JP2013157227A - 直接アルコール型燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続発電に伴う電極外周部の電解質膜の劣化及び破損を防ぎ、寿命の長い直接アルコール型燃料電池を提供する。
【解決手段】固体高分子電解質膜の両面に配置された一対のアノード及びカソードと、固体高分子電解質膜の表面に配置され、アノードおよびカソードの周囲を覆う非イオン伝導性の枠体と、アノードおよびカソードと対向するように配置され、反応ガス流路を備える導電性プレートとを備えた直接アルコール型燃料電池において、カソードの端部がアノード側に配置された枠体の内周縁よりも外側に位置する第一の領域と、カソードの端部と前記アノードの端部の位置が同じか、アノードの端部よりも内側に位置する第二の領域を有するようにアノード、カソード、及び、枠体が配置され、固体高分子膜および導電性プレートに設けられた燃料供給用マニホールドと近接するカソードの端部を第一の領域としたことを特徴とする。
【選択図】 図5

Description

本発明は、直接アルコール型燃料電池に関する。
燃料電池は、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。
燃料電池においては、燃料としての水素、メタノールなどの還元性物質と、酸化剤としての空気、酸素などの酸化性ガスとをそれぞれ、燃料極(アノード)及び空気極(カソード)に供給する。そして、電極層に含まれる触媒の表面で進行する酸化還元反応によって生じる電子を取り出し、電気エネルギーとする。
燃料電池は、電解質膜の材料や作動温度などによって、固体高分子型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型などに分けることができる。
この中で、パーフルオロスルホン酸系樹脂、スルホン化芳香族炭化水素系樹脂などに代表されるプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を用い、アノード側で水素を酸化し、カソード側で酸素を還元することにより発電を行う固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)は、比較的低温で発電をすることができ、出力密度の高い電池として知られている。
また、燃料として水素の代わりに液体であるメタノールおよびエタノール水溶液を用いた直接アルコール型燃料電池(Direct Alchol Fuel Cell:DAFC)も、近年になって脚光を浴びている。DAFCは、燃料及び空気の供給方式によって、アクティブタイプ(燃料及び空気を強制的に供給)、セミアクティブタイプ(燃料及び空気の一方を強制的に供給)、パッシブタイプ(燃料及び空気を自然供給)などに分類される。DAFCは燃料の可搬性に優れるため携帯機器の充電用あるいは可搬型発電装置としての応用が期待されている。
また、これまでは、プロトンを伝導する高分子電解質膜を用いたPEFC、DAFCが検討されてきたが、近年では、水酸化物イオンを伝導する電解質膜を用いたものも注目を集めている。
DAFCの発電は、アノードとカソードとでイオン伝導性を有する固体高分子電解質膜を挟んだ構成の膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)で進行する。このMEAには、DAFCの連続発電における耐久性に優れていることが望ましい。しかし、DAFCの発電を進行させると、アノード及びカソードの外周に位置する電解質の劣化が進行し、場合によっては、その箇所より膜破壊が生じ、発電が停止することがある。電極外周部の電解質の劣化は、DAFCだけではなく、PEFCやリン酸型燃料電池(PAFC)など他の燃料電池においても見られており、それぞれの劣化メカニズムに応じて、電解質を保護するためのMEA構成が提案されてきた。
特許文献1には、固体高分子電解質膜の面積が電極より大きく形成され、固体高分子電解質膜とガス不透過性板との間に介装されて電極を隙間を保持して額縁状に包囲するガスシール材によりガスシールされてなる固体高分子電解質型燃料電池において、固体高分子電解質膜周縁部分に密着して配され電極に重なりを有する額縁状の保護膜を、固体高分子電解質膜の少なくとも一方の面側に備えてなるシール構造が開示されている。
また、特許文献2では電解質膜へのストレスを軽減するために、ガスシール機能を有するフレームを、その内周縁が電極外周部と重なるように配置した構成を提案している。さらに、アノードおよびカソードとフレームとが接触する位置をアノードとカソードで異ならせ、アノードよりもカソードの方が大きいあるいはカソードよりもアノードの方が大きい構成とすることで、膜にかかる応力集中を緩和できることを示している。
一方、特許文献3では、無負荷状態(OCV状態;Open-circuit-voltage)での電解質劣化を挙げている。これは、アノードに水素、カソードに酸素あるいは空気を流した場合において、カソードの酸素が電解質膜を通り、アノードにて水素と反応することで過酸化水素となり、そのラジカル種がアノード側の電解質を劣化させるものである。特に電極外周部では、酸素のクロスリーク量が多くなるため、電解質劣化が顕著になっており、特許文献3では、これを解消するためにカソードの端部をホットメルト接着剤の付いたガスケットで被覆あるいは接触させ、さらにアノード極の大きさがカソードよりも大きくなるようにガスケットを配置することでアノードでの電解質劣化を防ぐことができることを示している。
特開平05−021077号公報 特開2007−66769号公報 特開2007−214101号公報
DAFCの発電部はPEFCと同様に膜電極接合体で進行するため、上記構成により電解質劣化が抑制されると思われたが、本発明者らが検討した結果、DAFCにおける電解質劣化メカニズムはPEFCやPAFCとは異なるものであり、上記構成では不十分あるいは改善すべき点があった。
DAFCにおける電極外周部の電解質劣化メカニズムについて述べる。ここで、メタノールを燃料に用いた直接メタノール形燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell;DMFC)を例に説明するが、メタノール以外のアルコール燃料でも同様の課題が存在する。
DMFCにおいては、PEFCと同様に運転中に電極周囲の電解質が劣化する現象が見られたが、PEFCとは異なりカソード側から劣化が進行する。また、OCV時や起動停止時ではなく、通常発電時に劣化が進行する。電解質劣化は電極中央部よりも電極端部あるいは電極外周部で顕著であり、さらに、MEA面内で分布があることがわかった。この劣化度の分布と発電中のカソード電位分布には一定の相関があり、局所的にカソード電位が下がりやすい箇所において劣化が進行しやすいことがわかった。これは、電極端部のうちカソード電位が下がりやすい領域では酸素の二電子還元反応(O2+2H++2e-→H22)が進行しやすく、過酸化水素が発生しやすくなるためと考えられる。また、本発明者らはカソード電位が特に低下しやすい場所は、1)メタノール燃料の供給入口に近いアノード端部と電解質膜を介して対向しているカソード端部、2)酸化剤ガスの出口に近いカソード端部であることを突き止めた。よって、DMFCでの電極外周の電解質保護を効率的に実施するためには、局所的に電位の下がりやすい場所に位置するカソード端部の電位を高く保つことで、発電面内におけるカソード電位のばらつきを小さくし、過酸化水素発生を抑制することが最も重要となる。
特許文献1〜3では、DMFCに関する上記課題については触れられておらず、そのため課題解決のための知見は開示されていない。
特許文献1は電解質膜の機械的強度のみに着目したものであり、製造上の問題で、電極や枠体に位置ずれが生じた場合、その隙間を通ってメタノールがアノードからカソードに到達し、カソード端部の電位を特に低下させやすい。
