JP2013179890A - 新規微生物及びこれを用いるポリ塩化ビフェニルの分解方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】PCB汚染油として大量(大容量)に存在する比較的低濃度のPCBを、生物製剤により処理するだけで、短時間に浄化処理する方法を提供する。
【解決手段】特定な配列からなるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するそれぞれのアミノ酸配列からなるビフェニル分解酵素群をコードするDNAを含み、ポリ塩化ビフェニル分解活性を有する、コマモナス属に属する微生物を培養して得られた菌体を含む生物製剤とポリ塩化ビフェニルとを接触させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、新規微生物及び当該微生物菌体を用いてポリ塩化ビフェニルを分解する方法等に関する。より詳細には、特定のビフェニル分解酵素群を有する新規なコマモナス属に属する微生物及びそれを用いてポリ塩化ビフェニルを効率よく分解する方法等に関する。
ポリ塩化ビフェニル類(以下、「PCB」と称する場合がある。)は、ビフェニルの1個以上の水素原子を塩素原子で置換した化合物の総称をいう。置換塩素の数及び位置によって多くの異性体が存在するが、金属に対して安定で、絶縁性、不燃性、高脂溶性、可塑性などに優れているため、電気製品、熱媒体、絶縁油、可塑剤、塗料及びノンカーボン紙の溶剤など、非常に幅広い分野に使用されてきた。しかし、生体に対する毒性が高く、脂肪組織に蓄積しやすく、発癌性があり、また皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こすことから、現在ではその使用が禁止されている。PCBは、化学的に安定で長期間にわたって自然分解することなく残留するため、人体への影響のみならず地球環境にも深刻な影響をもたらすことが問題となっている。
国内でこれまでに製造・販売されたPCBは、およそ55000トンと見積もられ、2016年までに処理する計画が立てられているが、使用状況の正確な把握が難しく、その処理コストも高いことから、その分解処理が進んでいないというのが現状である。また、PCB濃度が10mg/kg程度の微量PCBの割合が約2割、11000トンもあると考えられ、微量PCBを含む大量の処理物が存在すると推定される。
このようなPCB廃棄物の分解方法としては、従来から、焼却方法以外に、脱塩素化分解法、水熱酸化分解法、水素供与物質による還元熱化学分解法、紫外線照射法等による光分解法が知られている。これらのうち、紫外線分解法は、PCBを極性有機溶媒中に溶かして紫外線を照射することにより脱塩素化し、残留するPCBを生物処理又は触媒処理等によって無害化するものであり、常温、常圧処理できるため安全性が高いという利点がある。
特許文献1に記載された方法は、最初にPCBを紫外線に曝して脱塩素処理を行い、次に大型発酵プラントの細菌で分解に至るものである。しかしながら、この処理法は、60〜80重量/容量%にもなる高濃度PCB汚染油を一度に大量処理する点に問題があり、紫外線照射工程に続く微生物処理工程で大量の培地を加えてPCB濃度を調整しなければならず、微生物の培養、増殖とPCBの分解とを同時に行わなければならないという困難性があった。
微生物によるPCB分解は、ビフェニル分解に関与する酵素群によって行われる。例えば、ビフェニル又はその誘導体(例えばPCB)の分解微生物シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)KKS102株では、図1に示す経路で分解が行なわれることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。この経路において、PCBは、まず、ビフェニルジオキシゲナーゼ(BphA酵素)により、2つの水酸基(OH)が付加される。BphA酵素は4つのサブユニット(BphA1、BphA2、BphA3、BphA4)から構成されている。そして、図1に示す通り、BphA1とBphA2とが複合体を形成し、基質との結合及び酸素添加反応を触媒し、フェレドキシンが電子伝達体として機能し、フェレドキシンリダクターゼがNAD又はNADPHとフェレドキシンの酸化還元反応を触媒する。
ついでジヒドロジオールジヒドロゲナーゼ(BphB酵素)によって、BphAの産物から2つの水素が除かれた後、2,3−ジヒドロキシビフェニルジオキシゲナーゼ(BphC酵素)により、BphB産物に酸素1分子が付加され、HOPDA(BphDの誘導基質)が生成する。ついで、2−ヒドロキシル−6−オキソ−6−フェニルヘキサ−2,4−ジエン酸ヒドロラーゼ(BphD酵素)が、HOPDAを安息香酸と2−ヒドロキシペンタ−2,4−ジエノエートとに分解する。そして2−ヒドロキシペンタ−2,4−ジエノエートヒドラターゼ(BphE酵素)、4−ヒドロキシ−2−オキソバレレートアルドラーゼ(BphF酵素)及びアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(BphG酵素)によりアセチルCoAとピルビン酸に転換されると考えられる。
