JP2013189412A - マトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤 - Google Patents

マトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤 Download PDF

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Abstract

【課題】安全性が良好で効果の高い新規なマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤の提供。
【解決手段】シダ目シシガシラ科(Blechnaceae)ヒリュウシダ属(Blechnum)植物の抽出物を有効成分として配合することを特徴とするマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤、さらにコラゲナーゼ群に属するMMP1産生抑制剤である。抽出溶媒として好ましくは、水、低級アルコール、液状多価アルコール、及びこれらの混液が用いられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、新規なマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤に関する。
皮膚は肌表面から順に表皮、真皮、皮下組織の3層で構成されている。
真皮は線維芽細胞などの細胞成分と、これらの細胞が産生する細胞外基質とから構成されており、細胞成分としては繊維芽細胞や、マクロファージ、肥満細胞、血管や神経の構成細胞があり、細胞外基質としてはコラーゲン線維や、エラスチン線維、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなどがあることが知られている。細胞外基質のなかでも真皮乾燥重量の約70%を占めると言われるコラーゲン線維は、皮膚のハリや弾力の維持に重要な役割を担っていると同時に、その他の様々な組織においても間質成分として存在し構造を保つ上でも重要である。
コラーゲン分子はα鎖2本とβ鎖1本からなる3重螺旋構造をとっており、α鎖の構造の違いから20種類のサブタイプが存在するが、真皮に存在するコラーゲン線維の大部分はI型コラーゲンである。
マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase:以下MMPと略すこともある)は細胞周辺の細胞外基質の分解代謝に関与するタンパク質分解酵素群である。MMPはその分子構造や基質特異性などの観点からいくつかのサブタイプが存在し、MMP−1、MMP−3、MMP−2、MMP−8、MMP−9等、十数種類知られている。これらは、活性部位に亜鉛(II)イオンを保有する細胞外マトリックス分解酵素である点は共通するが、マトリックスメタロプロテアーゼ1(Matrix metalloproteinase 1:以下MMP−1と略すこともある)はI型コラーゲンの3重螺旋構造を分解すること、MMP−2、MMP−9はゼラチンや基底膜を構成するIV型コラーゲンを分解すること、マトリックスメタロプロテアーゼ8(Matrix metalloproteinase 8)は好中球コラゲナーゼとして知られている。
これらのMMPはそのほとんどが不活性の前駆体として産生され、他のMMP等のプロテアーゼによって活性化される。例えば、MMP−1はMMP−2を、MMP−3はMMP−9を活性化する働きを有している(非特許文献1)ことから、MMP−1およびMMP−3の作用を抑制すれば、MMP−2およびMMP−9の活性化も阻害され、その結果、これらのMMPによる作用も抑制することができる。
マトリックスメタロプロテアーゼは真皮細胞外基質の代謝をコントロールしているだけでなく、細胞の浸潤やサイトカイン等の生理活性分子の活性化にも深く関与しており、種々の疾患との関連性が報告されている。例えば、皮膚においては、種々のサイトカインや成長因子、細胞の相互作用等により一過的にマトリックスメタロプロテアーゼが過剰に産生されること、創傷、火傷、潰瘍性、日光による皮膚損傷、水疱性、苔癬性、肉芽性等の各種皮膚疾患に関与していることが知られている(非特許文献2)。また、紫外線暴露により過剰に産生されたマトリックスメタロプロテアーゼにより引き起こされるコラーゲン、エラスチン等の真皮マトリックスの線維減少、変性が皮膚のシワやたるみの原因となることが明らかになっている。さらに、癌組織でもマトリックスメタロプロテアーゼが過剰に産生されており、癌細胞の浸潤や転移に深く関与することが知られている。具体的には癌細胞がマトリックスメタロプロテアーゼを分泌することで自身を保持する基底膜や組織から離脱し、あるいは癌細胞が分泌するマトリックスメタロプロテアーゼによって細胞外基質を分解しながら組織中に浸潤することで血管に到達して血管内に進入し、全身への転移を可能にする。さらにリウマチや角膜炎などの疾病においてもマトリックスメタロプロテアーゼの産生が亢進することが知られている。このように皮膚をはじめとする組織の分解代謝や細胞の浸潤、転移、生理活性分子活性化など多岐にわたる生体反応に寄与しているマトリックスメタロプロテアーゼの作用を制御することは、非常に重要である。
