JP2013175704A - 太陽電池用封止膜製造用組成物、その製造方法、及び太陽電池用封止膜 - Google Patents

太陽電池用封止膜製造用組成物、その製造方法、及び太陽電池用封止膜 Download PDF

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Abstract

【課題】エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリエチレン系樹脂を含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、製造時の製膜性等の加工特性に優れた組成物、及びこれを用いた太陽電池用封止膜を提供する。
【解決手段】エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が海相であり、前記ポリエチレンが島相である海島構造を有し、前記ポリエチレンからなる島相の平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)が40μm以下であり、及び/又は前記ポリエチレンからなる島相の平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))が、40以下であることを特徴とする組成物、並びにこれを用いた太陽電池用封止膜。
【選択図】図1

Description

本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜を製造するための組成物に関し、特に、製膜性等の加工特性に優れた組成物に関する。
従来から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう)を主成分として含む組成物からなるシート(EVAシート)は、安価であり、高い透明性を有することから、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜等として利用されている。合わせガラス用中間膜としては、図2に示すように、ガラス板11A及び11Bの間に挟持され、耐貫通性や破損したガラスの飛散防止等の機能を発揮する。太陽電池用封止膜としては、図3に示すように、太陽電池用セル24とガラス基板等からなる表面側透明保護部材21との間、及び太陽電池用セル24と裏面側保護部材(バックカバー)22との間に配置され、絶縁性の確保や機械的耐久性の確保等の機能を発揮する。
近年、耐熱性、耐クリープ性、及び耐水蒸気透過性の向上等の目的で、EVA等のエチレン系共重合体と、ポリエチレン(以下、PEともいう)等のポリオレフィンとを含有する封止膜用組成物又は封止用シートが開発されている(特許文献1、2)。
特開2001−332750号公報 特開2010−059277号公報
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1又は2に記載されたようなEVAとポリエチレンとを混合した組成物は、EVAを主成分とする組成物(EVA組成物)に比べてシート製造時における加工特性が低下する場合がある。
即ち、樹脂組成物をシート状に製膜する場合、例えば、まず一次混練工程により材料を混合し、その後、必要に応じてロール練り等の二次混練を行い、カレンダ成形等により製膜する。この際、一次混練工程後の一次混練工程後の製膜工程等における樹脂組成物の粘度は、製膜性等の加工特性に大きく影響するため、樹脂組成物の粘度を一定の範囲(加工可能粘度範囲ともいう)に調整することが必要になる。樹脂組成物の粘度は、一般に温度に応じて変化するので、粘度の調整は、樹脂組成物の温度を調節することで可能である。
EVA組成物の場合は、加工可能粘度範囲が得られる温度近傍において、温度の変化に伴って緩やかに粘度が変化するため、加工可能粘度範囲が得られる温度範囲の幅(加工可能温度幅ともいう)が大きい。一方、EVAとポリエチレンとを混合した樹脂組成物では、特にポリエチレンの混合比が高い場合に加工可能粘度範囲が得られる温度近傍において、温度の変化に伴って急激に粘度変化が生じ、加工可能温度幅が小さくなる場合がある。
通常、製膜工程等において樹脂組成物の温度を高精度に調節することは困難であるため、樹脂組成物の加工可能温度幅が小さくなると加工し難くなるといった問題が生じる。
更に、EVAとポリエチレンとを混合した樹脂組成物では、EVA組成物と比較して加工可能粘度範囲が得られる温度が高くなる傾向があり、エネルギーコストが上昇する。また、特にポリエチレンの混合比が高い場合には、EVA組成物を加工する既存の製膜装置、例えば、水を温調用溶媒として用いたカレンダ成形装置等では、温調範囲を超えて加工できなくなる恐れもある。
従って、本発明の目的は、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、上述のような加工可能な粘度範囲が得られる温度範囲の幅等における問題が改善され、シート製造時の製膜性等の加工特性に優れた組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記太陽電池用封止膜製造用組成物の製造方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、上記太陽電池用封止膜製造用組成物を用いた太陽電池用封止膜を提供することにある。
上記目的は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が海相であり、前記ポリエチレンが島相である海島構造を有し、前記ポリエチレンからなる島相の平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)が40μm以下であることを特徴とする組成物:
エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が海相であり、前記ポリエチレンが島相である海島構造を有し、前記ポリエチレンからなる島相の平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))が、40以下であることを特徴とする組成物:又は
エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が海相であり、前記ポリエチレンが島相である海島構造を有し、前記ポリエチレンからなる島相の平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)が40μm以下であり、且つ前記ポリエチレンからなる島相の平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))が、40以下であることを特徴とする組成物によって達成される。
これにより、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)とポリエチレン(PE)とが混合された組成物であっても、EVA組成物と同様な範囲の加工可能温度幅が得られ、加工可能粘度範囲が得られる温度についてもEVA組成物に近くなり、加工特性を向上することができる。これは、上記組成物において、EVA成分が海相(連続相)であり、PE成分が島相であることにより、EVAとPEが共連続構造、もしくはEVA成分が島相、PE成分が海相となって混合されている場合に比べてPEの物性が発現し難くなるためと考えられる。また、PEの島相の平均径、及び/又はPEの島相のアスペクト比を上記のようにすることで、組成物の加工特性を向上させることができ、PEの配合比を高くすることができる。
本発明の太陽電池用封止膜製造用組成物の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と前記ポリエチレン(PE)の体積比(EVA:PE)が、90:10〜30:70の範囲である。この範囲の配合比であれば、PEを配合することによる耐熱性等の向上効果が得られ、上記の海島構造を有することによる加工特性に優れた組成物とすることができる。
(2)前記海島構造が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及び前記ポリエチレン(PE)が、EVAの粘度VEVA[Pa・s]に対して、PEの粘度VPE[Pa・s]が0.1〜20倍となる条件下で混練されて得られる。これにより、更にPEの配合比が高い、海島構造を有する組成物とすることができる。
(3)前記海島構造が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体及び前記ポリエチレンが、せん断速度10〜1500s-1の条件で混練されて得られる。
(4)組成物の粘度が30000Pa・sとなる温度が、70〜100℃であり、且つ組成物の粘度が20000〜50000Pa・sとなる温度範囲の幅が5.0℃以上である。
(5)前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1種以上のポリエチレンからなる。これらのポリエチレンは比較的低融点で、結晶化度が低い点で好ましい。
(6)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のJIS K7210で規定されるメルトフローレートが、1.0〜50g/10分である。
(7)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が、20〜40質量%である。
また、本発明の目的は、本発明の太陽電池用封止膜製造用組成物の製造方法であって、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及び前記ポリエチレン(PE)を、EVAの粘度VEVA[Pa・s]に対するPEの粘度VPE[Pa・s]が0.1〜20倍となる条件下で混練する混練工程を含むことを特徴とする製造方法によって達成される。
本発明の製造方法は、前記混練工程が、せん断速度10〜1500s-1の条件で混練する工程であることが好ましい。また、前記混練工程が、70〜130℃の温度条件で混練する工程であることが好ましい。
更に、本発明の目的は、本発明の組成物をシート状に製膜したことを特徴とする太陽電池用封止膜によって達成される。本発明の太陽電池用封止膜は、本発明の組成物を用いて製造されているので、PEを含むことにより、耐熱性等が付与され、且つEVA組成物と同様な条件で得られるため、高品質且つ低コストの太陽電池用封止膜である。
本発明によれば、EVAにPEを配合することにより耐熱性等が向上された太陽電池用封止膜を製造するための組成物において、EVA組成物と同様な範囲の加工可能温度幅を有する等、加工特性に優れた組成物を得ることができる。従って、本発明の組成物は、EVA組成物と同様な条件で太陽電池用封止膜を製造することができ、これにより得られた太陽電池用封止膜は、高品質且つ低コストであるといえる。
本発明の太陽電池用封止膜製造用組成物の海島構造を説明するための概略断面図である。 一般的な合わせガラスの概略断面図である 一般的な太陽電池の概略断面図である。
以下に、本発明の太陽電池用封止膜製造用組成物について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の太陽電池用封止膜製造用組成物の海島構造を説明するための概略断面図であり、図1(a)は、EVAとPEとが共連続構造である状態を示し、図1(b)は、EVAが海相(連続相)であり、PEが島相である海島構造である状態を示す。
EVAとPEを混合した樹脂組成物においては、混合比にもよるが、一般に、図1(a)のようなEVA成分とPE成分とが共連続構造を有している。本発明の太陽電池用封止膜製造用組成物は、EVA及びPEを含み、且つ図1(b)で示すように、EVA成分が海相であり、PE成分が島相である海島構造を有していることを特徴とする。
樹脂組成物を用いて太陽電池用封止膜を製造する場合、例えば、上述のように、まず2軸混練機等を用いて、各材料を混合する一次混練工程を行い、次いで、必要に応じてロール練り等の二次混練を行い、カレンダ成形や押し出し成形等により製膜する。この際、一次混練工程後の製膜工程等における樹脂組成物の粘度は、製膜性等の加工特性に大きく影響するため、樹脂組成物の粘度を一定の範囲(加工可能粘度範囲)に調整することが必要になる。例えばEVA組成物を用いて、カレンダ成形等において良好な製膜性を得るためには、製膜工程における樹脂組成物の粘度は、5000〜100000Pa・sが好ましく、20000〜50000Pa・sが更に好ましい。
