JP2013188073A - モータの回転数制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】外乱の推定値を最終トルク指令値に反映させつつ、最終トルク指令値の上限値を制限する。
【解決手段】目標回転数に第1のゲインを乗算した第1の補償値と、目標回転数および実回転数の差分に第2のゲインを乗算した第2の補償値と、実回転数およびモータの最終トルク指令値に対する規範回転数の差分を、モータの制御対象モデルGp(s)の逆モデルおよび低周波通過特性を有するフィルタ(H(s)/Gp(s))に通した第3の補償値との合計値をモータの最終トルク指令値ΔTm’として算出し、算出した最終トルク指令値ΔTm’をリミッタLim1の上限値Tlim1によって制限する。第1の補償値および第2の補償値の加算値の上限は、リミッタLim2の上限値Tlim2によって制限する。
【選択図】図4

Description

本発明は、モータの回転数制御装置に関する。
従来、操作量がリミット値を超えたらリミット値を超えた分だけ操作量をオフセットするオフセット手段と、全ての操作量がそれぞれのリミット値を超えたら偏差積分器による偏差の積分を停止する積分停止手段とを備え、全ての操作量がそれぞれのリミット値以下になると、オフセット量を緩やかに0にする制御装置が知られている(特許文献1参照)。
特開2002−187464号公報
ここで、目標回転数にゲインを乗算した第1の補償値と、目標回転数と検出回転数との差分にゲインを乗算した第2の補償値と、実応答である検出回転数と最終トルク指令値に対する規範回転数との差分を低周波通過特性を持つフィルタに通した第3の補償値の合計を最終トルク指令値とするモータの回転数制御装置について考える。この制御装置では、制御対象に周期的な外乱トルクが加わっていて、目標回転数の変化等により操作量である最終トルク指令値がリミット値を超えると、第3の補償値である外乱の推定値が操作量に反映できなくなる。この制御装置に、特許文献1の技術を適用すると、操作量がリミット値を超えないようにはなるが、第3の補償値として求められる外乱の推定値を最終トルク指令値に反映させることができなくなるという問題が生じる。
本発明は、外乱の推定値を最終トルク指令値に反映させつつ、最終トルク指令値の上限値を制限することができる技術を提供することを目的とする。
本発明によるモータの回転数制御装置は、目標回転数に第1のゲインを乗算した第1の補償値と、目標回転数および実回転数の差分に第2のゲインを乗算した第2の補償値と、実回転数およびモータの最終トルク指令値に対する規範回転数の差分を、モータの制御対象モデルの逆モデルおよび低周波通過特性を有するフィルタに通した第3の補償値との合計値をモータの最終トルク指令値として算出し、算出した最終トルク指令値を第2の上限値によって制限する。第1の補償値および第2の補償値の加算値の上限は、第1の上限値によって制限する。
本発明によれば、外乱の推定値を最終トルク指令値に反映させつつ、最終トルク指令値の上限値を制限することができる。
図1は、第1の実施形態におけるモータの回転数制御装置を適用可能なハイブリッド駆動装置を備えたフロントエンジン・リヤホイールドライブ式ハイブリッド車両のパワートレーンを示す図である。 図2は、図1に示すパワートレーンの制御システムを示すブロック線図である。 図3は、モータ/ジェネレータコントローラがモータ/ジェネレータの回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図である。 図3に示す機能ブロック線図を等価変換した機能ブロック線図である。 図5は、モータ/ジェネレータが一定回転を維持するために必要なトルクTf+Tcl7−Teの一例を示す図である。 図6(a)は、図3に示す構成のうち、リミッタLim2が無い従来の制御装置による制御結果の一例を示す図であり、図6(b)は、第2の実施形態におけるモータの回転数制御装置による制御結果の一例を示す図である。 図7は、第3の実施形態におけるモータの回転数制御装置において、モータ/ジェネレータコントローラがモータ/ジェネレータの回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図である。 図8は、第4の実施形態におけるモータの回転数制御装置において、モータ/ジェネレータコントローラがモータ/ジェネレータの回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図である。 図9は、第5の実施形態におけるモータの回転数制御装置において、モータ/ジェネレータコントローラがモータ/ジェネレータの回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図である。 図10(a)、(b)はそれぞれ、不感帯の特性の一例を示す図である。 図11は、脈動トルク特性の一例を示す図である。 図12は、第5の実施形態におけるモータの回転数制御装置による制御結果の一例を示す図である。