これらの背景のもと、マトリックスメタロプロテアーゼの制御という観点から様々なマトリックスメタロプロテアーゼ活性阻害剤あるいは産生抑制剤や、産生促進剤の検討がなされている。例えば特許文献1および2にはザクロ実、レモンバーム葉、ゲンノショウコ葉、キンミズヒキ葉、グアバ、菱などの植物抽出物を有効成分とするマトリックスメタロプロテアーゼ(コラゲナーゼ)活性阻害剤が開示されている。しかし、酵素活性を阻害するよりも、酵素の産生を抑制する方が、マトリックスメタロプロテアーゼの作用を根本的に抑制することができるため、酵母培養液を有効成分とするマトリックスメタロプロテアーゼ1産生抑制剤(特許文献3)、スルフヒドリル基を有する化合物及びジスルフィド結合を有する化合物を有効成分とするマトリックスメタロプロテアーゼ1産生抑制剤(特許文献4)等が報告されている。
一方、従来より植物由来の成分は安全性が良好であることから、皮膚外用剤、化粧料、食品及び医薬品等の薬効成分として種々利用されている。シダ目シシガシラ科(Blechnaceae)ヒリュウシダ属(Blechnum)植物から得られた抽出物についても、皮膚外用剤又は化粧料等への利用や抗酸化剤としての利用(例えば、特許文献5)細胞賦活剤としての利用(例えば、特許文献6)、美白剤としての利用(例えば、特許文献7)、抗炎症剤としての利用(例えば、特許文献8)などが種々提案されている。しかし当該植物のマトリックスメタロプロテアーゼの産生や活性に対する作用に関してはこれまでに知られていなかった。
特開平7−196526号公報 特開平7−291873号公報 特開2008−24638号公報 特開2002−47178号公報 特開2005−232131号公報 特開2003−321377号公報 特開2003−095910号公報 特開2009−215251号公報 Exp.Dermatol.No.6、199−213、1997、Kahri V−M.et al. FEBS letters、NO.441、137−140、1998、Scott KA et al.
上記の種々のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤には、安全性、安定性等が確認されていないものもあり、また抑制効果が十分ではない場合もある。したがって、本発明は、マトリックスメタロプロテアーゼの作用を抑制する効果の高いマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤を提供するものである。
本発明者は上記課題を解決するため、種々の植物抽出物について鋭意検討した結果、シダ目シシガシラ科(Blechnaceae)ヒリュウシダ属(Blechnum)植物がマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、シダ目シシガシラ科(Blechnaceae)ヒリュウシダ属(Blechnum)植物を有効成分とするマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤を提供するものである。
前記ヒリュウシダ属植物が、ブレクナム・ディスカラー(Blechnum discolor)であるのが好適である。
前記植物抽出物が、アルコール類又は含水アルコール類で抽出されたものであるのが好適である。
前記アルコール類抽出物及び/又は含水アルコール類抽出物から回収された水溶性画分であるのが好適である。
前記マトリックスメタロプロテアーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)であるのが好適である。
本発明によれば、安全性が良好な、新規なマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤を提供することができる。
MMP−1の産生比率を示す図である。UVA照射によって、MMP−1の産生が誘導され(中央のカラム)、ブレクナム・ディスカラー抽出物を添加するとUVA照射により誘導されたMMP−1の産生が抑制されている(右側のカラム)。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
本発明は、シダ目シシガシラ科(Blechnaceae)ヒリュウシダ属(Blechnum)植物の群から選ばれる一種又は二種以上の抽出物を有効成分とするマトリックスメタロプロテアーゼMMP1抑制剤に関する。前記シシガシラ科(Blechnaceae)ヒリュウシダ属(Blechnum)に属する植物としては、例えば、ブレクナム
カペンセ(Blechnum capnse)、ブレクナム ディスカラー(Blechnum discolor)、ブレクナム プロセラム(Blechnum procerum)、ブレクナム フルヴィアタイル(Blechnum fluviatile)、ブレクナム モンタナム(Blechnum montanum)、ブレクナム デュラム(Blechnum durum)、ブレクナムアマバイル(Blechnum amabile)、ブレクナム バチエニイ(Blechnum buchtienii)、ブレクナム カスタニュウム(Blechnum castaneum)、ブレクナム コレンソイ(Blechnum colensoi)、ブレクナム サイカディフォリウム(Blechnum cycadifolium)、ブレクナム ハンコッキイ(Blechnum
