しかしながら、緯糸の糸種も多種多様である。特に多数のフィラメントからなるマルチフィラメント糸、無撚(甘撚り)のフィラメント糸、あるいは糊付されない糸など、全体的にまとまり度合いの低い緯糸の場合には、キャリアレピアによって緯糸が反給糸側織端まで緯入れされるまでの間に、緯糸がキャリアレピアに保持される部分でばらけてしまう(図21参照)。
このため、緯糸案内部に導かれた緯糸全体のうち緯糸保持部によって十分に保持されている部分(隙間の小さい当接部側に保持されたフィラメント)に緯糸張力が集中することになり、緯糸が裂けたり、隙間の奥部で保持されたフィラメントが切れたり、折れる(いわゆるフィラメント切れ、フィラメント折れが発生する)などして緯糸にダメージを与えてしまい、織布の品質(緯糸に起因する欠点・風合い)を損なうという問題がある。
本願発明者は、そのような緯糸がばらける原因として、ベース面および対向面によって構成される、緯糸保持部に至るまでの隙間の大きさが影響すると考えており、以下この点について詳説する。
従来のキャリアレピアでは、上記くさび状の隙間を側方から見ると、上記隙間を構成するベース面および対向面は、直線状、緩やかな曲線状、あるいはその組合せにより形成される。例えば、ベース面および対向面が緩やかな曲線状に設けられる場合、キャリアレピアの基端側から先端側へ、緩やかな曲線状から直線状に移行するように形成される。
ベース面および対向面の双方ともに直線状であると、ベース面と対向面とがなす角度(以下、形成角度とよぶ。)は一定となり、また上記少なくとも一方が曲線状であると、形成角度はキャリアレピアの先端側に向かうにつれて徐々に減少する。従って、緯糸案内部における形成角度は、少なくとも緯糸保持部における形成角度以上の値になっている。
緯糸案内部から緯糸保持部に至るまでの隙間の減少度合いは、形成角度に比例する。従って、緯糸案内部における隙間の減少度合いも、上記形成角度に比例して徐々に低下するように形成される。
緯糸は、このような緯糸案内部を経て案内され、緯糸保持可能な隙間の大きさを有する緯糸保持部に食い込むように保持される。しかしながら、緯糸案内部の隙間は、緯糸保持部側から見て、徐々に増大する上記形成角度に比例して増大される大きさとなっている。このため、緯糸が緯糸保持部に至る際の、緯糸案内部におけるベース面および対向面と緯糸との接触が充分とは言えず、特に、まとまり度合いの低い緯糸の場合、まとまり度合いの低いまま緯糸保持部に至ることになる。
まとまり度合いの低い緯糸は、断面的に見て緯糸を構成するフィラメントの間に空間が多く存在する状態(嵩高状態)になりやすい緯糸であるが、その状態のまま緯糸保持部に至ると、緯糸を構成する多数のフィラメントのうち緯糸保持部に食い込まず保持が不充分なフィラメントの割合が大きくなる。このようなまとまり度合いの低い緯糸では、緯糸保持部の隙間に位置する食い込みがきつい一部のフィラメントのみに保持力(摩擦力)が作用し、これ以外の食い込みが甘いフィラメントに対しては保持力がほとんど作用しない。
そして、嵩高状態の緯糸を受け取ったキャリアレピアが反給糸側に向かって走行する際に、緯糸は開口経糸に接触する等によって緯糸張力が上昇し、保持力が作用されない(つまり食い込みの甘い)フィラメントが給糸側に引っ張られてしまう結果、この箇所で緯糸フィラメントがばらけ、最悪のケースとしては緯糸が裂けてしまう。また、相対的に見て食い込みがきつい一部のフィラメントに緯糸全体の張力が集中することになり、屈曲のきつい箇所でフィラメント切れやフィラメント折れが発生する。このようにフィラメントが一度ばらけてしまうと、元のまとまった状態に戻ることはなく、このような各フィラメントの間で張力が均一でない緯糸が織り込まれると、いわゆる緯ひけなどの織り欠点となって織物品質が著しく損なわれる。
前記欠点を防ぐ方法として、緯糸案内部の隙間、特に緯糸保持部近傍の隙間をできるだけ小さくするために、上記形成角度を小さくすることも考えられる。しかしその場合には、緯糸が確実に緯糸保持部に案内されるべく、緯糸案内部の入り口の隙間(間口)がある程度の大きさになるようベース面および対向面を長く設ける必要があるが、キャリアレピアの全体的な大きさの制約から限界があった。
そこで、本発明の課題は、先端側が鉤状に設けられ、キャリアレピアの相対的な移動によって緯糸を受取り可能なキャリアレピアにおいて、多数のモノフィラメントからなるマルチフィラメント糸など全体的にまとまりのない(ばらけやすい)緯糸であっても、その全体的な大きさが制約されるキャリアレピアについて、緯糸のまとまりを失うことなく全体的に保持可能なキャリアレピアを提供することである。
上記課題を解決するために、本願発明者は、緯糸が緯糸保持部に至る前に緯糸をベース面および対向面に充分に接触させるために、ベース面と対向面との隙間の大きさが緯糸保持部におけるその大きさに近い領域を、緯糸案内部と緯糸保持部との間(緯糸保持部の直前)に設けるようにし、しかも上記設けた領域における隙間の変化度合い(形成角度の減少度合い)を、緯糸保持部におけるその変化度合い(形成角度の減少度合い)よりも小さくするようにした。
詳しくは、両側レピア織機に用いられ先端側が鉤状に設けられるキャリアレピアであって、フック(鉤状部)に設けられる面とこれに当接する部材の対向面とで構成される緯糸案内部、ならびにくさび状に設けられ緯糸保持可能な隙間の緯糸保持部を形成するキャリアレピアにおいて、くさび状の隙間の緯糸保持部に隣接する緯糸干渉部を緯糸案内部との間に設け、しかも緯糸干渉部の領域における上記2つの面がなす角度(形成角度)を、緯糸保持部の領域における上記2つの面がなす角度(形成角度)の最大値よりも小さくした。
より具体的には、先端(2a)に延びる基底部(2f)と先端(2a)側より基端側へ折り返される折返し部(2b)を有する鉤状のレピアヘッド(2)であって前記折返し部(2b)の内向き面(2b7)および内向き面に連なる側面(2i)のいずれか一方にベース面(4)を形成するレピアヘッド(2)と、前記レピアヘッド(2)に取付けられるとともに前記ベース面(4)に対向する対向面(6)を有るキャッチレバー(5)であって前記ベース面(4)を押圧する方向に付勢されて先端側の当接部(18)において前記対向面(6)で前記ベース面(4)に当接するキャッチレバー(5)とを備え、前記ベース面(4)と前記対向面(6)とは、前記当接部(18)よりも前記折返し部(2b)の先端(2c)側において離間して隙間を形成するとともに、その隙間によって緯糸保持部(7a)および前記緯糸保持部(7a)よりも折返し部の先端(2c)側に緯糸案内部(9)を構成し、前記緯糸保持部(7a)は、前記ベース面(4)と前記対向面(6)との間の緯糸(3)を保持可能な間隔の前記隙間であって折返し部の先端(2c)側からレピアヘッド(2)の先端(2a)側に進むにつれて間隔が徐々に減少される前記隙間に設けら、前記折返し部の先端(2c)側より前記緯糸案内部(9)を介してもたらされる緯糸(3)を、前記緯糸保持部(7a)に食い込ませて保持するキャリアレピア(1)を前提とする。
その上で、本発明は、前記キャリアレピア(1)が前記レピアヘッド(2)の長手方向における前記緯糸保持部(7a)と前記緯糸案内部(9)との間に所定長さの緯糸干渉部(8a)を有し、前記緯糸干渉部(8a)の領域における前記ベース面(4)と前記対向面(6)とがなす角度を、前記緯糸保持部(7a)の領域における前記なす角度の最大値よりも小さくしたことを特徴とする。
