JP2013163649A - 環状化合物錯体の製造方法、半導体層形成用組成物、電子デバイスの製造方法、太陽電池、及び太陽電池モジュール - Google Patents

環状化合物錯体の製造方法、半導体層形成用組成物、電子デバイスの製造方法、太陽電池、及び太陽電池モジュール Download PDF

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智志 伊藤
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Abstract

【課題】穏和な条件下で環状化合物に金属元素を導入する方法を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表される環状化合物と、アルカリ金属アミドと、金属元素Mの塩と、を炭化水素系溶媒中で反応させる。
Figure 2013163649

【選択図】なし

Description

本発明は、環状化合物錯体の製造方法、半導体層形成用組成物、電子デバイスの製造方法、太陽電池、及び太陽電池モジュールに関する。
ポルフィリン誘導体又はフタロシアニン誘導体などの環状化合物は、着色顔料のほか、電子デバイス、抗菌剤など、様々な用途に利用が可能である。特に、これらの環状化合物は強い吸収特性と半導体特性とを有することから、有機太陽電池としての利用が昨今精力的に検討されている。
これらの環状化合物の特徴として、環内に様々な中心金属を導入することが可能であり、吸収波長を自由に変えることができることが挙げられる。特に、バナジウム原子やチタン原子などを導入することは、吸収波長が大きく長波長化するために、特に注目を集めている。
非特許文献1及び2には、オクタエチルポルフィリンにバナジウムを導入する方法が記載されている。非特許文献1には、酢酸(沸点118℃)−ピリジン(沸点115℃)溶媒還流条件という高温条件下でオクタエチルポルフィリンを硫酸バナジルと反応させる方法が記載されている。また非特許文献2には、無溶媒下、240℃という高温条件下でオクタエチルポルフィリンをバナジウムアセチルアセトナート錯体(V(acac)))と反応させる方法が記載されている。
非特許文献3〜4には、ポルフィリン誘導体にチタンを導入する方法が記載されている。非特許文献3には、エチレングリコール(沸点197℃)溶媒還流条件という高温条件下でオクタエチルポルフィリンをジシクロペンタジエニルチタンジクロリドと反応させる方法が記載されている。また非特許文献4には、トルエン溶媒中50℃で、メソ位がフェニル基で置換されているポルフィリンを、n−ブチルリチウム及び四塩化チタンと反応させる方法が記載されている。
Tetrahedron 1978,34,379. J.Am.Chem.Soc.1994,116,7196. J.Am.Chem.Soc.1973,95,5140. Inorg.Chem.2002,41,300.
しかしながら、上に挙げたような中心金属の導入方法は、比較的高い反応温度を必要とする。製造コストの低下のためには、より低い温度下で行うことができる中心金属の導入方法が望まれる。また、半導体特性のような環状化合物の特性を変化させるために、機能性置換基を環状化合物に導入することが検討されている。このような場合、化合物に対するダメージを防ぐためにより反応性の低い試薬を用いることが望まれる一方で、反応を促進するために温度を上昇させると、このような機能性官能基が分解してしまうことが懸念される。
本発明は、穏和な条件下で環状化合物に金属元素を導入する方法を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、環状化合物に金属元素を導入可能な穏和な条件を見出すことにより、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]一般式(I)で表される環状化合物と、アルカリ金属アミドと、金属元素Mの塩と、を炭化水素系溶媒中で反応させる工程を含むことを特徴とする、一般式(II)で表される環状化合物錯体の製造方法。
Figure 2013163649
Figure 2013163649
(式(I)及び(II)において、R〜Rはそれぞれ独立に1価の有機基を表し、RとR、RとR、RとR、及びRとRの組のそれぞれは互いに結合して環を形成していてもよく、
式(I)及び(II)において、X〜Xはそれぞれ独立に窒素原子又は1価の有機基が結合した炭素原子を表し、
式(II)においてMは3価以上であり、酸素原子、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基からなる群から選択された1つ以上が結合している。)
[2]前記金属元素Mの塩が金属ハロゲン化物であるであることを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[3]前記アルカリ金属アミドが一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の製造方法。
Figure 2013163649
(式(III)において、R及びR10はそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭化水素基又は置換基を有してもよいシリル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)
[4][1]から[3]のいずれかに記載の製造方法により得られた一般式(II)で表される環状化合物錯体を含有することを特徴とする、半導体層形成用組成物。
[5][4]に記載の半導体層形成用組成物を基材上に塗布する工程を含むことを特徴とする、電子デバイスの製造方法。
[6]前記電子デバイスが光電変換素子であることを特徴とする、[5]に記載の電子デバイスの製造方法。
[7][6]に記載の製造方法により得られた光電変換素子を備えることを特徴とする太陽電池。
[8][7]に記載の太陽電池を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
[9]前記電子デバイスが電界効果トランジスタであることを特徴とする、[5]に記載の電子デバイスの製造方法。
穏和な条件下で環状化合物に金属元素を導入することができる。
本発明の一実施例としての光電変換素子の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施例としての太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施例としての太陽電池モジュールの構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施例としての電界効果トランジスタの構成を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
<1.反応工程>
本発明に係る、一般式(II)で表される環状化合物錯体(以下、環状化合物錯体(II)と称する)の製造方法は、一般式(I)で表される環状化合物(以下、環状化合物(I)と称する)と、アルカリ金属アミドと、金属元素Mの塩と、を炭化水素系溶媒中で反応させる工程を含む。
Figure 2013163649
Figure 2013163649
[1.1 一般式(I)で表される環状化合物]
Figure 2013163649
式(I)において、R〜Rはそれぞれ独立に1価の有機基を表す。この1価の有機基の種類は、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば炭化水素基、酸素原子を介して結合する炭化水素基、複素環基、ヒドロキシ基、又は水素原子であることが好ましい。これらの炭化水素基、酸素原子を介して結合する炭化水素基、及び複素環基は、さらなる置換基を有してもよい。
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
飽和脂肪族炭化水素基としては、アルキル基又はシクロアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、炭素数1以上20以下のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、又はヘキシル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3以上20以下のものが好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基などが挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアルキニル基などが挙げられる。アルケニル基としては、炭素数2以上20以下のものが好ましく、例えば、ビニル基又はスチリル基などが挙げられる。シクロアルケニル基としては、炭素数3以上20以下のものが好ましく、例えば、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、又はシクロヘキセニル基などが挙げられる。アルキニル基としては、炭素数2以上20以下のものが好ましく、例えば、メチルエチニル基又はトリメチルシリルエチニル基などが挙げられる。
溶解性の観点から、脂肪族炭化水素基の中でも飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6以上30以下のものが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基、又はクオーターフェニル基などが挙げられる。なかでも、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、又はペリレニル基が好ましい。
酸素原子を介して結合する炭化水素基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。溶解性の観点から、なかでもアルコキシ基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1以上20以下のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、又はエチルヘキシルオキシ基などの、直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数2以上20以下のものが好ましく、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、又はイミダゾリルオキシ基などが挙げられる。なかでも、フェノキシ基又はピリジルオキシ基が好ましい。
複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。
脂肪族複素環基としては、炭素数2以上30以下のものが好ましく、例えば、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、ジオキサニル基、モルホリニル基、又はチオモルホリニル基が挙げられる。なかでも、ピロリジニル基、ピペリジニル基、又はピペラジニル基が好ましい。
芳香族複素環基としては、炭素数2以上30以下のものが好ましく、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル、フェノキサチイニル基、キサンテニル基、ベンゾフラニル基、チアントレニル基、インドリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、又はキノキサリニル基などが挙げられる。なかでも、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノキサリニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル、キサンテニル基、又はフェノキサジニル基が好ましい。
また、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、縮合多環芳香族基であってもよい。縮合多環芳香族基を形成する環の例としては、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環、置換基を有してもよい脂肪族複素環、又は置換基を有してもよい芳香族複素環が挙げられる。
脂肪族炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環などが挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環などが挙げられる。
脂肪族複素環としては、例えば、ピロリジン環又はテトラヒドロフラン環などが挙げられる。
芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ビラゾール環、又はイミダゾール環などが挙げられる。これらのなかでも、ピリジル環又はチエニル環が好ましい。
縮合多環芳香族基の具体的な例としては、縮合多環芳香族炭化水素基又は縮合多環芳香族複素環基が挙げられる。
縮合多環芳香族炭化水素基としては、例えば、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基、又はトリフェニレニル基などが挙げられる。
縮合多環芳香族複素環基としては、例えば、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、又はフェナントロリニル基などが挙げられる。
とR、RとR、RとR、及びRとRの組のそれぞれは、互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環の具体的な例としては、上述の置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環、置換基を有してもよい脂肪族複素環、又は置換基を有してもよい芳香族複素環が挙げられる。
より具体的な例として、RとR、RとR、RとR、及びRとRの組のうちの少なくとも1つは、それぞれ独立して、以下の式(Ia)に示される有機基でありうる。ここで、それぞれの置換基の組の一方は式(Ia)に示されるRであり、他方は式(Ia)に示されるRである。
Figure 2013163649
式(Ia)において、R13〜R16は1価の有機基を表す。ここで、R13〜R16は、それぞれ異なる有機基であってもよいし、同じ有機基であってもよい。これらの有機基は1価の有機基であればよく、特には限定されない。例えば、R13〜R16は、R〜Rについて上で例示した1価の有機基であってもよい。式(Ia)に示す有機基はさらなる置換基を有してもよい。例えば、二重結合の両端の炭素原子がさらなる置換基を有してもよい。
