以下、本明細書で開示する光伝送システムの好ましい一実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
図1は、本明細書に開示する光伝送システムの一実施形態を示す図である。
本実施形態の光伝送システム1は、光送信部10と、光受信部20と、光送信部10と光受信部20との間を接続する光伝送路40とを備えており、光送信部10と光受信部20との間で波長分割多重通信を行う。
光送信部10は、波長の異なる複数の光信号を合波して波長分割多重信号を生成し、生成した波長分割多重信号を、光伝送路40を介して光受信部20に送信する。光受信部20は、受信した波長分割多重信号を波長毎の光信号に分波して、分波した光信号を検出する。
以下に、光送信部10について、更に詳しく説明する。
光送信部10は、半導体の基板5と、基板5上に配置され、N個の入力ポートS1〜SNを有し、これらの入力ポート毎に入力ポートに対応した第1通過波長帯域内の波長を有する光を通過させ、通過した光を合波する光合波器11と、を有する。また、光送信部10は、基板5上に配置され、入力ポートそれぞれに光を出力するN個の光増幅素子L1〜LNを備える。更に、光送信部10は、光増幅素子L1〜LNから出力された光を共振させる共振部15を有する。光増幅素子は、共振部によってレーザ発振可能な光源である。
光送信部10は、レーザ発振したN個の光を合波し、合波された合波光を光伝送路40を介して光受信部20に送信する。光伝送路40としては、例えば、光ファイバを用いることができる。
光送信部10の光増幅素子L1〜LNそれぞれには、図示しない光増幅素子駆動部から電力が供給される。
光合波器11は、入力ポート毎に光合波器11を通過可能な光の波長選択性を有している。一の入力ポートに入力した光が光合波器11を通過可能な波長には所定の幅があり、この通過可能な光の波長の帯域が、一の入力ポートに対応した第1通過波長帯域である。
この第1通過波長帯域は、入力ポート毎に帯域幅が不等間隔であっても良いし、又は、入力ポート毎に帯域幅が等間隔であっても良い。
光送信部10は、波長分割多重通信を行うので、第1通過波長帯域は、入力ポート毎に帯域の波長が異なっている。ここで、入力ポート毎に帯域の波長が異なっていることには、隣接する第1通過波長帯域同士では一部の波長が重なることが含まれる。
そして、光合波器11は、N個の入力ポートS1〜SNに光を入力し、それぞれの入力ポートに対応した第1通過波長帯域に含まれる波長を有する光を合波し、合波した光を光導波路17に出力する。光導波路17も、基板5上に配置される。
光増幅素子L1〜LNは、対応する入力ポートの第1通過波長帯域に含まれる波長を有する光を発生する。レーザ発振可能な光増幅素子L1〜LNとしては、基板5上に配置する観点から、例えば、半導体発光素子を用いることが好ましい。
光送信部10の共振部15は、光導波路17上に配置され、光合波器11によって合波された合波光の一部を光合波器11側に向かって反射する第1反射部12と、光増幅素子L1〜LNそれぞれが発生した光を光合波器11側に向かって反射するN個の第2反射部13とを有する。第2反射部13は、光増幅素子L1〜LNそれぞれに配置される。光増幅素子L1〜LNそれぞれには、モニタ部を配置して、モニタ部が光増幅素子で生成される光を検出するようにしても良い。このように、共振部15は、ファブリペロー型共振器である。
図2は、第1反射部を説明する図である。
第1反射部12は、光増幅素子L1〜LNそれぞれの光が光合波器11によって合波されて出力され、光導波路17を伝搬する合波光の一部を、光合波器11側に向かって反射すると共に、合波光のその他の部分をそのまま通過させる。第1反射部12としては、例えば、光導波路17に設けられたギャップ又は回折格子又はバッティングコンタクトを用いることができる。
図2(A)に示す例は、第1反射部12として、光導波路に設けられたギャップを用いた場合である。基板5上に配置された光導波路17には、ギャップ12aが設けられている。
図2(B)に示す例は、第1反射部12として、光導波路に設けられた回折格子を用いた場合である。基板5上に配置された光導波路17には、回折格子12bが設けられている。
図2(C)に示す例は、第1反射部12として光導波路に設けられたバッティングコンタクトを用いた場合である。基板5上に配置された光導波路17には、バッティングコンタクト12cが設けられている。
第2反射部13は、光増幅素子L1〜LNが発生した光を光合波器11側に向かって反射する位置に配置される。光増幅素子L1〜LNとして半導体発光素子を用いる場合には、第2反射部13は、光増幅素子L1〜LNそれぞれに対して、光合波器11とは反対側の位置に配置される。また、光増幅素子L1〜LNとして半導体発光素子を用いる場合には、第2反射部13は、例えば、劈開面、又は劈開面上に形成された反射膜、又は回折格子を用いることができる。
光送信部10では、光増幅素子L1〜LNが発生した光それぞれが、波長選択性を有する光合波器11を介して、上述した第1反射部12と第2反射部13との間で反射を繰り返すことにより、光増幅素子L1〜LNにおいて誘導放出が生じ、N個の波長において連続光であるレーザ発振が生じる。レーザ発振の波長は、光が通過する第1通過波長帯域の波長に依存する。
図3は、光伝送システムの動作を説明する図である。
図3には、光合波器11のN個の第1通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルF1〜FNが示される。図3の横軸は、波長を示しており、送信される各チャネルの位置が横軸上に記されている。各チャネルにおけるレーザ光のプロファイルR1〜RNは、それぞれの発振波長λ1〜λNの位置でデルタ関数的に形成される。それぞれの発振波長λ1〜λNは、第1通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルF1〜FNのピークの位置H1〜HNによって決定され得る。
