JP2013159751A - 接着剤、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置 - Google Patents

接着剤、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】熱リン酸等のエッチング液に対する耐性に優れ、簡単な工程で液滴吐出ヘッドを製造可能な接着剤、かかる接着剤を用いて製造された液滴吐出ヘッド、かかる接着剤を用いて製造する液滴吐出ヘッドの製造方法、およびかかる液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】インクジェット式記録ヘッド1は、流路形成基板(基板)10と、ノズルプレート20と、弾性膜50と、圧電素子(振動手段)300と、弾性膜50および圧電素子300を覆う封止板30とを有し、弾性膜50と封止板30との間が、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂を含有する接着剤を用いて形成された接着層を介して接合されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、接着剤、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置に関するものである。
例えば、インクジェットプリンタのような液滴吐出装置には、液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドが備えられている。このような液滴吐出ヘッドとしては、例えば、インクを液滴として吐出するノズルに連通し、インクを収容するインク室(キャビティー)と、このインク室の壁面を変形させる駆動用の圧電素子とを備えるものが知られている。
このような液滴吐出ヘッドにあっては、駆動用の圧電素子を伸縮させることにより、インク室の一部(弾性膜)を変位させる。これにより、インク室の容積を変化させて、ノズルからインク液滴が吐出される。
ところで、この液滴吐出ヘッドでは、インク室が形成された基板と、弾性膜と圧電素子とを覆う封止板とが、接着剤で構成される接着層を介して接合されている(例えば、特許文献1等参照。)。
このような基板と封止板との接合に、ビスフェノール系、ノボラック系のようなエポキシ系接着剤や、ウレタン系接着剤等の各種接着剤が用いられる。
ここで、基板にはインク室に連通する連通部が形成され、封止板にはその厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されており、これら連通部と貫通孔とで、各インク室の共通インク室となるリザーバーが形成される。
このようなリザーバーが形成された基板と封止板とは、シリコン単結晶基板からなるウエハーを2つ用意し、これらを重ね合わせるようにして、接着層を介して接合した状態で、ウエハーの表面に形成した、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜をマスクとして用いて、ウエハーをパターニングすることで形成される。
しかしながら、上記のような形成方法では、マスクとして用いた酸化シリコン膜や窒化シリコン膜を除去する必要があり、この際に、熱リン酸が用いられるため、この熱リン酸により接着層が膨潤し、これに起因して、基板と封止板との接合部においてクラックが生じるという問題があった。
さらに、接着層の膨潤を防止すること、すなわち、接着層への熱リン酸の接触を防止することを目的に、Au等で構成されるバリア膜を形成することも提案されているが、この場合、バリア膜を形成さらには除去するための時間と手間を要するという問題が生じる。
特開2011−235501号公報
本発明の目的は、熱リン酸等のエッチング液に対する耐性に優れ、簡単な工程で液滴吐出ヘッドを製造可能な接着剤、かかる接着剤を用いて製造された液滴吐出ヘッド、かかる接着剤を用いて製造する液滴吐出ヘッドの製造方法、およびかかる液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接着剤は、吐出液を貯留する圧力発生室が形成された基板と、
前記圧力発生室を覆うように前記基板の一方の面に設けられた弾性膜と、
歪みにより前記弾性膜を振動させる振動手段と、
前記弾性膜と前記振動手段とを覆うように前記基板の一方の面に設けられた封止板とを有する液滴吐出ヘッドの組み立てに用いられる接着剤であって、
前記弾性膜と前記封止板との間が、当該接着剤を用いて形成された接着層を介して接合されており、
当該接着剤は、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする。
これにより、熱リン酸等のエッチング液に対する耐性に優れ、簡単な工程で液滴吐出ヘッドを製造可能な接着剤とすることができる。
本発明の接着剤では、前記アダマンタンを含む熱硬化性樹脂は、官能基としてエポキシ基またはアミノ基を有するものであることが好ましい。
これらの官能基は、反応性が高いため、低温あるいは短時間であっても、接着剤を硬化できるという効果が得られる。
本発明の接着剤では、前記接着剤は、アダマンタンを含まない熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
これにより、接着剤を容易に液状のものとすることができるため、接着剤の取り扱い性が向上する。
本発明の接着剤では、前記接着剤は、硬化剤を含有することが好ましい。
これにより、接着剤の硬化反応を容易に制御することができるようになる。
本発明の接着剤では、熱リン酸に浸潤する前の前記接着層の重量をAとし、熱リン酸に浸潤した後の前記接着層の重量をBとしたとき、これらの重量比B/Aが、1.3以下であることが好ましい。
これにより、接着層の膨潤が効果的に抑制されていると言うことができる。
本発明の液滴吐出ヘッドは、吐出液を貯留する圧力発生室が形成された基板と、
前記圧力発生室を覆うように前記基板の一方の面に設けられ、前記吐出液を液滴として吐出するノズル孔を備えるノズルプレートと、
前記圧力発生室を覆うように前記基板の他方の面に設けられた弾性膜と、
歪みにより前記弾性膜を振動させる振動手段と、