ここで、前記ベース面(4)と前記対向面(6)とがなす角度について、側方より見て、2つの面の延長線(接線)がなす角度として、あるいは、一方の面を他方の面に交差するように仮想的に平行移動させたときの2つの面がなす角度として捉えることができる。例えば、上記2つの面がいずれも直線状に形成される場合には、2つの面の延長線がなす角度として、あるいは一方の面を他方の面に交差するように平行移動させたと仮想したときのなす角度として捉えることができる。
また、いずれか一方が曲線状に形成される場合についても同様である。一方が曲線状に形成される場合、上記前者(延長線との関係)として見る捉え方によれば、曲線状の面の接線と他方の直線状の面の延長線とがなす角度として、また双方ともに曲線状に形成される場合には、2つの曲線状の面の接線がなす角度として、それぞれ捉えることができる。なお、一方が曲線状の面に形成される場合、延在方向の位置に対応して接線が複数存在し、上記なす角度も同様に複数存在することになるが、このようなケースでは、当該領域内における複数の角度との関係として論じることとする。この点について、上記後者(仮想的に一方の面を平行移動させる)として見る捉え方についても、同様である。
その上で、前記緯糸干渉部(8a)における前記ベース面(4)および前記対向面(6)のうち少なくともいずれか一方を曲線状に形成した場合に、前記緯糸干渉部(8a)の領域内において、一方の曲線状の面の接線と他方の直線状の面とがなす角度、または一方の曲線状の面の接線と他方の曲線状の面の接線とがなす角度は、いずれも前記緯糸保持部(7a)の領域において前記ベース面(4)と前記対向面(6)とがなす角度の最大値よりも小さくなるようにする。
また、前記緯糸干渉部(8a)の前記レピアヘッド(2)の長手方向における長さは、0.5mm以上とするのが好ましい。
さらに、前記緯糸干渉部(8a)の領域内において前記ベース面(4)と前記対向面(6)とがなす角度を0°としてもよい。この場合、ベース面(4)と対向面(6)との隙間は、緯糸干渉部(8a)の領域内において常にその導入側と同じに設けられる。また、前記緯糸干渉部(8a)の領域内において、前記ベース面(4)と前記対向面(6)とがなす角度が負の値を含むものとしてもよい。この場合、前記緯糸干渉部(8a)の領域内におけるベース面(4)と対向面(6)との隙間は、キャリアレピアの先端(2a)へ向かうにつれて大きくなっている。
好適には、前記キャッチレバー(5)および前記折返し部(2b)のうち少なくともいずれか一方にキャリアレピア(1)の長手方向に直交する断面において前記他方側に向けて突出する1以上の突状部(10)を設け、前記突状部(10)を前記緯糸保持部(7a)から少なくとも前記緯糸干渉部(8a)の領域内まで延在して設けてもよい。また、突状部(10)に代えて、前記キャッチレバー(5)の対向面(6)および前記折返し部(2b)のベース面(4)うち少なくともいずれか一方にキャリアレピア(1)の長手方向に延在する1以上の溝(11)を形成し、前記溝(11)を前記緯糸保持部(7a)から少なくとも前記緯糸干渉部(8a)の領域内まで延在して設けてもよい。ここでいう、延在される突状部(10)(溝(11))の具体的な形態としては、緯糸干渉部(8a)の領域の一部まで延在される形態、緯糸干渉部(8a)の領域全体にわたって延在される形態(緯糸干渉部(8a)を超えて折返し部の先端(2c)側に延在される形態も含む)とすることができる。
なお、本願発明の対象とするキャリアレピア(1)のレピアヘッド(2)には、キャッチレバー(5)を除き、単一部材で設けるもののほか、レピアバンドへの取付部を有する部材(後述するレピア本体1a)と、先端に鉤部を形成する先端部材(後述するキャリアヘッド2’)との結合により一体に設けるものを含む。
いわゆる鉤状のキャリアレピア(1)で、緯糸保持可能な隙間に設けられる緯糸保持部(7a)と緯糸案内部(9)との間に、それらに連続する緯糸干渉部(8a)をキャリアレピア(1)の長手方向に所定長さ設け、緯糸干渉部(8a)の領域においてベース面(4)と対向面(6)とがなす角度を、緯糸保持部(7a)の領域においてベース面(4)と対向面(6)とがなす角度の最大値よりも小さくすることにより、緯糸保持部(7a)側から見て緯糸干渉部(8a)におけるベース面(4)と対向面(6)との隙間の変化度合いが小さくなる。従って、従来よりもそれだけ隙間の小さい緯糸干渉部(8a)という領域を経て緯糸を緯糸保持部(7a)に導かれることとなる。
それにより、緯糸(3)は、緯糸干渉部(8a)のベース面(4)および対向面(6)に充分に接触して通過することとなり、、緯糸(3)は、従来よりも隙間の小さい緯糸干渉部(8a)のベース面(4)および対向面(6)に、全体的に接触しながら進むため、仮に、緯糸(3)がまとまり度合いの低い、いわゆる各フィラメント間の隙間(空間)が大きい嵩高状態の糸種であったとしても、緯糸(3)が緯糸干渉部(8a)を通過する際に各フィラメント間の空間は徐々に狭められ、緯糸(3)を構成する各フィラメントは徐々に整列されていく。そして、緯糸(3)の全体形状としてみたとき、嵩高状態で全体的にいくらか膨らみのある緯糸(3)は、緯糸干渉部(8a)を移動することによって半径方向に圧縮されつつ全体的にややつぶれた形状になり、その形状のまま緯糸保持部(7a)に移行されて、緯糸保持部(7a)のくさび状の隙間に食い込むように保持される。
このように、緯糸(3)は、全体的にまとまりを維持した状態で半径方向に圧縮され、全体的な形状としてややつぶれた形状となって緯糸保持部(7a)に移行するため、緯糸保持部(7a)のベース面(4)および対向面(6)の摩擦力が作用する緯糸フィラメントの割合は、従来のキャリアレピアに比べて大きくなる。
さらに、緯糸(3)は、緯糸干渉部(8a)を通過して全体的にややつぶれた状態のまま緯糸保持部(7a)に至るため、緯糸保持部(7a)のくさび状の隙間への食い込み度合いを、従来のキャリアレピアに比べてより大きくすることができる。詳しくは、食い込み状態において、ベース面(4)および対向面(6)に緯糸(3)が接触する接触長さが、従来のキャリアレピアに比べてより長くなるため、より大きな摩擦力すなわち緯糸保持力が得られる。このように、上記した緯糸(3)の圧縮にともなって摩擦力が作用されるフィラメントの割合が大きくなることも緯糸保持力の増大に相乗的に作用して、緯糸を全体的に安定して保持することができる。
このように、多数のモノフィラメントからなるマルチフィラメント糸など全体的にまとまり度合いの低いばらけやすい緯糸(3)であったとしても、緯糸全体を安定的に保持することができる。インサートレピアから緯糸が受け渡されたあと緯入れが完了されるまでの間に、仮に瞬間的な緯糸張力の高まりが発生しても、従来のキャリアレピアのように緯糸(3)を構成するフィラメントがばらけたり、緯糸(3)が裂ける、あるいは屈曲のきつい箇所でフィラメントが切れたり、折れる等の緯糸ダメージを防止できる。従って、上記した緯糸ダメージに起因する緯ひけなど罰点が少ない良質な織布を効率よく生産できる。
好ましくは、前記緯糸干渉部(8a)の領域内において前記ベース面(4)と前記対向面(6)とがなす角度すなわち上記形成角度を、0°としてもよいし、緯糸保持部(7a、7b、7c)における角度の最大値に満たない正の値とすることにより、該当する外径の緯糸(3)に対応する、緯糸干渉部(8a、8b、8c)から緯糸保持部(7a、7b、7c)に至るまでの隙間が拡がらないように設けることができる。これによって、緯糸干渉部(8a、8b、8c)による緯糸(3)の圧縮状態を崩すことなく緯糸保持部(7a、7b、7c)に移行でき、緯糸(3)を全体的に保持することができる。