樹脂組成物の粘度は、一般に温度に応じて変化するので、粘度の調整は樹脂組成物の温度を調節することで行うことができる。温度変化に伴う粘度の変化は、樹脂組成物によって異なるため、加工可能粘度範囲が得られる温度範囲の幅(加工可能温度幅)は、樹脂組成物によって異なる。通常、製膜工程等において樹脂組成物の温度を高精度に調節することは困難で、加工し難くなるため、樹脂組成物の加工可能温度幅は大きい方が好ましく、一般に、5℃以上が好ましい。また、加工可能粘度範囲が得られる温度についても、高温になるとエネルギーコストが上昇する上、例えば、水を温調用溶媒に用いたカレンダ成形装置等の製膜装置を用いる場合は、温調範囲を超えて加工できなくなる恐れがある。従って、加工可能粘度範囲が得られる温度は、95℃以下が好ましい。
EVA組成物の場合は、上記の加工可能粘度範囲が得られる温度近傍において、温度の変化に伴って緩やかに粘度が変化するため、5℃以上の加工可能温度幅が得られ、加工可能粘度範囲が得られる温度は90℃以下である。
一方、EVAとPEとを混合した樹脂組成物においては、後述の実施例で述べるように、樹脂組成物の状態が、図1(a)に示したようなEVA成分とPE成分が共連続構造を有する一般的な混合組成物の場合は、加工可能粘度範囲が得られる温度近傍において、温度の変化に伴って急激に粘度変化が生じるため、加工可能温度幅が小さくなり、更に加工可能粘度範囲が得られる温度も95℃を超える場合がある。これに対し、EVAとPEの配合比が同一であっても、樹脂組成物の状態が、図1(b)に示したようなEVA成分が海相であり、PE成分が島相である海島構造を有する本発明の組成物の場合は、EVA組成物と同様な範囲の加工可能温度幅が得られ、加工可能粘度範囲が得られる温度についてもEVA組成物に近づけることができ、加工特性を向上させることができる。これは、EVA成分が海相であり、PE成分が島相であることにより、EVAとPEが共連続構造、もしくはEVA成分が島相、PE成分が海相となってとなって混合されている場合に比べてPEの物性が発現し難くなるためと考えられる。
本発明の組成物において、EVAとPEの配合比は、特に制限はないが、PEを配合することによる耐熱性、耐クリープ性、耐水蒸気透過性の向上等の効果が十分に得られ、且つ上記の海島構造が十分に得られ、加工特性に優れた組成物とするためには、EVAとPEの体積比(EVA:PE)は、90:10〜30:70の範囲が好ましい。本発明の効果は、特にPEの配合比が高い場合に発揮されるのでEVA:PEは、60:40〜30:70が更に好ましく、50:50〜30:70が特に好ましい。
本発明の組成物において、上述海島構造はどのような条件で得られたものでも良い。よりPEの配合比が高い組成物の場合は、海島構造が形成され難いので、混練条件を調整することが好ましい。例えば、EVA及びPEを混練する際に、EVAの粘度VEVA[Pa・s]に対してPEの粘度VPE[Pa・s]が0.1〜20倍となる条件下で混練されて得られることが好ましい。この条件でEVA及びPEを混練した場合、よりPEの配合比が高い、海島構造を有する組成物とすることができる。特にPEの配合比がEVAの配合比より高い組成物の場合、上記混練条件において、EVAの粘度VEVA[Pa・s]に対するPEの粘度VPE[Pa・s]は、更に1倍より大きく20倍以下が好ましく、更に2〜15倍が好ましく、特に4〜13倍が好ましい。これにより、PE成分よりEVA成分がよく流れることになるため、少ないEVA配合量でも良く流れてEVAのみが連続相を形成しやすくなる。これにより更にPEの配合比が高い海島構造を有する組成物とすることができる。
また、上記の条件において、EVAの粘度VEVAは、1000〜50000Pa・sが好ましく、更に2000〜20000Pa・sが好ましい。一方、PEの粘度VPEは、20000〜120000Pa・sが好ましく、更に30000〜50000Pa・sが好ましい。これらの樹脂の粘度は、例えば、キャピラリーレオメータ-を用い、せん断速度6.1s−1、温度は実際の加工温度にて測定することができる。この粘度から上記の粘度比が算出できる。
また、上記海島構造を形成する条件として、EVA及びPEを混練する際のせん断速度は、10〜1500s-1が好ましい。これにより、PEの島相を更に密に形成することができ、更にPEの配合比が高い、海島構造を有する組成物とすることができる。上記混練条件において、せん断速度は、更に100〜1000s-1が好ましく、特に200〜800s-1が好ましい。
本発明の組成物は、太陽電池用封止膜の製造における製膜工程に使用される段階で効果を発揮するので、組成物の粘度が30000Pa・sとなる温度(本発明の組成物における中心加工可能温度)が70〜100℃であることが好ましく、更に80〜95℃が好ましい。また、組成物の粘度が20000〜50000Pa・sとなる温度範囲の幅(本発明の組成物の加工可能温度幅)は、5.0℃以上であることが好ましい。
これらの樹脂組成物の粘度及び温度の関係は、例えば、キャピラリーレオメータ-を用い、せん断速度6.1s−1のもと、温度を昇温させて粘度を測定することにより求めることができる。
本発明の組成物において、海島構造を構成するPEからなる島相の形態(形状、大きさ等)については上述の規定を有していれば、特に制限はない。島相の形状は、例えば、断面形状として、円形、楕円形、矩形等の多角形、角丸矩形等の角丸多角形、又はこれらが組み合わさった形状等が挙げられる。島相の大きさについては、例えば、図1(b)においては、断面形状を円形又は楕円形として示しているが、本発明の一実施形態として、島相の平均長径(l)と平均短径(d)の平均値を平均径とした場合、PEからなる島相の平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)が40μm以下である。これにより更に樹脂組成物の加工特性を向上させることができる。また、島相を密にすることにより、更にPEの配合比を高くすることができる。島相の平均径は、2〜30μmが更に好ましく、5〜25μmが特に好ましい。島相の大きさは、大き過ぎると共連続構造に近い性質が生じる恐れがあり、小さ過ぎると、粘度が高くなる恐れがある。
なお、島相の平均径は、島相の断面形状が多角形や角丸多角形等の場合は、長手方向の最大距離を長径とし、幅方向の最大距離を短径として平均長径(l)及び平均短径(d)を算出する。