前記弾性膜と前記振動手段とを覆うように前記基板の他方の面に設けられた封止板とを有する液滴吐出ヘッドであって、
前記弾性膜と前記封止板との間が、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂を含有する接着剤を用いて形成された接着層を介して接合されていることを特徴とする。
これにより、簡単な工程で形成し得る、熱リン酸等のエッチング液に対する耐性に優れた液滴吐出ヘッドとすることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記接着層の平均厚さは、1μm以上、100μm以下であることが好ましい。
これにより、弾性膜と封止板とを確実に接合することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、本発明の接着剤を用いて前記液滴吐出ヘッドを製造する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
前記弾性膜と前記封止板との間に、前記接着剤を供給した後、加熱することにより前記接着層を形成することを特徴とする。
これにより、弾性膜と封止板とが硬化状態の接着層により接合される。
本発明の液滴吐出装置は、請求項6または7に記載の液滴吐出ヘッド、または請求項8に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法により製造された液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い液滴吐出装置を得ることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドをインクジェット式記録ヘッドに適用した実施形態を示す分解斜視図である。 図1に示すインクジェット式記録ヘッドの平面図および縦断面図である。 インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 図1に示すインクジェット式記録ヘッドを搭載するインクジェット式記録装置の実施形態を示す斜視図である。 実施例および比較例の接着層をそれぞれ備える接着層形成フィルムの各処理後の重量比を示すグラフである。
以下、本発明の接着剤、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<インクジェット式記録ヘッド>
まず、本発明の接着剤を説明するのに先立って、本発明の接着剤が適用された液滴吐出ヘッド(本発明の液滴吐出ヘッド)について説明する。
なお、以下では、本発明の液滴吐出ヘッドを、インクジェット式記録ヘッドに適用した場合を一例に説明する。
図1は、本発明の液滴吐出ヘッドをインクジェット式記録ヘッドに適用した実施形態を示す分解斜視図、図2は、図1に示すインクジェット式記録ヘッドの平面図および縦断面図である。
図1および図2に示すように、インクジェット式記録ヘッド1(以下、「ヘッド1」と省略して記載することもある。)は、吐出液を貯留する圧力発生室12が形成された流路形成基板(基板)10と、圧力発生室12を覆うように流路形成基板10の一方の面に設けられ、インクを液滴として吐出するノズル孔21を備えるノズルプレート20と、圧力発生室12を覆うように流路形成基板10の他方の面に設けられた弾性膜50と、歪みにより弾性膜50を振動させる圧電素子(振動手段)300と、弾性膜50と圧電素子300とを覆うように流路形成基板10の他方の面に設けられた封止板30とを有する。
本実施形態では、流路形成基板(基板)10の一方面には弾性膜50が形成されている。流路形成基板10は、例えば、シリコン単結晶基板からなる。流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。
また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14および連通路15を介して連通されている。
なお、連通部13は、後述する封止板30のリザーバー部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100の一部を構成する。
インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。
また、流路形成基板10の開口面(一方の面)側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル孔21が穿設されたノズルプレート20が固着されている。
なお、ノズルプレート20の固着には、例えば、接着剤や熱溶着フィルム等が用いられる。
また、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等で構成される。
さらに、このような流路形成基板10の開口面とは反対(他方の面)側には、上述したように弾性膜50が形成されている。
弾性膜50としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等が挙げられる。
この弾性膜50上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成され、これにより、圧電素子300が構成される。
なお、圧電体層70の厚さは、10μm以下、好ましくは0.3〜1.5μm程度に設定される。
また、第1電極60は、本実施形態では、圧電体層70との界面が蒸着法により形成された蒸着膜からなる。
さらに、第1電極60と弾性膜50との間には、密着層61が形成されている。
密着層61としては、第1電極60と弾性膜50との密着力を向上させるものであれば、特に限定されず、例えば、厚さが10〜50nmのチタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)およびタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられ、本実施形態ではチタニア(TiO)である。このように第1電極60と弾性膜50との間に密着層61を設けることによって、弾性膜50と第1電極60との密着力を高めることができる。
ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70および第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極および圧電体層70を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
また、第1電極60上に形成される圧電体層70は、ペロブスカイト型構造のニオブ酸ナトリウムカリウム(例えば(Ka,Na)NbO、以下、「KNN」と称す)を有する複合酸化物であり、固溶体である。本実施形態では、このように鉛を有さない圧電セラミックスを有している。
この複合酸化物は、組成比が例えば、(Ka,Na1−x)NbOで表される組成比(モル比)であることが好ましく、さらにこのxが0.3≦x≦0.5であることが好ましい。本実施形態では、x=0.5である(Ka0.5,Na0.5)NbOを用いている。
また、圧電体層70は厚さ0.5〜1.5μmの薄膜であり、本実施形態では後述するようにゾル−ゲル法により複数の圧電体前駆体膜を積層し加熱して形成されている。
また、本実施形態では、このKNNにさらにペロブスカイト型構造を有する鉄酸ビスマス(例えばBiFeO)(以下BFOとする)を添加してもよい。この場合、添加剤としてのBFOは、KNNに対して3〜5モル%含有されていることが好ましい。この範囲であれば、圧電特性が向上するからである。すなわち、本実施形態における圧電体層70は、主成分としてKNNを含み、さらにBFOを含有することで、鉛を含有せず、かつ、圧電特性が高いものである。
第1電極60は、第1電極層63と、第1電極層63上にすなわち圧電体層70との界面に蒸着法により形成され、電極としても機能する拡散抑制層62とで構成される。
このように第1電極60が圧電体層70との界面に拡散抑制層62を有することで、圧電体層70に含まれるBNTとBKTとに含まれるアルカリ金属、すなわちNaやKが加熱時に第1電極60中に拡散するのを抑制し、リークを抑制している。
すなわち、拡散抑制層62は、圧電体層70のアルカリ金属の拡散を抑制すると共に、第1電極60の一部を構成して電極としても機能するものである。
このような第1電極層63の厚さは、30〜80nm、好ましくは40〜80nmであり、かつ、拡散抑制層62の厚さが20〜150nm、好ましくは40〜150nmであることが挙げられる。また、第1電極60は少なくとも拡散抑制層62を有していればよく、拡散抑制層62のみからなるものであってもよい。
このような圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、弾性膜50上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、弾性膜50およびリード電極90上には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部(貫通孔)31を有する封止板30が接着層35を介して接合されている。
この接着層35は、本発明の接着剤を用いて形成し得るが、その詳細については、後に説明する。
このリザーバー部31は、本実施形態では、封止板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。
また、上記の構成に限らず、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバー部31のみをリザーバー100としてもよい。
さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と封止板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50)にリザーバー100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、封止板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。
圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような封止板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板で構成される。
また、封止板30には、封止板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
さらに、封止板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。
この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような封止板30上には、封止膜41および固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。
また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバー100からノズル孔21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、第1電極60および圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル孔21からインク滴が吐出する。
インクジェット式記録ヘッド1は、本実施形態の構成に限定されず、例えば、弾性膜50上に絶縁膜としての酸化イリジウム膜等が形成されていてもよい。
また、本実施形態では、第1電極層63と拡散抑制層62とを別々に形成したが、圧電体層70からのアルカリ金属の第1電極60への拡散を抑制するためには、少なくとも圧電体層70との界面に拡散抑制層62が形成されていればよく、例えば、第1電極60が拡散抑制層62から構成されていてもよい。
さらに、本実施形態では、流路形成基板(基板)10上に第1電極60、圧電体層70および第2電極80を順次積層した圧電素子300を示したが、特にこれに限定されず、例えば、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子であってもよい。
以上のようなインクジェット式記録ヘッド1は、例えば、次のようにして製造される。