これまでにビフェニル資化性菌として報告されている微生物は、シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.) KKS102株(例えば、非特許文献1並びに特許文献2及び3参照)、コマモナス・テストステロニ (Comamonas testosteroni) TK102株(非特許文献2)及びロドコッカス・オパカス (Rodococcus opacus) TSP203株(非特許文献3)などがある。
シュードモナス属細菌KKS102株においては、ビフェニル分解酵素遺伝子群は、クラスターをなしており、そのビフェニル分解酵素遺伝子群の塩基配列は、例えば、GenBank等のデータベースに受入番号D17319等として登録されている。コマモナス・テストステロニTK102株も類似しているが異なる遺伝子群を有し、例えば、そのビフェニル分解酵素遺伝子群の塩基配列は、GenBank等のデータベースに受入番号AB086835として登録されている。
しかしながら、特許文献2及び3によれば、シュードモナス属KKS102系統の微生物は、PCBの中でも特に分解の難しい五塩化物をも分解することができるが、その分解速度は必ずしも速くないという問題点があった。そのため、PCB分解能は持たないが、KKS102系統の微生物の生育因子を分泌してその増殖を助けると共にPCBを乳化するバイオサーフアクタントを分泌するシュードモナス属KKL101系統の微生物と混合培養するというPCB分解方法が提案されている。
一方、コマモナス・テストステロニTK102株を用いてPCBを分解している特許文献1に記載の方法によれば、PCBを完全に分解するためには、紫外線であらかじめ脱塩素化処理を施したPCBであっても48時間から72時間という長時間に渡る煩雑な培養操作を必要とする。また、コマモナス・テストステロニTK102株は、高濃度のPCB存在下であっても生育が可能であるが、主として置換塩素数3以下のPCBを分解する性質を有し、置換塩素数が5又は4のPCBの分解は困難であることが記載されている(例えば、特許文献4、段落番号0027及び0028参照)。
特開2001−46547号公報 特許第2706718号公報 特許第2967950号公報 特許第3411800号公報
Kikuchi Y. et al, Journal of Bacteriology, Vol.176, No.6, p.1689-1694, 1994. Shimura M. et al, Journal of Fermentation and Bioengineering, Vol. 81, No. 6, pp.573-576, 1996. Mukerjee-Dhar G., Shimura M., and Kimbara K. Enzyme and Microbial Technology. Vol.23 p34-41 1998. K. Kimbara et.al. Agric. Biol. Chem., 52 (11), 2885-2891, 1988
分解対象物を高濃度PCB汚染油とした場合は、有機溶媒中のPCBを紫外線処理等によりPCB濃度を低下させ、その後、有機溶媒を回収して溶媒回収残液中のPCBを分解しうる微生物と培養処理する微生物処理工程に付しており、微生物の増殖とPCBの処理とを同時に行っている。このため、PCB分解細菌にPCBを分解させることによる生体負荷が大きくなり、処理時間や材料費の点でコストが高く経済的な実現性が乏しいという問題があった。
そこで本発明は、PCB汚染油として大量(大容量)に存在する比較的低濃度のPCBを、生物製剤により処理するだけで、短時間に浄化処理することを目的とし、そのために用いるポリ塩化ビフェニル分解活性を有する微生物及び当該微生物を用いてPCBを分解する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、米沢市内及びその近郊で採取した土壌や浄水場の活性汚泥から採取した試料を用い、ビフェニルを炭素原とした合成培地でビフェニル分解菌をスクリーニングした結果、生育速度の高い微生物を見出した。この微生物の遺伝子を解析したところ、16SrDNA解析等によりコマモナス・テストステロニであることが分かったが、そのビフェニル分解酵素遺伝子群は、従来報告されているコマモナス・テストステロニTK102株のbphオペロンとは異なり、むしろアシドボラックス由来のKKS102株由来のbphオペロンと類似していることが分かった。そして、本発明の微生物が高い生育速度とビフェニル分解活性を有し、微量PCBの分解に特に適したすぐれた生物製剤として利用しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のコマモナス属に属する微生物は、配列番号2〜11に示す各アミノ酸配列と、それぞれ95%以上、好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるビフェニル分解酵素群をコードするDNAを含み、ポリ塩化ビフェニル分解活性を有することを特徴とする。
好ましい実施形態において、前記DNAは、配列番号1に示す塩基配列又はこれと90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする。また、前記微生物は、受託番号NITE P-1215として寄託されているコマモナス・テストステロニYU14-111株であることが好ましい。
異なる観点において、本発明は、上記微生物を培養して得られた菌体を含む生物製剤とポリ塩化ビフェニルとを接触させることを特徴とするポリ塩化ビフェニルの分解方法を提供する。前記生物製剤は、上記微生物を培養して得られた菌体の凍結融解物であるか、又は当該菌体と賦形剤とを含む凍結乾燥物であることが好ましい。
