JP2013183551A - 解析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シミュレーションにおいて磁気的な現象を好適に扱える解析技術を提供する。
【解決手段】解析装置100は、仮想空間内に定義される粒子系の情報を取得する粒子系取得部108と、粒子系の粒子に磁気モーメントを付与する磁気モーメント付与部110と、磁気モーメント付与部110によって磁気モーメントが付与された粒子を含む粒子系の各粒子の運動を支配する支配方程式を数値的に演算する数値演算部120と、数値演算部120における演算結果を使用して、粒子系が生成する磁場を演算する磁場演算部132と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、粒子系を解析する解析装置に関する。
近年、コンピュータの計算能力の向上に伴い、モータなどの電気機器の設計開発の現場では磁場解析を取り入れたシミュレーションがよく使用されるようになっている。シミュレーションを使用すると、実際にプロトタイプを製作しなくてもある程度の評価が可能となるので、設計開発のスピードが向上しうる。
例えば特許文献1には、磁場解析を実行する演算処理装置を具えるモータ解析装置が記載されている。演算処理装置は、ユーザの操作に基づく外部指令に応じて、有限要素法による静磁場解析やマクスウェルの応力法によるトルク計算を実行する。有限要素法による静磁場解析のためにメッシュ分割が行われる。メッシュ分割は、コア領域及びハウジング領域、さらには外部空気層領域についても行われる。
磁場解析の他の手法は差分法および磁気モーメント法を含む。
特開平11−146688号公報 特開2009−37334号公報
Erik Bitzek他、「Structural Relaxation Made Simple」、Physical Review Letters、2006年10月27日、97
これらの手法では解析対象をメッシュ分割する。しかしながら、解析対象が流体の場合固定メッシュが使われ、移動境界を伴うと解析が困難になる。また、解析対象が磁性体や塑性体の大変形を伴う場合もメッシュ分割は困難である。特に、モータなどの回転体を含む磁場解析でメッシュ分割を行おうとする場合、メッシュが重合(一重なら大変形)するため、解析は困難であった。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シミュレーションにおいて磁気的な現象を好適に扱える解析技術の提供にある。
本発明のある態様は、解析装置に関する。この解析装置は、仮想空間内に定義される粒子系の粒子に磁気モーメントを付与する磁気モーメント付与部と、磁気モーメント付与部によって磁気モーメントが付与された粒子を含む粒子系の各粒子の運動を支配する支配方程式を数値的に演算する数値演算部と、数値演算部における演算結果を使用して、粒子系に関連する磁気的な物理量を演算する磁気的物理量演算部と、を備える。
この態様によると、粒子に付与された磁気モーメントを使用して磁気的な物理量を導出できる。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、シミュレーションにおいて磁気的な現象を好適に扱うことができる。
実施の形態に係る解析装置の機能および構成を示すブロック図である。 図1の粒子データ保持部の一例を示すデータ構造図である。 図1の解析装置における一連の処理の一例を示すフローチャートである。 n=1次までの展開に対応する計算結果を示す図である。 n=2次までの展開に対応する計算結果を示す図である。 n=3次までの展開に対応する計算結果を示す図である。 n=4次までの展開に対応する計算結果を示す図である。 球面調和関数の次数と計算値との関係を示す図である。 ヒステリシスカーブを示す図である。 永久磁石(1.0T)による磁化の計算結果を示す図である。 永久磁石(1.0T)による磁化の計算結果を示す図である。 永久磁石(1.0T)による磁化の計算結果を示す図である。
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
古典力学や量子力学等を基に計算機を用いて物質科学全般の現象を探るための方法として、分子動力学法(Molecular Dynamics Method、以下MD法と称す)や、量子分子動力学法(Quantum Molecular Dynamics Method)や、MD法をマクロスケールの系を扱えるように発展させた繰り込み群分子動力学法(Renormalized Molecular Dynamics、以下RMD法と称す)に基づくシミュレーションが知られている(例えば、特許文献2参照)。正確にはMD法やRMD法は運動論的手法(物理量の算出には統計力学を使う)であり、粒子法は、連続体を記述する微分方程式を離散化する手法であり、別ものであるが、ここではMD法やRMD法も粒子法と呼ぶ。
