JP2013170174A - ポリエチレン発泡パイプカバー - Google Patents

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Abstract

【課題】 リサイクルが可能で安価に製造が可能であり、発泡倍率が高く、耐熱性、可撓性に優れるポリエチレン発泡パイプカバーを提供する。
【解決手段】 190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が20mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が935kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、円筒状であることを特徴とするポリエチレン発泡パイプカバーを用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリエチレン発泡パイプカバーに関するものである。更に詳細には、特定のエチレン系重合体からなり、耐熱性、可撓性に優れたポリエチレン発泡パイプカバーに関するものである。
建築物や家電製品などの金属配管を被覆し断熱する材料として、円筒状に成形加工された各種プラスチック発泡体(発泡パイプカバー)が使用されている。これらのプラスチック発泡体の中でも、ポリエチレン系樹脂架橋発泡体は、他のプラスチック発泡体と比較して、耐熱性や耐薬品性に優れていることから、上記の断熱用途に多用されている。ここで、ポリエチレンは低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンに大別される。低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合法により製造され長鎖分岐を有するため、溶融張力が高く発泡性に優れる一方で、耐熱性に劣る。高密度ポリエチレンは、配位アニオン重合法により製造される直鎖状のポリエチレンであり、溶融張力が低いため発泡性に劣る一方で、耐熱性に優れる。高い耐熱性が求められる給湯管や空調配管用途の発泡パイプカバーには、JIS A 9511に規定される120℃における厚さ収縮率7%以下を達成する必要があるため、低密度ポリエチレンの中でも、比較的密度が高い低密度ポリエチレンからなる架橋発泡体が使用されたり、通常の密度範囲の低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの樹脂組成物からなる架橋発泡体が使用されたりしている。
ところで、近年、環境負荷低減の観点から、プラスチック材料のリサイクル性向上への関心が高まっており、ポリエチレン系樹脂の発泡体においても架橋品の非架橋化への要求が高まっている。非架橋で高耐熱、高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡体を製造する場合には、高密度ポリエチレンを使用する必要がある。しかしながら、高密度ポリエチレンは溶融張力が低く、発泡した際の気泡が保持できないため、発泡倍率の高い発泡体を得ることは困難であった。従って、高密度ポリエチレンを用い、発泡倍率の高い発泡体を得るためには、このような密度の高い直鎖状のポリエチレンの溶融張力を高めることが必要であった。この方法として、(1)溶融張力の高い高分子量のポリエチレンを混合する方法(例えば、特許文献1参照)、(2)クロム系触媒によって製造される溶融張力の高いポリエチレンを混合する方法(例えば、特許文献2参照)、(3)高圧ラジカル重合法により製造される低密度ポリエチレンを混合する方法(例えば、特許文献3参照)、(4)ポリエチレンに架橋剤や過酸化物を添加して改質することにより溶融張力を高める方法(例えば、特許文献4参照)、(5)ポリエチレンを不飽和カルボン酸などで変成する方法(例えば、特許文献5参照)等が提案されている。また、本発明者らは、特定の要件を満足するエチレン系重合体を押出発泡成形することにより高耐熱性のポリエチレン押出発泡体を提供し得ることを見出している(例えば、特許文献6、7参照)。
特開平10−7726号公報 特開平2−132109号公報 特開平7−134359号公報 特開2003−327757公報 特開平11−246713号公報 特開2006−096910号公報 特開2006−199872号公報
架橋発泡して得られるポリエチレン系架橋発泡体は、発泡倍率、耐熱性などの物性面は良好であるものの、架橋工程を必要とするため、生産コストが高くなることや、元の樹脂に戻して再利用することができず、今後のリサイクル社会に適さないなどの問題点がある。
また、密度の高い直鎖状のポリエチレンについて上記特許文献1〜3で提案されている方法においては、溶融張力を発泡成形に必要なレベルまで高めるためには、ブレンドする樹脂を大量に使用することが必要であり、発泡成形体を構成する密度の高い直鎖状のポリエチレンの均一性が不足するために、該ポリエチレンが本来有している特徴を損なったり、高発泡倍率の発泡体が得られなかったりする問題がある。また、上記特許文献4で提案されている方法においては、架橋剤や過酸化物により副反応として起こる架橋反応を制御することが困難であり、ゲルの発生により発泡成形体の外観不良や機械特性に悪影響が生じる上、成形加工性を任意に制御することに限界があり、制御範囲が狭いという問題がある。また、上記特許文献5で提案されている方法においては、密度の高い直鎖状のポリエチレンの化学的安定性が損なわれ、しかもスチレン系のグラフト体とすることにより樹脂リサイクル性にも課題が生じる。本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、非架橋でありながら、発泡倍率が高く、耐熱性、可撓性に優れるポリエチレン発泡パイプカバーを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が20mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が935kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体をポリエチレン発泡パイプカバーとすることで、従来のポリエチレン発泡パイプカバーよりも耐熱性と可撓性に優れることを見出し、本発明を完成させるに到った。すなわち、本発明は、ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が20mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が935〜950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、円筒状であることを特徴とするポリエチレン発泡パイプカバーに関するものである。