hancockii)、ブレクナム ハステイタム(Blechnum hastatum)、ブレクナム インディキューム(Blechnumindicum)、ブレクナム ニグラム(Blechnum nigrum)、ブレクナム ナイポニクム(Blechnum niponicum)、ブレクナム オリエンテール(Blechnum orientale)等が挙げられる。より好ましくは、ブレクナム ディスカラー(Blechnum discolor)の抽出物が好適である。
前記シダ植物の使用する部位は、いずれの部位を用いてもよく、例えば、根、茎、幹、葉、胞子等から選ばれる1種又は2種以上のものを用いることができる。このうち、地上部分のものを用いるのが好ましく、葉及び/又は茎を用いるのがより好ましい。これらの部位は、乾燥、細切、圧搾、又は発酵などの適宜の処理を施した後に、抽出を行ってもよい。
前記シダ植物の抽出方法は、特に限定されない。抽出は、前記シダ植物を一定温度(低温、常温又は加温)下にて、所定期間、浸漬等にて抽出溶媒を用いて行えば良い。前記抽出溶媒としては、特に限定されないが、例えば水;アルコール類;アセトン等のケトン類;エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類等の一種又は二種以上を用いることができる。前記アルコール類として、メタノール、エタノール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ブタンジオール等の液状多価アルコール等が挙げられる。前記アルコール類は、1価アルコール類又は2価アルコール類(例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のブタンジオール等)が好ましく、アルコール類の炭素数は1〜4程度であるのが好ましい。この溶媒のうち、水及び/又はアルコール類(好適には炭素数1〜4)が好ましい。前記アルコール類は、メタノール、エタノール、ブタンジオール(好適には1.3−ブタンジオール)から選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。さらに、前記溶媒として、水及び/又はエタノールがより好ましく、エタノール及び水−エタノール混合溶液が好ましい。また、アルコール類濃度(V/V)は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは40体積%以上、さらに好ましくは70〜100体積%であるのが好適である。また、含水エタノールを用いる場合、エタノール濃度は70〜90体積%とするのが好適である。
前記のシダ植物抽出物は、そのまま有効成分として用いてもよいし、適宜の期間そのまま放置し、熟成させた後に用いることもできる。必要に応じて、さらに、抽出溶媒の留去、濾過やイオン交換樹脂等による脱臭、脱色等の精製処理を施した後に用いることもできる。又、液体クロマトグラフィー等の分離手段を用いて、活性の高い画分のみを用いることもできる。
前記シダ植物の好ましい抽出方法の例としては、前記シダ植物をアルコール類濃度0〜100体積%のアルコール類又は水−アルコール類混合液にて、室温(例えば5〜40℃程度)で又は加温(40℃以上)して0.5〜5日間抽出を行う方法が挙げられる。
前記アルコール類濃度は、好ましくは40体積%以上、より好ましくは70体積%以上である。前記抽出温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは75℃〜95℃である。このように、水沸点に近い温度帯で有機溶媒抽出することによってマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制効果を持つ有効成分を効率良く抽出することを可能である。また、抽出期間を、0.5〜2日程度で行うことも可能である。
前記シダ植物抽出物のさらなる精製方法の例として、前記シダ植物粗抽出物を、アルコール類−水混合液又は水に混合した後、冷温(1〜10℃程度)にて2日〜2週間静置して、沈殿した水不溶性画分(残渣)を除去して水溶性画分(上澄み液や濾過液など)を回収する方法が挙げられる。このときのアルコール類の濃度は、好ましくは50体積%以下であり、より好ましくは40体積%以下、より30体積%以下であり、さらに好ましくは20体積%以下の低濃度とするのが好適である。前記抽出物から水溶性画分を回収することによって、マトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制効果を持つ有効成分を効率良く抽出することを可能とする。また、処理期間を、4〜9日程度にするのが、前記抽出物中の水不溶性画分(残渣)を除去しやすいので、好適である。さらに、得られた水溶性画分から、活性炭等の濾過剤を用いて夾雑物や着色物等の不純物を除去した後、乾固して、シダ植物抽出精製物を得るのが、より生理活性向上の点で好ましい。
