JP2013177263A - 結晶育成用反応容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】容器内部で、超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒と原料とを用いて結晶を成長させる結晶育成用反応容器であって、反応容器の内部空間に位置して、容器内部の防食を意図する露出部位を冷却部材20で隙間を有するように覆い、冷却部材20の少なくとも表面部を耐食性、耐熱性に優れた材質とすることで、冷却部材20に接触する高温の溶媒を部分的に冷却し、よって金属ガスケット12などの腐食を生じやすい露出部位の防食を効果的に行うことで、シール性を損なったり、成分の溶出が生じて結晶品質が低下するのを防止し、良質な結晶育成を可能にする。
【選択図】図1
Description
しかしながら上記の反応雰囲気においては反応容器材料からの腐食による結晶品質の低下が懸念されており反応容器からの腐食を防止する耐食材料の採用または容器構造の最適化が必要である。容器構造部材の材質として、特許文献5に示されるようにタングステンなどはアンモニアに対する耐食性に優れていることが明らかとなっているが、結晶の触媒作用を有するため、容器構造部材に結晶が付着して容器のつまりなどの原因となることが指摘されている。また、特許文献6に示されるようにジルコニウムやチタンもアンモニアに対する優れた耐食性を示すことが知られているが、一方ではアンモニア中の水素と水素化物を形成し、脆化を引き起こすことも公知の事実として知られており、本材質としては適さない。
前記冷却部材は少なくとも前記溶媒に接触する表面部が前記容器本体よりも相対的に耐食性および耐熱性に優れた材質で構成されていることを特徴とする。
前記間隙が2mm未満であると、冷却部材の取り出し、配置が難しくなり、溶媒の対流も損なわれるようになる。また、10mmを越えると、冷却部材による溶媒の冷却効果が十分でなくなる。
なお、凹凸形状は、溶媒を部分的に冷却する側の表面の全面に形成してもよく、また、一部に形成してもよい。また、露出部位を覆う部分では、冷却効果を均等にするように凹凸形状を設けないようにしてもよい。
図5はソルボサーマル法における一般的な結晶製造装置の概略を示すものであり、細部は省略している。
結晶育成用反応容器1は、縦に配置され、高さ方向中央にバッフル板2が配置されて内部空間が上方の結晶成長領域1aと下方の原料充填領域1bに区画されている。結晶成長領域1aに種結晶100が配置され、原料充填領域1bに原料101が配置されて結晶の育成がなされる。
また、結晶育成用反応容器には、導管5が接続され、該導管5にはバルブ6が介設されている。また、導管5には、導管5内の圧力を測定する圧力計7が設けられている。
結晶育成用反応容器1は、熱電対4で温度を測定しつつ電気炉3で加熱する。内部空間は、高温高圧の系として容器の上部と下部とで温度差を設け、この温度差により溶媒への原料の結晶溶解度の差を利用して結晶成長を行うものである。また結晶育成用反応容器1には電気炉3による加熱領域に対して、容器内の熱を外部に逃がすために十分な非加熱部を有している。
結晶育成用反応容器1は、有底筒状の容器本体筒状部10と、容器本体蓋部11とを有しており、容器本体筒状部10の筒部上面部と容器本体蓋部11の縁部下面部との間に金属ガスケット12を介在させて、外周側からクランプ13で固定されている。容器本体筒状部10と容器本体蓋部11とで容器本体が構成される。
容器本体筒状部10および容器本体蓋部11の内面には、下層ライニング14が被覆され、下層ライニング14の上層に上層ライニング15が被覆されている。
下層ライニング14は、ニッケル・クロムまたはニッケル・クロム・モリブデン系合金で構成され、上層ライニング15は、白金、金、タングステン、イリジウム、モリブデンのいずれか、またはこれらを組み合わせた合金などで構成されている。金属ガスケット12は、シール性を考慮して別の材質で構成されている。
まず結晶育成用反応容器1内に図5に示すように育成の元となる種結晶、窒素元素を含有する溶媒、周期表13族金属元素を含む原料物質、および鉱化剤を入れて封止する。これらの材料を反応容器内に導入するのに先だって、反応容器内は脱気しておいてもよい。また、材料の導入時には、窒素ガスなどの不活性ガスを流通させてもよい。
