JP2013179951A - 植毛用針部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】先端部に設けた複数のニードル片をスムーズに開閉する。
【解決手段】中空の筒状に形成され内部にシャフト13を軸方向に移動可能に支持する筒状部11と、筒状部11の先端部からさらに先端側に向かって徐々に径方向寸法が小さくなるように延びる中空の針状の部分であって先端側から基端側に向かって軸方向に延びるスリット121によって複数のニードル片122に分割されているニードル部12とを備え、シャフト13が筒状部11を先端側に移動してニードル片122の内面に当接し、さらに当該シャフト13がニードル片122の内面を摺動しながら先端側に移動することによって、ニードル片122が径方向外側に撓むように構成された植毛用針部材10は、スリット121が、筒状部11を先端側に移動するシャフト13がニードル片122の内面に当接する当接点P2よりも基端側に深く形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、植毛用針部材に関する。
従来より、例えば毛根の移植手術においては、中空の針部材を使用して毛根を含む植皮片を採取し、その採取した植皮片を頭皮などの移植部位に移植するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3035668号公報
この種の植毛用の針部材においては、近年では、先端部に可撓性を有する複数のニードル片を設け、これら複数のニードル片によって植皮片を保持する構成のものが考えられている。ところが、このような構成においては、ニードル片の開閉をスムーズに行えるように構成しなければ、部材が破損したり、ニードル片によって植皮片を傷付けてしまったり、切断したりしてしまうなどの不具合が生じる。
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、先端部に設けた複数のニードル片をスムーズに開閉することができる植毛用針部材を提供することにある。
本発明によれば、植毛用針部材は、中空の筒状に形成され、その内部にシャフトを軸方向に移動可能に支持する筒状部と、この筒状部の先端部からさらに先端側に向かって徐々に径方向寸法が小さくなるように延びる中空の針状の部分であって、先端側から基端側に向かって軸方向に延びるスリットによって複数のニードル片に分割されているニードル部と、を備えており、シャフトが筒状部を先端側に移動してニードル片の内面に当接し、さらに当該シャフトがニードル片の内面を摺動しながら先端側に移動することによって、ニードル片が径方向外側に撓む構成である。そして、この構成の植毛用針部材において、スリットは、筒状部を先端側に移動するシャフトがニードル片の内面に当接する当接点よりも基端側に深く形成されている。
これにより、スリットの基端部分を支点とし、且つ、シャフトとニードル片との当接点を力点とした態様にてニードル片が開くようになり、比較的小さな力でシャフトを先端側に移動させることで、閉状態のニードル片をスムーズに開くことができる。
第1実施形態に係る植毛用針部材の縦断側面図 植毛用針部材の製造方法を示すフローチャート 植毛用針部材の製造方法を視覚的に説明するための図 植毛用器具の縦断側面図 植毛用器具を用いて植皮片を採取および移植する場合の動作を説明するための図 第2実施形態に係る図1相当図 図3相当図 第3実施形態に係る図1相当図
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1から図5を参照しながら説明する。図1に示すように、植毛用針部材10は、例えばステンレスなどの金属材料からなり、直線状の筒状部11およびテーパ状のニードル部12を一体的に備える中空筒状の針状の部材である。
筒状部11は、中空の筒状に形成され、その内径が、直線状に延びるシャフト13の外径よりも僅かに大きくなっている。これにより、筒状部11の内部に、シャフト13が軸方向に移動可能に支持されるようになっている。換言すれば、この筒状部11は、その内部の中空部にてシャフト13を支持しつつ、そのシャフト13の軸方向における移動、即ち、前進および後退をガイドする機能を有している。
