JP2013173846A - 樹脂組成物および樹脂成形体 - Google Patents

樹脂組成物および樹脂成形体 Download PDF

Info

Publication number
JP2013173846A
JP2013173846A JP2012039063A JP2012039063A JP2013173846A JP 2013173846 A JP2013173846 A JP 2013173846A JP 2012039063 A JP2012039063 A JP 2012039063A JP 2012039063 A JP2012039063 A JP 2012039063A JP 2013173846 A JP2013173846 A JP 2013173846A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
cellulose
group
temperature
resin composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012039063A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5915252B2 (ja
Inventor
Masato Mikami
正人 三上
Manabu Kawashima
学 川島
Kazuya Yamai
和也 山井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Xerox Co Ltd filed Critical Fuji Xerox Co Ltd
Priority to JP2012039063A priority Critical patent/JP5915252B2/ja
Publication of JP2013173846A publication Critical patent/JP2013173846A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5915252B2 publication Critical patent/JP5915252B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】難燃性に優れた樹脂成形体を形成し得る樹脂組成物の提供。
【解決手段】周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含む樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物および樹脂成形体に関する。
従来、樹脂組成物としては種々のものが提供され、各種用途に使用されている。特に家電製品や自動車の各種部品、筐体等に使用されたり、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品にも熱可塑性樹脂が使用されている。
近年地球規模での環境問題に対して、植物由来の樹脂の利用は、温室効果ガス排出量の低減し得る材料として大きな期待が寄せられている。従来から知られている植物由来の樹脂の一つに、セルロースがある。セルロースは、従来、塗料としての用途や、繊維としての用途では広く利用されているが、セルロースの樹脂成形体への利用に際しては、まだ用いられている例は少ない。
例えば、特許文献1には、(A)スチレン系樹脂20重量%以上97重量%以下、および(B)セルロース系物質80重量%以下3重量%以上〔ただし、(A)+(B)=100重量%〕を、剪断速度100(s−1)以上1,500(s−1)以下の混練り条件で溶融混練りする方法が開示されている。
特許文献2には、攪拌手段として回転羽根を有するミキサー中にセルロース繊維集合体を入れ、高速攪拌することにより、前記セルロース繊維集合体を解繊するとき、前記セルロース繊維集合体として棒状のパルプシートを用い、ミキサーの羽根とのなす角度が45°以上90°以下の範囲になるようにして、前記棒状のパルプシートと前記羽根を接触させて解繊する工程、前記ミキサー内に熱可塑性樹脂を入れた後に攪拌することで、発生した摩擦熱により前記熱可塑性樹脂を溶融させて、解繊されたセルロース繊維に前記熱可塑性樹脂が付着した混合物を得る工程、前記混合物を冷却しながら低速攪拌する工程を有するセルロース繊維含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法が開示されている。
特許文献3には、セルロース繊維集合体を解繊機により解繊して、綿状のセルロース繊維を得る工程、攪拌手段として回転羽根を有するミキサーに、前記綿状のセルロース繊維と熱可塑性樹脂を入れて攪拌し、発生した摩擦熱により前記熱可塑性樹脂を溶融させて、セルロース繊維に前記熱可塑性樹脂が付着した混合物を得る工程、前記混合物を冷却しながら攪拌する工程を有するセルロース繊維含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法が開示されている。
特許文献4には、セルロース繊維集合体と熱可塑性樹脂から、解繊されたセルロース繊維に熱可塑性樹脂が付着した混合物を得る工程、前記混合物を押出成形機にて溶融混練した後、60メッシュ以上200メッシュ以下(JIS Z8801及びISO 3310)のメッシュ部を通過させ、その後、押し出す工程を有しているセルロース繊維含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法が開示されている。
