JP2013165264A - 外観が良好な太陽電池モジュール及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が60.0以下であることを特徴とする太陽電池モジュール。
ここで、収縮応力(σ(A))は、ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の測定値(Pa)であり、せん断弾性率(G´(B))は、ラミネート設定温度における振動周波数1Hzでの封止材(B)の測定値(Pa)である
【選択図】なし
Description
本発明の目的は、太陽電池モジュールにおいて、ラミネート後の外観が良好である太陽電池モジュール、バックシート−封止材一体型シート、および太陽電池モジュールの製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(13)に関する。
(1)少なくとも、バックシート(A)と、封止材(B)とがラミネートされてなる太陽電池モジュールであって、ラミネート設定温度における下記バックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と下記封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が60.0以下であることを特徴とする太陽電池モジュール。
バックシート(A)の収縮応力(σ(A)):ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の測定値(Pa)
封止材(B)のせん断弾性率(G´(B)):ラミネート設定温度における振動周波数1Hzでの封止材(B)の測定値(Pa)
(2)ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が0.01以上、60.0以下であることを特徴とする上記(1)に記載の太陽電池モジュール。
(3)ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が0.01以上、35.0以下であることを特徴とする上記(1)に記載の太陽電池モジュール。
(4)ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が1.0以上、20.0以下であることを特徴とする上記(1)に記載の太陽電池モジュール。
(5)バックシート(A)の収縮応力(σ(A))が130℃および150℃において、7×105Pa以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
(6)バックシート(A)の収縮応力(σ(A))が130℃および150℃において、4×105Pa以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
(7)封止材(B)がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体を主成分とする封止材であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
(8)封止材(B)が実質的に架橋しない封止材であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
(9)封止材(B)の振動周波数10Hz、温度20℃における貯蔵弾性率(E´)が1〜100MPaであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
(10)封止材(B)が、少なくとも動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が100MPa未満である軟質層、及び動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が100MPa以上である硬質層を有する積層構成であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
(11)バックシート(A)と封止材(B)が一体化している部材であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
(12)ラミネート設定温度が100℃以上、135℃以下であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
(13)少なくとも、バックシート(A)と、封止材(B)とを備えた太陽電池モジュール用バックシート−封止材一体型シートであって、ラミネート設定温度における下記バックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と下記封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が60.0以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシート−封止材一体型シート。
バックシート(A)の収縮応力(σ(A)):ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の測定値(Pa)
封止材(B)のせん断弾性率(G´(B)):ラミネート設定温度における振動周波数1Hzでの封止材(B)の測定値(Pa)
また、ラミネート設定温度におけるバックシートの収縮応力と封止材のせん断弾性率という基礎的な物性を測定することにより、太陽電池モジュールを実際にラミネートする前に、仕上がり外観の予測が可能となる。さらに、効率的にラミネート条件を設定できることから、条件検討に要する時間と各種部材の費用が抑制され、結果、太陽電池モジュールの製造コストを大幅に低減させることが期待できる。
本発明の太陽電池モジュールは、ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))(以下、凸指数と呼ぶことがある)が特定の範囲であることを特徴とするものである。
ここで、太陽電池モジュールは、一般的に、バックシート(A)と封止材(B)と、太陽電池素子と、透明基材(上部保護材)とを有するものである。
