JP2013159591A - 多動性抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
乳由来であり食品として幅広く利用可能な素材である、乳蛋白質加水分解物を有効成分とする多動性抑制剤を提供する。
【解決手段】
乳蛋白質加水分解物を有効成分として含有する多動性抑制剤であって、乳蛋白質加水分解物が乳清蛋白質加水分解物又はカゼイン加水分解物であること、及び注意欠陥多動性障害の予防又は治療に用いられることを好ましい態様としている。
本発明の多動性抑制剤は、メチルフェニデートとともに用いられることを好ましい態様としている。
【選択図】なし

Description

本発明は、注意欠陥多動性障害の予防又は治療に有用な乳蛋白質加水分解物を有効成分として含有する多動性抑制剤に関する。
注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)は、精神疾患の診断に広く用いられる「精神疾患の分類と診断の手引き」(非特許文献1)において、「通常、幼児期、小児期または青年期に初めて診断される障害」に分類されている。
注意欠陥多動性障害は、持続的な不注意、重篤な衝動的行動、及び多動性を示し、発達に相応とみられる社会機能、学業成績、課外活動での機能が損なわれるとされている(非特許文献2)。例えば、持続的な不注意とは、細心の注意を払えない、注意の持続が困難、仕事及び行動を順序だてるのが困難、及び外部からの刺激で容易に注意がそれる等の症状を含んでいる。また、衝動的行動とは、順番を待つのが困難、質問が終わる前に答える、しばしば会話の継続を妨害するか、邪魔をする等の症状を含んでいる。
さらに、多動性とは、じっと座っているのが困難、不適切な状況での過剰な運動、患者があたかもエンジンで動かされるように行動する等の症状を含んでいる。
注意欠陥多動性障害は学齢期小児の3〜7%に発症する疾患であり、病態としての多動そのものは年齢と共に落ち着く傾向がある。しかしながら、反抗挑戦性障害に発展する場合や成人になっても継続する場合があるので、早期に十分な治療をする必要がある。
従来、注意欠陥多動性障害の治療には、精神刺激薬に分類される医薬品であって、多動性、衝動性、注意の欠陥等の症状の治療効果を有するメチルフェニデートやアンフェタミンが使用されている。
「精神疾患の分類と診断の手引」、新訂版第7刷(DSM-IV-TR; Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition, text revision)、医学書院、2007年、第59−61頁 「カプラン 臨床精神医学ハンドブック」、第3版、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2007年、第351−353頁
試験動物の行動を基盤として情動や認知といった脳高次機能を評価する上では、試験動物の行動そのものを評価することが重要であり、代表的な行動の評価指標として、試験動物の自発的な運動量を測定する自発運動活性測定試験(Locomotor activity test)が知られている(辻稔ら、日薬理誌(Folia Pharmacol.Jpn), 2007, 130, p.97-104)。そして、自発運動活性の測定では、注意欠陥多動性障害の症状である多動性の抑制効果を評価するためにも用いられている。
例えば、遺伝子改変(DAT−KO)マウスは、新奇環境下において野生型マウスに比べ、明らかな多動を示したことが報告されている(Raul R. Gainetdinov, et al., Science, 1999, 283, p.397-401、Ichiro Sora, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1998, 95, p.7699-7704)。
また、DAT−KOマウスを2時間馴化させ、アンフェタミンを腹腔内投与し、装置の長軸方向と短軸方向に設置されたフォトセルでマウスの動きを検知する光束法により求められる運動量を評価したところ、顕著な影響は認められなかったことが報告されている(Bruno Giros, et al. Nature, 1996, 379, p.606-612)。
一方、DAT−KOマウスに対して、運動量の高い馴化開始30分後にアンフェタミンやメチルフェニデートを投与すると運動量が減少し、多動性に対する精神刺激薬の効果が認められたことが報告されている(Raul R. Gainetdinov, et al., Science, 1999, 283, p.397-401)。
