ライン8から供給された亜酸化窒素を分解して亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)を得るようになっている。なお、分解反応部5において、上記触媒4を用いて亜酸化窒素を分解した後、この亜酸化窒素を分解したときに得られる分解熱により、継続的に亜酸化窒素を分解可能とされている。
また、第3の供給ライン9の途中には、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体に放熱するためのコイル状に形成された分解ガス放熱部9Cが設けられている。なお、作動媒体は、分解熱回収ボイラー91に放熱される熱を吸熱する熱媒体を構成する。
分解熱回収ボイラー発電装置90は、図16に示すように、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)からの熱回収により蒸気を発生させる分解熱回収ボイラー91と、分解熱回収ボイラー91で発生した蒸気により回転駆動される蒸気タービン92と、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93と、蒸気タービン92からの蒸気を冷却して復水する復水器94と、復水器94からの復水を分解熱回収ボイラー91に給水する給水ポンプ95とを概略備えている。
なお、上記分解熱回収ボイラー91において、上述した本発明の特徴部分については、図16に示す構成に必ずしも限定されるものではない。すなわち、図16に示す本発明の特徴部分を分解熱回収ボイラー91に適用する場合には、ボイラーの形式や大きさ等に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
一方、分解熱回収ボイラー91において、上述した本発明の特徴部分以外の構造については、既存の燃焼ガスボイラーなどと同様の構造を有することができる。例えば、本発明が適用される分解熱回収ボイラー91の本発明の特徴部分以外の構造については、従来の丸ボイラーや水管ボイラーなどと同様の形式のものを用いることができる。なお、丸ボイラーについては、例えば、炉筒ボイラー、煙管ボイラー、炉筒煙管ボイラー、立てボイラーなどを挙げることができる。一方、水管ボイラーについては、例えば、自然循環式、強制循環式、貫流式のものなどを挙げることができる。
また、分解熱回収ボイラー91は、図16に示す構成以外にも、例えば、分解熱回収ボイラー91で得られた蒸気を更に加熱して過熱蒸気とする過熱器などの付属設備(機器/部品)、その他必要となる保安設備(機器/部品)等を備えた構成とすることが可能である。
また、分解熱回収ボイラー91以外の構成、すなわち、上述した蒸気タービン92や、発電機93、復水器94、給水ポンプ95などについても、既存のものと同様のものを使用することが可能である。さらに、付属設備(機器/部品)や保安設備(機器/部品)等についても同様である。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置110の動作について説明する。
エネルギー取出装置110では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却器39Aに供給される。
なお、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
冷却器39Aに供給された亜酸化窒素ガスは、冷却器39Aの内部を通過する間に、スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体と冷却器39Aの間で熱交換が行われる。この冷却器39Aでは、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体に対する冷却が行われる。
次に、冷却器39Aから排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9に導かれる。
第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を放熱し、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱して蒸気を発生させ、その後、加熱器38Aに供給される。
そして、この分解ガスが加熱器38Aの内部を通過する間に、スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体と加熱器38Aの間で熱交換が行われる。すなわち、この加熱器38Aでは、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体に対する加熱が行われる。
そして、加熱器38Aから排出された分解ガスは、排出ライン10を通してN2O再合成装置Rに供給される。
一方、第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて分解熱で作動媒体を加熱して蒸気を発生し、蒸気供給ライン90Aを経由して蒸気タービン92に供給されて、蒸気タービン92を回転駆動する。
そして、蒸気タービン92の駆動により、発電機93において大きな電力を発電することができる。
そして、蒸気タービン92から排出された蒸気は、復水ライン90Bに導かれて、復水器4で冷却して復水された後、給水ポンプ95で分解熱回収ボイラー91に給水されて、再び分解熱回収ボイラー91で分解ガスとの熱交換により蒸気となって循環することになる。
以上のように、このエネルギー取出装置110では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、スターリングエンジン31の高温空間と低温空間との間に大きな温度差を発生させて、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、スターリングエンジン31の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置110では、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、分解熱回収ボイラー91で発生させた蒸気により蒸気タービン92を回転駆動して、蒸気タービン92で駆動力(仕事量)を得ることができる。そして、蒸気タービン92の駆動により電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置110では、スターリングエンジン31の駆動力による発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの分解熱を分解熱回収ボイラー91で熱回収、発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、本発明は、上記図16に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置110では、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)と、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93とを備える場合について説明したが、スターリングエンジン31と蒸気タービン92で得られる動力の双方又はいずれか一方を電力に変換せずに使用することも可能である。
また、スターリングエンジン31は、図4に示す2ピストン型(α型)や、図5に示すディスプレーサ型(γ型:ディスプレーサと出力ピストンとが異なるシリンダに配置されたタイプ)に限らず、それ以外にも、ディスプレーサ型(β型:ディスプレーサと出力ピストンとが同一のシリンダに配置されたタイプ)、ダブルアクティング型など、様々な形式のものを使用することが可能である。
また、加熱器38A及び冷却器39Aの構成についても、スターリングエンジン31の高温空間及び低温空間との間で熱交換が行える構成であればよく、スターリングエンジン31の設計(形式)に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
また、分解熱回収ボイラー91は、上述した発電設備で用いられる大型のものから、例えば超小型ボイラーなどの小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、本発明を適用した分解熱回収ボイラー91で発生する蒸気は、上述した発電用に限らず、種々の用途に用いることが可能であり、作動媒体としての蒸気を発生させるものに限らず、上述した亜酸化窒素を分解したときの分解熱を利用して熱媒体としての水を加熱して温水を製造する構成としてもよい。
また、上述した分解熱回収ボイラー91から蒸気タービン92、復水器94、給水ポンプ95に至る循環系統における作動媒体としては、一般に水(水蒸気)を使用することができる。一方、本発明では、例えば地熱発電等のバイナリーサイクル発電で用いられているアンモニアや、ノルマルペンタン等の有機媒体など、水よりも沸点が低いものなどを使用することも可能である。なお、本発明では、作動媒体として水よりも沸点が高いものを使用することを必ずしも妨げるものではない。
また、上記蒸気タービン92は、その蒸気圧を最大限に利用するため、例えば、蒸気の特性に合わせて高圧タービンと低圧タービンとを複合した構成や、高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンとを複合した構成などの複合式の蒸気タービンを用いることも可能である。また、複合式の蒸気タービンとする場合に、各タービンを直列(同軸)又は並列(多軸)のいずれに構成するかは任意に設定することができる。
また、上述蒸気タービン92を回転して発電機93を駆動する発電系統については、