<インクジェット式記録ヘッドの製造方法>
図3ないし図5は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図3ないし図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかるヘッド1の製造方法は、流路形成基板用ウエハー110の一方の面側に、圧電素子300を形成する工程と、流路形成基板用ウエハー110の一方の面側に、封止板30となる封止板用ウエハー130を、接着層35を介して接合する工程と、流路形成基板用ウエハー110の他方の面側に、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14および連通路15等を形成する工程と、流路形成基板用ウエハー110の他方の面側に、ノズル孔21が穿設されたノズルプレート20を接合する工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、流路形成基板用ウエハー110の一方の面側に、圧電素子300を形成する。
[1−1]まず、図3(a)に示すように、流路形成基板10が複数一体的に形成されるシリコンウェハーである流路形成基板用ウエハー110の表面に弾性膜50を構成する酸化膜51を形成する。
この酸化膜51の形成方法は特に限定されないが、本実施形態では、流路形成基板用ウエハー110を熱酸化し、その表面に弾性膜50となるシリコン酸化物で構成される酸化膜51を形成している。
[1−2]次に、図3(b)に示すように、酸化膜51上に密着層61を形成する。
密着層61の形成方法は特に限定されないが、スパッタリング法や、CVD法等に形成することができる。
[1−3]次に、図3(c)に示すように、密着層61上に、厚さが50〜500nmの第1電極60を形成し、その後、これら第1電極60および密着層61を所定形状にパターニングする。
なお、第1電極60は、本実施形態では、プラチナ(Pt)からなる第1電極層63と、拡散抑制層62とからなる。
第1電極層63の形成方法は、特に限定されず、DCスパッタリング法等のスパッタリング法やレーザービーム蒸着等の蒸着法等で形成できる。
また、拡散抑制層62の形成方法は、蒸着法である。すなわち、厚さ0.5〜1.5μmの薄膜の圧電体層70を形成する際に加熱を行うと、この複合酸化物中に存在するアルカリ金属、すなわちNaやKが第1電極60側へ拡散してしまい、これにより圧電素子の駆動電圧領域(25〜30V付近)においてリーク電流が発生しやすく、またAサイトに空孔が形成されてしまうことで圧電体層70の圧電特性が低下したりするのでこれを抑制する必要がある。このため、本実施形態では、これを抑制すべく第1電極60の表面に蒸着法により形成した拡散抑制層62を設けている。これにより、アルカリ金属の第1電極60への拡散を抑制している。
なお、蒸着法とは、本実施形態では、イオンビーム蒸着法やフラッシュ蒸着法のような蒸発物質を高温加熱により蒸発させて成膜を行う真空蒸着法を意味し、スパッタリング法等の物質をスパッタリングして成膜を行う物理蒸着法や熱CVD法等の化学気相反応により成膜を行う化学蒸着法は除かれる。
本実施形態では、蒸着法のうち、イオンビーム蒸着法を用いて形成した。このイオンビーム蒸着法によれば、第1電極60へのアルカリ金属の拡散をより抑制することができるからである。
本実施形態では、第1電極60は、第1電極層63をスパッタリング法により形成し、拡散抑制層62を蒸着法により形成して構成した。このようにスパッタリング法により第1電極層63を形成することで、密着層61と第1電極層63との密着性が向上すると共に、蒸着法により拡散抑制層62を形成することで、第1電極60中にアルカリ金属が拡散しにくく、1.0×10―1A/cm以上のリーク電流を抑制しうる。なお、第1電極層63を形成するスパッタリング法の条件は特に限定されるものではないが、例えば、成膜温度:300℃、成膜圧力:0.4Pa、DCパワー密度:1.2W/cmが挙げられる。
拡散抑制層62を形成する蒸着法の条件は、例えばイオンビーム蒸着法に基づくものであれば、成膜装置のヒーターにおける温度:室温(25℃程度)〜300℃、ビーム電流:350mA〜450mA、チャンバー内圧力(1.0×10―4〜1.10×10―5Pa)である。このような範囲としたのは、以下のような理由による。
すなわち、成膜装置のヒーターにおける温度が300℃を超えると、第1電極の膜密度が低下してしまうからである。また、ビーム電流が350mAよりも低いと膜形成ができず、また、450mAを越えると異物が付着しやすいからである。さらにまた、チャンバー内圧力がこの範囲にないと、膜質が劣化しやすいからである。
このような第1電極層63および拡散抑制層62からなる第1電極60は、プラチナ(Pt)、イリジウム(Ir)、または酸化イリジウムから選ばれた少なくとも1種からなる。例えば、スパッタリング法により形成されたプラチナからなる第1電極層63上に、蒸着法により形成されたプラチナからなる拡散抑制層62を形成してもよいし、また、スパッタリング法により形成されたプラチナからなる第1電極層63上に、蒸着法により形成されたイリジウムからなる拡散抑制層62を形成してもよい。
また、拡散抑制層62の膜厚が40nm以上であることが好ましい。膜厚が40nm以上であれば、十分に圧電素子の駆動電圧領域において1.0×10―1A/cm以上のリーク電流が発生することを抑制できるからである。
第1電極層63は、その形成方法は限定されず、例えば、スパッタリング法により形成されている。第1電極層63の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜80nm程度である。
上述したパターニングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
[1−4]次に、図4(a)に示すように、KNNを含有する複合酸化物である圧電体層70を形成する。
圧電体層70の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やスパッタリング法等が挙げられ、中でも、ゾル−ゲル法を用いるのが好ましい。これは、後述する本実施形態のゾルを用いてゾル−ゲル法で圧電体層70を形成することで、圧電体層70にクラックが発生することを抑制でき、かつ、コストを低減させることができるからである。