特許文献2や3は、ガスケットの開口部をアノードとカソードで異ならせ、電極端部を覆うようにしている。特許文献3で提案しているのはアノード面積のほうがカソード面積よりも大きいものであるが、この構成ではアノードの電極触媒層と電解質膜を通過し、カソードに到達するメタノールがカソードの端部に集中するため電位が下がりやすくなり、過酸化水素発生が促進される。また、カソード電位が高い部分において、カソード端部がアノード端部よりも大きくなっても、カソード電位のばらつきを低減する効果は小さく、電極サイズを大きくすることで使用する触媒の使用量が増え、コストが増大するという課題も生じる。
本発明の目的は、連続発電に伴う電極外周部の電解質膜の劣化及び破損を防ぎ、寿命の長い直接アルコール型燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、DMFCをはじめとするDAFC用に用いる膜電極接合体カソードの電位の高低、およびこれに対応した電解質の劣化度の大小は、電極面内で一様ではなく、発電のために膜電極接合体に供給される燃料および酸化剤の流れる方向に依存して変化することを突きとめた。そして、局所的に電位の低下しやすい領域のカソード端部において、アノードおよびカソード、そしてこれらの周囲の電解質の一部に付設されたフレーム(枠体)との相対配置を種々変化させることで、当該カソード端部の電位低下を抑制することができる配置を見出し、本発明に至った。
具体的には、固体高分子電解質膜の両面に配置された一対のアノード及びカソードと、固体高分子電解質膜の表面に配置され、前記アノードおよび前記カソードの周囲を覆う非イオン伝導性の枠体と、前記アノードおよび前記カソードと対向するように配置され、反応ガス流路を備える導電性プレートとを備えた直接アルコール型燃料電池において、前記カソードの端部が前記アノード側に配置された前記枠体の内周縁よりも外側に位置する第一の領域と、前記カソードの端部と前記アノードの端部の位置が同じか、前記アノードの端部よりも内側に位置する第二の領域を有するように前記アノード、カソード、及び、枠体が配置され、前記固体高分子膜および前記導電性プレートに設けられた燃料供給用マニホールドと近接する前記カソードの端部を前記第一の領域としたことを特徴とする直接アルコール型燃料電池とすることで、電極端部の電解質劣化を抑制できることを見出した。
本発明によれば、連続発電に伴う電極外周部の電解質膜の劣化及び破損を防ぎ、寿命の長い直接アルコール型燃料電池を提供することができる。
燃料電池の単セルの基本構成を示す模式図である。 燃料電池の単セルの分解斜視図を示す図である。 DMFCにおける電解質劣化メカニズムを説明する図である。 膜電極接合体の断面模式図である。 実施例の膜電極接合体を示す模式図である。 実施例の膜電極接合体を示す模式図である。 実施例1、2で用いた膜電極接合体の寸法を示す模式図である。 実施例3で用いた膜電極接合体の寸法を示す模式図である。 実施例4で用いた膜電極接合体の寸法を示す模式図である。 実施例5で用いた膜電極接合体の寸法を示す模式図である。 実施例及び比較例の燃料、酸化剤ガスの流れとカソード局所電位の測定位置を示した図である。 実施例の携帯情報端末を示す模式図である。
本発明は、メタノールやエタノールなどの液体燃料を用いた直接アルコール型燃料電池に関する。
DAFCの連続発電中においては、電極の外周部近傍に位置する電解質膜の一部に破損が生じ、燃料がクロスリークするため、安定した発電が継続できない場合がある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、DMFCをはじめとするDAFC用に用いる膜電極接合体カソードの電位の高低、およびこれに対応した電解質の劣化度の大小は、電極面内で一様ではなく、発電のために膜電極接合体に供給される燃料および酸化剤の流れる方向に依存して変化することを突きとめた。
以下、図1〜図3を用いて、電解質劣化が面内で一様でない要因について説明する。まず、DAFCの基本構成について説明する。図1にDAFCに用いる燃料電池スタックのうち1セル分の断面を示す。図1において、固体高分子電解質膜104の両面に一対のアノード触媒電極層103(以下、単にアノードとも呼ぶ)とカソード触媒電極層105(以下、単にカソードとも呼ぶ)が配置された膜電極接合体を一対の導電性プレート101で挟持した構成である。ここで、膜電極接合体を構成する固体高分子電解質膜104の表面には、それぞれアノード103とカソード105の周囲を覆う枠体109、110が設けられている。導電性プレート101の触媒電極層と対向する面には、それぞれ燃料ガス流路111、酸化剤ガス流路112が形成されており、このガス流路から反応ガスがアノード103とカソード105に供給され、発電が行われる。また、触媒電極層の面内に反応ガスが拡散されるように、導電性プレート101と触媒電極層の間にはそれぞれアノードガス拡散層102、カソードガス拡散層106が設けられている。導電性プレート101と固体高分子電解質膜104がガスケット107、108を介して挟持されることで、外部に燃料ガス、酸化剤ガスが漏れないように構成されている。
固体高分子電解質膜104は、プロトン伝導性あるいはアニオン伝導性を有する。導電性プレート101は、電子伝導性を有する。導電性プレート101の材料としては、緻密黒鉛プレート、黒鉛やカーボンブラックなどの炭素材料を樹脂によって成型したカーボンプレート、ステンレスやチタンなどの金属、又はこれらのいずれかを耐食性及び耐熱性に優れた導電性塗料や貴金属めっきで被覆したものを用いることが望ましい。アノード103、カソード105及び固体高分子電解質膜104を一体化したものを膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)と称する。ここで、触媒層(アノード103又はカソード105)とガス拡散層(アノード拡散層102又はカソード拡散層106)とが一体化してもよい。この場合は、拡散層を含めて膜電極接合体と称する。
図2に発電セルの分解斜視図を示す。図2では、発電セルのうち、枠体付きの膜電極接合体、カソード側及びアノード側のガスケット、アノード側の導電性プレートの斜視図を示している。固体高分子電解質膜104、ガスケット107、108、及び、導電性プレート101には、積層された各セルに対して燃料、酸化剤ガスを流通させるためのマニホールドが形成されている。図中では、燃料マニホールド、酸化剤ガスマニホールドの他に発電セルを冷却するための冷却水マニホールドも示してある。一般に、DAFCを用いた発電システムにおいて、燃料あるいは酸化剤は、外部からポンプによりマニホールドを通してセパレータに供給される。例えば、アノード側では、アノード面内が他のマニホールドと分離して燃料供給用マニホールド115、燃料排出用マニホールド116と接続されるようにガスケット108で仕切られており、燃料は燃料供給用マニホールド115から導電性プレート101のガス流路を通ってアノードに供給され、未反応燃料およびアノード反応での生成物が燃料排出用マニホールド116から外部に排出される。また、カソード側でも同様に、酸化剤ガスが酸化剤ガス供給用マニホールド113から導電性プレート101のガス流路を通ってカソード105に供給され、未反応ガスおよびカソード反応での生成物が酸化剤ガス排出用マニホールド114から排出される。図2に示したマニホールドの配置では、燃料および酸化剤ガスの流れは矢印の方向となる。ここで、点線枠Aで示した燃料供給用マニホールドと近接するカソード端部、点線枠Bで示した酸化剤ガス排出用マニホールドと近接するカソード端部が、局所的にカソード電位が特に下がりやすい部分となる。その結果、酸素の二電子還元反応による過酸化水素の発生が促進され、近傍の電解質から劣化が進行することを突き止めた。