粒子法は静的な現象だけでなく流れなどの動的な現象をも取り扱えるので、主に静的な現象を解析対象とする上述の有限要素法などに代わるシミュレーション手法として注目されている。
粒子法には、連続体を粒子で離散化することにより解析対象の粒子系を得る、という微分的な見方がある。例えば、粒子法において流体を扱う場合、ナビエストークス(Navier-Stokes)方程式を粒子で離散化することが多い。
一方、粒子法の別の見方として、多くの粒子を集めて連続体を形成する、という積分的な見方もある。これは例えば、小さな鉄の粒を集めて固めて大きな鉄球を形成するという見方である。
一般に、多くの磁気モーメントが存在する空間内のある点の磁場を求める場合、重ね合わせの原理により、各磁気モーメントがその点に作る磁場を磁気モーメントに亘って足し合わせる。本発明者は、このような磁気モーメントの集まりから磁場を求める手法と、積分的な見方をした場合の粒子法と、の親和性を独自に見い出し、粒子法における粒子に磁気モーメントを付与することに想到した。これにより、対流や大変形の解析に強いという粒子法の利点を維持しつつ、粒子法の適用範囲を磁場解析にまで広げることが可能となる。
図1は、実施の形態に係る解析装置100の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
本実施の形態ではRMD法に倣って粒子系を解析する場合について説明するが、繰り込みを行わないMD法やDEM(Distinct Element Method)やSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)やMPS(Moving Particle Semi-implicit)などの他の粒子法に倣って粒子系を解析する場合にも、本実施の形態に係る技術的思想を適用できることは本明細書に触れた当業者には明らかである。
解析装置100は入力装置102およびディスプレイ104と接続される。入力装置102は、解析装置100で実行される処理に関係するユーザの入力を受けるためのキーボード、マウスなどであってもよい。入力装置102は、インターネットなどのネットワークやCD、DVDなどの記録媒体から入力を受けるよう構成されていてもよい。
解析装置100は、粒子系取得部108と、磁気モーメント付与部110と、数値演算部120と、磁場演算部132と、表示制御部118と、粒子データ保持部114と、を備える。
粒子系取得部108は、入力装置102を介してユーザから取得する入力情報に基づき、1、2または3次元の仮想空間内に定義されるN(Nは自然数)個の粒子からなる粒子系のデータを取得する。粒子系はRMD法を使用して繰り込まれた粒子系である。
粒子系取得部108は、入力情報に基づき仮想空間内にN個の粒子を配置し、配置されたそれぞれの粒子に速度を付与する。粒子系取得部108は、配置された粒子を特定する粒子IDと、その粒子の位置と、その粒子の速度と、を対応付けて粒子データ保持部114に登録する。
磁気モーメント付与部110は、入力装置102を介してユーザから取得する入力情報に基づき、粒子系取得部108によって取得された粒子系の粒子に磁気モーメントを付与する。例えば、磁気モーメント付与部110は、ディスプレイ104を介してユーザに、粒子系の粒子の磁気モーメントの入力を求める。磁気モーメント付与部110は、入力された磁気モーメントを粒子IDと対応付けて粒子データ保持部114に登録する。
以下では粒子系の粒子は全て同質または同等なものとして設定され、かつ、ポテンシャルエネルギ関数は2体のポテンシャルであって粒子によらずに同じ形を有するものとして設定される場合について説明する。しかしながら、他の場合にも本実施の形態に係る技術的思想を適用できることは、本明細書に触れた当業者には明らかである。
数値演算部120は、粒子データ保持部114によって保持されるデータが表す粒子系の各粒子の運動を支配する支配方程式を数値的に演算する。特に数値演算部120は、離散化された粒子の運動方程式にしたがった繰り返し演算を行う。粒子の運動方程式は磁気モーメントに依存する項を有する。
数値演算部120は、力演算部122と、粒子状態演算部124と、状態更新部126と、終了条件判定部128と、を含む。