及び蒸気タービン92と同軸に連結された発電機93を回転駆動する構成に必ずしも限定されるものではない。例えば、蒸気タービン92と、発電機93との間に、変速機やクラッチ等を配置した構成とすることも可能である。
また、蒸気タービン92は、発電設備で用いられる大型のものから小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、発電機93は、回転駆動により発電するものに限らず、蒸気タービン92による回転駆動を往復運動(振動)等に変換するための変換機構等を備えた構成とすることで、往復運動(振動)等により発電するものであってもよい。
また、エネルギー取出装置110は、その用途も工場(工業)用や住宅(家庭)用などに限らず、あらゆる分野で利用可能であり、設置(定置)型や可搬型、携帯型など、その用途に合わせて設計することが可能である。
次に、本発明の第11の実施形態として図17に示すエネルギー取出装置111について説明する。なお、図17は、このエネルギー取出装置111の概略構成を示す模式図である。
第11の実施形態に係るエネルギー取出装置111が、第10の実施形態に係るエネルギー取出装置110と異なるのは、エネルギー取出装置110において、高温側熱交換器22から排出ライン10に排出した排出ガスを、N2O再合成装置Rに直接導入していたのに代えて、エネルギー取出装置111では、排出ライン10の下流側にコイル状の第2の排ガス放熱部10Aが形成され、この第2の排ガス放熱部10Aを分解熱回収ボイラー91に配置して排出ガスが保有する分解熱で分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱する点である。その他は、第10の実施形態と同様であるので、第10の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
以上のように、エネルギー取出装置111では、排出ガスの分解熱を第2の排ガス放熱部10Aにおいて分解熱回収ボイラー91に放熱することにより、分解ガスが保有する分解熱をより効率的に利用することができる。
なお、エネルギー取出装置111において、排出ライン10に排出して第2の排ガス放熱部10Aで分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱した後に、分解ガスを外気に放出する構成としてもよい。
次に、本発明の第12の実施形態として図18に示すエネルギー取出装置112について説明する。なお、図18は、このエネルギー取出装置112の概略構成を示す模式図である。
図18に示すエネルギー取出装置112は、スターリングエンジン(変換手段)31と、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)と、加熱器(加熱手段)38Aと、冷却器(冷却手段)39Aと、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解熱回収ボイラー発電装置90とを備えている。なお、スターリングエンジン31、加熱器38A、冷却器39A、分解反応部5は、第10の実施形態と同様であるので、第10の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
エネルギー取出装置112は、亜酸化窒素を分解することで得られる分解前と分解後の温度差、及び分解ガスの有する分解熱を利用してエネルギーを取り出すものであり、この実施形態では、温度差及び分解熱により電力を得るようになっている。
スターリングエンジン31は、例えば、第2の実施形態に係る2ピストン型のスターリングエンジン31Aやディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bを適用することが可能であり、冷却器39A及び加熱器38Aが設けられている。
また、スターリングエンジン31の作動については、図4又は図5において説明した2ピストン型のスターリングエンジン31A又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bの場合と同様である。
冷却器39Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた冷却器39又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた冷却器49に相当するものであり、冷却器39Aの入側には第1の供給ライン7が接続され、出側には第2の供給ライン8が接続されていて、冷却器39Aの内部を亜酸化窒素ガスが流通するようになっている。
加熱器38Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた加熱器38又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた加熱器48に相当するものであり、加熱器38Aの入側には第3の供給ライン9が接続され、出側には排出ライン10が接続されていて、加熱器38Aの内部を分解ガスが通過するようになっている。
分解反応部5は、第2の供給ライン8と第3の供給ライン9Bの間に配置され、第2の供給ライン8から供給された亜酸化窒素を分解して亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)を得るようになっている。なお、分解反応部5において、上記触媒4を用いて亜酸化窒素を分解した後、この亜酸化窒素を分解したときに得られる分解熱により、継続的に亜酸化窒素を分解可能とされている。
分解ガスタービン発電装置80は、図18に示すように、分解ガスタービン81と、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82とを概略備えており、分解ガスタービン81は、第3の供給ライン9の途中(第3の供給ライン9Bの下流側)に配置されている。
図18に示す分解ガスタービン81では、亜酸化窒素を分解することによって得られた高温且つ膨張した分解ガスをタービン翼に吹き付けて、それによりタービン軸を回転させて動力を得ることができるようになっている。
そして、分解ガスタービン81と連結された発電機82を駆動することによって電力を得ることが可能 である。
分解ガスタービン81の構造については、既存の燃焼ガスタービンが燃焼用空気を圧縮して燃焼器へと送り込む圧縮機を備えた構成であるのに対して、そのような構成が不要となるといった特徴を有している。これにより、分解ガスタービン81を簡便な構成とし、その軽量化を図ることが可能である。
また、図18に示す分解ガスタービン発電装置80では、分解ガスタービン81、発電機82について、既存のものと同様のものを使用することが可能である。さらに、付属設備(機器/部品)や保安設備(機器/部品)等についても同様である。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置112の動作について説明する。
エネルギー取出装置112では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却器39Aに供給される。
なお、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
冷却器39Aに供給された亜酸化窒素ガスは、冷却器39Aの内部を通過する間に、スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体と冷却器39Aの間で熱交換が行われる。この冷却器39Aでは、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体に対する冷却が行われる。
次に、冷却器39Aから排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9Bに導かれる。この実施形態において、第3の供給ライン9Bは、第3の供給ライン9のうち、分解ガスタービン81の上流側に位置する部分を意味する。
第3の供給ライン9Bに導かれた分解ガスは、分解ガスタービン81を回転駆動する。
そして、分解ガスタービン81の駆動により、発電機82において発電することができる。
そして、分解ガスタービン81から排出された分解ガスは、第3の供給ライン9を通して加熱器38Aに供給される。この分解ガスが加熱器38Aの内部を通過する間に、スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体と加熱器38Aの間で熱交換が行われる。すなわち、この加熱器38Aでは、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体に対する加熱が行われる。
そして、加熱器38Aから排出された分解ガスは、排出ライン10を通してN2O再合成装置Rに供給される。
以上のように、このエネルギー取出装置112では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、スターリングエンジン31の高温空間と低温空間との間に大きな温度差を発生させて、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、スターリングエンジン31の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置112では、この亜酸化窒素の膨張により発生する運動エネルギーを利用して、分解ガスタービン81を回転駆動して、分解ガスタービン81で駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、分解ガスタービン81の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置112では、スターリングエンジン31の駆動力による発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの運動エネルギーを分解ガスタービン81で動力に変換し、発電機82により発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、本発明は、図18に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置112では、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)と、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82とを備える場合について説明したが、スターリングエンジン31と分解ガスタービン81で得られる動力の双方又はいずれか一方を電力に変換せずに使用することも可能である。