本発明のコマモナス属に属する新規微生物は、その凍結融解菌体が高いPCB分解活性を示すことから生物製剤として使用することができ、従来の方法に比べてより効率的にポリ塩化ビフェニルを分解することができる。また、乾燥菌体として保存できるので、腐敗や変敗を防止し、輸送性や貯蔵性を高めるとともに、PCB分解工程への添加が容易であることから作業性が向上し、再現性よくPCBを分解することができる。さらに高度な製剤化(造粒や成形)が可能となり(二次加工性が上がる)、他の活性特徴を有する細菌との混合が可能になる。
ビフェニル分解微生物によるビフェニル分解経路を表す模式図である。 本発明に係るコマモナス・テストステロニYU14-111株と、コマモナス・テストステロニTK102株とのbphオペロンの構造を比較した模式図である。 本発明に係るコマモナス・テストステロニYU14-111株により、高濃度PCBの分解反応を行ったときの反応時間と残存PCB量との関係を示すグラフである。 本発明に係るコマモナス・テストステロニYU14-111株により、低濃度PCBの分解反応を行ったときの反応時間と残存PCB量との関係を示すグラフである。
[ビフェニル資化微生物のスクリーニング]
本発明の微生物の種類としては、ゲノム上にビフェニル分解(以下、PCB分解ともいう)酵素群の遺伝子を有し、生育速度の速い微生物であればよく、このような微生物は通常ビフェニルを単一の炭素源として生育し得る微生物からのスクリーニングを繰り返し行うことにより見出される。生育したビフェニル資化菌(群)の中から、生育速度の速い菌株を単離し、16SrDNA解析及びアピキット等を用いる細菌同定検査により、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)であることを同定した。
さらに本発明の微生物は、後述する遺伝子解析の結果、従来から報告されているコマモナス・テストステロニTK102株が有するビフェニル分解酵素群とは異なる酵素群をコードする新規な微生物であることが分かった。天然にビフェニル分解酵素を産生する微生物としては、シュードモナス属、コマモナス属、ブルクホルデリア属、スフィンゴモナス属、ロドコッカス属、ラルストニア属等に属する多くの細菌があるが、ビフェニル資化性菌のスクリーニング段階でビフェニル分解活性が高くかつ生育速度が速い微生物を選択することは、先に挙げた微生物間においてbphオペロン配列の組換えを起こし得たPCB分解活性に優れる新規な微生物の取得が期待できる。
或いは、得られた微生物からビフェニル分解酵素遺伝子をクローン化し、これらに部位特異的突然変異誘発法等によって変異を導入することで、さらにPCB分解活性の向上した遺伝子群を作製することができる。なお、遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。また、エラー導入PCRやDNAシャッフリング等の手法により、遺伝子の変異導入やキメラ遺伝子を構築することもできる。エラー導入PCR及びDNAシャッフリング手法は、当技術分野で公知の手法であり、例えば、エラー導入PCRについてはChen K, and Arnold FH. 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 90: 5618-5622を、またDNAシャフリングやカセットPCR等の分子進化工学的手法は、例えば、Kurtzman,A. L.,Govindarajan, S., Vahle, K., Jones, J. T., Heinrichs, V., Patten P. A., Advances in directed protein evolution by recursive genetic recombination: applications to therapeutic proteins. Curr. Opinion Biotechnol.,12, 361-370, 2001等に記載されている。これらの手法によって作製された突然変異遺伝子を、もとの微生物のゲノムDNAと置換するか、プラスミドDNAやコスミドDNAにクローン化して宿主微生物に導入し、新規な微生物を作製することも可能である。
本発明の新規な微生物は、コマモナス・テストステロニYU14-111株(ロット番号YU14-11-03)として、2012年1月27日付けで、受託番号NITE P-1215として独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されている。なお、本発明のコマモナス・テストステロニYU14-111株は、マスターセルバンクにて複数の菌体に分けて保管されており、ロット番号YU14-11-03はその中の1つの菌体を表す。
[ビフェニル分解酵素群及びそれらをコードする遺伝子]