点線枠A、Bで示すカソード端部領域でカソード電位が低下する理由について、図3に示した膜電極接合体の断面図を用いて説明する。なお、図3では枠体は省略している。カソード端部での電位低下の主要因は、図3に示したように、アノード端部および、その外側を未反応燃料が電解質膜を介して透過することにより、対向するカソードの混成電位が低下することに起因する。カソードの電位が低下することにより、酸素の二電子還元反応による過酸化水素の発生が促進され、近傍の電解質が劣化するものである。ここで、図2に示したように燃料供給用マニホールドに近接するアノード端部には、高濃度の燃料が直接供給される。そのため、このアノード端部と対向するカソード端部への燃料透過量が増大することになり、燃料供給用マニホールドに近接するカソード端部での電位低下が他の部分よりも顕著となる。
また、発電中の酸化剤ガスの出口近傍ではカソード反応により酸化剤濃度が低くなっており、アノードからの未反応燃料によって急激にカソード電位が低下しやすくなる。そのため、酸化剤ガスの出口近傍である酸化剤ガス排出用マニホールドに近接するカソード端部での電位低下が他の部分よりも顕著となる。
電極外周の電解質を通したメタノール透過は、特許文献1から3などのように電極の外周部に枠体を取り付けることで軽減できるものの以下の理由により不十分である。アノードおよびカソードと枠体の間に隙間がある場合、隙間を通って未反応のメタノールが到達してしまう。また電極の端部が枠体の内周と重なっている場合においても、重なっている部分のアノード性能は低く、電極に到達したメタノールが十分に酸化されることなく電解質膜に到達し、カソード側に到達してしまいカソード電位が低下する。さらに、カソードと枠体が重なっている場合、重複部分に酸素が拡散しづらくなり局所的なカソード電位が低下するため望ましくない。
本発明者らは、アノード及びカソードの周囲に枠体が取り付けられた構成の膜電極接合体において、DAFC発電中のカソード局所電位が下がりやすい箇所、具体的には、アノードへの燃料入口近傍およびカソードへの酸化剤出口近傍に位置するカソード端部において、カソード端部がアノードに取り付けられた枠体の内周縁よりも外側に配置するようにすることで、未反応メタノールがカソード端部に到達することを防ぎ、電位低下を抑えることができ、結果として、電解質劣化を抑制できることを見出し、本発明に至った。特許文献2や3と同様の発想では、膜電極接合体の全周囲でカソード端部をアノード枠体の内周よりも外側に配置することができるが、アノード枠体よりも外にあるカソード部分については反応に寄与することはないため、カソードの全周囲で上記構成を用いると触媒コストが必要以上にかかることになる。本発明者らは、カソード電位が特に低下する箇所を特定し、そこに特化して電極と枠体の配置を決定しており、膜電極接合体のコストという観点でも望ましい構成を発明した。
以下、本発明の一実施形態に係る直接アルコール型燃料電池、および、これに用いることができる膜電極接合体、およびその製造方法について説明する。
本発明の直接アルコール型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に配置された一対のアノード及びカソードと、固体高分子電解質膜の表面に配置され、前記アノードおよび前記カソードの周囲を覆う非イオン伝導性の枠体と、前記アノードおよび前記カソードと対向するように配置され、反応ガス流路を備える導電性プレートとを備えており、前記カソードの端部が前記アノード側に配置された前記枠体の内周縁よりも外側に位置する第一の領域と、前記カソードの端部と前記アノードの端部の位置が同じか、前記アノードの端部よりも内側に位置する第二の領域を有するように前記アノード、カソード、及び、枠体が配置され、前記固体高分子膜および前記導電性プレートに設けられた燃料供給用マニホールドと近接する前記カソードの端部を前記第一の領域とした直接アルコール型燃料電池を特徴とする。
また、酸化剤ガス排出用マニホールドと近接する前記カソードの端部を前記第一の領域とすることが好ましい。
また、燃料供給用マニホールドと近接する前記カソードの端部や酸化剤ガス供給用マニホールドと近接する前記カソードの端部周辺を前記第二の領域とすることが好ましい。
ここで、第一の領域および第二の領域について、図4を用いて具体的に説明する。固体高分子電解質膜404はアノード403、カソード405によって覆われた領域と覆われていない領域が存在し、その境界線を電極触媒層端部、あるいはアノード端部、カソード端部と称する。また、固体高分子電解質膜は非イオン伝導性の枠体409、410によって覆われている領域と覆われていない領域に分けることができ、この境界線を枠体内周縁と定義する。本発明では、膜電極接合体断面における、アノード端部、カソード端部、枠体内周縁の相対位置に着目している。膜電極接合体の端部から発電面の中央部に向かう方向を内側(図4の上方向)、発電面の中央部から端部に向かう方向を外側(図4の下側)と定義すると、第一の領域とは、カソード端部421がアノード側の枠体内周縁422よりも外側に配置されている領域のことである。また、第二の領域とは、カソード端部421がアノード端部420と同じか、それよりも内側に存在する領域のことである。図4に示した第一の領域においては、アノード端部420とアノード側の枠体内周縁422との隙間がカソード端部421よりも内側に存在することにより、アノードからカソードに燃料が透過してもカソード端部421への燃料の透過は抑制することができる。したがって、局所的なカソード電位が低下しやすい燃料供給用マニホールドと近接するカソード端部を第一の領域とすることによって、カソード電位の低下を抑制することができるものである。また、同様に局所的なカソード電位が低下しやすい酸化剤ガス排出用マニホールドと近接するカソード端部を第一の領域とすることによって、カソード電位の低下を抑制することができる。また、図2に示した点線枠A、Bほどのカソード電位の低下はないが、点線枠C、Dにおいても他のカソード端部と比較すると局所的なカソード電位の低下が生じやすい。そのため、点線枠C、Dにおいても第一の領域とすることが好ましい。この際、多角形のカソードの頂点のうち、燃料供給用マニホールドに最も近い頂点と、これを構成する2辺を第一の領域とすることが好ましい。なお、この際に2辺の全てを第一の領域とする必要はなく、燃料供給用マニホールドに最も近い頂点に近い2辺の一部分を第一の領域としてもよい。同様に多角形のカソードの頂点のうち、酸化材ガス排出用マニホールドに最も近い頂点と、これを構成する2辺を第一の領域とすることが好ましい。
一方、その他のカソード端部においても透過メタノールによる局所電位低下は見られるものの、電位の絶対値自体は高く、過酸化水素が発生しにくい、または、発生しても少量であれば電極触媒内で還元されるため、電解質の劣化速度は遅い。そのため、このようなカソード端部を第一の領域としてもカソード電位向上の効果は少ないため、このようなカソード電位が高い端部領域に第二の領域を設ける。第二の領域においては、発電に寄与しない触媒の量を削減する観点からは、カソード端部とアノード端部の相対的な距離(面内方向の距離)を500μm以内とすることが好ましく、端部の位置が揃っていることがより好ましい。
前記直接アルコール型燃料電池において、アノードに供給する燃料とカソードに供給する酸化剤を対向流とした場合、酸化剤ガスの下流域部分のカソード端部がアノード端部よりも外側に配置されることとなり、酸素分圧低下に伴うカソード電位低下を基点とした電解質劣化も防ぐことができるため、望ましい。
前記直接アルコール型燃料電池において、枠体はガスおよび液体透過抑制能を有するフィルム層とフィルムと電解質膜を接合するための接着層からなることが望ましい。
前記直接アルコール型燃料電池において、前記カソード端と前記カソード側に配置された枠体の内周部の間には隙間があってもよいし、なくてもよい。ただし、カソード端部の局所的な電位を高く保つ観点では、隙間を設け、端部近傍へのガス供給を促進するのが望ましい。