ニードル部12は、筒状部11の先端部から先端側に向かって徐々に径方向寸法が小さくなるように延びる中空の針状の部分である。このニードル部12には、先端側から基端側に向かって軸方向に延びるスリット121が形成されており、このスリット121によって、ニードル部12は複数のニードル片122に分割されている。このスリット121は、その開口幅が基端側から先端側に向かって徐々に狭くなるように形成されており、これにより、基端側の開口幅Wが最先端部の開口幅Wよりも小さくなるようになっている。また、スリット121の最先端部の開口幅Wは、この場合、0mmとなるように設定されており、これにより、複数のニードル片122が先端側の一部、この場合、最先端部において相互に接触するように構成されている。また、ニードル部12の先端部の開口幅Dは、採取対象である生体組織、この場合、毛根を含む植皮片100の幅Wよりも小さくなるように設定されている。なお、植皮片100の幅Wは、例えば統計的に得られた一般的な植皮片の幅を採用するとよい。
この構成の植毛用針部材10において、図1(a)に示す初期状態からシャフト13が筒状部11を先端側に移動すると、図1(b)に示すように、やがて当該シャフト13の先端部がニードル片122の内面に当接する。そして、さらにシャフト13がニードル片122の内面を摺動しながら先端側に移動することによって、図1(c)に示すように、スリット121の基端部分を支点P1とし、且つ、シャフト13とニードル片122との当接点P2を力点とした態様にて、各ニードル片122がそれぞれ径方向外側に撓んで開くようになっている。この場合、スリット121は、筒状部11を先端側に移動するシャフト13が最初にニードル片122の内面に当接する当接点P2、即ち、図1(b)に示す状態における当接点P2よりも基端側に深く形成さている。
次に、上記構成の植毛用針部材10の製造方法について図2および図3を参照しながら説明する。この場合、植毛用針部材10は、金属材料をその再結晶温度以下の温度(例えば室温)にて圧縮成形する加工方法、いわゆる冷間鍛造加工により製造される。即ち、図2に示すステップS1では、図3(a)に示す例えばステンレスなどの金属材料からなる中空筒状のパイプ材101の先端部、つまり、植毛用針部材10のニードル部12となる部分を、図3(b)に示すように、冷間鍛造加工により、先端側に向かって徐々に径方向寸法が小さくなるように、換言すれば、先端側に向かって徐々に細くなるようにテーパ状に加工する。次に、図2に示すステップS2では、図3(c)に示すように、パイプ材101の先端側から冷間鍛造による未加工部分、つまり、植毛用針部材10の筒状部11となる部分の内部にわたる部分に、2つ以上のスリット102を先端側から基端側に向かって形成する。この場合、スリット102は、いわゆるワイヤ放電加工などにより形成することができる。このようにパイプ材101にスリット102が形成されると、冷間鍛造加工によりパイプ材101の先端側部分に発生している残留応力により、図3(d)に示すように、スリット102によって分断された片部、つまり、植毛用針部材10のニードル片122となる部分が径方向内側に閉じるように変形する。これにより、上記した植毛用針部材10が製造される。
次に、上記した植毛用針部材10の使用態様の一例について図4を参照しながら説明する。即ち、図4に示す植毛用器具50は、その本体部分を構成するケース51の内部に、上記した植毛用針部材10を軸方向に移動可能に格納している。また、植毛用器具50は、さらに、シャフト52、スプリング53、リターンスプリング54などを備える。なお、この場合、植毛用針部材10は、筒状部11の基端部に径方向外側に突出するフランジ部111を有する。
ケース51は、軸方向に貫通した貫通孔511を有しているとともに、その基端側の内部に貫通孔511よりも径大な中空室512を有している。植毛用器具50は、筒状部11およびニードル部12を貫通孔511内にスライド移動可能に挿通し、且つ、フランジ部111を中空室512内にスライド移動可能に収容した状態で備えられている。また、このケース51の先端部も、先端側に向かって徐々に径方向寸法が小さくなるテーパ状に形成されており、その最先端部が、移植部分に当接する平坦な当接面513となっている。また、ケース51の側部には、植毛用針部材10の移植部位への突き刺し深さが所定の最大許容深さに達したときに、フランジ部111に係合する係合部514が設けられている。この係合部514がフランジ部111に係合することにより、植毛用針部材10の基端側への復帰が規制されるようになっている。
シャフト52は、軸方向に貫通した筒状の部材であり、そのほぼ中央部に第1フランジ部521を有するとともに、基端部に第2フランジ部522を有している。第1フランジ部521は、植毛用針部材10がケース51内において最も基端側に引き込まれた初期状態において、ケース51の基端壁515の内面に当接する。第2フランジ部522は、シャフト52が先端側に変位して、植毛用針部材10の移植部位への突き刺し深さが所定の最大許容深さに達したときに、基端壁515の外面に当接する。なお、植毛用針部材10の最大許容深さは、植皮片100の大きさなどに応じて適宜変更して設定することができる。