以下、具体的な方法について説明する。第1電極60が形成された流路形成基板10上にKNNを含むゾルを塗布し、圧電体前駆体膜とする(塗布工程)。
ここで、KNNを含むゾルには、さらにBFOが含有されていてもよい。BFOが含有されている場合には、その割合は、KNN100%に対して3〜5%(モル比)である。圧電体前駆体膜は、本実施形態では、1.0〜2.0μm、好ましくは1.5〜2.0μmである。
次いで、所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。例えば、本実施形態では、150〜180℃で2〜10分間保持することで乾燥させている。
次いで、乾燥した圧電体前駆体膜を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。
例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜を300〜450℃程度の温度に加熱して約2〜10分保持することで脱脂した。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。この塗布工程、乾燥工程および脱脂工程をこの順で複数回繰り返した後に、圧電体前駆体膜を赤外線加熱装置によって所定温度(750〜850℃程度)に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜を形成する(焼成工程)。
これらの塗布工程、乾燥工程、脱脂工程および焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回繰り返すことにより複数層の圧電体膜からなり、KNNを含む複合酸化物からなる圧電体層70を形成する。
また、第2電極80の形成前後に必要に応じて、600℃〜800℃の温度域でポストアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
[1−5]次に、図4(a)に示すように、圧電体層70上に亘って、第2電極80を形成する。その後、図4(b)に示すように、圧電体層70および第2電極80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。
圧電体層70および第2電極80のパターニングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
[1−6]次に、リード電極90を形成する。
具体的には、図4(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
[2]次に、図5(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の封止板30となる封止板用ウエハー130を、接着層35を介して接合する。
この接着層35による接合は、本発明の接着剤を用いて行われるが、以下、この本発明の接着剤について説明する。
本発明の接着剤は、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂を含有するものである。
すなわち、熱硬化性樹脂は、アダマンタンを含む主骨格と、加熱による重合反応に寄与する官能基とを有する化合物である。
ここで、例えば、アダマンタンを含まない熱硬化性樹脂を接着剤として用いて接着層を形成すると、官能基を介して連結することにより形成される熱硬化性樹脂を含むネットワークが疎なものとなる。
そのため、後工程[3−3]において、熱リン酸等の酸溶液を用いたウェットエッチングによりマスク膜52を除去する際に、接着層にも熱リン酸が接触することになるが、この熱リン酸がネットワーク中の疎な領域に浸潤することとなる。その結果、接着層が膨潤し、これに起因して、流路形成基板用ウエハー110と封止板用ウエハー130との間にクラックが発生すると言う問題が生じる。
これに対して、本発明では、熱硬化性樹脂として、アダマンタンを含むものが接着剤として用いられるため、かかる接着剤を用いて接着層35を形成すると、ネットワーク中で疎となっていた領域に、かご型構造を形成するアダマンタンが入り込んだ状態で、熱硬化性樹脂を含むネットワークが形成されるため、このネットワークが密なものとなる。
これにより、接着層35に、熱リン酸が接触したとしても、ネットワーク中に熱リン酸が浸潤してしまうのを的確に抑制または防止することができる。その結果、接着層35の膨潤に起因する、流路形成基板用ウエハー110と封止板用ウエハー130との間でのクラックの発生が確実に防止される。
さらに、本実施形態では、ヘッド1において、接着層35は、図2(b)に示すように、リザーバー100を構成するリザーバー部31と連通部13との間に介在するため、インクと接触することとなるが、このインクとの接触に起因する接着層35の膨潤をも的確に防止または抑制することができる。
なお、熱リン酸が浸潤することに起因する接着層35の膨潤の程度は、熱リン酸が浸潤する前後の接着層35の重量比で表すことができ、熱リン酸が浸潤する前の接着層35の重量をAとし、熱リン酸が浸潤した後の接着層35の重量をBとしたとき、これらの重量比B/Aが、1.3以下であるのが好ましく、1.2以下であるのがより好ましい。かかる関係を満足することで、接着層35の膨潤が効果的に抑制されていると言うことができる。
アダマンタンを含む熱硬化性樹脂としては、アダマンタンをその主骨格に含むものでああれば如何なる構成のものであってもよく、例えば、アダマンタンを含むエポキシ樹脂、アダマンタンを含むアクリル系化合物、アダマンタンを含むポリイミド樹脂およびアダマンタンを含むシアネート樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、アダマンタンを含むエポキシ樹脂またはアダマンタンを含むポリイミド樹脂であるのが好ましい。
すなわち、加熱による重合反応に寄与する官能基として、エポキシ基またはアミノ基を有するものであるのが好ましい。これらの官能基は、反応性が高いため、低温あるいは短時間であっても、接着剤を硬化できるという効果が得られる。