また、スターリングエンジン31は、図4に示す2ピストン型(α型)や、図5に示すディスプレーサ型(γ型:ディスプレーサと出力ピストンとが異なるシリンダに配置されたタイプ)に限らず、それ以外にも、ディスプレーサ型(β型:ディスプレーサと出力ピストンとが同一のシリンダに配置されたタイプ)、ダブルアクティング型など、様々な形式のものを使用することが可能である。
また、加熱器38A及び冷却器39Aの構成についても、スターリングエンジン31の高温空間及び低温空間との間で熱交換が行える構成であればよく、スターリングエンジン31の設計(形式)に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
また、分解ガスタービン81において、上述した本発明の特徴部分については、図18に示す構成に限定されるものではなく、適用する分解ガスタービン81の形式や大きさ等に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
また、分解ガスタービン81は、分解ガスの圧力を最大限に利用するため、例えば、分解ガスの特性に合わせて高圧タービンと低圧タービンとを複合した構成や、高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンとを複合した構成などの複合式の分解ガスタービンを用いることも可能である。また、このような複合式の分解ガスタービンでは、分解ガスを直列(同軸)又は並列(多軸)に配置した構成とすることが可能である。
また、上述した分解ガスタービン81を回転して発電機82を駆動する発電系統については、これら分解ガスタービン81と同軸に連結された発電機82を回転駆動する構成に必ずしも限定されるものではない。例えば、分解ガスタービン81と、発電機82との間に、変速機やクラッチ等を配置した構成とすることも可能である。
また、分解ガスタービン81は、上述した発電設備で用いられる大型のものから、例えば、マイクロガスタービンなどの小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、発電機82は、回転駆動により発電するものに限らず、分解ガスタービン81による回転駆動を往復運動(振動)等に変換するための変換機構等を備えた構成とすることで、往復運動(振動)等により発電するものであってもよい。
また、エネルギー取出装置112は、その用途も工場(工業)用や住宅(家庭)用などに限らず、あらゆる分野で利用可能であり、設置(定置)型や可搬型、携帯型など、その用途に合わせて設計することが可能である。
次に、本発明の第13の実施形態として図19に示すエネルギー取出装置113について説明する。なお、図19は、このエネルギー取出装置113の概略構成を示す模式図である。
図19に示すエネルギー取出装置113は、スターリングエンジン(変換手段)31と、加熱器(加熱手段)38Aと、冷却器(冷却手段)39Aと、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解ガスタービン発電装置80、分解熱回収ボイラー発電装置90とを備えている。なお、スターリングエンジン31、加熱器38A、冷却器39A、分解反応部5及び分解ガスタービン発電装置80は第12の実施形態と同様であるので、第12の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。また、分解熱回収ボイラー発電装置90については、第10の実施形態と同様であるので、第10の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
エネルギー取出装置113は、亜酸化窒素を分解することで得られる分解前と分解後の温度差、分解ガスの有する分解熱、及び分解ガスが膨張する際の運動エネルギーを取り出すものであり、この実施形態では、温度差、分解熱、及び運動エネルギーから電力を得るようになっている。
エネルギー取出装置113では、第3の供給ライン9の途中にコイル状に形成された分解ガス放熱部9Cが設けられていて、分解ガスタービン81から第3の供給ライン9に排出された分解ガスの分解熱が分解熱回収ボイラー91において放熱され、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱し蒸気を発生させるようになっている。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置113の動作について説明する。
エネルギー取出装置113では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却器39Aに供給される。
冷却器39Aに供給された亜酸化窒素ガスは、冷却器39Aの内部を通過する間に、スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体と冷却器39Aの間で熱交換が行われる。この冷却器39Aでは、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体に対する冷却が行われる。
次に、冷却器39Aから排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9Bに導かれる。この実施形態において、第3の供給ライン9Bは、第3の供給ライン9のうち、分解ガスタービン81の上流側に位置する部分を意味する。
第3の供給ライン9Bに導かれた分解ガスは、分解ガスタービン81を回転駆動する。
そして、分解ガスタービン81の駆動により、発電機82において発電することができる。
そして、分解ガスタービン81から排出された分解ガスは、第3の供給ライン9に導かれ、分解ガス放熱部9Cにおいて、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を放熱して、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱して蒸気を発生させ、その後、加熱器38Aに供給される。
そして、この分解ガスが加熱器38Aの内部を通過する間に、スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体と加熱器38Aの間で熱交換が行われる。すなわち、この加熱器38Aでは、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体に対する加熱が行われる。
そして、加熱器38Aから排出された分解ガスは、排出ライン10を通してN2O再合成装置Rに供給される。
一方、第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて分解熱で作動媒体を加熱して蒸気を発生し、蒸気供給ライン90Aを経由して蒸気タービン92に供給されて、蒸気タービン92を回転駆動する。
そして、蒸気タービン92の駆動により、発電機93において大きな電力を発電することができる。
そして、蒸気タービン92から排出された蒸気は、復水ライン90Bに導かれて、復水器4で冷却して復水された後、給水ポンプ95で分解熱回収ボイラー91に給水されて、再び分解熱回収ボイラー91で分解ガスとの熱交換により蒸気となって循環することになる。
以上のように、このエネルギー取出装置113では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、スターリングエンジン31の高温空間と低温空間との間に大きな温度差を発生させて、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、スターリングエンジン31の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置113では、この亜酸化窒素の膨張により発生する運動エネルギーを利用して、分解ガスタービン81を回転駆動して、分解ガスタービン81で駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、分解ガスタービン81の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置113では、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、分解熱回収ボイラー91で発生させた蒸気により蒸気タービン92を回転駆動して、蒸気タービン92で駆動力(仕事量)を得ることができる。そして、蒸気タービン92の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置113では、スターリングエンジン31の駆動による発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの運動エネルギーを分解ガスタービン81で動力に変換して発電機82による発電、及び亜酸化窒素を分解したときの分解熱を分解熱回収ボイラー91で熱回収して発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、本発明は、図19に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置113では、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)と、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82と、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93とを備える場合について説明したが、スターリングエンジン31、分解ガスタービン81及び蒸気タービン92で得られた動力のうち選択したものを電力に変換せずに使用することも可能である。