力演算部122は粒子データ保持部114によって保持される粒子系のデータを参照し、粒子系の各粒子について、粒子間の距離に基づきその粒子に働く力を演算する。粒子に働く力は、磁気モーメント間の相互作用に基づく力を含む。力演算部122は、粒子系のi番目(1≦i≦N)の粒子について、そのi番目の粒子との距離が所定のカットオフ距離よりも小さな粒子(以下、近接粒子と称す)を決定する。
力演算部122は、各近接粒子について、その近接粒子とi番目の粒子との間のポテンシャルエネルギ関数およびその近接粒子とi番目の粒子との距離に基づいて、その近接粒子がi番目の粒子に及ぼす力を演算する。特に力演算部122は、その近接粒子とi番目の粒子との距離の値におけるポテンシャルエネルギ関数のグラジエント(Gradient)の値から力を算出する。力演算部122は、近接粒子がi番目の粒子に及ぼす力を全ての近接粒子について足し合わせることによって、i番目の粒子に働く力を算出する。
粒子状態演算部124は粒子データ保持部114に保持される粒子系のデータを参照し、粒子系の各粒子について、離散化された粒子の運動方程式に力演算部122によって演算された力を適用することによって粒子の位置および速度のうちの少なくともひとつを演算する。本実施の形態では、粒子状態演算部124は粒子の位置および速度の両方を演算する。
粒子状態演算部124は、力演算部122によって演算された力を含む離散化された粒子の運動方程式から粒子の速度を演算する。粒子状態演算部124は、粒子系のi番目の粒子について、蛙跳び法やオイラー法などの所定の数値解析の手法に基づき所定の微小な時間刻みΔtを使用して離散化された粒子の運動方程式に、力演算部122によって演算された力を代入することによって、粒子の速度を演算する。この演算には以前の繰り返し演算のサイクルで演算された粒子の速度が使用される。
粒子状態演算部124は、演算された粒子の速度に基づいて粒子の位置を算出する。粒子状態演算部124は、粒子系のi番目の粒子について、所定の数値解析の手法に基づき時間刻みΔtを使用して離散化された粒子の位置と速度の関係式に、演算された粒子の速度を適用することによって、粒子の位置を演算する。この演算には以前の繰り返し演算のサイクルで演算された粒子の位置が使用される。
状態更新部126は、粒子データ保持部114に保持される粒子系の各粒子の位置および速度のそれぞれを、粒子状態演算部124によって演算された位置および速度で更新する。
終了条件判定部128は、数値演算部120における繰り返し演算を終了すべきか否かを判定する。繰り返し演算を終了すべき終了条件は、例えば繰り返し演算が所定の回数行われたことや、外部から終了の指示を受け付けたことや、粒子系が定常状態に達したことである。終了条件判定部128は、終了条件が満たされる場合、数値演算部120における繰り返し演算を終了させる。終了条件判定部128は、終了条件が満たされない場合、処理を力演算部122に戻す。すると力演算部122は、状態更新部126によって更新された粒子の位置で再び力を演算する。
磁場演算部132は、数値演算部120における演算が終了すると、粒子データ保持部114によって保持されるデータが表す粒子系が生成する磁場を演算する。磁場演算部132は、粒子データ保持部114によって保持される各粒子の磁気モーメントに基づいて磁場を演算する。磁場は、粒子系に関連する磁気的な物理量である。磁場演算部132は磁場の代わりにまたは磁場に加えて磁束密度や磁化を演算してもよい。
また、磁場演算部132は、数値演算部120における繰り返し演算の各ステップにおいて、粒子の位置に生成される磁場を演算してもよい。
表示制御部118は、粒子データ保持部114に保持されるデータが表す粒子系の各粒子の位置、速度、磁気モーメントに基づき、ディスプレイ104に粒子系の時間発展の様子やある時刻における状態を表示させる。この表示は、静止画または動画の形式で行われてもよい。
図2は、粒子データ保持部114の一例を示すデータ構造図である。粒子データ保持部114は、粒子IDと、粒子の位置と、粒子の速度と、粒子の磁気モーメントと、を対応付けて保持する。
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクやメモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶するメモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
以上の構成による解析装置100の動作を説明する。