前記シダ植物抽出物は、液状、ペースト状、ゲル状等いずれの形態であってもよい。すなわち、抽出溶媒を含む液状の抽出液をそのままあるいは濃縮してから用いても良いし、また、抽出液を減圧乾燥、又は凍結乾燥等により乾固させて固体状とした後に用いることもできる。また、スプレードライ等により乾燥させて粉末として用いることもできる。また更には、これら固体状あるいは粉末の抽出物を適宜溶媒に再溶解して抽出液として用いても良い。
本発明のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤は、種々の用途に用いることができる。例えばリウマチ、歯周病、角膜炎、癌等においてマトリックスメタロプロテアーゼの産生が異常亢進することが知られており、マトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤は、これらの治療薬としての可能性が検討されている。また本発明のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤は、安全性も高く、また製剤中での安定性にも優れているので、食品(飲料も含む)への配合や、化粧料又は皮膚外用剤の有効成分として用いるのが好ましい。
本発明のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤を配合する化粧料又は皮膚外用剤は、皮膚に適用することにより、マトリックスメタロプロテアーゼの過剰な産生を抑制する。その結果、皮膚の柔軟性や弾力性が維持され、しわ・たるみ等の老徴現象が予防・改善され、また種々の皮膚疾患が予防・改善される。即ち、老化防止用若しくは皮膚疾患予防用の化粧料又は皮膚外用剤、及びしわ・たるみ改善用化粧料又は皮膚外用剤として優れた効果を奏する。
前記化粧料又は皮膚外用剤中における、本発明のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤の配合量は特に限定されてないが、一般的には、マトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制の観点から全組成に対して乾燥固形分に換算して好ましくは0.00001〜5質量%であり、より好ましくは0.0001〜0.5質量%である。この範囲内であれば、本発明のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤を安定に配合することができ、かつ高いマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制効果を得ることができる。
また、前記化粧料又は皮膚外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、製造に通常使用される成分、例えば、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、植物・動物・微生物由来の抽出物、美白剤、消炎剤、活性酸素除去剤、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類等を必要に応じて添加することができる。
本発明の化粧料又は皮膚外用剤の性状は液状、ゲル状、クリーム状、半固形状、固形状、スティック状、パウダー状等のいずれであってもよく、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗顔料、メーキャップ化粧料等の皮膚用化粧料に属する形態;シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤等の頭髪化粧料に関する形態;等とすることができる。また、本発明の薬効剤は、上記の各種化粧料に配合できる他、分散液、軟膏、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤等の皮膚外用等に配合することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
[製造例1:ブレクナム ディスカラー抽出物の調製]
シダ目シシガシラ科(Blechnaceae)ヒリュウシダ属(Blechnum)ブレクナム・ディスカラー(Blechnum discolor)の葉100gを細切し、これに80体積%含水エタノール2Lを加えて85℃で加熱して1日間抽出を行った。抽出液を濾過後濃縮し、水とエタノールを添加して、エタノール濃度を20体積%、全量を300mLに調整した後に5℃に1週間静置し生じた沈殿を取り除いた。その後、活性炭を用いて濾過を行い、溶媒を留去して乾固し、固形分であるブレクナム・ディスカラー抽出物を得た。収量は3gであった。
[試験例1:マトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)産生抑制試験]
<UVA照射によるMMP1発現誘導>