また、本発明の一実施形態として、PEからなる島相の平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))は大き過ぎると、島相の合一により共連続構造を形成しやすくなるため、40以下である。これにより、更にPEの配合比を高くすることができる。島相の平均アスペクト比は、1〜30が更に好ましく、1〜10が特に好ましい。
これらの数値は、例えば、樹脂組成物の断面(ミクロトームを用いた断面出しによる)を光学顕微鏡、又は透過型電子顕微鏡で1000倍等に拡大した写真、あるいは樹脂組成物の断面をAFM(原子間力顕微鏡)により弾性率マッピングした写真から、任意にサンプリングした部分における島相について測定して算出することができる。
[ポリエチレン]
本発明において、ポリエチレン(PE)は、JISに規定される通り、エチレンを主体とする重合体であり、エチレンの単独重合体、エチレンと5モル%以下の炭素数3以上のα−オレフィン例えばブテン−1、ヘキセン−1、4―メチルペンテン−1、オクテン−1等との共重合体、エチレンと官能基に炭素、酸素、および水素だけを有する1モル%以下の非オレフィン単量体との共重合体を含む(JISK6922−1:1997附属書参照)。PEは一般に、その密度によって分類され、高密度ポリエチレン(HDPE(又はPE−HD))、低密度ポリエチレン(LDPE(又はPE−LD))、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE(又はPE−LLD)等が挙げられる。PEとしてはどのようなものでも良いが、比較的融点が低く、結晶化度が低い、低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1種以上のポリエチレンからなることが好ましい。
LDPEは、一般に、100〜350MPaの高圧下で有機過酸化物等のラジカル発生剤の存在下でエチレンを重合して得られる長鎖分岐を有するもので、その密度は、一般に、0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満である。LLDPEは、一般に、チーグラー型触媒、フィリップス触媒、メタロセン型触媒等の遷移金属触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンとを共重合して得られるもので、その密度(JIS K 7112に準ずる。以下同じ)は、一般に0.910〜0.940g/cm3、好ましくは0.910〜0.930g/cm3である。これらは、市販のものを適宜用いることができる。
また、本発明において、PEは2種以上が混合されていることが好ましい。特に1種以上のLDPE、及び1種以上のLLDPEが混合されていることが好ましい。LLDPEを配合することで、引張強度に優れた組成物を得ることができるが、一方でLLDPEは、LDPEと比較して融点が高い傾向にある。このため、LDPEも併用することで、引張強度に優れ、且つ比較的低融点とすることができ、組成物の中心加工可能温度を低く保つことができる。
[エチレン−酢酸ビニル共重合体]
本発明において、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)における酢酸ビニルの含有率は、通常、EVAの質量に対して20〜45質量%である。EVAの酢酸ビニル単位の含有量が低い程、得られる組成物が硬くなる傾向がある。酢酸ビニルの含有量が20質量%未満では、本発明の組成物を用いて得られる太陽電池用封止膜を高温で架橋硬化させた場合に、架橋硬化後のシートの透明性が充分でないおそれがある。また、45質量%を超えると、得られる架橋硬化後のシートの硬さが不十分となる場合があり、更にカルボン酸、アルコール、アミン等が発生し積層体における他の部材等との界面で発泡が生じ易くなるおそれがある。
本発明において、架橋硬化後のシートに適度な柔軟性を付与するためには、EVAにおける酢酸ビニルの含有率は、20〜40質量%が好ましく、更に22〜35質量%が好ましい。
また、EVAのメルトフローレート(MFR)(JIS−K7210に従う)は、1.0g/10分以上が好ましい。MFRは、1.0〜50.0g/10分が更に好ましく、特に4.0〜30.0g/10分が好ましい。なお、MFRは、190℃、荷重21.18Nの条件で測定されたものである。
本発明の太陽電池用封止膜の組成物においては、EVAに加えて、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カルボン酸共重合体及びそのカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなエチレン−ビニルエステル共重合体等のエチレン−極性モノマー共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVB)、及び塩化ビニル樹脂を副次的に使用しても良い。
本発明の組成物は、EVA及びPEに加えて、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、接着向上剤、可塑剤等を添加することができる。
[架橋剤]
架橋剤は、EVAの架橋構造を形成することができるもので、本発明の組成物を用いて得られる太陽電池用封止膜の強度、接着性及び耐久性を向上することができる。架橋剤は、有機過酸化物又は光重合開始剤を用いることが好ましい。なかでも、接着力、透明性、耐湿性、耐貫通性の温度依存性が改善された太陽電池用封止膜が得られることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
前記有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサン、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、調製条件、成膜温度、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して適宜選択できる。使用可能なベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機過酸化物として、特に、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートが好ましい。これにより優れた絶縁性を有する太陽電池用封止膜が得られる。