図3は、解析装置100における一連の処理の一例を示すフローチャートである。粒子系取得部108は、RMD法に倣って繰り込まれた粒子系を取得する(S202)。磁気モーメント付与部110は、取得された粒子系の粒子に磁気モーメントを付与する(S204)。力演算部122は、粒子間の距離から粒子に働く力を演算する(S206)。粒子状態演算部124は、演算された力を含む粒子の運動方程式から粒子の速度と位置を演算する(S208)。状態更新部126は、粒子データ保持部114に保持される粒子の位置、速度を演算された位置、速度で更新する(S210)。終了条件判定部128は、終了条件が満たされるか否かを判定する(S212)。終了条件が満たされない場合(S212のN)、処理はS206に戻される。終了条件が満たされる場合(S212のY)、磁場演算部132は粒子系によって生成される磁場を演算する(S214)。
粒子法は一般に、流体や分離現象や切断加工などの動的な解析対象をより好適に扱える。
そして本実施の形態に係る解析装置100によると、粒子法による解析と磁気モーメントに基づく磁場解析とを連成することができる。したがって、動的な解析対象を、磁場などの磁気的な性質も含めてより精度高くかつ短時間で解析することが可能となる。
例えば解析対象が砂鉄の場合、従来の有限要素法などのメッシュベースの解析手法ではメッシュを好適に設定することができないので、うまくシミュレーションすることが困難である。そこで本実施の形態に係る解析装置100によると、砂鉄の磁性を考慮に入れた形で砂鉄を粒子法で好適に解析することができる。
また例えば解析対象がモータの場合、固定体に対して回転体が回転するので、やはりメッシュベースの解析手法は不向きであり静解析に止まる。そこで、本実施の形態に係る解析装置100によると、回転体の回転を粒子法により高精度にシミュレーションしつつ、回転体と固定体との磁気的相互作用を動的に扱うことができる。
以下、解析装置100で使用される解析手法の原理について説明する。
磁場はマクロなベクトルポテンシャル:
から以下の様に求まる。スピンの向きをz軸に取り、aを原子半径とする。格子点jにある1個のスピンが作る磁場はスピンSjz(磁気モーメントmjz)を発生させる円電流を
とし、
ここで、
n=0のみを残すと一様に磁化:
した球の作る磁場と同等になる。
なお、真球のバルク材に本手法を適用する場合、n=0のみ採用すると、一様な磁化が得られず、磁気モーメント法と同様な結果になる。高次の項を加える事で改善できる。FEMは一様になる。
デカルト座標系に変換(
を使って、)すれば
ここで、sinθ=0のときは、Bθ=0から、B=B=0であることに注意する。磁気モーメントm、mがx軸、y軸にそれぞれ平行なときの磁場
も同様に求まる。
における磁場
、N個のスピンからの寄与、は
ここで、
は球内の平均を意味する。P−13とP−16を連立することで, 磁気モーメントm が求まる。磁性体外部に生じる磁場は、P−13であり、磁性体内部に生じる磁場は、
P−14は球体表面に生じる磁化による反磁場が考慮され、
を満足する。
P−13はマトリクスが優対角でない(j=pが除外されている) から収束は遅い。そこで、以下の運動方程式から解を得る。
ここで、m=5×10−2dtは仮想質量、γ=m/(10dt)は、減衰係数である。
FIRE(非特許文献1参照)を追加すればさらに高速化が可能。以下にFIREのコードを示す。なお、粒子数802、残差<10−8における計算で10.05[s]である。FIRE無しでは、残差が10−5以下にならなかった。
以下にLegendre 関数と倍Legendre 関数の特別な場合を列挙する。(x:=cosθ
以下に、x軸方向にBox=0.1[T]の一様な外場においた磁性球(帯磁率が999)の磁化
を計算した結果を示す。球を構成する粒子(原子)数は4009個とし、fcc構造に配置した。厳密解は
である。図4、図5、図6、図7に多重極展開の1次〜4次までの結果を示す。共に中心を通過する断面を表示した。多重極展開の次数を上げると, 厳密解と良く合う事が判る。次数が低いと収束が悪い。また計算時間の大半は球面調和関数の呼び出しである。
図4は、n=1次までの展開に対応する計算結果を示す図である。厳密解μ=0.2991[T]に対し計算値は平均0.346231[T]である。磁化は外場B=0.1[T]に平行かつ一様であることが確認できる。残差1e−13以下で、計算時間は約80分であった。
図5は、n=2次までの展開に対応する計算結果を示す図である。厳密解μ=0.2991[T]に対し計算値は平均0.321891[T]である。磁化は外場B=0.1[T]に平行かつ一様であることが確認できる。残差1e−8以下で、計算時間は約3 時間であった。残差は1e−9以下に落ちなかった。
図6は、n=3次までの展開に対応する計算結果を示す図である。厳密解μ=0.2991[T]に対し計算値は平均0.312444[T]である。磁化は外場B=0.1[T]に平行かつ一様であることが確認できる.