また、pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide(PACAP)遺伝子欠損マウスが新奇環境下において多動であり、アンフェタミンがこの多動を抑制することから、前記の遺伝子欠損マウスが疾患モデル動物として提案されている(日薬理誌、2008, 131, p.26)。
また、脳卒中易発症性自然発症高血圧ラット(SHRSP/Ezo)が、不注意行動、多動性、衝動性等の注意欠陥多動性障害の主症状が認められることから、疾患モデル動物として提案されている(日薬理誌、2011, 137, p.2)。
非病態マウスとしては、一定期間隔離飼育されたマウス(隔離飼育マウス)が、潜在学習・注意力障害を発現し、その障害が持続することから、疾患モデル動物として提案されている(日薬理誌、2011, 137, p.3)。
上述の通り、注意欠陥多動性障害の主な症状である多動性の抑制効果を確認する方法として、新奇環境下での病態マウスの運動量を測定する方法が知られている。
そこで、本発明者は、非病態マウスであっても、新奇な場所に収容された直後に、不安感から落ち着きがなくなり、活発に動き回り、運動量が増加する傾向(移所運動量の増加)が確認されることに着目した。そして、このような非病態マウスの挙動を、注意欠陥多動性障害の病態マウスが多動性を発症した状態に非常に近いと位置づけ、当該非病態マウスにおける移所運動量の増加を多動性の状態と定義して、本発明の薬剤における効果を確認した。
すなわち、注意欠陥多動性障害の主な症状であり、試験動物の移所運動量の増加としても表される多動性に対して、本発明の有効成分である乳蛋白質加水分解物の投与による効果を検討することにより、本発明の多動性抑制剤を定義するに至った。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、乳由来であり食品として幅広く利用可能な素材であり、使用にあたり特段の制限を受け無い、乳蛋白質加水分解物を有効成分とする多動性抑制剤を提供することを目的としている。
前記課題を解決するための本件発明は、乳蛋白質加水分解物を有効成分として含有する多動性抑制剤であって、乳蛋白質加水分解物が乳清蛋白質加水分解物又はカゼイン加水分解物であること、及び注意欠陥多動性障害の予防又は治療に用いられることを好ましい態様としている。
本件発明の多動性抑制剤は、さらにメチルフェニデートとともに用いられることを好ましい態様としている。
本発明によれば、乳由来成分を有効成分とするものであるから、副作用の心配がほとんどなく、安全で簡便に使用できる多動性抑制剤を提供することができる。
本発明の多動性抑制剤は、移所運動に伴う多動状態を抑制できることから、注意欠陥多動性障害の予防又は治療に用いることができる。
また、本発明の多動性抑制剤は、メチルフェニデートとの併用により、高い多動性抑制効果を発揮することができる。
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
[多動性の測定方法]
本発明における試験動物による多動性状態のモデルは、以下の方法により作成した。
すなわち、試験動物を保定し、被験試料を経口的に投与(ゾンデ等を使用)し、投与した試験動物を移所運動量測定装置に収容し、収容直後から一定時間内の運動量(移所運動量)を計測することにより、多動性状態を確認することによって実施した。
ここで、試験動物は保定され、被験試料が試験動物に強制的に経口投与されることによってストレスを感じ、その後、新たな閉鎖的環境下に収容されることによって、落ち着きのない多動性の状態を呈することが予想される。これにより、試験動物は一時的に注意欠陥多動性障害の状態を示し、経口投与される被験試料の違いによって、多動性の変化を確認することが可能となると考えられる。
前記多動性の測定において使用される試験動物は、試験で使用される通常のマウスやラット等を使用することが可能であり、非病態の状態であることが好ましい。
前記試験動物は、生後一定期間経過後の離乳した個体であることが好ましく、マウスであれば3〜14週齢、ラットであれば4〜16週齢のものを使用することが好ましい。また、性別については雄雌の区別はなく、いずれの性別であっても可能である。
前記多動性の測定における試験動物に投与される被験試料においては、被験試料中に何らの有効成分も含まれていないような水、例えば注射用水を試験動物に投与した場合の移所運動量を、多動性状態を示す基準の移所運動量として定義する。
そして、当該基準の移所運動量に比して、投与する被験試料を変化させたとき、移所運動量が減少した場合は、当該被験試料は多動性を抑制する効果を有するものと定義し、基準の移所運動量に比して、移所運動量がさらに増加した場合は、当該被験試料は多動性を促進する効果を有するものとしてそれぞれ定義する。