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態におけるモータの回転数制御装置を適用可能なハイブリッド駆動装置を備えたフロントエンジン・リヤホイールドライブ式ハイブリッド車両のパワートレーンを示す図である。
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、通常の後輪駆動車と同様に、エンジン1の車両前後方向後方に自動変速機3をタンデムに配置し、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合して、モータ/ジェネレータ5が設けられている。
モータ/ジェネレータ5は、モータ(電動機)として作用したり、ジェネレータ(発電機)として作用するもので、エンジン1および自動変速機3間に配置されている。
モータ/ジェネレータ5とエンジン1との間、より詳しくは、軸4とクランクシャフト1aとの間に第1クラッチ6が介挿されており、この第1クラッチ6により、エンジン1およびモータ/ジェネレータ5間を切り離し可能に結合する。第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的に制御して、伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成されている。
モータ/ジェネレータ5と自動変速機3との間、より詳しくは、軸4と変速機入力軸3aとの間に第2クラッチ7が介挿されており、この第2クラッチ7により、モータ/ジェネレータ5および自動変速機3間を切り離し可能に結合する。第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様に、伝達トルク容量を連続的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成されている。
自動変速機3は、複数の摩擦要素(クラッチやブレーキ等)を選択的に締結したり解放することで、これら摩擦要素の締結・解放組み合わせにより伝動系路(変速段)を決定する。従って、自動変速機3は、入力軸3aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸3bに出力する。この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置8により左右後輪2へ分配して伝達され、車両の走行に供される。ただし、自動変速機3は、上述したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよい。
上述した図1のパワートレーンにおいては、停車状態からの発進時などを含む低負荷・低車速時に用いられる電気走行(EV)モードが要求される場合、第1クラッチ6を解放し、第2クラッチ7を締結し、自動変速機3を動力伝達状態にする。この状態でモータ/ジェネレータ5を駆動すると、モータ/ジェネレータ5からの出力回転のみが変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じて変速して変速機出力軸3bより出力する。
変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をモータ/ジェネレータ5のみによって電気走行(EV走行)させることができる。
高速走行時や大負荷走行時などで用いられるハイブリッド走行(HEV走行)モードが要求される場合、第1クラッチ6および第2クラッチ7をともに締結し、自動変速機3を動力伝達状態にする。この状態では、第1クラッチ6の締結により始動されたエンジン1からの出力回転およびモータ/ジェネレータ5からの出力回転の双方が変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じて変速して、変速機出力軸3bより出力する。
変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をエンジン1およびモータ/ジェネレータ5の双方によってハイブリッド走行(HEV走行)させることができる。
かかるHEV走行中において、エンジン1を最適燃費で運転させると、エネルギーが余剰となる場合、この余剰エネルギーによりモータ/ジェネレータ5を発電機として作動させることで余剰エネルギーを電力に変換し、この発電電力をモータ/ジェネレータ5のオー多駆動に用いるように蓄電しておくことで、エンジン1の燃費を向上させることができる。