前記有機過酸化物の含有量は特に制限はないが、EVA及びPEの混合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜3質量部であることが好ましい。
また、光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタ−ルなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、メチルフェニルグリオキシレ−トなどが使用できる。好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のような安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種単独または2種以上の混合で使用することができる。
前記光重合開始剤の含有量は、EVA及びPEの混合物100質量部に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましい。
[架橋助剤]
架橋助剤は、EVAのゲル分率を向上させ、本発明の組成物を用いて得られる太陽電池用封止膜の接着性及び耐久性を向上させることができる。
前記架橋助剤の含有量は、EVA及びPEの混合物100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2.5質量部で使用される。これにより、更に接着性に優れる太陽電池用封止膜が得られる。
前記架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
[接着向上剤]
接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。これにより、得られる太陽電池用封止膜の接着力を、更に向上させることができる。前記シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
前記シランカップリング剤の含有量はEVA及びPEの混合物100質量部に対して0.1〜0.7質量部、特に0.3〜0.65質量部であることが好ましい。
[その他]
可塑剤としては、トリスイソデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等のホスファイトやリン酸エステル等のリン含有化合物、アジピン酸エーテルエステル、トリメリテートn−オクチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジヘキシル、セバシン酸ジブチル等の多塩基酸のエステル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジソブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネート等の多価アルコールのエステル、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等が使用できる。
また、本発明における組成物は、得られる太陽電池用封止膜の用途により、上記の材料の他の添加剤を使用しても良い。例えば、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜として使用する場合、種々の物性(機械的強度、接着性、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、エポキシ基含有化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、及び/又は老化防止剤などの各種添加剤を添加してもよい。
[太陽電池用封止膜製造用組成物の製造方法]
本発明の太陽電池用封止膜製造用組成物の製造方法は、上述の海島構造が形成される条件であれば、特に制限はない。特にPEの配合比が高い組成物の場合は、海島構造が形成され難いので、上述の海島構造を形成する混練条件を含むことが好ましい。即ち、EVA及びPEを、EVAの粘度VEVA[Pa・s]に対して、PEの粘度VPE[Pa・s]が0.1〜20倍となる条件下、特にPEの配合比がEVAの配合比より高い組成物の場合、好ましくは1倍より大きく20倍以下、更に好ましくは2〜15倍、特に好ましくは4〜13倍となる条件下で混練する混練工程を含むことが好ましく、更に混練工程が、せん断速度10〜1500s-1、更に好ましくは100〜1000s−1、特に好ましくは200〜800s−1の条件で混練する工程であることが好ましい。
混練工程の温度条件は、EVA及びPEの種類によって適宜調整することができる。組成物に架橋剤を含有させた場合は、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。温度条件は70〜130℃が好ましく、更に80〜120℃が好ましい。
混練工程は、どのような装置で行っても良い。例えば、EVA及びPE、並びに必要に応じて上記の各材料をスーパーミキサー(高速流動混合機)、二軸混練機、遊星歯車式混練機、単軸押出機等に投入し、好ましくは上記の条件下で混練する。
本発明の組成物は、通常、太陽電池用封止膜の製造工程において、中間体として製造され、その後、製膜工程(必要に応じて、二次混練を含む)に用いられるものであるが、本発明の組成物の製造工程とその後の製膜工程は、時間的、空間的に連続した工程である必要はない。エネルギーコスト的及び品質的には本発明の組成物を製造し、連続して製膜工程に用いられることが好ましい。
[太陽電池用封止膜]
本発明の太陽電池用封止膜は、本発明の太陽電池用封止膜製造用組成物をシート状に製膜することで得られるものである。本発明の太陽電池用封止膜は、本発明の組成物を、必要に応じてロール練り等の二次混練を行った後、通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法により製造することができる。製膜時の加熱温度は、特に架橋剤を配合する場合、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、50〜90℃、特に40〜80℃とするのが好ましい。太陽電池用封止膜の厚さは、特に制限されず、用途によって適宜設定することができる。一般に、50μm〜2mmの範囲である。