本発明の非架橋ポリエチレン押出発泡体を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体は、ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が20mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が935kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体の範疇に属するものであれば如何なるエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。また、市販品として入手したものであってもよく、例えば(商品名)TOSOH−HMS JK46(東ソー(株)製)、(商品名)TOSOH−HMS JK25(東ソー(株)製)等を市販品として挙げることができる。
また、以下の方法により製造することができる。例えば、特開平7−252311号公報、特開2004−346304号公報、特開2005−248013号公報、特開2006−2057号公報、特開2006−321991号公報、特開2007−169341号公報、特開2010−43152号公報、特開2011−89019号公報、特開2011−89020号公報に記載の重合触媒の存在下に、エチレンを重合する、またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合する方法を用いることができる。
より具体的には、例えばメタロセン化合物として、2つの置換または非置換シクロペンタジエニル基が架橋基で架橋されている架橋型ビス(置換または非置換シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体および/または架橋型(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(a)と記す。)と、架橋型(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体および/または架橋型(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(b)と記す。)を用いたメタロセン触媒の存在下に、エチレンを重合する、またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合する方法を用いることができる。
成分(a)の具体例としては、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1−ジメチル−1−シラエタン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、プロパン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ブタン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、シス−2−ブテン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,2,2−テトラメチルジシラン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のシクロペンタジエニル誘導体の水素が炭化水素基で置換されたもの、中心金属のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできる。
成分(b)の具体例としては、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−トリメチルシリル−1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のシクロペンタジエニル誘導体の水素が炭化水素基で置換されたもの、中心金属のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできる。
また、成分(a)に対する成分(b)の量は、特に制限はなく、0.0001〜100倍モルであることが好ましく、特に好ましくは0.001〜10倍モルである。
そして、成分(a)と成分(b)を用いたメタロセン触媒としては、例えば成分(a)と成分(b)と有機アルミニウム化合物(以下、成分(c)と記す。)からなる触媒;成分(a)と成分(b)とアルミノオキサン(以下、成分(d)と記す。)からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;成分(a)と成分(b)とプロトン酸塩(以下、成分(e)と記す。)、ルイス酸塩(以下、成分(f)と記す。)または金属塩(以下、成分(g)と記す。)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;、成分(a)と成分(b)と成分(d)と無機酸化物(以下、成分(h)と記す。)からなる触媒;成分(a)と成分(b)と成分(h)と成分(e)、成分(f)、成分(g)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;成分(a)と成分(b)と粘土鉱物(以下、成分(i)と記す。)と成分(c)からなる触媒;成分(a)と成分(b)と有機化合物で処理された粘土鉱物(以下、成分(j)と記す。)からなる触媒を例示することができ、好ましくは成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒を用いることができる。