N個の異なる発振波長を有するレーザ光が、光合波器11及び光合波器11と第1反射部12との間の光導波路17の部分に存在する。しかし、それぞれの誘導放出が異なる光増幅素子内で生じるので、異なる波長で発振した光の相互の影響は少なく、光送信部10では同時に異なる波長でレーザ発振が可能である。このようなレーザ発振の詳細については、例えば、非特許文献2を参照されたい。
なお、光送信部10では、共振部15の光路長が長い場合、例えば10mm程度になる場合には、複数の縦モードが発生する可能性もある。このような場合には、これらの複数の縦モード全体が一つの波長のレーザ光として扱われる。
また、光送信部10は、光導波路17を伝搬するレーザ光それぞれを変調する変調部14を有する。図1に示す例では、変調部14は、N個のリング型光導波路14aを有している。N個のリング型光導波路14aは、光導波路17に対して光学的に結合可能に並んで配置される。それぞれのリング型光導波路14aの円周は、発振したレーザ光の波長それぞれと共振する長さに設定される。変調部14は、リング型光導波路14aそれぞれに送信すべきデータに対応して変調された電圧を印加することにより、多重化されたレーザ光のうち対応する波長を有するレーザ光を変調して、光信号を生成する。
このようにして、N個の異なる波長λ1〜λNを有するレーザ光は、変調部14によって変調されてN個の光信号となり、N個のチャネルCH1(λ1)〜CHN(λN)を形成する。光送信部10は、波長が異なるN個のチャネルCH1〜CHNの光信号を多重化し、多重化された光信号を光伝送路40を介して光受信部20に送信する。
ここで、図3に示す例は、第1通過波長帯域が、入力ポート毎に帯域幅が不等間隔である場合を示している。チャネルCH1のレーザ発振波長λ1とチャネルCH2のレーザ発振波長λ2との間隔D1は、チャネルCH2のレーザ発振波長λ2とチャネルCH3のレーザ発振波長λ3との間隔D2とは異なっている。また、チャネルCH1のレーザ発振波長λ1とチャネルCH2のレーザ発振波長λ2との間隔D1は、チャネルCHN−1のレーザ発振波長λN−1とチャネルCHNのレーザ発振波長λNとの間隔DN−1とは異なっている。
次に、光受信部20について、以下に更に詳しく説明する。
光受信部20は、半導体の基板6と、基板6上に配置され、N個の出力ポートQ1〜QNを有し、光送信部10から受信した光信号の合波光を、出力ポート毎に出力ポートに対応した第2通過波長帯域内の波長の光信号に分波し、分波した光信号を対応する出力ポートQ1〜QNから出力する光分波器21を有する。また、光受信部20は、出力ポートQ1〜QNから出力された光信号を検出するN個の光検出部P1〜PNを有する。更に、光受信部20は、第2通過波長帯域それぞれをシフトする帯域シフト部22を有する。また、光伝送システム1は、帯域シフト部22を制御する制御部30を備える。
光送信部10から光伝送路40を介して送信された多重化された光信号は、基板6上に配置された光導波路23に入力される。光導波路23に入力された光信号は、光分波器21に伝搬する。
光分波器21は、出力ポート毎に光分波器21を通過可能な光の波長選択性を有している。一の出力ポートから出力される光が光分波器21を通過可能な波長には所定の幅があり、この通過可能な光の波長の帯域が、一の出力ポートに対応した第2通過波長帯域である。
図4は、光分波器を説明する図である。
光伝送システム1の光分波器21は、アレイ導波路回折格子を用いて形成される。光分波器21は、光導波路23から光信号を入力する入力側のスラブ領域21aと、N個の出力ポートQ1〜QNと、出力ポートQ1〜QNに光を出力する出力側のスラブ領域21bと、2つのスラブ領域間を結ぶN本の光導波路A1〜ANとを有する。2つのスラブ領域21a、21b及びN個の出力ポートQ1〜QN及びN本の光導波路A1〜ANは、基板6上に配置される。
光導波路23から入力側のスラブ領域21aに導入された多重化された光信号は、N本の光導波路A1〜ANに均等に分割される。このN本の光導波路A1〜ANは、隣接する光導波路とは導波路長がΔLだけ異なっている。そして、光導波路A1〜ANそれぞれに均等に分割されて伝搬した多重化された信号光は、出力側のスラブ領域21bに伝搬する。この時、光導波路A1〜ANそれぞれの長さがΔLずつ異なるので、出力側のスラブ領域21bで回折が生じて干渉する結果、各出力ポートには波長に応じて特定のチャネルの信号光が出力される。このようにして、多重化された光信号が、N個の異なる波長を有する信号光に分波されて対応する出力ポートから光検出器に出力される。
図4に示す例の光分波器21では、入力したN個の異なる波長λ1〜λNを有する多重化された信号光が分波されて、N個のチャネルCH1〜CHNの信号光として出力ポートQ1〜QNそれぞれから出力される。
アレイ導波路回折格子により形成される光分波器21の第2通過波長帯域の中心波長λcは、図4中の式(1)で表される。ここでneqは光導波路A1〜ANの等価屈折率、ΔLは光導波路A1〜ANの隣接導波路間の導波路長の差、mは整数の回折次数である。
N個の光検出部P1〜PNそれぞれは、対応する出力ポートからの信号光を検出する。光検出部P1〜PNとしては、基板6上に配置する観点から、例えば、半導体受光素子を用いることが好ましい。また、光検出部P1〜PNそれぞれの後段には、図示しない電気多重化回路が配置されて、光信号の通信チャネルの選別、再配列及び復号化が行われ得る。
光伝送システム1では、光合波器11と光分波器21とは、対応する第1通過波長帯域及び第2通過波長帯域の帯域幅が同じである。即ち、光合波器11のチャネルCH1〜CHNそれぞれの第1通過波長帯域の帯域幅は、光分波器21の対応するチャネルCH1〜CHNの第2通過波長帯域の帯域幅と同じである。また、光合波器11と光分波器21とが対応する第1通過波長帯域及び第2通過波長帯域の帯域幅が同じであることには、光合波器11及び光分波器21の温度が同じ場合には、光合波器11と光分波器21とは、対応する第1通過波長帯域及び第2通過波長帯域の波長が同じであることが含まれる。