前記多動性の測定において、被験試料を投与した試験動物を、新たな閉鎖的環境下に収容するためには、特定の装置内に試験動物を収容することが例示され、このような装置としては、移所運動量測定装置(例えば、小原医科産業社製)が挙げられる。なお、移所運動量測定装置における試験動物の収容スペースの大きさや構造は、試験動物の種類によって適宜設定することが可能である。
ここで、移所運動量測定装置等の閉鎖的環境下に収容された、試験動物における移所運動量の測定には、収容後に試験動物が当該環境に馴化するまでの時間における移所運動量を測定すれば良く、試験動物にマウスを使用した場合は、約25分間程度、移所運動量を測定することにより多動の状態を確認することができる。
なお、移所運動量は、試験動物の実際の移動距離を測定したものであってもよいが、試験動物の運動量に基づいて増減する数値を測定してもよい。
例えば、動物の移動に伴う装置の傾きによりセンサーが反応する装置を用い、傾きが生じた回数を移所運動量として測定することができる。
また、装置の長軸方向と短軸方向に設置されたフォトセルでマウスの動きを検知する光束法により運動量を測定することができる。
その他、装置内の一又は複数の地点にセンサーを設置し、試験動物が通過する度に一ずつ加算される数値を移所運動量として測定することができる。
[多動性の評価]
試験動物における多動性の評価は、試験動物に注射用水を投与し、投与した試験動物を移所運動量測定装置に収容し、25分間移所運動量を測定した時の数値を移所運動量の基準値とし、これに対して、試験動物に試験試料を投与して同様に測定した移所運動量が、先の基準値に対して10%以上減少した場合は、当該被験試料は多動性を抑制する効果を有するものと定義する。
なお、前記評価方法を確立するにあたっては、前述の多動性の測定方法において、多動性抑制剤として一般的に知られているメチルフェニデートを試験試料として試験した際に、移所運動量が10%以上低減することを確認することによって評価した(後述の参考例1)。
そして、このように確認された評価方法をもって、本発明の多動性抑制剤の効果についても評価した。
また、移所運動量は、試験動物の個体差、日時差等の測定環境の変化によって増減することが予測されることから、各試験ごとに、移所運動量の基準値を測定しておくことが好ましい。
[注意欠陥多動性障害の予防又は治療の用途]
本発明における多動性抑制剤は、注意欠陥多動性障害の症状の一つである多動性を抑制する効果を有すると規定することができることから、注意欠陥多動性障害の予防又は治療剤として使用することが可能である。
注意欠陥多動性障害の予防又は治療剤として本発明の多動性抑制剤を使用する場合、前記多動性の評価に記載されるとおり、移所運動量の基準値に比して10%以上移所運動量が減少する効果を有することが好ましく、20%以上移所運動量が減少する効果を有することがより好ましく、30%以上移所運動量が減少する効果を有することが特に好ましい。
このような移所運動量の減少効果を有する多動性抑制剤を注意欠陥多動性障害の予防や治療に用いることにより、注意欠陥多動性障害患者における、じっと座っているのが困難であったり、不適切な状況での過剰な運動活動であったり、患者があたかもエンジンで動かされるように行動したりする症状の予防や緩和、改善等を図ることが可能である。
[乳蛋白質加水分解物]
本発明の多動性抑制剤は、乳蛋白質加水分解物を有効成分としている。
乳蛋白質加水分解物とは、牛乳等に含まれる蛋白質を酵素等で加水分解したものであって、乳蛋白質は、カゼイン又は乳清蛋白質であることが好ましい。
[乳蛋白質加水分解物の製造方法]
次に、本発明の多動性抑制剤に用いられる乳蛋白質加水分解物の製造方法について説明する。
乳蛋白質加水分解物を製造する上で、原料として使用される乳蛋白質は、カゼイン又は乳清蛋白質を主成分とするものであることが好ましい。
例えば、カゼインとしては、市販の各種カゼイン、カゼイネート、例えば、乳酸カゼイン、硫酸カゼイン、塩酸カゼイン、ナトリウムカゼイネート、カリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネート、マグネシウムカゼイネート又はこれらの任意の混合物等が例示される。
また、乳清蛋白質としては、市販の各種乳清蛋白質(ホエイ蛋白質と表記するものも含まれる)、例えば、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、乳清蛋白質分離物(WPI)、又はこれらの任意の混合物等が例示される。
なお、上記のほか、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳から常法により精製して得られるカゼインや乳清蛋白質も、本発明で使用される乳蛋白質加水分解物の原料として使用することが可能である。