本発明に係る新規なコマモナス属に属する微生物が有するビフェニル分解酵素群は、例えば、配列番号1に示す塩基配列又はこれと90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAによってコードされ得る。ここで、配列番号1に示す塩基配列は、微生物由来のbphオペロンを含む11279塩基対からなり、少なくとも、2−ヒドロキシペンタ−2,4―ジエノエートヒドラターゼ(BphE;配列番号2)、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(BphG;配列番号3)、4−ヒドロキシ−2−オキソバレレートアルドラーゼ(BphF;配列番号4)、推定膜タンパク質(BphX;配列番号5)、ビフェニルジオキシゲナーゼαサブユニット(BphA1;配列番号6)、ビフェニルジオキシゲナーゼβサブユニット(BphA2;配列番号7)、ビフェニルジオキシゲナーゼフェレドキシンサブユニット(BphA3;配列番号8)、シス−2,3−ジオールデヒドロゲナーゼ(BphB;配列番号9)、ジヒドロキシビフェニルジオキシゲナーゼ(BphC;配列番号10)及び2−ヒドロキシ−6−オキソ−6−フェニルヘキサ−2,4−ジエン酸ヒドロラーゼ(BphD;配列番号11)の10個の酵素タンパク質をコードする。
本発明に係るビフェニル分解酵素群は、例えば、ビフェニル分解活性を害さない範囲内において配列番号2〜11に記載のアミノ酸配列に一個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有するもの(以下「相同体」又は「ホモログ」と称する場合もある。)を挙げることができる。ここで数個とは、具体的には20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下である。
また、前記相同体は、配列番号2〜11に示されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上のホモロジーを有するタンパク質であってもよい。ちなみに上記ビフェニル分解酵素群の各タンパク質についてのホモロジー検索は、例えば、GenBankやDNA Databank of JAPAN(DDBJ)を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。配列番号2〜11に記載のそれぞれのアミノ酸配列を用いて、GenBankを対象にBLAST programによりホモロジー検索を行った結果、配列番号2〜11の配列は、従来から公知のコマモナス・テストステロニTK102株のビフェニル分解酵素群とは約90%の相同性しか有さないことが分かった(下記表1参照)。
そこで、本発明のコマモナス・テストステロニYU14-111株のbphオペロンの塩基配列を解析し、コマモナス・テストステロニTK102株のbphオペロン(GenBank受入番号AB086835)と比較した結果を図2に示す。塩基配列レベルでの相同性は約90%程度であり、全体的に塩基置換が認められる他に、特徴的な違いとしてbphA1遺伝子とbphA2遺伝子の間にYU14-111株では約170塩基のギャップがあるのに対し、TK102株ではこのようなギャップが認められなかった。なお、当該遺伝子の塩基配列から推定した、BphA1〜BphDの各酵素についてアミノ酸配列の相同性を計算した結果を以下の表1に示す。
表1に示したように、上記6個のタンパク質についてのアミノ酸配列の相同性はすべて95%以下であり、本発明に係るコマモナス・テストステロニYU14-111株のビフェニル分解酵素は、従来から公知のコマモナス・テストステロニTK102株のそれらとは異なると考えられる。なお、本発明に係る配列番号1の塩基配列と相同性の高い塩基配列を検索したところ、アシドボラックス属(Acidovorax sp.)KKS102株のbphオペロン(GenBank受入番号AB546270)と実質的に同一の配列を有することが分かった。これは、アシドボラックスとコマモナスとの間で、(あるいは、さらに他の菌株を介して)DNAの水平伝播が起こったものと推測される。これらの細菌は、古典的な分類では、グラム陰性、桿菌、胞子を形成しない極鞭毛を有し、G+C含量が50%以上である細菌としてシュードモナス属に分類されていたが、最近の16srRNAの相同性等に基づく系統解析によって、新たな属として再分類されたものである(古川謙介、生物工学 第89巻 第9号 549-552, 2011参照)。
本発明は、これらの類縁菌の中から見出された新規な微生物が、本発明のPCB分解方法に用いる上で極めて有用な性質を有するという事実に基づくものであり、以下に、その培養方法及びPCB分解方法への使用について詳細に説明する。
[ポリ塩化ビフェニル分解活性を有する細菌コマモナス・テストステロニYU14-111株の培養法及び生物製剤の調製法]
最初に、高いポリ塩化ビフェニル分解活性を有する細菌コマモナス・テストステロニYU14-111の培養法について述べる。培地は非特許文献4を参考にpHが6.8〜7.0までとなるように調整した合成培地が良く、さらにビフェニルを炭素源として0.05〜0.1%(w/v)まで加えたものが望ましい。さらにビフェニルは、あらかじめジメチルスルホキシドにて溶解したものを加えても良い。本培養に至る前に3段階の前培養を行う事が、細菌を適切に生育する上で望ましい。手順は、培地量の10倍以上の容積の試験管などに前に述べたビフェニルを0.05〜0.1%(w/v)まで加えた合成培地を2〜3mlまで入れ、15〜18%(w/w)までに調整したグリセロールへ菌体量としてOD660=0.1〜0.8までとなるように−80℃以上で凍結保存したコマモナス・テストステロニYU14-111株をできるだけ速やかに解凍したものを播種し、振盪回転を120rpm、温度を30〜35℃まで、OD660=0.4〜0.8まで培養し、次に培地量で5倍以上の容積のフラスコなどに入れた同じくビフェニルを0.05〜0.1%(w/v)まで加えた合成培地27〜30mlまでにその全量を投入し、振盪回転を120rpm、温度を30〜35℃まで、OD660=0.4〜0.8まで培養し、さらに培地量の5倍以上の容積のフラスコなどにビフェニルを0.05〜0.1%(w/v)まで加えた合成培地270〜300mlまでに全量を投入し、振盪回転を120rpm、温度を30〜35℃まで、OD660=0.4〜0.8まで培養する。