次に、本発明の第14の実施形態として図20に示すエネルギー取出装置114について説明する。なお、図20は、このエネルギー取出装置114の概略構成を示す模式図である。
第14の実施形態に係るエネルギー取出装置114が、第13の実施形態に係るエネルギー取出装置113と異なるのは、エネルギー取出装置113において、高温側熱交換器22から排出ライン10に排出した排出ガスを、N2O再合成装置Rに直接導入していたのに代えて、エネルギー取出装置114では、排出ライン10の下流側にコイル状の第2の排ガス放熱部10Aが形成され、この第2の排ガス放熱部10Aを分解熱回収ボイラー91に配置して排出ガスが保有する分解熱で分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱する点である。その他は、第13の実施形態と同様であるので、第13の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
以上のように、エネルギー取出装置114では、排出ガスの分解熱を第2の排ガス放熱部10Aにおいて分解熱回収ボイラー91に放熱することにより、分解ガスが保有する分解熱をより効率的に利用することができる。
なお、エネルギー取出装置114において、排出ライン10に排出して第2の排ガス放熱部10Aで分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱した後に、分解ガスを外気に放出する構成としてもよい。
次に、本発明の第15の実施形態として図21に示すエネルギー取出装置115について説明する。なお、図21は、このエネルギー取出装置115の概略構成を示す模式図である。また、図22は、エネルギー取出装置115の熱サイクルを説明する概念図である。
図21に示すエネルギー取出装置115は、構成体(変換手段)71と、高温側の加熱部(加熱手段)72と、低温側の冷却部(冷却手段)73と、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解熱回収ボイラー発電装置90とを備えている。エネルギー取出装置115のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。エネルギー取出装置115において、上記図1に示すエネルギー取出装置と同等の部位については、図1と同じ符号を付し、又は図示を省略するとともに、その説明を省略する。
エネルギー取出装置115は、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差及び亜酸化窒素を分解することで得られる分解熱を利用してエネルギーを取り出すものであり、この実施形態では電力を得るようになっている。
構成体71は、図21に示すように、熱電変換素子21と、スターリングエンジン31とスターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)とを備えている。
熱電変換素子21は、図21に示すように、高温側熱交換器(加熱手段)22及び低温側熱交換器(冷却手段)23にそれぞれ熱伝導可能に挟まれて連結され、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。そして、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23により熱電変換素子21に生じる温度差を利用して電力を得るようになっている。
スターリングエンジン31は、例えば、第2の実施形態に係る2ピストン型のスターリングエンジン31Aやディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bを適用することが可能であり、冷却器39A及び加熱器38Aが設けられている。
冷却部73は、熱電変換素子21に設けられた低温側熱交換器23と、冷却側接続ライン8Aと、スターリングエンジン31に設けられた冷却器39Aとを備え、上流側から低温側熱交換器23、冷却側接続ライン8A、冷却器39Aの順に接続された構成とされ、入側に上記第1の供給ライン7が接続され、出側に上記第2の供給ライン8が接続されていて、その内部を亜酸化窒素ガスが流通するようになっている。
冷却器39Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた冷却器39又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた冷却器49に相当するものである。
加熱部72は、スターリングエンジン31に設けられた加熱器38A、加熱側接続ライン9A、熱電変換素子21に設けられた高温側熱交換器22とを備え、上流側から加熱器38A、加熱側接続ライン9A、高温側熱交換器22の順に接続された構成とされ、入側に上記第3の供給ライン9が接続され、出側に上記排出ライン10が接続されていて、その内部を分解ガスが通過するようになっている。
加熱器38Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた加熱器38又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた加熱器48に相当するものである。
そして、排出ライン10に排出された分解ガスは、この実施形態では、図21において破線で示すように、N2O再合成装置Rに供給し、亜酸化窒素に再合成してから高圧タンク6に供給するようになっている。なお、排出ライン10に排出した分解ガスは外気に放出してもよく、N2O再合成装置Rに供給して亜酸化窒素を再合成するか外気に放出するかは任意に設定することができる。
分解反応部5は、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備え、第2の供給ライン8と第3の供給ライン9の間に配置されて、第2の供給ライン8から供給された亜酸化窒素を分解して亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)を得るようになっている。なお、分解反応部5において、上記触媒4を用いて亜酸化窒素を分解した後、この亜酸化窒素を分解したときに得られる分解熱により、継続的に亜酸化窒素を分解可能とされている。
また、第3の供給ライン9の途中には、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体に放熱するためのコイル状に形成された分解ガス放熱部9Cが設けられている。なお、作動媒体は、分解熱回収ボイラー91に放熱される熱を吸熱する熱媒体を構成する。
分解熱回収ボイラー発電装置90は、図21に示すように、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)からの熱回収により蒸気を発生させる分解熱回収ボイラー91と、分解熱回収ボイラー91で発生した蒸気により回転駆動される蒸気タービン92と、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93と、蒸気タービン92からの蒸気を冷却して復水する復水器94と、復水器94からの復水を分解熱回収ボイラー91に給水する給水ポンプ95とを概略備えている。
なお、上記分解熱回収ボイラー91において、上述した本発明の特徴部分については、上記図21に示す構成に必ずしも限定されるものではない。すなわち、上記図21に示す本発明の特徴部分を上記分解熱回収ボイラー91に適用する場合には、ボイラーの形式や大きさ等に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
一方、上記分解熱回収ボイラー91において、上述した本発明の特徴部分以外の構造については、既存の燃焼ガスボイラーなどと同様の構造を有することができる。例えば、本発明が適用される分解熱回収ボイラー91の本発明の特徴部分以外の構造については、従来の丸ボイラーや水管ボイラーなどと同様の形式のものを用いることができる。なお、丸ボイラーについては、例えば、炉筒ボイラー、煙管ボイラー、炉筒煙管ボイラー、立てボイラーなどを挙げることができる。一方、水管ボイラーについては、例えば、自然循環式、強制循環式、貫流式のものなどを挙げることができる。
また、上記分解熱回収ボイラー91は、上記図21に示す構成以外にも、例えば、上記分解熱回収ボイラー91で得られた蒸気を更に加熱して過熱蒸気とする過熱器などの付属設備(機器/部品)、その他必要となる保安設備(機器/部品)等を備えた構成とすることが可能である。
また、上記分解熱回収ボイラー91以外の構成、すなわち、上述した蒸気タービン92や、発電機93、復水器94、給水ポンプ95などについても、既存のものと同様のものを使用することが可能である。さらに、付属設備(機器/部品)や保安設備(機器/部品)等についても同様である。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置115の動作について説明する。
