JP2013163875A - 不織布 - Google Patents

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謙 谷沢
Takeshi Kobayashi
剛 小林
Yasuko Matsubayashi
康子 松林
Noriko Dohata
典子 道畑
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Abstract

【課題】
様々な産業資材用途に有用な、複数の凸部分を備える不織布の提供を目的とする。
【解決手段】
本発明の不織布は、複数の凸部分を備えているため主面側の表面積が広く、凸部分内部に空隙が複数存在しているため、クッション性や吸液性や保液性に優れるなどの諸特性を有する。
また、本発明の不織布は、空隙中には実質的に繊維が存在していないため、主面側の表面積が広いにも関わらず目付が軽い。
そして、本発明の不織布は、凸部分内部にも繊維層を備えることで構成されているため、凸部分の形状が変形した場合であっても、凸部分内部に存在する繊維層によって凸部分の形状が復元され易い。
【選択図】 図5

Description

本発明は、複数の凸部分を備える不織布に関する。
従来から、産業資材用途に使用する材料として、複数の凸部分を備える不織布が検討されている。
主面が平坦な不織布と比べ複数の凸部分を備える不織布は、例えば、主面側の表面積が広いこと、凸部分内部に空隙が存在している場合にはクッション性や吸液性や保液性に優れること、などの諸特性を有する。
そして、複数の凸部分を備える不織布は、例えば、気体や液体の濾過材料、吸音材や遮音材などの音響材料、貼付剤用基材やプラスター剤用基材などの医療用材料、芯地などの衣料材料、自動車天井材や壁面表皮材などの自動車用材料、壁材や壁紙などの建築用材料、化粧水等を保持したスキンケアシートやタオルやオムツなどの衛生材料、断熱材や緩衝材や放熱材など工業材料、バイオリアクターや細胞培養基材などバイオサイエンス材料、オイルフェンスなどの環境保全材料など、様々な産業資材用途に有用である。
複数の凸部分を備える不織布として、特許文献1には、例えばメルトブロー法などを用いて格子状の成型部に半溶融状態の繊維を紡出して、成型部間に半溶融状態の繊維を垂下させることで垂下繊維壁を形成してなる、立体不織布が開示されている。
特許文献1の立体不織布は半溶融状態の繊維の紡出速度を調整することで、垂下繊維壁の高さを調製して種々の形状の立体不織布を製造できること、予め形成された立体不織布に対して、半溶融状態の繊維を垂下し難い速度に調整して紡出することで、立体不織布の凹部に繊維で蓋をできることが開示されている。そして、特許文献1の立体不織布は、フィルタ、緩衝材、吸音材として使用できることが開示されている。
特開2002-339221号公報(特許請求の範囲、0004、0008、0014、0031、0037、図14など)
本発明者らは、引用文献1が開示する立体不織布の凸部分を嵩高にすることで主面側の表面積を広くして、更に、様々な産業資材用途に有用な、複数の凸部分を備える不織布を提供することを検討した。
しかし、引用文献1が開示する立体不織布の凸部分を嵩高にして主面側の表面積を広くした場合、調製した立体不織布をプリーツ加工したり捲回あるいは積層して使用した際に、凸部分の形状が変形した場合にその形状が復元され難いという問題の発生が考えられた。
特許文献1の立体不織布は、凹部に繊維で蓋をした場合であっても凸部分内部(立体不織布の凹部と蓋との間)に繊維が存在しておらず、凸部分の形状が変形した場合にその形状を凸部分内部から復元しようとする機能が備えられていない。そのため、上述のように立体不織布に対して張力や圧力などの力を作用させた際に、凸部分の形状が変形すると形状が戻り難く変形したままとなる傾向がある。
そして、形状が変形した凸部分を備える立体不織布を用いて調製した産業資材は、例えば、立体不織布をフィルタとして使用した場合には変形した凸部分の存在によって濾過性能が低下する、立体不織布を緩衝材として使用した場合には変形した凸部分の存在によって緩衝性能が低下する、立体不織布を吸音材として使用した場合には変形した凸部分の存在によって吸音性能が低下するなどして、諸性能が意図せず低下するという問題を有する。
そのため、引用文献1の発明を用いる限りでは、更に、様々な産業資材用途に有用な、主面に凸部分を備える不織布を得ることが困難であると考えられた。
本発明は、更に、様々な産業資材用途に有用な、複数の凸部分を備える不織布の提供を目的とする。
本発明は、
[1]「繊維層を複数備えることで構成された、複数の凸部分を備える不織布であって、
前記繊維層に囲まれて形成された空隙が、前記凸部分内部に複数存在していることを特徴とする、
複数の凸部分を備える不織布。」
[2]「請求項1に記載の、複数の凸部分を備える不織布を用いた、吸音材。」
である。
本発明の不織布は「複数の凸部分を備える不織布」であるため主面側の表面積が広く、「繊維層に囲まれて形成された空隙が、前記凸部分内部に複数存在している」ため、クッション性や吸液性や保液性に優れるなどの諸特性を有する。
更に、前記空隙中には実質的に繊維が存在していないため、凸部分内部に存在する繊維層の総質量が増加する割合を低減して嵩高な凸部分を形成できる。そのため、本発明の不織布は主面側の表面積が広いにも関わらず目付が軽い。
そして、本発明の不織布は「繊維層を複数備えることで構成された、複数の凸部分を備える不織布」であると共に「前記繊維層に囲まれて形成された空隙が、前記凸部分内部に複数存在している」不織布であり、凸部分内部にも繊維層を備えることで構成されているため、凸部分の形状が変形した場合であっても、凸部分内部に存在する繊維層によって凸部分の形状が復元され易い。
以上から、本発明の不織布は、更に、様々な産業資材用途に有用である。
また、本発明者らは、本発明の不織布が、吸音性能に優れていることを見出した。
この理由は、完全に明らかとなっていないが、本発明の不織布における凸部分内部に、繊維層に囲まれて形成された空隙が複数存在しているため、進行してきた音波が複数の空隙の中で反射を繰り返すことで減衰するためであると考えられる。
そのため、本発明の不織布を用いた吸音材は、吸音性能に優れる。
本発明の、複数の凸部分を備える不織布を、主面側からみた模式的平面図である。 図1の複数の凸部分を備える不織布の、線分A-A’における断面の一部を拡大した、模式的断面図である。 本発明の、複数の凸部分を備える不織布を製造することのできる、(a)紡糸原液とガス流を平行に吐出することで紡糸できる紡糸装置における、紡糸開始部の模式的斜視図、及び、(b)平面Cにおける紡糸開始部の模式的断面図である。 実施例で使用した、紡糸装置における紡糸開始部の模式的断面図である。 実施例1で調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真である。 実施例2で調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真である。 実施例3で調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真である。 実施例4で調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真である。 実施例5で調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真である。 実施例6で調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真である。 実施例7で調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真である。 実施例8で調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真である。 比較例1のメルトブロー不織布における断面写真である。 比較例3の乾式不織布における断面写真である。 実施例9および比較例2の積層一体化した不織布を、吸音測定に供した結果をまとめたグラフである。 実施例10の積層一体化した不織布および比較例3の乾式不織布を、吸音測定に供した結果をまとめたグラフである。
本発明の、複数の凸部分を備える不織布について、図1-図2を用いて説明する。
図1は、本発明の、複数の凸部分を備える不織布を、主面側からみた模式的平面図である。
図1では、複数の凸部分を備える不織布(10、以降、本発明の不織布と称する)が、その主面に、等間隔で存在する略四角形状をした複数の凸部分(1)と、格子状に存在する凸部分の不存在部分(2、以降、凹部分と称する)を備えている態様を図示している。
また、本発明の不織布(10)を主面側からみた場合の、2箇所以上の凸部分(1)の頂点を通過して本発明の不織布(10)を横断する線分を、線分A-A'として図示している(以降、線分A-A'と称する)。
なお、本発明では、本発明の不織布(10)における凸部分(1、1a、1b)が主として存在している面(図2における、紙面上の上方向の面)を「主面」、本発明の不織布(10)における前記主面と反対側の面(図2における、紙面上の下方向の面)を「もう一方の主面」と称する。
図2は、図1の複数の凸部分を備える不織布の、線分A-A’における断面の一部を拡大した、模式的断面図である。なお、図2では、線分A-A’における断面の一部を拡大して、2つの凸部分(1a、1b)の模式的断面図を図示している。
本発明の不織布(10)は繊維層(3)を複数備えていると共に、繊維層(3)に囲まれて形成された空隙(4)が凸部分(例えば、1a、1b)内部に複数存在していることで構成されている。
そして、図2では、本発明の不織布(10)の厚さを線分t1、凸部分(例えば、1b)の高さを線分t2、凹部分(2)の厚さを線分t3で表している。
本発明の不織布(10)の厚さ(t1)とは、線分A-A’で本発明の不織布(10)を厚さ方向に切断した断面を電子顕微鏡写真で分析し算出される、凸部分(例えば、1b)の頂点ともう一方の主面との最短距離の長さをいう。
また、凹部分(2)の厚さ(t3)とは、前記厚さ(t1)を算出する際に使用した凸部分(例えば、1b)と隣接する凹部分(2)における、主面ともう一方の主面との最短距離の長さをいう。
更に、凸部分(例えば、1b)の高さ(t2)とは、本発明の不織布(10)の厚さ(t1)から凹部分(2)の厚さ(t3)を引いた長さをいう。