具体的には、光合波器11と光分波器21とは、同じ構造を有している。光合波器と光分波器とが同じ構造を有しているとは、例えば、光分波器21がアレイ導波路回折格子を用いて形成される場合には、光合波器11もアレイ導波路回折格子を用いて形成されることを意味する。また、光合波器11及び光分波器21が半導体プロセス技術を用いて形成される場合には、光合波器11及び光分波器21が、同じマスクパターンを用いて形成され、且つ、同じ製造ラインを用いて形成されることを意味する。従って、光合波器11及び光分波器21は、同じ構造を有しており、寸法の違いも、製造ラインの工程能力の範囲内に収まっている。
また、アレイ導波路回折格子が光合波器11において用いられる場合には、アレイ導波路回折格子における光の伝搬方向が光分波器21とは逆となり、異なる複数の波長を有する光を入力して、多重化された合波光が出力される。
図3には、光分波器21のN個の第2通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルG1〜GNが示される。プロファイルG1〜GNそれぞれは、光合波器11の対応するプロファイルF1〜FNと実質的に同じ形状を有している。また、第2通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルG1〜GNのピークの位置の間隔は、光合波器11の対応するプロファイルF1〜FNのピークの位置の間隔と実質的に等しい。ここで、プロファイルが実質的に同じ形状を有していること、及び、プロファイルのピークの位置の間隔が実質的に等しいとは、それらの違いが製造ラインの工程能力の範囲内に収まっていることを意味する。
アレイ導波路回折格子を用いて形成される分波器21の第2通過波長帯域の中心波長λcは、第2通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルG1〜GNのピークの位置の波長と一致し得る。同様に、アレイ導波路回折格子を用いて形成される合波器11の第1通過波長帯域の中心波長λcは、第1通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルF1〜FNのピークの位置の波長と一致し得る。
但し、光合波器11と光分波器21とは、置かれている場所の違い等に起因して、温度が異なっている場合がある。また、光送信部10又は光受信部20の温度は、光送信部10又は光受信部20の動作状況によっても変動する場合がある。
このように、光合波器11の温度が変動すると光の導波経路の屈折率が変化して、N個の第1通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルF1〜FNは、図3中の矢印に示すように変化する。光合波器11内の温度が均一であれば、N個の第1通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルF1〜FNは、間隔を維持したまま波長に対して全体がシフトする。その結果、各CHのレーザ発振波長の位置がシフトする。
同様に、光分波器21の温度が変動すると、N個の第2通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルG1〜GNも変化する。光分波器21内の温度が均一であれば、N個の第2通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルG1〜GNは、波長間隔を維持したまま波長に対して全体がシフトする。
そして、光合波器11の温度と光分波器21の温度とが異なる場合が生じ得る。この場合、光合波器11の第1通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルF1〜FNの波長に対する位置(図3の横軸の位置)と、光分波器21の第2通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルG1〜GNとの波長に対する位置とが同じではなくなる。
従って、光合波器と光分波器とが同じ構造を有していても、図3に示すように、光合波器11の第1通過波長帯域のプロファイルのピークの位置H1〜HNは、光分波器21の対応する第2通過波長帯域のプロファイルのピークの位置とは一致しない場合が生じ得る。
そして、光合波器11の第1通過波長帯域のプロファイルの位置と、光分波器21の対応する第2通過波長帯域のプロファイルの位置とのずれが大きい場合には、光送信部10から送信された光信号が、光受信部20において正しく分波して検出されないおそれが生じる。
そこで、光伝送システム1では、光受信部20が、帯域シフト部22を用いて光分波器21の第2通過波長帯域それぞれをシフトすることにより、光合波器11の第1通過波長帯域の波長と、光分波器21の対応する第2通過波長帯域とを一致させて、多重化された光信号を分波する。
次に、帯域シフト部22について、以下に更に詳しく説明する。
帯域シフト部22は、光分波器21の第2通過波長帯域それぞれを同じ量だけシフトすることが好ましい。
光伝送システム1の帯域シフト部22は、光分波器21内で分波される光の導波経路の屈折率を変化させて、第2通過波長帯域それぞれをシフトする。具体的には、帯域シフト部22は、光分波器21内で分波される光の導波経路を均一に加熱して、この導波経路の屈折率を変化させる。
図4に示すように、光分波器21の中央部には、N本の光導波路A1〜ANを覆うように帯域シフト部22が配置される。帯域シフト部22はヒータであり、帯域シフト部22を制御する制御部30によって、帯域シフト部22の発熱量が制御される。
N本の光導波路A1〜ANは、帯域シフト部22に覆われている部分B1〜BNが、隣接する光導波路とは導波路長がΔLだけ異なっている。一方、N本の光導波路A1〜ANは、帯域シフト部22に覆われていない部分の長さが等しくなっている。そして、帯域シフト部22の発熱により、光導波路A1〜ANの部分B1〜BNが均一に加熱される。
帯域シフト部22の発熱により、光導波路A1〜ANの部分B1〜BNの温度が上昇すると、図4の式(1)に示す部分B1〜BNの等価屈折率neqが同じ量だけ変化するので、アレイ導波路回折格子の第2通過波長帯域それぞれの中心波長λcが同じ量だけシフトする。そして、図3中の矢印に示すように、第2通過波長帯域のフィルタ特性を示すプロファイルG1〜GNの全体が、第2通過波長帯域間の間隔を維持したまま同一方向に同じ量だけシフトする。アレイ導波路回折格子の各通過波長帯域をシフトする技術の更なる説明としては、例えば、非特許文献3を参照されたい。