本培養は温度と空気または酸素の曝気を制御でき、さらに撹拌翼を装備しその翼形状はタービン型でも良く、回転数も制御できるファーメンターなどの自動培養装置を用いるのが望ましい。前培養と同じく合成培地2.7〜3Lまでに対し、ビフェニルを0.02〜0.05%(w/v)までとなるように加えて、そこへ前培養した培養液全量を投入する。撹拌翼の回転数は400〜600rpmまでとし、空気の場合は4〜5L/minまでとし、温度は30〜35℃までとなるように調節する。培養液中の酸素濃度を高めるために排圧ユニットを用いるとなお良い。その場合は排圧を0.005〜0.01MPaまでとなるよう調節すると良い。細菌の生育と共に炭素源であるビフェニルが消費されるが、さらにビフェニルを0.02〜0.05%(w/v)までとなるように継続的に加えていくことが望ましく、さらにビフェニルはあらかじめジメチルスルホキシドにて溶解したものを加えても良く、最終的により高塩素化されたポリ塩化ビフェニルの分解活性を獲得した細菌が得られる。培養中の培養液のpHは細菌の最終収量に影響を与えるため、その範囲は7.0〜9.0までとするのが望ましく、pHの調整にはアンモニウム塩を0.02%〜0.05%(w/v)までとなるように断続的に加えるのが良く、硫酸アンモニウムでも良い。また硫酸アンモニウムの選択は、培養中に消費する窒素源を補充する上でも望ましい。最終の培養液のOD660=2.5〜3.0までで、湿重量が15〜20gまでの高活性なポリ塩化ビフェニル分解細菌であるコマモナス・テストステロニYU14-111が得られる。
次に、ポリ塩化ビフェニル分解活性を有する細菌コマモナス・テストステロニYU14-111を速やかに高い回収率で得られる培養法について述べる。培地はTerrific Brothを改変したイースト・エキストラクト2.4%とトリプトン1.2%を主成分とし、リン酸水素二ナトリウム塩とリン酸二水素ナトリウム塩それぞれ70mMを、6対4の比率で混合した緩衝成分を含み、オートクレーブによる滅菌の後にpH6.8〜7.0で調整したものが望ましい。緩衝成分にカリウム塩を用いるとコマモナス・テストステロニYU14-111株の生育初期における増殖が思わしくない。前に述べたTerrific Broth改変培地へビフェニルを追加炭素源として0.02〜0.05%(w/v)まで加えたものが望ましい。さらにビフェニルは、あらかじめジメチルスルホキシドにて溶解したものを加えても良い。本培養に至る前に3段階の前培養を行う事が望ましく、培地量の10倍以上の容積の試験管などに0.05〜0.1%(w/v)までのビフェニルを含む合成培地2〜3mlまでを入れ、15〜18%(w/w)までに調整したグリセロールへ、OD660=0.1〜0.9までとなるように−80℃以上で凍結保存したコマモナス・テストステロニYU14-111株を速やかに解凍したものを播種し、振盪回転を120rpm、温度を30〜35℃まで、OD660=0.6〜0.8まで培養し、次に培地に対し5倍程度の容積のフラスコなどに入れた同じく0.05〜0.1%(w/v)までのビフェニルを含むTerrific Broth改変培地27〜30mlまでにその全量を投入し、振盪回転を120rpm、温度を30〜35℃まで、OD660=0.6〜0.9まで培養し、さらに培地に対し5倍程度の容積のフラスコなどに入れた同じく0.05〜0.1%(w/v)までのビフェニルを含むTerrific Broth改変培地300mlに全量を投入し、振盪回転を120rpm、温度を30〜35℃まで、OD660=0.6〜0.8まで培養する。本培養は温度と空気または酸素の曝気を制御でき、さらに撹拌翼を装備しその翼形状はタービン型でも良く、回転数も制御できるファーメンターなどの自動培養装置を用いるのが望ましい。前培養と同じく合成培地2.7〜3Lまでに対し、ビフェニルを0.02〜0.05%(w/v)までとなるように加えて、そこへ前培養した培養液全量を投入する。撹拌翼の回転数は400〜600rpmまでとし、空気の場合は4〜5L/minまでとし、温度は30〜35℃までとなるように調節する。培養液中の酸素濃度を高めるために排圧ユニットを用いるとなお良い。その場合は排圧を0.005〜0.01MPaまでとなるよう調節すると良い。細菌の生育と共に炭素源であるビフェニルが消費されるが、さらにビフェニルを0.02〜0.05%(w/v)までとなるように継続的に加えていくことが望ましく、さらにビフェニルはあらかじめジメチルスルホキシドにて溶解したものを加えても良く、最終的に、OD660=14〜20までで、湿重量が100〜150gまでのポリ塩化ビフェニル分解細菌であるコマモナス・テストステロニYU14-111が得られる。
前に述べたそれぞれの方法で得られた菌体は、重力あるいは遠心による回収時において、生理食塩水あるいは20mMのリン酸緩衝液で少なくとも2回洗浄することが望ましく、リン酸塩はリン酸ナトリウム塩を用いるのが良い。また、菌体に対し糖アルコール等の賦形剤を加えて、糖アルコールはアルファ、ベータあるいはデルタ型のマンニトールでも良く、最終的に−20〜−80℃までに温度制御された冷凍庫等で保存でき、凍結乾燥させた場合は15〜25℃の常温で保存できるポリ塩化ビフェニル分解生物製剤が得られる。