なお、本発明では、上述したようにして撮影した本発明の不織布(10)における断面の電子顕微鏡写真を、以降、断面写真と称する。
また、本発明でいう「繊維層」(3)とは、以下に説明する繊維層(3)の判断方法に当てはまる繊維の層を指す。
(繊維層(3)の判断方法)
1.本発明の不織布(10)の主面の電子顕微鏡写真および断面写真を分析し、無作為に選んだ50本の繊維の繊維直径の算術平均値を算出することで、本発明の不織布(10)を構成する繊維の平均繊維径を算出する。
2.断面写真において、凸部分(例えば、1b)の頂点ともう一方の主面との最短距離を結ぶ直線(図2ではBとして図示、以降、直線Bと称する)と、交点を有する各繊維の層の厚さを測定する。
3.直線Bと交点を有する繊維層の厚さが、本発明の不織布(10)を構成する繊維の平均繊維径の3倍〜20倍の範囲内である場合、本発明に係る「繊維層」(3)であると判断する。
繊維層(3)は、図2に図示する凸部分(1b)の態様のように、紙面上の上下方向に隣接する繊維層(3)同士が接触や一体化している態様でも、繊維層(3)内部に空隙(4)を有する態様でもよい。
本発明の不織布(10)は複数の凸部分(1)を備える不織布であるため主面側の表面積が広く、繊維層(3)に囲まれて形成された空隙(4)が、前記凸部分(例えば、1a、1b)内部に複数存在しているため、クッション性や吸液性や保液性に優れるなどの諸特性を有する。
更に、前記空隙(4)中には実質的に繊維が存在していないため、凸部分(例えば、1a、1b)内部に存在する繊維層(3)の総質量が増加する割合を低減して嵩高な凸部分(例えば、1a、1b)を形成できる。そのため、本発明の不織布(10)は主面側の表面積が広いにも関わらず目付が軽い。
また、本発明の不織布(10)は凸部分(例えば、1a、1b)内部にも繊維層(3)を備えることで構成されているため、凸部分(例えば、1a、1b)の形状が変形した場合であっても、凸部分(例えば、1a、1b)内部に存在する繊維層(3)によって凸部分(例えば、1a、1b)の形状が復元され易い。
以上から、本発明の不織布(10)は、更に、様々な産業資材用途に有用である。
また、本発明者らは、本発明の不織布(10)が、吸音性能に優れていることを見出した。
この理由は、完全に明らかとなっていないが、本発明の不織布(10)における凸部分(例えば、1a、1b)内部に、繊維層(3)に囲まれて形成された空隙(4)が複数存在しているため、進行してきた音波が複数の空隙(4)の中で反射を繰り返すことで減衰する、ためであると考えられる。
そのため、本発明の不織布(10)を用いた吸音材は、吸音性能に優れる。
次いで、本発明の詳細について、説明する。
本発明の不織布(10)の、例えば、厚さ(t1)や目付などの諸特性は、特に限定されるべきものではなく、様々な産業資材用途に有用となるよう適宜調整することができる。
本発明の不織布(10)の厚さ(t1)は、50μm〜10mmであることができ、200μm〜7mmであることができ、500μm〜5mmであることができる。また、本発明の不織布(10)の目付は、例えば、1g/m〜100g/mであることができ、4g/m〜70g/m、10g/m〜50g/mであることができる。なお、目付とは不織布を主面側から見た際の1mあたりの質量をいう。
本発明の不織布(10)を主面側からみた際の、例えば、凸部分(1)の個数、凸部分(1)の形状や配置、凸部分(1)一つの面積や本発明の不織布(10)に占める凸部分(1)の面積割合などの態様は、特に限定されるべきものではなく、様々な産業資材用途に有用となるよう適宜調整することができる。
凸部分(1)の数が多いほど本発明の不織布(10)は主面側の表面積が広くなり、更に様々な産業資材用途に有用である。そのため、本発明の不織布(10)が主面に備える凸部分(1)の数は1600個/m2以上であり、40000個/m2以上であるのが最も好ましい。凸部分(1)の数の上限値は本発明の不織布(10)の剛性が弱くなり破断が発生し易くなることのないように適宜調整するが、4000000個/m2以下であるのが好ましく、640000個/m2以下であるのがより好ましい。
本発明の不織布(10)を主面側からみた際の凸部分(1)の形状は、例えば、丸形状、多角形状、線形状、数字形状、アルファベット形状、不定形状などとすることができる。また、凸部分(1)の配置は、凸部分(1)同士の間隔が均一となるように存在している態様(例えば、千鳥状に配列している態様)や、凸部分(1)同士の間隔が不均一となるように存在している態様とすることができる。
本発明の不織布(10)を主面側からみた際の、凸部分(1)一つの面積は、例えば、0.101mm2〜548mm2であることができ、0.757mm2〜13.5mm2であることができる。また、本発明の不織布(10)を主面側からみた際の、本発明の不織布(10)に占める凸部分(1)の面積割合が大きいほど本発明の不織布(10)は主面側の表面積が広くなり、更に様々な産業資材用途に有用である。そのため、本発明の不織布(10)に占める凸部分(1)の面積割合は、30%以上であるのが好ましく、40%以上であるのがより好ましく、50%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのが最も好ましい。
本発明の不織布(10)における凸部分(1)の高さ(t2)は、特に限定されるべきものではなく、様々な産業資材用途に有用となるよう適宜調整することができる。本発明の不織布(10)における凸部分(1)の高さ(t2)が高いほど、本発明の不織布(10)の主面側の表面積が広くなり、更に様々な産業資材用途に有用である。そのため、本発明の不織布(10)の高さ(t2)は、例えば、25μm以上であるのが好ましく、250μm以上であるのがより好ましく、300μm以上であるのが最も好ましい。また、本発明の不織布(10)の高さ(t2)の上限値は限定するものではなく適宜調整するが、9mm以下であるのが好ましく、4.5mm以下であるのがより好ましい。
本発明の不織布(10)における凸部分(1)の数に占める、繊維層(3)に囲まれて形成された空隙(4)が複数存在することで形成された凸部分(例えば、1a、1b)の数の割合が多いほど、本発明の不織布(10)は、例えば、主面側の表面積が同一の場合には目付の軽量化が図れ、そして、目付が同一の場合には主面側の表面積の増加が図れる。そのため、前記割合は0%よりも大きく、90%以上であるのが好ましく、95%以上であるのがより好ましく、100%であるのが最も好ましい。
なお、本発明の不織布(10)が繊維配向を備えておらず、不規則な繊維配向を備える繊維群のみによって構成されていると、本発明の不織布(10)に対して力が作用した場合であっても、本発明の不織布(10)に破断が発生するのを防止できる。そのため、本発明の不織布(10)をプリーツ加工したり捲回あるいは積層して産業資材を調製する場合であっても、調製した産業資材の諸性能が破断の発生により意図せず低下するのを防いで、本発明の不織布(10)を様々な産業資材用途に有用な態様とすることができ、好ましい。
本発明の不織布(10)における、一つあたりの凸部分(例えば、1a、1b)を構成している繊維層(3)の数は特に限定されるべきものではなく、様々な産業資材用途に有用となるよう適宜調整することができる。
一つあたりの凸部分(例えば、1a、1b)を構成している繊維層(3)の数が多いほど、凸部分(例えば、1a、1b)の形状を復元され易くできる。そのため、一つあたりの凸部分(例えば、1a、1b)内部に存在する繊維層(3)の数は5層以上であるのが好ましく、7層以上であるのがより好ましく、10層以上であるのが最も好ましい。
なお、一つあたりの凸部分(例えば、1a、1b)を構成している繊維層(3)の数は、上述した(繊維層(3)の判断方法)において、直線Bと交点を有する繊維層(3)の数を計測することで求める。
繊維層(3)に囲まれて形成された空隙(4)の形状や数、一つあたりの空隙(4)の大きさは、特に限定されるべきものではなく、様々な産業資材用途に有用となるよう適宜調整することができる。
断面写真における空隙(4)の形状は、例えば、三日月形状、長円形状、円形状、多角形状、不定形状などであることができる。また、凸部分(例えば、1a、1b)一つあたりの内部に存在する空隙(4)の数は限定されるものではなく、複数個存在するように適宜調整するが、空隙の数が多いほど凸部分(1)の高さを高くして本発明の不織布(10)の主面側の表面積を広くできる傾向があることから、空隙の数は4個以上であるのが好ましく、14個以上であるのがより好ましく、19個以上であるのが最も好ましい。なお、空隙(4)の数は断面写真を分析することで、求めることができる。
一つあたりの空隙(4)の大きさは適宜調整するのが好ましいが、凸部分(例えば、1a、1b)一つあたりに占める空隙(4)一つあたりの大きさが大きいほど、凸部分(1)の高さ(t2)を高くして本発明の不織布(10)の主面側の表面積を広くできる傾向がある。
本発明では、凸部分(例えば、1a、1b)一つあたりに占める空隙(4)一つあたりの大きさを、断面写真における凸部分(例えば、1a、1b)一つあたりの面積に占める、空隙(4)一つあたりの面積の百分率(以降、空隙面積の百分率と称する)で評価する。
前記空隙面積の百分率は、5%以上100%未満であるのが好ましく、6%以上100%未満であるのがより好ましい。
なお、凸部分(例えば、1a、1b)一つあたりの面積は、断面写真において、凹部分(2)の厚さよりも厚さが厚くなっている範囲(例えば、図2における1aあるいは1bの範囲内)の、断面写真における面積を算出することで求める。
以下、本発明の不織布(10)の製造方法について、説明する。
本発明の不織布(10)を構成する繊維成分として、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機ポリマー、あるいは、金属アルコキシド(ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、スズ、亜鉛などのメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなど)が重合したゾルあるいはゲル化合物からなる無機ポリマーなどを用いることができる。