原料として使用される乳蛋白質は、以下の製造例に示すように、蛋白質濃度75〜84%のものが好ましく、これを好ましくは75〜85℃、15秒〜10分の殺菌条件で殺菌し、好ましくはpHを9.0〜9.5に調製し、好ましくはエンドプロテアーゼ、乳酸菌体などを適宜選択して分解し、その後、限外濾過、濃縮、乾燥して得られる。このように得られた乳蛋白質加水分解物は、数平均分子量200〜500ダルトンが好ましく、340〜400ダルトンであればさらに好ましい。また、分解率は20〜30%が好ましく、24〜25%であればさらに好ましい。
以下に、カゼインや乳清蛋白質を加水分解して得られた乳蛋白質加水分解物を製造する方法を製造例として示すが、本発明において使用される乳蛋白質加水分解物および乳蛋白質加水分解物の製造方法は、以下の製造例に記載されるものに限定されない。
[製造例1]カゼイン加水分解物の調製
カゼイン100g(品名:アシッドカゼイン、フォンテッラ社製、蛋白質濃度84%)を水酸化ナトリウム2.5gで溶解し、85℃、10分で殺菌した。
続いて、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.5に調整し、ビオプラーゼsp−20(長瀬生化学工業社製)100,800活性単位、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)168,000活性単位、PTN6.0S(ノボザイムズ社製)588,000活性単位で加水分解した。
酵素を90℃、10分間で加熱して失活させた後、限外濾過モジュールSLP1053(分画分子量10,000、旭化成製)を用いて限外濾過し、公知の方法により濃縮、噴霧乾燥してカゼイン加水分解物を得た。
得られたカゼイン加水分解物は、ゲル濾過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー法により数平均分子量を測定したところ、340ダルトンであることが確認された。
また、原料カゼイン溶液の全窒素量当たりのカゼイン加水分解物溶液のホルモル態窒素量の百分率(質量基準)として分解率を算出した結果、分解率は25%であった。
[製造例2]乳清蛋白質加水分解物の調製
乳清蛋白質濃縮物100g(品名WPC80、ワーナンブールチーズアンドバター社製、蛋白質濃度75%)を精製水で溶解し、75℃、15秒間で殺菌した。水酸化ナトリウムでpHを9.0に調整し、PTN6.0S(ノボザイムズ社製)946,000活性単位、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)161,000活性単位、乳酸菌体(森永乳業社製)0.07gで分解した。酵素を90℃、10分で加熱して失活させた後、限外濾過モジュールSLP1053(分画分子量10,000、旭化成製)を用いて限外濾過した後、公知の方法により濃縮、噴霧乾燥して、乳清蛋白質加水分解物を得た。
得られた乳清蛋白質加水分解物は、ゲル濾過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー法により数平均分子量を測定したところ、400ダルトンであることが確認された。
また、原料乳清蛋白質溶液の全窒素量当たりの乳清白質加水分解物溶液のホルモル態窒素量の百分率(質量基準)として分解率を算出した結果、分解率は24%であった。
[医薬品]
本発明の多動性抑制剤は、注意欠陥多動性障害の予防又は治療剤として、医薬品への利用が可能である。
本発明の多動性抑制剤を注意欠陥多動性障害の予防又は治療のための医薬として利用する場合、有効成分として乳蛋白質加水分解物を含有し、移所運動量を10%以上低減する効果を有するものとして、当該医薬品に乳蛋白質加水分解物を含有しているものである。
なお、前記乳蛋白質加水分解物を含有しているものであれば、公知の注意欠陥多動性障害の予防又は治療効果を有する成分を、本発明で規定する医薬品に含有させても良い。
例えば、従来使用されている注意欠陥多動性障害治療薬に混合して医薬品を製造してもよく、特にメチルフェニデートとともに混合して製剤化することが好ましい。
本発明の多動性抑制剤を含む医薬は、経口、非経口のいずれの投与経路であっても投与可能であり、非経口の投与経路としては経直腸(経腸)、吸入、経皮、静脈内等が挙げられるが、中でも経口投与が好ましい。
本発明の多動性抑制剤を含む医薬は、投与方法に応じて、適宜所定の剤形に製剤化することができる。具体的には、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等が挙げられる。また、非経口投与の場合、座剤、噴霧剤、軟膏剤、貼付剤、注射剤等が挙げられる。
