JP2013184060A - マルチ配向性クライオスタット - Google Patents

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Abstract

【課題】マルチ配向性クライオスタットと前記クライオスタットを有する超電導マグネットアレンジメントとに関し、また、前記クライオスタットを有する医療機器装置を提供する。
【解決手段】複数の配向で使用される超電導マグネット用のマルチ配向性クライオスタット5である。クライオスタット5は、低温液体を保持する導管と、前記導管から延在し、マグネットのクエンチに起因した前記低温液体の沸騰により発生するガスを導管から放出することを許容するクエンチダクトとを有する。クエンチダクト7は、少なくとも異なって配置される反対流部71を備えるように曲がりくねっており、各部分は、クライオスタットがそれぞれの対応した配向にある場合に、反対流部として機能する。
【選択図】図3A−3C

Description

発明の詳細な説明
本発明は、マルチ配向性クライオスタットと前記クライオスタットを有する超電導マグネットアレンジメントとに関し、また、前記クライオスタットを有する医療機器装置に関する。
超電導マグネットは、その超電導特性を保持するために、一般に「低温」に維持される必要がある。クライオスタットは、超電導マグネットを超電導温度に維持するために提供される。
クライオスタットは、冷却剤として作用する低温液体を保持する導管を有する。冷却装置は、運び込まれた低温液体及び/又は冷却交換液体を冷却し、クライオスタットへ搬送するために提供される。
一般的に、超電導マグネットにおいてはクエンチのリスクがある。超電導マグネットは、一般的に、それらの磁場にて、非常に大きな蓄積されたエネルギー(例えば、1MJ及び上向き)を体現する。しかしながら、絶対零度に近い材料の熱容量が非常に低いため、わずかなエネルギー擾乱(1mJ以下)によって、局所的に超電導転移温度を超えたコイルの一部が通常の抵抗状態へ移される可能性がある。擾乱が安定性閾値を超えると、擾乱は、巻線のいくつか又は全てが抵抗になるまで巻線中を伝搬する。そして、蓄積された磁気エネルギーは、必然的に、抵抗巻線にて急速に熱に変換される。その熱は低温液体を急速に蒸発させ、低温液体は、ガスに変換され、温かくなるにつれて著しく膨張する(例えば、沸点4.2Kの液体ヘリウムは700:1に膨張し室温及び大気圧のガスになる)。
コイル又はコイルの一部が通常の抵抗状態に戻るといった、マグネットの超電導作用の望ましくない異常な停止は、クエンチとして知られている。
クエンチは、費用がかかり望ましくない。クエンチのリスクは、優れた設計と優れた試みによって最小限に抑えることが可能であるが、にもかかわらず、超電導マグネットは、低温冷却液体を運ぶクライオスタットの導管の過度な圧力の回避を含め、クエンチを耐え切るように設計されなければならない。
これは、通路を備えるクエンチダクトを提供することで達成され、これにより、急速に膨張及び温まる低温流体、より詳細には低温ガスが、導管から放出可能となる。
クエンチダクトは、クエンチによって生成された膨張ガスがクライオスタット導管から安全に放出されるように、比較的大きい内径を有する必要がある。
一方、マグネットの通常動作用の、クライオスタット内に備えられる充填チューブ又は通常のベントチューブは、より小さい断面積を有することが一般的である。これは、大きな内径を有するチューブを提供する必要はなく、また、大きな内径は、クライオスタットへの熱放散を高める傾向があるので、一般的には望ましくないからである。このように、超電導マグネットアレンジメントにおいては、一般的には、どの充填チューブとも区別されるクエンチダクトがあるであろう。さらに、クエンチダクトは、どのベントチューブとも区別され、少なくとも既存のベントチューブ用の排気端とは異なるクエンチダクト用の排気端があるであろう。言い換えれば、クエンチダクトは、充填チューブや通常のベントチューブとは、認識できるくらいはっきりと異なる。
クエンチダクトは、比較的大きな内径である必要があるので、それ自体がクライオスタットへの熱放散経路になるという問題が生じ得、低温液体の望ましくない温度上昇が起こり得る。