なお、これらの繊維成分は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、ブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。
更には、これらの繊維成分を混ぜ合わせたものを用いても良く、特に限定されるものではない。
また、本発明の不織布(10)を構成する繊維は、一種類あるいは複数種類の繊維成分から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂成分を含んでなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型などの複合繊維を挙げることができる。
本発明の不織布(10)を構成する成分として、上述の繊維成分に、例えば、無機粒子、色素、難燃剤、防虫剤、芳香剤、脱臭剤、触媒、界面活性剤、薬効成分などを添加することができる。
本発明の不織布(10)を構成する繊維は、平均繊維径が細いほど、吸音特性に優れるなど様々な産業資材用途に有用であるが、繊維の平均繊維径が細過ぎると本発明の不織布(10)の剛性が弱くなり破断が発生し易くなる傾向があり、平均繊維径が太過ぎると本発明の不織布(10)に破断が発生し難くなる傾向があるものの、吸音特性に劣る傾向があるなど、様々な産業資材用途として使用する際に限定され易くなる傾向がある。
そのため、本発明の不織布(10)を構成する繊維の平均繊維径は、例えば、100nm〜30μmであるのが好ましく、500nm〜10μmであるのがより好ましく、1μm〜3μmであるのが最も好ましい。
なお、本発明でいう「平均繊維径」とは、不織布の電子顕微鏡写真を分析し、無作為に選んだ50本の繊維の繊維直径の算術平均値をいい、繊維直径は繊維の断面積と同じ面積をもつ円の直径をいう。
本発明の不織布(10)を構成する繊維の平均繊維径から算出されるCV値(以降、繊維径のCV値と称する)は様々な産業資材用途に適するように、適宜調整でき限定されるものではないが、10%〜140%であることができ、20%〜60%であることができる。
なお、本発明でいう繊維径のCV値は、以下の方法で算出する。
1.不織布の電子顕微鏡写真を分析し、無作為に選んだ50本の繊維の繊維直径の算術平均値を計算して、平均繊維径(Xav)を算出する。
2.平均繊維径(Xav)を算出するための測定対象となった、50本の繊維の各繊維直径の測定値をもとに、標準偏差値(SD)を算出する。
3.次の式から繊維径のCV値(変動係数)を算出する。
繊維径のCV値(%)=(SD/Xav)×100
本発明の不織布(10)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液とガス流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報、特開2011−111686号公報などに開示の方法など)などの直接紡糸法を用いて、紡糸原液の液吐出口から紡糸原液を吐出させると共に繊維化し、繊維化した紡糸原液を捕集体に捕集することで、捕集体上に本発明の不織布(10)を形成することができる。
特に、本発明の不織布(10)は直接紡糸法のみを用いて調製されているのが好ましい。本発明の不織布(10)が直接紡糸法のみを用いて調製されていることで、本発明の不織布(10)は繊維配向を備えておらず、不規則な繊維配向を備える繊維群のみによって構成されている態様とすることができ、発明の不織布(10)を破断し難い態様とすることができる。更に、紡糸原液の繊維化から本発明の不織布(10)の製造までの工程を、同一の紡糸原液を用いて同一紡糸条件で行なうことができるため、繊維同士の一体化をより強固にすることができて、発明の不織布(10)を更に破断し難い態様とすることができる。
直接紡糸法を用いて本発明の不織布(10)を製造する際には、例えば、溶融させた繊維成分や溶媒に溶解させた繊維成分溶液などの紡糸原液の吐出量、紡糸原液の液吐出口と捕集体との距離(捕集距離)、紡糸原液にガス流など力を作用させる場合にはガス流の流量や角度や温度、捕集体の形状など、紡糸条件や繊維の捕集条件は適宜調整する。
捕集体の種類は特に限定するものではないが、例えば、織物や編物や不織布などの布帛、多孔フィルム、発泡シート、一方の主面からもう一方の主面にわたり貫通孔を備えるネットなどの材料など、主面に空隙や溝などの陥没した部分あるいは貫通孔を備える材料を使用する。
上述したような材料からなる捕集体に繊維化した紡糸原液を捕集することで、前記捕集体の主面に存在する陥没した部分あるいは貫通孔に、繊維化した紡糸原液が入り込み、本発明の不織布(10)における凸部分(1)が形成される。そのため、捕集体が備える陥没した部分や貫通孔の形状や分布ならびに大きさ、陥没した部分の深さや貫通孔の深さなどは、本発明の不織布(10)を調製できるように適宜調整する。
なお、繊維層(3)に囲まれて形成された空隙(4)が複数存在してなる凸部分(例えば、1a、1b)を形成することが容易であることから、捕集体としてネットなどの貫通孔を備える捕集体を用いるのが好ましい。
捕集体として使用できるネットの態様は適宜調整するが、ネットに設けられている貫通孔の大きさが小さ過ぎると、繊維層(3)に囲まれて形成された空隙(4)が複数存在してなる凸部分(例えば、1a、1b)が形成され難くなる傾向があることから、メッシュ数が50メッシュ未満のネットを使用するのが好ましく、40メッシュ以下のネットを使用するのがより好ましく、30メッシュ以下のネットを使用するのがより好ましく、20メッシュ以下のネットを使用するのがより好ましく、10メッシュ以下のネットを使用するのが最も好ましい。またネットに設けられている貫通孔の大きさが大き過ぎても、繊維層(3)に囲まれて形成された空隙(4)が複数存在してなる凸部分(例えば、1a、1b)が形成され難くなる傾向があることから、メッシュ数が1メッシュよりも大きいネットを使用するのが好ましい。
また、貫通孔を備える捕集体における貫通孔の配置は、貫通孔同士の間隔が均一となるように存在している態様(例えば、千鳥状に配列している態様)や、貫通孔同士の間隔が不均一となるように存在している態様のものを使用することができる。
紡糸原液の液吐出口と捕集部分との距離(捕集距離)を適宜調整することで、得られる本発明の不織布(10)の凸部分(例えば、1a、1b)の高さ(t2)、凸部分(例えば、1a、1b)を構成する繊維層(3)の層の数や繊維層(3)の厚さ、空隙(4)の形状や数や大きさ、凸部分(例えば、1a、1b)一つあたりに占める空隙(4)の大きさなどを調整することができ、様々な産業資材用途に有用な態様の本発明の不織布(10)を調製できる。
紡糸原液の液吐出口と捕集体との距離は、他の紡糸条件によって適宜調整するのが好ましいが、距離が近すぎると、凸部分(例えば、1a、1b)内部に繊維層(3)や空隙(4)が形成され難い傾向がある。また、紡糸原液の液吐出口と捕集体との距離が、一般的にメルトブロー法を用いた際に採用される距離(20cm〜50cm)やスパンボンド法を用いた際に採用される距離(100cm〜200cm)を採用した場合(非特許文献:「最新の紡糸技術」、高分子刊行会、1992年2月20日発行第1版第1刷、第123頁第24行目〜第26行目)にも、凸部分(例えば、1a、1b)内部に繊維層(3)や空隙(4)が形成され難い傾向がある。
そのため、紡糸原液の液吐出口と捕集体との距離は、1cm〜15cmであるのが好ましく、2.5cm〜7cmであるのが最も好ましい。
本発明の不織布(10)の製造方法として、特に、紡糸原液とガス流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報、特開2011−111686号公報などに開示の方法など)を用いると、例えばメルトブロー法など他の直接紡糸法と比べて、ショットやビーズ(粒子形状の樹脂)の発生を防いで繊維径が小さく繊維径の揃った繊維を紡糸することができるため、更に均一な物性を備えることで様々な産業資材用途に有用な態様の本発明の不織布(10)を調製でき、好ましい。
本発明の不織布(10)の製造方法について、紡糸原液とガス流を平行に吐出して紡糸する方法を用いた場合について、図3を用いて説明する。
図3は、本発明の不織布(10)を製造することのできる、紡糸原液とガス流を平行に吐出して紡糸する方法を行なうことのできる紡糸装置の一形態を図示したものであり、(a)紡糸開始部の模式的斜視図、及び、(b)平面Cにおける紡糸開始部の模式的断面図である。
上述の、紡糸原液とガス流を平行に吐出して紡糸する方法を行なうことのできる紡糸装置(20、以降、紡糸装置と称する)は、紡糸原液を吐出できる液吐出口(El)を1箇所以上と、前記いずれの液吐出口(El)よりも上流側に位置し、ガスを吐出できるガス吐出口(Eg)1箇所を有すると共に、次の条件を満足する紡糸開始部を備えた、紡糸装置(20)である。
(1)液吐出口(El)を端部とする液用柱状中空部(HI)を備える、液吐出部(Nl)を有する、
(2)ガス吐出口(Eg)を端部とするガス用柱状中空部(Hg)を備える、ガス吐出部(Ng)を有する、
(3)液用柱状中空部(HI)を延長した液仮想柱状部(HvI)とガス用柱状中空部(Hg)を延長したガス仮想柱状部(Hvg)とは近接している、
(4)液用柱状中空部(HI)の液吐出方向中心軸(AI)とガス用柱状中空部(Hg)のガス吐出方向中心軸(Ag)とが平行である、
(5)ガス用柱状中空部(Hg)の中心軸に対して垂直な平面(平面C)で切断した際の、図3(b)に図示する、紡糸装置(20)が備える紡糸開始部の模式的断面図において、ガス用柱状中空部(Hg)の切断面の外周と液用柱状中空部(HI)の切断面の外周間の距離が最も短い直線(L1)を、1本だけ引くことができる状態にある。
液吐出部(Nl)に紡糸原液を供給し、ガス吐出部(Ng)にガスを供給すると、紡糸原液は液用柱状中空部(HI)を通り液吐出口(EI)から液用柱状中空部(HI)の軸方向に吐出されると同時に、ガスはガス用柱状中空部(Hg)を通りガス吐出口(Eg)からガス用柱状中空部(Hg)の軸方向に吐出される。
この吐出されたガスと紡糸原液とは近接した状態にあり、ガスの吐出方向と紡糸原液の吐出方向とは平行関係にあり、しかも平面C上、吐出されたガスと吐出された紡糸原液とは最も近い点が1点、つまり、紡糸原液は1本の直線状にガスおよび随伴気流による剪断作用を受けるため、細径化しながら液用柱状中空部(HI)の軸方向に飛翔し、繊維化する。なお、液用柱状中空部(HI)を延長した液仮想柱状部(HvI)は液吐出口(EI)から吐出された紡糸原液の吐出直後の飛翔経路であり、ガス用柱状中空部(Hg)を延長したガス仮想柱状部(Hvg)はガス吐出口(Eg)から吐出されたガスの吐出直後の噴出経路である。