特許文献5には、生分解性を有するアセチル基置換度が1.9から2.6のアセチルセルロース樹脂100重量部に対し、特定のグリセリン誘導体系可塑剤の混合物を5から100重量部配合したアセチルセルロース樹脂組成物、および上記組成物原料を、60℃から120℃にホットアップしてブレンドし、アセチルセルロース樹脂組成物を得る方法が開示されている。
特許文献6には、生分解性を有するアセチル基置換度が1.9から2.9のアセチルセルロース樹脂100重量部に対し、特定のグリセリン誘導体系可塑剤の混合物を5から100重量部、ならびに(A)から(C)成分の合計量100重量部に対し、(D)有機系充填剤を5から200重量部または(E)滑剤を0.01から5重量部配合したアセチルセルロース樹脂組成物、および上記組成物原料を、60℃から160℃にホットアップしてブレンドし、アセチルセルロース樹脂組成物を製造する方法が開示されている。
特許文献7には、連続相を可塑化されたセルロース誘導体で構成する樹脂組成物が開示され、前記セルロース誘導体は、セルロースエステル、特にセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートから選択された少なくとも一種であってもよく、前記セルロース誘導体は可塑剤により可塑化されていてもよい旨の記載がある。
特許文献8には、平均置換度2.7以下のセルロースエステル、可塑剤及び充填剤で構成された樹脂組成物を調製し、前記可塑剤と前記充填剤との割合(重量比)は、前者/後者=95/5から30/70であってもよく、前記セルロースエステルは、平均置換度1.7から2.7の酢酸セルロースであってもよく、前記可塑剤は、例えば、リン酸エステルであってもよく、前記充填剤は、例えば、タルク、マイカ、窒化ホウ素などであってもよく、その平均粒径は5μm以下であってもよい旨の記載がある。
特許文献9には、セルロースエステル、可塑剤、および縮合リン酸エステル(A)でセルロースエステル系樹脂組成物を構成し、前記可塑剤は、リン酸エステル(特に、芳香族リン酸エステル)などで構成してもよく、前記縮合リン酸エステル(A)は、レゾルシノールビス(ジアルキルフェニルホスフェート)などであってもよく、前記縮合リン酸エステル(A)の割合は、可塑剤100重量部に対して、例えば、5から50重量部であってもよい旨の記載がある。
特許文献10には、可塑剤を、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体であって、重量平均分子量950以下の多量体、および(iii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種とし、前記セルロースエステル類と可塑剤との重量比が、前者/後者=99/1から50/50であってもよい旨の記載がある。
特許文献11には、セルロースエステルと、可塑剤(リン酸エステル、フタル酸エステルなど)と、炭化水素基を有するケテンダイマー類(C8−30アルキル−ケテンダイマー類など)および炭化水素基を有する無水コハク酸類(β−C8−30アルケニル−無水コハク酸類など)から選択された少なくとも1種のブリードアウト抑制剤とで構成したセルロースエステル系樹脂組成物が開示されている。
特許文献12には、セルロース粒子を、未架橋のエラストマーが分散されている分散液に浸漬して、前記粒子内に5重量%以上の未架橋のエラストマーを含浸し、次いで、前記エラストマーの架橋剤を前記粒子内に含浸した後、前記粒子内の未架橋のエラストマーを架橋し、ネット状に架橋されているゴム成分を前記粒子内に形成する方法が開示されている。
特開平10−147689号公報 特開2008−297479号公報 特開2009−001597号公報 特開2009−197044号公報 特開2002−30182号公報 特開2003−138062号公報 特開2003−306577号公報 特開2005−194302号公報 特開2006−176596号公報 特開2006−213916号公報 特開2006−299012号公報 特開2007−297614号公報
本発明の目的は、難燃性に優れた樹脂成形体を形成し得る樹脂組成物を提供することにある。
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含む樹脂組成物である。
請求項2に係る発明は、
前記セルロース材料が、周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物である。
請求項3に係る発明は、
前記セルロース材料が、架橋構造を有するセルロース樹脂である請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物である。
請求項4に係る発明は、
前記セルロース材料が、温度220℃の条件で溶融しないマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に分散され且つ温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂と、を含んでなる請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項5に係る発明は、
周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含む樹脂成形体である。
請求項1に係る発明によれば、周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含むとの要件を満たさない場合に比べ、難燃性に優れた樹脂成形体を形成し得る樹脂組成物が提供される。
請求項2に係る発明によれば、セルロース材料が温度220℃の条件で溶融しないセルロース樹脂でない場合に比べ、難燃性に優れた樹脂成形体を形成し得る樹脂組成物が提供される。