式(Ia)で表される有機基を有する環状化合物(I)は比較的溶解性が高く、金属塩との反応が円滑に進みやすいために好ましい。
入手の容易性の点で、RとR、RとR、RとR、及びRとRの組の全てが、式(Ia)に示される有機基であることが好ましい。ここで、RとR、RとR、RとR、及びRとRの組のそれぞれについて、どちらがRであり、どちらがRであるかは任意である。このような式(Ia)で表される有機基を4つ有する環状化合物(I)から得られる環状化合物錯体(II)は、後述する変換反応によって環状化合物錯体(IIb)へと変換することができる。したがって式(Ia)で表される有機基を4つ有する環状化合物(I)は、環状化合物錯体(IIb)を得るために好適である。
13〜R16の好ましい例としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、及びシクロヘキシル基などが挙げられ、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
さらなる好ましい例としては、R13〜R16が水素原子である場合が挙げられる。また他の好ましい例として、R13〜R16のうちの少なくとも1つが水素原子以外の置換基であり、他が水素原子である場合が挙げられる。具体的には、R13がメチル基であってもよいアルキル基などの置換基でありかつR14〜R16が水素原子である場合が挙げられる。また、R13及びR14がメチル基であってもよいアルキル基などの置換基でありかつR15及びR16が水素原子である場合も挙げられる。このような場合、式(Ia)で表される有機基を有する化合物はより多くの異性体を有しうる。異性体混合物は溶解度が高くなる傾向があるため、R13〜R16がこのような置換基であることは好ましい。
〜Xはそれぞれ独立に、窒素原子又は1価の有機基が結合した炭素原子を表す。炭素原子に結合している1価の有機基としては、R〜Rについて上で例示した1価の有機基でありうる。具体例としては、X〜Xの全てが1価の有機基が結合した炭素原子であってもよく、例えば環状化合物(I)はポルフィリン誘導体であってもよい。
また、X〜Xのうちの少なくとも1つが、水素原子と結合した炭素原子であることは好ましい。さらに、X〜Xの全てが水素原子と結合した炭素原子であること、例えば環状化合物(I)がメソ位無置換ポルフィリン誘導体であることはより好ましい。X〜Xがこのような置換基であることは、環状化合物(I)から得られる環状化合物錯体(II)間の相互作用が増加しうるために、環状化合物(I)から得られる環状化合物錯体(II)がより良好な半導体特性を示しうる点で好ましい。
〜R及びX〜Xについて例示した置換基が有してもよいさらなる置換基としては、アリール基、アリールアミノ基、アルキル基、ハロゲン基、カルボキシル基、シアノ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基及び複素環基などが挙げられる。好ましくは、フルオロ基を含むハロゲン基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数12〜30のアリールアミノ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜10のオキシカルボニル基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリールオキシ基、炭素数2〜16のカルボニル基、又は炭素数2〜20の芳香族複素環基である。
さらに有してもよい置換基のうち、炭素数6〜16のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、及びアントリル基などが挙げられる。炭素数12〜30のアリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、カルバゾイル基、及びフェニルカルバゾイル基などが挙げられる。炭素数1〜12のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、及びt−ブチル基などが挙げられる。炭素数1〜10のオキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、及びエトキシカルボニル基などが挙げられる。炭素数1〜10のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、及びエトキシ基などが挙げられる。炭素数6〜16のアリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基などが挙げられる。炭素数2〜16のカルボニル基の例としては、アセチル基又はフェニルカルボニル基などが挙げられる。炭素数2〜20の芳香族複素環基の例としては、ピリジル基、チエニル基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、フリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、及びイミダゾイル基などが挙げられる。フルオロ基を有する炭素数1〜12のアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
[1.2 アルカリ金属アミド]
アルカリ金属アミドを構成するアルカリ金属としては、具体的にはリチウム、ナトリウム、又はカリウムなどが挙げられる。なかでも、比較的安定なために扱いやすいという観点から、アルカリ金属はリチウムであることが好ましい。アルカリ金属アミドは他の塩基に比べて溶解性が高く、塩基性も高いために反応性が向上しうる。一方でアルカリ金属アミドは比較的求核性が低く、特に窒素原子上に置換基を有する場合には立体的な保護効果のためにより求核性が低くなるために、副反応を起こしにくいという利点がある。
アルカリ金属アミドを構成するアミドとしては、NH、ジイソプロピルアミド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンアミド、又はヘキサメチルジシラザン(別名:ビス(トリメチルシリル)アミド)などが挙げられる。反応を円滑に進めるためにはアルカリ金属アミドは溶解性が高いことが好ましく、この観点から、ヘキサメチルジシラザンは特に好ましい。
アルカリ金属アミドの具体的な例としては、以下の式(III)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2013163649
式(III)において、R及びR10はそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭化水素基又は置換基を有してもよいシリル基を表し、Mは上述のアルカリ金属原子を表す。
炭化水素基の例としては、R〜Rについて挙げたものと同様のものが挙げられる。
シリル基としては、アルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、アリールシリル基、ジアリールシリル基、トリアリールシリル基、アリール−アルキル−シリル基、アリール−ジアルキル−シリル基、又はジアリール−アルキル−シリル基などが挙げられる。シリル基が有する置換基の炭素数は特に制限されないが、通常1以上であり、30以下である。シリル基の有するアルキル基は、特段の制限はないが、通常炭素数が1以上30以下である。シリル基の有するアリール基は、特段の制限はないが、炭素数2以上30以下である。
アルキルシリル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、n−オクチルシリル基などが挙げられる。
ジアルキルシリル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジn−オクチルシリル基、エチルメチルシリル基などが挙げられる。
トリアルキルシリル基としては、炭素数3〜30のものが好ましく、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリn−オクチルシリル基、エチルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
アリールシリル基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、例えば、フェニルシリル基などが挙げられる。
ジアリールシリル基としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、ジフェニルシリル基などが挙げられる。
トリアリールシリル基としては、炭素数6〜30のものが好ましく、例えば、トリフェニルシリル基などが挙げられる。
アリール−アルキル−シリル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、例えば、メチルフェニルシリル基などが挙げられる。
アリール−ジアルキル−シリル基としては、炭素数4〜30のものが好ましく、例えば、ジメチルフェニルシリル基などが挙げられる。
ジアリール−アルキル−シリル基としては、炭素数5〜30のものが好ましく、例えば、ジメチルフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
溶解性の観点からは、R及びR10はシリル基であることが好ましく、トリアルキルシリル基であることがより好ましい。入手容易性の点からは、R及びR10は炭素数1〜12のトリアルキルシリル基であることが特に好ましい。
及びR10について例示した置換基が有してもよいさらなる置換基は、R〜R及びX〜Xについて例示した置換基が有してもよいさらなる置換基として挙げたものと同様でありうる。
副反応を抑えながら反応を円滑に進める観点から、アルキル金属アミドは適切な塩基性を有することが好ましい。具体的には、アルキル金属アミドの共役酸のpKaが10以上であることが好ましく、15以上であることが好ましい。pKaは、通常はDMSO(N,N−ジメチルスルホキド)中で測定する。
適切な塩基性を有するのであれば、アルキル金属アミド以外の塩基を用いることも可能である。具体的には、塩基の共役酸のpKaが10以上であることが好ましく、15以上であることが好ましい。副反応を抑える観点から、塩基としては求核性の低いものを用いることが好ましい。
アルキル金属アミド以外の塩基の具体的な例としては、sec−ブチルリチウム若しくはtert−ブチルリチウムのような求核性の低い有機金属試薬、tert−カリウムブトキシドのような金属アルコキシド、又はジアザビシクロウンデセン(DBU)若しくはジアザビシクロノネン(DBN)のようなアミンなどが挙げられる。
[1.3 金属元素の塩(金属塩)]
金属元素Mの塩を構成する金属元素Mの例としては、遷移金属元素及び典型金属元素が挙げられる。
遷移金属元素としては第3〜7族の前周期遷移金属元素及び第8〜11族の後周期遷移金属元素が挙げられる。なかでも、反応により得られる環状化合物錯体(II)が良好な半導体特性を示しうる点で、前周期遷移金属元素、特にチタンのような第4族元素又はバナジウムのような第5族元素が好ましい。
典型金属元素としては、第12〜14族元素が挙げられ、例えばスズが挙げられる。
後述するように、式(II)において金属元素Mは3価以上であるから、金属元素Mの塩を構成する金属元素Mとしては3価以上の価数をとりうるものが用いられる。
金属元素Mの塩は、例えば、金属ハロゲン化物、金属アルコキシド、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、トリフルオロ酢酸塩のようなカルボン酸塩、又はトリフルオロメタンスルホン酸塩のようなスルホン酸塩などでありうる。なかでも、溶媒に対する溶解度の観点から、金属元素Mの塩が金属ハロゲン化物であることはより好ましい。また、安定性の観点から、金属元素Mの塩が塩化物であることは特に好ましい。
金属ハロゲン化物のうち、バナジウムハロゲン化物の例としては、塩化バナジウム(III)、塩化バナジウム(IV)、二塩化バナジル、三塩化バナジル、又は臭化バナジウム(III)などが挙げられる。なかでも、塩化バナジウム(III)が好ましい。塩化バナジウム(III)の酸化力は、比較的低い。このため、環状化合物(I)の分解が抑制され、環状化合物錯体(II)の収率が向上しうる。
チタンハロゲン化物の例としては、塩化チタン(II)、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)、又は臭化チタン(IV)などが挙げられる。なかでも、塩化チタン(IV)が好ましい。塩化チタン(IV)を用いる場合、環状化合物(I)に対する塩素化反応が抑制され、環状化合物錯体(II)の収率が向上しうる。
[1.4 一般式(II)で表される環状化合物錯体]
Figure 2013163649
式(II)において、R〜R及びX〜Xは、式(I)と同様の置換基を表す。
式(II)においてMは3価以上であり、酸素原子、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基からなる群から選択された1つ以上が結合している。ハロゲン原子としては例えば、塩素原子又はフッ素原子が挙げられる。環状化合物錯体(II)の安定性の観点からは、Mは酸素原子と結合しており、ここでMと酸素原子との間の結合は2価の結合であることが好ましい。Mが4価であり、1つの酸素原子と結合していることはより好ましい。
[1.5 溶媒]
溶媒としては、金属化合物を溶解する機能を有する限り特に限定されるわけではないが、好ましくは炭化水素系溶媒が用いられる。炭化水素系溶媒は、反応試薬である金属化合物に配位しにくい傾向がある点で好ましい。
「炭化水素系溶媒」の例として、溶媒を構成する成分のうち50モル%以上が炭化水素又はハロゲン化炭化水素であるような溶媒を用いることが好ましい。これらの溶媒は、金属元素Mの塩に対する配位能が低く、反応を阻害しにくいために好ましい。アルカリ金属アミドがこれらの溶媒中には比較的安定に存在しうるという観点からも、これらの溶媒は好ましい。このような観点から、溶媒を構成する成分のうち炭化水素又はハロゲン化炭化水素が占める割合は、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましい。
炭化水素系溶媒としては、炭化水素溶媒又はハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。炭化水素溶媒の例としては、例えば、ベンゼン又はトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。ハロゲン化炭化水素溶媒の例としては、例えばジクロロメタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼンなどの塩素系有機溶媒が挙げられる。