前記直接アルコール型燃料電池において、前記アノード端と前記アノード側に配置された枠体の内周部の間には隙間があってもよいし、なくてもよい。ただし、カソードへの燃料透過を効果的に抑制するという観点では、隙間がないほうが望ましい。
また、カソードおよびアノード面に配置された枠体の内周縁で囲まれた多角形の幾何的な重心にずれがあり、アノード面に対し、カソード面の重心がずれた方向にアノードへの燃料供給入口が配置されるように配置されることが望ましい。
この場合、アノードとカソードの面積が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記直接アルコール型燃料電池において、イオン伝導性電解質膜がプロトン交換基を有するポリアリーレンとしてもよい。
また、前記直接アルコール型燃料電池において、イオン伝導性電解質膜がアニオン交換基を有するポリアリーレンとしてもよい。
前記直接アルコール型燃料電池スタックを用いた発電装置は、アノードにはメタノールあるいはエタノールを含んだ水溶液燃料を供給し、カソードには酸素を含んだガスを供給するものである。
また、前記直接アルコール型燃料電池を用いた発電装置において、積層した燃料電池スタックの向きとしては、セル面内方向を発電装置底面と平行にして設置することも、セル面内を発電装置底面に対して垂直となるように配置することもできる。発電装置の底面に対し膜電極接合体およびセパレータが垂直となるように燃料電池スタックが配置される構成の場合、装置底面から装置上部方向に燃料が供給され、装置上部より装置底面への方向に酸化剤ガスが供給されるようにしてあると燃料および酸化剤供給が円滑に行われるため望ましい。この際、カソードの端部が前記アノード側に配置された前記枠体の内周縁よりも外側に位置する第一の領域を発電装置内の底部に近いように配置することで、発電中の電解質劣化を防ぐことができる。
燃料を供給する部材は、ポンプ等により導入された燃料を、セパレータを介してガス拡散層に供給する一連の部材である。また、空気(酸素)を供給する部材は、ブロア等により導入された空気(酸素)を、セパレータを介して拡散層に供給する一連の部材である。
なお、燃料は、メタノール水溶液又はエタノール水溶液が用いられる。
アノードにおいては燃料が電気化学的に酸化され、カソードにおいては酸素が還元され、両電極間に電気的なポテンシャルの差が生じる。このときに外部回路として負荷が両電極間にかけられると、電解質中にイオンの移動が生起し、外部負荷に電気エネルギーが取り出される。このため、各種の燃料電池は、大型発電システム、小型分散型コージェネレーションシステム、電気自動車電源システム等への適用が期待され、実用化のための開発が活発に展開されている。
以上のように、本発明の燃料電池スタックを用いることで、DAFC発電時に特有な劣化メカニズム、具体的には、燃料入口近傍あるいは酸化剤出口近傍に位置するカソード端部における局所電位低下に伴う過酸化水素発生、これによる電解質の酸化分解、を防ぐことができ、長期にわたって電極外周部の電解質劣化を防ぐことができる。
以下、図面を用いて実施例を説明する。
枠体を含む膜電極接合体の構成について説明する。
図5〜図6は、実施例の膜電極接合体を示す模式断面図である。いずれの図においても、枠体が固体高分子電解質膜の膜外縁部に付設してある点で共通している。以下、図5を用いて膜電極接合体(MEA)の基本構成を説明する。以降では、簡略化のため、導電性プレート101やガス拡散層102、106、ガスケット107、108は省略してあるが、実際の燃料電池スタックを製造する際にはこれら部材は図1のように組み込まれるものとする。膜電極接合体は、面積が大きい固体高分子電解質膜504をアノード503とカソード505との間に挟み込んだ構成である。図5の外観図において、アノード503とカソード505は四角形とし、その頂点をAan、Ban、Can、Dan、Aca、Bca、Cca、Dcaとして示している。ここで、頂点Aanと頂点Aca、頂点Banと頂点Bca、頂点Canと頂点Cca、頂点Danと頂点Dcaとがそれぞれ対向して配置されることを示している。
図3で説明したように、電極周囲の電解質に特に枠体などを配置しておらず、また、アノード触媒層とカソード触媒層の端部が膜電極接合体の断面においてそろっている場合、アノード503又はカソード505と拡散層とセパレータとガスケットとで囲まれた領域に空隙が生じ、空隙を通り、アノードからカソード側へ燃料の透過が顕著となる。そのため、カソード505端部における過酸化水素の発生が促進され、固体高分子電解質膜504の劣化が進行し、固体高分子電解質膜504の破損につながる。
ここで、図5に示したように、アノード側で燃料供給用マニホールド515から燃料排出用マニホールド516に向かって、矢印の流れ方向に沿って頂点Danから頂点Banに燃料が流れる場合、燃料供給用マニホールド515近傍のカソード端部では比較的高濃度の燃料がカソード側に透過し、カソード電位を下げやすくなるため、劣化の進行が早い。また、カソード側で、酸化剤ガス供給用マニホールド513から酸化剤ガス排出用マニホールド514に向かって、矢印の流れ方向に沿って頂点Acaから頂点Ccaに酸化剤ガスが流れる場合、酸化剤ガス排出用マニホールド514近傍のカソード端部において電位が特に下がりやすくなり、結果として、電解質劣化・膜破損が加速される。一方、その他のカソード端部においても透過メタノールによる局所電位低下は見られるものの、電位の絶対値自体は高く、過酸化水素が発生しにくい、または、発生しても高電位の電極触媒内で還元されるため、電解質の劣化速度は遅い。このように、発電中の電解質劣化は、膜電極接合体に対する燃料、酸化剤供給方向に依存することが分かっている。なお、図5において、酸化剤ガス、燃料の流れ(ガス流路)は簡易に表現したものであり、実際には、複数流路が蛇行したサーペンタイン流路や多孔質板の空孔を通りガスを供給する多孔質流路などもあるが、本発明の対象はこれら形状については特に限定されるものではなく、これら流路の入口近傍(供給側マニホールド近傍)と出口近傍(排出側マニホールド近傍)に着目したものであり、発明の効果は流路形状に依らないものである。
図5においては、固体高分子電解質膜504のうち、アノード触媒電極層503又はカソード505の外周からはみ出した部分(膜外縁部)を枠体509および510で覆ったものとする。ここで枠体509はアノード面に配置したもの、枠体510はカソード面に配置したものである。なお、以下において、アノード503又はカソード505を総称して「電極」又は「電極層」と呼ぶこともある。
本図において、枠体509および510は、燃料透過あるいはガス透過性の少ない、緻密な樹脂フィルム層と、フィルム層と電解質膜との接着性を高めるために導入される接着層から構成される。製造時にフィルムを押し付けた際に、フィルム層よりも大きく接着層が広がることがあるが、本発明では、接着層も含めた部分を枠体と呼ぶことにする。図5においては、酸化剤ガス排出用マニホールド514近傍のカソード端部(図中のカソード505の下辺)を中心とした断面(a−b断面)において、カソード端部が、対向するアノード端部、そして、アノード周囲に配置される枠体509の内周縁よりも外側に配置されている。このような構成となることで、アノード電極の外周と枠体の間に隙間が存在し、燃料が透過しても、カソード電極の端部には到達しないため、その電位低下にはつながらず、過酸化水素を発生させないため、電解質劣化を防ぐことができる。他の箇所(辺)においては、アノードとカソードの端部位置はそろっているが、この領域のカソード電位の絶対値が高いため、透過メタノールによる電位低下の悪影響は小さく、電解質劣化にはつながらない。ここで、アノードとカソードの端部位置がそろっているとは、その断面構造において、電解質膜を挟んだ2つの電極の端の相対的な距離が500μm以内である。