図7は、n=4次までの展開に対応する計算結果を示す図である。厳密解μ=0.2991[T]に対し計算値は平均0.312222[T]である。磁化は外場B=0.1[T]に平行かつ一様であることが確認できる。約5時間後において、残差は1e−9以下に落ちなかった。
図8は、球面調和関数の次数と計算値との関係を示す図である。次数を上げると厳密解に近づくことが分かる。
解析装置100で使用される解析手法の原理を、次のように説明することもできる。
は原子核の質量、mは電子の質量である。eは原子核と電子の電荷(の絶対値)である。最終的に電荷は電流に置き換わり、電子の質量は原子核の質量と和して原子の質量Mとなるから、陽には現れない。δVは磁性球の体積、mは仮想質量、λはラグランジェの未定常数である。厳密に拘束を満足させるには、SHAKE法に代表される収束計算が必要であるが、本手法ではλ=1として、正解の周りの微小振動を誤差として扱う。
スピンの向きをz軸に取り、aを原子半径とする。格子点jにあるスピンSjz(磁気モーメントmjz)を発生させる円電流は
であるから、磁場はマクロなベクトルポテンシャル:
から以下の様に求まる。
ここで、
n=0のみを残すと一様に磁化:
した球の作る磁場と同等になる。
デカルト座標系に変換(
を使って、)すれば
ここで、sinθ=0のときは、Hθ=0から、H=H=0であることに注意する。磁気モーメントm、mがx軸、y軸にそれぞれ平行なときの磁場
も同様に求まる。
におけるモーメントが感じる外磁場
(N個のスピンからの寄与) は
誘導磁場
は、
から求まる。
なお、繰り込みに際し、電気伝導度σは
今はδ=2としている。
Q−21右辺のLagrange 微分
は、粒子法であるから
で置き換えることが出来る。ただし、磁化の並進移動は粒子の移動により考慮されるが、磁化ベクトルの回転は別に考慮する必要がある(ランダウ=リフシッツ、電磁気学、51章)。
磁性体外部に生じる磁場は、Q−26であり、磁性体内部に生じる磁場は、
も、非線形であることに注意する。全外場
と磁化
との関係は、
である。Q−26とQ−27を連立することで、磁気モーメント
が求まる。
非線形磁化とヒステリシス
Q−27とQ−24から磁場
を消去する:
Q−28を解くことで
が得られる(図9にはB=f(H)の場合を示す)。
図9は、ヒステリシスカーブを示す図である。ヒステリシスカーブとB+2μH=3Bの交点からMを求める。今
を永久磁化とするB−Hカーブ:
が与えられたとする。
と連立し
を得る。一般のB=f(H)に対しては、Newton-Laphson法で解く。
磁場の粒子化法
Q−19はマトリクスが優対角でない(j=pが除外されている)から収束は遅い。そこで、以下の運動方程式から解を得る。
ここで、mは仮想質量である。推奨値は100×2.5×10−17dtである。
もし静磁場解析に限れば、グリーン関数G(rpj)をγδpj/μで置き換える。このとき、m=5×10dt、γ=m/(100dt)とする。mを十分小さく取れば、正解の周りの微小な減衰振動が起こり、誤差を小さくできる。
模型を考える:
減衰項を持つ強制振動の解(Landau and Lifshitz,Mechanics,Sec.26) は
を考えれば、
と成る。即ちmを十分小さく取れば、解くべき本来の方程式
の解に一致する。
離散化
蛙飛び法(速度はnとn+1の中間点における評価)に従い離散化すれば、収束回数をsと書き、
対角要素のみ未来を使えば、陽的解法に出来、約30%程度効率改善になる。計算の大半は特殊関数の呼び出しである。
FIREによる高速化:静磁場解析にのみ有効
FIRE(非特許文献1参照)を追加すればさらに高速化が可能。以下にFIREのコードを示す。なお、粒子数802、残差<10−8における計算で10.05[s]である。FIRE無しでは、残差が10−5以下にならなかった。
精度検証:球体の一様磁化
以下に、x軸方向にBox=0.1[T]の一様な外場においた磁性球(帯磁率が999)の磁化
を計算した結果を示す。電気伝導度はゼロとした。球を構成する粒子(原子) 数は4009個とし、fcc構造に配置した。厳密解は
である。この場合、図4、図5、図6、図7、図8に示される計算結果と同様な計算結果が得られた。
さらに、ルービング(looping) パターンを確認した結果を図10、図11、図12に示す。従来の磁気モーメント法等に見られる磁場の「巻き」は見られない。そして、粒子の配列においても、規則正しい配列(fcc、bcc、sc)ならば、結果は同じである事が観れる。
図10は、永久磁石(1.0T)による磁化の計算結果を示す図である。永久磁石はbcc、磁性体はfcc格子上に配列した。
図11は、永久磁石(1.0T)による磁化の計算結果を示す図である。永久磁石はfcc、磁性体はbcc格子上に配列した。