図2は、図1に示すパワートレーンの制御システムを示すブロック線図である。統合コントローラ20は、パワートレーンの動作点を統合制御する。パワートレーンの動作点は、目標エンジントルクtTeと、目標モータ/ジェネレータトルクtTm(回転数制御時は目標モータ/ジェネレータ回転数tNm)と、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量tTc1と、第2クラッチ7sの目標伝達トルク容量tTc2とで規定する。
統合コントローラ20には、パワートレーンの動作点を決定するために、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ11からの信号と、モータ/ジェネレータ回転数Nmを検出するモータ/ジェネレータ回転センサ12からの信号と、変速機入力回転数Niを検出する入力回転センサ13からの信号と、変速機出力回転数Noを検出する出力回転センサ14からの信号と、エンジン1の要求負荷状態を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ15からの信号と、モータ/ジェネレータ5用の電力を蓄電しておくバッテリ9の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ16からの信号とを入力する。
なお、上記したセンサのうち、エンジン回転センサ11、モータ/ジェネレータ回転センサ12、入力回転センサ13、および出力回転センサ14はそれぞれ、図1に示すように配置することができる。
統合コントローラ20は、上記入力情報のうち、アクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および、変速機出力回転数Noから、運転者が希望している車両の駆動力を実現可能な運転モード(EVモード、HEVモード)を選択すると共に、目標エンジントルクtTe、目標モータ/ジェネレータトルクtTm(回転数制御時は、目標モータ/ジェネレータ回転数tNm)、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1、および目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2をそれぞれ演算する。
目標エンジントルクtTeは、エンジンコントローラ21に供給され、目標モータ/ジェネレータトルクtTm(目標モータ/ジェネレータ回転数tNm)は、モータ/ジェネレータコントローラ22に供給される。
エンジンコントローラ21は、エンジントルクtTeが目標エンジントルクtTeとなるようにエンジン1を制御する。
モータ/ジェネレータコントローラ22は、モータ/ジェネレータ5をトルク制御する時、そのトルクTmが目標モータ/ジェネレータトルクtTmとなるよう、また、モータ/ジェネレータ5を回転数制御する時、その回転数Nmが目標モータ/ジェネレータ回転数tNmとなるよう、バッテリ9およびインバータ10を介して、モータ/ジェネレータ5を制御する。
統合コントローラ20は、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1および目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2に対応したソレノイド電流を第1クラッチ6および第2クラッチ7の締結制御ソレノイド(不図示)に供給し、第1クラッチ6の伝達トルク容量tTc1が目標伝達トルク容量tTc1に一致するよう、また、第2クラッチ7の伝達トルク容量tTc2が目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2に一致するよう、第1クラッチ6および第2クラッチ7を個々に締結力制御する。
図3は、第1の実施形態におけるモータの回転数制御装置において、モータ/ジェネレータコントローラ22がモータ/ジェネレータ5の回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図である。説明を容易にするために、以下ではまず、リミッタLim1およびリミッタLim2を省いた構成について説明する。
制御対象である車両モデルGp(s)は、制御対象イナーシャ項をJとし、制御対象粘性項をCとすると、次式(1)で表される。
Gp(s)=1/(J・S+C) …(1)
ここで、制御対象イナーシャ項Jおよび制御対象粘性項Cについて、以下で説明する。
図1に代表的に示すごとく、図1に示したハイブリッド車両用パワートレーンの第1クラッチ6よりもエンジン側におけるエンジンイナーシャ項をJ1、エンジン粘性項をC1とし、第1クラッチ6および第2クラッチ7間におけるモータイナーシャ項をJ2、モータ粘性項をC2とし、第2クラッチ7よりも駆動車輪側における車両イナーシャ項をJ3、車両粘性項をC3とすると、制御対象イナーシャ項Jおよび制御対象粘性項Cはそれぞれ、第1クラッチ6および第2クラッチ7の状態の組み合わせ(クラッチ状態)に応じて変化する。