エネルギー取出装置115では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却部73に供給される。
なお、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
そして、冷却部73に供給された亜酸化窒素ガスは、冷却部73の内部を通過する。冷却部73では、まず、低温側熱交換器23に導入されて、上記熱電変換素子21と低温側熱交換器23の間で熱交換が行われる。すなわち、この低温側熱交換器23では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する冷却が行われる。
次に、低温側熱交換器23に導入された亜酸化窒素は、低温側熱交換器23から排出されて冷却側接続ライン8Aを通して冷却器39Aに導入され、この亜酸化窒素ガスが冷却器39Aの内部を通過する間に、上記スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体と冷却器39Aの間で熱交換が行われる。この冷却部73では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体に対する冷却が行われる。
次に、冷却部73から排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9に導かれる。
第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を放熱し、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱して蒸気を発生させ、その後、加熱部72に供給される。
そして、この分解ガスが加熱部72の内部を通過する間に、加熱器38Aにおいて、上記スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体と加熱器38Aの間で熱交換が行われる。すなわち、この加熱器38Aでは、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、上記スターリングエンジン31の高温空間中を流れる作動流体に対する加熱が行われる。
次に、分解ガスは、加熱器38Aから排出されて加熱側接続ライン9Aを通して高温側熱交換器22に導入されて、上記熱電変換素子21と高温側熱交換器22の間で熱交換が行われる。すなわち、この高温側熱交換器22では、亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱を利用して、上記熱電変換素子21に対する加熱が行われる。そして、分解ガスは、排出ライン10から排出されることになる。
そして、加熱部72から排出された分解ガスは、排出ライン10を通してN2O再合成装置Rに供給される。
一方、第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて分解熱で作動媒体を加熱して蒸気を発生し、蒸気供給ライン90Aを経由して蒸気タービン92に供給されて、蒸気タービン92を回転駆動する。
そして、蒸気タービン92の駆動により、発電機93において大きな電力を発電することができる。
そして、蒸気タービン92から排出された蒸気は、復水ライン90Bに導かれて、復水器4で冷却して復水された後、給水ポンプ95で分解熱回収ボイラー91に給水されて、再び分解熱回収ボイラー91で分解ガスとの熱交換により蒸気となって循環することになる。
以上のように、このエネルギー取出装置115では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、構成体71を構成する熱電変換素子21に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
また、このエネルギー取出装置115では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、構成体71を構成するスターリングエンジン31の高温空間と低温空間との間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、スターリングエンジン31の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置115では、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、分解熱回収ボイラー91で発生させた蒸気により蒸気タービン92を回転駆動して、蒸気タービン92で駆動力(仕事量)を得ることができる。そして、蒸気タービン92の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置115では、熱電変換素子21における発電及びスターリングエンジン31の駆動による発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの分解熱を分解熱回収ボイラー91で熱回収して発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
図22は、エネルギー取出装置115の熱効率を概念的に示す図であり、縦軸は、エネルギー取出装置115における亜酸化窒素、分解ガス等の温度(T)を示しており、図中に矢印を付して示した線図は、熱サイクル線図を概念的に示している。なお、熱サイクル線図において、下側の曲線Lは亜酸化窒素の温度(冷却側)を、上側の曲線Hは分解ガスの温度(加熱側)であり、RはN2O再合成装置における亜酸化窒素の再合成過程を、Dは分解反応器における亜酸化窒素の分解過程を示している。
また、TC1、TC2は、それぞれ分解反応部における分解過程D前後の温度を、TR1、TR2は、それぞれN2O再合成装置における再合成過程R前後の温度を示しており、Tbpは分解熱回収ボイラ91の作動媒体の沸点を示している。
ここで、図22の横軸は分解ガスが高温から低温に変化する過程を示しており、高温側から順に、分解熱回収ボイラ91(分解ガス放熱部9C)、スターリングエンジン31、熱電変換素子21が形成されている。
分解熱回収ボイラ91(分解ガス放熱部9C)は分解ガスの熱により作動媒体の蒸気を発生させ、この蒸気でタービンを駆動する。従って、図22の分解熱回収ボイラ91の領域で、作動媒体の沸点Tbpの線と上側の曲線Hの間の領域に相当する熱エネルギーが蒸気発生に寄与する。従って、分解ガスの温度が高いほど作動媒体の蒸気発生量が多く、また体積膨張も大きくなり、分解熱回収ボイラとガスタービンによる発電には有利である。
スターリングエンジン31と熱電変換素子21は、温度差を利用する発電であるため、図22において上側の曲線Hと下側の曲線Lの間の領域に相当する熱エネルギーが発電に寄与する。従って、分解ガスの温度が高いほど、またN2O再合成装置で再合成した亜酸化窒素の温度(または、高圧ガス容器6から放出されたガスの温度)が低いほど発電には有利である。
エネルギー取出装置115は図22に示されるように、分解ガスの温度に着目した場合、高温側から、分解熱回収ボイラー91、スターリングエンジン31、熱電変換素子21の順に配置されている。しかし、本発明のエネルギー取出装置は、分解熱回収ボイラー91、スターリングエンジン31および熱電変換素子21の各モジュールが上記の順序で配置されたものに限定はされない。
例えば、分解ガスの温度が最も高い部分に分解熱回収ボイラー91とスターリングエンジン31をそれぞれ配置した場合を比較して、分解熱回収ボイラー91と蒸気タービン92による発電量がスターリングエンジン31の発電量より大きい場合には、図21(図22)に示すように、分解熱回収ボイラー91を分解ガスの温度が最も高い部分に配置する。また、逆にスターリングエンジン31の発電量が分解熱回収ボイラー91と蒸気タービン92による発電量より大きい場合には、スターリングエンジン31を分解ガスの温度が最も高い部分に配置する。
また、熱電変換素子21の耐熱性が分解熱回収ボイラー91およびスターリングエンジン31に較べて低い場合には、図21(図22)に示すように、熱電変換素子21を分解ガスの温度が最も低い部分に配置する。一方、熱電変換素子21の耐熱性が充分に高い場合には、同じ温度条件で比較した場合の発電量の大小により、他のモジュールとの配置の順序を決定する。例えば、高温側と低温側の温度差が同じ場合に、熱電変換素子21の発電量がスターリングエンジン31より低い場合には、図21(図22)に示すように、スターリングエンジン31を分解ガス温度の高い側に配置する。一方、熱電変換素子21の発電量がスターリングエンジン31より高い場合には、熱電変換素子21を分解ガス温度の高い側に配置する。
以上のように、分解熱回収ボイラー91、スターリングエンジン31、熱電変換素子21の各モジュールを、それぞれのモジュールに最適な温度環境に配置することにより、エネルギー取出装置115全体のエネルギー効率を高めることができる。
なお、本発明は、上記図21に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置115では、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)と、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93を備える場合について説明したが、スターリングエンジン31と蒸気タービン92で得られた動力の双方又はいずれか一方を電力に変換せずに使用することも可能である。