しかし、緯糸干渉部(8a、8b、8c)の領域全体において、ベース面(4)と前記対向面(6)の隙間がより小さくなるように(つまり、ベース面(4)と対向面(6)とがなす角度すなわち形成角度が、0°未満の負の値として)、ベース面(4)と対向面(6)を構成してもよい。この場合、緯糸干渉部(8a、8b、8c)の導入側における隙間は、緯糸(3)に対して全体的に接触しかつ緯糸通過可能な値にされていれば良い。このような実施形態では、より隙間の小さい緯糸干渉部(8a、8b、8c)を通過することによって、全体的に膨らみのある緯糸(3)は半径方向により圧縮されて全体的によりつぶれた形状になり緯糸保持部(7a、7b、7c)に移行できる。従って、前記した隙間が広がらない実施形態(つまり緯糸干渉部における前記なす角度、すなわち形成角度が0°もしくは正の値)に比べて緯糸(3)の圧縮度合いがより高まることによって緯糸保持部(7a、7b、7c)における食い込み度合いもより高まるから、従来のキャリアレピアに比べてより高い緯糸保持力が得られる。従って、キャリアレピアの走行にともなう緯糸フィラメントのばらけを防止でき、緯糸全体を安定的に保持することができる。
キャッチレバー(5)の対向面(6)および折返し部(2b)のベース面(4)の少なくともいずれか一方に、キャリアレピア(1)の長手方向に延在する1以上の突状部(10)(溝(11))を設け、前記突状部(10)(溝(11))を緯糸保持部(7a)から少なくとも前記緯糸干渉部(8a)の領域まで延在するものとすることにより、緯糸(3)を保持したときに緯糸保持部(7a)の突状部(10)(溝(11))が緯糸(3)を噛み込むことで、接触面積をより広くできる分、緯糸保持部(7a)における緯糸保持力がより高まる。
図1ないし図5には、本発明が適用されるキャリアレピアの一実施例を示している。ここで、本願においては、説明の便宜上、図中に付記した方向をもってキャリアレピアの前後、先端、基端及び上下方向を定義する。また、図3および図5に示すキャリアレピア1は、レピアヘッド2の先端を右手方向に向け、かつ緯糸保持部7aのベース面4がキャッチレバー5の対向面6に対して上となるようにして緯糸保持部7aの側方より見たものである。
本発明のキャリアレピア1は、両側レピア織機に用いられる。先端側が鉤状に設けられるキャリアレピア1は、経糸の開口内に反緯入れ側(反給糸側)から挿入されるとともに、織幅のほぼ中心付近で、緯入れ側(給糸側)から開口内に挿入された図示しないインサートレピアと交錯し、キャリアレピア1の後退とともに緯糸3をインサートレピアから受け取って保持しつつ開口内を反緯入れ側(反給糸側)へ後退し、反緯入れ側の織布端まで緯糸3を搬送する。緯糸3の保持は、インサートレピアに対するキャリアレピア1の相対的な移動にともなって、キャリアレピア1の折返し部とこれに当接するキャッチレバー5とによって形成されたくさび状の隙間(後述する緯糸保持部7a)に緯糸3を食い込ませることによって行う。すなわち、本発明のキャリアレピア1は、キャッチレバー5を積極的に開放させることなくインサートレピアから緯糸3を受取り可能である、消極型の緯糸保持装置を有するキャリアレピアを前提とするものである。
図1ないし図2を参照してキャリアレピア1を概説すると、キャリアレピア1は、レピア本体1aと、先端に鉤状部を有するキャリアヘッド2’と、キャッチレバー5とを主要部材として備えている。キャリアレピア1は、レピアバンド20の先端側に取付部材21を介して取り付けられる。なお、レピア本体1aの下面にはヘッドチップ22が取り付けられており、ヘッドチップ22は、キャリアレピア1の往復運動時、図示しない織機本体のレール上を摺動する部材であり、摩擦抵抗の少ない材料で製作されている。
長手方向に延びるレピア本体1aは、図2に示すように、基端側の上面が略平面状に設けられるとともに、基端側の下面にレピアバンド20の取付部1bが形成されている。また、後側の側端部にスライドガイド19の取付部1cが形成されており、取付部1cにスライドガイド19がねじ19aにより取り付けられている。一方、レピア本体1aの前側の側端部には、前側に開口する角溝1gが先端2a側に延在して設けられており、レピア本体1aは断面コの字状に設けられている。そしてレピア本体1aの溝1gは、取付部1cが設けられる位置よりも先端側の領域では、前側の側端部から後側の側端部に貫通しかつ先端側に開放するように延びていて、溝1gの端部から空間1jを挟んで先端側に延びる上壁部1f、および取付座1eを、レピア本体1aと一体に形成する。
これに対し、キャリアヘッド2’は、図2ないし図4に示すように、取付部2eより先端2aまで延びる基底部2fと、基底部2fより上側に折り返され基端側に延びる折返し部2bとを、取付部2eに対して一体的に設けられていて、図4に示すように、基底部2fと折返し部2bとの間に前後方向(側方)に貫通する空間2gを形成する。そのようなキャリアヘッド2’は、図2に示すように、下方向に開放される断面コの字状の取付部2eを、レピア本体1aの取付座1eに嵌め合わせ、図示しないねじによってレピア本体1aに対して一体に組み付けられており、キャリアヘッド2’とレピア本体1aとはキャリアレピア1のレピアヘッド2を構成している。このようなキャリアレピア1は、前側の側端部に、溝1gおよびこれに連続する空間1jとにより後述するキャッチレバー5を受け入れ可能な収容部を構成し、またこれよりも先端側に、基底部2fを鉤元とし折返し部2bの先端2cを鉤先とする鉤部を構成する。なお、レピアヘッド2は、本実施例のようにキャリアヘッド2’と、レピア本体1aとの結合物で構成されるもののほか、一体物で構成されるものを含む。
キャッチレバー5は、前述したレピア本体1aの断面略コの字状の溝1gに収容されて、上下方向に挿入される軸部材23(図2に示すブッシュ23a、ピン23b、ねじ23c)によってレピア本体1aに対し回動自在に取付けられている。図3において、レピア本体1a側の折返し部2bの前側の側部2iには、略平面状に設けられるベース面4が形成されており、キャッチレバー5は、レピア本体1aに前記取付けられた状態で、ベース面4に対向する対向面6をその先端側の側部に形成している。また図2に示すように、キャッチレバー5には、回転中心(軸部材23)を挟んで対向面6と反対側の端部に、受圧部24が設けられる。
受圧部24と、レピア本体1aとの間には、付勢部材としての圧縮ばね25が介装されている。圧縮ばね25は、溝1gに配置される図示しないスプリングホルダによって受けられるとともに、受圧部24を突出させる方向にキャッチレバー5を付勢しており、これにより、キャリアヘッド2’とキャッチレバー5とは、キャリアレピア1の先端側の後述する当接部18において当接した状態となっている。受圧部24と、溝1gの底部との間には、衝撃吸収材26(クッション)が配置されている。そして、キャッチレバー5の受圧部24は、キャリアレピアの走行時に、織布よりも反給糸側に配置される図示しないオープナカムと当接可能に設けられている。
キャリアレピア1の緯糸保持装置(言い換えれば、レピアヘッド2の形態)について、その周辺部を拡大した図3,4を用いて説明する。レピアヘッド2の基底部2fは、取付部2eより先端側に進むにつれて、前側の側部が後側の側部2hに近づくように幅方向に収縮される側端部2rを形成し、その後は上記幅を維持しながら折返し部2bに合流しており、さらにこれより先端側では、幅方向および上下方向に先細り(いわゆる両刃の剣先状)に設けられて先端2aに達している。