さらに、製剤化は剤形に応じて、適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、有効成分のみを製剤化してもよく、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
製剤担体を配合する場合は、本発明の多動性抑制剤を含む医薬に含まれる有効成分の乳蛋白質加水分解物の配合量に特に制限はなく、剤形に合わせて適宜決定すればよい。
例えば、固形製剤の場合、多動性抑制剤に含まれる有効成分の含有量は1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%以上であることがより好ましく、20〜60質量%であることがさらに好ましい。該範囲内であれば製剤化が容易である。
同様に、液剤の場合、多動性抑制剤に含まれる有効成分の含有量は0.1〜60質量%であることが好ましく、0.5〜40質量%であることがより好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。
前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。
例えば、固形製剤の場合の担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体が挙げられる。
結合剤としては、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
崩壊剤としては、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
滑沢剤としては、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
安定剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
矯味矯臭剤としては、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
[投与量]
本発明の多動性抑制剤の投与量は、各種製剤形態、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件等に応じて適宜設定することが可能である。具体的には、多動性抑制剤に含まれる有効成分としての乳蛋白質加水分解物の量が、0.1〜1200mg/kg/日、好ましくは10〜500mg/kg/日の範囲であることが好ましく、これらの投与量にて、1日1回又は複数回に分けて投与することができる。
乳蛋白質加水分解物は、カゼイン加水分解物又は乳清蛋白質加水分解物を使用することができ、これらの混合物を使用してもよい。
[飲食品]
本発明の多動性抑制剤は、注意欠陥多動性障害の予防又は治療剤として、飲食品への利用が可能である。
本発明の多動性抑制剤を飲食品へ利用する場合、公知の飲食品に添加して多動性抑制効果を有する飲食品を調製することが可能であり、飲食品の原料中に本発明の多動性抑制剤を混合して、多動性を抑制する効果を有する新たな飲食品を製造することもできる。
多動性抑制剤を飲食品に添加する際、添加量は添加する飲食品に応じて適宜調節でき、有効成分の乳蛋白質加水分解物の配合量が、飲食品当たりの固形分濃度として、0.1〜80質量%であることが好ましく、1〜60質量%であることがより好ましい。
本発明の多動性抑制剤は、既存の飲食品に添加して調製することができる。
飲食品に含まれる成分としては、食品衛生法等の食品規定で飲食品への使用が認められているものであれば、特に制限なく用いることができる。
例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆蛋白、トウモロコシ蛋白等の蛋白質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロースアラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等を含有させることができる。
なお、本発明の飲食品の形態は特に制限されず、乳蛋白質加水分解物と、飲食品として許容される担体とからなる可食性組成物の如何なる形態のものも含まれる。例えば、パン、チューインガム、ガムドロップ(グミ)、クッキー、チョコレート、菓子、シリアル類等の固形食品、ジャム、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー等のジャム状、クリーム状又はゲル状食品、緑茶、紅茶、ウーロン茶等の茶類、ジュース、コーヒー、ココア等の飲料等のあらゆる飲食品形態にすることが可能である。また、調味料、食品添加剤等に配合することもできる。
[保健の用途の表示]