次に、帯域シフト部22を制御する制御部30について、以下に説明する。
制御部30は、光検出部P1〜PNを用いて、少なくとも1つの出力ポートの光信号の光強度を入力する。そして、制御部30は、少なくとも1つの第2通過波長帯域を通過する光信号の強度が極大を示すように、帯域シフト部22を制御する。
図5は、制御部の動作を説明する図である。
図5は、光検出部が検出する一の第2通過波長帯域を通過する光信号の受光強度と、一の第2通過波長帯域のシフト量との関係を示している。制御部30は、帯域シフト部22を用いて光分波器21の第2通過波長帯域それぞれをシフトし、そのシフト量と受光強度との関係を調べて、受光強度が極大を示すように、帯域シフト部22の発熱量を制御する。
光伝送システム1では、光検出部P1〜PNそれぞれは、対応する出力ポートからの光信号を検出して、光信号の光強度を電気信号に変換し、その電気信号を制御部30に出力する。
制御部30は、光検出部P1〜PNから、N個の出力ポートQ1〜QNの光信号の光強度を電気信号として入力する。そして、制御部30は、N個の第2通過波長帯域を通過する光信号の強度の平均値が極大を示すように、帯域シフト部22を制御する。
その結果、光伝送システム1で、光合波器11の第1通過波長帯域のプロファイルのピークの位置H1〜HNと、光分波器21の対応する第2通過波長帯域のプロファイルのピークの位置とを一致させることができる。
このように、光伝送システム1では、送信部10から送信される各光信号の波長が温度により変動しても、帯域シフト部22を用いて、光分波器21の各第2通過波長帯域をシフトして、送信される光信号の波長と同期させることができる。
上述したように、帯域シフト部22を用いて第2通過波長帯域それぞれをシフトして、光送信部10と光受信部20との間で安定したWDM通信を行う観点から、第1通過波長帯域とこれに対応する第2通過波長帯域とは、以下の関係を満たすことが好ましい。
分波器21の第2通過波長帯域をCS(nm)とし、この合波器11の対応する第1通過波長帯域との帯域の差をΔCS(nm)とした時に、ΔCSとCSとは、ΔCS/CS<0.06、特にΔCS/CS<0.025、更にはΔCS/CS<0.005の関係を満たすことが好ましい。
例えば、第2通過波長帯域が100GHzであるCS=0.8(nm)に規定した時、ΔCS/CS<0.005の関係を満たすには、ΔCS<0.8×0.005=0.004(nm)であることが求められる。この場合、100チャネルの第2通過波長帯域を並べた時でも、光合波器11の最短のチャネルの中心波長と、光分波器21の最長のチャネルの中心波長との間の差が、0.004(nm)×100=0.4(nm)以下となり、第2通過波長帯域の0.8(nm)の半分以下に収められる。
本明細書では、光合波器と前記光分波器とが対応する第1通過波長帯域及び第2通過波長帯域の帯域幅が同じであることには、第1通過波長帯域とこれに対応する第2通過波長帯域とが、上述した関係を満たすことも含まれる。
次に、アレイ導波路回折格子を用いて形成される光合波器11及び光分波器21がシリコン半導体技術を用いて形成される場合の光導波路の寸法精度と、第1通過波長帯域又は第2波長通過帯域の帯域間隔との関係について、以下に説明する。
図6は、光導波路幅と波長間隔との関係を示す図である。
図6は、光導波路としてシリコン細線光導波路を用いたアレイ導波路回折格子について、光導波路幅と、チャネルの波長間隔との関係を計算した結果が示されている。計算は、有限要素法の導波路モードソルバを用いて行った。
アレイ導波路回折格子の各チャネルの波長間隔Δf(=c/Δλ)は、図6中の式(2)を用いて近似的に表される。ここで、cは真空中の光速であり、Δλはチャネルの波長間隔であり、Dは光導波路の分散パラメータ(m/Hz)、fcは動作中心波長、ngは光導波路の群屈折率、nslabは自由伝搬領域であるスラブ領域における等価屈折率、ΔLは隣接する光導波路の導波路長差である。また、Raはスラブ領域のイメージングプレーンにおけるフォーカス長、daは各光導波路がイメージングプレーンに導入される際の間隔であり、drは、スラブ領域のローランド球の半径である。図6の計算では、ΔL=8.6um、M=14、Ra=183um、da=dr=1.5umとし、Δfを約200GHzに設計したものである。波長間隔は、光導波路幅が450〜550nmの範囲で計算された。また、光合波器11の第1通過波長帯域及び光分波器21の第2通過波長帯域は、帯域幅を等間隔とした。そして、式(2)を用いて得られたΔfから、Δλ(=Δf/c)を求めて、図6に示す結果を得た。
図6に示すように、波長間隔Δλは、光導波路幅が450〜550nmの範囲で変化しても、1.81〜1.83nmの範囲内に収まっており、ほぼ一定の値を示している。従って、製造ラインの変動によって光導波路幅が450〜550nmの範囲で変化しても、光合波器11の第1通過波長帯域及及び光分波器21の第2通過波長帯域の帯域幅は、ほとんど影響を受けないことが確認された。これは、光合波器11及び光分波器21を同一設計で製造することにより、各光導波路が受ける群速度分散の影響がほぼ同じになるためである。また、波長間隔Δλの変化が少ないことの理由として、以下の2つが挙げられる。一つ目の理由は、アレイ導波路回折格子の動作中心波長を決める等価屈折率と波長間隔を決める光導波路の群屈折率とでは同じ光導波路の寸法ズレに対する変化量が異なること。二つ目の理由は、波長間隔の絶対値が動作中心波長に比べて約1/1000と小さいので、屈折率変化により生じる波長変化の絶対量が小さいことである。
シリコン半導体の製造ラインの工程能力では、シリコン細線光導波路の寸法として、10nm程度の誤差が生じる場合がある。光伝送システム1では、光合波器11及び光分波器21を同じマスクパターンを用い且つ同じ製造ラインを用いて製造することにより、図6に示すように、光合波器11と光分波器21とは、対応する第1通過波長帯域及び第2通過波長帯域の帯域幅の特性をほぼ同じにすることが可能である。また、この時、光合波器11と光分波器21とは、温度が同じ場合には、対応する第1通過波長帯域及び第2通過波長帯域の波長が同じに形成される。