[ポリ塩化ビフェニルの分解反応]
本発明のポリ塩化ビフェニルの分解方法は、上記微生物を培養して得られた菌体を含む生物製剤とポリ塩化ビフェニルとを接触させることを特徴とする。本発明の好ましい実施形態では、このようにして得られた生物製剤を、比較的低濃度のポリ塩化ビフェニル汚染油と接触させたときに高いPCB分解活性を発揮することができる。
本発明で対象とするポリ塩化ビフェニルとしては、ビフェニル化合物に塩素原子が置換した化合物が含まれ、その置換塩素原子の数は1〜10個である。平均置換塩素原子数は、一般に2〜6個である。本発明では、これらのポリ塩化ビフェニルから選択された少なくとも一種を用いることができ、それぞれ単独で又は二種以上を任意に組み合わせたものも用いることができる。一般に、ポリ塩化ビフェニルは単一化合物として存在せずに、塩素原子の数や置換位置が異なる混合物として存在する。従って、塩素原子の数及び置換位置の組み合せからして209種の異性体が存在し、市販品には100を越える異性体が存在している。
本発明の分解方法で処理できるPCBとしては、3,4,4’,5−テトラクロロビフェニール、3,3’,4,4’−テトラクロロビフェニール、3,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’−ペンタクロロビフェニール、2,3,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2’,3,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール等が挙げられるがこれらに限定されない。
PCBは、通常PCB単体の混合物として市販されており、これらがコンデンサやトランスに使用されている。その具体例としては、鐘淵化学(株)の KC−200(2塩化ビフェニル)、KC−300(3塩化ビフェニル)、KC−400(4塩化ビフェニル)、KC−500(5塩化ビフェニル)、KC−600(6塩化ビフェニル)、KC−1000(KC500/トリクロロベンゼン=60/40(質量比)の混合物)や、三菱モンサント(株)のアロクロール1254(54% Chlorine)等が挙げられる。
本発明に係るポリ塩化ビフェニルの分解反応は、上記PCBを0.05〜1000mg/L、好ましくは1〜100mg/L程度含む溶液中に、本発明の生物製剤を0.2〜20重量%、好ましくは2〜12重量%程度添加することにより行うことができる。反応条件は、約20〜40℃、好ましくは25〜35℃、さらに好ましくは約30℃に温度を制御し、pHは6〜9とし、攪拌した状態で約12〜72時間処理することが好ましい。このような処理は、密閉式で攪拌式の培養装置を用いて行うことができ、小型の専用装置を用いて行うことが好ましい。PCB分解装置が小型化できることにより、微量PCBを保管するような貯蔵所でも直接処理作業を行うことができる。
以下に本発明の製造方法の詳細について、実施例等を挙げて説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] ビフェニル資化微生物のスクリーニング
スクリーニングに使用した合成培地(W培地)は、非特許文献4の記載を参考として、以下のような組成とした。
pHが異なる3種類(pH6.3〜6.5、pH7.3〜7.5及びpH8.0〜8.5)の培地を準備し、これに炭素原として、終濃度0.1%となるようにビフェニルを加えた。山形県米沢市内及びその近郊の17ヶ所の土壌及び活性汚泥から採取した小さじひとかき程度のサンプルを培地に添加し、30℃、120rpmで約1週間、振盪培養を行った。濁度が上昇した培養液の一部を新しい培地に植え継ぎ、同条件で振盪培養を行う作業を数回繰り返した。
ビフェニル資化微生物(群)の生育が見られた13種類の集積培養の中から、比較的速い生育が見られた、土壌サンプルNo.14(米沢浄水管理センター汚泥)を選抜し、微生物を単離した。すなわち、集積培養したビフェニル資化菌の培養液20μLを、0.04%ビフェニルを含む合成培地プレートに蒔いて30℃で一晩培養したところ、数多くの小さいコロニーの生育が見られた。密集して生育したところから、新しい0.04%ビフェニル合成培地プレートに線引き、展開した。生育したシングルコロニーを、0.1%ビフェニル液体培地に植菌してビフェニル資化性を確認すると共に、0.04%ビフェニル合成培地マスタープレートに植菌してコロニーの形状を観察した。
その結果、液体培養にてビフェニル資化性の確認された菌は、プレート上で約0.5mmの白色のコロニーを形成した。マスタープレートから再度シングルコロニーとして単離した微生物のビフェニル資化性を確認するとともに、16SrDNA解析を行った結果、コマモナス・テストステロニの16SrDNA配列と100%一致した。このようにして単離された菌をYU14-111株と命名し、グリセロールストックを作製した。
なお、このようにして得られた菌株の生化学的性質をアピ同定キット アピ20NE(シスメックス・ビオメリュー株式会社製)を用いて調べた結果、以下のようなデータが得られ、この結果からもコマモナス・テストステロニであることが確認された。