これらのなかでも芳香族炭化水素溶媒が好ましく、より好ましくはトルエンである。ベンゼンやトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒は、環状化合物(I)と金属塩との双方を溶解させる能力が比較的高いため、環状化合物錯体(II)の収率を向上させうる点で好ましい。この観点から、溶媒を構成する成分のうち炭化水素が占める割合は、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましい。
金属元素Mの塩に対する配位能が低くなるという観点から、用いられる溶媒の比誘電率(20℃)は、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。
[1.6 反応条件]
ここで、環状化合物(I)と、アルカリ金属アミドと、金属元素Mの塩とを反応させる際の反応条件について説明する。
反応前の溶液中の、環状化合物(I)の濃度は、特段の制限はないが、通常0.01mmol/L以上、好ましくは0.05mmol/L以上、より好ましくは0.1mmol/L以上であり、通常0.5mol/L以下、好ましくは50mmol/L以下、より好ましくは10mmol/L以下である。環状化合物錯体(II)の製造効率を向上させる観点から、溶液中の環状化合物(I)の濃度は高いことが好ましい。一方で、二量体などの会合体形成を避け、収率を向上させる観点から、環状化合物(I)の濃度はこの範囲にあることが好ましい。
環状化合物(I)の濃度がこの範囲となることが可能なように、反応溶媒は選択されることが好ましい。この観点から、用いられる溶媒に対する環状化合物(I)の溶解度は、通常0.001mmol/L以上、好ましくは0.01mmol/L以上、より好ましくは0.05mmol/L以上である。
反応前の溶液中の、金属塩の濃度は、特段の制限はないが、通常0.01mmol/L以上、好ましくは0.05mmol/L以上、より好ましくは0.1mmol/L以上であり、通常50mmol/L以下、好ましくは20mmol/L以下、より好ましくは10mmol/L以下である。金属塩の濃度がこの範囲にあることにより、反応による温度変化をよりよく制御しながら反応を行うことができる。
金属塩の濃度がこの範囲となることが可能なように、反応溶媒は選択されることが好ましい。この観点から、金属塩に対する環状化合物(I)の溶解度は、通常0.01mmol/L以上、好ましくは0.05mmol/L以上、より好ましくは0.1mmol/L以上である。
反応前の溶液中の、アルカリ金属アミドの濃度は、特段の制限はないが、通常0.1mmol/L以上、好ましくは1.0mmol/L以上、より好ましくは2.5mmol/L以上であり、通常1.0mol/L以下、好ましくは100mmol/L以下、より好ましくは50mmol/L以下である。アルカリ金属アミドの濃度がこの範囲にあることにより、反応による温度変化をよりよく制御しながら反応を行うことができる。
環状化合物(I)に対する金属塩の量は、特段の制限は無いが、通常1.0モル当量以上、好ましくは2.0モル当量以上、より好ましくは4.0モル当量以上であり、通常15モル当量以下、好ましくは10.0モル当量以下、より好ましくは5.0モル当量以下である。用いる金属塩の量は少ないことがコストの面で好ましいが、一方で環状化合物(I)の会合を抑制して環状化合物錯体(II)の収率を向上させる観点から、金属塩の量をこの範囲とすることは好ましい。
本明細書においてモル当量は次のように定義する。すなわち、aモルの化合物Aとbモルの化合物Bとについて、化合物Aに対する化合物Bのモル当量はb/aである。
環状化合物(I)に対するアルカリ金属アミドの量は、特段の制限は無いが、通常2モル当量以上、好ましくは3モル当量以上、より好ましくは4モル当量以上であり、通常50モル当量以下、好ましくは25モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。用いるアルカリ金属アミドの量は少ないことがコストの面で好ましいが、一方で反応を十分に進行させて環状化合物錯体(II)の収率を向上させる観点から、アルカリ金属アミドの量をこの範囲とすることは好ましい。
反応温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは80℃以下、よりさらに好ましくは65℃以下、とりわけ好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下である。反応温度がこの範囲内にあることは、容易に温度制御を行うことができる点で好ましい。また、式(Ia)で表される有機基を有する場合のように、環状化合物(I)又は環状化合物錯体(II)が熱分解する場合に、反応温度がこの範囲内にあることは熱分解を抑制できる点で好ましい。これらの観点から、反応温度は室温(20℃〜30℃)であることが特に好ましい。本発明に係る製造方法においては比較的低い反応温度で反応が進行しうるため、本発明に係る製造方法は、式(Ia)で表される有機基を有する場合のように、環状化合物(I)又は環状化合物錯体(II)が熱分解する場合に特に好適である。
反応時間に特段の制限はないが、通常10分以上、好ましくは30分以上であり、一方、通常3時間以下、好ましくは2時間以下である。反応時間がこの範囲にあることは、反応を十分に進行させて環状化合物錯体(II)の収率を向上させる観点から好ましい。一方で、式(Ia)で表される有機基を有する場合のように、環状化合物(I)又は環状化合物錯体(II)が熱分解する場合に、反応時間がこの範囲内にあることは分解を抑制できる点で好ましい。
この反応において、環状化合物錯体(II)の収率は、通常50%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。ここで収率は、環状化合物(I)に対する、生成した環状化合物錯体(II)のモル比を指す。
[1.7 配位子交換工程]
本発明に係る環状化合物錯体(II)の製造方法においては、環状化合物(I)とアルカリ金属アミドと金属元素Mの塩とを反応させる工程の後に、得られた生成物に対して配位子交換工程が行われてもよい。
例えば、配位子交換工程により、反応により得られた環状化合物錯体(II)をさらに空気酸化してもよい。例えば、金属元素Mの塩として3価の金属塩を用いた場合、反応により得られた環状化合物錯体(II)において、通常Mは3価である。ここで、こうして得られた環状化合物錯体(II)を空気にさらすことにより、金属Mがさらに酸化された環状化合物錯体(II)を得ることができる。酸化により得られる環状化合物錯体(II)の例としては、Mが4価であり、1つの酸素原子と結合しているものが挙げられる。
また、この配位子交換工程により、反応により得られた環状化合物錯体(II)において金属元素Mに結合する原子を交換してもよい。例えば、金属元素Mにハロゲン原子が結合している場合、このハロゲン原子をヒドロキシ基又は酸素原子へと交換することができる。例えば、金属元素Mの塩として4価のハロゲン化物を用いた場合、反応により得られた環状化合物錯体(II)において、通常Mには2つのハロゲン原子が結合している。ここで、こうして得られた環状化合物錯体(II)を空気にさらすことにより、ハロゲン原子をヒドロキシ基又は酸素原子で交換することができる。交換により得られる環状化合物錯体(II)の例としては、Mが4価であり、1つの酸素原子と結合しているものが挙げられる。
この配位子交換工程は、環状化合物(I)とアルカリ金属アミドと金属元素Mの塩とを反応させた後、後処理を行うことなく、反応溶液を空気に接触させながら攪拌を続けることにより行うことができる。また、環状化合物(I)とアルカリ金属アミドと金属元素Mの塩との反応により得られた環状化合物錯体(II)を精製した後、精製物をさらに任意の溶媒中に溶解させ、溶液を空気に接触させながら攪拌してもよい。
配位子交換工程における温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは80℃以下、よりさらに好ましくは65℃以下、とりわけ好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下である。温度がこの範囲内にあることは、容易に温度制御を行うことができる点で好ましい。また、式(Ia)で表される有機基を有する場合のように、環状化合物錯体(II)が熱分解する場合に、温度がこの範囲内にあることは熱分解を抑制できる点で好ましい。これらの観点から、温度は室温(20℃〜30℃)であることが特に好ましい。
<2.環状化合物錯体(II)の変換反応>
環状化合物錯体(II)が式(Ia)で表される有機基を有する場合、この有機基(Ia)は以下のように有機基(IIa)へと変換されうる。以下では、この変換反応により環状化合物錯体(II)から得られる環状化合物錯体のことを、変換後の環状化合物錯体と呼ぶ。
Figure 2013163649
例えば、RとR、RとR、RとR、及びRとRの組の全てが、式(Ia)に示される有機基である場合、環状化合物錯体(II)は以下のように環状化合物錯体(IIb)へと変換されうる。
Figure 2013163649
上述のように、式(Ia)で表される有機基はさらなる置換基を有してもよく、例えば二重結合の両端の炭素原子がさらなる置換基を有してもよい。この場合、有機基(Ia)は対応するさらなる置換基を有する有機基(IIa)へと変換される。
この変換反応は、加熱により行うことができる。加熱温度は変換反応が進むのであれば特段の制限は無いが、通常100℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上であり、一方、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。温度がより低い場合には反応をより長時間行うことが好ましく、150℃では3時間以上、180℃では10分以上、200℃では5分以上の反応を行うことが望ましい。より高温でより長時間反応を行うことにより、変換収率を高めることができる。一方で、特に環状化合物錯体(II)を基材に塗布してから変換反応を行う場合、より低温でより短時間の反応を行うことにより、加熱が基材に与える影響を減らすことができる。
一方で、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)は、立体的にかさ高いビシクロ構造を有するため、結晶性が悪い。また、ビシクロ構造を有する分子は溶解性が良好であることが多い。また、ビシクロ構造を有する分子の溶液を塗布した際には、結晶性の低い膜又はアモルファス膜が得られることが多い。このように、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)の膜を塗布成膜することは、変換反応により環状化合物錯体(II)から得られる環状化合物錯体の膜を塗布成膜するよりも容易であることが期待される。
特に環状化合物錯体(IIb)はp型半導体材料として用いることができ、例えば光電変換素子、電界効果トランジスタ(FET)などの電子デバイスに用いることができる。しかしながら環状化合物錯体(IIb)は比較的結晶性が高く溶解性が低いために精製が困難であることが多く、純度を高めることが難しい。また、環状化合物錯体(IIb)は溶解性が低いことが多く、これを成形することが困難である。例えば、電子デバイスに用いるために環状化合物錯体(IIb)の膜を形成することは難しいことがある。
上述の変換反応を行うことにより、RとR、RとR、RとR、及びRとRの組の全てが、式(Ia)に示される有機基である環状化合物錯体(II)は、環状化合物錯体(IIb)に変換される。したがって、このような式(Ia)に表される有機基を4つ有する環状化合物錯体(II)の膜を例えば塗布法によって形成した後に、上述の変換反応を行うことにより、環状化合物錯体(IIb)の膜を得ることができる。特に環状化合物錯体(IIb)の溶解性が低い場合に、式(Ia)に表される有機基を4つ有する環状化合物錯体(II)を環状化合物錯体(IIb)に変換する方法は有利となる。このように式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)は、変換後の環状化合物錯体の前駆体であり、以降簡略化のために単に「前駆体」と呼ぶことがある。
ところで、用途によっては、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)の一部のみを変換してもよい。式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)の一部のみを変換することにより、変換後の環状化合物錯体の性質を調整することができる。この場合、上述した反応温度よりも低温あるいは短時間の加熱を行えばよい。また、変換反応を行う際には、ヒーターを用いた伝熱による加熱の他、炭酸ガスレーザー又は赤外線ランプを用いることができる。さらには、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)が吸収する波長の光を照射してもよい。この際、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)の近傍に光を吸収する層を設け、光をこの層で吸収させることにより、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)を加熱することも可能である。加熱反応における反応雰囲気は特に限定されないが、窒素又はアルゴンのような不活性ガス中、あるいは真空中が望ましい。
<3.半導体層形成用組成物>
本発明に係る半導体層形成用組成物は、環状化合物錯体(II)と、溶媒とを含有する。本発明に係る半導体層形成用組成物が含有する環状化合物錯体(II)は、上記の方法に従って合成されうる。
本発明に係る半導体層形成用組成物を用いることにより、環状化合物錯体(II)の層を容易に作製することができる。例えば、本発明に係る半導体層形成用組成物を基材上に塗布するなどの方法により、基材上に半導体層形成用組成物の層を形成する。こうして、電子デバイスに用いられる、環状化合物錯体(II)を含む半導体層を形成することができる。
また、環状化合物錯体(II)が式(Ia)に表される有機基を有する場合、本発明に係る半導体層形成用組成物を用いることにより、上述のように、変換後の環状化合物錯体の層を容易に作製することができる。例えば、本発明に係る半導体層形成用組成物を基材上に塗布するなどの方法により、基材上に半導体層形成用組成物の層を形成する。そして、環状化合物錯体(II)の変換反応を行う。こうして、電子デバイスに用いられる、変換後の環状化合物錯体を含む半導体層を形成することができる。