光合波器11の第1通過波長帯域及び光分波器21の第2通過波長帯域は、帯域幅を不等等間隔とした場合にも、上述したのと同じ理由により、光合波器11と光分波器21とは、対応する第1通過波長帯域及び第2通過波長帯域の波長及び帯域幅の特性をほぼ同じにすることが可能である。
上述した本実施形態の光伝送システム1によれば、光合波器11又は光分波器21の内の何れか一方又は両方の温度が変動しても、帯域シフト部22を用いて、光分波器21の各第2通過波長帯域をシフトさせて、送信される光信号の波長と同期させて、安定したWDM通信を行える。また、光伝送システム1は、レーザ光の波長制御機構又はレーザ光の波長をロックするロック機構を用いないので、システムの構成を簡略し光送信部の寸法小さくかつ消費電力を小さくできる。
また、光伝送システム1では、図6を用いて説明したように、シリコン半導体の製造技術を用いて、安定したWDM通信を行える光分波器及び光合波器を製造することが可能である。この点について、更に以下に説明する。
図7は、シリコン細線光導波路を用いたアレイ導波路回折格子の光導波路幅と中心波長との関係を示す図である。
アレイ導波路回折格子を用いて形成される光分波器21の第2通過波長帯域の中心波長λcは、図4に示す式(1)で表される。図7の計算は、有限要素法の導波路モードソルバを用いて行った。ここで、光導波路は、SiO2により形成される下クラッド層上にシリコンを用いて形成された。下クラッド層の厚さは3.0μmであり、光導波路の厚さは210nmであった。また、ΔLは8.6umであり、m=14とした。これらの条件は、図6の計算と同じである。
図7に示すように、光導波路幅が450〜550nmの範囲で変化すると、中心波長λcが1540〜1610nmの範囲で大きく変化する。従って、製造工程の変動によって光導波路幅が数10nm変化すると、アレイ導波路回折格子の中心波長は10nmのオーダで変動することが分かる。このため、シリコン細線光導波路を用いてアレイ導波路回折格子を製造する場合、製造ラインの工程能力の範囲内において、動作中心波長を設計された波長チャネルに合わせこむ事は困難であると考えられる。
また、シリコン細線光導波路は、その強い光閉じ込めによる構造分散のため、大きな群速度分散を持つ。これは、図6中の式(2)に示すように、群速度と関係する群屈折率ngが変化すると、波長間隔Δλが変化することによる。この理由により、シリコン細線光導波路を有するアレイ導波路回折格子を用いて、広い動作波長帯域に渡って均一なチャネル間隔を実現することは難しかった。このことの詳細な説明については、例えば、非特許文献1を参照されたい。
一方、本実施形態の光伝送システム1では、光合波器及び光分波器として、シリコン細線光導波路を用いたアレイ導波路回折格子を用いても、シリコン細線光導波路の寸法のバラつき又は群速度分散の影響を低減して、安定したWDM通信を行うことができる。
次に、上述した光伝送システムの変型例を以下に説明する。
図8は、光伝送システムの第1変型例を説明する図である。
本変型例の光伝送システムでは、光送信部10から光受信部21に向かって送信される情報を有する光信号の数を、光合波器11の第1通過波長帯域の数であるN個よりも少なくしている。また、光合波器11の第1通過波長帯域及び光分波器21の第2通過波長帯域は、帯域幅D1〜DN−1を等間隔としている。
図8に示す例では、光送信部10の1番目のチャネルCH1からN−1番目のチャネルCHN−1までのN−1個のチャネルを用いて、情報を有する光信号が光受信部21に向かって送信される。従って、情報を有する光信号の数が、光分波器21の第2通過波長帯域の数であるN個よりも1つ少ない。このように、本変型例では、送信される情報を有する光信号の数に対して、光分波器21の第2通過波長帯域の数に冗長性を持たせている。なお、冗長性を持たせる数は、2以上であっても良い。
光伝送システムの温度等の動作状況によっては、光合波器11の第1通過波長帯域のプロファイルのピークの位置H1〜HNが、光分波器21の対応する第2通過波長帯域のプロファイルのピークの位置に対して大きくシフトする場合がある。そして、一の第1通過波長帯域のプロファイルFK(Kは、1からNの間の整数)のピークの位置HKが、対応する第2通過波長帯域の隣の第2通過波長帯域のプロファイルGK+1内にシフトすることが生じ得る。
この場合、分波器21のK+1番目のチャネルCHK+1の第2通過波長帯域内にシフトした光信号は、この帯域に対応するK+1番目の光検出器PK+1によって検出される。具体的には、光送信部10の1番目のチャネルCH1から送信された光信号は、光受信器20の2番目のチャネルCH2で受信され、光送信部10のN−1番目のチャネルCHN−1から送信された光信号は、光受信器20のN番目のチャネルCHNで受信されることになる。
本変型例では、一の第2通過波長帯域を通過する光の強度が極大を示すシフト量を決定するために、帯域シフト部22によってシフトされる第2通過波長帯域のシフト量は、最大でも第2通過波長帯域の所定の波長の幅以内となる。従って、制御部30によって帯域シフト部22を制御するのに要する時間及び電力を低減することが可能となる。
また、光検出部P1〜PNそれぞれによって検出された光信号は、電気多重化回路によって光信号の通信チャネルの選別、再配列及び復号化が行われ得る。なお、光送信部10のN番目のチャネルCHNからは、光が送信されていても良いし、送信されていなくても良い。
本変形例では、このようにして、制御部30によって帯域シフト部22を制御するのに要する時間及び電力を低減することが可能となる。
なお、本変型例では、光送信部10の2番目のチャネルCH2からN番目のチャネルCHNまでのN−1個のチャネルを用いて、情報を有する光信号を光受信部20に向かって送信しても良い。この場合には、上述した例とは逆の方向にシフトした光信号を、光受信部20で受信することが可能となる。
図9は、光伝送システムの第2変型例を説明する図である。