通常の状況において、この潜在的な問題は、クエンチダクトが、マグネット作動中に、クライオスタット導管から離れて垂直方向又は略垂直方向に延在することを保証することにより、緩和される。これにより、クエンチダクト内にて温度の逆転が起こり、対流が抑制される。このように、従来のクエンチダクトは、正しく配置されて使用された場合に、温度の逆転により機能する、反対流部を有する。さもなければ対流流れは熱をクライオスタットへ伝搬する傾向があるので、この点は重要である。
このアレンジメントは、通常の超電導マグネットアレンジメントにてうまく機能し得る。
しかしながら、超電導マグネットアレンジメント、つまりクライオスタットを、異なる配向にて使用する必要がある状況もある。一般に、そういった場合、超電導マグネットアレンジメントは、自身の移動に応じて超電導マグネットアレンジメント、つまりクライオスタットの配向も変わるように設置されたベースであって機器のベースに対して、移動可能であるように搭載される。機器は医療機器装置であってもよい。そういった機材の一例として、陽子線治療を施すために使用されるガントリー搭載サイクロトロンがある。そのような装置において、サイクロトロン(超電導マグネットアレンジメントを有する)が、患者の周りにおいて、超電導マグネットアレンジメントの配置に対応して、略180度の弧を描きながら移動し、クライオスタットが、この弧の一端と他端との間で、180度の範囲内で変位する。これは、例えば、クエンチダクトがこの弧の中間点で垂直方向又は略垂直方向に配置されたならば、クエンチダクトが弧の両端位置にて水平又は略水平に配置されるであろうことを意味する。
クエンチダクトが垂直方向又は略垂直方向の配置でなくなると、温度の逆転(重力に対して)がもはや存在しないので、対流セルが引き起こり得る。よって、熱が、クエンチダクトの暖端(つまり排気端)から冷端(つまり吸気端)へ送り出される傾向があり得る。この状況は、図2に図示され以下にてより詳細に記載される。この状況が発生すると、クライオスタットに対して好ましくない熱放散が引き起こされる可能性があり、低温液体の過度な蒸発を引き起こす恐れがあり、結果、クエンチをもたらす可能性がある。あるいは、又は、さらに、クエンチダクトが垂直方向から離れて移動する場合、低温液体の更なる冷却、及び/又は、より複雑で性能の高い冷却装置を提供するという点において、費用が高くなる可能性がある。
本発明は、少なくともこれら問題のいくつかに対処することを目的としている。
本発明の第一局面によると、複数の配置で使用される超電導マグネット用のマルチ配向性クライオスタットが提供される。そのクライオスタットは、低温液体を保持する導管と、導管から延在し、マグネットのクエンチによる低温液体の沸騰により発生するガスを導管から放出することを許容するクエンチダクトとを有し、クエンチダクトは、少なくとも二つの異なって配置される反対流部を有するように曲がりくねっており、各部分は、クライオスタットがそれぞれの対応した配向にある場合に、反対流部として機能する。
このアレンジメントによると、クライオスタットが複数の配向にある場合に効率的に作動可能なクエンチダクトを提供でき、かつ、優れた絶縁性能をもたらし、保持された低温液体の冷却に必要な条件を最小限にすることができる。
バーストディスクが、導管から離れたクエンチダクトの一端に又は一端近くに備えられてもよい。
クエンチダクトは、どの充填チューブとも異なっていてもよく、またどのベントチューブとも異なっていてもよく、少なくとも、クエンチダクトは、ベントチューブ排出口とは別の排出口を有してもよい。充填チューブ及びベントチューブは、冷却されたマグネットのクエンチ中に大量に発生する、急速に膨張するガスに対処する必要がないので、充填チューブ及びベントチューブは、クエンチダクトよりも小さい断面積を通常有する。
クエンチダクトはチューブ形状であってもよい。各反対流部は、チューブ形状クエンチダクトのチューブ形状部であってもよい。
クエンチダクトは、複数の反対流部を有してもよい。クエンチダクトは二つ以上の反対流部を有してもよい。
反対流部の少なくとも一方についての配向は、反対流部の少なくとも他方についての配向から少なくとも90度離れていてもよい。クエンチダクトを介する流路に沿って順に少なくとも三つの反対流部があってもよい。それら三つの反対流部は、第2反対流部の配向から少なくとも90度離れた第1反対流部の配向と、第2反対流部の配向から少なくとも90度離れた第3反対流部の配向との範囲内に位置する。各反対流部は、他の反対流部と同一面又は平行面にて動作する。
同一面又は平行面は、法線としての回転軸を有することができる。