また、分解熱回収ボイラー91は、上述した発電設備で用いられる大型のものから、例えば超小型ボイラーなどの小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、本発明を適用した分解熱回収ボイラー91で発生する蒸気は、上述した発電用に限らず、種々の用途に用いることが可能であり、作動媒体としての蒸気を発生させるものに限らず、上述した亜酸化窒素を分解したときの分解熱を利用して熱媒体としての水を加熱して温水を製造する構成としてもよい。
また、上述した分解熱回収ボイラー91から蒸気タービン92、復水器94、給水ポンプ95に至る循環系統における作動媒体としては、一般に水(水蒸気)を使用することができる。一方、本発明では、例えば地熱発電等のバイナリーサイクル発電で用いられているアンモニアや、ノルマルペンタン等の有機媒体など、水よりも沸点が低いものなどを使用することも可能である。なお、本発明では、作動媒体として水よりも沸点が高いものを使用することを必ずしも妨げるものではない。
また、上記蒸気タービン92は、その蒸気圧を最大限に利用するため、例えば、蒸気の特性に合わせて高圧タービンと低圧タービンとを複合した構成や、高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンとを複合した構成などの複合式の蒸気タービンを用いることも可能である。また、複合式の蒸気タービンとする場合に、各タービンを直列(同軸)又は並列(多軸)のいずれに構成するかは任意に設定することができる。
また、上述蒸気タービン92を回転して発電機93を駆動する発電系統については、
及び蒸気タービン92と同軸に連結された発電機93を回転駆動する構成に必ずしも限定されるものではない。例えば、蒸気タービン92と、発電機93との間に、変速機やクラッチ等を配置した構成とすることも可能である。
また、蒸気タービン92は、発電設備で用いられる大型のものから小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、発電機93は、回転駆動により発電するものに限らず、蒸気タービン92による回転駆動を往復運動(振動)等に変換するための変換機構等を備えた構成とすることで、往復運動(振動)等により発電するものであってもよい。
また、エネルギー取出装置115は、その用途も工場(工業)用や住宅(家庭)用などに限らず、あらゆる分野で利用可能であり、設置(定置)型や可搬型、携帯型など、その用途に合わせて設計することが可能である。
次に、本発明の第16の実施形態として図23に示すエネルギー取出装置116について説明する。なお、図23は、このエネルギー取出装置116の概略構成を示す模式図である。
第16の実施形態に係るエネルギー取出装置116が、第15の実施形態に係るエネルギー取出装置115と異なるのは、エネルギー取出装置115では、構成体71に代えて、構成体71Aを備えている点である。
構成体71Aは、構成体71では、加熱部72に供給された分解ガスが、スターリングエンジン31の加熱器38Aから加熱側接続ライン9Aを経由して熱電変換素子21の高温側熱交換器22に導入されていたのに代えて、加熱側接続ライン9Aの途中にコイル状の第3の排ガス放熱部9Dが形成され、この第3の排ガス放熱部9Dを分解熱回収ボイラー91に配置して、加熱器38Aから排出された排出ガスを高温側熱交換器22に導く途中で第3の排ガス放熱部9Dに導いて、排出ガスが保有する分解熱で分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱する点である。その他は、第15の実施形態と同様であるので、第15の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
上記のエネルギー取出装置116の構成は、スターリングエンジン31の加熱器38Aの出口における分解ガスの温度が分解ガス回収ボイラー91の作動媒体の温度より高い場合に適用される。ここで、構成体71Aの加熱部72の途中で導いた排出ガスの分解熱を分解熱回収ボイラー91で放熱することにより、分解ガスが保有する分解熱を効率的に利用することができる。
図24は、エネルギー取出装置116の熱効率を概念的に示す図である。図24が図22と異なる点は、横軸方向のスターリングエンジン31の部分と熱電変換素子21の部分の間に分解熱回収ボイラー91の分解ガス放熱部9Dの部分が挿入されていることである。スターリングエンジン31の加熱器38Aを出た分解ガスの温度が分解ガス回収ボイラー91の作動媒体の沸点より高い場合には、図24において作動媒体の沸点Tbpの線と上側の曲線Hの間の領域に相当する熱エネルギーが作動媒体の蒸気発生に利用できるため、分解ガスの分解熱を効率よく利用できる。
ここで、エネルギー取出装置116は図24に示されるように、分解ガスの温度に着目した場合、高温側から、分解熱回収ボイラー91(分解ガス放熱部9C)、スターリングエンジン31、分解熱回収ボイラー91(分解ガス放熱部9D)、熱電変換素子21の順に配置されている。
しかし、本発明のエネルギー取出装置は、分解熱回収ボイラー91(分解ガス放熱部9C)、スターリングエンジン31、分解熱回収ボイラー91(分解ガス放熱部9D)および熱電変換素子21の各モジュールが上記の順序で配置されたものに限定はされない。第15の実施形態の場合と同様に、分解熱回収ボイラー91(分解ガス放熱部9C)、スターリングエンジン31、分解熱回収ボイラー91(分解ガス放熱部9D)および熱電変換素子21の各モジュールを、それぞれのモジュールに最適な温度環境に配置することにより、エネルギー取出装置116全体のエネルギー効率を高めることができる。
次に、本発明の第17の実施形態として図25に示すエネルギー取出装置117について説明する。なお、図25は、このエネルギー取出装置117の概略構成を示す模式図である。
第17の実施形態に係るエネルギー取出装置117が、第15の実施形態に係るエネルギー取出装置115と異なるのは、エネルギー取出装置115において、高温側熱交換器22から排出ライン10に排出した排出ガスを、N2O再合成装置Rに直接導入していたのに代えて、エネルギー取出装置117では、排出ライン10の下流側にコイル状の第2の排ガス放熱部10Aが形成され、この第2の排ガス放熱部10Aを分解熱回収ボイラー91に配置して排出ガスが保有する分解熱で分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱する点である。その他は、第15の実施形態と同様であるので、第15の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
以上のように、エネルギー取出装置117では、排出ガスの分解熱を第2の排ガス放熱部10Aにおいて分解熱回収ボイラー91に放熱することにより、分解ガスが保有する分解熱をより効率的に利用することができる。
なお、エネルギー取出装置117において、排出ライン10に排出して第2の排ガス放熱部10Aで分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱した後に、分解ガスを外気に放出する構成としてもよい。
次に、本発明の第18の実施形態として図25に示すエネルギー取出装置118について説明する。なお、図25は、このエネルギー取出装置118の概略構成を示す模式図である。
図25に示すエネルギー取出装置118は、構成体(変換手段)71と、高温側の加熱部(加熱手段)72と、低温側の冷却部(冷却手段)73と、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解ガスタービン発電装置80とを備えている。なお、構成体71、加熱部72、冷却部73、分解反応部5は、第15の実施形態と同様であるので、第15の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
エネルギー取出装置118は、亜酸化窒素を分解することで得られる分解前と分解後の温度差、及び分解ガスが膨張する際の運動エネルギーを取り出すものであり、この実施形態では、温度差及び運動エネルギーから電力を得るようになっている。
構成体71は、図26に示すように、熱電変換素子21と、スターリングエンジン31とスターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)とを備えている。
熱電変換素子21は、図26に示すように、高温側熱交換器(加熱手段)22及び低温側熱交換器(冷却手段)23にそれぞれ熱伝導可能に挟まれて連結され、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。そして、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23により熱電変換素子21に生じる温度差を利用して電力を得るようになっている。
スターリングエンジン31は、例えば、第2の実施形態に係る2ピストン型のスターリングエンジン31Aやディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bを適用することが可能であり、冷却器39A及び加熱器38Aが設けられている。
冷却部73は、熱電変換素子21に設けられた低温側熱交換器23と、冷却側接続ライン8Aと、スターリングエンジン31に設けられた冷却器39Aとを備え、上流側から低温側熱交換器23、冷却側接続ライン8A、冷却器39Aの順に接続された構成とされ、入側に上記第1の供給ライン7が接続され、出側に上記第2の供給ライン8が接続されていて、その内部を亜酸化窒素ガスが流通するようになっている。
冷却器39Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた冷却器39又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた冷却器49に相当するものである。