本発明に係る半導体層形成用組成物が含有する溶媒の種類としては、環状化合物錯体(II)を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されない。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノールなどの低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレンなどのハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサンなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドなどのアミド類などが挙げられる。そのなかでも好ましくは、トルエン又はキシレンなどの非ハロゲン系芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカンなどの非ハロゲン系炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノールなどの非ハロゲン系低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノンなどの非ハロゲン系ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチルなどの非ハロゲン系エステル類;ジエチルエーテル、ジ(n−プロピル)エーテル、ジ(i−プロピル)エーテル、ジ(n−ブチル)エーテル、テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサンなどの非ハロゲン系脂肪族エーテル類が挙げられ、特に好ましくはトルエン又はキシレンなどの非ハロゲン系芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノンなどの非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサンなどの非ハロゲン系脂肪族エーテル類;及びクロロホルムなどのハロゲン炭化水素類が挙げられる。なお、溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る半導体層形成用組成物は、2種類以上の環状化合物錯体(II)を含有してもよい。例えば本発明に係る半導体層形成用組成物は、環状化合物錯体(II)の異性体混合物を含有してもよい。本発明に係る半導体層形成用組成物が含む環状化合物錯体(II)の量に特に制限はないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは1重量%以下である。含有量がこの範囲にあることにより、成膜がより容易となり、保存安定性が向上する傾向がある。本発明に係る半導体層形成用組成物はさらに、環状化合物錯体(II)及び溶媒以外の物質を含んでいてもよい。例えば本発明に係る半導体層形成用組成物は、環状化合物錯体(II)の他に、n型半導体材料を含有してもよい。
本発明に係る半導体層形成用組成物は、溶液状態における保存安定性が良好でありうる。保存安定性が良好であるとは、組成物を調製後25℃にて静置した場合に、通常1日経過後、好ましくは2日経過後、さらに好ましくは7日経過後、特に好ましくは20日経過後に、固体が析出しないことをいう。特に、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)は、変換後の環状化合物錯体よりも分子間相互作用が弱いものと考えられる。したがって式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)を含有する半導体層形成用組成物は、変換後の環状化合物錯体を含有する組成物よりも保存安定性が高いものと考えられる。
また、本発明に係る半導体層形成用組成物が環状化合物錯体(II)の異性体混合物を含む場合、保存安定性が高くなりうるため、好ましい。この詳細なメカニズムは明確ではないが、異性体間の分子間相互作用は、同一分子間の分子間相互作用よりも通常弱いことが理由の1つと考えられる。すなわち、複数の異性体が溶液内に混在する場合には、分子が規則的に配列することが困難となるため、分子の凝集、及び溶媒分子との相互作用による結晶化などによる、固体成分の析出が起こりにくくなることが想定される。このために、本発明に係る半導体層形成用組成物が含有する環状化合物錯体(II)が、より多くの異性体を有しうることは好ましい。
<4.電子デバイス>
次に、本発明に係る半導体層形成用組成物を用いて、電子デバイス、例えば半導体の製造方法について説明する。この製造方法は、本発明に係る半導体層形成用組成物を基材上に塗布する工程を含む。ここで、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体が形成される基材は、層及び電極のような他の構造が形成されている基板であってもよい。
本明細書において電子デバイスとは、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質などにより制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置である。例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子が挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振が挙げられる。
現在シリコンなどで実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサーなど、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。また、光により起電力を生じる光電変換素子及び太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスタなどの光素子も挙げることができる。環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体は、これらの電子デバイスにおいて、有機半導体として用いることができる。なかでも、本発明に係る電子デバイスは、電界効果トランジスタ、太陽電池、又はエレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。なお、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を有機半導体として使用する場合、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体以外の有機半導体を併用してもよい。
環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体は、電子デバイスにおいて有機半導体以外の用途で用いてもよい。例えば、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体の膜を電子デバイスの所望の位置に形成し、その膜の導電率を分子構造あるいはドーピングなどで制御することにより、この膜を配線に用いたりコンデンサやFET中の絶縁層に用いたりすることもできる。
電子デバイスのより具体的な例は、S.M.Sze著、Physics of Semiconductor Devices、2nd Edition(Wiley Interscience 1981)に記載されているものを挙げることができる。
本明細書において「半導体」とは、固体状態におけるキャリア移動度の大きさによって定義される。キャリア移動度とは、周知であるように、電荷をどれだけ速く(又は多く)移動されることができるかという指標となるものである。具体的には、本明細書における「半導体」は、室温におけるキャリア移動度が1.0x10−7cm/V・s以上、好ましくは1.0x10−6cm/V・s以上、より好ましくは1.0x10−5cm/V・s以上であることが望ましい。なお、キャリア移動度は、例えば電界効果トランジスタのIV特性、タイムオブフライト法などにより測定できる。また環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を含む半導体膜の特性としては、室温におけるキャリア移動度が1.0x10−7cm/V・s以上、好ましくは1.0x10−6cm/V・s以上、より好ましくは1.0x10−5cm/V・s以上であることが望ましい。
[4.1 基板処理]
本発明に係る電子デバイスは、基板上に作製するが、基板に対する基板処理により、電子デバイスの特性を向上させることができる。これは、基板の親水性/疎水性を調整することにより製膜の際に得られる膜質を向上させられること、特に基板と半導体層の界面部分の特性を改良できることがその原理であると推定される。このような基板処理としては、ヘキサメチルジシラザン、シクロヘキセン、オクタデシルトリクロロシランなどを用いた疎水化処理、塩酸や硫酸、酢酸などの酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどを用いたアルカリ処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴンなどを用いたプラズマ処理、ラングミュアブロジェット膜の形成処理、及びその他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理、などが挙げられる。
[4.2 膜厚]
本発明に係る電子デバイスには環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体が用いられ、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体は、例えば基板上に形成される。化合物を膜状に形成して薄膜電子デバイスに用いる場合、膜厚が薄いと十分に光吸収ができなかったり短絡したりすることが多くなる。また、膜厚が厚くなると膜厚方向の抵抗が増して特性が劣化する事が多い。この観点から、好ましい膜厚は1nmから10μmの範囲であり、より好ましくは10nmから500nmの範囲である。また、基板上に均一な膜を形成するのではなく、環状化合物錯体(II)を含む溶液を液滴として付着させることにより電子デバイスを製造する場合でも、この付着物の厚さが上記範囲であることが好ましい。
[4.3 混合]
環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体は、単独で有機半導体として使用してもよいし、他の化合物と混合して用いてもよい。さらには、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体の層と、他の化合物の層との積層構造を、電子デバイスに用いることもできる。
[4.4 成膜]
上述の通り、半導体層形成用組成物を塗布し、必要に応じて変換反応を行うことによって、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を含む電子デバイスを作製することができる。塗布の方法としては、キャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティングなどのコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷などの印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法など、さらにはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いることができる。さらに、塗布に類似の技術として、水面上に形成した単分子膜を基板に移すことにより積層を行うラングミュアブロジェット法、液晶や融液状態の化合物を2枚の基板で挟む方法、及び液晶や融液状態の化合物を毛管現象により基板間に導入する方法、なども挙げられる。
また、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を、真空プロセスにより基板上に成膜して半導体デバイスを作製することもできる。この場合には、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体をルツボや金属のボートに入れて真空中で加熱し、基板に付着させる真空蒸着法を用いることが出来る。この際、真空度としては、通常1×10−3Torr以下、好ましくは1×10−5Torr以下である。なお、1Torr=1.33322×10Paである。
また、真空度と、蒸着源である環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体の加熱温度と、を調節することにより、蒸着プロセスを制御することができる。例えば、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)を、変換反応が起きる温度よりも高い温度で蒸着させることにより、変換後の環状化合物錯体を基板上に蒸着することができる。また、この温度よりも低い温度で蒸着を行うことにより、環状化合物錯体(II)を基板に蒸着することができる。そして基板上の式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)を加熱することにより、変換反応を行うことができる。このような方法を用いることにより、変換後の環状化合物錯体を高純度で含む半導体層を得ることができる。
また、蒸着時の基板温度によりデバイスの特性が変化するので、最適な温度を選択することが好ましい。この観点から、蒸着時の温度は0℃から200℃の範囲が好ましい。また、均一な膜を形成することにより高性能な電子デバイスを作製する観点、及び蒸着にかかる時間を抑える観点から、蒸着速度は通常0.01Å/秒以上、好ましくは0.1Å/秒以上、また、通常100Å/秒以下、好ましくは10Å/秒以下である。材料を蒸発させる方法としては、加熱の他、加速したアルゴンなどのイオンを衝突させるスパッタ法も用いることが出来る。なお、1Å=10−10mである。
さらに、作製された半導体層は、後処理により特性を改良することが可能である。例えば、加熱処理により、成膜時に生じた膜中の歪みを緩和することができ、デバイス特性の向上及びデバイス特性の安定化を図ることができる。さらに、酸素又は水素などの酸化性又は還元性の気体や液体に半導体層をさらすことにより、酸化又は還元による特性変化を誘起することもできる。このことは例えば、半導体膜中のキャリア密度を増加又は減少させる目的で利用することができる。