クエンチダクトは、通常動作時に、保持された低温液体の面より高い位置にとどまるように配置された吸気部を有してもよい。
マルチ配向性クライオスタットは、第一配向と、回転変換により第一配向から到達可能な第二配向とでの使用のために配置されてもよく、第一配向と、第一配向から回転変換の一部を実行することで到達可能な第二配向との間の配向での使用のために配置されてもよい。クエンチダクトの第一部分は、クライオスタットが第一配向にある時に反対流部として作用し、クエンチダクトの第二部分は、クライオスタットが第二配向にある時に反対流部として作用してもよい。
第一配向と第二配向との間の回転角度は、少なくとも90度、好ましくは少なくとも135度、さらに好ましくは少なくとも180度である。
クエンチダクトは、クライオスタットが第一配向にある時に反対流部として作用する第一部分、クライオスタットが第二配向にある時に反対流部として作用する第二部分、クライオスタットが第一配向と第二配向との間の配向にある時に反対流部として作用する第三部分の、三つの反対流部を有してもよい。
クエンチダクトは、U型屈曲部、ループ部、螺旋状屈曲部のような、連続屈曲部を有してもよく、連続屈曲部は、少なくとも90度まで、好ましくは少なくとも180度程度まで屈曲し、場合によっては360度まで屈曲してもよい。連続屈曲部の任意の部分が、クライオスタットが対応する任意の配向にある時に反対流部として作用してもよい。
クライオスタットが作動位置にある時に、各反対流部は、上方向に延在し、下端と上端とを有する。下端は、導管からクエンチダクトを通る流路に関して上端よりも導管により近い。
クエンチダクトは、マルチ配向性クライオスタットが第一配向、第二配向、及び、第一配向と第二配向との間の配向のいずれかにある時に、そのクエンチダクトが上向きに延在して、上端と、導管からクエンチダクトを通る流路に関して上端よりも導管により近い下端とを有するチューブ部を備え、反対流部として作用するように配置される。
クエンチダクトの吸気部は、マルチ配向性クライオスタットが第一配向、第二配向、及び、第一配向と第二配向との間の配向のいずれかにある時に、保持された低温液体の面よりも高い位置にとどまるように配置されてもよい。
クライオスタットは一つのクエンチダクトを有してもよい。
マルチ配向性クライオスタットは回転式クライオスタットであってもよい。
本発明の第二局面によると、上記のマルチ配向性クライオスタットと超電導マグネットとを有する超電導マグネットアレンジメントが提供される。
本発明の第三局面によると、クライオスタットが第一配向にある場合の第一位置とクライオスタットが第二配向にある場合の第二位置との間にて医療機器装置のベースに対して移動可能であるように搭載される上記超電導マグネットアレンジメントを有する医療機器装置が提供される。
本発明の第四局面によると、第一位置と第二位置との間で医療機器装置のベースに対して移動可能であるように搭載される超電導マグネットアレンジメントを有する医療機器装置が提供される。超電導マグネットアレンジメントは、超電導マグネットと、低温液体を保持する導管を有するクライオスタットと、導管から延在し、マグネットのクエンチに起因した低温液体の沸騰により発生するガスを導管から放出することを許容するクエンチダクトとを有する。クライオスタットは、マグネットアレンジメントが前記第一位置にある時に第一配向にあり、クライオスタットは、マグネットアレンジメントが前記第二配向にある時に第二配向にある。クエンチダクトは、互いに異なって配向される少なくとも第一反対流部と第二反対流部とを有するように曲がりくねっている。第一反対流部は、クライオスタットが第一配向にある時に反対流部として用いられるように機能し、第二反対流部は、クライオスタットが第二配向にある時に反対流部として用いられるように機能する。
クエンチダクトは複数の反対流部を有していてもよく、各反対流部は、クライオスタットがそれぞれの対応する配置にある時に反対流部として機能する。