超臨界状態または亜臨界状態にする結晶育成用反応容器1内の温度範囲は、下限値が通常150℃以上、好ましくは200℃以上、特に好ましくは300℃以上であり、上限値が通常800℃以下、好ましくは700℃以下、特に好ましくは600℃以下である。好ましい温度範囲は150〜800℃、より好ましくは200〜700℃、さらに好ましくは300〜600℃である。また、オートクレーブ内の圧力範囲は、下限値が通常20MPa以上、好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上、特に好ましくは80MPa以上であり、上限値が通常500MPa以下、好ましくは400MPa以下、さらに好ましくは300MPa以下、特に好ましくは200MPa以下である。好ましい圧力範囲は、20〜500MPaより好ましくは50〜300MPa、さらに好ましくは80〜200MPaである。この状態で反応容器1を数時間から数百日保持することで結晶育成用反応容器1の下部と上部の温度差により結晶育成用反応容器1内に下部から上部への対流が生じ、下部に配置した原料物質101の溶解と上部の種結晶100からの結晶成長が生じる。結晶育成用反応容器1上部も下部に比べて温度が低いが、上記記載の超臨界、亜臨界状態であり、結晶育成用反応容器1の容器本体筒状部10と容器本体蓋部11とのシール部近傍も同様の状態となっている。
容器本体筒状部10および容器本体蓋部11の内面には、下層ライニング14が被覆され、下層ライニング14の上層に上層ライニング15が被覆されている。
容器本体筒状部10および容器本体蓋部11は、鉄基合金、ニッケル基合金、コバルト基合金のいずれか、またはこれらを組み合わせた合金で構成され、下層ライニング14は、ニッケル・クロムまたはニッケル・クロム・モリブデン系合金で構成され、上層ライニング15は、白金、金、タングステン、イリジウム、モリブデンなどで構成されている。金属ガスケット12は、強度やシール性を考慮してニッケル・クロム系合金またはニッケル・クロム・モリブデン系合金で構成されている。
なお冷却部材20は、容器本体筒状部10の内面に沿った周面形状を有している。
また、冷却部材20の外周面には、下部側に円環状の溝22が軸方向に間隔を置いて複数形成されていて冷却部材20外周面の表面積の拡大が図られている。冷却部材20は、容器本体筒状部10よりも耐食性、耐熱性に優れた材料で構成されており、例えば、上層ライニング15に使用されている材料を使用することができる。すなわち、白金、金、タングステン、イリジウム、モリブデンのいずれか、またはこれらを組み合わせた合金など冷却部材20の材料として使用することができる。
結晶育成用反応容器1内では、結晶成長領域1bで超臨界または亜臨界もしくはこれらが混在し、高温、高圧の状態になる。
冷却部材20は、下面側が結晶成長領域1b側の高温の溶媒に接触するものの、上端側が容器本体蓋部11に伝熱可能に接合されており、外部環境に露出する容器本体蓋部11による冷却効果が得られ、上部側ほど低い温度となる温度分布を有するに至る。これにより冷却部材20に接触する溶媒は、小隙間30、31において冷却部材20によって冷却され、金属ガスケット12の露出部位に接触する溶媒の温度も低下して、金属ガスケット12に対する高温腐食が軽減される。この結果、金属ガスケット12の溶損などが防止され、また、金属ガスケット12の成分が溶出して溶媒に不純物として取り込まれることもなく、良質な結晶成長がなされる。
図3(b)に示す冷却部材210は、全体を有底の円筒形状に形成したものであり、上部に突部210aを有している。円筒形状とすることで、耐食性、耐熱性に優れた材料を使用する際に、その使用量を低減することができる。
図4(a)の冷却部材220には、環状の溝221が外周面に形成されており、溝221は、下端に達している。
図4(b)の冷却部材230には、外周面に穴231が分散して形成されており、穴は軸方向および周方向に一定間隔で整列している。
図4(c)の冷却部材240は、ねじ加工によって外周面に螺条241が形成されている。
図4(d)の冷却部材250は、シボ加工によって外周面に凸部251が分散して形成されている。凸部251は軸方向および周方向に一定間隔で整列されている。
なお、上記の加工方法が例示であり、本発明としては加工方法が限定されるものではなく、凹凸の形状も任意である。
以上、本発明について上記各実施形態に基づいて説明をしたが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
1a 結晶成長領域
1b 原料充填領域
10 容器本体筒状部
11 容器本体蓋部
12 金属ガスケット
14 下層ライニング
15 上層ライニング
20 冷却部材
21 連結部
22 溝
200 冷却部材
201 基部
202 ライニング
210 冷却部材
220 冷却部材
221 溝
230 冷却部材
231 穴
240 冷却部材
241 螺条
250 冷却部材