ここで、成分(i)および成分(j)として用いることが可能な粘土鉱物としては、微結晶状のケイ酸塩を主成分とする微粒子を挙げることができ、粘土鉱物の大部分は、その構造上の特色として層状構造を成しており、層の中に種々の大きさの負電荷を有することが挙げられる。この点で、シリカやアルミナのような三次元構造を持つ金属酸化物と大きく異なる。これらの粘土鉱物は、一般に層電荷の大きさで、パイロフィライト、カオリナイト、ディッカイトおよびタルク群(化学式当たりの負電荷がおよそ0)、スメクタイト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.25から0.6)、バーミキュライト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.6から0.9)、雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ1)、脆雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ2)に分類されている。ここで示した各群には、それぞれ種々の粘土鉱物が含まれるが、スメクタイト群に属する粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。また、上記粘土鉱物は複数混合して用いることもできる。
成分(j)における有機化合物処理とは、粘土鉱物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成することをいう。有機化合物処理で用いられる有機化合物としては、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−オクタデシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−エイコシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ジオレイルアミン塩酸塩、N−メチル−ジベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン塩酸塩を例示することができる。
成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒は、有機溶媒中、成分(a)と成分(b)と成分(j)を接触させることによって得ることが可能であり、成分(a)と成分(j)の接触生成物に成分(b)を添加する方法;成分(b)と成分(j)の接触生成物に成分(a)を添加する方法;成分(a)と成分(b)の接触生成物に成分(j)を添加する方法;成分(j)に成分(a)と成分(b)の接触生成物を添加する方法を例示することができる。
接触溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタンもしくはシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、1,4−ジオキサン、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランを例示することができる。
接触温度については、0〜200℃の間で選択して処理を行うことが好ましい。
各成分の使用量は、成分(j)1gあたり成分(a)が、0.0001〜100mmol、好ましくは0.001〜10mmolである。
このようにして調製された成分(a)と成分(b)と成分(j)の接触生成物は、洗浄せずに用いても良く、また洗浄した後に用いても良い。また、成分(a)または成分(b)がジハロゲン体の時、さらに成分(c)を添加することが好ましい。また、成分(j)、重合溶媒およびオレフィン中の不純物を除去することを目的に成分(c)を添加することができる。
該エチレン系重合体を製造する際には、重合温度−100〜120℃で行うことが好ましく、特に生産性を考慮すると20〜120℃が好ましく、さらには60〜120℃の範囲で行うことが好ましい。また、重合時間は10秒〜20時間の範囲が好ましく、重合圧力は常圧〜300MPaの範囲で行うことが好ましい。重合性単量体としては、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンであり、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンである場合、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの供給割合として、エチレン/炭素数3〜8のα−オレフィン(モル比)が、1〜200、好ましくは3〜100、さらに好ましくは5〜50の供給割合を用いることができる。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、エチレン系共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
重合はスラリー状態、溶液状態または気相状態で実施することができ、特に、重合をスラリー状態で行う場合にはパウダー粒子形状の整ったエチレン系共重合体を効率よく、安定的に生産することができる。また、重合に用いる溶媒は一般に用いられる有機溶媒であればいずれでもよく、具体的には例えばベンゼン、トルエン、キシレン、プロパン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ガソリン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。ここで、MFRが0.1g/10分未満であるエチレン・α−オレフィン共重合体である場合、成形する際の押出機の負荷が大きくなり、生産性が低下する。一方、50g/10分以上である場合、発泡成形時、均一に気泡が成長しないため、良好な発泡体を得る事ができない。また、溶融張力が20mN未満のエチレン・α−オレフィン共重合体である場合、発泡成形時のガス抜けが大きくなり、発泡倍率が低下し、製品形状の制御が困難となり、安定して発泡成形体を得ることができなくなる。さらに、歪硬化性を示さないエチレン・α−オレフィン共重合体である場合、発泡パイプカバーとした際に、気泡が合一したものとなり、均一で微細な気泡を有する発泡パイプカバーとはならない。密度が935kg/m未満の場合、得られる発泡パイプカバーは耐熱性に劣る。また、密度が950kg/mを超える場合、得られる発泡パイプカバーは耐熱性には優れるものの可撓性に劣るものとなる。以上、本発明に使用するエチレン・α−オレフィン共重合体は特定の構造を有し、押出発泡成形により、耐熱性および可撓性に優れた非架橋ポリエチレン押出発泡体となる。また、本発明の発泡パイプカバーは、発泡倍率が3倍以上であることが好ましい。ここで、発泡倍率が3倍以上である場合、発泡体の緩衝性、断熱性に優れる。