試験には正常ヒト真皮線維芽細胞(Normal Human Dermal Fibloblast;以下NHDF細胞と略す)をウシ胎児血清10%含有ダルベッコ変性イーグル培地(以下、10%FBS含有DMEM培地と略す)にて継代培養して用いた。トリプシンで回収したNHDF細胞を細胞培養用シャーレ(内径6cmφ)に20000個/cm2の濃度で播種し24時間培養した後、Hanks液2mLに置換してUVAを10J/cm2の強度で照射しMMP1産生を誘導した。照射終了後、10%FBS含有DMEM培地5mLに置換し、製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物を30体積%エタノール水溶液に溶解し25μL添加して24時間培養した。(ブレクナム・ディスカラー抽出物の最終濃度は0.03mg/mLである。)また、UVA非照射およびUVA10J/cm2照射後、製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物を含まない30体積%エタノール水溶液を25μL添加して24時間培養したものをコントロールとした。24時間培養後、Quick Gene RNA
Cultured Cell Kit(フジフィルム社製)を用いて自動核酸抽出装置にて細胞内のRNAを回収した。試験は全てN=3で実施した。
<RT−PCRによるMMP1発現量の評価>
回収したRNA各500ngにPrimeScript RT Master Mix(タカラバイオ社製)2μLを加えてRNase Free水で全量を10μLとし、37℃15分間逆転写反応してcDNA溶液を得た。
このcDNA溶液をRNase Free水で80倍希釈して3μL分取し、MMP1プライマー(タカラバイオ社製、最終濃度0.2μM)およびQuantiTect SYBR Green PCR Master Mix(キアゲン社製)10μLを添加し、RNase Free水で全量を20μLに調整して、アニーリング温度62℃にてRT−PCR(サイクル数40)を行った。内部標準としてGAPDH(プライマーはタカラバイオ社製)を使用し、それぞれのGAPDHで補正したMMP1の発現比率をブレクナム・ディスカラー抽出物未添加かつUVA非照射のコントロールを1として相対的に算出し、図1に記載した。
図1記載のように、NHDF細胞にUVA10J/cm2を照射するとMMP1の産生量が約2倍に増加したが、UVA照射後に製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出液を添加して培養したNHDF細胞ではMMP1の産生上昇が抑制されていた。したがって、製造例のブレクナム・ディスカラー抽出液は優れたMMP1産生抑制効果を有することが示された。
以下は、本発明のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤を配合する化粧料又は皮膚外用剤の例である。
[実施例2:洗顔料]
(製法)
A.下記成分(1)〜(5)を加熱溶解する。
B.下記成分(6)、(7)を加熱溶解し、Aに混合する。
C.下記成分(8)〜(11)を加熱溶解し、Bに混合する。
D.Cを冷却後、下記成分(12)〜(14)を加え混合し、洗顔料を得た。
(成分) (質量%)
(1)ラウリン酸 5.0
(2)ミリスチン酸 18.5
(3)ステアリン酸 6.0
(4)グリセリン 12.0
(5)ポリエチレングリコール1500 5.0
(6)水酸化カリウム 6.5
(7)精製水 残量
(8)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 5.0
(9)ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 1.8
(10)ポリオキシエチレン(7.5E.O.)ラウリルエーテル 2.0
(11)ジステアリン酸エチレングリコール 1.0
(12)ヒドロキシプロピルメチルセルロース1%水溶液 5.0
(13)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.01
(14)香料 適量
[実施例3:化粧水]
(製法)
A.下記成分(1)〜(8)を混合溶解する。
B.下記成分(9)〜(12)を混合溶解する。
C.AにBを加え混合し、化粧水を得た。
(成分) (質量%)
(1)クエン酸 0.05
(2)クエン酸ナトリウム 0.2
(3)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)水溶液 0.5
(4)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
(5)グリセリン 3.0
(6)1,3−ブチレングリコール 8.0
(7)精製水 残量
(8)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.0001
(9)エタノール 10.0
(10)香料 適量
(11)フェノキシエタノール 0.1
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
[実施例4:乳液(水中油型)]
(製法)
A.下記成分(1)〜(13)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.下記成分(14)〜(19)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.AにBを加え乳化し、更に下記成分(20)を加え混合する。
D.Cを冷却し、下記成分(21)を加え混合し、乳液を得た。
(成分) (質量%)
(1)ステアリン酸 1.0