なお、イナーシャ項J1、J2、J3および粘性項C1、C2、C3はそれぞれ、実験等により予め求めておくことができる。
つまり、第1クラッチ6および第2クラッチ7が共に解放したクラッチ状態(CL1)においては、制御対象イナーシャ項JはJ2となり、制御対象粘性項CはC2となる。
第1クラッチ6が締結し、第2クラッチ7が解放したクラッチ状態(CL2)においては、制御対象イナーシャ項JはJ1+J2となり、制御対象粘性項CはC1+C2となる。
第1クラッチ6が解放し、第2クラッチ7が締結したクラッチ状態(CL3)においては、制御対象イナーシャ項JはJ2+J3となり、制御対象粘性項CはC2+C3となる。
第1クラッチおよび第2クラッチ7が共に締結したクラッチ状態(CL4)においては、制御対象イナーシャ項JはJ1+J2+J3となり、制御対象粘性項CはC1+C2+C3となる。
第1クラッチ6が解放し、第2クラッチ7がスリップしているクラッチ状態(CL5)においては、制御対象イナーシャ項JはJ2となり、制御対象粘性項CはC2となる。
第1クラッチ6が締結し、第2クラッチ7がスリップしているクラッチ状態(CL6)においては、制御対象イナーシャ項JはJ1+J2となり、制御対象粘性項CはC1+C2となる。
図3に示す構成のフィードバック制御においては、これら制御対象イナーシャ項Jおよび制御対象粘性項Cを用いた式(1)で表される制御対象(車両)モデルGp(s)を第1クラッチ6および第2クラッチ7の状態に応じて切り替えて制御するが、図1から明らかなように、第1クラッチ6が解放し、第2クラッチ7がスリップしているクラッチ状態(CL5)での制御対象イナーシャ項J=J2および制御対象粘性項C=C2はそれぞれ、第1クラッチ6および第2クラッチ7が共に解放したクラッチ状態(CL1)の制御対象イナーシャ項J=J2および制御対象粘性項C=C2と同じである。また、第1クラッチ6が締結し、第2クラッチ7がスリップしているクラッチ状態(CL6)での制御対象イナーシャ項J=J1+J2および制御対象粘性項C=C1+C2はそれぞれ、第1クラッチ6が締結し、第2クラッチ7が解放したクラッチ状態(CL2)での制御対象イナーシャ項J=J1+J2および制御対象粘性項C=C1+C2と同じである。従って、これら制御対象イナーシャ項Jおよび制御対象粘性項Cを用いた式(1)で表される制御対象(車両)モデルGp(s)は、第2クラッチ7がスリップ状態である時と、第2クラッチ7が解放状態である時とは同じである。
従って、一般的な通常のフィードバック制御によってモータ/ジェネレータ5の回転制御を行うと、第2クラッチ7がスリップ状態である時のクラッチ伝達トルクも車両モデルのフリクションと共にフィードバックループで補償することになり、アクセル操作にともなう第2クラッチ7のスリップ時伝達トルクの変化分に対応した補償量がフィードバックループ(積分器)に蓄積され、第2クラッチ7がスリップ状態と非スリップ状態との間で状態変化する過渡時において、上記の蓄積補償分が放出され終わるまで、モータ/ジェネレータ5の回転数Nmを指令値tNmに一致させることができず、モータ/ジェネレータ5の回転制御応答性が悪くなるという問題を生ずる。
そこで、本実施形態では、モータ/ジェネレータコントローラ22がモータ/ジェネレータ5の回転数を指令値tNmに一致させるように回転数制御するに際し、この制御を特に図3の機能ブロック線図に示すごとく行うようにする。
つまり、図3に示すモータ/ジェネレータ5の回転数制御ブロックは、外乱抑制応答時定数τhを用いた伝達関数H(s)=1/(1+τh・s)のローパスフィルタLPFと、このローパスフィルタLPFおよび上記制御対象モデルの逆系{1/Gp(s)}の組み合わせになる位相補償器INVと、指令値追従応答時定数τmを用いた伝達関数K1=(J・τm・C)/τmのモデルマッチング項MM1と、モデルマッチング項MM1の伝達関数K1および制御対象粘性項Cを用いた伝達関数K2=(C+K1)/K1のモデルマッチング項MM2とを備える。
図3においてはまず、目標モータ/ジェネレータ回転数tNmをモデルマッチング項MM2に通過させてモデルマッチングした後の目標モータ/ジェネレータ回転数tNmから、モータ/ジェネレータ回転数Nmを差し引いて両者間のモータ/ジェネレータ回転数偏差を求める。
そして、このモータ/ジェネレータ回転数偏差をモデルマッチングMM1に通過させて、モータ/ジェネレータ回転数偏差をなくすためのモータ/ジェネレータトルク補正量であるモデルマッチング出力ΔTmを求める。
位相補償器INVは、モータ/ジェネレータ回転数Nmを発生するモータ/ジェネレータトルクを求め、ローパスフィルタLPFは、制御対象へのモータ/ジェネレータトルク補正量(最終トルク指令値)ΔTm’に対してフィルタ処理を施し、位相補償器INVからのモータ/ジェネレータトルクと、ローパスフィルタLPFからのフィルタ処理後のモータ/ジェネレータトルク補正量ΔTm’との間におけるモータ/ジェネレータトルク偏差演算により、制御対象に加わる外乱の推定値Dest(外乱オブザーバ出力)を求め、モデルマッチング出力ΔTmから外乱オブザーバ出力Destを差し引いて、制御対象へのモータ/ジェネレータトルク補正量(最終トルク指令値)ΔTm’とする。