また、ドーピングと呼ばれる技術を用いることもできる。すなわち、微量の原子、原子団、分子、又は高分子などを加えることにより、デバイス特性を望ましいものに変化させることができる。例えば、酸素、水素、塩酸、硫酸及びスルホン酸などのブレンステッド酸、PF、AsF及びFeClなどのルイス酸、ヨウ素などのハロゲン原子、ナトリウム及びカリウムなどの金属原子などを、ドーピング材料として用いることができる。ドーピング処理は、これらのガスに接触させること、これらの溶液に浸すこと、又は電気化学的な処理を行うことにより達成できる。ドーピング処理を行うのは膜の形成後でなくてもよい。例えば、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体の合成時にドーピング材料を添加してもよい。また、半導体層形成用組成物にドーピング材料を添加してもよい。さらに、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)の層を形成してから変換反応を行う場合、環状化合物錯体(II)の層に対してドーピングを行うこともできる。さらには、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を蒸着する際にドーピング材料を共蒸着すること、半導体層を形成する際の雰囲気にドーピング材料を混合すること、及びドーピング材料のイオンを真空中で加速して膜に衝突させること、などによってドーピングを行うことも可能である。
これらのドーピング処理により、キャリア密度の増加あるいは減少による電気伝導度の変化、キャリアの極性の変化(p型、n型)、及びフェルミ準位の変化などが引き起こされるため、半導体デバイスの作製においてドーピング処理はよく利用されている。ドーピング処理は電界効果トランジスタ(FET)を含む様々な電子デバイスの作成時に行うことができる。
[4.5 電極、配線及び保護層]
光電変換素子及びFETを含む電子デバイス作製の為の電極及び配線には、金、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、及び白金などの金属、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、及びポリジアセチレンなどのドーピングされていてもよい導電性高分子、シリコン、ゲルマニウム、及びガリウムヒ素などのドーピングされていてもよい半導体材料、フラーレン、カーボンナノチューブ、及びグラファイトなどの炭素材料、などを用いることができる。電極及び配線を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、及びゾルゲル法などを用いることができる。また、電極及び配線を形成する際にパターニングを行う場合、フォトレジストのパターニングとエッチング液又は反応性のプラズマを用いたエッチングとを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、及び凸版印刷などの印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィー法、これらの方法の組み合わせ、などを用いることができる。また、レーザーや電子線などのエネルギー線を照射することにより、材料を除去し又は材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを作製することも可能である。
さらに電子デバイスには、半導体特性を改良するため、又は外気の影響を最小限にするために、保護膜を形成することができる。保護膜としては、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、及びポリカーボネート樹脂などを含むポリマー膜、酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸化アルミニウムなどの無機酸化膜又は無機窒化膜などが挙げられる。ポリマー膜を形成する方法としては、ポリマー材料の溶液を塗布して乾燥させる方法、モノマーを塗布あるいは蒸着してから重合させる方法が挙げられる。また、ポリマー膜に対して架橋処理を行うこと、及び多層からなる膜を形成することも可能である。無機物膜を形成する方法としては、スパッタ法、蒸着法などの真空プロセスを用いた方法、及びゾルゲル法に代表される溶液プロセスを用いた方法などを用いることができる。半導体特性を改良するために、半導体に接するポリマー膜の材料は、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリベンジルメタクリレート、ポリアセナフチレン、ポリカーボネートなどの芳香環を含むものが好ましい。半導体に接するポリマー膜の上に、例えば窒化ケイ素や酸化ケイ素などの無機膜、及びアルミニウムやクロムなどの金属膜などの、ガスバリア性を有する膜をさらに積層することが好ましい。用途などに応じて、電子デバイスには上述した以外の層や部材を設けてもよい。
<5.FET>
環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を用いた電子デバイスの好適な例としては、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。以下、本発明に係るFETについて詳細に説明する。本発明に係るFETは、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を半導体層の材料として含む。
図4は、本発明に係るFETの構造の一例を模式的に示す図である。図4において、51が半導体層、52が絶縁体層、53及び54がソース電極及びドレイン電極、55がゲート電極、56が基板をそれぞれ示す。図4(A)〜(D)は、それぞれが本発明に係るFETの構造の一例を示す。以下、本発明に係るFETのこれらの実施例について説明する。
ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極の各電極には、例えば、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウムなどの金属の他、InO、SnO、ITOなどの導電性の酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子、塩酸、硫酸、スルホン酸などのブレンステッド酸、PF、AsF、FeClなどのルイス酸、ヨウ素などのハロゲン原子、ナトリウム、カリウムなどの金属原子などのドーパントを上述のような導電性高分子に対して添加したもの、カーボンブラックや金属粒子などが分散されている導電性の複合材料などの、導電性を有する材料が用いられる。
また、絶縁体層に用いられる材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのポリマー及びこれらの共重合体、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの酸化物、窒化ケイ素などの窒化物、チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウムなどの強誘電性酸化物、並びにこれらの酸化物、窒化物、及び強誘電性酸化物などの粒子が分散されているポリマーなどが挙げられる。
一般に絶縁膜の静電容量が大きくなるほどゲート電圧を低電圧で駆動できることになるので、有利になる。このことは、誘電率の大きな絶縁材料を用いるか、又は絶縁体層の厚さを薄くする事で実現できる。絶縁体層は、塗布法(スピンコーティングやブレードコーティング)、蒸着法、スパッタ法、スクリーン印刷やインクジェットなどの印刷法、アルミにアルマイトを形成するように金属上に酸化膜を形成する方法など、材料特性に合わせた方法で作製することができる。
またFETは、通常基板上に作製する。基板としては任意のものを用いることができ、例えば、ポリマーの板若しくはフィルム、ガラス、コーティングにより絶縁膜が形成された金属、及びポリマーと無機材料の複合材料などを用いることができる。さらに、基板に処理を施すことにより、FETの特性を向上させることができる。これは基板の親水性/疎水性を調整することにより、成膜される半導体層の膜質を向上させること、特に基板と半導体層との界面部分の特性を改良することによるものと推定される。このような基板処理としては、ヘキサメチルジシラザン、シクロヘキセン、オクタデシルトリクロロシランなどを用いた疎水化処理、塩酸、硫酸、及び酢酸などの酸を用いた酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及びアンモニアなどを用いたアルカリ処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴンなどを用いたプラズマ処理、ラングミュアブロジェット膜の形成処理、その他の絶縁体又は半導体の薄膜の形成処理、などが挙げられる。
本実施例に係るFETにおいて半導体層は、基板上に直接又は他の層を介して半導体を膜状に形成したものである。本実施例に係るFETにおいて半導体層51は、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を含む。例えば、半導体層形成用組成物を塗布成膜し、必要に応じて変換反応を行うことによって、半導体層51を形成することができる。もっとも半導体層51は、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体以外に、他の化合物(他の有機半導体など)を含有してもよい。また半導体層51は、異なる材料を含み又は異なる成分を有する複数の層で形成される積層構造を有してもよい。
半導体層51の膜厚に制限は無く、例えば横型の電界効果トランジスタの場合、所定の膜厚以上であれば素子の特性は半導体層51の膜厚には依存しない。ただし、膜厚が厚くなりすぎると漏れ電流が増加してくることが多いため、半導体層の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上であり、コストの観点からは通常10μm以下、好ましくは500nm以下である。また、半導体層51は基板上に形成された均一な膜である必要はない。例えば、半導体層形成用組成物を液滴として付着させることにより、半導体層51が形成されていてもよい。この場合付着物の厚さは、上記の範囲内であることが好ましい。
<6.光電変換素子>
本発明に係る光電変換素子は、以下に詳しく説明するように、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を含む。本発明に係る光電変換素子は、長波長の光、特に720nm以上の光を、より効率的に電気へと変換しうる。
本発明に係る光電変換素子は、少なくとも1対の電極と、電極間に配置された活性層とを有する。そして、活性層は、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を含む。以下で、本発明に係る光電変換素子の一実施例を説明する。図1に、本発明の一実施例である光電変換素子110を示す。図1は一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子を表すが、本発明に係る光電変換素子は図1の構造に限られるわけではない。図1に係る光電変換素子110は、電極101,107と、活性層103,104,105とを有する。さらに本実施例に係る光電変換素子は、図1に示されるように、基板100と、バッファ層102,106とを有してもよい。図1においては、電極101は正極であり、電極106は負極である。もちろん、本発明の他の実施例において、正極と負極とが逆であってもよい。以下、これらの各部について説明する。
[6.1 活性層]
光電変換素子110の活性層はp型半導体材料とn型半導体材料とを含む。ここで、p型半導体材料には、少なくとも環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を含む。光が活性層に吸収されると、p型半導体とn型半導体との界面で電気が発生し、発生した電気が電極から取り出される。活性層の構造としては、p型半導体層とn型半導体層とが積層された薄膜積層型構造、p型半導体とn型半導体とが混合したバルクヘテロ接合型構造、p型半導体とn型半導体とが混合した層(i層)をp型半導体層とn型半導体層との間に有する構造、などが挙げられる。なかでも、i層をp型半導体層とn型半導体層との間に有する構造は、光によって電気が発生する部分を厚くできることから好ましい。本実施例の光電変換素子110の活性層はi層を有する構造であり、具体的には活性層はp型半導体層103と、i層104と、n型半導体層105とによって構成されている。また、i層中にナノ構造を有することが、混合接合層から発生する電子とホールとを輸送するためのルートが供給されることにより、光電流が増大することから特に好ましい。
活性層の膜厚は特に限定されないが、活性層の膜厚は10〜1000nmが好ましく、50〜200nmがさらに好ましい。活性層の厚さが10nm以上であることで層の均一性が保たれるため、短絡を起こしにくくなる。又、活性層の厚さが1000nm以下であることにより、内部抵抗を小さくすることができ、さらに電極間の距離が近いことにより電荷の拡散を良好にすることができる。活性層のp型半導体層、i層、n型半導体層各層の厚みにも制限はないが、通常3nm以上、なかでも10nm以上、また、通常200nm以下、なかでも100nm以下とすることが好ましい。層厚を厚くすることにより、膜の均一性が高まる傾向がある。また、層厚を薄くすることで透過率が向上し、直列抵抗が低下する傾向がある。
活性層の形成方法に特に制限はないが、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法などの湿式塗布法などにより形成することが好ましい。例えばp型半導体層は、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を含む半導体層形成用組成物を塗布成膜し、必要に応じて変換反応を行うことによって作製することができる。またi層104は、p型半導体材料(又はp型半導体材料前駆体)とn型半導体材料とを含む溶液を塗布することによって生成されうる。具体的には、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体とn型半導体材料とを含む半導体層形成用組成物を塗布成膜し、必要に応じて変換反応を行うことによって、i層104を形成することができる。溶媒の種類は、半導体材料を均一に溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などから選択することができる。
以下に、p型半導体層103及びi層104を構成するp型半導体材料、並びにn型半導体層105及びi層104を構成するn型半導体材料について説明する。
[6.1.1 p型半導体材料]
本実施例に係るp型半導体材料は、少なくとも環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体を含む。p型半導体材料は、環状化合物錯体(II)又は変換後の環状化合物錯体のみで構成されていてもよいし、他の化合物を含んでいてもよい。