(2)セタノール 0.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 0.5
(4)流動パラフィン 2.0
(5)スクワラン 3.0
(6)ホホバ油 3.0
(7)パルミチン酸セチル 0.2
(8)パルミチン酸レチノール 0.2
(9)酢酸トコフェロール 0.05
(10)1,2−ペンタンジオール 2.0
(11)モノステアリン酸ソルビタン 0.3
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
(13)ジブチルヒドロキシトルエン 0.1
(14)トリエタノールアミン 0.5
(15)1,3−ブチレングリコール 15.0
(16)グリセリン 3.0
(17)ポリエチレングリコール6000 0.5
(18)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.005
(19)精製水 残量
(20)カルボキシビニルポリマー1質量%水溶液 8.0
(21)香料 適量
[実施例5:クリーム]
(製法)
A.下記成分(1)〜(14)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.下記成分(15)〜(19)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.AにBを加え乳化し、更に下記成分(20)を加え混合する。
D.Cを冷却し、下記成分(21)、(22)を加え混合し、クリームを得た。
(成分) (質量%)
(1)ステアリン酸 2.5
(2)セタノール 2.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)ワセリン 2.0
(5)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 2.0
(6)ミリスチン酸イソトリデシル 5.0
(7)流動パラフィン 8.0
(8)スクワラン 5.0
(9)ミツロウ 1.0
(10)パルミチン酸セチル 2.0
(11)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 1.5
(13)コエンザイムQ10 0.1
(14)1,2−ペンタンジオール 1.0
(15)トリエタノールアミン 1.2
(16)1,3−ブチレングリコール 8.0
(17)グリセリン 2.0
(18)ポリエチレングリコール20000 0.5
(19)精製水 残量
(20)カルボキシビニルポリマー1%水溶液 10.0
(21)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.05
(22)香料 適量
[実施例6:油中水型日焼け止めクリーム]
(製法)
A.下記成分(1)〜(8)を70℃で加熱混合した。
B.下記成分(9)〜(11)及び(13)(14)を50℃で加温混合した。
C.AにBを加えて乳化し、冷却後(12)を添加して油中水型日焼け止めクリームを得た。
(成分) (質量%)
(1)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン(注1) 2.0
(2)パルミチン酸オクチル 15.0
(3)デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
(4)トリベヘン酸グリセリル 1.0
(5)微粒子酸化亜鉛 12.0
(6)微粒子酸化チタン 3.0
(7)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(注2) 7.0
(8)4−tertブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン
(注3) 1.0
(9)ジプロピレングリコール 5.0
(10)エタノール 5.0
(11)フェノキシエタノール 0.2
(12)香料 適量
(13)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.0005
(14)精製水 残量
(注1)KF−6017(信越化学工業社製)
(注2)ユビナールMC80(BASF社製)
(注3)PARSOL 1789(L.C.UNITED社製)
[実施例7:パック化粧料]
(製法)
A.下記成分(1)〜(5)及び(15)を70℃で加熱混合し、室温まで冷却する。
B.Aに下記成分(6)〜(14)を添加混合してパック化粧料を得た。
(成分) (質量%)
(1)ポリビニルアルコール 15.0
(2)グリセリン 10.0
(3)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコール 3.0
(4)トリオクタン酸グリセリル 5.0
(5)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム 1.0
(6)エタノール 20.0
(7)カオリン 2.0
(8)酸化チタン 2.0
(9)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
(10)乳酸(50質量%水溶液) 0.5
(11)乳酸ナトリウム(50質量%水溶液) 0.5