これに対し、レピアヘッド2の折返し部2bは、ベース部2b1を主要部として構成し、ベース部2b1には、後述するキャッチレバー5が当接する前側の側面2i(すなわちベース面4)と、先端2aから基端側に進むにつれて徐々に上昇される上向き案内面2kとを形成する。ベース部2b1は、先端2aに向けて上下方向および幅方向(前後方向)に収斂するように設けられており、言い換えれば、先端2aから基端側に進むにつれて、その上向き案内面2kは、最初は徐々に上昇しその後はレピア本体1aの上壁部1fの上面とほぼ同じ高さを維持するように設けられている。またベース部2b1は、基底部2fの幅方向に収縮された領域の前側の側端2rよりも前側に突出するように設けられていて、上下方向および長手方向に略平面状に延在する前側の側面2iをベース面4として形成する。
さらに折返し部2bのベース部2b1には、前後方向(幅方向)に板状に延びる羽根状部2b2が付け根2b3よりも基端側に延在されている。羽根状部2b2は、その上向き案内面がベース部2b1の上面2kに連続するように、また図3に示すように、羽根状部2b2の基端側の端面が、上壁部1f側の端面と同様、長手方向に対して斜めに延びて先端2cに達しており、レピア本体1a側の上壁部1fの前端面との間に、緯糸通過可能なスリット2dを形成する。一方、ベース部2b1には、付け根2b3を起点とし空間2gを画定する下向き面2g1に向けて徐々に下降される案内面2b4(本願で言う内向き面)を形成し、空間2gを画定する上向き面2g2に連続する案内面2b5とともに、スリット2dに通ずる通路を構成する。
このようにして、キャリアレピア1が経糸開口内へ進入する際に、仮に開口不良の経糸が存在したとしても、先端2aの上側に案内された開口不良の経糸を、キャリアレピア1の上向き案内面2kおよびレピア本体1aの上壁部1fとに連続的に接触させて、経糸を上側に案内可能な経糸をかき分ける機能をなし、開口不良の経糸がキャリアレピア1に引っ掛からないようになっている。これに対し、スリット2dは、長手方向(進入方向)に対し所定の角度をなして斜め方向に延在するように形成されており、図示しないインサートレピアからキャリアレピア1が緯糸3を受け取る際に、同じく緯入れ方向に対し所定の角度をなしてインサートレピア1の上壁部1fに張架される緯糸3のみがスリット2dを通過し、下向き案内面2b4を経て折返し部2bの内側空間2gへ導入できるようになっている。なお、スリット2dの幅は、使用する緯糸3の太さに応じて定められるが、レピア本体1aの取付座1eに対するキャリアヘッド2’の長手方向の取付け位置を変えることにより、ある程度の範囲で調整できるようになっている。なお、レピア本体1aとキャリアヘッド2’とを単一部材を切削することにより一体物として製作しても良い。
本発明の主要部であるキャリアレピア1の緯糸保持装置について、ベース面4(対向面6)の延在方向に沿って切断したと仮定して断面的に見てその要部を拡大した図、言い換えれば緯糸保持部7aの側方より見てその要部を拡大した図5を用いて、以下詳説する。
第1の実施例であるキャリアレピア1の緯糸保持装置は、レピアヘッド2の折返し部2b(ベース部2b1)の前側の側面2iをベース面4とし、ベース面4と、ベース面4に当接するキャッチレバー5の対向面6との面の間に、緯糸3を食い込ませて保持するものである。そして当接部に至るまでの間に、上記2つの面の間の隙間の変化態様が段階的に変わる緯糸保持装置であり、詳しくは、隙間を構成する2つの面すなわちベース面4と対向面6とがなす角度が、長手方向に見て段階的に変わる緯糸保持装置である。図5に示す第1の実施例では、折返し部側のベース面4(前側の側面)が平面状に設けられるのに対し、これに対向されるキャッチレバー5の対向面6を断面的に見て、折れ線状の複数の平面(6aないし6d)に設けることにより、長手方向に見て2つの面がなす角度θ3、θ2、θ1が段階的に変わる緯糸保持装置を構成する。
詳しくは、図5に示すように、キャリアレピア1の上方から見て、レピアヘッド2の折返し部2bの前側側面2iに設けられるベース面4と、キャッチレバー5の対向面6(6aないし6d)は、キャリアレピア1の長手方向に、キャリアレピア1の基端側から、緯糸案内部9、緯糸保持部7a、当接部18を形成するとともに、本発明の特徴である緯糸干渉部8aを、緯糸案内部9と緯糸保持部7aとの間に形成している。なお、図5では、説明の都合上、折返し部2b(ベース部2b1)のベース面4が設けられる部分と、キャッチレバー5の先端部分のみを実線で図示することとし、羽根状部2b2、折返し部2b、レピア本体1aの基底部1fに関する図示を省略する。またベース面4と、対向面6(断面的に見て折れ線状の面6aないし6d)との各区間における間隔についても、本発明の趣旨を逸脱しない程度にいくらか誇張して広く描いている。
当接部18は、言うまでもなくキャッチレバー5の対向面6aが折返し部2bのベース面4に当接する領域であり、2つの面の隙間はほとんどなく緯糸3の通過を許さない状態にされている。
当接部18の基端側に隣接する緯糸保持部7aは、ベース面4と対向面6bによって構成される。キャリアレピア1の基端側から先端側へ進むにつれてベース面4と対向面6bは、これらの面の隙間が徐々に減少するように、また緯糸保持可能な隙間に設けられることにより、くさび状の空間として形成されている。緯糸保持部7aの長手方向距離L1、緯糸保持部7aの導入部(緯糸保持部7aの最も基端側部)におけるベース面4と対向面6bとの隙間の間隔t1、緯糸保持部7aにおけるベース面4と対向面6とがなす角θ1は、保持しようとする緯糸3の種類によってそれぞれ定められるが、一例としては、距離L1は1.0mm〜6.0mm、導入部の隙間t1は0.1mm〜2.0mm、この区間におけるベース面4と対向面6bとがなす角度θ1は2°以上10゜以下に設けられる。なお、一般的に、緯糸3の径を視点に隙間t1を見たとき、緯糸3の単繊維の外径d、および緯糸3が全体的に膨らみのある状態の全体の外形Dとすれば、d<t1≦4/5*Dなる条件を満たす隙間t1とすることができる。
これに対して、付け根2b3を起点とする緯糸案内部9は、ベース面4と対向面6dによって構成される。ベース面4と対向面6dは、先端側に進むにつれてこれらの面の隙間が徐々に減少するように、さらには、後述される緯糸干渉部8aのベース面4および対向面6cのそれぞれに連続するように設けられていて、これらの2つの面により、緯糸導入スリット2dから導入された緯糸3を緯糸干渉部8aへ導く機能を有している。この領域におけるベース面4と対向面6dとがなす角度(詳しくは、ベース面4を仮想的に平行移動した仮想線p2と対向面6dとがなす角度)θ3は、緯糸保持部7aにおける角度θ1よりも大きく設けられており、また緯糸案内部9の長手方向距離L3は、一例として、5.0mm〜10.0mmの範囲で設定される。なお、ベース面4と対向面6dについて、付け根2b3付近では、緯糸案内に支障のない程度の隙間(例えば、緯糸3の外径Dに対して2倍以上の値)となるようにすれば、緯糸3を確実に導入可能である。
緯糸案内部9と上記した緯糸保持部7aとの間に設けられる緯糸干渉部8aは、ベース面4と対向面6cとによって構成される。対向面6cの両端は隣りあう対向面6d、6bに連続するように設けられ、しかもベース面4と対向面6cとがなす角度(上記同様に詳しくは、ベース面4を仮想的に平行移動した仮想線p1と対向面6cとがなす角度)θ2は、緯糸保持部7aの領域においてベース面4と対向面6bとがなす角度θ1よりも小さくされるように対向面6cが設けられている。従って、緯糸干渉部8aは、隣接する緯糸保持部7aの隙間が緯糸保持可能な隙間に設けられること、さらに緯糸干渉部8aにおける2つの面がなす角度θ2が、隣接する緯糸保持部7aのなす角度θ1よりも小さくされる結果、緯糸干渉部8aにおける2つの面がなす隙間は、緯糸3の移動を許しつつ緯糸3に対し全体的に接触するように形成される。