本発明に用いるバックシート(A)は、後述する凸指数を満足すれば特に制限されるものではない。具体的には、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)など)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)など)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、各種α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)及びエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)など)、環状オレフィン系樹脂(COP、COCなど)、ポリスチレン系樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA)及びシンジオタクチックポリスチレン(SPS)など)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES) 、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)およびバイオポリマー(ポリ乳酸、イソソルバイド系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリエステル系ポリマー及びポリオレフィン系ポリマーなど)等の電気絶縁性を有する材料によって基材シート、または、基材フィルムが形成される。
さらに、基材シートの表面及び/または裏面には、ハンドリング性や接着性および耐久性などを向上させるため、必要に応じて、エンボス加工や各種処理(コロナ処理、プラズマ処理など)およびコーティング(フッ素系樹脂コーティング、加水分解防止コーティング、ハードコーティングなど)などを行うことができる。
ここで、バックシートに一般的に要求される特性としては、封止材との接着性、機械的強度、耐久性(耐候性、耐加水分解特性など)、光反射性、水蒸気バリア性、難燃性、意匠性、経済性およびラミネート後の外観などが挙げられ、中でも結晶シリコン系太陽電池モジュールの場合には、封止材との接着性、機械的強度、耐久性、経済性およびラミネート後の外観が重要視される。
(1)フッ素系樹脂層/接着層/ポリエステル樹脂層/接着層/易接着層(封止材側);具体的には、PVF/接着層/二軸延伸PET/接着層/EVA、PVF/接着層/二軸延伸PET/接着層/PE、PVF/接着層/二軸延伸PET/接着層/PP、ETFE/接着層/二軸延伸PET/接着層/EVA、ETFE/接着層/二軸延伸PET/接着層/PE、ETFE/接着層/二軸延伸PET/接着層/PPなど、
(2)ポリエステル樹脂層/接着層/ポリエステル樹脂層/接着層/易接着層(封止材側);具体的には、二軸延伸PET(耐加水分解処方)/接着層/二軸延伸PET/接着層/EVA、二軸延伸PET(耐加水分解処方)/接着層/二軸延伸PET/接着層/PE、二軸延伸PET(耐加水分解処方)/接着層/二軸延伸PET/接着層/PP、(表面コーティング)二軸延伸PET/接着層/二軸延伸PET/接着層/易接着層など、
(3)ポリエステル樹脂層/接着層/易接着層(封止材側);具体的には、二軸延伸PET(耐加水分解処方)/接着層/EVA、二軸延伸PET(耐加水分解処方)/接着層/PE、二軸延伸PET(耐加水分解処方)/接着層/PP、(表面コーティング)二軸延伸PET/接着層/易接着層などが挙げられる。
上記(1)〜(3)の接着層は必要に応じて配置するものであり、接着層がない構成でもよい。また、水蒸気バリア性を重要視する場合には、例えば、前記した二軸延伸PET(耐加水分解処方)/接着層/二軸延伸PET/接着層/PE構成において、二軸延伸PET(耐加水分解処方)/接着層/各種蒸着層(SiOx、アルミナなど)/二軸延伸PET/接着層/二軸延伸PET)/接着層/PEなどの構成としてもよい。
本発明に用いる封止材(B)は、後述する凸指数を満足すれば特に制限されるものではなく、バックシート側、フロントシート側などのいずれの位置にも使用できる。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アイオノマー(IO)およびポリビニルブチラール(PVB)などを主成分とする封止材が挙げられるが、本発明においては、下記の(B−1)〜(B−4)の各々に示されるオレフィン系重合体を主成分とする封止材が好適に用いられる。ここで、主成分としては、得られる封止材の柔軟性、フィッシュアイ(ゲル)の少なさ、回路の腐食性物質(酢酸など)の少なさおよび経済性などの観点から(B−1)や(B−2)に示されるものが好ましく、中でも低温特性に優れる点で(B−1)に示されるものが特に好適に用いられる。
(B−1)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。ここで、エチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示される。
本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。また、透明性や柔軟性などの観点からエチレン−α−オレフィンランダム共重合体が好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体(B−1)の立体構造、分岐、分岐度分布、分子量分布や共重合形式(ランダム、ブロックなど)は、特に制限されるものではないが、例えば、長鎖分岐を有する共重合体は、一般に機械物性が良好であり、また、シートを成形する際の溶融張力(メルトテンション)が高くなりカレンダー成形性が向上するなどの利点がある。
ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。例えば、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い値、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量を増大させる観点からMFRは、1〜50g/10minが好ましく、2〜50g/10minがより好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minである。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、好ましくは2〜50g/10min、より好ましくは3〜30g/10minである。
上記の結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
(B−2)は、プロピレンと該プロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体あるいは、プロピレンの単独重合体である。但し、これらの共重合形式(ランダム、ブロックなど)、分岐、分岐度分布や立体構造には特に制限がなく、イソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックあるいはこれらの混在した構造の重合体とすることができる。
共重合可能な他の単量体としては、エチレンや1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン−1、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンおよびジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類等が例示される。
本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からプロピレンと共重合するα−オレフィンとしては、エチレンや1−ブテンが好適に用いられる。また、透明性や柔軟性などの観点からプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が好適に用いられる。プロピレンと共重合する単量体は1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。例えば、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量を増大させる観点からMFRは、好ましくは2〜50g/10min、より好ましくは3〜30g/10minである。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、好ましくは2〜50g/10min、より好ましくは3〜30g/10minである。
(B−3)は、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンと脂肪族不飽和カルボン酸とからなる共重合体の金属塩(好ましい金属はZn、Na、K、Li、Mg等である)である。
具体的な商品としては、三井化学(株)製の商品名「ハイミラン(HIMILAN)」、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「アンプリファイIO(AMPLIFY IO)」等を例示することができる。
(B−4)は、エチレンと、酢酸ビニルエステル、脂肪族不飽和カルボン酸および脂肪族不飽和モノカルボン酸アルキルエステルより選ばれる少なくとも1つの単量体とからなるエチレン系共重合体である。
具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。ここで、該エステル成分としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの炭素数1〜8のアルキルエステルが挙げられる。本発明においては、上記2成分の共重合体に制限されることなく、さらに第3の成分を加えた3成分以上の多元共重合体(例えば、エチレンと脂肪族不飽和カルボン酸および脂肪族不飽和カルボン酸エステルより適宜選ばれる3元以上の共重合体等)であってもよい。エチレンと共重合される単量体の含有量は、共重合体中の全単量体単位に対して、通常5〜35質量%である。
ここで、封止材の柔軟性を重視すると主成分とするオレフィン系重合体の結晶融解ピーク温度(Tm)は、100℃未満であることが好ましいが、結晶融解ピーク温度を発現しない、すなわち非晶性の重合体も適用可能である(以下、非晶性の重合体を含めて、結晶融解ピーク温度が100℃未満のオレフィン系重合体と呼ぶ)。原料ペレットのブロッキングなどを考慮すると、該結晶融解ピーク温度が30〜95℃であることが好ましく、45〜80℃であることがより好ましく、60〜80℃であることがさらに好ましい。
また、封止材の耐熱性を重視すると、結晶融解ピーク温度(Tm)が100℃未満のオレフィン系重合体に結晶融解ピーク温度(Tm)が100℃以上のオレフィン系重合体を混合して用いることが好ましい。混合するオレフィン系重合体の結晶融解ピーク温度(Tm)の上限値は、特に制限されるものではないが、太陽電池素子(セル)の熱劣化や太陽電池モジュール作製時のラミネート設定温度を考慮すると150℃程度である。本発明においては、太陽電池モジュールを作製する際のラミネート設定温度を低温化でき、太陽電池素子(セル)を熱劣化させにくいことから130℃以下であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましい。
ここで、樹脂組成物中における両オレフィン系重合体の含有量は、特に制限されるものではないが、得られる封止材の柔軟性、耐熱性、透明性等を考慮すると、両オレフィン系重合体の混合(含有)質量比(結晶融解ピーク温度が100℃未満のオレフィン系重合体/結晶融解ピーク温度が100℃以上のオレフィン系重合体)は、好ましくは99〜50/1〜50、より好ましくは、98〜60/2〜40、より好ましくは、97〜70/3〜30、さらに好ましくは、97〜80/3〜20、よりさらに好ましくは、97〜90/3〜10である。但し、両オレフィン系重合体の合計を100質量部とする。ここで、混合(含有)質量比が該範囲内であれば、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランスに優れた封止材が得られ易いため好ましい。