そして繊維化した紡糸原液は、液用柱状中空部(HI)の軸方向側に存在する捕集体(図示せず)に捕集されることで、捕集体上に本発明の不織布(10)を製造できる。このとき、紡糸装置(20)の紡糸開始部側から見た際の捕集体の裏面側、及び/又は、捕集体の側面周辺部分にサクション装置を設けることで、繊維化した紡糸原液が捕集体上に捕集されるのを補助することができる。
このような紡糸開始部を備える紡糸装置(20)を用いることによって、紡糸原液に対して均一に剪断作用を作用させることができ、ショットやビーズの発生を防いで繊維径が小さく繊維径の揃った繊維を紡糸することができるため、更に均一な物性を備えることで様々な産業資材用途に有用な態様の、本発明の不織布(10)を調製できる。
液吐出口(EI)の形状は特に限定するものではないが、例えば、円形状、長円形状、楕円形状、多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができる。ガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、ショットやビーズを生じにくいように、円形状であるのが好ましい。
そして、液吐出口(EI)の大きさも特に限定するものではないが、0.01mm〜0.28mmであるのが好ましく、0.02mm〜0.07mmであるのがより好ましい。0.01mmよりも小さいと、粘度の高い紡糸液を吐出するのが困難になる傾向があり、0.28mmを超えると、吐出された紡糸原液全体に剪断作用を働かせることが困難となり、ショットやビーズを生じやすくなる傾向があるためである。
また、図3(a)(b)においては、円柱状の液吐出部(Nl)を図示しているが、先端が傾斜を持って切断された鋭角ノズルを使用することもできる。この鋭角ノズルの場合、紡糸原液の粘度が高い場合に有効である。このような鋭角ノズルを使用する場合、尖った側をガス吐出部(Ng)側とすると、ガス及び随伴気流の剪断作用を受けやすく、安定して繊維化できる。
ガス吐出口(Eg)の形状は特に限定するものではないが、例えば、円形状、長円形状、円形状、多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形)、スリット状の開口であることができる。
そして、ガス吐出口(Eg)の大きさも特に限定するものではなく、適宜調整する。なお、ガス吐出口(Eg)の大きさは液吐出口(EI)の大きさと同じか、より大きいのが好ましい。加熱ガス及び随伴気流の剪断作用が働きやすいためである。
ガス吐出口(Eg)が液吐出口(EI)よりも上流側(紡糸原液の供給側)となるようにガス吐出部(Ng)が配置されているため、液吐出口(EI)周辺へ紡糸原液が巻き上がるのを防止できる。
そのため、液吐出口(EI)を汚すことなく、長時間の紡糸が可能である。なお、ガス吐出口(Eg)と液吐出口(EI)との距離は特に限定するものではないが、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。10mmを超えると紡糸原液に対するガス及び随伴気流の剪断力が不十分となり、繊維化しにくくなる傾向があるためである。ガス吐出口(Eg)と液吐出口(EI)との距離の差の下限は特に限定するものではなく、ガス吐出口(Eg)と液吐出口(EI)とが一致していなければ良い。
液仮想柱状部(HvI)とガス仮想柱状部(Hvg)との距離は2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。2mmを超えるとガス及び随伴気流の剪断力が作用しにくく、繊維化しにくくなる傾向があるためである。
更に、液用柱状中空部(HI)の液吐出方向中心軸(AI)とガス用柱状中空部(Hg)のガス吐出方向中心軸(Ag)とが平行で、吐出された紡糸原液に対して1本の直線状にガス及び随伴気流を作用させることができるため、安定して繊維を紡糸することができる。これら中心軸が交差又はねじれの位置にあると、ガス及び随伴気流による剪断力が作用しないか、作用したとしても不均一であることから、安定して繊維を紡糸することができない。
この「平行」であるとは、液用柱状中空部(HI)の液吐出方向中心軸(AI)とガス用柱状中空部(Hg)のガス吐出方向中心軸(Ag)とが同一平面上に位置することができ、しかも平行であることを意味する。また、「吐出方向中心軸」とは吐出部の中心と仮想柱状部の横断面における中心とを結んでできる直線である。
紡糸装置(20)における紡糸開始部では、ガス用柱状中空部(Hg)の中心軸に対して垂直な平面(平面C)で切断した時に、図3(b)で図示しているように、ガス用柱状中空部(Hg)の切断面の外周と液用柱状中空部(HI)の切断面の外周との距離が最も短い直線(L1)を、1本だけ引くことができる。
このようなガス用柱状中空部(Hg)から吐出されたガス及び随伴気流は、液用柱状中空部(HI)から吐出された紡糸原液に対して、1本の直線状に作用し、剪断作用を発揮することができるため、ショットやビーズを生じることなく、安定して紡糸することができる。
紡糸装置(20)がサクション装置を備えている場合、サクション装置が吸引するガスの体積は、ガス吐出口(Eg)から吐出されたガスの体積や、製造しようとする本発明の不織布(10)の態様によって、適宜調整するのが好ましい。
紡糸に使用する紡糸原液の粘度や温度、紡糸原液が溶媒を含んでいる場合の溶媒の種類や紡糸原液中に占める溶媒の存在割合、ガスの種類や温度、紡糸開始部付近の雰囲気下における温湿度などは、適宜調整する。
液吐出口(EI)から吐出される紡糸原液の吐出質量は、紡糸装置(20)における他の紡糸条件によって適宜調整するのが好ましいが、吐出質量が少なすぎても多すぎても本発明の不織布(10)における凸部分(1)が形成され難い傾向があることから、1箇所の液吐出口(El)あたり0.021g/hour〜50g/hourであるのが好ましく、1g/hour〜3g/hourであるのが最も好ましい。
また、ガス吐出口(Eg)から吐出されるガスの吐出体積は、紡糸装置(20)における他の紡糸条件によって適宜調整するのが好ましいが、吐出体積が少な過ぎても多すぎても本発明の不織布(10)における凸部分(1)が形成され難い傾向があることから、ガスの全吐出体積は100Nm/hour/m〜1000Nm/hour/mであるのが好ましく、200Nm/hour/m〜900Nm/hour/mであるのが最も好ましい。
更に、紡糸装置(20)では、紡糸時に紡糸原液に電界を作用させてもよい。紡糸原液に電界を作用させる方法として、紡糸原液と捕集体との間に電位差を形成する方法を採用できる。
紡糸原液と捕集体との間に電位差を形成するために、例えば、直流高電圧発生装置やヴァン・デ・グラフ起電機などの電源を捕集体又は紡糸原液に接触させ、捕集体又は紡糸原液の一方に電圧を印加すると共に電源を接触させなかった方をアースする方法、あるいは、紡糸原液と捕集体の双方に前記電源を接触させ、紡糸原液と捕集体の間に電圧差が生じるように電圧を印加する方法を挙げることができる。なお、印加極性は正であっても負であっても良い。
あるいは、紡糸原液と捕集体との間に電位差を形成する代わりに、紡糸装置(20)の紡糸開始部側から見た際の捕集体の裏側に対向電極を配置すると共に、紡糸原液と対向電極との間に電位差を形成することもできる。
紡糸原液と捕集体又は対向電極との間に形成される電位差は、紡糸液の種類、上述した紡糸条件などにより適宜調整するのが好ましく、特に限定するものではないが、0.05kV/cm〜1.5kV/cmであるのが好ましい。電位差が1.5kV/cmを超えると、ガスの剪断作用による紡糸よりも静電紡糸法と同様の電圧による紡糸が支配的となるが、ガスの作用も受けて調製される不織布の地合いが悪くなる傾向があるためである。他方、0.05kV/cm未満であると、繊維の帯電が不十分あるいは弱いため、糸玉、繊維束、ショット、粒等、繊維以外のものが形成され易くなる傾向があるためである。
以上のようにして捕集体上に形成した本発明の不織布(10)は、捕集体上から剥離して、あるいは、捕集体に上に形成した態様のまま、様々な産業資材用途に使用できるが、本発明の不織布(10)をバインダ処理あるいは加熱処理に供することで、本発明の不織布(10)を構成する繊維同士を一体化する、本発明の不織布(10)中に溶媒が残留している場合には、本発明の不織布(10)を加熱処理に供することで、本発明の不織布(10)中から残留する溶媒を除去することができる。
あるいは、本発明の不織布(10)に、例えば、無機粒子、色素、難燃剤、防虫剤、芳香剤、脱臭剤、触媒、界面活性剤、薬効成分など、添加剤の添加処理に供してもよい。
また、捕集体上に捕集することで調製した本発明の不織布(10)を、捕集体ごと上述の処理に供してもよい。
本発明の不織布(10)は、単層のまま様々な産業資材用途に使用できるが、本発明の不織布(10)を、熱接着、バインダや接着繊維布帛を用いた接着によって複数枚積層し一体化する、あるいは、一体化することなく複数枚積層することで、様々な産業資材用途に使用できる。
本発明の不織布(10)を複数枚積層する場合、凸部分(1)を備える主面同士が対向するように本発明の不織布(10)を複数枚積層しても、あるいは、凸部分(1)を備える主面同士が対向することのないように本発明の不織布(10)を複数枚積層してもよい。
また、本発明の不織布(10)を、例えば、織物や編物や不織布などの布帛、多孔フィルムなど多孔板、発泡シート、ネット、平板、表面が不定形な構造体などと熱接着やバインダ接着によって積層し一体化する、あるいは、接着せずに積層することで、様々な産業資材用途に使用できる。
更に、本発明の不織布(10)あるいは上述のようにして調製した本発明の不織布(10)を備える積層体を、例えば、コルゲート加工やプリーツ加工、捲回加工、切り抜きや打ち抜きや穴空け、部分的に切れ込みを入れたりすることで形状を整えてから、様々な産業資材用途に使用することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
(紡糸装置の準備)
紡糸原液とガス流を平行に吐出して紡糸する方法を用いて、本発明の不織布を調製するため、以下の構成を備える紡糸装置を用意した。なお、実施例で使用した、紡糸装置における紡糸開始部の模式的断面図を図4に図示する。