本発明の第五局面によると、医療機器装置のベースに対して第一位置と第二位置との間で移動可能であるように搭載される超電導マグネットアレンジメントを有する医療機器装置が提供される。超電導マグネットアレンジメントは、超電導マグネットと、低温液体を保持する導管を有するクライオスタットと、導管から延在し、マグネットのクエンチに起因した低温液体の沸騰により発生するガスを導管から放出することを許容するクエンチダクトとを有する。クライオスタットは、マグネットアレンジメントが第一位置にある時に第一配向にあり、クライオスタットは、マグネットアレンジメントが第二位置にある時に第二配向にある。クライオスタットが第一配向にある時に、第一部分が、前記装置のベースに対して上方向に延在して下端と上端とを有し、下端は、導管からクエンチダクトを通る流路に関して上端よりも導管により近く、クライオスタットが前記第二配向にある時に、第二部分が、前記装置のベースに対して上方向に延在して下端と上端とを有し、下端は、導管からクエンチダクトを通る流路に関して上端よりも導管により近くあるように、クエンチダクトが、互いに異なって配向される少なくとも前記第一部分と前記第二部分とを有するように曲がりくねっている。
これにより、第一配向時の第一部分での温度の逆転と第二配向時の第二部分での温度の逆転とを促進し、導管に向かってクエンチダクトに沿って熱放散を引き起こす傾向にある対流を抑制するのに役立つ。
本発明の第六局面によると、超電導マグネット用のマルチ配向性クライオスタットが提供される。クライオスタットは、低温液体を保持する導管と、導管から延在し、マグネットのクエンチに起因した低温液体の沸騰により発生するガスを導管から放出することを許容するクエンチダクトとを有する。クエンチダクトは、少なくとも二つの異なって配向する部分を有するように曲がりくねっている。
クエンチダクトはチューブ形状であってもよい。異なって配向される各反対流部は、チューブ形状クエンチダクトのチューブ形状部であってもよい。
クエンチダクトは、異なって配向される部分を複数有してもよい。クエンチダクトは異なって配向される部分を二つ以上有してもよい。
クエンチダクト部分の少なくとも一方の配向は、クエンチダクトの少なくとも他方の配向から少なくとも90度離れていてもよい。
クエンチダクトは、U型屈曲部、ループ部、螺旋状屈曲部のような、連続屈曲部を有してもよく、連続屈曲部は、少なくとも90度まで、好ましくは少なくとも180度程度まで屈曲してもよい。
クエンチダクトは、クライオスタットが、第一配向と、少なくとも90度の回転変換により第一配向から到達可能な第二配向とに位置するように、互いに異なって配向される第一部分と第二部分とを有してもよい。クライオスタットが第一配向にある時、第一部分は上向きに延在して下端と上端とを有する。下端は、導管からクエンチダクトを通る流路に関して上端よりも導管により近い。クライオスタットが第二配向にある時、第二部分は上向きに延在して下端と上端とを有する。下端は、導管からクエンチダクトを通る流路に関して上端よりも導管により近い。
好ましくは少なくとも135度、さらに好ましくは少なくとも180度の回転変換が、第一配向から第二配向へ到達するのに必要である。
本発明の他の局面によると、クライオスタット、マグネット、又は医療機器装置作動方法が提供される。この作動方法は、導管を低温液体で充填することと、第一配向と第二配向との間でクライオスタットを移動することとを有する。
本発明の各局面に続く上に定義した任意の特徴事項は、簡略化の観点から、本発明の他の局面それぞれに続いて必ずしも全て記載されない。しかし、上に述べた発明の局面の任意の特徴事項はいずれも、必要に応じて言い回しを変えて、他の局面においても任意の特徴事項であってもよいのは当然である。
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、以下にてほんの一例として記載される。
回転式クライオスタットを有する超電導マグネットアレンジメントを備える医療機器装置を概略的に示す。 図1の装置で使用されることができ、従来のクエンチダクトを有するクライオスタットを示す。 図1に示される装置で使用することができる本発明を具体化する第一の回転式クライオスタットを示し、図3Aでは第一配向に、図3Bでは第二配向に、図3Cでは中間配向にある。 図1に示される装置で使用することができる本発明を具体化する第二の回転式クライオスタットを示し、図4Aでは第一配向に、図4Bでは第二配向に、図4Cでは中間配向にある。 図1に示される装置で使用することができる本発明を具体化する第三の回転式クライオスタットを示し、図5Aでは第一配向に、図5Bでは第二配向に、図5Cでは中間配向にある。 図1に示される装置で使用することができる本発明を具体化する第四の回転式クライオスタットを示し、図6Aでは第一配向に、図6Bでは第二配向に、図6Cでは中間配向にある。