本発明の太陽電池用封止膜は、本発明の組成物を用いて製造されているので、PEを含むことにより、耐熱性等が付与され、且つEVA組成物と同様な条件で得られるため、高品質且つ低コストの太陽電池用封止膜である。
[太陽電池]
太陽電池は、通常、表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に、本発明の太陽電池用封止膜を介在させて架橋一体化させることにより太陽電池用セルを封止させて製造する。太陽電池用セルを十分に封止するには、表面側透明保護部材、表面側封止膜、太陽電池用セル、裏面側封止膜及び裏面側保護部材をその順で積層し、積層体を減圧下で予備圧着し、各層の残存する空気を脱気した後、加熱加圧して封止膜を架橋硬化させればよい。なお、本発明において、太陽電池用セルの光が照射される側(受光面側)を「表面側」と称し、太陽電池用セルの受光面とは反対面側を「裏面側」と称する。
太陽電池の製造は、例えば、図2に示すように表面側透明保護部材21、表面側封止膜23A、太陽電池用セル24、裏面側封止膜23B及び裏面側保護部材22を積層し、加熱加圧など常法に従って、封止膜23A及び23Bを架橋硬化させればよい。前記加熱加圧するには、例えば、前記積層体を、真空ラミネータで温度135〜180℃、さらに140〜180℃、特に155〜180℃、脱気時間0.1〜5分、プレス圧力0.1〜1.5kg/cm2、プレス時間5〜15分で加熱圧着すればよい。この加熱加圧時に、表面側封止膜23Aおよび裏面側封止膜23Bに含まれるEVAを架橋させることにより、表面側封止膜23Aおよび裏面側封止膜23Bを介して、表面側透明保護部材21、裏面側保護部材22、および太陽電池用セル24を一体化させて、太陽電池用セル24を封止することができる。
なお、本発明の太陽電池用封止膜は、図3に示したような単結晶又は多結晶のシリコン結晶系の太陽電池セルを用いた太陽電池だけでなく、薄膜シリコン系、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池、セレン化銅インジウム(CIS)系太陽電池等の薄膜太陽電池の封止膜にも使用することもできる。この場合は、例えば、ガラス基板、ポリイミド基板、フッ素樹脂系透明基板等の表面側透明保護部材の表面上に化学気相蒸着法等により形成された薄膜太陽電池素子層上に、裏面側封止膜、裏面側保護部材を積層し、接着一体化させた構造、裏面側保護部材の表面上に形成された太陽電池素子上に、表面側封止膜、表面側透明保護部材を積層し、接着一体化させた構造、又は表面側透明保護部材、表面側封止膜、薄膜太陽電池素子、裏面側封止膜、及び裏面側保護部材をこの順で積層し、接着一体化させた構造等が挙げられる。
本発明で使用される前記表面側透明保護部材21は、通常珪酸塩ガラスなどのガラス基板であるのがよい。ガラス基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板は、一般に、化学的に、或いは熱的に強化させたものであってもよい。
本発明で使用される前記裏面側保護部材22は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックフィルムが好ましく用いられる。また、耐熱性、耐湿熱性を考慮してフッ化ポリエチレンフィルム、特にフッ化ポリエチレンフィルム/Al/フッ化ポリエチレンフィルムをこの順で積層させたフィルムでも良い。
以下、本発明を実施例により説明する。
(実施例1〜16、比較例1〜5)
表1及び2に示す物性のEVA及びPEを各配合量、混練条件で混練し、EVA及びPE混合組成物を調製した。各組成物におけるEVAの粘度に対する及びPEの粘度(PE粘度/EVA粘度)は、キャピログラフ(東洋精機社製)を用い、せん断速度6.1s−1、温度は混練温度となる120℃で各樹脂の粘度を測定し、算出した。
得られた各樹脂組成物について、キャピログラフ(東洋精機社製)を用い、せん断速度6.1s−1のもと温度を昇温させて粘度を測定した。組成物の粘度が20000〜50000Pa・sとなる温度範囲の幅を加工可能温度幅とし、粘度が30000Pa・sとなる温度を中心加工可能温度として求めた。
合否判定として、加工可能温度幅は、5℃以上の場合を○、5℃未満の場合を×とし、中心加工可能温度は、70℃以上95℃以下の場合を○、95℃より高く100℃以下の場合を△、100℃より高い場合を×とした。
更に、各組成物について、ミクロトーム(leica社製)を用いて断面出しを行い、その断面をAFM(原子間力顕微鏡)(東陽テクニカ社製)にて弾性率マッピングし、EVA及びPEの海島構造を観察した。EVAが海相(連続相)となり、PEが島相となっている場合を○とし、EVA、PEが共に連続相化している場合を△とし、PEが連続相化し、EVAが島相となっている場合を×とした。
また、PEの島相が認められたものについて、二値化画像処理(解像度の観点から、長径が1.2μm以下となる島相はノイズと判断し、除外して算出)を行い、AFM(原子間力顕微鏡)画像の場合は2500μm、光学顕微鏡画像の場合は4900μm中に存在する島相の長径及び短径を測定し、その平均値から平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)、及び平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))を求めた。
(評価結果)
評価結果を表1及び2に示す。
Figure 2013175704
Figure 2013175704
表1及び表2に示したように、EVAが海相であり、PEが島相である海島構造を有する実施例1〜14の組成物は、加工可能温度幅が5℃以上で、中心加工可能温度が95℃以下であり、シート製造時の製膜性等の加工特性に優れた組成物であることが認められた。これらの実施例のPEの島相の平均径は40μm以下であり、平均アスペクト比は40以下であった。実施例15、16は上記の海島構造が認められたが、実施例15のPEの島相の平均径は40μmより大きく、実施例16のPEの島相の平均アスペクト比は40より大きかった。このような組成物の場合、加工可能温度幅が他の実施例に比較して小さく、中心加工可能温度も95より高く100℃以下であり、やや加工し難い組成物であった。これは、島相の平均径が大き過ぎたり、平均アスペクト比が大き過ぎると、共連続構造に近い性質を示すためと考えられた。