アダマンタンを含むエポキシ樹脂としては、例えば、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2,4−(グリシジルオキシ)フェニル)アダマンタン、1−(2,4−ビス(グリシジルオキシ)フェニル)アダマンタン、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
また、アダマンタンを含むポリイミド樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるものが挙げられる。
Figure 2013159751
さらに、接着剤には、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂の他に、アダマンタンを含まない熱硬化性樹脂を含有するのが好ましい。これにより、接着剤を容易に液状のものとすることができるため、接着剤の取り扱い性が向上する。
このようなアダマンタンを含まない熱硬化性樹脂としては、例えば、アダマンタンを含まないエポキシ樹脂、アダマンタンを含まないアクリル系化合物、アダマンタンを含まないポリイミド樹脂およびアダマンタンを含まないシアネート樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、接着剤中に含まれる、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂(A)と、アダマンタンを含まないエポキシ樹脂(B)との配合量は、それぞれ、以下のようになっているのが好ましい。
すなわち、接着剤の全体量のうち、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂(A)としては、50重量%以下であるのが好ましく、10〜50重量%程度であるのがより好ましい。
また、接着剤の全体量のうち、アダマンタンを含まないエポキシ樹脂(B)としては、20〜80重量%程度であるのが好ましく、20〜50重量%程度であるのがより好ましい。
接着剤における、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂(A)およびアダマンタンを含まないエポキシ樹脂(B)の配合量を前記範囲内とすることにより、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂(A)が含まれることにより得られる効果と、アダマンタンを含まないエポキシ樹脂(B)が含まれることにより得られる効果とをバランスよく、接着層35に発揮させることができる。
さらに、アダマンタンを含むエポキシ樹脂、またはアダマンタンを含まないエポキシ樹脂を接着剤が含有する場合、接着剤には、硬化剤が含まれているのが好ましい。これにより、接着剤の硬化反応を容易に制御することができるようになる。
硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラックのようなフェノール系化合物が挙げられる。
さらに、このような接着剤には、硬化剤の他に、硬化促進剤、無機充填剤、カップリング剤等が含まれていても良い。
硬化促進剤としては、例えば、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールのようなイミダゾール系化合物が挙げられる。
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような炭酸塩、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウムのようなケイ酸塩、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛のような酸化物等が挙げられる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等が挙げられる。
また、かかるアダマンタンを含む熱硬化性樹脂を含有する接着剤は、溶媒または分散媒中に、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂を溶解または分散させることにより液状または半固形状とされるが、この溶媒または分散媒としては、特に限定されず、例えば、アンモニア、水、過酸化水素等の無機溶媒や、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
このような本発明の接着剤を用いた、接着層35を形成することによる流路形成基板用ウエハー110と、封止板用ウエハー130との接合は、例えば、以下のようにして行われる。
すなわち、接着層35で接合すべき部材である流路形成基板用ウエハー110および封止板用ウエハー130のうちの少なくとも一方に接着剤を供給した後、乾燥させることで接着層35を形成する。
そして、接着層35を介して流路形成基板用ウエハー110と封止板用ウエハー130とを接触させた状態で、接着層35を加熱して、接着層35中に含まれるアダマンタンを含有する熱硬化性樹脂を硬化させる。これにより、流路形成基板用ウエハー110と封止板用ウエハー130とが硬化状態の接着層35により接合される。
ここで、接着層35を溶融させる際の加熱の温度は、50℃以上であるのが好ましく、100℃以上、140℃以下程度であるのがより好ましい。これにより、流路形成基板用ウエハー110および封止板用ウエハー130や、形成される接着層35自体を変質・劣化させることなく、接着層35中に含まれるアダマンタンを含有する熱硬化性樹脂を硬化させることができる。
また、かかる温度範囲内で加熱することにすれば、接着層35を加熱する時間を、接着剤に含まれる構成材料の種類によっても若干異なるが、好ましくは20分以上、24時間以下に設定することができ、より好ましくは1時間以上、5時間以下に設定することができるため、接着層35の形成のための時間、ひいてはヘッド1の製造のための時間の短縮化を図ることができる。
なお、形成された接着層35は、その平均厚さが1μm以上、100μm以下程度であるのが好ましく、5μm以上、80μm以下程度であるのがより好ましい。膜厚をかかる範囲内に設定することで、流路形成基板用ウエハー110と封止板用ウエハー130とを確実に接合することができる。