図5において、枠体509および枠体510とアノード503、カソード505の間には隙間が存在するように書かれているが、隙間がない構造でも一定の効果を示す。ただし、隙間をなくすように枠体とアノード、カソードを重ねる、あるいは、接着材で隙間を封入するようにすると、カソード端部へのガス供給が阻害されたり、生成水の排出が滞るため、却ってカソード端部での局所電位が下がり、劣化を引き起こす原因となるため、隙間があるとなおよい。製造上の過程で一部の隙間がなくなることも考えられるが、電極の全周囲で隙間が密閉されていなければ図5の構成になっているものとみなせる。
図5では、カソード電極がアノード電極よりも大きな構成となっているが、カソード電極とアノード電極とが実質同じ大きさであっても、効果を示すことがある。図6は、同じ大きさのカソードとアノードとがそれぞれの重心がずれた形で配置された構成となっている。この場合も、カソードの重心がアノードの重心よりも酸化剤ガス排出用マニホールド514側に近付くようにそれらの相対位置をずらして配置することで、燃料供給用マニホールド515や酸化剤排出用マニホールド516近傍を第一の領域とすることができ、これら領域での電解質劣化を防ぎ、トータルとしてのMEAの寿命は高く保たれる。
図5から図6に示した実施例におけるアノード及びカソードに用いられる触媒としては、燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム若しくはチタン又はこれらの合金が挙げられる。
このような触媒のうち、カソード用触媒としては、特に、白金(Pt)触媒が用いられる。また、アノード用触媒としては、白金/ルテニウム触媒(Pt/Ru触媒)が用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は2〜30nmである。
触媒金属は、比表面積の大きなカーボン材料に担持されることが望ましい。触媒は、微粒子化した方が、比表面積が増えるため、単位重量あたりの活性が高くなる。カーボンブラックに担持することにより、触媒を凝集させることなく、微粒子として維持することができる。
上記のカーボンブラックの比表面積は、10〜1000m2/gの範囲から選ばれることが望ましい。比表面積が小さすぎると、カーボンブラックを添加する効果が十分には得られない。一方、比表面積が大きすぎると、カーボンブラックの表面に形成されている細孔が多く、この細孔に触媒粒子が入り込み、細孔に入り込んだ触媒粒子は、電池作動時、反応に寄与しにくくなる。例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素、活性炭、黒鉛等を用いることができ、これらは単独あるいは混合して使用することができる。
以上のカーボンブラックのうち、大きな比表面積を有するケッチェンブラックを使用することが触媒電極層の活性増大の観点から望ましい。
カソード及びアノードに用いられる固体高分子電解質、並びに固体高分子電解質膜に用いられる固体高分子電解質としては、酸性の水素イオン伝導材料あるいは、塩基性の水酸化物イオン伝導材料を用いることが望ましい。
前者については、これは、大気中の炭酸ガスの影響を受けることなく、良好なイオン伝導性を確保でき、安定な燃料電池を実現できるためである。
酸性の水素イオン伝導材料の例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸電解質やプロトン伝導性を示す極性基を有する炭化水素系電解質を挙げることができる。特に、炭化水素系電解質膜は、耐メタノール膨潤性や対メタノール透過性に優れており、これを用いることが望ましい。プロトン伝導性を示す極性基としては、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基などが挙げられるが、プロトン伝導度の観点からスルホン酸基が特に望ましい。また、パーフルオロアルキルスルホン酸電解質に比べて、炭化水素系電解質膜の方が膜単身でのメタノール透過量を低く抑えることができるため、カソード端部での電位低下を抑制できるため望ましい。
炭化水素系電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、スルホン化ポリスルフィッド、スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化エンジニアプラスチック系電解質や、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィッド、スルホアルキル化ポリフェニレン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン等のスルホアルキル化エンジニアプラスチック系電解質を用いることができる。
また、電解質膜の強度や耐燃料透過性を向上させるために電解質膜中に多孔質樹脂基材を含めた構造にすることもできる。多孔質樹脂基材の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを挙げることができる。
また、トリメチルアミン基やトリメチルホスフィン基、ホスファゼン基などのアニオン交換基を有する高分子電解質を用いるとDAFC発電中のメタノール透過方向とイオン伝導方向が逆となるため、メタノール透過量が抑制されるため、カソード電位の低下を防ぐことができるため望ましい。
図5における枠体509、510に用いることのできるフィルム層材料としては、膜にした際にメタノールに対して不透過性を示すものであれば特に限定されない。具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などがあげられる。また、電解質膜との接合性を考慮して、イオン交換容量の極端に少ない電解質ポリマーやこれを含んだ多孔質基材を用いることができる。
また、接着材層に使用できるものとしては、前記フィルム層と電解質膜との間の密着性を保つものであれば特に限定されない。具体的な材料例としては、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマーなどのホットメルト材料やアクリルやウレタン系の接着剤を用いることができる。
枠体509や510のうち、接着層の厚みの割合については特に限定されないが、枠体全体の厚さに対して10〜90%の割合であることが望ましい。10%よりも小さくなると固体高分子電解質膜と枠体との接合性が十分でなくなる。90%より大きくなると枠体34の厚みがいたずらに厚くなり、シール性に問題が出てくるため、望ましくない。枠体全体に対する接着層の厚さは40〜60%であることが更に望ましい。
接着層を含めた、枠体全体の厚みとしては、特に限定されないが、10μm以上、300μm以下であることが望ましい。10μmよりも薄くなると試料全体の強度が下がり、燃料電池スタック製造時のハンドリング性に影響が出る。300μm以上となると、ガス拡散層を含めた電極厚みよりもサブガスケットの厚みが大きくなるため、シール性確保が困難になる。
図5〜図6において、枠体とアノードおよびカソードは接するように記載されているが、実際には、枠体とアノード又はカソード(両者をあわせて「電極」とも呼ぶ)とが離れていても、重なっていてもよい。ただし、カソード端部へのガス供給を促進する観点から、隙間があった方が望ましい。枠体内周縁と電極端部との距離は、電極全周囲において、同一であっても異なっていてもよい。距離としては、0.1〜1mm以下の範囲であるのが望ましい。0.1mmより小さいとカソード端部との間にたまった水が系外に放出されにくくなるため、望ましくない。また1mm以上だと、本発明の構成を実施するのに多くの触媒を要することになり、望ましくない。
また、膜電極接合体のアノード触媒層およびカソード触媒層に対し、これらよりも大面積のガス拡散層を配置することにより、膜電極接合体と拡散層とガスケットとで囲まれた領域(空隙)に水が滞留した場合であっても、拡散層により効果的に水を排出し、滞留水と電極外周部との長時間の接触を防ぐことができるため望ましい。