251 凸部
Claims (19)
- 容器内部で、超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒と原料とを用いて結晶を成長させる結晶育成用反応容器であって、
当該反応容器の内部空間に位置して、前記溶媒を部分的に冷却する冷却部材を有することを特徴とする結晶育成用反応容器。 - 前記冷却部材は、当該容器内部の防食を意図する露出部位に接触する前記溶媒の温度を低下させるものであることを特徴とする請求項1記載の結晶育成用反応容器。
- 前記冷却部材は、前記露出部位と隙間を有して該露出部位を覆うように位置していることを特徴とする請求項2に記載の結晶育成用反応容器。
- 前記冷却部材は、前記露出部分を越えて容器内壁と隙間を有して伸長し、伸長側端部が前記隙間にある溶媒よりも高温側の前記溶媒に接触することを特徴とする請求項3記載の結晶育成用反応容器。
- 前記伸長長さは、前記隙間にある前記溶媒の温度が前記高温側の前記溶媒よりも温度低下して前記露出部分に接触する溶媒の温度が所望の温度域に低下する長さを有していることを特徴とする請求項4記載の結晶育成用反応容器。
- 前記所望の温度域が500℃以下であることを特徴とする請求項5記載の結晶育成用反応容器。
- 前記露出部位は、当該容器の接合部分に設けられた金属ガスケットであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の結晶育成用反応容器。
- 前記金属ガスケットは、当該容器内部壁面の材質と異なる材質からなることを特徴とする請求項7記載の結晶育成用反応容器。
- 内部に空間を有する容器本体と、該容器本体の内部壁面の少なくとも一部に設けられ、前記容器本体よりも相対的に耐食性および耐熱性に優れたライニングとを有し、
前記冷却部材は少なくとも前記溶媒に接触する表面部が前記容器本体よりも相対的に耐食性および耐熱性に優れた材質で構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の結晶育成用反応容器。 - 前記冷却部材は、前記容器本体に伝熱可能に接合または一体化していることを特徴とする請求項9記載の結晶育成用反応容器。
- 前記接合または一体化がされている部分の断面積は、該部分を含む前記冷却部材の平面積よりも小さくなっており、前記接合または一体化がされている部分を除いて、前記容器本体または前記ライニングと隙間を有していることを特徴とする請求項10記載の結晶育成用反応容器。
- 前記容器本体が筒状からなり、前記冷却部材が筒内面に沿った周面形状を有し、周面先端が閉止面になっていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の結晶育成用反応容器。
- 前記容器本体が、蓋部と有底の筒状部とからなり、前記蓋部と前記筒状部との間に金属ガスケットが介設されて前記金属ガスケット内面が前記内部空間に露出しており、前記冷却部材が前記蓋部側に位置して前記金属ガスケット内面を覆っていることを特徴とする請求項12記載の結晶育成用反応容器。
- 前記容器本体内面またはライニング内面と前記冷却部材周面とが、2〜10mmの隙間を有していることを特徴とする請求項12または13に記載の結晶育成用反応容器。
- 前記容器本体が、鉄基合金、ニッケル基合金、コバルト基合金のいずれか、またはこれらを組み合わせた合金であることを特徴とする請求項反9〜14のいずれかに記載の結晶育成用反応容器。
- 前記ライニングが、タングステン、白金、金、イリジウム、モリブデンのいずれか、またはこれらを組み合わせた合金からなることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の結晶育成用反応容器。
- 前記冷却部材の少なくとも前記溶媒に接触する表面部が、タングステン、白金、金、イリジウム、モリブデンのいずれか、またはこれらを組み合わせた合金からなることを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の結晶育成用反応容器。
- 前記冷却部材は、前記溶媒を部分的に冷却する側の表面に、表面積を拡大する凹凸形状を有することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の結晶育成用反応容器。
- 前記凹凸形状は、溝加工、孔加工、ネジ加工、シボ加工のいずれかまたは組み合わせにより加工されたものであることを特徴とする請求項18記載の結晶育成用反応容器。
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