ここまでは、説明を容易にするために、リミッタLim1およびリミッタLim2を省略した構成について説明したが、以下では、リミッタLim1およびリミッタLim2を含めた構成について説明する。
モデルマッチング項MM1の出力は、リミッタLim2の上限値Tlim2によって上限が制限される。上限値Tlim2は、最終トルク指令値ΔTm’がリミッタLim1の上限値Tlim1以下となるような値とする。
また、リミッタLim2で制限された値と、外乱オブザーバ出力Destとの差分であるトルク補正量(最終トルク指令値)ΔTm’は、上下限リミッタLim1の上限値Tlim1によって上限が制限される。すなわち、上下限リミッタLim1による制限後のリミット後最終トルク指令値ΔTm’limが制御対象(車両)モデルGp(s)に入力される。
このような構成とすることにより、外乱オブザーバ出力Destの情報(例えば、モータと同軸上にあるエンジンの周期的なトルク脈動を抑制するための補償値など)までリミットされてしまうのを防ぐことができる。すなわち、外乱オブザーバ出力を上下限リミッタLim1による制限後のリミット後最終トルク指令値ΔTm’limに反映させることができる。
ここで、リミッタLim2の上限値Tlim2を過剰に低く設定すると、モデルマッチング項MM1の出力が必要以上に低い値で制限されてしまい、目標回転数変化に対し、実回転数が追従しない弊害が発生する。この弊害を回避するため、リミッタLim2の上限値Tlim2は、実回転数を目標回転数に追従させるために必要な最低限の値以上とする必要がある。
目標回転数に追従させるためのモデルマッチング出力上限値の条件は、モデルマッチング出力上限トルクTrqを用いて規範回転数定常値を演算した場合に、その回転数が目標回転数以上になることである。規範回転数は、Nm=1/(Js+C)・Trqであり、規範回転数が目標回転数以上となるためのモデルマッチング出力上限トルクTrqは、C・tNm(制御対象粘性項×目標回転数)となる。すなわち、リミッタLim2の上限値Tlim2は、モータの目標回転数と粘性項から求まるフリクショントルクの値より大きい値とする。
図4は、図3に示す機能ブロック線図を等価変換した機能ブロック線図である。モータ/ジェネレータ回転数Nmと、トルク補正量ΔTm’に対する規範回転数(Gp(s)×ΔTm’)との差分を、制御対象モデルの逆モデルおよび低周波通過特性を有するフィルタ(H(s)/Gp(s))に通した値が外乱オブザーバ出力Destとなる。
以上、第1の実施形態におけるモータの回転数制御装置によれば、目標回転数に第1のゲインを乗算した第1の補償値と、目標回転数および実回転数の差分に第2のゲインを乗算した第2の補償値と、実回転数および最終トルク指令値に対する規範回転数の差分を、制御対象モデルの逆モデルおよび低周波通過特性を有するフィルタに通した第3の補償値との合計値をモータの最終トルク指令値として算出し、算出した最終トルク指令値を上限値Tlim1によって制限する。このとき、第1の補償値および第2の補償値の加算値の上限を第1の上限値Tlim2によって制限するので、最終トルク指令値の上限値を制限する場合に、第3の補償値として算出される外乱オブザーバ出力がリミットされてしまうのを防ぐことができ、外乱オブザーバ出力を最終トルク指令値に反映させることができる。
また、最終トルク指令値の上限を第2の上限値Tlim1によって制限するが、第1の上限値Tlim2は、最終トルク指令値が第2の上限値Tlim1以下となるような値に設定されている。これにより、第3の補償値として算出される外乱オブザーバ出力がリミットされてしまうのを確実に防ぐことができ、外乱オブザーバ出力を最終トルク指令値に反映させることができる。
さらに、第1の上限値Tlim2は、モータの目標回転数と粘性項から求まるフリクショントルクの値より大きい値とすることにより、モデルマッチング出力ΔTmが過剰に制限されてしまうのを防ぐことができるので、目標回転数の変化に対する実回転数の応答遅れが生じるのを防ぐことができる。
−第2の実施形態−
第2の実施形態におけるモータの回転数制御装置では、リミッタLim1の上限値Tlim1に、モータに加わる外乱トルクの中心値を加算した値を、リミッタLim2の上限値Tlim2に設定する。これにより、モデルマッチング出力の利用可能トルク範囲が広がるため、目標回転数が変化した時等において、回転数応答が低下するのを抑制することができる。
図1のハイブリッド車両において、第1クラッチ6が締結状態、第2クラッチ7がスリップ状態で、モータ/ジェネレータ5を回転数制御で運転する場合を例に挙げて説明する。