(i)液吐出部(Nl):ガス用柱状中空部(Hg)の中心軸(Ag、図4では図示せず)に対して垂直な平面(以降、前記平面と称する)において、短辺0.725mm、長辺170mmの長方形状
液用柱状中空部(HI):前記平面において、直径0.15mmの円形状
液吐出口(EI):前記平面において、液吐出部(Nl)の長辺方向における端部各々と前記各端部に最も近接して設けられている液用柱状中空部(HI)との最短距離が各々34.925mm離れていると共に、各液用柱状中空部(HI)とガス用柱状中空部(Hg)との最短距離が0.325mmとなるようにして、液吐出部(Nl)の長辺方向と平行をなす方向に向かい、隣接する各液用柱状中空部(HI)の中心同士の距離が1mmとなるように101個存在

(ii)ガス用柱状中空部(Hg):前記平面において、短辺0.6mm、長辺170mmのスリット形状
ガス吐出部(Ng):前記平面において、長辺170mm、短辺3.95cmの平板を、液吐出部(Nl)の一方の側面と平行を成すと共に、液吐出部(Nl)と前記平板との最短距離が0.6mmとなるようにして設置することで形成
ガス吐出口(Eg):前記平面において、液吐出部(Nl)と前記平板と間に形成された、短辺0.6mm、長辺170mmのスリット形状の部分に相当