混練条件としては、実施例1、2、4、7、9、11〜14のようにPEの配合比がEVAの配合比より低い組成物の場合は、PE/EVAの粘度比が0.1以上で、せん断速度が100s-1以上であれば、粘度比に係らず上記の海島構造が得られた。なお実施例15、16のようにPE/EVA粘度比が0.1未満、及び/又はせん断速度が100s-1未満の場合は、上記の海島構造が得られても、上述のように島相の平均径や平均アスペクト比が大きくなり過ぎる傾向がある。
それに対し、実施例3、5、6、8、10のように、PEの配合比がEVAの配合比より高い組成物の場合は、PE/EVAの粘度比が1倍より大きければ、高いせん断速度を与えることで、上記の海島構造が得られた。これは、高いせん断速度下において、EVAの方が流れやすくなり、EVAの配合比が低くても連続相を形成し易くなるためと考えられた。
一方、比較例1〜4のようにPE/EVAの粘度比が0.1未満と低い場合は、高いせん断速度であっても上記の海島構造は得られない場合があり、比較例5のようにPE/EVAの粘度比が11と十分高い場合でも、せん断速度が10s−1と低い場合には、上記の海島構造が得られなかった。このように十分な海島構造を有さない組成物は加工可能温度幅が5℃未満と小さく、中心加工可能温度も100℃より高く、加工し難い組成物であった。
また、LLDPEのみを使用した実施例4に対し、実施例1のようにLDPEも併用することで、より中心加工可能温度を低下させることが可能であることがわかる。
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
本発明により、高品質且つ低コストの太陽電池を提供することができる。
11A、11B 透明基板
12 中間膜
21 表面側透明保護部材
22 裏面側保護部材
23A 表面側封止膜
23B 裏面側封止膜
24 太陽電池用セル
上記目的は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が海相であり、前記ポリエチレンが島相である海島構造を有し、前記ポリエチレンからなる島相の平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)が40μm以下であり前記ポリエチレンからなる島相の平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))が、40以下であり、且つ前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と前記ポリエチレン(PE)の体積比(EVA:PE)が、65:35〜30:70の範囲であることを特徴とする組成物によって達成される。この範囲の配合比であれば、PEを配合することによる耐熱性等の向上効果が得られ、上記の海島構造を有することによる加工特性に優れた組成物とすることができる。
)前記海島構造が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及び前記ポリエチレン(PE)が、EVAの粘度VEVA[Pa・s]に対して、PEの粘度VPE[Pa・s]が0.1〜20倍となる条件下で混練されて得られる。これにより、更にPEの配合比が高い、海島構造を有する組成物とすることができる。
)前記海島構造が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体及び前記ポリエチレンが、せん断速度10〜1500s-1の条件で混練されて得られる。
)組成物の粘度が30000Pa・sとなる温度が、70〜100℃であり、且つ組成物の粘度が20000〜50000Pa・sとなる温度範囲の幅が5.0℃以上である。
)前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1種以上のポリエチレンからなる。これらのポリエチレンは比較的低融点で、結晶化度が低い点で好ましい。
)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のJIS K7210で規定されるメルトフローレートが、1.0〜50g/10分である。
)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が、20〜40質量%である。
本発明の組成物において、EVAとPEの配合比は、PEを配合することによる耐熱性、耐クリープ性、耐水蒸気透過性の向上等の効果が十分に得られ、且つ上記の海島構造が十分に得られ、加工特性に優れた組成物とするために、EVAとPEの体積比(EVA:PE)は、65:35〜30:70の範囲である。本発明の効果は、特にPEの配合比が高い場合に発揮されるのでEVA:PEは、60:40〜30:70が更に好ましく、50:50〜30:70が特に好ましい。
本発明の組成物において、海島構造を構成するPEからなる島相の形態(形状、大きさ等)については上述の規定を有していれば、特に制限はない。島相の形状は、例えば、断面形状として、円形、楕円形、矩形等の多角形、角丸矩形等の角丸多角形、又はこれらが組み合わさった形状等が挙げられる。島相の大きさについては、例えば、図1(b)においては、断面形状を円形又は楕円形として示しているが、本発明において、島相の平均長径(l)と平均短径(d)の平均値を平均径とした場合、PEからなる島相の平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)が40μm以下である。これにより更に樹脂組成物の加工特性を向上させることができる。また、島相を密にすることにより、更にPEの配合比を高くすることができる。島相の平均径は、2〜30μmが更に好ましく、5〜25μmが特に好ましい。島相の大きさは、大き過ぎると共連続構造に近い性質が生じる恐れがあり、小さ過ぎると、粘度が高くなる恐れがある。
また、本発明において、PEからなる島相の平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))は大き過ぎると、島相の合一により共連続構造を形成しやすくなるため、40以下である。これにより、更にPEの配合比を高くすることができる。島相の平均アスペクト比は、1〜30が更に好ましく、1〜10が特に好ましい。
(実施例1〜14、比較例1〜