本発明で定義される飲食品は、注意欠陥多動性障害の予防又は治療用との保健用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。
前記「表示」の行為(表示行為)には、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、上記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」の行為に該当する。
前記「表示」の中では、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等を例示できる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましく、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができる。特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示等を例示することができ、詳細にいえば、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示が、典型的な例として列挙することが可能である。
以下に実施例を記載して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
製造例1で得られたカゼイン加水分解物を300mgずつ日本薬局方1号ゼラチンカプセル(アリメント工業社製)に充填し、カプセルのキャップとボディーの接合部をゼラチンを用いてシールし、カゼイン加水分解物を有効成分として含有する、多動性抑制効果を有する注意欠陥多動性障害治療用カプセル剤1500個を製造した。
[実施例2]
製造例2で得られた乳清蛋白質加水分解物を300mgずつ日本薬局方1号ゼラチンカプセル(アリメント工業社製)に充填し、カプセルのキャップとボディーの接合部をゼラチンを用いてシールし、乳清蛋白質加水分解物を有効成分として含有する、多動性抑制効果を有する注意欠陥多動性障害治療用カプセル剤1500個を製造した。
[参考例1]
本試験は、本試験方法が、多動性抑制効果の評価方法として有効であることを確認するために行った。試料として、多動性抑制剤として使用されるメチルフェニデートを用いた。
1.試験動物
6週齢のddY系雄性マウス(日本エスエルシー)を使用した。
2.試験試料
メチルフェニデート:塩酸メチルフェニデート(シグマ社製)を注射用水に溶解して使用した。
3.試験方法
6週齢のddY系雄性マウスを各用量のメチルフェニデート投与群および注射用水投与群に群分けした。
メチルフェニデート投与群に、メチルフェニデート0.2〜1mg/kg経口投与(単回投与)し、そのまま移所運動量測定装置(小原医科産業)に収容した。
そして、ddY系雄性マウスを移所運動量測定装置に収容した直後から、25分間の移所運動量を測定した。なお、移所運動量は、装置内の3箇所にセンサーを設置し、動物の移動に伴う装置の傾きによりカウンターで1ずつ加算される数値(傾き回数)として測定した。
一方、注射用水投与群には、被験物質に代えて注射用水を10mL/kgの割合で経口投与(単回投与)して、同様の方法で移所運動量の基準値を測定した。
最後に、被験物質投与群の移所運動量の平均値(A)、及び移所運動量の基準値(B)から、多動性抑制率を以下の式により求めた。
多動性抑制率(%)=(B−A)/B×100(%)
4.考察
本試験の測定結果を表1に示す。
運動量は、用量依存的に減少し、いずれの用量においても10%以上の抑制率を示し、メチルフェニデートが多動性抑制効果を有することが確認された。
従って、本試験が多動性の抑制効果を確認する方法として有効であるとが明らかになった。
Figure 2013159591
[試験例1]
以下に示す試験例により、本発明の多動性抑制剤における移所運動量減少効果を確認した。
1.試験動物
6週齢のddY系雄性マウス(日本エスエルシー)を使用した。
2.試験試料
試験試料1:製造例1で調製したカゼイン加水分解物を注射用水に溶解して使用した。
試験試料2:製造例2で調製した乳清蛋白質加水分解物を注射用水に溶解して使用した。
3.試験方法
6週齢のddY系雄性マウスを試験試料投与群と注射用水投与群に群分けした。
試験試料投与群に、試験試料1又は試験試料2を100〜1000mg/kg経口投与(単回投与)し、そのまま移所運動量測定装置(小原医科産業)に収容した。
そして、ddY系雄性マウスを移所運動量測定装置に収容した直後から、25分間の移所運動量を測定した。なお、移所運動量は、装置内の3箇所にセンサーを設置し、試験動物の移動に伴う装置の傾きによりカウンターで1ずつ加算される数値(傾き回数)として測定した。