(iii)液吐出口(EI)とガス吐出口(Eg)の位置:ガス吐出口(Eg)が液吐出口(EI)よりも、5mm上流側(紡糸液の供給側)となる位置に配置
ガス用柱状中空部(Hg)の切断面の外周と液用柱状中空部(HI)の切断面の外周間の距離が最も短い直線の長さ(L1の長さ):0.325mm
1箇所の液吐出口(EI)あたりの、L1の本数:一本のみ
液吐出方向中心軸(AI、図4では図示せず)とガス吐出方向中心軸(Ag、図4では図示せず):平行

(iv)捕集体:10メッシュ、金属ネット(線径:0.8mm、一辺の長さが1.74mmの正方形状の貫通孔が、間隔が均一となるように存在)
捕集した繊維を搬送する、捕集体の搬送速度:1.6m/min
捕集体の配置:液用柱状中空部(HI)の液吐出方向中心軸(AI、図4では図示せず)およびガス用柱状中空部(Hg)のガス吐出方向中心軸(Ag、図4では図示せず)と、捕集体における捕集面が垂直をなすと共に、液吐出口(EI)と捕集体における捕集面との最短距離が2.5cmとなるように配置

サクション装置:短辺150mm、長辺200mmの長方形形状のサクション部分を備えるサクションボックス(サクション能力:30m3/min)を、紡糸開始部側からみた際の、捕集体の裏面側に設置

(不織布の製造)
温度240℃で溶融させたポリプロピレン樹脂(MI=1500)を、一つの液用柱状中空部(HI)あたり2.1g/hourとなるように重力の作用方向へ吐出するとともに、ガス吐出口(Eg)から260℃に加熱した空気を、吐出体積が565Nm/hour/mとなるように吐出し、吐出されたポリプロピレン樹脂を繊維化させた。
サクションボックスで空気を吸引し、繊維化したポリプロピレン樹脂を10メッシュの金属ネットへ向けて飛翔させ、金属ネット上に繊維化したポリプロピレン樹脂を捕集することで、金属ネット上に不織布を形成した。その後、金属ネット上から形成された不織布を回収することで、複数の凸部分を備える不織布を調製した。
このようにして調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真を、図5に図示する。
(実施例2)
ガス吐出口(Eg)から吐出される260℃に加熱した空気の吐出体積を、847Nm/hour/mに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複数の凸部分を備える不織布を調製した。
このようにして調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真を、図6に図示する。
(実施例3)
ガス吐出口(Eg)から吐出される加熱した空気の温度を、300℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、複数の凸部分を備える不織布を調製した。
このようにして調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真を、図7に図示する。
(実施例4)
液吐出口(El)と捕集体における捕集面との最短距離が5cmとなるように変更したこと以外は、実施例3と同様にして、複数の凸部分を備える不織布を調製した。
このようにして調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真を、図8に図示する。
(実施例5)
液吐出口(EI)と捕集体における捕集面との最短距離が7cmとなるように変更すると共に、ガス吐出口(Eg)から吐出される260℃に加熱した空気の吐出体積を、282Nm/hour/mに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複数の凸部分を備える不織布を調製した。
このようにして調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真を、図9に図示する。
(実施例6)
実施例1で使用した紡糸装置を以下の態様に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複数の凸部分を備える不織布を調製した。
このようにして調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真を、図10に図示する。

(i)液吐出部(Nl):ガス用柱状中空部(Hg)の中心軸(Ag、図4では図示せず)に対して垂直な平面(以降、前記平面と称する)において、短辺0.725mm、長辺420mmの長方形状
液用柱状中空部(HI):前記平面において、直径0.15mmの円形状
液吐出口(EI):前記平面において、液吐出部(Nl)の長辺方向における端部各々と前記各端部に最も近接して設けられている液用柱状中空部(HI)との最短距離が各々44.925mm離れていると共に、各液用柱状中空部(HI)とガス用柱状中空部(Hg)との最短距離が0.325mmとなるようにして、液吐出部(Nl)の長辺方向と平行をなす方向に向かい、隣接する液用柱状中空部(HI)の中心同士の距離が1mmとなるように331個存在