請求項3に係る発明によれば、セルロース材料が架橋構造を有するセルロース樹脂でない場合に比べ、難燃性に優れた樹脂成形体を形成し得る樹脂組成物が提供される。
請求項4に係る発明によれば、セルロース材料が、温度220℃の条件で溶融しないマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に分散され且つ温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂と、を含んでなるとの要件を満たさない場合に比べ、難燃性に優れた樹脂成形体を形成し得る樹脂組成物が提供される。
請求項5に係る発明によれば、周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含まない場合に比べ、難燃性に優れた樹脂成形体が提供される。
本実施形態に係る樹脂成形体を備える電子・電気機器の部品の一例を示す模式図である。
以下、本発明の樹脂組成物および樹脂成形体の実施形態について説明する。
≪樹脂組成物≫
本実施形態に係る樹脂組成物は、周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含む。
損失正接(tanδ)とは、弾性に相当する貯蔵弾性率(E’)と、粘性に相当する損失弾性率(E”)との比率(E”/E’)であり、つまり損失正接(tanδ)が大きいほど粘性支配であることを、小さいほど弾性支配であることを表す。本実施形態にかかる樹脂組成物では、含有されるセルロース材料の周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が上記範囲であり、つまり貯蔵弾性率(E’)が損失弾性率(E”)よりも大きいか同じであり、弾性支配であることを意味する。
樹脂成形体においては、例えば火災時の燃焼等を抑制する観点から難燃化することが求められている。ここで、樹脂成形体を難燃化する方法の一つとして、チャー形成による難燃化の方法が挙げられる。樹脂成形体の周囲で燃焼源が燃焼した場合であっても、樹脂表面が炭化されることで燃焼源からの樹脂内部への伝熱が抑制され内部の樹脂の分解が抑制される。また、樹脂表面の炭化によって樹脂分解による燃焼性の樹脂分解物(ガス)の拡散が抑制される。
しかし、樹脂成形体を形成する樹脂組成物中に粘性支配のセルロース系の樹脂等を含有する場合、温度上昇に伴う粘度低下により流動が発現し形成されたチャーの割れや剥がれが発生して難燃化が効率的に達成し得ないことがあった。
本実施形態に係る樹脂組成物はセルロース材料とポリカーボネートとを含有しており、燃焼時に難燃剤の働きによりチャー形成が行なわれる。更に、本実施形態に係る樹脂組成物では、含有されるセルロース材料の周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が上記範囲であり、つまり弾性支配であるセルロース材料が含まれる。上記の構成を満たすことで、効率的に難燃化が達成される。
このメカニズムは必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察される。即ち、樹脂成形体の燃焼時に難燃剤の働きによって脱水、脱炭酸、炭化によるチャー形成が行われるが、チャーが形成されても、樹脂自体に流動性があるとチャーが割れたり剥がれたりして、成形体表面にムラなくチャーが形成されないものと考えられる。これに対し、本実施形態では上記の通り220℃の温度で弾性支配であるセルロース材料が含有されており、流動性が抑制されるため、セルロース材料とポリカーボネートとによって形成されたチャーの割れや剥がれが抑制され、その結果効率的な難燃化が達成されるものと考えられる。
また、上記の通り加熱温度下での流動性が抑制されることから、たわみ温度が上昇し、その結果として耐熱力学特性が向上するものと推察される。
次いで、各成分について説明する。
−セルロース材料−
本実施形態におけるセルロース材料は、周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下である
ここで、樹脂組成物中に添加されているセルロース材料の上記損失正接(tanδ)は、RDA2RHIOSシステム Ver.4.3.2(レオメトリックス・サイエンテイフィック・エフ・イー(株)製)、DMA6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて測定される。
また、成形された後の樹脂成形体からのセルロース材料の上記損失正接(tanδ)の測定は、DMA6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて動的粘弾性測定を行い、複合材データ算出ソフトを利用して計算によりセルロース材料の動的粘弾性を求めることで行われる。
本実施形態において用いられるセルロース材料とは、以下の(1)乃至(3)の何れかをさす。
(1)周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース樹脂
(2)架橋構造を有するセルロース樹脂
(3)温度220℃の条件で溶融しないマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に分散され且つ温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂と、を含んでなる材料
尚、「セルロース樹脂」とは、多数のβ−グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然高分子化合物を指し、構成単位であるグルコースとは異なる性質を示す高分子化合物である。いわゆるベータグルカンの一種で、下記構造式(1)で表される繰り返し単位を有する。