このような緯糸干渉部8aは、キャリアレピア1の長手方向に距離L2にわたって設けられており、緯糸干渉部8aは、緯糸保持部7aのくさび形状および緯糸案内部9の案内空間よりも緩やかな変化勾配を持ちキャリアレピア1の長手方向にほぼ平行に延在する空間として形成されている。このような緯糸干渉部8aは、緯糸導入時に緯糸3のフィラメントのばらけを抑制し、緯糸3を緯糸保持部7aのくさび状の隙間に導く機能を有している。緯糸干渉部8aの長手方向距離L2は、例えば緯糸3の単繊維の外径dよりも大きい値、実際的には、0.5mm〜6.0mmの範囲とすることができる。なお、長さL2の値は、実際には、設計的な制約(レピアヘッド2の折返し部2bの長さ)を受ける。この点については緯糸案内部9の長さL3についても同様である。
図6ないし図8は、本発明のキャリアレピア1が緯糸3を保持する様子を示している。なお、説明の都合上、図7(a),図8(a)では、レピアヘッド2の折返し部2bの羽根状部2b2を省略している。図6において、緯糸3は図示しないインサートレピアによってその先端が保持されている。緯入れ方向に対し所定の角度をなすようにキャリアレピア1の上壁部1f上にもたらされた緯糸3は、緯糸導入スリット2dを通過して内側通路に入り、さらにキャリアレピア2の後退にともなう相対的な移動によって、図7に示すように、緯糸案内部9に導かれて緯糸干渉部8aに至るとともに、これより給糸体側の緯糸3が折返し部2bの内側空間2gへ導入される。そして、さらなるキャリアレピア2の後退によって、緯糸3は、緯糸干渉部8aのベース面4と対向面6とに接触しながらレピアヘッド2の先端側へ相対的に移動していき、このとき緯糸3は半径方向に徐々に圧縮され全体的な形状がややつぶれた形状にされる。そして緯糸3は、そのような形状のまま緯糸保持部7aへ移動し、図8に示すように、緯糸3の太さに見合った箇所でくさび状の隙間に食い込み保持される。
このようにして、緯糸干渉部8aの領域においてベース面4と対向面6とがなす角度を、緯糸保持部7aの領域においてベース面4と対向面6とがなす角度の最大値よりも小さく設けることにより、緯糸保持部7a側から見て緯糸干渉部8aにおけるベース面4と対向面6との隙間の変化度合いが小さくされている。従って、緯糸干渉部8aにおけるベース面4と対向面6との間の隙間について、緯糸保持部7aにおける隙間の大きさに近い値に形成される領域が、従来のキャリアレピアに比べてより長く設けられている。
緯糸3は、そのような緯糸干渉部8aのベース面4および対向面6に充分に接触して通過することができる。つまり、緯糸3は、その隙間が緯糸保持部7aの隙間の大きさ(すなわち緯糸保持可能な隙間)に近い値に設けられた緯糸干渉部8aのベース面4および対向面6に、全体的に接触しながら進むため、仮に、緯糸3がまとまり度合いの低い、いわゆる各フィラメント間の隙間(空間)が大きい嵩高状態の糸種であったとしても、各フィラメント間の空間は徐々に狭められ、緯糸3を構成する各フィラメントは徐々に整列されていく。そして緯糸3の全体形状としてみたとき、嵩高状態で全体的にいくらか膨らみのある緯糸3は、緯糸干渉部8aを移動することによって徐々に半径方向に圧縮されつつ全体的にややつぶれた形状になり、その形状のまま緯糸保持部7aに移行されて、緯糸保持部7aのくさび状の隙間に食い込むように保持される。
このように、緯糸3は、全体的にまとまりを維持した状態で半径方向に圧縮され、全体的な形状としてややつぶれた形状となって緯糸保持部7aに移行するため、緯糸保持部7aのベース面4および対向面6の摩擦力が作用する緯糸フィラメントの割合は、従来のキャリアレピアに比べて大きくなる。さらに、緯糸3は、緯糸干渉部8aを通過して全体的にややつぶれた状態のまま緯糸保持部7aに至るため、緯糸保持部7aのくさび状の隙間への食い込み度合いを、従来のキャリアレピアに比べてより大きくすることができる。詳しくは、食い込み状態において、ベース面4および対向面6に緯糸3が接触する接触長さが、従来のキャリアレピアに比べてより長くなるため、より大きな摩擦力すなわち緯糸保持力が得られる。このように、上記した緯糸3の圧縮にともなって摩擦力が作用されるフィラメントの割合が大きくなることも緯糸保持力の増大に相乗的に作用して、緯糸3を全体的に安定して保持することができる。
なお、キャリアレピア1に緯糸保持されるほぼ同じタイミングで、図示しないインサートレピアによる緯糸把持が解消され、キャリアレピア1は、経糸開口内を緯入れ方向へ後退し、経糸開口内から脱出する。経糸開口内から脱出するタイミングにおいて、織機本体のフレーム側に設けられた図示しないオープナカムが図1に示すキャッチレバー5の受圧部24を押圧し、キャッチレバー5はその対向面6がベース面4から離れる方向に回動する。この結果、緯糸3はキャリアレピア1から解放され、その後筬打ちされて織布になる。
本発明のキャリアレピア1によれば、従来のような多数のモノフィラメントからなるマルチフィラメント糸など全体的にまとまり度合いの低いばらけやすい緯糸3であったとしても、緯糸全体を安定的に保持することができる。インサートレピアから緯糸3が受け渡されたあと緯入れが完了されるまでの間に、仮に瞬間的な緯糸張力の高まりが発生しても、従来のキャリアレピアのように、緯糸保持部7aに保持された緯糸3のフィラメントがばらけたり、緯糸3が裂ける、あるいは屈曲のきつい箇所でフィラメントが切れたり折れるなどの緯糸ダメージを防止できる。従って、上記した緯糸ダメージに起因する緯ひけなど罰点が少ない良質な織布を効率よく生産できる。
ここで本願発明者らは、緯糸保持部7aにおいて摩擦力が作用する緯糸のフィラメントの割合を従来品と比較すべく、以下比較検証を行った。緯糸については、糊付けおよび加撚をしないマルチフィラメント糸とする。そして本願発明品および従来品の緯糸保持部7aにおけるなす角度θ1を+5°にし、また本願発明品では、長さ0.5mm程度の緯糸干渉部8aを設け、しかも緯糸干渉部8aにおけるなす角度θ2を+1°としたものを製作した。なお、キャリアレピアの全体的な大きさ、緯糸の相対的な移動速度、緯糸張力などの他の条件はほぼ同じとする。
そしてキャリアレピアに緯糸保持させたあと、製織中に加わる最大瞬間張力よりも大きい張力を緯糸に加えたときにおけるフィラメントのぬけ具合によって、緯糸保持力が作用するフィラメントの割合を確認したところ、従来品において保持力が作用するフィラメントの割合が30%に満たないのに対し、本願発明品である上記製作品によれば、80%以上であることが確認された。
さらに、上記した形態の本願発明品を織機に搭載し、上記比較検証の際に用いた同じ糸種の緯糸を実際に緯入れする試織を行ったところ、キャリアレピアに保持された箇所でフィラメントのばらけなどの緯糸ダメージが発生しないことを確認した。また試織した織布を検反し、従来のキャリアレピアで発生していた緯ひけ等の罰点についても著しく減少した。