(ii)ガス用柱状中空部(Hg):前記平面において、短辺0.6mm、長辺420mmのスリット形状
ガス吐出部(Ng):前記平面において、長辺420mm、短辺3.95cmの平板を、液吐出部(Nl)の一方の側面と平行を成すと共に、液吐出部(Nl)と前記平板との最短距離が0.6mmとなるようにして設置することで形成
ガス吐出口(Eg):前記平面において、液吐出部(Nl)と前記平板と間に形成された、短辺0.6mm、長辺420mmのスリット形状の部分に相当

(iii)液吐出口(EI)とガス吐出口(Eg)の位置:ガス吐出口(Eg)が液吐出口(EI)よりも、5mm上流側(紡糸液の供給側)となる位置に配置
ガス用柱状中空部(Hg)の切断面の外周と液用柱状中空部(HI)の切断面の外周間の距離が最も短い直線の長さ(L1の長さ):0.325mm
1箇所の液吐出口(EI)あたりの、L1の本数:一本のみ
液吐出方向中心軸(AI、図4では図示せず)とガス吐出方向中心軸(Ag、図4では図示せず):平行

(iv)捕集体:10メッシュ、金属ネット(線径:0.8mm、一辺の長さが1.74mmの正方形状の貫通孔が、間隔が均一となるように存在)
捕集した繊維を搬送する、捕集体の搬送速度:1.6m/min
捕集体の配置:液用柱状中空部(HI)の液吐出方向中心軸(AI、図4では図示せず)およびガス用柱状中空部(Hg)のガス吐出方向中心軸(Ag、図4では図示せず)と、捕集体における捕集面が垂直をなすと共に、液吐出口(EI)と捕集体における捕集面との最短距離が2.5cmとなるように配置

サクション装置:短辺150mm、長辺300mmの長方形形状のサクション部分を備えるサクションボックス(サクション能力:43.3m3/min)を、紡糸開始部側からみた際の、捕集体の裏面側に設置

(実施例7)
液吐出口(EI)と捕集体における捕集面との最短距離が5cmとなるように変更したこと以外は、実施例6と同様にして、複数の凸部分を備える不織布を調製した。
このようにして調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真を、図11に図示する。
(実施例8)
捕集体における、捕集した繊維を搬送する速度を2.4m/minに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、複数の凸部分を備える不織布を調製した。
このようにして調製した、複数の凸部分を備える不織布の断面写真を、図12に図示する。
上述のようにして製造した、実施例1-8に係る各々の、複数の凸部分を備える不織布の諸物性を測定し、その結果を表1および表2にまとめた。
なお、実施例1-8で調製した複数の凸部分を備える不織布の断面写真を分析した結果、実施例1-8で調製した不織布はいずれも繊維配向を備えておらず、不規則な繊維配向を備える繊維群のみによって構成された不織布であり、前記不織布は主面に凸部分を備えていると共に、前記凸部分内部に前記繊維層に囲まれて形成された空隙が複数存在していた。
Figure 2013163875
Figure 2013163875
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂(MI=1500)を用いてなる、メルトブロー不織布(目付:23g/m2、平均繊維径:1.6μm、繊維径のCV値:53%、厚さ:0.77mm)を用意した。
なお、メルトブロー不織布の厚さとは、メルトブロー不織布を厚さ方向に切断した断面を電子顕微鏡写真で分析し、測定される両主面間の最短距離の長さとした。
比較例1のメルトブロー不織布における断面写真を、図13に図示する。なお、比較例1で調製したメルトブロー不織布の断面写真を分析した結果、比較例1で調製したメルトブロー不織布は、凸部分を備えておらず、繊維層ならびに空隙を備えていなかった。
実施例7で調製した複数の凸部分を備える不織布、および比較例1のメルトブロー不織布を、以下に説明する濾過測定に供した。
(濾過測定)
実施例7で調製した複数の凸部分を備える不織布、および比較例1で調製したメルトブロー不織布を、JIS B9908の試験方法形式1に規定される試験方法(風速10cm/sec.)に供して、粒子径0.15μm〜0.2μmの粒子ならびに0.2μm〜0.3μmの粒子の各粒子捕集効率(%)、初期圧力損失(Pa)を測定した。なお、実施例7で調製した複数の凸部分を備える不織布の各々を測定する際には、凸部分を備える主面側を上流側に配置した。

更に、上述の試験方法で測定した、粒子径0.15μm〜0.2μmの粒子および粒子径0.2μm〜0.3μmの粒子の捕集効率(%)、初期圧力損失(Pa)を以下に示す式に代入することでXを算出し、Xの絶対値から捕集する粒子径における各100γを算出した。
なお、100γは単位初期圧力損失あたりの捕集効率を意味しており、100γの数値が高い不織布は初期圧力損失が低く濾過性能に優れた不織布であることを意味する。
X=[ln{1-(捕集効率/100)}/初期圧力損失]×100
|X|=100γ
濾過測定の結果を、表3にまとめた。
Figure 2013163875
濾過測定の結果、実施例7の不織布は、同じ平均繊維径の繊維から構成された同じ目付の比較例1のメルトブロー不織布よりも、大きさが0.15μm〜0.3μmの粒子径の捕集効率に優れると共に、100γに優れていることが判明した。このことから、実施例7の不織布は濾過性能に優れる不織布であった。
以上から、本発明の複数の凸部分を備える不織布は、濾過性能に優れるため、気体や液体の濾過材料として好適に使用できることが判明した。
次いで、実施例7および実施例8で調製した複数の凸部分を備える不織布、および比較例1のメルトブロー不織布を、以下に説明する保液率測定に供した。
(保液率測定)
実施例7および実施例8で調製した複数の凸部分を備える不織布、および比較例1で調製したメルトブロー不織布の各々から、一辺5cmの正方形状の試験片を3枚ずつ採取し、各試験片の質量を測定した。
前記各試験片を市販のサラダ油浴中に各々浸漬した後、サラダ油浴中から各試験片を取り出して金属ネット上に3分間静置して、余分なサラダ油を除去してから、サラダ油浸漬後における各試験片の質量を測定した。