ガス拡散層の大きさは、特に限定されないが、ガス拡散層の長さ及び幅がアノード触媒層及びカソード触媒層の長さ及び幅よりも1mm以上大きいことが望ましい。
以下、膜電極接合体の製造方法の一例について説明する。ただし、製造方法は下記に限定されるものではない。
図5〜図6に示す膜電極接合体を得るには、以下の工程を経ればよい。
まず、ホットメルト接着材料あるいは電解質樹脂を含むワニスをPETフィルムなどの燃料不透過性フィルムに塗工し、乾燥させた後、離形シートと貼り合わせ、そののち、所望の形状の枠体を取り出し、シートをはがし、適切な治具を使用しながら、電解質膜と貼り付け、ホットプレスすることで得られる。電極形成後の電解質膜上に枠体を取り付けても、電極形成前の電解質膜上に枠体を取り付けても、どちらでもよい。
この電極の製造工程において、触媒を分散させる溶媒としては、触媒粒子や電解質ポリマーを適切に分散/溶解するものであって、洗浄後に触媒を被毒しないものであれば、特に限定されない。例えば、水の他に、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルや、n−プロパノール、iso−プロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、1−メチル−2−ピロリドンなどの高極性溶媒を用いることができる。これらの溶媒を2種類以上混合して使用することもできる。
電極触媒層の形成及び接合は、触媒及び固体高分子電解質を分散したアルコール溶液を用いて、スプレー塗布法やスリットダイコーター法による直接塗布で行うこともできる。
また、ポリテトラフルオロエチレン製シート上に電極触媒層を塗布したものを電解質膜に押し当てて熱圧着することもできる。
製造した膜電極接合体の構成を確認するためには、得られた枠体付きの膜電極接合体の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すればよい。
本実施例においては、カソードおよびアノードの周辺部に枠体を配置し、カソードの端部が前記アノード側に配置された前記枠体の内周縁よりも外側に位置する第一の領域と、前記カソードの端部と前記アノードの端部の位置が同じか、前記アノードの端部よりも内側に位置する第二の領域を有するように前記アノード、カソード、及び、枠体を配置し、燃料供給用マニホールドや酸化剤排出用マニホールドと近接する前記カソードの端部を第一の領域とすることでMEA中の触媒コストを低く抑えながら、効果的に、電解質劣化の大きな箇所での劣化を防ぐことができる。結果として、電極外周部における電解質膜の劣化・破損を防ぐことができ、これを用いた燃料電池の寿命を長くすることができる。
以下、本実施例を更に詳しく説明するが、本発明は、ここに開示した実施例のみに限定されるものではない。
(Pt/C触媒スラリーの作製)
プロパノールを主成分とする溶媒に、白金が67重量%担持されたケッチェンブラックと、Nafion(登録商標)とを重量比で1:0.2となるように添加し、マグネッチックスターラーにて12時間攪拌し、Pt/C触媒スラリーとした。
(PtRu/C触媒スラリーの作製)
プロパノールを主成分とする溶媒に、白金ルテニウムが55重量%担持されたケッチェンブラックと、Nafion(登録商標)とを重量比で1:0.6となるように添加し、マグネッチックスターラーにて12時間攪拌し、PtRu/C触媒スラリーとした。
(膜電極接合体の例)
〔比較例1〕
(1−1)スルホアルキル化ポリエーテルスルホン(ポリマーA)を合成した。ポリマーAの数平均分子量は74000であり、重量平均分子量は261000であった。イオン交換容量は1.4meg/gであった。
(1−2)上記(1−1)で作製したポリマーA25gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)75gに溶解し、ワニスを作製した(ワニスA)。
(1−3)上記(1−2)で作製したポリマーAのワニスをPETフィルム上に塗布し、90℃で15分、120℃で15分乾燥し、形成した電解質膜をPETフィルムよりはがし、洗浄、リンス及び乾燥の各工程を経て電解質膜Aを得た。
(1−4)厚さ100μm、50mm×50mmのポリテトラフルオロエチレン製シート(PTFEシート)の表面にPt/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金重量が2mg/cm2となるようにカソード電極層を形成した。電極サイズは30mm×30mmとした。
(1−5)厚さ100μm、50mm×50mmのPTFEシートの表面にPtRu/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金ルテニウム重量が2mg/cm2となるようにカソード電極層を形成した。電極サイズは30mm×30mmとした。
(1−6)上記(1−3)で得た電解質膜Aの片面に上記(1−4)で得たカソード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせ、電解質膜Aの他の面に上記(1−5)で得たアノード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせた。この際、カソードとアノードの端部位置にずれがないよう位置あわせを施した。これを120℃、2分間、12.5MPaの条件でプレスし、PTFEシートをはがして膜電極接合体Aを得た。
(1−7)帝人デュポン社製のホットシール材付きのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(厚み30μm)を5cm角に切り出したのち、その中から32mm×32mmの正方形を切り出し、内周32mm×32mm、外周50mm×50mmの枠体1を得た。
(1−8)上記(1−6)で得た膜電極接合体Aの両面に、(1−7)で得た枠体1をホットシール面と電解質膜が接するように合わせ、熱圧着により接合した。この際、電極の外周と枠体1の内周の間には1mmの隙間ができるようにした。
(1−9)カーボンペーパーで形成された30mm角のガス拡散層を貼り合わせ、これにガスケット材を取り付け、緻密黒鉛で形成されたセパレータ(導電性プレート)で挟み、燃料電池セルとした。セパレータ流路は1mm幅、1mm深さ、1mmピッチ、7.5ターンの1本流路とした。燃料および酸化剤ガスの流れは図11(a)、(b)で示した対向流となるようにした。図では簡略化のため燃料あるいは空気の流れは2.5ターンとしてある。具体的には、アノードに対して、燃料が頂点Dan近傍より供給され、頂点Banより排出されるようにアノード用セパレータ流路及びマニホールドを配置して、組み立てた。また、カソードに対し、酸化剤が頂点Aca近傍より供給され、頂点Ccaより排出されるようにカソード用セパレータ流路およびマニホールドを配置した。なお、図11において、アノード燃料入口、アノード燃料出口に対応する箇所に燃料供給用マニホールド、燃料排出用マニホールドが設けられている。また、カソードガス入口、カソードガス出口に対応する箇所に酸化剤ガス供給用マニホールド、酸化剤ガス排出用マニホールドが設けられている。
〔比較例2〕
(2−1)厚さ100μm、50mm×50mmのポリテトラフルオロエチレン製シート(PTFEシート)の表面にPt/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金重量が2mg/cm2となるようにカソード電極層を形成した。電極サイズは32mm×32mmとした。
(2−2)厚さ100μm、50mm×50mmのPTFEシートの表面にPtRu/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金ルテニウム重量が2mg/cm2となるようにカソード電極層を形成した。電極サイズは32mm×32mmとした。