ここで、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体のブロック構造は、特に制限されるものではないが、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランス化の観点から、コモノマー含有率、結晶性、密度、結晶融解ピーク温度(Tm)、又はガラス転移温度(Tg)の異なる2つ以上のセグメント又はブロックを含有するマルチブロック構造であることが好ましい。具体的には、完全対称ブロック、非対称ブロック、テ−パ−ドブロック構造(ブロック構造の比率が主鎖内で漸増する構造)などが挙げられる。該マルチブロック構造を有する共重合体の構造や製造方法については、国際公開第2005/090425号パンフレット(WO2005/090425)、国際公開第2005/090426号パンフレット(WO2005/090426)、および国際公開第2005/090427号パンフレット(WO2005/090427)などで詳細に開示されているものを採用することができる。
該マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体は、本発明において好適に使用でき、α−オレフィンとして1−オクテンを共重合成分とするエチレン−オクテンマルチブロック共重合体が好ましい。該ブロック共重合体としては、エチレンに対してオクテン成分が多く(約15〜20モル%)共重合されたほぼ非晶性のソフトセグメントと、エチレンに対してオクテン成分が少なく(約2モル%未満)共重合された結晶融解ピーク温度が110〜145℃である高結晶性のハードセグメントが、各々2つ以上存在するマルチブロック共重合体が好ましい。これらのソフトセグメントとハードセグメントの連鎖長や比率を制御することにより、柔軟性と耐熱性の両立を達成することができる。
該マルチブロック構造を有する共重合体の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」が挙げられる。
ここで、シラン変性エチレン系樹脂について説明する。
本発明に用いられるシラン変性エチレン系樹脂は、通常、ポリエチレン系樹脂とビニルシラン化合物及びラジカル発生剤を高温(160℃〜220℃程度)で溶融混合し、グラフト重合させることにより得ることができる。
上記ポリエチレン系樹脂としては、特に制限されるものではないが、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。これらは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、特には、前記(B−1)で挙げたポリエチレンを好ましく使用することができる。
ビニルシラン化合物としては、上記ポリエチレン系樹脂とグラフト重合するものであれば特に制限されるものではないが、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、および、ビニルトリカルボキシシランが挙げられる。これらビニルシラン化合物は、1種のみを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、反応性、接着性や色調などの観点からビニルトリメトキシシランが好適に用いられる。
ラジカル発生剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−パーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、または、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらラジカル発生剤は、1種のみを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、実質的に含有していないとは、樹脂組成物100質量部に対して、0.05質量部以下、好ましくは0.03質量部以下、さらに好ましくは0.00質量部である。
本発明に用いる封止材(B)を構成する樹脂組成物には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、放熱剤、造核剤、顔料(例えば、酸化チタン、カーボンブラックなど)、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明においては、封止材(B)が、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが後述する理由等から好ましい。また、本発明においては、封止材を構成する樹脂組成物に架橋剤や架橋助剤を添加する必要はないが、添加することを排除するものではなく、例えば、高度の耐熱性を要求される場合は架橋剤および/または架橋助剤を配合してもよい。本発明においては、用いる封止材(B)が実質的に架橋しない封止材であることが好ましい。ここで、実質的に架橋しないとは、ASTM 2765−95で測定してキシレン可溶物が少なくとも70%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上であることとする。
シランカップリング剤は、封止材の保護材(ガラス、樹脂製のフロントシート、バックシートなど)や太陽電池素子等に対する接着性を向上させるのに有用であり、その例としては、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基のような不飽和基、アミノ基、エポキシ基などとともに、アルコキシ基のような加水分解可能な基を有する化合物を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。これらシランカップリング剤は、1種のみを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、接着性が良好であり、黄変などの変色が少ないこと等からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。