(12)フェノキシエタノール 0.1
(13)香料 適量
(14)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.001
(15)精製水 残量
[実施例8:水中油型リキッドファンデーション]
(製法)
A.下記成分(1)〜(7)を70℃で加熱混合し、この混合物に下記成分(13)〜(18)を加えて混合し70℃に保つ。
B.下記成分(8)〜(12)を70℃で加熱混合する。
C.BにAを加えて乳化し、冷却後、下記成分(19)〜(20)を添加してリキッドファンデーションを得た。
(成分) (質量%)
(1)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 2.0
(2)流動パラフィン 5.0
(3)ステアリン酸 2.0
(4)セタノール 1.0
(5)自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(6)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8.0
(7)メチルパラベン 0.05
(8)グリセリン 5.0
(9)トリエタノールアミン 1.0
(10)カルボキシメチルセルロース 0.2
(11)ベントナイト 0.5
(12)精製水 残量
(13)酸化チタン 6.0
(14)微粒子酸化チタン 2.0
(15)微粒子酸化亜鉛 4.0
(16)マイカ 2.0
(17)タルク 4.0
(18)着色顔料 適量
(19)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.1
(20)香料 適量
[実施例9:水中油型軟膏剤]
(製法)
(製造方法)
A.成分1〜3を加熱混合し、75℃に保つ。
B.成分4〜9を混合し、75℃に保つ。
C.AにBを徐々に加え、軟膏剤を得た。
(成分) (質量%)
(1)ステアリン酸 18.0
(2)セタノール 4.0
(3)酢酸dl−α―トコフェロール(注3) 0.2
(4)トリエタノールアミン 2.5
(5)グリセリン 5.0
(6)グリチルリチン酸ジカリウム(注4) 0.5
(7)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 1.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)精製水 残量
(注3)エーザイ社製
(注4)和光純薬工業社製
以下、本発明のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤を食品に配合する場合における配合例を示す。
[実施例12:錠剤]
(製法)
A.成分1〜7を均一に混合し、常法に従って錠剤を得た。
(処方) (質量%)
(1)乳糖 24.0
(2)結晶セルロース 20.0
(3)コーンスターチ 15.0
(4)製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.1
(5)デキストリン 残量
(6)グリセリン脂肪酸エステル 5.0
(7)二酸化ケイ素 1.0
[実施例13:清涼飲料]
(製法)
A.成分1〜5を均一に混合し、常法に従って清涼飲料を得た。
(処方) (質量%)
1.果糖ブドウ糖液糖 30.0
2.乳化剤 0.5
3.製造例1のブレクナム・ディスカラー抽出物 0.001
4.香料 適量
5.精製水 残量
実施例2〜実施例13の皮膚外用剤、化粧料及び食品はいずれも変色・変臭および沈殿物などがなく、安定であった。これらはMMPの産生を抑制することにより、MMPが関与する様々な現象や疾患を予防・抑制・改善・治療するために利用することができ、老化防止用若しくは皮膚疾患予防用の化粧料又は皮膚外用剤、及びしわ・たるみ改善用化粧料又は皮膚外用剤に有用である。

Claims (5)

  1. シダ目シシガシラ科(Blechnaceae)ヒリュウシダ属(Blechnum)植物の抽出物を有効成分とするマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤。
  2. 前記ヒリュウシダ属植物が、ブレクナム・ディスカラー(Blechnum discolor)である請求項1記載のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤。
  3. 前記植物抽出物が、アルコール類又は含水アルコール類で抽出されたものである請求項1又は2記載のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤。
  4. 前記植物抽出物が、アルコール類抽出物及び/又は含水アルコール類抽出物から回収された水溶性画分である請求項3記載のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤。
  5. 前記マトリックスメタロプロテアーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマトリックスメタロプロテアーゼ産生抑制剤。

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