尚、本発明におけるMFRは、ASTM 1238に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定することがきる。また、溶融張力は、(商品名)キャピログラフ(東洋精機製作所製)を用い。190℃で長さ(L)が8mm,直径(D)が2.095mmのダイから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを10m/分で引き取り、引き取り荷重を溶融張力として測定することができる。歪硬化性は、マイスナー型一軸伸長粘度計を用いて、160℃で、ひずみ速度0.07〜0.1s−1の条件で測定した伸長粘度の最大値を、その時間の線形領域の伸長粘度で除した値を非線形パラメーターλと定義し、λが1を超えること歪硬化性があると確認できる。なお、M. Yamaguchi et al.Polymer Journal 32,164(2000).に記載のように、線形領域の伸長粘度は動的粘弾性より計算できる。λが1の場合、歪硬化性がないと判断できる。
本発明の発泡パイプカバーを構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)は3.0〜6.0が好ましく、更に好ましくは3.5〜5.5である。Mw/Mnがこの範囲であると、良好な発泡性と発泡成形性が得られるため、好ましい。GPCにより測定した数平均分子量(Mn)は15,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは15,000〜100,000、特に15,000〜50,000が好ましい。Mnが15,000以上である場合、得られる発泡成形体の機械強度が高くなる。
ポリエチレン発泡パイプカバーは、JIS A 9511に準拠して測定された120℃の厚さ収縮率が7%以下であることが好ましい。厚さ収縮率が7%以下であると、 の点で好ましい。
本発明に使用するエチレン・α−オレフィン共重合体には、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、抗ブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、核剤、顔料、カーボンブラック、タルク、ガラス粉、ガラス繊維等の無機充填剤または補強剤、有機充填剤または補強剤、難燃剤、中性子遮蔽剤等の公知の添加剤を配合することができる。また、他の熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。これらの例として、HDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、LDPE、ポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、これらの無水マレイン酸グラフト物等を例示することができる。
本発明の発泡パイプカバーの製造方法としては、発泡パイプカバーが得られる限りいかなる方法を用いてもよく、例えば、上記エチレン・α−オレフィン共重合体と、必要に応じて添加するタルク等の気泡調整剤、収縮防止剤等とを押出機に供給し加熱溶融、混練し、更に発泡剤を供給して発泡性溶融樹脂混合物とした後、押出樹脂温度、押出ダイ内部圧力、吐出量等を調整して、押出機先端に取り付けたダイから低圧域に押出して発泡させる方法が挙げられる。また、押出発泡成形の際の発泡剤としては、例えば二酸化炭素、窒素、アルゴン、空気等の無機ガス発泡剤;プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン等の揮発性発泡剤;常温で液体または固体であって、加熱により気体を発生するアゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、ビウレア、炭酸亜鉛等の化学発泡剤等を挙げることができ、該発泡剤の添加量としては、本発明の非架橋ポリエチレン押出発泡体を構成するエチレン系重合体100重量部に対し1〜20重量部であることが好ましく、特に5〜15重量部の範囲であることが好ましい。
本発明によれば、リサイクルが可能で安価に製造が可能であり、発泡倍率が高く、耐熱性、可撓性に優れるポリエチレン発泡パイプカバーを容易に得ることができる。
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
以下に、実施例および比較例で用いた測定方法を示す。
〜MFRの測定〜
ASTM 1238に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
〜溶融張力の測定〜
キャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用した。190℃で、長さ(L)が8mm,直径(D)が2.095mmのダイから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを10m/分で引き取り、引き取り荷重を溶融張力とした。
〜歪硬化性の測定〜
温度160℃に設定したマイスナー型一軸伸長粘度計(東洋精機製作所製、商品名:メルテンレオメーター)を用いて測定した。非線型パラメータ(λ)は、ひずみ速度0.07〜0.1s−1の条件で測定した伸長粘度の最大値を、その時間の線形領域の伸長粘度で除した値として求めた。なお、線形領域における伸長粘度の値は、福田猛著,新高分子実験学1,高分子実験の基礎,分子特性解析,“3−4.分子形状および形態”,295(1994).に記載の方法に従い、動的粘弾性より近似式を用いて計算した。得られたλが1を越える場合は歪硬化性ありと判断した。
〜密度〜
JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定した。
〜重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)〜
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC−8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr−H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
〜発泡パイプカバーの物性及び成形性評価〜
〜発泡倍率〜
本発明に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体を成形して得られた発泡パイプカバーから、直径5cm×内径3cm×長さ3cmの試験片を切り出し、重量(Wg)を測定し、JIS K 6767に準拠して、次式で見掛密度を算出した。
見掛密度(g/cm)=W/(5×5×1.5)