尚、セルロースは修飾されていてもよく、下記構造式(2)に示すごとく、R,RおよびRの部分が、水素であったり、エステル化されて(即ちCで表される直鎖、分岐鎖、または環状の酸)いたり、エーテル化されて(Cで表される直鎖、分岐鎖、または環状の炭化水素)いてもよい。R,RおよびRはそれぞれ構造が異なっていてもよく、例えば、RがH、Rがメチル、Rがアセチルであってもよい。

また、セルロースは上記構造式(1)で表される繰り返し単位と、上記構造式(2)で表される繰り返し単位と、の両方を有する共重合体であってもよい。
本実施形態における前記セルロース樹脂は、天然素材由来のセルロース、または該セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する樹脂をさす。
原料綿は、綿花リンタ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などの天然セルロースはもとより、微結晶セルロースなど木材パルプを酸加水分解して得られる重合度の低い(重合度100から300)セルロースでも使用され、混合して使用してもよい。これらの原料となるセルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁から8頁)、および「セルロースの事典(523頁)」(セルロース学会編、朝倉書店、2000年発行)に記載のセルロースが用いられ、特に限定されるものではない。
上記構造式(2)においてR乃至Rが表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、イソバレル基、2−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2−メチルバレル基、3−メチルバレル基、4−メチルバレル基、2−プロピルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチル−2−ペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2−オクチイル基などが挙げられ、これらの基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基である。
また、分岐構造を含む脂肪族アシル基でもよく、具体例としては、2−メチルブタノイル基、イソバレリル基、2−エチルブタノイル基、t−ブチルアセチル基、2−メチルバレリル基、3−メチルバレリル基、4−メチルバレリル基、2−プロピルペンタノイル基、2−メチルヘキサノイル基、2−エチルヘキサノイル基、イソステアロイル基、チグリノイル基、3,3−ジメチルアクリル基、2−メチル−2−ペンテノイル基、シトロネリル基などが挙げられる。
これらの中でも好ましくはt−ブチルアセチル基、2−メチルバレリル基、3−メチルバレリル基、4−メチルバレリル基、2−プロピルペンタノイル基、2−メチルヘキサノイル基、2−エチルブタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、イソステアロイル基、チグリノイル基、3,3−ジメチルアクリル基、2−メチル−2−ペンテノイル基、シトロネリル基などが挙げられる。
より好ましくは、t−ブチルアセチル基、2−メチルバレリル基、3−メチルバレリル基、4−メチルバレリル基、2−プロピルペンタノイル基、2−メチルヘキサノイル基、2−エチルブタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、イソステアロイル基、シトロネリル基である。
(1)周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース樹脂
損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース樹脂としては、前記構造式(2)におけるR乃至Rが表す置換基の構造や置換度にもよるが、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル類、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセロースエステル類等のセルロース樹脂が挙げられる。これらの中でも、内部可塑化されていないセルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)がより好ましい。
損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース樹脂の重量平均分子量としては、10万以上150万以下が好ましく、更には15万以上100万以下がより好ましい。
尚、上記重量平均分子量は以下の方法により測定される。まずセルロースを溶媒に溶解し、この溶液をサイズ排除クロマトグラフ(GPC)にて、重量平均分子量を求める。
(2)架橋構造を有するセルロース樹脂
周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料を得る方法として、セルロース樹脂を架橋する方法が挙げられる。尚、セルロース樹脂を架橋してゲル化することで、前記損失正接(tanδ)の要件が達成される。
尚、架橋の態様としては、「架橋剤を介した架橋」「共有結合による架橋」「イオン結合による架橋」等が挙げられ、特に限定されるものではない。
原料に用いるセルロース樹脂としては、例えば前述の構造式(1)で表される繰り返し単位を有するセルロース樹脂、前述の構造式(2)で表される繰り返し単位を有するセルロース樹脂、または前述の構造式(1)で表される繰り返し単位および構造式(2)で表される繰り返し単位の両方を有する共重合体であって、反応性に富む残存するOH基を用いる他にOH基をイオン結合を形成し得る基に置換した樹脂が挙げられる。
・架橋剤を介した架橋
セルロース樹脂同士を架橋剤を介して架橋して、損失正接(tanδ)を前記範囲に制御する方法について説明する。
セルロース樹脂中には反応性に富むOH基があり、このOH基と反応し得る官能基を2個以上有する有機系架橋剤や無機系架橋剤が用いられる。
上記有機系架橋剤としては、例えば、ホルマリンやテトラオキサン等のホルマリン系架橋剤、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、ジメチロールアルキルトリアゾン、ジメチロールウロン、ヘキサメチロールメラミン、ジメチロールアルキルカルバメート等のN−メチロール系架橋剤、N,N’−ジメチルヒドロキシエチレン尿素等のグリオキザール系架橋剤、ビス−β−ヒドロキシエチルスルホン等のスルホン系架橋剤、エピクロルヒドリンやエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤、ジビニルスルホン等の活性ビニル系架橋剤、コハク酸やポリアクリル酸等のカルボン酸系架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、さらには多官能のポリイソシアネート系架橋剤が挙げられ、また無機系架橋剤としては、TiO(SO)、HTiO、Ti(OH)等のチタン化合物や、その他Cu、B、Al、Zr、Sn、V、Cr等の金属化合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系架橋剤、ポリイソシアネート系架橋剤がより好ましい。