該シランカップリング剤の添加量は、封止材(B)を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.1〜5質量部程度であり、好ましくは0.2〜3質量部である。また、シランカップリング剤と同様に、有機チタネート化合物などのカップリング剤も有効に活用できる。
酸化防止剤としては、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、ホスファイト系など各種タイプのものを挙げることができる。モノフェノール系としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどを挙げることができる。ビスフェノール系としては、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカンなどを挙げることができる。
上記酸化防止剤は、1種のみを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤としては、種々の市販品が適用でき、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5− クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
該紫外線吸収剤の添加量は、封止材(B)を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.01〜2.0質量部程度であり、好ましくは0.05〜0.5質量部である。
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。ヒンダードアミン系以外にも光安定化剤として機能するものはあるが、着色している場合が多く本発明に用いる封止材(B)には好ましくない。
該ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、封止材(B)を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.01〜0.5質量部程度であり、好ましくは0.05〜0.3質量部である。
例えば、封止材(B)の動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が1〜2000MPaであることが好ましい。太陽電池素子の保護や柔軟性を考慮すると、1〜100MPaであることが好ましく、5〜50MPaであることがより好ましく、5〜30MPaであることがさらに好ましい。尚、封止材(B)が積層構成の場合は、前記貯蔵弾性率(E´)は積層構成全体の封止材の貯蔵弾性率をいう。また、シート形状などで封止材を採取した場合のハンドリング性やシート表面同士のブロッキング防止、あるいは、太陽電池モジュールにおける軽量化(通常3mm程度に対して、薄膜ガラス(1.1mm程度)が適用可能、あるいはガラスレスの構成が適用可能)などを考慮すると、100〜800MPaであることが好ましく、200〜600MPaであることがより好ましい。該貯蔵弾性率(E´)は、粘弾性測定装置を用いて、振動周波数10Hzで所定温度範囲を測定し、温度20℃における値を求めることで得られる。
封止材の形状は、限定されるものではなく、液状であっても、シート状であってもよいが、取り扱い性の観点からシート状であるのが好ましい。
シート状の封止材の製膜方法としては、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法、カレンダー法やインフレーション法等を採用することができ、特に制限されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性等の面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる樹脂組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね130〜300℃、好ましくは、150〜250℃である。
封止材の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.03mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、かつ、通常1mm以下、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。
また、各種被着体への接着性を向上させる目的で表面にコロナ処理やプラズマ処理およびプライマー処理などの各種表面処理を行うことができる。ここで、表面処理量の目安としては、濡れ指数で50mN/m以上であることが好ましく、52mN/m以上であることがより好ましい。濡れ指数の上限値は一般的に70mN/m程度である。
上記複数の層からなる積層構成としては、少なくとも、後述する軟質層及び硬質層を有する積層構成が挙げられ、例えば、次のような積層構成が好適に用いられる。
(1)2種3層構成;具体的には、軟質層/硬質層/軟質層、硬質層/軟質層/硬質層、接着層/中間層/接着層、軟質層/再生添加層/軟質層など、
(2)2種2層構成;具体的には、軟質層/硬質層、軟質層(I)/軟質層(II)、接着層/軟質層、接着層/硬質層、軟質層(添加剤含む)/軟質層(添加剤含まず)、軟質層(添加剤Aを含む)/軟質層(添加剤Bを含む)(添加剤処方が異なる)など、
(3)3種3層構成;具体的には、軟質層/接着層/硬質層、軟質層(I)/中間層/軟質層(II)、接着層(I)/中間層/接着層(II)など、
(4)3種5層構成;具体的には、軟質層/接着層/硬質層/接着層/軟質層、硬質層/接着層/軟質層/接着層/硬質層、軟質層/再生添加層/硬質層/再生添加層/軟質層および軟質層/再生添加層/硬質層/再生添加層/硬質層などが挙げられる。
なお、中間層とは、封止材(B)の厚さを増すためや所望の性能を向上させるなどの観点から設けられ、例えばオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物から形成される層である。再生添加層とは、経済合理性や資源の有効活用などの観点から設けられ、例えば封止材(B)の製膜やスリット加工などの際に生じるトリミング(耳)を再生添加した樹脂組成物から形成される層である。