発泡倍率は、この見掛密度より、次式で求めた。
発泡倍率=1/見掛密度
〜発泡パイプカバー性状〜
本発明に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体を成形して得られた発泡パイプカバーの外観、および断面における気泡の状態を目視にて評価した。
○:円滑な表面の発泡体形状、均一な気泡状態
△:円滑な表面の発泡体形状、不均一な気泡状態
×:凸凹の発泡体形状、不均一な気泡状態…×
〜耐熱性(厚さ収縮率)〜
JIS A 9511に準拠して。成形して得られた直径5cm×内径3cm×長さ20cmの発泡パイプカバーを銅管にセットし、銅管の中に加熱水蒸気を連続して通し、120℃とした。168時間経過した後断熱パイプカバーを取り外し、放冷後、厚さを測定し、厚さ収縮率(%)を次式で算出した。
厚さ収縮率(%)=100×(初期厚さ−加熱放置後の厚さ)/初期厚さ
○:厚さ収縮率が7(%)以下
×:厚さ収縮率が7(%)超
〜可撓性〜
成形して得られた発泡パイプカバーを指圧にて圧縮し、発泡体の変形具合を目視にて確認した。
○:圧縮解放後、直ちに元の厚さに回復する。
△:圧縮解放後、徐々に元の厚さに回復する。
×:圧縮解放後、元の厚さに回復しない。
以下に、実施例、比較例で使用したエチレン・α−オレフィン共重合体を以下に示す。
〜エチレン・α−オレフィン共重合体〜
PE−1:東ソー社製、(商品名)東ソーHMS CK37(MFR3.3g/10分、密度935kg/m、溶融張力57mN、Mn17,000、Mw/Mn5.6)
PE−2:東ソー社製、(商品名)東ソーHMS CK38(MFR0.8g/10分、密度938kg/m、溶融張力100mN、Mn25,000、Mw/Mn4.4)
PE−3:東ソー社製、(商品名)東ソーHMS CK47(MFR4.0g/10分、密度940kg/m、溶融張力72mN、Mn23,000、Mw/Mn3.7)
実施例1〜3
エチレン・α−オレフィン共重合体として上記PE−1〜3を使用し、同材料100重量部に対し、発泡核剤としてタルク(商品名:MS、日本タルク製、平均粒径8μm)を0.1重量部の割合で含有する発泡成形用ポリエチレン系樹脂組成物をドライブレンドにより調製した。そして、バレルの途中に揮発性液体注入用のバレル孔を有する単軸押出機(スクリュー径50mmφ、L/D=36、共伸機械製)の発泡成形用押出設備を用い、発泡成形用ポリエチレン系樹脂組成物を15kg/時で供給し、溶融混練を行った後、圧縮された液状ブタンを1200g/時でバレル孔から圧入して、分散させ、130℃に設定した円筒ダイにより押出し、ポリエチレン発泡パイプカバーを得た。
得られたポリエチレン発泡パイプカバーは、表面の平滑性が高く均一な微細セルを有しており、発泡倍率は35倍であった。さらに、120℃での厚さ収縮率が7%以下であり、高耐熱用途に使用可能であり、可撓性が良好であることから製品への応用が可能であることを確認した。結果を表1に示す。
実施例4
エチレン・α−オレフィン共重合体として、PE−1を使用し、発泡成形時の液状ブタン量を100g/時に変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
Figure 2013170174
比較例1
エチレン・α−オレフィン共重合体に代えて高圧法により製造された市販の低密度ポリエチレン(東ソー製、(商品名)ペトロセン186;MFR=3.0g/10分、密度=924kg/m、溶融張力90mN、歪硬化性あり、Mn16,000、Mw/Mn3.9)を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例2
エチレン・α−オレフィン共重合体に代えて高圧法により製造された市販の低密度ポリエチレン(東ソー製、(商品名)ペトロセン172;MFR=0.3g/10分、密度=920kg/m、溶融張力230mN、歪硬化性あり、Mn19,000、Mw/Mn5.5)を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例3
エチレン・α−共重合体に代えてチグラー・ナッタ型触媒を用いて製造された市販の直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー製、(商品名)ニポロン−LM50;MFR=3.0g/10分、密度=936kg/m、溶融張力9mN、歪硬化性なし、Mn25,000、Mw/Mn3.5)を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例4
エチレン・α−オレフィン共重合体に代えてチグラー・ナッタ型触媒を用いて製造された市販の直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー製、(商品名)ニポロン−LF13;MFR=0.5g/10分、密度=920kg/m、溶融張力45mN、歪硬化性なし、Mn23,000、Mw/Mn3.7)を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例5
発泡成形時の液状ブタン量を60g/時に変えた以外は、実施例2と同様に行った。結果を表2に示す。
Figure 2013170174

Claims (3)

  1. ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が20mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が935kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、円筒状であることを特徴とするポリエチレン発泡パイプカバー。
  2. エチレン系重合体のMw/Mnが3.0〜6.0の範囲であり、Mnが15,000以上であることを特徴とする請求項1のポリエチレン発泡パイプカバー。
  3. JIS A 9511に準拠して測定された120℃の厚さ収縮率が7%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2のポリエチレン発泡パイプカバー。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016030772A (ja) * 2014-07-28 2016-03-07 東レ株式会社 発泡体、それからなる積層体、成形体及び自動車内装材

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