[実施例2] YU14-111株のbphオペロンの解析
ビフェニル資化菌におけるビフェニル/PCB分解については、既知の分解細菌において、酸素分子をPCBの塩素置換の少ない2,3−位に導入後、環開裂、加水分解を経て、塩化安息香酸へと分解する経路が知られている。
既知のPCB分解細菌のBphA1(ビフェニル−2,3−ジオキシゲナーゼαサブユニット)のアミノ酸配列の比較から、保存性の高い領域を数カ所選び(Lys-Val-Phe-Lue-Asn-Gln-Cys(配列番号14)、Gln-Phe-Cys-Ser-Asp-Met-Tyr(配列番号15)、 Glu-Gln-Asp-Asp-Gly-Glu-Asn(配列番号16)など)、degenerateプライマーを作製した。YU14-111株を、OD660=0.6〜1.0まで培養した培養液0.1〜1.2 mlから遠心集菌した菌体を、適当量のTE緩衝液(10 mM Tris−HCl,1mM EDTA,pH8.0)に懸濁し、80〜100℃で15〜20分間加熱後、遠心した上清をYU14-111株の熱抽出物として使用した。これを鋳型とし、作製したdegenerateプライマーを用いて、94℃、3分→[94℃、30秒→52℃、30秒→68℃、1分(30サイクル)]→68℃、3分、の反応条件でPCRを行い、増幅されたDNA断片を、アガロースゲルより抽出・回収した。DNAの抽出・回収および精製は、ヨウ化ナトリウムまたは類似の塩によりアガロースを溶解し、DNAをシリカゲル膜に吸着させる方法にて行った。精製したDNA断片の塩基配列は、ダイデオキシ法により決定し、YU14-111株のBphA1遺伝子(bphA1)の一部をコードしていることを確認した。
得られたYU14-111株のbphA1既知配列を利用して、上流および下流に続く未知領域の配列を、インバースPCRにより解析した。まず、bphA1の一部を含むDNA断片をプローブとして、各種制限酵素処理したYU14-111株のゲノムDNAに対するサザンハイブリダイゼーションを行った。YU14-111株のゲノムDNAの調製は、菌体を溶菌後、タンパク質を除去し、DNAをアルコール沈殿させる方法を用いて行った。制限酵素としては、EcoRI, BamHI, DraI, HincII, NcoI, NdeI, SmaI, SacII, SphI, XhoI などを用いた。サザンハイブリダイゼーションは、DNAをナイロン膜に転写・固定し、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したプローブの調製、および化学発光によるシグナルの検出は、Nucleic Acid Labelling and Detection Systemなどを用いて行った。インバースPCRに適当な、約1.9〜6kbpのシグナルが検出された制限酵素 XhoI, SacII, および SmaI を選択し、YU14-111株のゲノムDNAを各々の制限酵素で処理した後、セルフライゲーションを行ったものを鋳型として、94℃、3〜5分→[94℃、30秒→ 58〜59℃、30秒→68℃、1分〜6分 20秒(30サイクル)]→68℃、3〜5分、の条件でインバースPCRを行った。得られた約1.2〜5.7kbpの増幅断片をアガロースゲルから抽出・精製し、塩基配列を決定した。
なお、インバースPCRに用いたプライマーの配列は以下のとおりである。
Primer bphA-inv Fw: 5’-GCCCCAATGAGGTGGAAGTG-3’(配列番号12)
Primer bphA-inv Rv: 5’-GCACATTGACCAGGTTACCG-3’(配列番号13)
新たに既知となった配列を利用して、サザンハイブリダイゼーションにより同様に制限酵素 SphI, XhoI, SalI,および PstI を選択し、インバースPCRを、94℃、3〜5分→[94℃、30秒→52〜64℃、30秒→68℃、1分〜8分(24〜30サイクル)]→68℃、3〜5分の条件で行い、得られた約1.2〜3.5kbpの増幅断片の塩基配列を決定することで、さらに上流および下流の解析を行った。最終的に、YU14-111株のBphE、BphG、BphF、BphX、BphA1、BphA2、BphA3、BphB、BphC、およびBphD遺伝子を含む、11,279塩基対の配列(配列番号1)を決定した。
[実施例3] 高濃度ポリ塩化ビフェニルの分解反応
ポリ塩化ビフェニル分解細菌(製剤)の調製は、−20〜−80℃で凍結保存した菌体を2回洗浄した後、20mMりん酸塩緩衝液で再懸濁することでポリ塩化ビフェニル分解細菌溶液を調製した。
次に、ポリ塩化ビフェニル分解反応を、材質が全てガラスか少なくとも容器の内面がガラスライナーとなった反応容器にて、前述のポリ塩化ビフェニル分解細菌溶液をOD660=60となるようこれへ投入し、さらにポリ塩化ビフェニルに対する細菌溶液を分散させるため界面活性剤であるTriton X-100を0.005%となるよう加え、100mg/LのカネクロールKC−300を反応液全量は500μlとなるように投入した。反応は50rpmで転倒撹拌し、反応温度は30℃にて全体の温度が均一となるようにして行った。