環状化合物錯体(II)を含むp型半導体層103は、環状化合物錯体(II)を含む半導体層形成用組成物を塗布成膜することによって形成することができる。また変換後の環状化合物錯体を含むp型半導体層103は、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)を含む半導体層形成用組成物を塗布成膜し、環状化合物錯体(II)の変換反応を行うことによって作製できる。
同様に、式(Ia)に表される有機基を有する環状化合物錯体(II)とn型半導体材料を含む層を形成し、環状化合物錯体(II)の変換反応を行うことにより、i層104を形成することができる。
[6.1.2 n型半導体材料]
本実施例に係るn型半導体材料は、特に限定されない。例えば、フラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びペリレンテトラカルボン酸ジイミドなどの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン、及びペンタセンなど縮合多環芳香族の全フッ化物、単層カーボンナノチューブ、ポリキノリン、ポリピリジン、ポリアニリン、ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン)、ホウ素ポリマー、並びにシアノ置換されたポリフェニレンビニレンなどが挙げられる。n型半導体材料は、一種類の化合物で構成されていてもよいし、二種類以上の化合物で構成されていてもよい。
本実施例に係るn型半導体材料は、好ましくはフラーレン化合物である。本実施例に係るフラーレン化合物としては、より好ましくは、C60フラーレン化合物、又はC70フラーレン化合物である。特に好ましくは、互いに異なっていてもよい炭素数1〜50の有機基を2個有するC60フラーレン化合物又はC70フラーレン化合物である。また、2個の有機基が連結して環を形成していてもよい。互いに異なっていてもよい炭素数1〜50の有機基を2個有するC60フラーレン誘導体の具体例としては、ケイ素原子に芳香環基が結合しているシリルアルキル基を有機基として有するフラーレンが挙げられる。また、2個の有機基が連結して環を形成している場合の具体例としては、環がインデン類であるフラーレン、環がキノジメタン類であるフラーレン、PC61BM、PC71BMなどが挙げられる。フラーレン化合物の具体的構造としては、以下のようなものが挙げられる。
Figure 2013163649
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[6.2 電極]
本実施例に係る電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有するものである。本実施例の電極は、一対の正極101と負極107とで構成される。電極の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。しかしながら正極101は、正孔の捕集に適した電極であることが好ましい。また、負極107は、電子の捕集に適した電極であることが好ましい。一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過する程度のものである。又、透明電極の太陽光線透過率が70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層に光を到達させるためには、好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
正孔の捕集に適した電極とは、一般には仕事関数が負極電極よりも高い値を有する導電性材料で、活性層で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。正孔の捕集に適した電極の材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、インジウムージルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物、金、白金、銀、クロム、コバルトなどの金属あるいはその合金が挙げられる。
これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルフォン酸をドーピングしたPEDOT/PSSで代表されるような導電性高分子材料を活性層との間に積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層した場合には、その導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMgなどの負極に適した金属も広く用いることが可能である。ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルフォン酸をドーピングしたPEDOT/PSSや、ポリピロール及びポリアニリンなどにヨウ素などのドーピングした導電性高分子材料を、正孔の捕集に適した電極の材料として使用することもできる。
また、正極101が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛、酸化錫などの透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。正極101の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上であり、一方、通常10μm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下、特に好ましくは100nm以下である。正極101の膜厚を10nm以上により厚くすることにより、シート抵抗が抑えられて性能が向上する。正極101の膜厚を10μm以下により薄くすることにより、光透過率が低下せずに効率よく光を電気に変換することができ、かつコストを抑えることができる。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。正極101のシート抵抗は特段の制限はないが、電流を増加させる観点から、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
正極101の形成方法は、蒸着、スパッタなどの真空成膜方法、ナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法などがある。
電子の捕集に適した電極とは、一般には仕事関数が正孔の捕集に適した電極よりも高い値を有する導電性材料であり、活性層で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する。
電子の捕集に適した電極の材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム及びマグネシウムなどの金属及びその合金、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどの無機塩、酸化ニッケル,酸化アルミニウム、酸化リチウム及び酸化セシウムのような金属酸化物などが挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料のため、好ましい。またチタニアのようなn型半導体で導電性を有する材料を活性層との間に積層する場合には、正孔の捕集に適した高い仕事関数を有する材料も用いることができる。電極保護の観点から、電子の捕集に適した電極の材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、カルシウム及びインジウムなどの金属、又はこれら金属を用いた合金である。
負極107の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上下、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下、特に好ましくは100nm以下である。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。負極107の膜厚を10nm以上により厚くすることにより、シート抵抗が抑えられて性能が向上する。負極107の膜厚を10μm以下により薄くすることにより、光透過率が低下せずに効率よく光を電気に変換することができ、かつコストを抑えることができる。
負極107のシート抵抗は特に制限は無いが、電流を増加させる観点から好ましくは1000Ω/□であり、より好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。負極160の形成方法は、蒸着、スパッタなどの真空成膜方法、ナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法などがある。
さらに、正極101及び負極107は2層以上で構成される積層構造を有してもよい。また、正極101及び負極107の表面に対して表面処理を行うことにより特性(電気特性やぬれ特性など)を改良してもよい。
[6.3 基板]
本実施例に係る光電変換素子110は、通常は支持体となる基板100を有する。すなわち、基板100上に、電極101、活性層103,104,105、及び電極107が形成される。基板100の材料(基板材料)は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意である。基板材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア、チタニアなどの無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレンなどのポリオレフィン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン、エポキシ樹脂などの有機材料;紙、合成紙などの紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウムなどの金属に、絶縁性を付与するために表面をコートあるいはラミネートしたものなどの複合材料などが挙げられる。ガラスとしてはソーダガラスや青板ガラスや無アルカリガラスなどが挙げられる。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。
基板の形状に制限はなく、例えば、板、フィルム、シートなどの形状を用いることができる。基板の厚みに制限はない。ただし、通常5μm以上、なかでも20μm以上、また、通常20mm以下、なかでも10mm以下に形成することが好ましい。基板が薄すぎると光電変換素子の強度が不足する可能性があり、基板が厚すぎるとコストが高くなったり重量が重くなりすぎたりする可能性がある。又、基板がガラスの場合は、薄すぎると機械的強度が低下し、割れやすくなるため、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。また、厚すぎると重量が重くなるため、好ましくは1cm以下であり、0.5cm以下がより好ましい。
[6.4 バッファ層]
本実施例の光電変換素子110はさらに、1以上のバッファ層を有してもよい。バッファ層は、正孔取り出し層102及び電子取り出し層106に分類することができる。電子取り出し層106は、活性層105と電極(負極)107との間に設けることができる。また、正孔取り出し層102は、活性層103と電極(正極)101との間に設けることができる。
[6.4.1 正孔取り出し層]
正孔取り出し層102の材料は、活性層103から正極101への正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミンなどの導電性有機化合物などが挙げられる。また、Au、In、Ag、Pdなどの金属などの薄膜も使用することができる。さらに、金属などの薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
正孔取り出し層102の膜厚は特に限定はないが、通常2nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。正孔取り出し層102の膜厚が2nm以上であることで正孔の取り出し効率を向上する機能が十分に発揮され、正孔取り出し層102の膜厚が40nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上する。
[6.4.2 電子取り出し層]
電子取り出し層106の材料は、活性層105から負極107へ電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されないが、大きくわけて無機化合物と有機化合物が挙げられる。電子取り出し層としては、どちらかの材料を単層で用いてもよいし、これらの材料を積層させて用いてもよい。
電子取り出し層106の材料として用いられる無機化合物としては、Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属の塩、又は酸化チタン(TiO)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型の酸化物半導体が望ましい。アルカリ金属塩としては、LiF、NaF、KF、CsFのようなフッ化物塩が望ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Alなどの電子取り出し電極(カソード)と組み合わされてカソードの仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
アルカリ金属塩は真空蒸着、スパッタなどの真空成膜によって成膜可能であるが、なかでも抵抗加熱による真空蒸着によって形成するのが望ましい。これは、下地の有機層へのダメージを小さくできるからである。膜厚は、通常0.1nm以上、一方、通常50nm以下、好ましくは、20nm以下である。薄すぎると、電子取り出し層の効果が十分に発揮されず、厚すぎると、直列抵抗成分として作用する為に、素子の特性を損なう傾向がある。
酸化チタンTiOxの成膜には、スパッタ法などの真空成膜も利用できるが、塗布法での成膜が望ましい。例えば、Adv.Mater.18,572(2006)に記載のゾルゲル法によって形成できる。膜厚は、通常0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上であり、一方、通常1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。薄すぎると、電子取り出し層の効果が十分に発揮されず、厚すぎると、直列抵抗成分として作用する為に、素子の特性を損なう傾向がある。