上記した第1実施例の緯糸保持装置について、以下変形することができる。緯糸干渉部8aにおける2つの面がなす角度θ2は、θ1未満であれば正負を問わない。より具体的は、θ2を0°として、完全に平行な空間として緯糸干渉部8aを形成してもよい。本願で定義する角度θ1ないしθ3は、キャリアレピア1の先端2aを右手方向に向けかつ緯糸保持部7aのベース面4がキャッチレバー5の対向面6に対して上となるようにして緯糸保持部7aの側方より見たときの角度として定義しており、本願で言う正の値の角度時は、図5に示す形態すなわちベース面4と対向面6との隙間がキャリアレピア1の基端側から先端2a側へ進むにつれて徐々に減少されることを意味し、逆に負の値の角度時は、上記進むにつれて隙間が徐々に拡大するもの(逆テーパ)を意味する。
緯糸干渉部8aにおけるベース面4と対向面6cとの隙間の間隔t2は、緯糸保持部7aにおける隙間の最大値(t1)と同じかその近傍に設定される。ただし、隙間の間隔が各領域内で増減する場合、その領域内の隙間の最小値t2minは、緯糸3全体の通過を許容する値以上であり、また隙間の最大値t2maxは、緯糸3が全体的に当接可能な値であればよい。
さらに、第1の実施例におけるベース面4および対向面6とは、共に平面の組み合わせ、すなわちキャリアレピア1の上方から見て折れ線状の複数の平面の組み合わせで構成されているように描いているが、後述するように、ベース面4および対向面6を、曲率半径の大きな曲面とこれに連続する平面によって構成してもよい(図9ないし図11参照)。
図9は、ベース面4および対向面6を平面および曲率半径の大きな曲面の組み合わせで構成した例を示している。この実施例では、緯糸保持部7aおよび緯糸干渉部8aの領域におけるベース面4aは、平面として形成され、緯糸案内部9の領域におけるベース面4dが、下に凸の曲面として形成されている。これに対しキャッチレバー5の対向面6は、緯糸保持部7aの領域における対向面6b’が上に凸の曲面として形成され、緯糸干渉部8aの領域における対向面6c’が下に凸の曲面として形成され、緯糸案内部9の領域における対向面6d’が平面として形成されている。
なお、図9について図5と同様、説明の都合上、ベース面4と、対向面6(6b’〜6d’)との間隔、対向面6(6b’、6c’)の曲面の曲率等について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でいくらか誇張して描いている。また、図9には、緯糸保持部7aにおける2つの面がなす角度の代表例として、緯糸干渉部8aの近傍地点(図示丸英字a)における対向面側の接線q1とベース面4とがなす角度θ1maxを、また緯糸干渉部8aにおける2つの面がなす角度の代表例として、中間地点(図示丸英字b)における対向面側の接線q2とベース面4を仮想的に平行移動した仮想線p3とがなす角度θ2iをそれぞれ図示している。
図5に示した実施例のように、レピアヘッド2のベース面4およびキャッチレバー5の対向面6とが共に側方より見て直線的に延びる平面の組合せの場合、ベース面4と対向面6とがなす角度θ1、θ2は、そのように延在される領域内では、それぞれ1つの値に定まる。しかしながら、本実施例(図9)のようにベース面4および対向面6の少なくとも一方が曲面を含む場合、すなわちレピアヘッド2の側方から見てベース面4および対向面6のうち少なくとも一方が曲線部分を含む場合、2つの面がなす角度θ1、あるいは角度θ2は、各曲線部分を有する領域内でキャリアレピア1の長手方向で変化し、一意に定まらない。そこで、このような場合、緯糸保持部7aの領域における最大の角度θ1maxをθ1として読み替える。実際には、緯糸保持部7aはくさび状に設けられるため、緯糸保持部7aの導入部(緯糸保持部7aの最も基端側部すなわち丸英字aにて図示する地点)において、ベース面4(またはベース面4の接線)と、対向面6(または対向面6の接線)とがなす角度が最大角度θ1max、すなわちθ1となる。
この場合、緯糸干渉部8aの領域内のいずれの地点においても、ベース面4(またはベース面4の接線)と対向面6(または対向面6の接線)とがなす角度θ2i(i=1…n;iは各地点毎に付与される変数、nは正の整数)は、緯糸保持部7aにおける前記最大の角度θ1(=θ1max)よりも小さくなるように、ベース面4および対向面6を形成すればよい。このように、緯糸保持部7aと、緯糸干渉部8aとを、曲面に設けることによっても、上記第1の実施例と同様、ばらけやすい緯糸を安定的に保持可能であり、しかもベース面4と、対向面6の緯糸3に対する接触長さを(直線状に設けるものに比べて)長く設けることができ、緯糸3への作用力(保持力)をより稼ぐことができる。
図10ないし図13は、ベース面4および対向面6の形状に関する他の実施例を示している。図10は、緯糸干渉部8aおよび緯糸案内部9において、ベース面4および対向面6の両方を凸湾曲する曲面として形成した例である。より詳しくは、ベース面4側を、曲率半径を大きくした弧面により緯糸保持部7aから緯糸案内部9に連続的に設けるとともに、対向面6側を、ベース面4側に比べて曲率半径を小さくした弧面6c’’、6d’’により緯糸干渉部8aから緯糸案内部9の領域に連続的に設けた例であり、緯糸干渉部8aにおける2つの面がなす角度の代表例として、丸英字cに示す中間地点における対向面側の接線q3とベース面4とがなす角度θ2iを図示している。
また図11は、ベース面4を平面の組合せとして形成し、対向面6を凸湾曲する曲面として形成した例である。より詳しくは、対向面6側を曲率半径を大きくした弧面により緯糸保持部7aから緯糸案内部9に連続的に設けるとともに、ベース面4側を、角度が段階的に異なる折れ線状の平面4b’,4c’,4d’に設けた例であり、緯糸干渉部8aにおける2つの面がなす角度の代表例として、丸英字dに示す中間地点における対向面側の接線q4とベース面4とがなす角度θ2iを図示している。
さらに、図12は、ベース面4および対向面6の両方をいずれも各領域で折れる平面の組合せ、すなわち折れ線状のベース面4b’、4c’、4d’と折れ線状の対向面6b’’、6c’’、6d’’として形成した例であり、しかも緯糸干渉部8aにおけるベース面4c’と対向面6c’’とがなす角度θ2を0°に設けた(つまりベース面4c’と対向面6c’’とを実質的に平行に設けた)例である。緯糸干渉部8aにおける角度θ2について、図示の都合上、仮想線などを省いて簡略化し図示している。なお、緯糸干渉部8aにおける角度θ2について、0°に限らず、正または負の0°近傍の値とすることもできる。
上記した、図10〜図12のいずれについても、本発明の趣旨にあるように、緯糸干渉部8aにおけるなす角度θ2、θ2i(i=1…n;nは正の整数)が、緯糸保持部7aにおけるなす角度θ1(=θ1max)よりも小さい正の値、あるいは0°近傍の値となるように、ベース面4c’あるいは対向面6c’’を設けてある。言い換えれば、緯糸干渉部8aから緯糸保持部7aに至るまでの隙間が拡がらないように設けることにより、緯糸干渉部8aによる緯糸3の圧縮状態を崩すことなく緯糸保持部7aに移行でき、緯糸3を全体的に保持することができる。
より好適には、図12に示すように、緯糸干渉部8aにおけるベース面4c’と対向面6c’’とがなす角度すなわち形成角度を、正あるいは負の0°近傍の値または0°のいずれかに設けることにより、全体的にまとまり度合いの低い緯糸を、緯糸干渉部8aの通過時に全体的に圧縮された状態を崩すことなく、緯糸保持部7aに移行することができる。従って、まとまり度合いのかなり低い緯糸であっても、全体的に保持することができ、いわゆるキャリアレピアの走行時における緯糸フィラメントのばらけ等も防止できる。なお、正あるいは負の0°近傍の値として、例えば、+2°未満−2°以上とすることができる。