用いるセルロース樹脂と架橋剤との組合せによる量比は、例えばセルロース樹脂100質量部に対して、架橋剤を1質量部以上50質量部以下混合し、更に熱を加える等の方法によって重合することで架橋剤を介した架橋重合が行われる。
尚、セルロース樹脂に対する架橋剤の量を多くする程、損失正接(tanδ)の値は小さくなる傾向にある。
・共有結合による架橋
セルロース樹脂同士を共有結合して、損失正接(tanδ)を前記範囲に制御する方法について説明する。
セルロース樹脂中のOH基同士の縮合反応、あるいはOH基を、OH基と縮合反応し得る官能基(例えばカルボキシル基、カルボキシメチル基、スルホン酸基等)に置換し、縮合反応することによりセルロース樹脂同士を共有結合により架橋し得る。
また、高エネルギーの電子線、γ線を照射することで自己架橋も行われる。
尚、セルロース樹脂同士の共有結合の形成は、例えば以下の方法によって行われる。即ち、縮合反応の場合は例えばOH基とカルボキシル基を含むセルロース樹脂を二軸押し出し機にて溶融混練しながら反応させる方法や、溶媒に溶解して反応させる方法が用いられる。反応を促進するために触媒を用いてもよい。
また、電子線、γ線の場合はセルロース樹脂に照射することによって架橋反応が行える。分子鎖切断やガス発生などの他の副反応を抑える目的で2個以上のビニル基を有する架橋促進剤を用いてもよい。
形成される共有結合の割合を多くする程、損失正接(tanδ)の値は小さくなる傾向にある。
・イオン結合による架橋
セルロース樹脂同士をイオン結合して、損失正接(tanδ)を前記範囲に制御する方法について説明する。
イオン結合を形成し得る基を有するセルロース樹脂としては、OH基やエーテル基が相互作用してイオン結合を形成するが、該イオン結合を形成し得る基としては、より強固なイオン結合を形成するためにはカルボキシル基、カルボキシメチル基、スルホン酸基等が挙げられる。
尚、セルロース樹脂同士のイオン結合の形成は、例えば以下の方法によって行われる。即ち、Ca、Mg、Al、Baなどの2価以上の多価金属と溶融混練、溶液混合などをすることによりセルロース樹脂中にイオン結合が形成される。
形成されるイオン結合の割合を多くする程、損失正接(tanδ)の値は小さくなる傾向にある。
(3)温度220℃の条件で溶融しないマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に分散され且つ温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂と、を含んでなる材料
周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料を得る方法として、温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂を温度220℃の条件で溶融しないマトリックス樹脂中に分散し、一体化した材料とする方法が挙げられる。
前記セルロース樹脂を前記マトリックス樹脂中に分散し一体化した態様としては、例えば、三次元網目構造を有する架橋されたマトリックス樹脂の該網目構造中に前記セルロース樹脂が分散され、互いに相互進入網目構造を形成した、IPN(Interpenetrating Polymer-Networks)構造の態様が挙げられる。セルロース樹脂とマトリックス樹脂とが互いに絡み合ってゲル化することで、前記損失正接(tanδ)の要件が達成される。
尚、前記セルロース樹脂および前記マトリックス樹脂における「温度220℃の条件で溶融しない」とは、温度220℃とした際の粘度が500Pa・s以上でtanδが1以下であることを表す。
前記IPN構造体を形成するには、例えば、三次元網目構造を有し温度220℃の条件で溶融しないマトリックス樹脂を形成し得るプレポリマーやモノマーと、該三次元網目構造を形成し得る架橋剤と、温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂と、を混合し、更に熱を加える等の方法によって架橋して三次元網目構造を形成することで、該網目構造中に前記セルロース樹脂が取り込まれ、前記IPN構造体が得られる。
また、前記IPN構造体を形成するその他の方法としては、例えば、三次元網目構造を有し温度220℃の条件で溶融しないマトリックス樹脂と温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂とを溶媒に溶解し混合して乾燥回収する方法が挙げられる。
三次元網目構造を有するマトリックス樹脂は、セルロース樹脂であってもセルロース以外の樹脂であってもよい。三次元網目構造を有するマトリックス樹脂であるセルロース樹脂としては、例えば、前記(2)架橋構造を有するセルロース樹脂にて列挙したセルロース樹脂が挙げられ、架橋の態様としては「架橋剤を介した架橋」「共有結合による架橋」「イオン結合による架橋」等が挙げられる。
三次元網目構造を有するマトリックス樹脂であるセルロース以外の樹脂としては、従来公知の樹脂、架橋構造を有している物が用いられる。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、モノマーから簡便に重合し得るアクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂がより好ましい。
温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂としては、例えば、前記(1)周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース樹脂にて列挙した樹脂以外のセルロース樹脂が挙げられる。
・可塑剤
本実施形態のセルロース材料においては、損失正接(tanδ)の要件が前記の範囲を外れない範囲で、可塑剤の添加によって可塑化してもよい。
可塑剤としては、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル・トリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、トリプロピオニン、酒石酸ジブチル、トリアセチン等が挙げられる。
尚、前記可塑剤として可塑化能のある難燃剤(例えばリン系難燃剤)を多量に添加した場合、セルロース材料の周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1を超えたとしても、上記可塑剤が難燃剤であるため難燃化が達成されるものと考えられる。
しかし、本実施形態に係るセルロース材料は、そもそも難燃剤の添加によらずに効率的な難燃化を図ることに着目したものであり、つまり難燃剤の添加量を増加せずとも難燃性を向上し得るものである。そして、難燃剤の添加量を増加する必要がないため、難燃剤の増量に伴う熱力学特性の低下や機械物性の低下等が効果的に抑制される。