本変型例では、光分波器21が、N個の出力ポートに加えて、N+1番目の追加の出力ポートを有する。光分波器21は、N+1個の出力ポート毎に出力ポートに対応したN+1個の第2通過波長帯域を有する。また、光合波器11の第1通過波長帯域及び光分波器21の第2通過波長帯域は、帯域幅D1〜DN−1を等間隔(図3参照)とする。
本変型例も、上述した第1変型例と同様に、送信される情報を有する光信号の数に対して、光分波器21の第2通過波長帯域の数に冗長性を有している。なお、光分波器21が余分に有する出力ポート及びこれに対応する第2通過波長帯域の数は、2以上であっても良い。本変形例よれば、上述した第1変形例と同様の効果が奏される。
図10は、光伝送システムの第3変型例を説明する図である。
本変型例では、光分波器21が周回性を有している。従って、光分波器21のチャネルCHNの隣には、チャネルCHN−1と共にCH1が隣接して配置される。また、光合波器11の第1通過波長帯域及び光分波器21の第2通過波長帯域は、帯域幅D1〜DN−1を等間隔(図3参照)とする。
従って、光合波器11の第1通過波長帯域のプロファイルのピークの位置H1〜Nが、光分波器21の対応する第2通過波長帯域のプロファイルのピークの位置に対して大きくシフトした場合には、シフト量に応じた光分波器21の第2通過波長帯域を通過して、対応する光検出器によって検出されることになる。例えば、光送信部10から送信される一のチャネルの光信号が、第2通過波長帯域の2つ分の波長がずれて光受信器20によって受信される場合を考える。この時、光送信部10の1番目のチャネルCH1から送信された光信号は、光受信器20の3番目のチャネルCH3で受信され、光送信部10のN番目のチャネルCHNから送信された光信号は、光受信器20の2番目のチャネルCH2で受信されることになる。同様に、波長がシフトする方向が逆であれば、光送信部10の1番目のチャネルCH1から送信された光信号は、光受信器20のN−1番目のチャネルCHN−1で受信され、光送信部10のN番目のチャネルCHNから送信された光信号は、光受信器20のN−2番目のチャネルCHN−2で受信されることになる。
この場合も、一の第2通過波長帯域を通過する光の強度が極大を示すシフト量を決定するために、帯域シフト部22によってシフトされる第2通過波長帯域のシフト量は、最大でも第2通過波長帯域の所定の波長の幅以内となる。従って、制御部30によって帯域シフト部22を制御するのに要する時間及び電力を低減することが可能となる。光検出部P1〜PNそれぞれによって検出された光信号は、電気多重化回路によって光信号の通信チャネルの選別、再配列及び復号化が行われ得る。
図11は、光伝送システムの第4変型例を説明する図である。
本変型例では、光合波器11及び光分波器21は、エシェル回折格子により形成される。エシェル回折格子は、スラブ状の光導波路により形成される回折領域24a及び回折領域24aの端部に形成された側壁回折格子24bを有する。多重化された光信号は、光導波路23を伝搬して回折領域24a内に導入される。回折領域24aに入力された多重化された光信号は、回折領域24aを回折しながら伝搬して、側壁回折格子24bによって反射する。光信号は、側壁回折格子24bで反射する時に分散を生じて、波長の分離が行われ、波長毎に対応する出力ポートQ1〜QNに出力される。
帯域シフト部22は、回折領域24aにおける光導波路23との接続箇所の近傍において、エシェル回折格子内で分波される入力した光の導波経路を覆うように配置される。帯域シフト部22は、光分波器21内で分波される光の導波経路を加熱して、この導波経路の屈折率を変化させる。
エシェル回折格子を用いて形成される光分波器21の第2通過波長帯域の中心波長のシフト量Δλは、図11中の式(3)で表される。ここでΔneqは帯域シフト部22により引き起こされる等価屈折率の変化量であり、Mは回折次数(設計で決まる整数)である。点P0は、光導波路23から導入された光が直進して反射される側壁回折格子24bの位置であり、点Pmは、点P0からm番目に離れた回折格子の位置である。l0、lmは、光導波路23が回折領域24aと接続する点PiからP0、Pmを結ぶ光経路が帯域シフト部22内を通る経路の部分の長さである。このような帯域シフト機能を有するエシェル回折格子の説明については、例えば、非特許文献4を参照されたい。
また、エシェル回折格子が光合波器11において用いられる場合には、エシェル回折格子における光の伝搬方向が光分波器21とは逆となり、異なる複数の波長を有する光を入力して、多重化された合波光が出力される。
図12は、光伝送システムの第5変型例を説明する図である。
本変型例では、光送信部10の共振部15は、N個の出力ポートT1〜TNを有し、光合波器11の合波光の一部を入力し、入力した合波光を、出力ポートT1〜TN毎に出力ポートT1〜TNに対応した第3通過波長帯域内の波長の光に分波し、分波した光を出力ポートT1〜TNから対応する光増幅素子L1〜LNに出力する第2の光分波器18を有する。更に、共振部15は、光合波器11から出力された合波光を入力し、入力した合波光の一部を第2の光分波器18に出力する光分器部19を有する。そして、光合波器11と第2の光分波器18とは、対応する第1通過波長帯域及び第3通過波長帯域の帯域幅が同じである。また、光合波器11と第2の光分波器18とが対応する第1通過波長帯域及び第3通過波長帯域の帯域幅が同じであることには、光合波器11及び第2の光分波器18の温度が同じ場合には、光合波器11と第2の光分波器18とは、対応する第1通過波長帯域及び第3通過波長帯域の波長が同じであることが含まれる。このように、共振部15は、リング型共振器である。
具体的には、光合波器11及び光分波器21と第2の光分波器18とは、同じ構造を有している。光合波器11及び光分波器21と第2の光分波器18とが同じ構造を有しているとは、光合波器11及び光分波器21がアレイ導波路回折格子を用いて形成される場合には、第2の光分波器18もアレイ導波路回折格子を用いて形成されることを意味する。同様に、光合波器11及び光分波器21がエシェル回折格子を用いて形成される場合には、第2の光分波器18もエシェル回折格子を用いて形成されることを意味する。また、光合波器11及び光分波器21及び第2の光分波器18が半導体プロセス技術を用いて形成される場合には、光合波器11及び光分波器21及び第2の光分波器18が、同じマスクパターンを用いて形成され、且つ、同じ製造ラインを用いて形成されることを意味する。従って、光合波器11及び光分波器21及び第2の光分波器18は、同じ構造を有しており、寸法の違いも、製造ラインの工程能力の範囲内に収まっている。