[3]次に、流路形成基板用ウエハー110の他方の面側に、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14および連通路15等を形成する
[3−1]まず、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウエハー110を所定の厚みに薄くする。
[3−2]次に、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110にマスク膜52を形成し、所定形状にパターニングする。
なお、マスク膜52は、流路形成基板用ウエハー110に形成すべき、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14および連通路15の形状に対応して設けられ、本実施形態では、シリコン窒化物で構成される窒化膜で構成される。
[3−3]次に、図5(d)に示すように、流路形成基板用ウエハー110を、マスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)により、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14および連通路15等を形成する。
その後、熱リン酸等の酸溶液を用いたウェットエッチングにより、マスク膜52を除去する。
この際、本発明では、接着層35が本発明の接着剤を用いて形成されているため、たとえ熱リン酸等の酸溶液が接着層35に接触したとしても、このことに起因する、接着層35の膨潤を的確に抑制または防止することができるため、流路形成基板用ウエハー110と封止板用ウエハー130との間でクラックの発生を確実に防止することができる。
また、流路形成基板用ウエハー110と封止板用ウエハー130との間でクラックの発生を防止するために、酸化膜51と接着層35との間に、酸溶液が接着層35に接触するのを防止するバリア膜(例えば、Au膜)を形成することを、従来提案されているが、本発明によれば、かかるバリア膜の形成を省略することができるため、バリア膜を形成および除去するために時間と手間を要するという問題点も解消される。
[4]次に、流路形成基板用ウエハー110の他方の面側に、ノズル孔21が穿設されたノズルプレート20を接合する。
なお、本工程[4]に先立って、流路形成基板用ウエハー110および封止板用ウエハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去しておく。
その後、封止板用ウエハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウエハー110等を図1に示すような1つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する。
これにより、図1に示すような本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1が製造される。
<インクジェット式記録装置>
上述したようなインクジェット式記録ヘッド1は、インクジェット式記録装置(本発明の液滴吐出装置)200に搭載される。
図6は、図1に示すインクジェット式記録ヘッドを搭載するインクジェット式記録装置の実施形態を示す斜視図である。
図6に示すインクジェット式記録装置200において、インクジェット式記録ヘッド1を有する記録ヘッドユニット1Aおよび1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2Aおよび2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1Aおよび1Bは、例えば、それぞれ、ブラックインク組成物およびカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。
一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
以上、接着剤、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液滴吐出ヘッドを製造する方法では、前記実施形態の構成に限定されず、工程の順序が前後してもよい。また、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよく、不要な工程を削除してもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.接着剤の調製
(実施例)
エポキシ接着剤(ナガセケミテックス社製、本剤「XNR3101」、硬化剤「XNH3101」)と、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタンとを用意し、これらが重量比で1:1:1となるように秤量したものを混合して混合物とし、その後、この混合物の含有量が30重量%となるようにテトラヒドロフラン中に溶解することで実施例の接着剤を調製した。
(比較例)
エポキシ接着剤(ナガセケミテックス社製、本剤「XNR3101」、硬化剤「XNH3101」)を用意し、これらが重量比で1:1となるように秤量したものを混合して混合物とし、その後、この混合物の含有量が20重量%となるようにテトラヒドロフラン中に溶解することで比較例の接着剤を調製した。
2.評価用部材の製造
2−1.接着層形成フィルムの製造
ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)フィルムを用意し、ETFEフィルム上に、実施例および比較例の接着剤をそれぞれ塗布した後、加熱することで接着層が形成された接着層形成フィルムを得た。
なお、接着層の形成は、真空乾燥した接着剤を、バーコーターを用いて、ETFEフィルム上に展開した後、140℃×5時間の条件で加熱することにより硬化させることにより行なった。
2−2.耐インク性測定用タブレットの製造
実施例および比較例の接着剤を真空乾燥したものを、それぞれ1g秤量し、これらを140℃×5時間の条件で加熱することにより、タブレット状(マーブルチョコレート状)をなす硬化物を形成し、これらを耐インク性測定用タブレットとして用いることとした。