スプリング53は、植毛用針部材10の主として筒状部11の周囲に嵌合した状態で、中空室512の先端側の内面とフランジ部111との間に取り付けられている。このスプリング53により、植毛用針部材10は、ケース51の基端側に引き込まれる方向、即ち、後退させる方向に力を受けた状態となっている。
リターンスプリング54は、シャフト52の周囲に嵌合した状態で、フランジ部111と第1フランジ部521との間に取り付けられている。このリターンスプリング54により、シャフト52は、ケース51の基端側に引き込まれる方向、即ち、後退させる方向に力を受けた状態となっている。これにより、シャフト52を前進させるために当該シャフト2に入力される力が消滅すると、シャフト52がリターンスプリング54の付勢力によって基端側に向かって押し戻されるようになっている。なお、この場合、リターンスプリング54は、スプリング53よりも弱い力で圧縮するスプリングが採用されている。
以上のように構成された植毛用器具50によれば、初期状態においてシャフト52に当該シャフト52を前進させるための力が入力されると、シャフト52の前進に伴いリターンスプリング54が圧縮され、この圧縮されたリターンスプリング54および前進するシャフト52に押されるような態様にて植毛用針部材10も前進する。このとき、リターンスプリング54がスプリング53よりも弱い力で圧縮することから、植毛用針部材10の移動量よりもシャフト52の移動量の方が大きくなり、植毛用針部材10に対してシャフト52が相対的に先端側に移動するようになる。これにより、シャフト52の先端部がニードル片122の内面に当接して摺動しながら先端側に移動するようになり、各ニードル片122がそれぞれ径方向外側に撓んで開くようになる。そして、植毛用針部材10は、ニードル部12の先端部を拡径させながら移植部位に突き刺さり、その移植部位への突き刺し深さが所定の最大許容深さに達すると、その状態で係合部514がフランジ部111に係合する。これにより、植毛用針部材10の後退が規制される。そして、シャフト52に入力されている力が消滅すると、シャフト52のみがリターンスプリング54の付勢力により初期状態に復帰する。
なお、シャフト52の前進に伴いニードル片122が所望の軌跡で撓んで開くように、ニードル片122のばね係数K1、スプリング53のばね係数K2、および、リターンスプリング54のばね係数K3は、次に示す式(1)および式(2)を満たすように設定されている。
K2+(K1+K3)/R=0・・・・・・(1)
R=X/Xc・・・・・・・・・・・・・・(2)
なお、「X」は植毛用針部材10の変位量、「Xc」は植毛用針部材10に対するシャフト52の相対変位量、「R」は相対変位量Xcに対する植毛用針部材10の変位量Xの比率である。
次に、上記した構成の植毛用器具50を用いて、毛根を含む植皮片100を採取し、その採取した植皮片100を移植する場合の動作について図5を参照しながら説明する。なお、図5中、(a)から(d)に示す行程が採取行程に含まれ、(e)から(g)に示す行程が移植行程に含まれる。
図5(a)に示す突き刺し前行程では、ケース51の当接面513を例えば移植対象者の頭皮表面に当接させつつ、ニードル部12の各ニードル片122により採取すべき毛髪が取り囲まれるように植毛用器具50を位置決めする。
図5(b)に示す突き刺し行程では、シャフト52を矢印Aで示す前進方向に押し込む。これにより、ニードル部12は、頭皮内を進行しつつ、初期の縮径状態から徐々に拡径してく。そして、最終的に、ニードル部12の突き刺し深さが最大許容深さに達したときに、ニードル部12の先端部、即ち、各ニードル片122が最も拡径された状態となるとともに、フランジ部111に係合部514が係合して植毛用針部材10の後退方向への移動が規制される。
図5(c)に示す把持行程では、シャフト52への押し込み力の入力を解除することにより、シャフト52がリターンスプリング54の付勢力により矢印Bで示す後退方向に移動する。このとき、後退方向への移動が規制されている植毛用針部材10はその位置に留まり、シャフト52のみが植毛用針部材10に対して相対的に基端側に移動する。このとき、必要に応じて、中空のシャフト52の基端部から内部の空気を吸引することにより、植毛用針部材10の内部空間、特にはニードル部12の内部空間を陰圧に維持するようにしてもよい。これにより、ニードル部12の先端部が拡径状態から縮径状態に変化することに相俟って、頭皮組織と植皮片100との繋がりをより断ち切りやすくすることができる。従って、頭皮組織から採取した植皮片100をニードル部12の先端部内に強固に把持することができる。