本変型例の光送信部10では、光増幅素子L1〜LNが発生した光それぞれが、光分器部18を介して、同じ波長選択性を有する光合波器11及び第2の光分波器18の間を周回することにより、光増幅素子L1〜LNにおいて誘導放出が生じ、N個の波長において連続光であるレーザ発振が生じる。発振したレーザ光の一部は、変調部14により変調された後、光伝送路40を介して光受信部20に送信される。
図13は、光伝送システムの第6変型例を説明する図である。
本変型例では、帯域シフト部22は、光分波器21内で分波される光の光導波経路に電流を供給して、光導波経路の屈折率を変化させる。
図13は、N個の光信号が伝搬する分波器21内の光経路の内の1つの部分を示している。
本変型例の帯域シフト部22は、基板5上に配置され、光信号が伝搬する光導波路層50と、基板5上に配置され、光導波路層50に接続する第1導電層51及び第2導電層52とを有する。また、帯域シフト部22は、第1導電層51上に配置される第1コンタクト54と、第2導電層52上に配置される第2コンタクト55とを有する。第1コンタクト54及び第2コンタクト55は、クラッド層53内に埋め込まれている。更に、帯域シフト部22は、第1コンタクト54上に配置される第1電極56と、第2コンタクト55上に配置される第2電極57とを有する。
制御部30は、第1電極56及び第2電極57に供給する電流を制御して、光導波路層50に注入する電流を変化させて、分波器21の第2通過波長帯域を通過する光の強度が極大を示すように、帯域シフト部22を制御する。
次に、上述した光伝送システム1の製造方法の好ましい一実施形態を、図を参照して以下に説明する。
図14は、図1に示す光伝送システムの製造方法の一実施形態を説明する図である。
まず、図14(A)に示すように、シリコン半導体の製造技術を用いて、アレイ導波路回折格子を有する合波器11と、第1反射部12と、光導波路17と、変調部14とが、基板5上に形成される。
また、シリコン半導体の製造技術を用いて、アレイ導波路回折格子を有する分波器21と、光導波路23と、光検出部P1〜PNとが、基板6上に形成される。光検出部P1〜PNは、例えば、CVD法を用いて基板6上に形成することができる。
基板5、6としては、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて形成することが好ましい。SOI基板を用いる場合には、光を伝搬する光導波路の部分をSOI基板の上層であるシリコン層を用いて形成し、光導波路の下に位置する下クラッド層を、SOI基板の中層であるSiO2層を用いて形成することができる。そして、基板5、6として、SOI基板の下層であるシリコン層を用いることができる。シリコンとSiO2とは、屈折率の差が大きいので、光導波路内に光を強く閉じ込めることが可能となる。
次に、図14(B)に示すように、光増幅素子L1〜LNが、基板5上に配置される。光増幅素子L1〜LNは、別に用意される。各光増幅素子L1〜LNには、第2反射部13が配置される。光増幅素子L1〜LNは、例えば、フリップチップボンディング技術を用いて、基板5上に配置され得る。または、エバネッセント結合型の光増幅素子L1〜LNを、ウエハ貼り合せ技術を利用して、基板5上に配置しても良い。
また、基板6上では、アレイ導波路回折格子の光導波路の長さが異なる領域に、ヒータを配置して、帯域シフト部22が形成される。帯域シフト部22としては、例えば、光導波路上にチタン等の導電層を配置することにより形成され得る。そして、導電層には、制御部から電流が供給される電極が形成され得る。
次に、図14(C)に示すように、基板5上の光導波路17と基板6上の光導波路23とを、光伝送路40を用いて接続する。また、別に用意された制御部30が、光検出部P1〜PN及び帯域シフト部22と接続されて、本明細書に開示する光伝送システムが得られる。
次に、他の実施形態の光伝送システムを、図を参照して、以下に説明する。
図15は、本明細書に開示する光伝送システムの他の実施形態を示す図である。
本実施形態の光伝送システム2は、第1光送受信部60及び第2光送受信部61を備える。第1光送受信部60は、半導体の基板5上に配置された光送信部10a及び光受信部20aを有する。第2光送受信部61は、半導体の基板6上に配置された光送信部10b及び光受信部20bを有する。
光送信部10aは、光伝送路41を介して、光信号を光受信部20bに送信する。光送信部10bは、光伝送路42を介して、光信号を光受信部20aに送信する。
光送信部10a及び光送信部10bは、上述した第1実施形態の光伝送システムの光送信部と同様の構成を有する。また、光受信部20a及び光受信部20bは、上述した第1実施形態の光伝送システムの光受信部と同様の構成を有する。
光伝送システム2では、第1光送受信部60と第2光送受信部61との間において、双方向のWDM通信を安定して行うことができる。
本発明では、上述した実施形態の光伝送システムは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
例えば、上述した実施形態では、光合波器の第1通過波長帯域は、入力ポート毎に帯域の波長が異なっていたが、複数の第1通過波長帯域が同じ波長帯域を有していても良い。
また、上述した実施形態では、光増幅素子L1〜LNとして、半導体発光素子を用いていたが、利得媒質としては、半導体以外の固体、液体又は気体を用いる光増幅素子であっても良い。
また、上述した実施形態では、光送信部の変調部がリング型光導波路14aを有していたが、変調部は、他の種類の変調方法を用いても良い。