加熱部72は、スターリングエンジン31に設けられた加熱器38A、加熱側接続ライン9A、熱電変換素子21に設けられた高温側熱交換器22とを備え、上流側から加熱器38A、加熱側接続ライン9A、高温側熱交換器22の順に接続された構成とされ、入側に上記第3の供給ライン9が接続され、出側に上記排出ライン10が接続されていて、その内部を分解ガスが通過するようになっている。
加熱器38Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aに設けられた加熱器38又はディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bに設けられた加熱器48に相当するものである。
そして、排出ライン10に排出された分解ガスは、この実施形態では、図26において破線で示すように、N2O再合成装置Rに供給し、亜酸化窒素に再合成してから高圧タンク6に供給するようになっている。なお、排出ライン10に排出した分解ガスは外気に放出してもよく、N2O再合成装置Rに供給して亜酸化窒素を再合成するか外気に放出するかは任意に設定することができる。
分解反応部5は、第2の供給ライン8と第3の供給ライン9Bの間に配置され、第2の供給ライン8から供給された亜酸化窒素を分解して亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)を得るようになっている。なお、分解反応部5において、上記触媒4を用いて亜酸化窒素を分解した後、この亜酸化窒素を分解したときに得られる分解熱により、継続的に亜酸化窒素を分解可能とされている。
分解ガスタービン発電装置80は、図26に示すように、分解ガスタービン81と、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82とを概略備えており、分解ガスタービン81は、第3の供給ライン9の途中(第3の供給ライン9Bの下流側)に配置されている。
図26に示す分解ガスタービン81では、亜酸化窒素を分解することによって得られた高温且つ膨張した分解ガスをタービン翼に吹き付けて、それによりタービン軸を回転させて動力を得ることができるようになっている。
そして、上記分解ガスタービン81と連結された発電機82を駆動することによって電力を得ることが可能 である。
分解ガスタービン81の構造については、既存の燃焼ガスタービンが燃焼用空気を圧縮して燃焼器へと送り込む圧縮機を備えた構成であるのに対して、そのような構成が不要となるといった特徴を有している。これにより、上記分解ガスタービン81を簡便な構成とし、その軽量化を図ることが可能である。
また、図26に示す分解ガスタービン発電装置80では、分解ガスタービン81、発電機82について、既存のものと同様のものを使用することが可能である。さらに、付属設備(機器/部品)や保安設備(機器/部品)等についても同様である。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置118の動作について説明する。
エネルギー取出装置118では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却部73に供給される。
なお、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
冷却部73に供給された亜酸化窒素ガスは、冷却部73の内部を通過する。冷却部73では、上記構成体71との間で熱交換が行われ、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記構成体71に対する冷却が行われる。
次に、冷却部73から排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9Bに導かれる。この実施形態において、第3の供給ライン9Bは、第3の供給ライン9のうち、分解ガスタービン81の上流側に位置する部分を意味する。
第3の供給ライン9Bに導かれた分解ガスは、分解ガスタービン81を回転駆動する。
そして、分解ガスタービン81の駆動により、発電機82において発電することができる。
そして、分解ガスタービン81から排出された分解ガスは、第3の供給ライン9を通して加熱部72に供給される。この分解ガスが加熱部72の内部を通過する間に、上記構成体71との間で熱交換が行われて、亜酸化窒素ガスの分解熱を利用して、上記構成体71に対する加熱が行われる。
そして、この実施形態では、分解ガスは排出ライン10から排出されて、N2O再合成装置Rに供給される。
以上のように、このエネルギー取出装置118では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、構成体71を構成する熱電変換素子21に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
また、このエネルギー取出装置118では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、構成体71を構成するスターリングエンジン31の高温空間と低温空間との間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、スターリングエンジン31の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置118では、この亜酸化窒素の膨張により発生する運動エネルギーを利用して、分解ガスタービン81を回転駆動して、分解ガスタービン81で駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、分解ガスタービン81の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置118では、構成体71における熱電変換素子21による発電及びスターリングエンジン31の駆動力による発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの運動エネルギーを分解ガスタービン81で動力に変換し、発電機82により発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、本発明は、図26に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置118では、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)と、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82とを備える場合について説明したが、スターリングエンジン31と分解ガスタービン81で得られる動力の双方又はいずれか一方を電力に変換せずに使用することも可能である。
また、スターリングエンジン31は、図4に示す2ピストン型(α型)や、図5に示すディスプレーサ型(γ型:ディスプレーサと出力ピストンとが異なるシリンダに配置されたタイプ)に限らず、それ以外にも、ディスプレーサ型(β型:ディスプレーサと出力ピストンとが同一のシリンダに配置されたタイプ)、ダブルアクティング型など、様々な形式のものを使用することが可能である。
また、加熱器38A及び冷却器39Aの構成についても、スターリングエンジン31の高温空間及び低温空間との間で熱交換が行える構成であればよく、スターリングエンジン31の設計(形式)に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
また、分解ガスタービン81において、上述した本発明の特徴部分については、図26に示す構成に限定されるものではなく、適用する分解ガスタービン81の形式や大きさ等に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
また、分解ガスタービン81は、分解ガスの圧力を最大限に利用するため、例えば、分解ガスの特性に合わせて高圧タービンと低圧タービンとを複合した構成や、高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンとを複合した構成などの複合式の分解ガスタービンを用いることも可能である。また、このような複合式の分解ガスタービンでは、分解ガスを直列(同軸)又は並列(多軸)に配置した構成とすることが可能である。
また、上述した分解ガスタービン81を回転して発電機82を駆動する発電系統については、これら分解ガスタービン81と同軸に連結された発電機82を回転駆動する構成に必ずしも限定されるものではない。例えば、分解ガスタービン81と、発電機82との間に、変速機やクラッチ等を配置した構成とすることも可能である。
また、分解ガスタービン81は、上述した発電設備で用いられる大型のものから、例えば、マイクロガスタービンなどの小型のものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用することが可能である。
また、発電機82は、回転駆動により発電するものに限らず、分解ガスタービン81による回転駆動を往復運動(振動)等に変換するための変換機構等を備えた構成とすることで、往復運動(振動)等により発電するものであってもよい。
また、エネルギー取出装置112は、その用途も工場(工業)用や住宅(家庭)用などに限らず、あらゆる分野で利用可能であり、設置(定置)型や可搬型、携帯型など、その用途に合わせて設計することが可能である。
次に、本発明の第19の実施形態として図27に示すエネルギー取出装置119について説明する。なお、図27は、このエネルギー取出装置119の概略構成を示す模式図である。