図5(d)に示す引き抜き行程では、植毛用器具50全体を後退方向に移動させて、ニードル部12を頭皮から引き抜く。これにより、植皮片100をニードル部12の内部空間に収容した状態のまま、頭皮組織と植皮片100との繋がりを完全に断つことができる。
このようにして、植皮片100の採取行程が完了すると、引き続き、その採取した植皮片100の移植行程に移行する。この移植行程において、まず、図5(e)に示す突き刺し行程では、採取した植皮片100を把持している植毛用器具50を移植が必要な部位に突き刺す。
なお、この場合、植毛用針部材10のフランジ部111に係合部514を係合させたまま、植皮片100の移植行程を開始している。そのため、ニードル部12は、すでにケース51の先端部から最も飛び出した状態となっている。この場合、植毛用器具50全体を、当接面513が頭皮に当接するまで前進方向に移動させることで、ニードル部12を頭皮に突き刺すことができる。ただし、係合部514がフランジ部111に係合した係合状態を解除した状態で移植行程を開始するようにしてもよい。この場合には、移植片の採取行程と同様に、シャフト52を前進方向に押し込みながら植毛用器具50全体を前進方向に移動させることにより、ニードル部12を頭皮に突き刺すことができる。
図5(f)に示す植皮行程では、シャフト52を前進方向に最大限変位させ、ニードル部12の先端部が最も拡径された状態にする。このとき、必要に応じて、中空のシャフト52の基端部から外部の空気を供給することにより、植毛用針部材10の内部空間、特にはニードル部12の内部空間を陽圧に維持するようにしてもよい。これにより、ニードル部12の先端部に把持している植皮片100を頭皮側に解放しやすくすることができる。
図5(g)に示す引き抜き行程では、植毛用器具50全体を、ニードル部12が拡径した状態のまま後退方向に移動させて頭皮から引き抜く。これにより、ニードル部12の内部空間に収容されていた植皮片100が頭皮の必要箇所に移植される。
以上に説明したように本実施形態によれば、植毛用針部材10において、スリット121は、筒状部11を先端側に移動するシャフト13,52がニードル片122の内面に最初に当接する当接点P2よりも基端側に深く形成されている。これにより、スリット121の基端部分を支点P1とし、且つ、シャフト13,52とニードル片122との当接点P2を力点とした態様にてニードル片122が開くようになり、比較的小さな力でシャフト13,52を先端側に移動させることで、閉状態のニードル片122をスムーズに開くことができる。
また、スリット121は、その開口幅が基端側から先端側に向かって徐々に狭くなるように、しかも、各ニードル片122が最先端部にて相互に接触するように形成されているので、ニードル片122が閉じた状態においても各ニードル片122にはさらに閉じる方向の力が存在するようになり、これにより、ニードル部12の先端部に植皮片100を頭皮組織から切断するための強固な力を発生させることができ、また、採取した植皮片100をニードル部12の先端部にて強固に把持することができる。
植毛用器具50は、リターンスプリング54を備えているので、図5(b)の突き刺し行程後にシャフト52を開放するだけで、シャフト52のみを第1フランジ部521がケース51の基端壁515の内面に当接する位置まで自動的に移動させることができる。従って、術者は、植皮片100の採取行程を行うとき、例えば片手だけで植毛用器具50を操作することが可能であり、その操作性を一層向上することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6および図7を参照しながら説明する。以下、上述の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図6に示すように、植毛用針部材20のニードル部22には、先端側から基端側に向かって軸方向に延びるスリット221が形成されており、このスリット221によって、ニードル部22は複数のニードル片222に分割されている。この場合、各ニードル片222は、その先端部に刃先部223を有している。このスリット221は、その開口幅が基端側から先端側に向かって徐々に狭くなるように形成されており、これにより、基端側の開口幅Wが刃先部223の根本部分の開口幅Wよりも小さくなるようになっている。また、スリット221の刃先部223の根本部分の開口幅Wは、この場合、0mmとなるように設定されており、これにより、複数のニードル片222が先端部の刃先部223を除く中間部分、この場合、刃先部223の根本部分から基端側に向かって軸方向に所定距離Dを有した部分において相互に接触するように構成されている。また、ニードル部22の先端部、この場合、刃先部223の根本部分の開口幅Dは、採取対象である植皮片100の幅Wよりも小さくなるように設定されている。