表1及び2に示す物性のEVA及びPEを各配合量、混練条件で混練し、EVA及びPE混合組成物を調製した。各組成物におけるEVAの粘度に対する及びPEの粘度(PE粘度/EVA粘度)は、キャピログラフ(東洋精機社製)を用い、せん断速度6.1s−1、温度は混練温度となる120℃で各樹脂の粘度を測定し、算出した。
Figure 2013175704
表1及び表2に示したように、EVAが海相であり、PEが島相である海島構造を有する実施例1〜14の組成物は、加工可能温度幅が5℃以上で、中心加工可能温度が95℃以下であり、シート製造時の製膜性等の加工特性に優れた組成物であることが認められた。これらの実施例のPEの島相の平均径は40μm以下であり、平均アスペクト比は40以下であった。比較例6、7は上記の海島構造が認められたが、比較例6のPEの島相の平均径は40μmより大きく、比較例7のPEの島相の平均アスペクト比は40より大きかった。このような組成物の場合、加工可能温度幅が実施例に比較して小さく、中心加工可能温度も95より高く100℃以下であり、やや加工し難い組成物であった。これは、島相の平均径が大き過ぎたり、平均アスペクト比が大き過ぎると、共連続構造に近い性質を示すためと考えられた。
混練条件としては、実施例1、2、4、7、9、11〜14のようにPEの配合比がEVAの配合比より低い組成物の場合は、PE/EVAの粘度比が0.1以上で、せん断速度が100s-1以上であれば、粘度比に係らず上記の海島構造が得られた。なお比較例6、7のようにPE/EVA粘度比が0.1未満、及び/又はせん断速度が100s-1未満の場合は、上記の海島構造が得られても、上述のように島相の平均径や平均アスペクト比が大きくなり過ぎる傾向がある。

Claims (14)

  1. エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、
    前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が海相であり、前記ポリエチレンが島相である海島構造を有し、
    前記ポリエチレンからなる島相の平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)が40μm以下であることを特徴とする組成物。
  2. エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、
    前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が海相であり、前記ポリエチレンが島相である海島構造を有し、
    前記ポリエチレンからなる島相の平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))が、40以下であることを特徴とする組成物。
  3. エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンを含む太陽電池用封止膜製造用組成物であって、
    前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が海相であり、前記ポリエチレンが島相である海島構造を有し、
    前記ポリエチレンからなる島相の平均径((平均長径(l)+平均短径(d))/2)が40μm以下であり、且つ
    前記ポリエチレンからなる島相の平均アスペクト比(平均長径(l)/平均短径(d))が、40以下であることを特徴とする組成物。
  4. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と前記ポリエチレン(PE)の体積比(EVA:PE)が、90:10〜30:70の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記海島構造が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及び前記ポリエチレン(PE)が、EVAの粘度VEVA[Pa・s]に対して、PEの粘度VPE[Pa・s]が 0.1〜20倍となる条件下で混練されて得られる請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 前記海島構造が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体及び前記ポリエチレンが、せん断速度10〜1500s-1の条件で混練されて得られる請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 組成物の粘度が30000Pa・sとなる温度が、70〜100℃であり、且つ組成物の粘度が20000〜50000Pa・sとなる温度範囲の幅が5.0℃以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1種以上のポリエチレンからなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のJIS K7210で規定されるメルトフローレートが、1.0〜50.0g/10分である請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が、20〜40質量%である請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池用封止膜製造用組成物の製造方法であって、
    前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及び前記ポリエチレン(PE)を、EVAの粘度VEVA[Pa・s]に対するPEの粘度VPE[Pa・s]が0.1〜20倍となる条件下で混練する混練工程を含むことを特徴とする製造方法。
  12. 前記混練工程が、せん断速度10〜1500s-1の条件で混練する工程である請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記混練工程が、70〜130℃の温度条件で混練する工程である請求項11又は12に記載の製造方法。
  14. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物をシート状に製膜したことを特徴とする太陽電池用封止膜。
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