図1は、例えば、陽子線治療用のガントリー搭載サイクロトロンやより一般的な放射線治療用(放射線療法)装置といった、医療機器装置を概略的に示す。その装置は、軸3を中心に移動する超電導マグネットアレンジメント2を支持するベース1を有する。超電導マグネットアレンジメント2は、図1にて点線と参照符号2’とで示される第一位置
と、同じく図1にて点線と参照符号2’’とで示される第二位置との間で、軸3を中心に
回転することで移動してもよい。当然のことながら、超電導マグネットアレンジメント2が第一位置2’に位置する場合のベース1に対する配向は、超電導マグネットアレンジメ
ントが第二位置2’’に位置する場合の配向とは異なる(周辺環境、特に重量に対しても
同様に)。超電導マグネットアレンジメント2は、第一位置2’にある時は第一配向を有
し、第二位置2’’にある時は第二配向を有すると考えられ得る。さらに、超電導マグネ
ットアレンジメント2は、超電導マグネットアレンジメント2がこれら二つの位置の間にある時にさまざまな中間配向を有する。
超電導マグネットアレンジメント2は、超電導マグネット4と、マグネット4を超電導温度に維持するための低温液体を保持するクライオスタット5とを有する。クライオスタット5は、導管6とクエンチダクト7とを有する。導管6は低温液体を保持するためであり、導入部で記載したように、クエンチダクト7は、低温流体の流出を許容するために、特に、マグネット4でクエンチが発生している際の低温ガスの急速な膨張を許容するように、備えられる。クエンチダクト7の内部は導管6と流体的に連結されている。導管6と連結するクエンチダクト7の一端は、開いている。このように、通常動作時には、クエンチダクトは低温ガスで充填される傾向にある。本発明が関連しない別のアレンジメントによると、クエンチダクトの下側端にシール又はバーストディスクが備えられ、クエンチダクトを空にする。実際、これを実現することは難しくかつ高価であるため、現在の技術ではこれは必要とされない。
図面には示されていないが、クライオスタット5は、一般に、充填チューブ及びベントチューブをさらに有し、クライオスタットの低温液体での通常充填、及び、導管6からの通常排気を許容する。
導入部で記載したように、クエンチダクト7は、通常、比較的大きな断面積を有し、マグネット4でのクエンチ発生中のガスの放出を許容する。よって、例えば、クエンチダクト7は、比較的大きな径のチューブであってもよい。これは本実施形態にも当てはまる。
チューブの排気端は、所定の過度な圧力で破裂するように設計されるバーストディスク(図1において図示無し)で覆われる。よって、バーストディスクは、通常の状況では損傷を受けず、クエンチの発生に通常起因する導管6からの急速なガス放出を許容する動作をクエンチダクト7が行う必要がある場合にのみ破裂する。
クエンチダクト7は、図1では非常に概略的にのみ図示されており、クエンチダクト7の考えられる構造は、残りの図面を参照に以下にてより詳細に記載される。
図2は、低温液体61を運ぶ導管6と従来のクエンチダクト7を有する従来のクライオスタット5を図示する。クエンチダクト7は、まっすぐなチューブである。このタイプのクエンチダクト7が静的超電導マグネットアレンジメントで使われる場合、特に問題は発生しない。クレンチダクト7は垂直方向又は略垂直方向に配置され、クエンチダクト7は反対流部として作用するようにクエンチダクト内で温度が逆転する。低温液体61から蒸発した低温ガスはクエンチダクト7を充満するが、温度の逆転によって、ガスは基本的には留まる。
このようなクライオスタット5が図1に図示されるタイプの装置にて、図1に関連して記載された少なくとも一つの配向にて使用されると、クエンチダクト7は望ましい方法で機能する。しかしながら、他の配向ではそうでもない。例えば、超電導マグネットアレンジメント2が図1にて実線にて示される中間位置にある時にクエンチダクト7が垂直又は略垂直であるようにクライオスタット5が配置される場合、マグネットアレンジメント2が点線にて示される第一位置2’又は第二位置2’’のいずれかに移動すると、クエ
ンチダクト7が略水平になる。このような配置は、重力gの方向が矢印で示される図2で図示される。この配置の場合、対流セルが引き起こり、上記導入部で記載したように、蒸発が増すにつれ、導管6への熱放出を可能にする傾向にある。
図3A−3Cから図6A−6Cは、この問題を軽減する、マルチ配向性又は回転式クライオスタットとして準備される別のクライオスタット5を図示する。図3A−3Cから図6A−6Cに図示される各クライオスタット5は、図1に図示される装置に使用されてもよいタイプである。