この構成の植毛用針部材20において、図6(a)に示す初期状態からシャフト13が筒状部11を先端側に移動すると、図6(b)に示すように、やがて当該シャフト13の先端部がニードル片222の内面に当接する。そして、さらにシャフト13がニードル片222の内面を摺動しながら先端側に移動することによって、図6(c)に示すように、スリット221の基端部分を支点P1とし、且つ、シャフト13とニードル片222との当接点P2を力点とした態様にて、各ニードル片222がそれぞれ径方向外側に撓んで開くようになっている。この場合、スリット221は、筒状部11を先端側に移動するシャフト13が最初にニードル片222の内面に当接する当接点P2、即ち、図6(b)に示す状態における当接点P2よりも基端側に深く形成さている。
次に、上記構成の植毛用針部材20の製造方法について図7を参照しながら説明する。この場合も、植毛用針部材20は、いわゆる冷間鍛造加工により製造される。即ち、まず、図7(a)に示す例えばステンレスなどの金属材料からなる中空筒状のパイプ材201の先端部、つまり、植毛用針部材20のニードル部22となる部分を、図7(b)に示すように、冷間鍛造加工により、先端側に向かって徐々に径方向寸法が小さくなるようにテーパ状に加工する。次に、図7(c)に示すように、パイプ材201の先端側から冷間鍛造による未加工部分、つまり、植毛用針部材20の筒状部11となる部分の内部にわたる部分に、いわゆるワイヤ放電加工などにより、2つ以上のスリット202を先端側から基端側に向かって形成する。
ここで、このスリット202の形状について説明する。上述の実施形態では、パイプ材101の軸方向に沿う直線状のスリット102を形成したが、この実施形態では、いわゆるY字状のスリット202を形成する。即ち、スリット202は、この場合、軸方向に対して傾斜角度が異なる3つの領域からなる構成であり、先端側の領域、即ち、刃先部223に対応する領域の傾斜角度が最も大きく、先端部および基端部を除く中間部分、即ち、各ニードル片222が相互に接触する部分に対応する領域の傾斜角度が小さく、基端側の領域の傾斜角度が軸方向に一致する形状である。なお、パイプ材に、いわゆるV字状のスリット、換言すれば、軸方向に対して傾斜角度が異なる2つの領域からなるスリットを形成してもよい。
そして、このようにパイプ材201にスリット202が形成されると、冷間鍛造加工によりパイプ材201の先端側部分に発生している残留応力により、図7(d)に示すように、スリット202によって分断された片部、つまり、植毛用針部材20のニードル片222となる部分が径方向内側に閉じるように変形する。これにより、上記した植毛用針部材20が製造される。
以上に説明した本実施形態の植毛用針部材20よっても、スリット221がシャフト13がニードル片222の内面に最初に当接する当接点P2よりも基端側に深く形成されているから、比較的小さな力でシャフト13を先端側に移動させることで、閉状態のニードル片222をスムーズに開くことができる。
また、ニードル片222間に形成される隙間を小さくすることができ、ニードル部22内を陰圧に維持する際に空気漏れを抑えることができる。また、ニードル部22の先端部に形成された刃先部223によって、植毛用針部材20の突き刺し抵抗を低減することができ、生体組織の採取時あるいは移植時において植毛用針部材20を突き刺しやすくすることができる。
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について図8を参照しながら説明する。以下、上述の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図8に示すように、植毛用針部材30のニードル部32には、先端側から基端側に向かって軸方向に延びるスリット321が形成されており、このスリット321によって、ニードル部32は複数のニードル片322に分割されている。このスリット321は、上記したスリット121と概ね同様の形態であるが、その深さがスリット121とは異なっている。即ち、このスリット321は、筒状部11を先端側に移動するシャフト33の補助シャフト部332が最初にニードル片322の内面に当接する当接点P21、即ち、図8(b)に示す状態における当接点P21よりも基端側に深く形成されているが、筒状部11を先端側に移動するシャフト33のシャフト本体部331が最初にニードル片322の内面に当接する当接点P22、即ち、図8(b)に示す状態における当接点P22よりも先端側に浅く形成さている。