(2−3)上記(1−3)で得た電解質膜Aの片面に上記(2−1)で得たカソード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせ、電解質膜Aの他の面に上記(2−2)で得たアノード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせた。この際、電解質膜Aを挟んでアノードおよびカソード触媒層の端部位置にずれがないようにした。これを120℃、2分間、12.5MPaの条件でプレスし、PTFEシートをはがして膜電極接合体Bを得た。
(2−4)帝人デュポン社製のホットシール材付きのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(厚み12μm)を5cm角に切り出したのち、その中から30mm×30mmの正方形を切り出し、内周30mm×30mm、外周50mm×50mmの枠体2を得た。
(2−5)上記(2−3)で得た膜電極接合体Bの両面に、(2−4)で得た枠体2をホットシール面と電解質膜が接するように合わせ、熱圧着により接合した。この際、枠体2の内周が電極外周よりも1mmだけ内側に配置されるようにした。この結果、触媒層の外周より1mm分は枠体により覆われ、電気化学反応に寄与できなくなるため、実質的な電極面積は、30mm×30mmとなった。
(2−6)カーボンペーパーで形成された30mm角のガス拡散層を貼り合わせ、これにガスケット材を取り付け、緻密黒鉛で形成されたセパレータで挟み、燃料電池セルとした。セパレータ流路は1mm幅、1mm深さ、1mmピッチ、7.5ターンの1本流路とした。燃料および酸化剤ガスの流れは図11(a)、(b)で示した対向流となるようにした。具体的には、アノードに対して、燃料が頂点Dan近傍より供給され、頂点Banより排出されるようにアノード用セパレータ流路及びマニホールドを配置して、組み立てた。また、カソードに対し、酸化剤が頂点Aca近傍より供給され、頂点Ccaより排出されるようにカソード用セパレータ流路およびマニホールドを配置した。
〔比較例3〕
(3−1)帝人デュポン社製のホットシール材付きのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(厚み30μm)を5cm角に切り出したのち、その中から31mm×31mmの正方形を切り出し、内周31mm×31mm、外周50mm×50mmの枠体3を得た。
(3−2)上記(2−3)で得た膜電極接合体Bのカソード側に(3−1)で得た枠体3を、アノード側に(2−4)で得た枠体2を、ホットシール面と電解質膜が接するように合わせ、熱圧着により接合した。この際、枠体3の内周が電極外周よりも0.5mmだけ内側に配置され、枠体2の内周が電極外周よりも1mmだけ内側に配置されるようにした。この結果、実効的に活用できる電極面積は、アノードでは30mm×30mm、カソードでは31mm×31mmとなった。
(3−3)カーボンペーパーで形成された31mm角のガス拡散層を貼り合わせ、これにガスケット材を取り付け、緻密黒鉛で形成されたセパレータで挟み、燃料電池セルとした。セパレータ流路は1mm幅、1mm深さ、1mmピッチ、7.5ターンの1本流路とした。燃料および酸化剤ガスの流れは図11(a)、(b)で示した対向流となるようにした。具体的には、アノードに対して、燃料が頂点Dan近傍より供給され、頂点Banより排出されるようにアノード用セパレータ流路及びマニホールドを配置して、組み立てた。また、カソードに対し、酸化剤が頂点Aca近傍より供給され、頂点Ccaより排出されるようにカソード用セパレータ流路およびマニホールドを配置した。
〔実施例1〕
(4−1)厚さ100μm、50mm×50mmのPTFEシートの表面にPtRu/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金重量が2mg/cm2となるようにカソード電極層を形成した。電極サイズは31mm×31mmとした。
(4−2)上記(1−3)で得た電解質膜Aの片面に上記(4−1)で得たカソード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせ、電解質膜Aの他の面に上記(1−5)で得たアノード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせた。この際、電解質膜Aを挟んでアノードおよびカソードがそれぞれの頂点とその頂点を形成する2辺がそろうように、電極を貼り合わせた(図7)。位置を揃えた頂点をAanca、その対角となる頂点をCan、caとすると、図7のようにカソード側の頂点Ccaはアノード側の頂点Canよりも外側に位置する。これを膜電極接合体Dとする。
(4−3)膜電極接合体Dのアノード(30mm×30mm)、カソード(31mm×31mm)に対し、それぞれ(3−1)で得た枠体3および(1−7)で得た枠体1をそれぞれ配置した。この際、それぞれの面に付与した枠体の内周が電極端部より0.5mm外側に位置するように配置した。この結果、実効的に活用できる電極面積はアノードでは30mm×30mm、カソードでは32mm×32mmとなった。また、図7の頂点Ccaはアノード側の枠体内周よりもさらに外側に位置しており、辺B−C、辺C−D近傍が第一の領域となり、辺A−B、辺C−D近傍が第二の領域となる。
(4−4)(4−3)に対し、カーボンペーパーで形成されたガス拡散層を貼り合わせ、ガスケット材を取り付けた後、緻密黒鉛で形成されたセパレータで挟み燃料電池セルとした。セパレータ流路は1mm幅、1mm深さ、1mmピッチ、7.5ターンの1本流路とした。ここで、燃料および酸化剤ガスの流れは図11(a)、(b)で示した対向流となるようにした。具体的には、アノードに対して、燃料が頂点Dan近傍より供給され、頂点Banより排出されるようにアノード用セパレータ流路及びマニホールドを配置して、組み立てた。また、カソードに対し、酸化剤が頂点Aca近傍より供給され、頂点DCcaより排出されるようにカソード用セパレータ流路およびマニホールドを配置した。
〔実施例2〕
(5−1)(4−4)で得た膜電極接合体のカソードに対し、図11(c)に示したように酸化剤が頂点Cca近傍より供給され、頂点Acaより排出されるようにしてカソード用ガス流路およびマニホールドを配置したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2を作製した。
〔実施例3〕
本実施例の膜電極接合体を図8に示す。
(6−1)(4−2)で得た膜電極接合体Dのカソード側に貼り合わせる枠体を枠体1(内周32mm×32mm)から枠体3(内周31mm×31mm)とし、カソードと枠体内周縁の間に隙間が生じないように貼り合わせた以外はすべて実施例1と同様にして燃料電池スタックを得た。
〔実施例4〕
本実施例の膜電極接合体を図9に示す。
(7−1)(4−2)で得た膜電極接合体Dのアノード側に貼り合わせる枠体を枠体3(内周31mm×31mm)から枠体2(内周30mm×30mm)とし、アノードと枠体内周縁の間に隙間が生じないように貼り合わせた以外はすべて実施例1と同様にして燃料電池スタックを得た。
〔実施例5〕
本実施例の膜電極接合体を図10に示す。
(8−1)(1−3)で得た電解質膜Aの片面に上記(1−4)で得たカソード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせ、電解質膜Aの他の面に上記(1−5)で得たアノード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせた。この際、アノード貼り合わせ位置に対し、カソード貼り合わせ位置が平行移動したように両者を貼り合わせた。平行移動の距離は、それぞれの辺方向に1mmずつとした。これを膜電極接合体Eとする。膜電極接合体Eでは図10のように頂点Aanが頂点Acaよりも外側に配置されており、その対角の頂点Canは頂点Ccaよりも内側に配置された構成となっている。