接着層とは、隣接する層同士や被着体などへの接着性を向上させる観点から設けられ、例えばカルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基及びシラノール基などの極性基で変性された樹脂や粘着付与樹脂などを含有する樹脂組成物から形成される層である。
また、上記添加剤としては、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、放熱剤、造核剤、顔料、難燃剤、変色防止剤、架橋剤及び架橋助剤などが挙げられる。
ここで、太陽電池素子に密着する軟質層の厚みは、特に制限されるものではないが、太陽電池素子の保護性や樹脂の回り込み性などを考慮すると、0.005mm以上であることが好ましく、0.02〜0.2mmであることがより好ましい。なお、上記軟質層の各々の厚みは、同一でも異なっていてもよい。また、硬質層の厚みは、特に制限されるものではないが、封止材全体としてのハンドリング性の点から、0.025mm以上であることが好ましく、0.05〜0.8mmであることがより好ましい。
本発明に用いるバックシート(A)と封止材(B)は、各々単独で組み合わせてもよいし、バックシートと封止材が予め一体化されたバックシート−封止材一体型シートも好適に用いられる。本発明のバックシート−封止材一体型シートは、少なくとも、前記バックシート(A)と、前記封止材(B)とを備える。
本発明の太陽電池モジュールは、ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が60.0以下であることが重要である。ここで、収縮応力(σ(A))は、ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の測定値(Pa)であり、せん断弾性率(G´(B))は、ラミネート設定温度における振動周波数1Hzでの封止材(B)の測定値(Pa)である。
本発明において、「ラミネート設定温度」とは、バックシート(A)、封止材(B)、後述する太陽電池(セル)及び後述する上部保護材を重ね合せ、ラミネートする際のラミネーターの設定温度であり、「ラミネート温度域」とは、ラミネート設定温度の範囲である。また、ラミネート設定温度は、好ましくは100℃以上、170℃以下であり、より好ましくは100℃以上、135℃以下である。
ここで、凸指数の上限値については、より小さいほど好ましいが、下限値については、経済性とラミネート時の封止材の回りこみ性などを考慮し、1.0以上が好ましい。
まず、バックシート(A)の収縮応力(σ(A))は、用いたバックシート(A)から縦方向70mm、横方向10mmの大きさに試料を3枚切り取り、チャック間距離50mmで両端を固定し、ラミネート設定温度のシリコンバスに5分間浸漬し、縦方向に発生する最大の収縮応力の平均値(Pa)を求めたものである。
次に、封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))は、Rheology社製のレオメーター(商品名「レオメーターMR−300T」)を用いて、振動周波数1Hz、昇温速度3℃/分、歪0.5%の条件で、φ20mmパラレルプレート上にのせた試料(厚さ0.3mm)のせん断弾性率(G´)を80℃〜200℃の温度範囲で測定し、ラミネート設定温度における値(Pa)を求めたものである。
次に、凸指数の制御方法について説明する。凸現象を抑制するためには、凸指数はより小さいほど好ましい。凸指数を小さくするためには(1)ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の熱収縮挙動に起因する収縮応力(σ(A))を小さくする方法と(2)ラミネート設定温度における封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))を大きくする方法および(3)ラミネートを低温で行うことが主に挙げられる。
次に本発明の太陽電池モジュールは、封止材(B)を用い、太陽電池素子を上下の保護材であるフロントシートおよびバックシート(A)で固定することにより製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができ、好ましくは、封止材と、上部保護材と、太陽電池素子と、下部保護材とを用いて作製された太陽電池モジュールが挙げられ、具体的には、上部保護材/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟むような構成のもの(図1参照)、下部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部保護材を形成させるような構成のもの、上部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
なお、本発明の太陽電池モジュールにおいて、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、全ての部位に同じ封止材を用いてもよいし、樹脂組成、表面形状、厚みなどが異なる封止材を用いてもよい。
(1)結晶融解ピーク温度(Tm)
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)を求めた。
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(ΔHm)(J/g)を求めた。
用いたバックシート(A)から縦方向150mm、横方向150mmの大きさに切り取り、封止材側面の中央に縦方向100mm、横方向100mmの大きさの格子目を油性マジックで記入した試料を3枚作製した。次いで、150℃の熱風オーブンに30分間放置し、縦(MD)方向について、記入した格子目の収縮前の原寸に対する収縮量の比率の平均値(%)を算出した。