このようにスリット321の深さが短いニードル部32においては、各ニードル片322のばね定数が強くなり、従って、各ニードル片322を撓ませて開くために、上述の実施形態の場合よりも大きな力が必要となる。そのため、この植毛用針部材30については、上述のシャフト13に代わるシャフト33が使用される。このシャフト33は、シャフト本体部331の先端部に、その径方向の寸法がシャフト本体部331よりも小さい補助シャフト部332を備えている点がシャフト13とは異なっている。
この構成の植毛用針部材30において、図8(a)に示す初期状態からシャフト33が筒状部11を先端側に移動すると、図8(b)に示すように、やがて補助シャフト部332の先端部がニードル片322の内面に当接する。そして、さらにシャフト33が先端側に移動すると、図8(c)に示すように、さらにシャフト本体部331の先端部もニードル片322の内面に当接する。そして、さらにシャフト33が先端側に移動することによって、スリット321の基端部分を支点P1とし、且つ、補助シャフト部332とニードル片322の内面との当接点P21およびシャフト本体部331とニードル片322の内面との当接点P22を力点とした態様にて、各ニードル片322がそれぞれ径方向外側に撓んで開くようになっている。即ち、各ニードル片322は、2つの力点からの作用を受けて径方向外側に開くようになる。
以上に説明した本実施形態の植毛用針部材30によれば、スリット321の深さを短くしたことによって、ニードル部32が採取部位から生体組織を切断する力および採取した生体組織を把持する力を大きくすることができる。この場合、各ニードル片322のばね定数が増加してしまうが、シャフト33によって2つの力点により各ニードル片322を開く構成としたので、比較的小さな力でシャフト33を先端側に移動させることで、閉状態のニードル片322をスムーズに開くことができる。
なお、本発明は、上述した各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。また、上述した各実施形態を組み合わせて実施してもよい。
図面中、10,20,30は植毛用針部材、11は筒状部、12,22,32はニードル部、121,221,321はスリット、122,222,322はニードル片、13,52,33はシャフトを示す。

Claims (5)

  1. 中空の筒状に形成され、その内部にシャフト(13,52,33)を軸方向に移動可能に支持する筒状部(11)と、
    前記筒状部の先端部からさらに先端側に向かって徐々に径方向寸法が小さくなるように延びる中空の針状の部分であって、先端側から基端側に向かって軸方向に延びるスリット(121,221,321)によって複数のニードル片(122,222,322)に分割されているニードル部(12,22,32)と、
    を備え、前記シャフトが前記筒状部を先端側に移動して前記ニードル片の内面に当接し、さらに当該シャフトが前記ニードル片の内面を摺動しながら先端側に移動することによって、前記ニードル片が径方向外側に撓むように構成された植毛用針部材(10,20,30)であって、
    前記スリットは、前記筒状部を先端側に移動する前記シャフトが前記ニードル片の内面に当接する当接点よりも基端側に深く形成さている植毛用針部材。
  2. 前記スリットは、その開口幅が基端側から先端側に向かって徐々に狭くなるように形成されている請求項1に記載の植毛用針部材。
  3. 前記スリットは、複数の前記ニードル片が先端側の一部において相互に接触するように形成されている請求項1または2に記載の植毛用針部材。
  4. 複数の前記ニードル片(222)は、その先端部を除く中間部分において相互に接触している請求項3に記載の植毛用針部材。
  5. 複数の前記ニードル片(222)が相互に接触する部分は、軸方向に所定距離を有している請求項3または4に記載の植毛用針部材。
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