さらに、クライオスタット5はそれぞれ3つの異なる配向で図示される。各図面において、図XAは、図1に図示される第一位置2’にある超電導マグネットアレンジメン
ト2に対応する配向にあるクライオスタットを図示し、図XBは、図1に図示される第二位置2’’にある超電導マグネットアレンジメント2に対応する配向にあるクライオスタ
ット5を図示し、図XCは、図1に実線で示される中間位置にある超電導マグネットアレンジメント2に対応する配向にあるクライオスタット5を図示する。
各ケースにおいて、導管6が低温液体61を保持し、クエンチダクト7の吸気端72が導管6と連結し導管6に対して開口している。一方、クエンチダクト7の他端は、マグネット4でのクエンチ発生中に生成される低温ガスがの放出を許容するように、マグネットアレンジメント2の外部へつながっていなければならない。この排気の他端は、バーストディスク73で覆われ、通常状況ではいつでも、クエンチダクト7内に低温ガスが存在する。導管6により近い、クエンチダクトの一部分は、導管6から離れている場所よりも低温である。これに対応して、バーストディスク73により近いガスは導管6により近いガスよりも暖かい。
クライオスタット5を個別に考えてみると、図3A−3Cは、本発明を具体化し、図1の装置での使用に適した第一の回転式クライオスタット5を図示する。クライオスタット5は、曲がりくねった(又は蛇状の)クエンチダクト7を有する。クエンチダクト7は、クライオスタット5が、図1のマグネットアレンジメント2の第一位置2’に対応す
る図3Aに図示される第一配向にある時、図1に図示される第二位置2’’にあるマグネ
ットアレンジメント2に対応する図3Bに図示される第二配向にある時、さらに、図1に実線で示される中間位置にあるマグネットアレンジメント2に対応する図3Cに図示される第三配向にある時に、反対流部71を提供するように配置される。
各ケースにおいて、反対流部71は、対応する配向で使用される際に温度の逆転が存在するクエンチダクト7の一部である。
本実施形態では、クエンチダクト7は、図3A、3B、3Cでみられるように、360度ループ部74を有し、ループ部74は、クライオスタット5が図示される各作動配向用の反対流部71を備える。さらに、図3A、3B、3Cで図示される配向の間の中間配向においては、360度ループ部74の他の部分が反対流部として作用することが注意されるべきである。反対流部は、クライオスタット5の各作動配向用に提供される。各ケースにおいて、反対流部は、上向きに配向され、垂直又は略垂直であるクエンチダクト7の一部である。反対流部は、その上端71bよりも導管6により近い(導管からクエンチダクト7を通る流路に関して)下端71aを有する。この構造により、使用時に所望の温度の逆転が生じる。各反対流部71は、ダクトチューブの一部であることに言及する。それは開口しており、流体の流れの障害が無い。これによって、必要に応じて、クエンチダクトの一部として機能可能である。
例えば、クエンチダクト7の360度ループ部74のようなループ部を有することは望ましい。なぜなら、クライオスタット6が図3Aの第一配向から図3Cの中間配向を介して図3Bの第二配向へ移動する時に、有効反対流部71がループ部74にてスムーズに移動するからである。万が一、有効反対流部がある位置から他の位置へ急に移動すると、その場合、温度の逆転が所定の配向で発生すると流れが安定するのにより多くの時間を要する。よって、その場合に比べ、これは、より継続的な反対流効果を提供するのに役立つ。
図3A−3Cに示すクライオスタットは、図3Cに示す中心位置から±110度の配向にてうまく作動する。
図4A−4Cは、図3A−3Cのクライオスタットに似たクライオスタット5を図示する。しかしながら、ここでは、ループ部74が螺旋部75に置き換わる。また、図示される三つの異なる配向それぞれにおいて、反対流部71がクエンチダクト7によって提供される。さらに、図4A−4Cで示される配向の間にある中間配向用に、異なる反対流部が存在する。図3A−3Cの実施形態において、ループ部74は、法線としての回転軸3を有する平面に略水平に提供されることが分かる。一方、図4A−4Cの螺旋状に屈曲した部分75は、この平面に対して略直交するように配置される。