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を技術を深めて理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
以上の上述した実施形態及びその変型例に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
所定数の入力ポートを有し、前記入力ポート毎に前記入力ポートに対応した第1通過波長帯域内の波長を有する光を通過させ、通過した光を合波する合波器と、
前記入力ポートそれぞれに光を出力する前記所定数の光増幅素子と、
前記光増幅素子から出力された光を共振させる共振部と、
を有し、前記入力ポートそれぞれに対応した前記第1通過波長帯域の波長でレーザ発振した前記所定数の光を合波し、合波された合波光を送信する送信部と、
前記所定数の出力ポートを有し、前記送信部から受信した前記合波光を、前記出力ポート毎に前記出力ポートに対応した第2通過波長帯域の波長の光に分波し、分波した光を対応する前記出力ポートから出力する分波器と、
前記出力ポートから出力された光を検出する前記所定数の検出部と、
前記第2通過波長帯域それぞれをシフトする帯域シフト部と、
を有する受信部と、
を備え、
前記合波器と前記分波器とは、対応する前記第1通過波長帯域及び前記第2通過波長帯域の帯域幅が同じである光伝送システム。
(付記2)
前記帯域シフト部は、前記第2通過波長帯域それぞれを同じ量シフトする付記1に記載の光伝送システム。
(付記3)
前記帯域シフト部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、少なくとも1つの前記第2通過波長帯域を通過する光の強度が極大を示すように、前記帯域シフト部を制御する付記1又は2に記載の光伝送システム。
(付記4)
前記帯域シフト部は、前記分波器内で分波される光の導波経路の屈折率を変化させて、前記第2通過波長帯域をシフトする付記1〜3の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記5)
前記帯域シフト部は、前記分波器内で分波される光の前記導波経路を加熱して、前記導波経路の屈折率を変化させる付記4に記載の光伝送システム。
(付記6)
前記共振部は、
前記合波光の一部を、前記合波器側に向かって反射する第1反射部と、
前記光増幅素子それぞれが発生した光を前記合波器側に向かって反射する前記所定数の第2反射部と、
を有するファブリペロー型共振器である付記1〜5の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記7)
前記共振部は、
前記所定数の第2の出力ポートを有し、前記合波光の一部を入力し、入力した前記合波光を、前記第2の出力ポート毎に前記出力ポートに対応した第3通過波長帯域内の波長の光に分波して、分波した光を前記第2の出力ポートから対応する前記光増幅素子に出力する第2の分波器と、
前記合波器から出力された前記合波光を入力し、入力した前記合波光の一部を前記第2の分波器に出力する光分岐部と、
を有するリング型共振器であり、
前記合波器と前記第2の分波器とは、対応する前記第1通過波長帯域及び前記第3通過波長帯域の帯域幅が同じである付記1〜5の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記8)
前記第1通過波長帯域は、前記入力ポート毎に帯域幅が不等間隔である付記1〜7の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記9)
前記第1通過波長帯域は、前記入力ポート毎に帯域幅が等間隔である付記1〜7の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記10)
前記第1通過波長帯域は、前記入力ポート毎に帯域の波長が異なっている付記1〜9の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記11)
前記分波器は、周回性を有する付記1〜10の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記12)
前記合波器と前記分波器とは、同じ構造を有している付記1〜11の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記13)
前記分波器は、前記所定数の前記出力ポートに加えて、更に第2の所定数の第2出力ポートを有する付記1〜12の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記14)
前記合波器及び前記分波器は、アレイ導波路回折格子を有している付記1〜13の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記15)
前記合波器及び前記分波器は、エシェル回折格子を有している付記1〜13の何れか一項に記載の光伝送システム。
(付記16)
所定数の入力ポートを有し、前記入力ポート毎に前記入力ポートに対応した第1通過波長帯域内の波長を有する光を通過させ、通過した光を合波する合波器と、
前記入力ポートそれぞれに光を出力する前記所定数の光増幅素子と、
前記光増幅素子から出力された光を共振させる共振部と、
を有し、前記入力ポートそれぞれに対応した前記第1通過波長帯域の波長でレーザ発振した前記所定数の光を合波し、合波された合波光を送信する送信部と、
前記所定数の出力ポートを有し、前記送信部から受信した前記合波光を、前記出力ポート毎に前記出力ポートに対応した第2通過波長帯域の波長の光に分波し、分波した光を対応する前記出力ポートから出力する分波器と、
前記出力ポートから出力された光を検出する前記所定数の検出部と、
前記第2通過波長帯域それぞれをシフトする帯域シフト部と、
を有する受信部と、
を備え、
前記合波器と前記分波器とは、対応する前記第1通過波長帯域及び前記第2通過波長帯域の帯域幅が同じである光伝送システムを用いて、
前記送信部から前記受信部へ光を送信する方法。
(付記17)
前記送信部から前記受信部へ送信される情報を有する光の数を、前記所定数よりも少なくする付記16に記載の方法。