酸化亜鉛ZnOの成膜にも、スパッタ法などの真空成膜も利用できるが、塗布法での成膜が望ましい。例えば、Sol−Gel Science,C.J.Brinker,G.W.Scherer著,Academic Press(1990)に記載のゾルゲル法によって形成できる。膜厚は、通常0.1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上であり、一方、通常1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下が好ましい。薄すぎると、電子取り出し層の効果が十分に発揮されず、厚すぎると、直列抵抗成分として作用する為に、素子の特性を損なう傾向がある。
電子取り出し層として用いられる有機化合物材料としては、具体的には、バソキュプロイン(BCP)又は、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、ホスフィンオキシド化合物、ホスフィンスルフィド化合物が挙げられる。
そのなかでも好ましくは、アリール基で置換されたホスフィンオキシド化合物、アリール基で置換されたホスフィンスルフィド化合物であり、より好ましくは、トリアリールホスフィンオキシド化合物、トリアリールホスフィンスルフィド化合物、ジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物、ジアリールホスフィンスルフィドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物、フッ素原子もしくはパーフルオロアルキル基で置換されたトリアリールホスフィンオキシド化合物、ジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物である。上記材料に対してアルカリ金属又はアルカリ土類金属をドープしてもよい。
電子取り出し層106の膜厚は特に限定はないが、通常0.01nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。電子取り出し層106の膜厚が0.01nm以上であることで電子の取り出し効率を向上する機能が十分に発揮され、電子取り出し層106の膜厚が40nm以下であることで、電子が取り出し易くなり、光電変換効率が向上する。
電子取り出し層で使用される化合物のガラス転移温度としては、特に限定はないが、70℃以上が好ましく、さらに好ましくは80℃以上である。上限は特に限定はないが、通常200℃以下、好ましくは190℃以下である。ガラス転移温度が低すぎると、太陽電池素子に用いた場合、使用温度範囲でバッファ層材料がアモルファス状態と結晶状態に変化し、状態が変化することによりバッファ層としての安定性がなくなる。ガラス転移温度が低すぎると、太陽電池素子に用いた場合、使用温度範囲でバッファ層材料が結晶状態になりやすく、バッファ層の欠陥ができる可能性がある。ガラス転移温度は公知の方法で測定すれば良く、例えばDSC法が挙げられる。
<7.本発明に係る太陽電池>
本発明に係る光電変換素子110は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。
図2は本発明の一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなどの防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[7.1 耐候性保護フィルム1]
耐候性保護フィルム1は天候変化から太陽電池素子6を保護するフィルムである。耐候性保護フィルム1で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、薄膜太陽電池14の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム1は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上200μm以下である。
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理及び/又はプラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14においてできるだけ外側に設けることが好ましい。薄膜太陽電池14の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
[7.2 紫外線カットフィルム2]
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。紫外線カットフィルム2を薄膜太陽電池14の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリアフィルム3、9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、下限に制限はない。また、紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうるものが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系又はエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルム等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のものを用いることができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。前記したように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)等が挙げられる。なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。ただし、太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
[7.3 ガスバリアフィルム3]
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。ガスバリアフィルム3で太陽電池素子6を被覆することにより、太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、通常1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、下限に制限はない。
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、通常1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、下限に制限はない。
また、ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム3の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
なかでも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOを真空蒸着したフィルム等が挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム3が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[7.4 ゲッター材フィルム4]
ゲッター材フィルム4は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。ゲッター材フィルム4で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。ここで、ゲッター材フィルム4は前記のようなガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm以上であり、上限に制限は無いが、通常10mg/cm以下である。また、ゲッター材フィルム4が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3及び9等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉して酸素による太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム4は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr又はBa等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO又はBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム又は酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。本実施形態ではゲッター材フィルム4が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4、8がそれぞれ太陽電池素子6とガスバリアフィルム3、9との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[7.5 封止材5]
封止材5は、太陽電池素子6を補強するフィルムである。太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、薄膜太陽電池14の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1やバックシート10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、薄膜太陽電池14全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材5は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常2μm以上通常700μm以下である。
封止材5の基板に対するT型剥離接着強さは通常1N/inch以上通常2000N/inch以下である。T型剥離接着強さが1N/inch以上であることは、モジュールの長期耐久性を確保できる点で好ましい。T型剥離接着強さが2000N/inch以下であることは、太陽電池モジュールを廃棄する際に、基材やバリアフィルムと接着材を分別して廃棄できる点で好ましい。T型剥離接着強さはJIS K6854に準拠する方法により測定する。
封止材5の構成材料としては、上記特性を有する限り特段の制限はないが、有機・無機の太陽電池の封止、有機・無機のLED素子の封止、又は電子回路基板の封止等に一般的に用いられている封止用材料を用いる事ができる。
具体的には、熱硬化性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とは例えば、紫外線、可視光、電子線などで硬化する樹脂のことである。より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物、炭化水素系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、又はシリコーン系樹脂組成物等が挙げられ、それぞれの高分子の主鎖、分岐鎖、末端の化学修飾、分子量の調整、添加剤等によって、熱硬化性、熱可塑性及び活性エネルギー線硬化性等の特性が発現する。
また、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
封止材5中の封止材用構成材料の密度は、0.80g/cm3以上が好ましく、上限に制限はない。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子6を挟み込むように設ける。太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
[7.6 太陽電池素子6]
太陽電池素子6は、前述の光電変換素子と同様である。
太陽電池素子6は、薄膜太陽電池14一個につき一個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子6を設ける。具体的な太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。太陽電池素子6を複数設ける場合、太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。
このように太陽電池素子6同士を接続する場合には、太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子6と太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、薄膜太陽電池14の発電量を増加させるためである。
[7.7 封止材7]
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[7.8 ゲッター材フィルム8]
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[7.9 ガスバリアフィルム9]
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[7.10 バックシート10]
バックシート10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[7.11 寸法等]
本実施形態の薄膜太陽電池14は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として薄膜太陽電池14を形成することにより、薄膜太陽電池14を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できるようになっている。薄膜太陽電池14は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
薄膜太陽電池14の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上3000μm以下である。
[7.12 製造方法]
本実施形態の薄膜太陽電池14の製造方法に制限は無いが、例えば、図2の形態の太陽電池製造方法としては、図2に示される積層体を作成した後に、ラミネート封止工程を行う方法が挙げられる。本実施形態の太陽電池素子は、耐熱性に優れるため、ラミネート封止工程による劣化が低減される点で好ましい。