一方、注射用水投与群には、試験試料1〜2に代えて注射用水を10mL/kgの割合で経口投与(単回投与)して、同様の方法で移所運動量の基準値を測定した。
最後に、試験試料投与群の移所運動量の平均値(A)、及び移所運動量の基準値(B)から、多動性抑制率を以下の式により求めた。
多動性抑制率(%)=(B−A)/B×100(%)
4.考察
本試験の測定結果を表2、表3に示す。
ddY系雄性マウスに対して、試験試料1を200mg/kg投与したとき、多動性抑制率は13.9%であった(表2)。
また、試験試料2を100〜1000mg/kg投与したとき、多動性抑制率は29.1〜41.8%となり、200mg/kgを投与したときの多動性抑制率が顕著に高くなることが確認された(表3)。
すなわち、試験試料1及び2は、いずれも多動性抑制率が10%以上となり、多動性の抑制効果を有することが明らかになった。
Figure 2013159591
Figure 2013159591
[試験例2]
以下に示す試験例により、本発明の多動性抑制剤とメチルフェニデートの併用における移所運動量減少効果を確認した。
1.試験動物
6週齢のddY系雄性マウス(日本エスエルシー)を使用した。
2.試験試料
試験試料1:製造例1で調製したカゼイン加水分解物を注射用水に溶解して使用した。
メチルフェニデート:塩酸メチルフェニデート(シグマ社製)を注射用水に溶解して使用した。
被験物質:試験試料1とメチルフェニデートを注射用水に溶解して使用した。
3.試験方法
6週齢のddY系雄性マウスを試験試料のメチルフェニデートとの併用投与群と注射用水投与群に群分けした。
試験試料とメチルフェニデートとの併用投与群に、試験試料1を200mg/kgとメチルフェニデート0.2mg/kgとを経口投与(単回投与)し、そのまま移所運動量測定装置(小原医科産業)に収容した。
そして、ddY系雄性マウスを移所運動量測定装置に収容した直後から、25分間の移所運動量を測定した。なお、移所運動量は、装置内の3箇所にセンサーを設置し、動物の移動に伴う装置の傾きによりカウンターで1ずつ加算される数値(傾き回数)として測定した。
一方、注射用水投与群には、試験試料1とメチルフェニデートに代えて注射用水を10mL/kgの割合で経口投与(単回投与)して、同様の方法で移所運動量の基準値を測定した。
最後に、試験試料投与群の移所運動量の平均値(A)、及び移所運動量の基準値(B)から、多動性抑制率を以下の式により求めた。
多動性抑制率(%)=(B−A)/B×100(%)
4.考察
本試験の測定結果を表4に示す。
ddY系雄性マウスに対して、試験試料1の200mg/kgとメチルフェニデート0.2mg/kgを併用投与した場合、多動性抑制率は46.8%であった(表4)。
一方、試験試料1の200mg/kgを単独投与したときの多動性抑制率は、13.9%であり、メチルフェニデートの0.2mg/kgを単独投与したときの多動性抑制率は、11.7%であった。
すなわち、試験試料1は、メチルフェニデートとともに併用投与することにより、メチルフェニデートの単独投与(表1の0.2mg/kgの体重投与群。多動性抑制率:11.7%)に比して、顕著に多動性抑制率を高めることが確認された。
よって、従来の多動性抑制剤であるメチルフェニデートの投与量を低減しても、本発明の多動性抑制剤により十分な多動性抑制効果を得ることができるので、精神刺激薬で心配される副作用をより低く抑えた注意欠陥多動性障害の治療が可能であると考えられる。
Figure 2013159591
本発明の多動性抑制剤は、有効成分を乳蛋白質加水分解物とするものであって、副作用等の問題がなく、安全性も高いことから、注意欠陥多動性障害の予防又は治療のために、広く医薬品、飲食品等に適用することが可能である。

Claims (4)

  1. 乳蛋白質加水分解物を有効成分として含有する多動性抑制剤。
  2. 乳蛋白質加水分解物が乳清蛋白質加水分解物又はカゼイン加水分解物である請求項1に記載の多動性抑制剤。
  3. 注意欠陥多動性障害の予防又は治療に用いられる請求項1又は2に記載の多動性抑制剤。
  4. 多動性抑制剤がメチルフェニデートとともに用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多動性抑制剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2004536030A (ja) * 2000-12-06 2004-12-02 カンピナ メルクニー ベー.フェー. トリプトファンの豊富なペプチドの製造方法
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