上述で測定した、サラダ油浴中に浸漬する前の各試験片の質量(A、単位:g)と、サラダ油浴中に浸漬し余分なサラダ油を除去した後の各試験片の質量(B、単位:g)を、以下に示す式に代入することで、実施例7および実施例8ならびに比較例1の不織布から採取した3枚の試験片における各保液率(%)を算出した。
保液率(%)={(B-A)/A}×100
最後に、算出された実施例7および実施例8ならびに比較例1の不織布から採取した3枚の試験片における各保液率(%)の算術平均を算出することで、実施例7および実施例8ならびに比較例1の不織布における保液率の平均値(%)を求めた。
保液率測定の結果を、表4にまとめた。
Figure 2013163875
保液率測定の結果、実施例7-8の不織布はいずれも、平均繊維径が同じ繊維から構成された比較例1のメルトブロー不織布よりも、保液率に優れていることが判明した。このことから、実施例7-8の不織布は液体の保持性(液体の吸収性)に優れる不織布であった。
以上から、本発明の複数の凸部分を備える不織布は、液体の保持性(液体の吸収性)に優れるため、化粧水等を保持したスキンケアシートやタオルやオムツなどの衛生材料、バイオリアクターや細胞培養基材などバイオサイエンス材料、オイルフェンスなどの環境保全材料などとして好適に使用できる。
(実施例9)
実施例7で調製した複数の凸部分を備える不織布同士の間の各々に、ナイロン繊維不織布(日本バイリーン(株)社製、目付:21g/m2、融点:108℃)を介在させ、実施例7で調製した複数の凸部分を備える不織布を10枚積層して積層体を調製した。なお、凸部分を備える主面同士が対向することがないように、各不織布同士を積層した。
そして、積層体を蒸気発生装置(アサヒ繊維機械工業(株)社製)に供することで、ナイロン繊維不織布を溶融させて複数の凸部分を備える不織布同士を積層一体化し、積層一体化した不織布(目付:419g/m2、厚さ:9.65mm)を調製した。
なお、積層一体化した不織布の厚さは、積層一体化した不織布において外部に露出している凸部分の頂点と、積層一体化した不織布において外部に露出しているもう一方の主面との最短距離を、ノギスで測定し求めた。
次いで、実施例9で調製した複数の凸部分を備える不織布を、以下に説明する形状の復元測定に供した。
(形状の復元測定)
実施例9で調製した積層一体化した不織布から、直径29mmの円形の試験片を採取した。
前記試験片における外部に露出しているもう一方の主面と平板とが面するようにして、平板上に前記試験片を乗せ、前記試験片における外部に露出している凸部分を備える主面上に32g/cm2の荷重が均一にかかるように円柱形状の錘を20分間乗せて、静置した。荷重を受けている間の試験片の厚さは6mmであり、凸部分も変形して潰れた状態であった。
その後、試験片の主面上から前記錘を取り外し、3分間静置した後の試験片の厚さを、前記試験片における外部に露出している凸部分の頂点と、前記試験片における外部に露出しているもう一方の主面との最短距離を、ノギスで測定することで測定した。
形状の復元測定の結果、錘を取り外し3分間静置した後の試験片の厚さは9.65mmであり、凸部分の形状は変形していなかった。そのため、実施例9で調製した積層一体化した不織布は、凸部分の形状が復元され易い不織布であった。この理由として、凸部分内部に繊維層が存在するためであると考えられた。
以上から、本発明の複数の凸部分を備える不織布は、凸部分の形状が復元され易いため、様々な産業資材用途に使用できる。
(実施例10)
実施例6で調製した複数の凸部分を備える不織布同士の間の各々に、ナイロン繊維不織布(日本バイリーン(株)社製、目付:21g/m2、融点:108℃)を介在させ、実施例6で調製した複数の凸部分を備える不織布を5枚積層して積層体を調製した。なお、凸部分を備える主面同士が対向することがないように、各不織布同士を積層した。
そして、積層体を蒸気発生装置(アサヒ繊維機械工業(株)社製)に供することで、ナイロン繊維不織布を溶融させて複数の凸部分を備える不織布同士を積層一体化し、積層一体化した不織布(目付:194g/m2、厚さ:7.60mm)を調製した。なお、積層一体化した不織布の厚さは、実施例9と同様に測定し求めた。
(比較例2)
比較例1で用意したメルトブロー不織布同士の間の各々に、ナイロン繊維不織布(日本バイリーン(株)社製、目付:21g/m2、融点:108℃)を介在させ、比較例1で用意したメルトブロー不織布を30枚積層して積層体を調製した。
そして、積層体を蒸気発生装置(アサヒ繊維機械工業(株)社製)に供することで、ナイロン繊維不織布を溶融させてメルトブロー不織布同士を積層一体化し、積層一体化した不織布(目付:1299g/m2、厚さ:10.10mm)を調製した。
なお、積層一体化した不織布の厚さは、積層一体化した不織布において外部に露出している、両主面間の最短距離を、ノギスで測定し求めた。
(比較例3)
ポリエチレンテレフタレート繊維を用いてなる、乾式不織布(目付:525g/m2、平均繊維径:10.9μm、繊維径のCV値:59%、厚さ:10.20mm)を用意した。
なお、乾式不織布の厚さは、両主面間の最短距離を、ノギスで測定し求めた。

比較例3の乾式不織布における断面写真を、図14に図示する。なお、比較例3で調製した乾式不織布の断面写真を分析した結果、比較例3で調製した乾式不織布は、凸部分を備えておらず、繊維層ならびに空隙を備えていなかった。
次いで、実施例9-10および比較例2の積層一体化した不織布、そして比較例3の乾式不織布を、以下に説明する吸音測定に供した。
(吸音測定)
実施例9-10および比較例2の積層一体化した不織布、そして比較例3の乾式不織布から、直径29mmの円形の試験片を各々採取した。
各試験片をJIS A1405-1:2007に準拠した測定方法に供し、各試験片の垂直入射吸音率(%)を測定することで、各試験片における周波数(Hz)と前記周波数(Hz)における吸音率の挙動を測定した。
実施例9および比較例2の積層一体化した不織布を吸音測定に供した結果をまとめたグラフを図15に、実施例10の積層一体化した不織布および比較例3の乾式不織布を吸音測定に供した結果をまとめたグラフを図16に図示する。
吸音測定の結果、本発明の複数の凸部分を備える不織布を用いて調製した、実施例9の積層一体化した不織布は、比較例2の積層一体化した不織布と比べ目付が軽いにも関わらず、1250Hzよりも高周波の周波数帯域における吸音特性に優れ、そして、800Hz〜1250Hzの周波数帯域における吸音特性が同等であった。
また、吸音測定の結果、本発明の複数の凸部分を備える不織布を用いて調製した、実施例10の積層一体化した不織布は、乾式不織布と比べ目付が軽いにも関わらず、2000Hzよりも高周波の周波数帯域における吸音特性に優れるものであった。
以上から、実施例9-10の積層一体化した不織布から採取した試験片は、吸音性能に優れることが判明した。そのため、本発明の複数の凸部分を備える不織布は、吸音性能に優れることから、吸音材として好適に使用できる。
本発明によれば、例えば、気体や液体の濾過材料、吸音材や遮音材などの音響材料、貼付剤用基材やプラスター剤用基材などの医療用材料、芯地などの衣料材料、自動車天井材や壁面表皮材などの自動車用材料、壁材や壁紙などの建築用材料、化粧水等を保持したスキンケアシートやタオルやオムツなどの衛生材料、断熱材や緩衝材や放熱材など工業材料、バイオリアクターや細胞培養基材などバイオサイエンス材料、オイルフェンスなどの環境保全材料など、様々な産業資材用途に使用することが可能な、複数の凸部分を備える不織布を提供することができる。
特に、発明の複数の凸部分を備える不織布は、吸音性能に優れるため、吸音材として使用することが可能である。
1、1a、1b・・・凸部分
2・・・凸部分の不存在部分(凹部分)
3・・・繊維層
4・・・空隙
10・・・複数の凸部分を備える不織布(本発明の不織布)
A-A'・・・2箇所以上の凸部分の頂点を通過して本発明の不織布を横断する線分
B・・・凸部分の頂点ともう一方の主面との最短距離を結ぶ直線
t1・・・本発明の不織布の厚さ
t2・・・凸部分の高さ
t3・・・凹部分の厚さ
20・・・紡糸原液とガス流を平行に吐出して紡糸する方法を行なうことのできる紡糸装置
El・・・液吐出口
Hl・・・液用柱状中空部
Nl・・・液吐出部
Hvl・・・液仮想柱状部
Al・・・吐出方向中心軸
Eg・・・ガス吐出口
Hg・・・ガス用柱状中空部
Ng・・・ガス吐出部
Hvg・・・ガス仮想柱状部
Ag・・・吐出方向中心軸
C・・・ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面
L1・・・外周間の距離が最も短い直線

Claims (2)

  1. 繊維層を複数備えることで構成された、複数の凸部分を備える不織布であって、
    前記繊維層に囲まれて形成された空隙が、前記凸部分内部に複数存在していることを特徴とする、
    複数の凸部分を備える不織布。
  2. 請求項1に記載の、複数の凸部分を備える不織布を用いた、吸音材。
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