モータ/ジェネレータ5に加わる外乱トルクは、エンジン1の発生するトルクTe、第2クラッチ7のスリップにより発生する伝達トルク−Tcl7、フリクショントルク−Tfである。このとき、モータ/ジェネレータ5が一定回転を維持するために必要なトルクは、Tf+Tcl7−Teとなる。
図5は、モータ/ジェネレータ5が一定回転を維持するために必要なトルクTf+Tcl7−Teの一例を示す図である。この場合、リミッタLim1の上限トルクTlim1に対して利用可能なトルクは、Tlim1−(Tf+Tcl7−Te)=Tlim1+(−Tf−Tcl7+Te)、すなわち、上限トルクTlim1+外乱トルクとなる。
この利用可能トルクは、エンジン1のトルク脈動を含んでおり、そのままリミッタLim2の上限値とすると、リミッタLim2が脈動してしまい、結果として外乱オブザーバ出力を正しく反映できない。そこで、リミッタLim1の上限値Tlim1に外乱トルクの中心値を加算した値をリミッタLim2の上限値Tlim2とする。これにより、最終トルク指令値ΔTm’をリミッタLim1の上限値Tlim1まで使い、かつ、外乱オブザーバ出力Destに含まれる周期外乱を抑制するための補償量の正側の値を最終トルク指令値に反映することが可能となる。
リミッタLim1の上限値Tlim1に外乱トルク中心値を加算した値は、Tlim1+(−tTf−tTcl7+tTe)であり、ここでのtTeはエンジン1へのトルク指令値、tTcl7は第2クラッチ7へのトルク容量指令値、tTfはC・tNmを用いる。
図6(a)は、図3に示す構成のうち、リミッタLim2が無い従来の制御装置による制御結果の一例を示す図であり、図6(b)は、第2の実施形態におけるモータの回転数制御装置による制御結果の一例を示す図である。図6(a)、図6(b)において、上の図は、モータ/ジェネレータ5の回転数および回転数指令値を示しており、下の図は、モータトルク指令値を示している。
図6(a)および図6(b)では、回転数指令値の上昇に伴い、モータトルク指令値が上昇して、上限値で制限されている区間がある。図6(a)に示すように、従来の制御装置では、モータトルク指令値が上限値で制限されている区間では、外乱オブザーバ出力による振動抑制成分がモータトルク指令値に反映されていないが、第2の実施形態におけるモータの回転数制御装置では、モータトルク指令値が上限値で制限されている区間において、振動抑制成分の下半分はモータトルク指令値に反映されている。
以上、第2の実施形態におけるモータの回転数制御装置によれば、第2の上限値Tlim1とモータ/ジェネレータ5に加わる外乱トルクの中心値の和を第1の上限値Tlim2とするので、外乱オブザーバ出力に含まれる周期外乱を抑制するための補償値の正側の値を最終トルク指令値ΔTm’に反映させつつ、最終トルク指令値をその上限リミット値まで使うことが可能となる。
−第3の実施形態−
図7は、第3の実施形態におけるモータの回転数制御装置において、モータ/ジェネレータコントローラ22がモータ/ジェネレータ5の回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図である。
第2の実施形態におけるモータの回転数制御装置では、第2の上限値Tlim1とモータ/ジェネレータ5に加わる外乱トルクの中心値の和を第1の上限値Tlim2とした。
第3の実施形態では、モータ/ジェネレータ5に加わる外乱トルク中心値として、INV出力とLPF出力との差分により求められる外乱トルクの情報をローパスフィルタに通した値を用いる。推定された外乱情報は、エンジン1の定常トルク、クラッチ伝達トルク、フリクショントルクの他に、例えばエンジン1の回転周期に比例するトルク脈動の情報などを含んでおり、ローパスフィルタを通すことにより、外乱トルク情報のうち、周期脈動トルクの情報のみを落とし、残りのエンジン定常トルク、クラッチ伝達トルク、フリクショントルクの和を得ることができる。この値を使うことで、より精度よくリミッタLim2の上限値Tlim2を決めることができる。
図5中のローパスフィルタLPF2の時定数は、予め知り得る周期外乱の周波数に対して、それより低い周波数通過特性となる値を選択する。
以上、第3の実施形態におけるモータの回転数制御装置によれば、モータに加わる外乱トルクの中心値を、モータ/ジェネレータ5の実回転数と、最終トルク指令値に対する規範回転数との差分を、制御対象モデルの逆モデルおよび低周波通過特性を有するフィルタに通すことによって得られる値とした。これにより、第2の実施形態におけるモータの回転数制御装置に対して、さらに精度良く最終トルク指令値をその上限リミット値まで使うことが可能となる。
−第4の実施形態−
第2および第3の実施形態では、推定された周期外乱の正側の値のみをリミット後最終トルク指令値ΔTm’limに反映させることができる。第4の実施形態では、推定された周期外乱の正側および負側の値をリミット後最終トルク指令値ΔTm’limに反映させる。