・形状
上記セルロース系材料の形状としては、公知のいかなる形状であってもよく、例えば球状、楕円状、針状、繊維状、扁平状、異形状等が挙げられる。
・含有量
周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料の含有量としては、該セルロース樹脂とポリカーボネートとの総量に対して25質量%以上90質量%以下であることが好ましく、更に50質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
−ポリカーボネート−
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリカーボネートを含有する。
ポリカーボネートは、結晶性であっても非晶性であってもよいが、特に結晶性ポリカーボネートがより好適に用いられる。
ポリカーボネートとしては、メルトボリュームフローレイト(MVR)が2cm/10min以上25cm/10min以下のものが好ましく、さらには5cm/10min以上20cm/10min以下のものが好ましい。
尚、上記メルトボリュームフローレイトはメルトインデックサF−F01((株)東洋精機製作所製)を用いて、ISO1133に従い300℃,荷重1.2kgfの条件で測定される。
ポリカーボネートは、1つまたは複数のモノマーの重縮合で得られ、少なくとも1つのカーボネート基(−O−(C=O)−O−)を有するポリマーであればよく、特に限定されないが、例えばビスフェノールA型ポリカーボネート、ビスフェノールS型ポリカーボネート、ビフェニル型ポリカーボネート等の、芳香族ポリカーボネートが望ましい。
また、上記ポリカーボネートは、ポリカーボネートの少なくとも1種と、スチレン系樹脂の少なくとも1種と、を組み合わせたアロイ樹脂として用いてもよい。
上記スチレン系樹脂としては、例えば、GPPS樹脂(一般ポリスチレン樹脂)、HIPS樹脂(耐衝撃性ポリスチレン)、SBR樹脂(スチレンブタジエンゴム)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)などが挙げられる。上記の中でも、HIPS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等が望ましい。
−その他の成分−
・ポリカーボネート以外の樹脂
本実施形態における樹脂組成物には、更に前記ポリカーボネートと併用して、他の樹脂を用いてもよい。他の樹脂としては従来公知の樹脂が用いられ、具体的には、ポリプロピレン、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリーレン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリビニルアセタール、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールケトン、ポリエーテルニトリル、液晶樹脂、ポリベンズイミダゾール、ポリパラバン酸等が挙げられ、また芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂、ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂、シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
また、生分解性樹脂も好ましく用いられ、例えばポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、デンプン変性樹脂、等が用いられる。
・難燃剤
本実施形態に係る樹脂組成物は、さらに難燃剤を添加してもよい。
上記難燃剤としては、例えば、リン系、シリコーン系、含窒素系、硫酸系、無機水酸化物系等の難燃剤が用いられる。これらの中でもリン系難燃剤が好ましく、リン酸エステルが特に好ましい。
上記リン系難燃剤としては、縮合リン酸エステル、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、リン酸アルミニウムなどが、上記シリコーン系難燃剤としては、ジメチルシロキサン、ナノシリカ、シリコーン変性ポリカーボネートなどが、上記含窒素系難燃剤としては、メラミン化合物、トリアジン化合物などが、上記硫酸系難燃剤としては、硫酸メラミン、硫酸グアニジンなどが、上記無機水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
これらの中でも、特に縮合リン酸エステルが好適に用いられる。
前記難燃剤の配合比としては、セルロース樹脂とポリカーボネートとの合計100質量部に対し10質量部以上25質量部以下であることが好ましく、更には15質量部以上20質量部以下がより好ましい。
・他の成分
本実施形態に係る樹脂組成物は、効果を損なわない範囲で上記以外の他の成分を含んでもよい。該他の成分としては、例えば、ドリップ防止剤(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)等が挙げられる。
上記他の成分の配合比は、樹脂組成物における固形分中0質量%以上10質量%以下であることが望ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより望ましい。ここで、「0質量%」とは上記他の成分を含まない形態を意味する。
−樹脂組成物の製造方法−
本実施形態に係る樹脂組成物は、少なくとも前述の周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートとを用いて溶融混練することにより製造される。ここで、溶融混練の手段としては公知の手段が用いられ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
≪樹脂成形体≫
本実施形態に係る樹脂成形体は、前述の本実施形態に係る樹脂組成物が成形されてなる。つまり、周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含む。
尚、例えば射出成形、押し出し成形、熱プレス成形、カレンダ成形、トランスファ成形などの成形方法により本実施形態に係る樹脂成形体が成形される。
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
この際、シリンダ温度としては、180℃以上350℃以下とすることが望ましく、200℃以上300℃以下とすることがより望ましい。また、金型温度としては、50℃以上150℃以下とすることが望ましく、80℃以上120℃以下とすることがより望ましい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。