アイティ計測(株)製の粘弾性測定装置、商品名「粘弾性スペクトロメーターDVA−200」を用いて、試料(縦方向4mm、横方向60mm)を振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmで横方向について、−150℃から150℃まで測定し、得られたデータから20℃における貯蔵弾性率(E´)(MPa)を求めた。
用いたバックシート(A)から縦方向70mm、横方向10mmの大きさに試料を3枚切り取り、チャック間距離50mmで両端を固定し、ラミネート設定温度のシリコンバスに5分間浸漬し、縦方向に発生する最大の収縮応力の平均値(Pa)を求めた。
Rheology社製のレオメーター、商品名「レオメーターMR−300T」を用いて、振動周波数:1Hz、昇温速度:3℃/分、歪0.5%の条件で、φ20mmパラレルプレート上にのせた試料(厚さ0.3mm)のせん断弾性率(G´)を80℃〜200℃の温度範囲で測定し、ラミネート設定温度における値(Pa)を求めた。
前記(5)および(6)で求められた値の比(σ(A)/G´(B))を求めた。
各実施例にて作製された3枚の太陽電池モジュールを、それぞれ下記基準でラミネート外観を評価した。また、3枚のモジュール(n=1〜3)の突起数の平均値で総合評価も同様に行った。
(◎)凸現象がほとんど見られないか微小である(0〜3箇所/120箇所)
(○)凸現象が微小であるが見られる(4〜9箇所/120箇所)
(△)凸現象が少し見られる(10〜19箇所/120箇所)
(×)凸現象が多く見られ、また、突起も高い(20箇所以上/120箇所)
実施例で使用したバックシートを下記する。
(A−1)Madico社製バックシート、商品名Protekt HD(総厚み;265μm、積層構成;(封止材側)EVA/接着層/PET/コート層、収縮応力(130℃);2.65×105Pa、収縮応力(150℃);4.32×105Pa、熱収縮率(150℃×30分、MD);1.03%、Tm(EVA層);104℃)
封止材を構成する材料を下記する。
(X−1);エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:アフィニティーEG8100G、密度:0.870g/cm3、エチレン/1−オクテン=68/32質量%(89/11モル%)、Tm:59℃、ΔHm:49J/g、20℃における貯蔵弾性率(E´):14MPa、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):1g/10min)
(B−1)(I)層として、上記(X−1)と(X−3)を、質量比70:30の割合で混合した樹脂組成物、また、(II)層として、(X−1)と(X−4)を、質量比95:5の割合で混合した樹脂組成物をそれぞれ用いて、(I)層/(II)層/(I)層の積層構成となるように、同方向二軸押出機を用いたTダイ法にて樹脂温度180〜200℃にて共押出成形した後、25℃のキャストエンボスロールで急冷製膜し、総厚みが0.50mm、各層厚みが(I)/(II)/(I)=0.05mm/0.40mm/0.05mmであり、20℃における貯蔵弾性率(E´):15MPaである封止材を得た。
真空ラミネーター((株)エヌ・ピー・シー製、商品名:NLM−230×360)により、表1に示す各部材を用い、下記条件により太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
〈構成〉
ガラス/封止材(B)/セル/封止材(B)/バックシート(A)
・ガラス;中島硝子工業(株)製白板エンボス/太陽電池向けカバーガラス
商品名ソレクト、サイズ996mm×1664mm、厚み3.2mm
・セル;Qセルズジャパン(株)製太陽電池セル、商品名Q6LTT−200
(6インチ、2バスバータイプ)
*セル数:60(6列×10セル)
*セル数が60である場合、最大120箇所に凸現象が発生する可能性がある
・配線;日立電線ファインテック(株)製PVワイヤー
商品名NoWarp、SSA−SPS 0.2×2.0
(0.2%耐力;56〜57MPa)
・バックシート(A);A−1
・封止材(B);B−1
*封止材(B)のサイズが前記ガラスと同一である(即ち、サイズ996mm×1664mm)
〈ラミネート条件〉
・ラミネート設定温度;130℃
・真空引き時間;5分
・プレス保持時間;5分
・圧力条件;1st(30kPa)、2nd(60kPa)、3rd(70kPa)
・冷却ファン;使用せず
実施例1において、ラミネート設定温度を130℃から150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、使用する封止材(B)をB−1からB−2に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、使用するバックシート(A)をA−1からA−2に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例4において、ラミネート設定温度を130℃から150℃に変更した以外は、実施例4と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、使用するバックシート(A)をA−1からA−3に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例6において、使用する封止材(B)をB−1からB−2に、ラミネート設定温度を130℃から150℃に変更した以外は、実施例6と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、使用するバックシート(A)をA−1からA−4に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、使用するバックシート(A)をA−1からA−5、また、使用する封止材(B)をB−1からB−2、ラミネート設定温度を130℃から150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、使用するバックシート(A)をA−1からA−6(バックシート−封止材一体型シート)、また、使用する封止材(B)をB−1からB−2とし、構成をガラス/封止材