図12は、永久磁石(1.0T)による磁化の計算結果を示す図である。永久磁石はfcc、磁性体はsc格子上に配列した。原子半径をfcc格子のものを使ったので磁性体内部の磁場が小さくでた。sc格子を充填する原子半径にすれば正解を得る。
Legendre関数の級数表示
以下にLegendre関数と倍Legendre関数の特別な場合を列挙する。(x:=cosθ
粒子に働く力の導出
粒子(電子と核)と、粒子磁場間の相互作用を記述するLagrangeanは
である。ベクトルポテンシャル
と電磁場の関係は、
である。
を使い、以下の運動方程式を得る。
原子M=M+mに対する運動方程式は、
となる。右辺:Lorentz力を平均電流密度
、電気モーメントを
で置き換えると
Maxwellの方程式とQ−24から
最終的に原子に働く力は、電気分極を無視し、
となる。
粒子に働く力は、直接Maxwellの応力テンソルからも求まる。
球に局在した電流が作るモーメント
に作用する力は、最低の次数では
である。従い、ポテンシャルエネルギーは、電気分極によるポテンシャルエネルギーを合わせて、
となるが、渦電流や真電流を包含しない。
結局、
を計算すれば磁性球に働く磁力が求まる。
磁化による電流
と渦電流
を完全に切り分けることは恐らく出来ないが、それぞれ、
微係数の計算
以下に必要な微分係数を書き出す。
等からrpj>aのみ列挙すると(なお、
はsinθに比例するから、θ=0で発散は無い)、
磁気モーメントが作る磁化電流の計算
z軸に平行に磁化したとき
今一度、z軸に磁化したときの磁場を書く
磁化電流を
と書けば、磁化により生じる磁力

である。先ず、
を求める。
x軸に平行に磁化したとき
x軸に磁化したときの磁場を書く:
磁化電流
を求める。
y軸に平行に磁化したとき
y軸に磁化したときの磁場を書く:
磁化電流
を求める。
誘導磁界が作る渦電流の計算
誘導磁場は、S−3から
ここでG(r)はグリーン関数(伝播関数) である。渦電流は
粒子に働く力の計算
、m、mと渦電流による寄与を加えれば、全電流が得られる。
座標
に粒子に働く力は
最後に
の微分から出てくる項を付加する必要がある。これは磁場の誤差
から生じる見かけの力であり、運動と磁場の全エネルギーを保存させる。
以上、実施の形態に係る解析装置100の構成と動作について説明した。これらの実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
実施の形態では、数値演算部120において粒子の位置と速度の両方を演算する場合について説明したが、これに限られない。例えば、数値解析の手法にはVerlet法のように、粒子の位置を演算する際に粒子に働く力から粒子の位置を直接演算し、粒子の速度は陽に計算しなくてもよい手法もあり、本実施の形態に係る技術的思想をそのような手法に適用してもよい。
100 解析装置、 102 入力装置、 104 ディスプレイ、 108 粒子系取得部、 110 磁気モーメント付与部、 114 粒子データ保持部、 118 表示制御部、 120 数値演算部、 122 力演算部、 124 粒子状態演算部、 126 状態更新部、 128 終了条件判定部、 132 磁場演算部。

Claims (5)

  1. 仮想空間内に定義される粒子系の粒子に磁気モーメントを付与する磁気モーメント付与部と、
    前記磁気モーメント付与部によって磁気モーメントが付与された粒子を含む粒子系の各粒子の運動を支配する支配方程式を数値的に演算する数値演算部と、
    前記数値演算部における演算結果を使用して、粒子系に関連する磁気的な物理量を演算する磁気的物理量演算部と、を備えることを特徴とする解析装置。
  2. 粒子系は繰り込み群分子動力学法を使用して繰り込まれた粒子系であることを特徴とする請求項1に記載の解析装置。
  3. 前記数値演算部における支配方程式は磁気モーメントに依存する項を有することを特徴とする請求項1または2に記載の解析装置。
  4. 前記磁気的物理量演算部は、粒子系が生成する磁場または磁束密度を演算することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の解析装置。
  5. 仮想空間内に定義される粒子系の粒子に磁気モーメントを付与する機能と、
    磁気モーメントが付与された粒子を含む粒子系の各粒子の運動を支配する支配方程式を数値的に演算する機能と、
    演算結果を使用して、粒子系に関連する磁気的な物理量を演算する機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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