図27に示すエネルギー取出装置119は、構成体(変換手段)71と、加熱部(加熱手段)72と、冷却部(冷却手段)73と、触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)5と、分解ガスタービン発電装置80、分解熱回収ボイラー発電装置90とを備えている。なお、構成体71、加熱部72、冷却部73、分解反応部5及び分解ガスタービン発電装置80は第18の実施形態と同様であるので、第18の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。また、分解熱回収ボイラー発電装置90については、第15の実施形態と同様であるので、第15の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
エネルギー取出装置119は、亜酸化窒素を分解することで得られる分解前と分解後の温度差、分解ガスの有する分解熱、及び分解ガスが膨張する際の運動エネルギーを取り出すものであり、この実施形態では、温度差、分解熱、及び分解ガスの運動エネルギーから電力を得るようになっている。
エネルギー取出装置119では、第3の供給ライン9の途中にコイル状に形成された分解ガス放熱部9Cが設けられていて、分解ガスタービン81から第3の供給ライン9に排出された分解ガスの分解熱が分解熱回収ボイラー91において放熱され、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱し蒸気を発生させるようになっている。
以上のような構造を有するエネルギー取出装置119の動作について説明する。
エネルギー取出装置119では、先ず、上記高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(N2O)が上記第1の供給ライン7を通して冷却器39Aに供給される。
冷却器39Aに供給された亜酸化窒素ガスは、冷却器39Aの内部を通過する。この亜酸化窒素ガスが冷却器39Aの内部を通過する間に、スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体と冷却器39Aの間で熱交換が行われる。この冷却器39Aでは、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記スターリングエンジン31の低温空間中を流れる作動流体に対する冷却が行われる。
次に、冷却器39Aから排出された亜酸化窒素ガスは、第2の供給ライン8を通して分解反応部5に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応部5の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N2,O2)は、第3の供給ライン9Bに導かれる。この実施形態において、第3の供給ライン9Bは、第3の供給ライン9のうち、分解ガスタービン81の上流側に位置する部分を意味する。
第3の供給ライン9Bに導かれた分解ガスは、分解ガスタービン81を回転駆動する。
そして、分解ガスタービン81の駆動により、発電機82において発電することができる。
そして、分解ガスタービン81から排出された分解ガスは、第3の供給ライン9に導かれ、分解ガス放熱部9Cにおいて、亜酸化窒素を分解した分解ガス(N2,O2)の分解熱を放熱して、分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱して蒸気を発生させ、その後、加熱器38Aに供給される。
一方、第3の供給ライン9に導かれた分解ガスは、分解ガス放熱部9Cにおいて分解熱で作動媒体を加熱して蒸気を発生し、蒸気供給ライン90Aを経由して蒸気タービン92に供給されて、蒸気タービン92を回転駆動する。
そして、蒸気タービン92の駆動により、発電機93において大きな電力を発電することができる。
そして、蒸気タービン92から排出された蒸気は、復水ライン90Bに導かれて、復水器4で冷却して復水された後、給水ポンプ95で分解熱回収ボイラー91に給水されて、再び分解熱回収ボイラー91で分解ガスとの熱交換により蒸気となって循環することになる。
そして、分解ガスタービン81から排出された分解ガスは、第3の供給ライン9を通して加熱部72に供給される。この分解ガスが加熱部72の内部を通過する間に、上記構成体71との間で熱交換が行われて、亜酸化窒素ガスの分解熱を利用して、上記構成体71に対する加熱が行われる。
そして、この実施形態では、分解ガスは排出ライン10から排出されて、N2O再合成装置Rに供給される。
以上のように、このエネルギー取出装置119では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、構成体71を構成する熱電変換素子21に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
また、このエネルギー取出装置119では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用して、構成体71を構成するスターリングエンジン31の高温空間と低温空間との間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、スターリングエンジン31の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置119では、この亜酸化窒素の膨張により発生する運動エネルギーを利用して、分解ガスタービン81を回転駆動して、分解ガスタービン81で駆動力(仕事量)を得ることが可能である。そして、分解ガスタービン81の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
また、このエネルギー取出装置119では、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、分解熱回収ボイラー91で発生させた蒸気により蒸気タービン92を回転駆動して、蒸気タービン92で駆動力(仕事量)を得ることができる。そして、蒸気タービン92の駆動により大きな電力を発電することが可能である。
以上のようにして、エネルギー取出装置119では、熱電変換素子21による発電及スターリングエンジン31の駆動による発電に加えて、亜酸化窒素を分解したときの運動エネルギーを分解ガスタービン81で動力に変換して発電機82による発電、及び亜酸化窒素を分解したときの分解熱を分解熱回収ボイラー91で熱回収して発電するので、効率的にエネルギーを取り出すことができる。
なお、本発明は、図19に示す実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、エネルギー取出装置119では、スターリングエンジン31の駆動により発電する発電機(不図示)と、分解ガスタービン81の駆動により発電する発電機82と、蒸気タービン92の駆動により発電する発電機93とを備える場合について説明したが、スターリングエンジン31、分解ガスタービン81及び蒸気タービン92で得られた動力のうち選択したものを電力に変換せずに使用することも可能である。
次に、本発明の第20の実施形態として図28に示すエネルギー取出装置120について説明する。なお、図28は、このエネルギー取出装置120の概略構成を示す模式図である。
第20の実施形態に係るエネルギー取出装置120が、第19の実施形態に係るエネルギー取出装置119と異なるのは、エネルギー取出装置119では、構成体71に代えて、構成体71Aを備えている点である。
構成体71Aは、構成体71では、加熱部72に供給された分解ガスが、加熱器38Aから加熱側接続ライン9Aを経由して高温側熱交換器22に導入されていたのに代えて、加熱側接続ライン9Aの途中にコイル状の第3の排ガス放熱部9Dが形成され、この第3の排ガス放熱部9Dを分解熱回収ボイラー91に配置して、加熱器38Aから排出された排出ガスを高温側熱交換器22に導く途中で第3の排ガス放熱部9Dに導いて、排出ガスが保有する分解熱で分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱する点である。その他は、第19の実施形態と同様であるので、第19の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
以上のように、エネルギー取出装置120では、構成体71Aの加熱部72の途中で導いた排出ガスの分解熱を分解熱回収ボイラー91で放熱することにより、分解ガスが保有する分解熱を効率的に利用することができる。
次に、本発明の第21の実施形態として図29に示すエネルギー取出装置121について説明する。なお、図29は、このエネルギー取出装置121の概略構成を示す模式図である。
第21の実施形態に係るエネルギー取出装置121が、第19の実施形態に係るエネルギー取出装置119と異なるのは、エネルギー取出装置119において、高温側熱交換器22から排出ライン10に排出した排出ガスを、N2O再合成装置Rに直接導入していたのに代えて、エネルギー取出装置121では、排出ライン10の下流側にコイル状の第2の排ガス放熱部10Aが形成され、この第2の排ガス放熱部10Aを分解熱回収ボイラー91に配置して排出ガスが保有する分解熱で分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱する点である。その他は、第19の実施形態と同様であるので、第19の実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
以上のように、エネルギー取出装置121では、排出ガスの分解熱を第2の排ガス放熱部10Aにおいて分解熱回収ボイラー91に放熱することにより、分解ガスが保有する分解熱をより効率的に利用することができる。
なお、エネルギー取出装置121において、排出ライン10に排出して第2の排ガス放熱部10Aで分解熱回収ボイラー91に貯留された作動媒体を加熱した後に、分解ガスを外気に放出する構成としてもよい。