図8は、第4の実施形態におけるモータの回転数制御装置において、モータ/ジェネレータコントローラがモータ/ジェネレータ5の回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図である。
リミッタLim2の上限値Tlim2は、通常はリミッタLim1の上限値Tlim1(あるいは、モータ/ジェネレータ5が出力可能な上限値までの値を取り得る)とし、最終トルク指令値ΔTm’とリミット後最終トルク指令値ΔTm’limの差分を積分器SSによって積分した値で補正する。すなわち、リミッタLim1の上限値Tlim1から、積分器SSの積分値を減算した値を、リミッタLim2の上限値Tlim2に設定する。これにより、最終トルク指令値ΔTm’がリミッタLim1の上限値Tlim1以下となるまでリミッタLim2の上限値Tlim2が低下するので、外乱オブザーバ出力Destに含まれる周期外乱の正負全ての情報をリミット後最終トルク指令値ΔTm’limに反映させることができる。
なお、この制御方法では、一度リミッタLim2の上限値Tlim2の補正が入ると、自動的には補正が解除されないため、ΔTmがリミッタLim2の上限値Tlim2を下回ったことを条件に、補正を解除する必要がある。
以上、第4の実施形態におけるモータの回転数制御装置によれば、最終トルク指令値と、第2の上限値Tlim1によって上限値が制限された最終トルク指令値との差分を積分して積分値を算出し、第2の上限値Tlim1を積分値で補正した値を第1の上限値Tlim2とする。これにより、最終トルク指令値に含まれる周期外乱を抑制する補正量全てがリミット後最終トルク指令値ΔTm’limに含まれるまで、第1の上限値Tlim2を補正するので、外乱オブザーバ出力に含まれる周期外乱の正負全ての情報をリミット後最終トルク指令値ΔTm’limに反映させることができる。
−第5の実施形態−
第4の実施形態では、一度リミッタLim2の上限値Tlim2の補正が行われると、自動的に補正が解除されないため、ΔTmがリミッタLim2の上限値Tlim2を下回ったことを条件に補正量をクリアする必要がある。これに対して、第5の実施形態では、ΔTmがリミッタLim2の上限値Tlim2を下回った場合に、自動的に補正量をクリアする。
図9は、第5の実施形態におけるモータの回転数制御装置において、モータ/ジェネレータコントローラがモータ/ジェネレータ5の回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図である。
リミッタLim2の上限値Tlim2は、通常は、リミッタLim1の上限値Tlim1とし、最終トルク指令値ΔTm’とリミッタLim1の上限値Tlim1との差分を積分器SSによって積分した値で補正する。補正方法は、Tlim2=Tlim1−積分値とする。
積分器SSの前には、不感帯設定器FFが設けられている。不感帯設定器FFは、最終トルク指令値ΔTm’とリミッタLim1の上限値Tlim1との偏差が0から負側のある値までにある場合に、積分器SSに入力する値を0とする。すなわち、積分器SSに入力する偏差を、0から負側のある値までを0とする不感帯に通すことで、トルク飽和時にモータ/ジェネレータ5に加わる周期外乱をリミット後最終トルク指令値ΔTm’limに反映しつつ、トルク飽和が解除された後に、自動的にこの補正を解除することができる。積分器SSは、積分の下限値を0とする。この方法により、必要なときだけリミットを低下させるため、普段は最大限トルクを利用可能である。また、最終トルク指令値ΔTm’がリミッタLim1の上限値Tlim1以下になった場合も、素早くリミッタLim2の上限値Tlim2の補正を解除することが可能となる。
図10(a)、(b)はそれぞれ、不感帯設定器FFの不感帯の特性の一例を示す図である。図10(a)、(b)ではいずれも、偏差の0から負側のある値までを0とする不感帯が設けられているが、図10(b)に示す特性では、図10(a)に示す特性に対して、偏差が負側のある値以下の出力がaだけプラス側にオフセットされている。
また、図11は、脈動トルク特性の一例を示す図である。不感帯を設ける0から負側のある値までの範囲は、予め測定可能であるエンジントルク脈動の範囲をカバーする範囲、すなわち、図10に示すaと図11に示すbとの関係をa>bとすることが考えられる。
図12は、第5の実施形態におけるモータの回転数制御装置による制御結果の一例を示す図である。図12(a)の上の図は、モータ/ジェネレータ5の回転数および回転数指令値を示しており、下の図は、モータトルク指令値を示している。また、図12(b)の上の図は、リミッタLim1の入力および出力をそれぞれ示しており、下の図は、積分器SSの出力を示している。図12(a)の下の図に示すように、モータトルク指令値が上限値で制限されている区間においても、外乱オブザーバ出力による振動抑制成分が全て、リミット後最終トルク指令値ΔTm’limに反映されている。