一定の時間毎に反応容器から分解反応物を採取し、分解の変化をポリ塩化ビフェニルの残量とするガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS:Agilent Technologies 7890A/5975C)で測定した結果を以下の表3及び図3に示した。ガスクロマトグラフィー質量分析計へ導入する試料の調製方法については,文献(Miyauchi et al. JOUNAL OF BIOSCIENCE AND BIOENGINEERING Vol.105, No.6, 628-635. 2008)を参考に,あらかじめポリ塩化ビフェニルの分析ピークに重ならない物質を内部標準物質としたアントラセンと塩酸を添加したポリ塩化ビフェニル抽出反応液にその倍量の酢酸エチルを加えて,遠心分離を2700から6400×gまでで10分間行い,有機相側の上清を回収した。遠心分離の際、有機相と水相の間にエマルジョンが解消されない場合は,少量のエタノールを添加すると良い。またポリ塩化ビフェニルの抽出効率を高めるために,この操作を2回繰り返した。抽出液を硫酸ナトリウムにて脱水後,適宜,酢酸エチルでGC/MSの感度に応じて希釈しGC/MSへ注入し、計測した。
表3及び図3に示したように、YU14-111株は、100mg/Lのポリ塩化ビフェニルの分解反応開12時間後までで急速にその分解を進め,31.4±1.07mg/Lまでポリ塩化ビフェニルを減少させた。また、48時間後には18.3±1.36mg/Lまでポリ塩化ビフェニルを減少させた。この結果は,先行例(特許文献4)におけるComamonas testosteroni TK102株のポリ塩化ビフェニル分解活性データ(Kimbara et. al., Japanese Journal of Water Treatment Biology Vol.34 No.1. 57-65 1998)と比較した場合,YU14-111株は、ポリ塩化ビフェニル(カネクロールKC-300)の分解において,反応開始後12時間以内の分解速度にて優位であり,分解活性にて非劣性であると考えられる。
[実施例4] 低濃度ポリ塩化ビフェニルの分解反応
ポリ塩化ビフェニル分解細菌(製剤)の調製は、実施例3と同様に行った。
次に、ポリ塩化ビフェニル分解反応を、材質が全てガラスか少なくとも容器の内面がガラスライナーとなった反応容器にて、前述のポリ塩化ビフェニル分解細菌溶液をOD660=10となるようこれへ投入し、5mg/LのカネクロールKC−300を反応液全量が0.5〜1mlとなるように投入した。反応は50rpmで転倒撹拌し、反応温度は30℃にて全体の温度が均一となるようにして行った。
実施例3と同様の分析条件により、上記PCBの分解反応を解析した。その結果を以下の表4及び図4に示す。
表4及び図4に示したように、YU14-111株は、5mg/Lのポリ塩化ビフェニルの分解反応開始1時間後までで急速にその分解を進め、2.2±0.53mg/Lまでポリ塩化ビフェニルを減少させた。さらに、16時間後には1.0±0.06mg/Lまでポリ塩化ビフェニルを減少させ,分解率は80%以上であった。この結果から、YU14-111株は,先行例(特許文献4)におけるComamonas testosteroni TK102株のポリ塩化ビフェニル分解活性データ(Kimbara et. al., Japanese Journal of Water Treatment Biology Vol.34 No.1. 57-65 1998)と比較した場合,短時間で極めて高い分解活性を示した。
[実施例5] YU14-111株のPCB異性体分解特性
実施例3及び4と同様の方法により、カネクロールKC−300等の商用PCBを用いて本発明の菌株のPCB異性体分解特性を調べた結果を以下の表6に示す。表6において、分解率表示欄の100mg/lは、高濃度PCB分解反応において、細菌溶液をOD660=60となるように投入し、48時間転倒攪拌した後の結果であり、5mg/lは、低濃度PCB分解反応において、細菌溶液をOD660=10となるように投入し、16時間転倒攪拌した後の結果である。
先行例(特許文献4)におけるComamonas testosteroni TK102株のポリ塩化ビフェニル分解活性データ(Kimbara et. al., Japanese Journal of Water Treatment Biology Vol.34 No.1. 57-65 1998)と比較した場合,YU14-111株は、5塩素置換ポリ塩化ビフェニルに対する分解活性を持ち、より多くの異性体を分解する特性がある。

Claims (5)

  1. 配列番号2〜11に示す各アミノ酸配列と95%以上の相同性を有するそれぞれのアミノ酸配列からなるビフェニル分解酵素群をコードするDNAを含み、ポリ塩化ビフェニル分解活性を有することを特徴とする、コマモナス属に属する微生物。
  2. 前記DNAが、配列番号1に示す塩基配列又はこれと90%以上の相同性を有する塩基配列からなる請求項1に記載の微生物。
  3. 前記微生物が、受託番号NITE P-1215として寄託されているコマモナス・テストステロニYU14-111株である請求項1又は2に記載の微生物。
  4. 請求項1〜3いずれか一項に記載の微生物を培養して得られた菌体を含む生物製剤とポリ塩化ビフェニルとを接触させることを特徴とするポリ塩化ビフェニルの分解方法。
  5. 前記生物製剤は、請求項1〜3いずれか一項に記載の微生物を培養して得られた菌体の凍結融解物であるか、又は当該菌体と賦形剤とを含む凍結乾燥物である請求項4に記載のポリ塩化ビフェニルの分解方法。
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