図5A−5Cは、本発明を具体化する第三クライオスタット5を図示する。この場合、クエンチダクト7は、図3A−3Cのクエンチダクトのループ部74に代わって、U型屈曲部76を有する。また、このU型屈曲部76は、法線としての回転軸2を有する平面に主として提供される。また、クエンチダクト7は、図5A、5B,5Cに図示されるクライオスタット5の異なる配向にて作動する反対流部71を提供する。また、これら配向の間の配向用にも反対流部が存在する。
図3A−3C,4A−4C,及び、5A−5Cの各実施形態において、クエンチダクト7の吸気部72が、少なくとも一つの配向用の反対流部として作用する。これの構造は好ましく、実際一般的でもあるが必須ではない。
図6A−6Cは、本発明を具体化する第四クライオスタット5を図示する。ここでも、導管6(図面にて点線にて非常に概略的にのみ図示)があり、ここから延在しているのはクエンチダクト7である。しかし、ここで、クエンチダクト7は、上記実施形態よりもより複雑、又はより曲がりくねっている。クエンチダクト7は、多数の折り返し点77と、その間の直線部分78とを有する。本実施形態において、各折り返し点77はU型に屈曲した形である。ここでも、クエンチダクト7は、法線としての回転軸2を有する平面に主として提供される。ここにて、図6A、6B,6Cに図示される配向それぞれにおいて、反対流部71が提供される。また、中間配向用にも反対流部が存在する。実際、本実施形態において、どの配向においても作動可能な複数の反対流部71があってもよい。
ここで注目しておきたい点は、本実施形態のいずれにおいても、完全に垂直である反対流部71が理想である一方、必須ではない。その部分が上方向で角度がある場合でも少なくともいくつかの効果は達成されるので、垂直に近づくほどより多くの効果が達成される。
クライオスタット5に対する重力方向は各図面にて参照符号gの矢印で図示される点を言及する。これは、各図面において反対流部71として定義される部分の断面に対応する。
各ケースにおいて、クエンチダクト7は比較的径の大きいチューブから形成されており、各反対流部がチューブの直径に対して出来るだけ長いことが望ましい。しかしながら、いくつかの場合、反対流部の長さがチューブの直径と少なくとも同等であるか、又はそれを超える場合、少なくとも理に適った性能は発揮されるであろう。
また、クライオスタット5がその作動端の中間である配向、つまり、上記図面XCにて図示される位置と同等である配向にある場合、クエンチダクト7の吸気部72は導管6の上部に向かって設置される。これにより、クエンチダクトは、全ての作動配向において液体が無い状態を維持できる。
マグネット4自体の外側に位置するクエンチダクト7はほぼ100mm程度の径を有してもよい。マグネットアレンジメント5の内側に位置するクエンチダクトの径は外側の径よりも小さくてもよい。この構造は、長さの短いクエンチダクトに適応されることが理想的である。
図3A−3Cから図5A−5Cに図示されるアレンジメントと比較して、図6A−6Dに図示されるクエンチダクト7の流れ抵抗が比較的高いことが分かる。
特定の超電導マグネットアレンジメントで受け入れられるクエンチダクト7の正確な構造は、アレンジメントの全体構造に拠る。よって、図6A−6Cに図示されるようなアレンジメントは、そのクライオスタット5が比較的少量の低温液体を貯蔵するものであり、かつ、マグネットでのクエンチ発生による潜在的な蒸発率が比較的低い場合のみにおいて適している。
クエンチによって発生する蒸発というより、むしろ標準的な沸騰に対処する一般的な通気出口は、クエンチが発生した場合には急速に充分な量のガスを放出することを通常は許容しない逆止弁を通常備える。
上述が、回転変換によって互いに到達可能な異なる配向で使用できるクライオスタットに関連し、故に、このクライオスタットが回転式クライオスタットとして記載されるが、これは、クライオスタットが360度又は継続的に回転可能でなければならないことを意味しない。さらには、これは、回転可能なように必ずしも搭載されているべきとも意味しない。むしろ、いかにこれら配向が互いに関連しているかを定義している。

Claims (12)

  1. 複数の配置で使用される超電導マグネット用のマルチ配向性クライオスタットであり、前記クライオスタットは、
    低温液体を保持する導管と、
    前記導管から延在し、前記マグネットのクエンチに起因した前記低温液体の沸騰により発生するガスを前記導管から放出することを許容するクエンチダクトと、
    を有し、