以上、第5の実施形態におけるモータの回転数制御装置によれば、第4の実施形態と同様に、最終トルク指令値と、第2の上限値Tlim1によって上限値が制限された最終トルク指令値との差分を積分して積分値を算出し、第2の上限値Tlim1を積分値で補正した値を第1の上限値Tlim2とするので、外乱オブザーバ出力に含まれる周期外乱の正負全ての情報をリミット後最終トルク指令値ΔTm’limに反映させることができる。特に、積分器SSに入力する差分のうち、0から負側の所定値までの範囲にある値を0とするので、最終トルク指令値ΔTm’がリミッタLim1の上限値Tlim1以下になった場合に、素早く第1の上限値Tlim2の補正を解除することが可能となる。
本発明は、上述した各実施形態に限定されることはない。例えば、第1の実施形態におけるモータの回転数制御装置において、モータ/ジェネレータコントローラ22がモータ/ジェネレータ5の回転数Nmを目標回転数tNmに一致させるように回転数制御する時の機能ブロック線図を図3として示すとともに、その等価回路を図4として示したように、機能ブロック線図は適宜、等価な回路に置き換えることができる。
また、各実施形態における制御は、適宜組み合わせて用いることができる。
5…モータ/ジェネレータ
12…モータ/ジェネレータ回転センサ(実回転数検出手段)
22…モータ/ジェネレータコントローラ(目標回転数算出手段、トルク指令値算出手段)
Lim1…リミッタ(第2の上限制限手段)
Lim2…リミッタ(第1の上限制限手段)
FF…不感帯設定器(零制限手段)
SS…積分器(積分手段)

Claims (7)

  1. モータの目標回転数を算出する目標回転数算出手段と、
    前記モータの実回転数を検出する実回転数検出手段と、
    前記目標回転数に第1のゲインを乗算した第1の補償値と、前記目標回転数および前記実回転数の差分に第2のゲインを乗算した第2の補償値と、前記実回転数およびモータの最終トルク指令値に対する規範回転数の差分を、モータの制御対象モデルの逆モデルおよび低周波通過特性を有するフィルタに通した第3の補償値との合計値をモータの最終トルク指令値として算出するトルク指令値算出手段と、
    前記第1の補償値および前記第2の補償値の加算値の上限を第1の上限値によって制限する第1の上限制限手段と、
    前記最終トルク指令値の上限を第2の上限値によって制限する第2の上限制限手段と、
    を備えることを特徴とするモータの回転数制御装置。
  2. 請求項1に記載のモータの回転数制御装置において、
    前記第1の上限値は、前記最終トルク指令値が前記第2の上限値以下となるような値に設定されている、
    ことを特徴とするモータの回転数制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のモータの回転数制御装置において、
    前記第1の上限値は、前記モータの目標回転数と粘性項から求まるフリクショントルクの値より大きい値である、
    ことを特徴とするモータの回転数制御装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載のモータの回転数制御装置において、
    前記第1の上限値は、前記第2の上限値と前記モータに加わる外乱トルクの中心値の和である、
    ことを特徴とするモータの回転数制御装置。
  5. 請求項4に記載のモータの回転数制御装置において、
    前記モータに加わる外乱トルクの中心値は、前記実回転数と、前記最終トルク指令値に対する規範回転数との差分を、前記制御対象モデルの逆モデルおよび低周波通過特性を有するフィルタに通すことによって得られる値である、
    ことを特徴とするモータの回転数制御装置。
  6. 請求項1に記載のモータの回転数制御装置において、
    前記最終トルク指令値と、前記第2の上限制限手段によって上限値が制限された最終トルク指令値との差分を積分する積分手段をさらに備え、
    前記第1の上限値は、前記第2の上限値を、前記積分手段による積分値で補正した値である、
    ことを特徴とするモータの回転数制御装置。
  7. 請求項1に記載のモータの回転数制御装置において、
    前記最終トルク指令値と前記第2の上限値との差分を積分する積分手段をさらに備え、
    前記最終トルク指令値と前記第2の上限値との差分が0から負側の所定値までの範囲にある場合に、前記積分器に入力する値を0とする零制限手段をさらに備え、
    前記第1の上限値は、前記第2の上限値を、前記積分手段による積分値で補正した値である、
    ることを特徴とするモータの回転数制御装置。
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