図1は、本実施形態に係る成形体を備える電子・電気機器の部品の一例である画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、および、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置および制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱自在なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーが補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙供給部136が備えられており、ここからも用紙が供給される。
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙供給部136が設けられている側と反対側に用紙排出部138が複数備えられており、これらの用紙排出部に画像形成後の用紙が排出される。
画像形成装置100において、例えば、フロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、および筐体152に、本実施形態に係る樹脂成形体が用いられている。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
〔実施例1乃至8および比較例1乃至6〕
リン酸エステル難燃剤(大八化学社製、PX200)をポリカーボネート(帝人化成社製:商品名パンライトL−1225Y)に対し下記表1に記載の量で添加し、二軸押出し機を用いて240℃で溶融混合した。次いで、下記表1に記載のセルロース系材料を表1に記載の量で添加し、再度二軸押出し機を用いて220℃で溶融混合して樹脂組成物を作製した。(尚、比較例6ではセルロース系材料を添加しなかった。)
この樹脂組成物を220℃でプレスにより溶融成形し、下記に示すそれぞれの評価に用いる樹脂成形体を作製した。
上記表1に記載の各セルロース系材料は、以下のもの、または以下の方法にて調製したものを表す。
・DAC(ジアセチルセルロース)
:ダイセル社製、商品名アセチ L−70
・CMC(カルボキシメチルセルロース)
:日本製紙ケミカル社製、商品名サンローズ S
・セルロース繊維:レッテンマイヤー社製、商品名ARBOCEL BE600−30
・CAP(セルロースアセテートプロピオネート)
:イーストマンケミカル社製、商品名EASTMAN CAP 482−20
・エチルセルロース:ダウケミカル社製、商品名エトセル 200
・架橋CAP
CAPを以下の方法により架橋した。CAPとエポキシ系架橋剤(マーブルーフG1005S、日油社製)を二軸押し出し機を用いて200℃で溶融混練を行い架橋CAPを作製した。CAP/架橋剤の割合は90/10とした。
・架橋エチルセルロース
エチルセルロースを以下の方法により架橋した。エチルセルロースとエポキシ系架橋剤(マーブルーフG1005S、日油社製)を二軸押し出し機を用いて200℃で溶融混練を行い架橋エチルセルロースを作製した。エチルセルロース/架橋剤の割合は90/10とした。
・可塑化DAC(A)
DACを以下の方法により可塑化し、tanδが前記表1の値のDACを得た。DACおよびクエン酸トリエチルをそれぞれテトラヒドロフランに溶解してDAC/クエン酸トリエチルが95/5になるよう混合した後、乾燥して可塑化DAC(A)を得た。
・CAP分散DAC
温度220℃の条件で溶融しない樹脂であるDAC中に、温度220℃の条件で溶融する樹脂であるCAPを、以下の方法により分散した。CAPおよびDACをテトラヒドロフランに溶解しCAP/DACが45/55になるよう溶解物を混合した。この混合物を高速攪拌している水浴に添加し脱溶媒と微粒子化を行いCAP分散DACを得た。
・エチルセルロース分散DAC
温度220℃の条件で溶融しない樹脂である前記DAC中に、温度220℃の条件で溶融する樹脂であるエチルセルロースを、以下の方法により分散した。DACおよびエチルセルロースをテトラヒドロフランに溶解しエチルセルロース/DACが45/55になるよう溶解物を混合した。この混合物を高速攪拌している水浴に添加し脱溶媒と微粒子化を行いエチルセルロース分散DACを得た。
・可塑化DAC(B)
DACを以下の方法により可塑化し、tanδが前記表1の値のDACを得た。DACおよびクエン酸トリエチルをそれぞれテトラヒドロフランに溶解してDAC/クエン酸トリエチルが75/25になるよう混合した後、乾燥して可塑化DAC(B)を得た。
・DAC分散CAP
温度220℃の条件で溶融する樹脂であるCAP中に、温度220℃の条件で溶融しない樹脂であるDACを、以下の方法により分散した。二軸押し出し機を用いて200℃で溶融しているCAPにDACパウダーの混練を行いDAC分散CAPペレットを作製した。CAP/DACの割合は45/55とした。
・DAC分散エチルセルロース
温度220℃の条件で溶融する樹脂であるエチルセルロース中に、温度220℃の条件で溶融しない樹脂であるDACを、以下の方法により分散した。二軸押し出し機を用いて200℃で溶融しているエチルセルロースにDACパウダーの混練を行いDAC分散エチルセルロースのペレットを作製した。エチルセルロース/DACの割合は45/55とした。
<評価>
作製した樹脂組成物及び燃焼試験用試験片について、下記評価を行った。
−分散性評価−
作製した樹脂組成物中における分散性を評価した。作製した樹脂組成物を200℃でプレスして厚み500μmのフィルムを作製し、顕微鏡により観察した。分散性の評価基準は以下の通りである。
G1:各成分がムラなく分散しており、分散性良好
G2:各成分の少量の凝集が確認され、若干のムラがあるものの概ね分散している
G3:成分の凝集部分が多数確認され、良好に分散していない
−難燃性の評価−
UL−94におけるVテスト用UL試験片(厚さ2mm)を用いて、UL−94の垂直燃焼試験を行い、UL−94規格の判定基準に従って、難燃性が高い方から順にV−0、V−1、V−2、HBおよび燃焼(NG)の5つのランクで判定した。
下記表2に記載の「第一接炎」とは、UL−94におけるVテストの第一接炎目でドリップが生じたことを表す。
−シャルピー衝撃強度の評価−
ISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したもの(板厚4mm)を用い、ISO−179に規定の方法に従って衝撃試験装置(東洋精機社製、DG−5)によりシャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。測定値が大きい程、耐衝撃性に優れている。
−耐熱性の評価−
JIS−K7191−2(1996年)に準拠し、試験片(板厚4mm)について加重たわみ温度を測定し、以下の評価基準により耐熱性評価を行った。
G1:加重たわみ温度がベース樹脂の温度同等以上
G2:加重たわみ温度がベース樹脂の温度未満
(※尚、上記「ベース樹脂の温度」とは、セルロース系材料を含まない時の樹脂のたわみ温度をさす。)
100 画像形成装置
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体