3.評価
3−1.接着層形成フィルム(耐熱リン酸試験)の評価
まず、実施例および比較例の接着剤を用いて製造された接着層形成フィルムについて、それぞれ、接着層の初期の重量を測定した。
なお、これは、接着層形成フィルムに用いたETFEフィルムの重量を予め測定しておき、製造された接着層形成フィルムから差し引くことで求めることができる。
そして、これら接着層形成フィルムを、熱リン酸溶液に、70℃の条件で5時間浸漬し、その後、常温純水で30分間リンス(洗浄)した。
次いで、接着層形成フィルムを取り出し、水分を拭き取った後に、前記と同様にして、接着層の重量を測定し、これを浸漬直後の接着層の重量とした。
次いで、接着層形成フィルムを常温で30分間乾燥した後に、前記と同様にして、接着層の重量を測定し、これを常温乾燥後の接着層の重量とした。
さらに、接着層形成フィルムを80℃の条件で恒温槽を用いて30分間乾燥した後に、前記と同様にして、接着層の重量を測定し、これを80℃乾燥後の接着層の重量とした。
3−2.耐インク性測定用タブレット(耐インク試験)の評価
まず、実施例および比較例の接着剤を用いて製造された耐インク性測定用タブレットについて、それぞれ、タブレットの硬化後の重量を測定した。
次いで、これら耐インク性測定用タブレットを、インクジェットプリンタ用インク(エプソン社製、「1CBK47」)に、40℃の条件で30日間浸漬し、その後、オーブンを用いて80℃×1時間の条件で乾燥した後に、タブレットの浸漬後の重量をそれぞれ測定した。
これらの結果を、表1および図7に示す。
なお、耐インク試験の結果については、図での記載を省略することとする。
Figure 2013159751
表1および図7から明らかなように、実施例の接着剤を用いて形成された接着層は、耐熱リン酸正および耐インク性の双方に優れており、比較例の接着剤を用いて形成された接着層と比較して、熱リン酸への浸漬およびインクへの浸漬による膨潤に起因する、重量増加が効果的に抑制されている結果となった。
1……インクジェット式記録ヘッド 200……インクジェット式記録装置 1A、1B……記録ヘッドユニット 2A、2B……カートリッジ 3……キャリッジ 4……装置本体 5……キャリッジ軸 6……駆動モータ 7……タイミングベルト 8……プラテン 10……流路形成基板 12……圧力発生室 13……連通部 14……インク供給路 15……連通路 20……ノズルプレート 21……ノズル孔 30……封止板 31……リザーバー部 32……圧電素子保持部 33……貫通孔 35……接着層 40……コンプライアンス基板 41……封止膜 42……固定板 43……開口部 50……弾性膜 51……酸化膜 52……マスク膜 60……第1電極 61……密着層 62……拡散抑制層 63……第1電極層 70……圧電体層 80……第2電極 90……リード電極 100……リザーバー 110……流路形成基板用ウエハー 120……駆動回路 121……接続配線 130……封止板用ウエハー 300……圧電素子 S……記録シート

Claims (9)

  1. 吐出液を貯留する圧力発生室が形成された基板と、
    前記圧力発生室を覆うように前記基板の一方の面に設けられた弾性膜と、
    歪みにより前記弾性膜を振動させる振動手段と、
    前記弾性膜と前記振動手段とを覆うように前記基板の一方の面に設けられた封止板とを有する液滴吐出ヘッドの組み立てに用いられる接着剤であって、
    前記弾性膜と前記封止板との間が、当該接着剤を用いて形成された接着層を介して接合されており、
    当該接着剤は、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする接着剤。
  2. 前記アダマンタンを含む熱硬化性樹脂は、官能基としてエポキシ基またはアミノ基を有するものである請求項1に記載の接着剤。
  3. 前記接着剤は、アダマンタンを含まない熱硬化性樹脂を含有する請求項1または2に記載の接着剤。
  4. 前記接着剤は、硬化剤を含有する請求項1ないし3のいずれかに記載の接着剤。
  5. 熱リン酸に浸潤する前の前記接着層の重量をAとし、熱リン酸に浸潤した後の前記接着層の重量をBとしたとき、これらの重量比B/Aが、1.3以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の接着剤。
  6. 吐出液を貯留する圧力発生室が形成された基板と、
    前記圧力発生室を覆うように前記基板の一方の面に設けられ、前記吐出液を液滴として吐出するノズル孔を備えるノズルプレートと、
    前記圧力発生室を覆うように前記基板の他方の面に設けられた弾性膜と、
    歪みにより前記弾性膜を振動させる振動手段と、
    前記弾性膜と前記振動手段とを覆うように前記基板の他方の面に設けられた封止板とを有する液滴吐出ヘッドであって、
    前記弾性膜と前記封止板との間が、アダマンタンを含む熱硬化性樹脂を含有する接着剤を用いて形成された接着層を介して接合されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. 前記接着層の平均厚さは、1μm以上、100μm以下である請求項6に記載の液滴吐出ヘッド。
  8. 請求項1ないし5のいずれかに記載の接着剤を用いて前記液滴吐出ヘッドを製造する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記弾性膜と前記封止板との間に、前記接着剤を供給した後、加熱することにより前記接着層を形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  9. 請求項6または7に記載の液滴吐出ヘッド、または請求項8に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法により製造された液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
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