図2に示される積層体作成は周知の技術を用いて行うことができる。ラミネート封止工程の方法は、本発明の効果を損なわなければ特に制限はないが、例えば、ウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネート、押出しラミネート、共押出成型ラミネート、押出コーティング、光硬化接着剤によるラミネート、サーマルラミネートなどが挙げられる。なかでも有機ELデバイス封止で実績のある光硬化接着剤によるラミネート法、太陽電池で実績のあるホットメルトラミネート、サーマルラミネートが好ましく、さらに、ホットメルトラミネート、サーマルラミネートがシート状の封止材を使用できる点でより好ましい。
ラミネート封止工程の加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。ラミネート封止工程の加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。ラミネート封止工程の圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5、7がはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。なお、2個以上の太陽電池素子6を直列又は並列接続したものも上記と同様にして、製造することができる。
[7.13 用途]
本発明の太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。本発明の薄膜太陽電池を適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等である。
本発明の太陽電池、特には薄膜太陽電池はそのまま用いても、基材上に太陽電池を設置して太陽電池モジュールとして用いてもよい。例えば、図3に模式的に示すように、基材12上に薄膜太陽電池14を備えた太陽電池モジュール13を用意し、これを使用場所に設置して用いればよい。具体例を挙げると、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けることにより、太陽電池モジュール13として太陽電池パネルを作製することができる。
基材12は太陽電池素子6を支持する支持部材である。基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイアおよびチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリノルボルネン等の有機材料;紙および合成紙等の紙材料;ステンレス、チタンおよびアルミニウム等の金属;ステンレス、チタンおよびアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;などが挙げられる。
なお、基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、これら有機材料あるいは紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させてもよい。基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。この太陽電池パネルは、建物の外壁等に設置することができる。
<実施例1:環状化合物錯体の合成>
[実施例1−1]
Figure 2013163649
よく乾燥させたナス型フラスコ(100mL)に化合物CP(24.9mg,0.040mmol)及び無水トルエン(25mL)を入れ、反応容器内の気体をアルゴンで置換した。反応容器にさらにヘキサメチルジシラザンリチウムトルエン溶液(LiHMDS,1M,160μL,0.160mmol)を加え、室温(20℃)で30分間反応させた後、塩化チタン(IV)トルエン溶液(160μL,1M,0.160mmol)を加え、室温でさらに1時間反応させた。その後、反応液を大気圧下、20℃で攪拌しつつ空気に1時間晒すことで(溶液の色が緑色から赤色に変わるまで)配位子交換を行った。反応終了後、溶液をエバポレーターで濃縮し、クロロホルム(50mL)で生成物を抽出した(×1)。さらに、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、及び飽和食塩水で各1回ずつ洗浄した(各50mL)。有機層を無水硫酸ナトリウム(5g)で乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をクロロホルム(15mL)に溶解させ、飽和酢酸亜鉛メタノール溶液(1mL)を加え、室温(20℃)で1時間反応させた。反応終了後、反応液を水及び飽和食塩水で各1回ずつ洗浄した(各50mL)。その後有機層を無水硫酸ナトリウム(5g)で乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:関東化学製シリカゲル60N、溶媒:クロロホルム)で精製し、再沈殿(溶媒:へキサン)によりさらに精製することで、目的物であるテトラキス(ビシクロ[2.2.2]オクタジエン)チタニルポルフィリン(化合物TiOCP,0.0246g,収率90%)を得た。質量分析(MALDI−TOF−MS法)により、目的物の質量と一致するm/z:684.24[M+H]を検出した。
[実施例1−2]
Figure 2013163649
よく乾燥させたナス型フラスコ(100mL)に化合物CP(24.9mg,0.040mmol)及び無水トルエン(25mL)を入れ、反応容器内の気体をアルゴンで置換した。反応容器にさらにヘキサメチルジシラザンリチウムトルエン溶液(LiHMDS,1M,160μL,0.160mmol)を加え、室温(20℃)で30分間反応させた後、塩化バナジウム(III)テトラヒドロフラン錯体(1:3)(0.0598g,0.160mmol)を加え、室温で1時間反応させた。反応液を大気圧下、20℃で攪拌しつつ空気に1時間晒すことで(溶液の色が緑色から赤色に変わるまで)配位子交換を行った。反応終了後、溶液をエバポレーターで濃縮し、クロロホルム(50mL)で生成物を抽出した(×1)。さらに、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、及び飽和食塩水で各1回ずつ洗浄した(各50mL)。有機層を無水硫酸ナトリウム(5g)で乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をクロロホルム(15mL)に溶解させ、飽和酢酸亜鉛メタノール溶液(1mL)を加え、室温(20℃)で1時間反応させた。反応終了後、反応液を水及び飽和食塩水で各1回ずつ洗浄した(各50mL)。その後有機層を無水硫酸ナトリウム(5g)で乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:関東化学製シリカゲル60N、溶媒:クロロホルム)で精製し、再沈殿(溶媒:へキサン)によりさらに精製することで、目的物であるテトラキス(ビシクロ[2.2.2]オクタジエン)バナジルポルフィリン(化合物VOCP,0.0269g,収率98%)を得た。質量分析(MALDI−TOF−MS法)により、目的物の質量と一致するm/z:687.23[M+H]を検出した。
[比較例1−1]
Figure 2013163649
よく乾燥させたナス型フラスコ(100mL)に化合物CP(24.9mg,0.040mmol)及び無水トルエン(25mL)を入れ、反応容器内の気体をアルゴンで置換した。反応容器にさらにn−ブチルリチウムへキサン溶液(2.6M,125μL,0.160mmol)を加え、室温(20℃)で30分間反応させた後、塩化チタン(IV)トルエン溶液(125μL,0.325mmol)を加え、室温(20℃)で1時間反応させた。反応液を大気圧下、20℃で攪拌しつつ空気に1時間晒すことで(溶液の色が緑色から赤色に変わるまで)配位子交換を行った。反応終了後、溶液をエバポレーターで濃縮し、クロロホルム(50mL)で生成物を抽出した(×1)。さらに、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、及び飽和食塩水で各1回ずつ洗浄した(各50mL)。有機層を無水硫酸ナトリウム(5g)で乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をクロロホルム(15mL)に溶解させ、飽和酢酸亜鉛メタノール溶液(1mL)を加え、室温(20℃)で1時間反応させた。反応終了後、反応液を水及び飽和食塩水で各1回ずつ洗浄した(各50mL)。その後有機層を無水硫酸ナトリウム(5g)で乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物を質量分析(MALDI−TOF−MS法)により確認したところ、化合物TiOCPにn−ブチル基が1つ以上付加して得られる化合物と、化合物TiOCPとの混合物であることが分かった。
[比較例1−2]
Figure 2013163649
溶媒として無水トルエンの代わりに無水テトラヒドロフラン(25mL)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様に反応を行った。得られた粗生成物を質量分析(MALDI−TOF−MS法)により確認したところ、原料の化合物CPが回収され、チタンを含んでいる化合物TiOCPのような化合物は検出されなかった。
実施例1−1及び1−2によれば、室温下短時間の反応で、高い収率で環状化合物の金属錯体を得ることができた。一方で、比較例1−1のように塩基として求核性の高いn−ブチルリチウムを用いた場合には副生成物が生じてしまい、比較例1−2のように溶媒として配位能の高いテトラヒドロフランを用いた場合には目的の金属錯体は得られなかった。
以上から、本発明に係る製造方法によれば、室温下短時間の反応で、目的の環状化合物の金属錯体を得ることができることがわかる。
<実施例2:電界効果トランジスタ(FET)素子の作製>
膜厚300nmの酸化膜を形成したn型シリコン(Si)基板(Sbドープ,抵抗率0.02Ω・cm以下,住友金属工業社製)上に、フォトリソグラフィーで長さ(L)100μm、幅(W)500μmのギャップを有する金電極をソース電極及びドレイン電極として形成した。また、酸化膜の一部を削り取って、ゲート電極として利用した。
化合物TiOCPのクロロホルム溶液(10mmol/L)を調製し、これを上述の基板上に0.1mL滴下し、スピンコーター(ミカサ社製スピンコーターMS−A100)を用いて1000rpmで30秒間スピンコートすることにより、約30nmの良好な半導体膜を作製した。次に、化合物TiOCPの膜が形成された基板を、210℃のホットプレートで20分間加熱した。この加熱処理により、化合物TiOCPは化合物TiOBPに変換される。こうして、TiOBP膜が形成されたFET素子を作製した。同様の手順に従い、合計4個のFET素子を作製した。
Figure 2013163649
作製したFET素子のFET特性を、アジレントテクノロジー社製半導体パラメータアナライザー4155Cを用いて評価した。具体的には、ソース電極とドレイン電極との間に電圧Vd(−60〜0V)を印加し、ソース電極とゲート電極との間に電圧Vg(−60〜30V)を印加した際に、半導体膜を流れる電流Idを測定した。
閾値電圧をVt、絶縁膜の単位面積当たりの静電容量をCi、ソース電極とドレイン電極との間隔をL、幅をW、半導体膜のホール移動度をμとすると、これらの関係は下式のように表すことができる。
Vd<Vg−Vtのとき
Id=μCi(W/L)[(Vg−Vt)Vd−(Vd/2)]
Vd>Vg−Vtのとき
Id=(1/2)μCi(W/L)(Vg−Vt)
ホール移動度μは、電流電圧特性に従って上の2つの式のいずれかから求めることができる。本実施例においては、Vd>Vg−Vtのときについての式(飽和電流部分)に従って、Id1/2とVdとをプロットした際の傾きからホール移動度μを算出した。
上述のように作製された4個のFET素子はいずれもFET特性を示し、その飽和ホール移動度(飽和領域におけるホール移動度)は、平均2.0x10−5[cm/V・S]、最大2.3x10−5[cm/V・S]であった。

Claims (9)

  1. 一般式(I)で表される環状化合物と、アルカリ金属アミドと、金属元素Mの塩と、を炭化水素系溶媒中で反応させる工程を含むことを特徴とする、一般式(II)で表される環状化合物錯体の製造方法。
    Figure 2013163649
    Figure 2013163649
    (式(I)及び(II)において、R〜Rはそれぞれ独立に1価の有機基を表し、RとR、RとR、RとR、及びRとRの組のそれぞれは互いに結合して環を形成していてもよく、
    式(I)及び(II)において、X〜Xはそれぞれ独立に窒素原子又は1価の有機基が結合した炭素原子を表し、
    式(II)においてMは3価以上であり、酸素原子、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基からなる群から選択された1つ以上が結合している。)
  2. 前記金属元素Mの塩が金属ハロゲン化物であるであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記アルカリ金属アミドが一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
    Figure 2013163649
    (式(III)において、R及びR10はそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭化水素基又は置換基を有してもよいシリル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の製造方法により得られた一般式(II)で表される環状化合物錯体を含有することを特徴とする、半導体層形成用組成物。
  5. 請求項4に記載の半導体層形成用組成物を基材上に塗布する工程を含むことを特徴とする、電子デバイスの製造方法。
  6. 前記電子デバイスが光電変換素子であることを特徴とする、請求項5に記載の電子デバイスの製造方法。
  7. 請求項6に記載の製造方法により得られた光電変換素子を備えることを特徴とする太陽電池。
  8. 請求項7に記載の太陽電池を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
  9. 前記電子デバイスが電界効果トランジスタであることを特徴とする、請求項5に記載の電子デバイスの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110088925A (zh) * 2016-12-22 2019-08-02 默克专利有限公司 包含至少两种有机功能化合物的混合物

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