    前記クエンチダクトは、少なくとも二つの異なって配置される反対流部を有するように曲がりくねっており、各部分は、前記クライオスタットが各対応配向にある場合に、反対流部として機能する
    ことを特徴とするマルチ配向性クライオスタット。
  2. 前記クエンチダクトが二つ以上の反対流部を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチ配向性クライオスタット。
  3. 前記反対流部の少なくとも一方の配向が、前記反対流部の少なくとも他方の配向から少なくとも90度離れていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチ配向性クライオスタット。
  4. 前記クエンチダクトは、通常動作時に、前記保持された低温液体の面より高い位置にとどまるように配置された吸気部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマルチ配向性クライオスタット。
  5. 前記マルチ配向性クライオスタットは、第一配向と、回転変換により前記第一配向から到達可能な第二配向とでの使用のために配置され、前記第一配向と前記第一配向から前記回転変換の一部を実行することで到達可能な前記第二配向との間の配向での使用のために配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマルチ配向性クライオスタット。
  6. 前記クエンチダクトの第一部分は、前記クライオスタットが前記第一配向にある時に反対流部として作用し、前記クエンチダクトの第二部分は、前記クライオスタットが前記第二配向にある時に反対流部として作用することを特徴とする請求項5に記載のマルチ配向性クライオスタット。
  7. 前記クエンチダクトがU型屈曲部、ループ部、螺旋状屈曲部のような、連続屈曲部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマルチ配向性クライオスタット。
  8. 前記連続屈曲部は、少なくとも90度まで、好ましくは少なくとも180度程度まで屈曲することを特徴とする請求項7に記載のマルチ配向性クライオスタット。
  9. 前記クライオスタットは一つのクエンチダクトを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のマルチ配向性クライオスタット。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のマルチ配向性クライオスタットと超電導マグネットとを有する超電導マグネットアレンジメント。
  11. 医療機器装置であって、
    前記クライオスタットが前記第一配向にある場合の第一位置と、前記クライオスタットが前記第二配向にある場合の第二位置との間にて、該医療機器装置のベースに対して移動可能であるように搭載される請求項10に記載の超電導マグネットアレンジメントを有する、医療機器装置。
  12. 医療機器装置のベースに対して第一位置と第二位置との間で移動可能であるように搭載される超電導マグネットアレンジメントを有する医療機器装置であって、前記超電導マグネットアレンジメントは、
    超電導マグネットと、
    低温液体を保持する導管を有するクライオスタットと、
    前記導管から延在し、前記マグネットのクエンチに起因した前記低温液体の沸騰により発生するガスを前記導管から放出することを許容するクエンチダクトと、
    を有し、
    前記クライオスタットは、前記マグネットアレンジメントが前記第一位置にある時に第一配向にあり、前記クライオスタットは、前記マグネットアレンジメントが前記第二位置にある時に第二配向にあり、
    前記クライオスタットが前記第一配向にある時に、第一部分が、前記装置のベースに対して上方向に延在して下端と上端とを有し、前記下端は、前記導管から前記クエンチダクトを通る流路に関して前記上端よりも前記導管により近く、前記クライオスタットが前記第二配向にある時に、第二部分が、前記装置のベースに対して上方向に延在して下端と上端とを有し、前記下端は、前記導管から前記クエンチダクトを通る流路に関して前記上端よりも前記導管により近く、前記クエンチダクトが、互いに異なって配向される少なくとも前記第一部分と前記第二部分とを有するように曲がりくねっている、
    ことを特徴とする医療機器装置。
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