これに対し、緯糸干渉部8aにおけるなす角度θ2、θ2iを、図13に示すように、0°未満である負の値(具体的には−5°)になるように、対向面6c’’’を設けても良い。この場合、緯糸干渉部8aの導入側における隙間t2’は、緯糸が全体的に接触しかつ緯糸が通過可能な値になっていればよい。このような実施形態では、緯糸干渉部8aにおける隙間の最小区間を通過することによって、緯糸3は上記したように圧縮され、その後これよりも隙間の大きさが広い箇所に移行すると、圧縮状態の緯糸がいくらか復元されて元の嵩高状態に戻ることも考えられるが、緯糸干渉部8aから緯糸保持部7aへの移行はごく短時間であり、実質的にはそのような復元に伴う食い込み度合いの低下は微少であるため、このような緯糸干渉部8aも、緯糸をそのまとまり状態を維持したまま全体的にいくらかつぶれた状態にして緯糸保持部7aに移行できる。従って、図10〜図12で示した、前記隙間が広がらない実施形態(つまり緯糸干渉部8aにおける前記なす角度、すなわち形成角度が0°もしくは正の値)に比べ、緯糸保持力はやや低下するものの、従来のキャリアレピアに比べてより高い緯糸保持力が得られ、キャリアレピアの走行にともなう緯糸フィラメントのばらけを防止でき、緯糸全体を安定的に保持することができる。なお、図13には、緯糸干渉部8aにおける2つの面がなす角度の代表例として、ベース面4aを平行移動させた仮想線p4と緯糸干渉部8aにおける対向面6c’’’とがなす角度θ2を示しており、側方より見て、対向面6c’’’が仮想線p4を超えた状態にあることによって、角度θ2が負の値であることが示されている。
ここに示した実施例の他、緯糸保持装置の側方より見て、緯糸保持部7aおよび緯糸干渉部8aについて、ベース面4および対向面6のいずれかを凹の湾曲面または凸の湾曲面に形成してもよいし、双方を凹の湾曲面または凸の湾曲面に形成して緯糸保持部7a、緯糸干渉部8aを設けても良い。また、ベース面4および対向面6を平面の組み合わせで構成し、レピアヘッド2の上方(緯糸保持装置の側方)から見て、ベース面4および対向面6がさらにより短い区間で折れ線状となるようにしてもよい。また、緯糸案内面部9についても同様である。また上記隙間を設けるために、図10,11に示すように、折返し部2bあるいはキャッチレバー5のいずれか一方のみを切削加工等により形成し上記隙間を設けてもよい。しかし、図12に示すように、上記双方を切削加工することにより上記隙間を設けることもできる。
また、緯糸干渉部8aを構成するベース面4あるいは対向面6について、曲線的に連続する一つの面として設ける代わりに、断面的に見て角度の異なる折れ線状の複数の面として構成することも可能である。例えば、図14は、緯糸干渉部8aを、緯糸保持部7a側から順に、中間地点(丸英字f)で連続される2つの緯糸干渉部8a1,8a2として構成し、緯糸干渉部8a1における対向面6c1を、ベース面4a(仮想線p5)に対するなす角度θ21が負の値(具体的な角度としては−5)°となるように設けるのに対し、緯糸干渉部8a2における対向面6c2を、ベース面4a(仮想線p6)に対する上記なす角度θ22が0°近傍の値(具体的な角度としては−1°)となるように設ける例である。なお上記角度θ21,θ22のいずれについても、緯糸保持部7aにおける角度θ1、θ1maxに満たない値であって、ベース面4および対向面6に対して緯糸3が全体的に接触し、かつ、緯糸干渉部8a1,8a2における最小の隙間t21,t22の地点では緯糸の通過を阻害しない程度の隙間があるように、各領域の対向面6c1,6c2が設けられていればよい。また各緯糸干渉部8a1,8a2における区間長さL21,L22についても、同様である。さらに、緯糸干渉部8aを、3段以上の角度の異なる折れ線状の面として設けることも可能である。
図15〜17には、本発明が適用されるキャリアレピアの他の実施例を示している。ここに示す実施例では、隙間の間隔が異なる二以上の緯糸保持部7a、7b、7cおよび緯糸干渉部8a、8b、8cを、隙間の広いものから順に緯糸案内部9からレピアヘッド2の先端2aへ向けて配置することで、一つのキャリアレピア1で太さの異なる緯糸に対応し、全体的にまとまりのない緯糸を複数用いた多色緯入れにも対応できるようにしている。なお、これ以降の実施例(図面)では、緯糸干渉部8,および緯糸保持部7における、ベース面4および対向面6とがなす角度θ2、θ1について、図12と同様に仮想線や接線等を省略し、図示を簡略化してある。
図15に示す第2の実施例であるキャリアレピア1は、緯糸保持部7aよりレピアヘッド2の先端2a側にあって緯糸保持部7aに連続する細糸用緯糸干渉部8bと、細糸用緯糸干渉部8bよりもレピアヘッド2の先端2a側にあって細糸用緯糸干渉部8bに連続する細糸用緯糸保持部7bとを備えており、言うなれば二段型の緯糸保持部を有している。図1〜14で示した例、言うなれば一段型の緯糸保持部を有するキャリアレピア1では、緯糸干渉部8aの隙間の間隔より細い緯糸を保持する場合、緯糸干渉部8aによるフィラメントの収束効果およびばらけ抑制効果を期待できない。そこで、本実施例では、緯糸保持部7aの先端側を開放し、さらにその先端側に緯糸干渉部8aよりもすき間の間隔の狭い細糸用緯糸干渉部8bおよび細糸用緯糸保持部7bを設けている。
これにより、標準的な径の緯糸、これよりも径の細い緯糸のいずれをも緯糸干渉部8aおよび細糸用緯糸干渉部8bによって収束状態をそれぞれ維持させ、かつ緯糸保持部7a、細糸用緯糸保持部7bにより保持することが可能となり、いわゆる緯糸のフィラメントがばらけるのを抑制することができる。このように、一つのキャリアレピアで太さの異なる緯糸にも対応でき、全体的にまとまりのない緯糸を複数用いた多色緯入れにも対応できる。もちろん、通常の単色緯入れ織機にも本実施例のキャリア
なお、細糸用緯糸保持部7bおよび細糸用緯糸干渉部8bの領域においてベース面4と対向面6とがなす角度の関係は、緯糸保持部7aおよび緯糸干渉部8aの領域における角度関係と同じである。すなわち、細糸用緯糸干渉部8bの領域においてベース面4と対向面6とがなす角度θ5は、細糸用緯糸保持部7bの領域においてベース面4と対向面6とがなす角度θ4の最大値よりも小さく設定すればよい。また、細糸用緯糸保持部7bおよび細糸用緯糸干渉部8bにおけるベース面4および対向面6の寸法関係、形状、前記なす角度の具体的な数値等については、緯糸保持部7a、緯糸干渉部8aと同様であるので説明を省略する。
図16に示す第3の実施例では、図15で示した第2実施例のレピアヘッド2にさらに太糸用緯糸保持部7cと、太糸用緯糸干渉部8cとを追加して設けた例であり、言うなれば三段型の緯糸保持部を有している。すなわち、緯糸案内部9と緯糸干渉部8aとの間に、基端側から順に、太糸用緯糸干渉部8cと太糸用緯糸保持部7cとを設けている。これにより、異なる径の緯糸、すなわち標準的な径の緯糸、これよりも径の細い緯糸、さらには標準的な緯糸よりも径の太い緯糸のいずれをも緯糸干渉部8a、細糸用緯糸干渉部8bおよび太糸用緯糸干渉部8cによって収束状態をそれぞれ維持させ、それぞれの太さに対応する緯糸保持部により保持することが可能となる。また、緯糸保持部により保持した後も、緯糸干渉部8a、細糸用緯糸干渉部8bおよび太糸用緯糸干渉部8cにより、いずれの緯糸についても、食い込み側と反対側の位置でフィラメントがばらけるという問題を抑止することができる。