(B)/セル/バックシート(A)(バックシート−封止材一体型シート)に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、封止材(B)をB−1からB−2に、ラミネート設定温度を130℃から150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例5において、封止材(B)をB−1からB−2に変更した以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例8において、封止材(B)をB−1からB−2に、ラミネート設定温度を130℃から150℃に変更した以外は、実施例8と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例8において、封止材(B)をB−1からB−2に変更した以外は、実施例8と同様にして、太陽電池モジュールを3枚作製し、ラミネート外観の評価を行った。結果を表1に示す。
また、ラミネート設定温度におけるバックシートの収縮応力と封止材のせん断弾性率という基礎的な物性を測定することにより、太陽電池モジュールを実際にラミネートする前に、仕上がり外観の予測が可能となる。さらに、効率的にラミネート条件を設定できることから、条件検討に要する時間と各種部材の費用が抑制され、結果、太陽電池モジュールの製造コストを大幅に低減させることが期待できる。
12A,12B・・・封止樹脂層
14A,14B・・・太陽電池素子
16・・・バックシート
18・・・ジャンクションボックス
20・・・配線
Claims (13)
- 少なくとも、バックシート(A)と、封止材(B)とがラミネートされてなる太陽電池モジュールであって、ラミネート設定温度における下記バックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と下記封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が60.0以下であることを特徴とする太陽電池モジュール。
バックシート(A)の収縮応力(σ(A)):ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の測定値(Pa)
封止材(B)のせん断弾性率(G´(B)):ラミネート設定温度における振動周波数1Hzでの封止材(B)の測定値(Pa) - ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が0.01以上、60.0以下であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。
- ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が0.01以上、35.0以下であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。
- ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が1.0以上、20.0以下であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。
- バックシート(A)の収縮応力(σ(A))が130℃および150℃において、7×105Pa以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
- バックシート(A)の収縮応力(σ(A))が130℃および150℃において、4×105Pa以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
- 封止材(B)がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体を主成分とする封止材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
- 封止材(B)が実質的に架橋しない封止材であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
- 封止材(B)の振動周波数10Hz、温度20℃における貯蔵弾性率(E´)が1〜100MPaであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
- 封止材(B)が、少なくとも動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が100MPa未満である軟質層、及び動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が100MPa以上である硬質層を有する積層構成であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
- バックシート(A)と封止材(B)が一体化している部材であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
- ラミネート設定温度が100℃以上、135℃以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
- 少なくとも、バックシート(A)と、封止材(B)とを備えた太陽電池モジュール用バックシート−封止材一体型シートであって、ラミネート設定温度における下記バックシート(A)の収縮応力(σ(A))(Pa)と下記封止材(B)のせん断弾性率(G´(B))(Pa)の比(σ(A)/G´(B))が60.0以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシート−封止材一体型シート。
バックシート(A)の収縮応力(σ(A)):ラミネート設定温度におけるバックシート(A)の測定値(Pa)
封止材(B)のせん断弾性率(G´(B)):ラミネート設定温度における振動周波数1Hzでの封止材(B)の測定値(Pa)
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