Claims (5)

  1. 周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含む樹脂組成物。
  2. 前記セルロース材料が、周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記セルロース材料が、架橋構造を有するセルロース樹脂である請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記セルロース材料が、温度220℃の条件で溶融しないマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に分散され且つ温度220℃の条件で溶融するセルロース樹脂と、を含んでなる請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 周波数1rad/sec、温度220℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が1以下であるセルロース材料と、ポリカーボネートと、を含む樹脂成形体。
JP2012039063A 2012-02-24 2012-02-24 樹脂組成物および樹脂成形体 Active JP5915252B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012039063A JP5915252B2 (ja) 2012-02-24 2012-02-24 樹脂組成物および樹脂成形体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012039063A JP5915252B2 (ja) 2012-02-24 2012-02-24 樹脂組成物および樹脂成形体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013173846A true JP2013173846A (ja) 2013-09-05
JP5915252B2 JP5915252B2 (ja) 2016-05-11

Family

ID=49267051

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012039063A Active JP5915252B2 (ja) 2012-02-24 2012-02-24 樹脂組成物および樹脂成形体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5915252B2 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004283135A (ja) * 2003-03-25 2004-10-14 Asahi Kasei Chemicals Corp ゲル状組成物
WO2011078271A1 (ja) * 2009-12-25 2011-06-30 富士フイルム株式会社 成形材料、成形体、及びその製造方法、並びに電気電子機器用筐体
JP2011195789A (ja) * 2010-03-23 2011-10-06 Fujifilm Corp 樹脂組成物、並びに当該組成物から得られる成形体及び電気・電子機器用筺体
JP2011225841A (ja) * 2010-03-30 2011-11-10 Fujifilm Corp 樹脂組成物、射出成形用樹脂組成物、成形体、及び電気電子機器用筐体
JP2011241257A (ja) * 2010-05-14 2011-12-01 Asahi Kasei Chemicals Corp ダクト用樹脂成形体
JP2011241236A (ja) * 2010-05-13 2011-12-01 Fujifilm Corp 樹脂組成物、射出成形用樹脂組成物、及び電気電子機器用筐体

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004283135A (ja) * 2003-03-25 2004-10-14 Asahi Kasei Chemicals Corp ゲル状組成物
WO2011078271A1 (ja) * 2009-12-25 2011-06-30 富士フイルム株式会社 成形材料、成形体、及びその製造方法、並びに電気電子機器用筐体
JP2011195789A (ja) * 2010-03-23 2011-10-06 Fujifilm Corp 樹脂組成物、並びに当該組成物から得られる成形体及び電気・電子機器用筺体
JP2011225841A (ja) * 2010-03-30 2011-11-10 Fujifilm Corp 樹脂組成物、射出成形用樹脂組成物、成形体、及び電気電子機器用筐体
JP2011241236A (ja) * 2010-05-13 2011-12-01 Fujifilm Corp 樹脂組成物、射出成形用樹脂組成物、及び電気電子機器用筐体
JP2011241257A (ja) * 2010-05-14 2011-12-01 Asahi Kasei Chemicals Corp ダクト用樹脂成形体

Also Published As

Publication number Publication date
JP5915252B2 (ja) 2016-05-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Prabhakar et al. Fabrication and characterisation of starch/chitosan/flax fabric green flame-retardant composites
KR101577381B1 (ko) 수지 조성물 및 수지 성형체
EP2294140B1 (en) Fire retardant resin composition
JP5935414B2 (ja) 樹脂組成物および樹脂成形体
Nie et al. Intumescent flame retardation of starch containing polypropylene semibiocomposites: flame retardancy and thermal degradation
JP6229749B2 (ja) 樹脂組成物および樹脂成形体
EP2048190B1 (en) Method for the preparation of an aromatic polycarbonate resin composition and molded article thereof
JP2011225841A (ja) 樹脂組成物、射出成形用樹脂組成物、成形体、及び電気電子機器用筐体
WO2011122646A1 (ja) 樹脂組成物、成形体、及び電気電子機器用筐体
JP6197967B1 (ja) 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品
WO2011142388A1 (ja) 樹脂組成物、射出成形用樹脂組成物、及び電気電子機器用筐体
WO2011122421A1 (ja) 樹脂組成物、成形体、及び電気電子機器用筐体
JP5915252B2 (ja) 樹脂組成物および樹脂成形体
JP5500032B2 (ja) ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物及び成形品
JP5935415B2 (ja) 樹脂組成物および樹脂成形体
JP2011208103A (ja) 樹脂組成物、成形体、及び電気電子機器用筐体
JPWO2019235505A1 (ja) 難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
US20230042264A1 (en) Flame-retardant resin composition, flame-retardant resin housing, and electronic device
JP5194357B2 (ja) 難燃性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物
WO2023008551A1 (ja) セルロース系樹脂組成物およびこれを用いた成形体
WO2024106426A1 (ja) セルロース系樹脂組成物及びこれを用いた成形体
WO2023008552A1 (ja) セルロース系樹脂組成物およびこれを用いた成形体
JP2015183133A (ja) 樹脂組成物および樹脂成形体
WO2024106436A1 (ja) セルロース系樹脂組成物及びこれを用いた成形体
JP6439355B2 (ja) 樹脂組成物、及び樹脂成形体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150123

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150826

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150908

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151104

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160308

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160321

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5915252

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350