なお、太糸用緯糸保持部7cおよび太糸用緯糸干渉部8cの領域においてベース面4と対向面6とがなす角度の関係は、緯糸保持部7aおよび緯糸干渉部8aの領域における角度関係と同じである。すなわち、太糸用緯糸干渉部8cの領域においてベース面4と対向面6とがなす角度θ7は、太糸用緯糸保持部7cの領域においてベース面4と対向面6とがなす角度θ6の最大値よりも小さく設定されている。また、太糸用緯糸保持部7cおよび太糸用緯糸干渉部8cにおけるベース面4および対向面6の寸法関係、形状、前記なす角度の具体的な数値等については、緯糸保持部7a、緯糸干渉部8aと同様であるので説明を省略する。
図17に示す第4の実施例であるキャリアレピアは、図16に示す第3の実施例であるレピアヘッド2から太糸用緯糸干渉部8cを省略した例を示している。図15、16に示した例では、太さの異なる複数の糸種対応のために、緯糸保持部を複数設け、緯糸保持部毎に緯糸干渉部を設けているが、本実施例のように、保持が難しい糸種のみに対応した緯糸干渉部を設けることにし、比較的に保持が容易な糸種(外径)の緯糸に対しては、これを省略するようにしてもよい。他の変形例として、図15〜17に示した例において、細糸用緯糸干渉部8bを省いても良い(図示せず)。
なお、外径の異なる糸種への対応として、緯糸保持部および緯糸干渉部は、二段型、三段型に限らず、四段以上設けても良い。
ところで、第1〜第4の実施例は、いずれも、レピアヘッド2の折返し部2b(ベース部2b1)の前側の側部2iをベース面4とする実施例であるが、逆に図3に示した後側の側面2hをベース面4としてキャリアレピアを構成しても良い。いずれの実施例も、折返し部2bの内向き面に隣接する側面をベース面とする例である。しかし、これに代えて折返し部の内向き面をベース面とするキャリアレピアに適用することもできる。
図18に示す第5の実施例であるキャリアレピア1は、キャリアレピア1を上方より見た図であって、キャリアレピア1の先端2aを右手方向に向け、かつ緯糸保持部のベース面がキャッチレバーの対向面に対して上となるようにして緯糸保持部7aの側方より見たものである。そして、第5の実施例であるキャリアレピア1は、折返し部2b’の内向き面2b7にベース面4’形成したものであり、さらに図10に示した標準的な外径の緯糸および細い緯糸に対応される2段型の本発明を適用した例でもある。キャッチレバー5は、詳細は図示しないが、ベース面4’に対し付勢され、その先端側の当接部18でベース面4’と接している。そして、折返し部2bのベース面4’と、キャッチレバー5の対向面6’とは、レピアヘッド2の先端側から順に、細糸用緯糸保持部7b、細糸用緯糸干渉部8b、緯糸保持部7a、緯糸干渉部8a、緯糸案内部9を形成している。
以上に示した実施例では、緯糸保持部7a、緯糸干渉部8a等を構成するレピアヘッド2の折返し部2bのベース面4およびキャッチレバー5の対向面6は、緯糸保持部7aに対して断面的に見て、双方とも凹凸のない平滑なものを例示した。しかし、いずれか一方または双方を凹凸に形成しても良い。具体的には、キャッチレバー5および折返し部2bのうち少なくともいずれか一方から他方側へ向けて突出する1以上の突状部10を設け、突状部10を緯糸保持部7aから少なくとも緯糸干渉部8aの領域あるいは細糸用緯糸保持部7bの領域まで延在させ、緯糸3に対するキャリアレピア1の緯糸保持力を高めてもよい。
図19は、第1の実施例(図5)を母体とし、緯糸干渉部8aおよび当接部18の位置において、レピアヘッド2の折返し部2bのベース面4と、キャッチレバー5の対向面6とを、キャリアレピア1の長手方向と直交する垂直面で切った断面図であり、それら部材の断面形状とその組合せの例を示している。ここで図19(a)は、第1の実施例そのものであるベース面4、対向面6のいずれもが平滑面である例、また図19(b)は、対向面6のみに複数の突状部10としての波状溝を設けた例、さらに図19(c)は、ベース面4、対向面6のいずれにも複数の波状溝を設け、それらが噛み合うようにした例を示している。
このような実施例では、断面的に凹凸に設けられた波状面が、ベース面4あるいは対向面6となる。このように、ベース面4、対向面6の少なくともいずれか一方に突状部10(溝)を付ければ、緯糸3を保持したときに緯糸3を噛み込むことができ、緯糸保持部7a、7b、7cの緯糸保持力を高めることができる。なお、波状溝(波状面)をかみ合わせるに代えて、互いの稜部が対向するように設けることもできる。また、このような波状溝(波状面)は、緯糸保持部7aから緯糸干渉部8aに形成すればよいが、緯糸案内部9あるいは当接部18のうちいずれか一方、または双方に至るまで形成することができる。以上の点ならびに次段以降に説明する内容について、上記した第2〜第5の実施例に対しても、同様に適用可能である。
また、ベース面4、対向面6の突状部10(溝)の数について、上記した断面的に見て1以上設けることができる。また突状部10(溝)の形状については、円弧状、矩形、鋸刃状、波状などの形状が考えられ、緯糸3の種類に応じて適宜用いればよい。なお、ベース面4または対向面6の少なくともいずれか一方に突状部10(溝)を設ける場合、前述した緯糸保持部7aまたは緯糸干渉部8aにおいてベース面4と、対向面6とがなす角度とは、溝付のベース面4と溝付の対向面6の緯糸3が接触する面の各接線がなす角度(より簡単に考えれば、対向する面の稜線および谷線の各接線がなす角度)をいう。突状部10(溝)は、緯糸保持部7a、緯糸干渉部8aの他、細糸用緯糸保持部7b、太糸用緯糸保持部7c、細糸用緯糸干渉部8b、太糸用緯糸干渉部8cに設けてもよい。
図20は、レピアヘッド2の折返し部2bと、キャッチレバー5をキャリアレピア1の長手方向と直交する垂直面で切ったときの断面形状の例を示している。図20(a)は、折返し部2bのベース面4に断面円弧状の溝を長手方向に延在して設け、キャッチレバー5の対向面6に前記溝に嵌まりあう半円弧状の突状部10を基底面から突出させて長手方向に延在して設けた例である。キャッチレバー5の形状について、必ずしも平面状の対向面とする必要はなく、例えば、断面的に見て曲面として設けることもできる。
図20(b)は、折返し部2bの端面に断面半円弧状の溝を長手方向に延在させて設け、キャッチレバー5を前記半円弧状の溝に嵌まりあう丸棒状に形成した例である。図20(c)は、折返し部2bの端面に断面逆V字状の溝を長手方向に延在して設け、キャッチレバー5を前記V字状の溝に嵌まる丸棒状に形成した例である。この例では、キャッチレバー5は折返し部2bのベース面4に対し線接触し、密接しないため、緯糸3に過度のストレスを与えない。図20(a)〜(c)のいずれの実施例についても、ベース面および対向面は、溝状あるいは突状のうち緯糸3に対して実際に係わりあう面(接触する面)がベース面および対向面であり、緯糸保持部7aおよび緯糸干渉部8aの各領域における2つの面のなす角度、隙間等についても、本発明の主旨を逸脱しないものは、本願発明に含まれる。
本発明のキャリアレピアは、さらに、以下形態とすることができる。キャッチレバー5について、第5の実施例(図18)では、対向面を有するキャッチレバー5を、図示しない支軸を中心とし、対向面をベース面に押圧するように取付けているが、キャッチレバー5の取付に関し、このような方式に限らない。例えば、キャッチレバー5を、基底部2fの内側に設けた溝にならって長手方向にスライド可能に設け、またキャッチレバーの長手方向への移動によって緯糸を開放できるキャリアレピアについても、本発明を適用できる。
また、本発明のキャリアレピアが適用されるレピア織機は、インサートレピアを有する両側レピア織機に限らない。上記した背景技術のような、反給糸側に設けられるレピアヘッドによって緯入れされる片側レピア織機で、折返し部の内向き面および側面のいずれかにベース面を構成するキャリアレピアにも、本発明を適用できる。