(8−2)(8−1)で得た膜電極接合体Eのアノード面、カソード面に対し、枠体3(内周31mm×31mm)を貼り合わせた。この際、アノード端部およびカソード端部とそれぞれの枠体の内周縁の距離は0.5mmになるようにした。
(8−3)(8−2)で得た膜電極接合体に対し、カーボンペーパーで形成されたガス拡散層を貼り合わせ、ガスケット材を取り付けた後、緻密黒鉛で形成されたセパレータで挟み燃料電池セルとした。セパレータ流路は1mm幅、1mm深さ、1mmピッチ、7.5ターンの1本流路とした。ここで、燃料および酸化剤ガスの流れは図11(a)、(b)で示した対向流となるようにした。具体的には、アノードに対して、燃料が頂点Dan近傍より供給され、頂点Banより排出されるようにアノード用セパレータ流路を配置して、組み立てた。また、カソードに対し、酸化剤が頂点Aca近傍より供給され、頂点Ccaより排出されるようにカソード用セパレータ流路を配置した。
〔実施例6〕(アニオン交換MEA)
(9−1)プロパノールを主成分とする溶媒に、白金が67重量%担持されたケッチェンブラックと、トクヤマ製のアニオン交換樹脂AS−4とを重量比で1:0.2となるように添加し、マグネッチックスターラーにて12時間攪拌し、アニオン交換樹脂の入ったPt/C触媒スラリーを作製した。
(9−2)プロパノールを主成分とする溶媒に、白金ルテニウムが55重量%担持されたケッチェンブラックと、トクヤマ製のアニオン交換樹脂AS−4とを重量比で1:0.6となるように添加し、マグネッチックスターラーにて12時間攪拌し、PtRu/C触媒スラリーとした。
(9−3)厚さ100μm、50mm×50mmのポリテトラフルオロエチレン製シート(PTFEシート)の表面に(9−1)で得たPt/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金重量が2mg/cm2となるようにカソード電極層を形成した。電極サイズは31mm×31mmとした。
(9−4)厚さ100μm、50mm×50mmのPTFEシートの表面に(10−2)で得たPtRu/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金ルテニウム重量が2mg/cm2となるようにカソード電極層を形成した。電極サイズは30mm×30mmとした。
(9−5)電解質膜にトクヤマ製のアニオン交換型電解質膜(A201)、カソードに(9−3)で得た電極層、アノードに(9−4)で得た電極層を用いる以外はすべて実施例1と同様にして、アニオン交換樹脂を用いた燃料電池スタックを得た。
(9−6)(9−5)で得た膜電極接合体に対し、カーボンペーパーで形成されたガス拡散層を貼り合わせ、ガスケット材を取り付けた後、緻密黒鉛で形成されたセパレータで挟み燃料電池セルとした。セパレータ流路は1mm幅、1mm深さ、1mmピッチ、7.5ターンの1本流路とした。ここで、燃料および酸化剤ガスの流れは図11(a)、(b)で示した対向流となるようにした。具体的には、アノードに対して、燃料が頂点Dan近傍より供給され、頂点Banより排出されるようにアノード用セパレータ流路を配置して、組み立てた。また、カソードに対し、酸化剤が頂点Aca近傍より供給され、頂点Ccaより排出されるようにカソード用セパレータ流路を配置した。
(カソード局部電位の測定)
実施例1〜5および比較例1〜3について、DMFC発電中のカソードの局所電位の場所依存性を測定した。カソード電極を取り囲むように8つの水素基準電極を配置し、カソードガス流路に混入しないような構成で水素ガスを供給した。図11に、それぞれの水素基準電極の位置(1)〜(8)を示す。また、それぞれの水素基準電極近傍に電位測定用のプローブを挿入し、基準電極―プローブ間の電位差を計測することで、カソード端部における局所電位を測定した。
(膜電極接合体のDMFC耐久性評価)
実施例1〜5及び比較例1〜3のDMFC耐久性を評価した。
評価用燃料電池のアノード側には、1mol/lのメタノール水溶液を2ml/minで供給し、カソード側には、乾燥空気(露点−20〜−15℃)を500ml/minで供給しながら、単セルの温度を80℃とした。連続発電は0.2A/cm2の条件で行った。最長で2500時間行い、経過時間に対するセル電圧のプロットを直線近似し、電圧低下率を算出した。また、途中で膜が破損したものについては、破損による燃料・空気のクロスリークの急激な上昇が確認された時点で測定を中断した。
評価を終了したMEAについては、断面観察を行い、電極周囲における電解質減肉の有無を確認した。また、電極の外周部(電極端部)及び電極の内部(電極中央部)に位置する電解質をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、電解質ポリマーの分子量分布をGPCで測定することにより、電解質膜の劣化の有無を確認した。ここで、電極の外周部に位置する電解質の試料は、電極の外周端部から1mm外側までの領域に存在する電解質を切り出したものである。また、電極の内部に位置する電解質の試料は、電極の中心から直径10mmの円内に存在する電解質を切り出したものである。
実施例6に対し、アノード側には、水酸化カリウムが1mol/lの濃度で添加された1mol/lメタノール水溶液を、カソードには乾燥空気を供給した条件で、単セル温度80℃で発電試験を実施した。
(結果および考察)
表1は、比較例1〜3および実施例1〜5の燃料電池を用いてDMFC発電した際のカソード端部の局所電位を測定した結果である。
アノードとカソードの端部位置がそろっており、かつ電極端部と枠体の間に隙間がある比較例1では、アノード燃料供給用のマニホールド近傍(図11の(6))、カソードガス排出用のマニホールド近傍(同(8))におけるカソード電位が特に低い。(6)では電極外周の電解質を通ったメタノール到達による混成電位が顕著であり、(8)ではメタノール透過に加えて、酸素分圧低下による電位低下が顕著である。耐久性試験において、700時間発電後に急激な電位低下がみられ、解体分析を実施したところ、(6)や(8)における分子量低下率が特に高く、破損が見られた。
一方、比較例2では比較例1とは異なり、電極端部と枠体の間に隙間が存在せず、メタノール透過が抑制された結果、電位改善が見られている。しかし、カソードガス排出用のマニホールドに近い(7)や(8)での電位は依然として低い。これは、電極端部と枠体の間に隙間が存在しないことにより、端部にたまったメタノールや水が排出されにくく、酸素分圧が下がり、これがカソード下流域である(7)や(8)で顕著になったためと考えられる。耐久性試験では2000時間の発電後、膜が破損、電位低下がみられた。(8)に近いカソード端部では電解質の減肉が観察された。
カソード電極端部をアノード端部よりも外側になるように配置した比較例3では、さらに電位改善が見られているが、やはり比較例2と同様に、カソード下流域での電位は低かった。2500時間まで発電を完了したが、(6)、(8)に相当する電解質部分の分子量低下、減肉が確認された。
以上の比較例1から3に対し、カソード端部がアノード枠体内周縁の外側に配置される第一の領域(辺B−C、辺C−D、(6)〜(8))にメタノール供給用のマニホールドや酸化剤排出用のマニホールドを設けた構成の実施例1では、(6)や(8)の電位改善が顕著であった。耐久性試験では2500時間発電が完了し、カソード端部、電極内部いずれの電解質の分子量の減少率も10%未満であり、減肉は観察されなかった。
実施例2は、カソード端部がアノード枠体内周縁の外側に配置される第一の領域(頂点Cca周囲、(6)〜(8))の近傍にメタノール燃料入口を設け、第二の領域近傍に酸化剤出口を設けた構成である。実施例1に比べて、酸化剤出口近傍に当たる(1)や(2)においての電位低下がみられるが絶対値としては高い値である。メタノール入口近傍でのカソード電位は高く保たれている。耐久性試験では2500時間発電が完了し、カソード端部、電極内部いずれの電解質の分子量の減少率も10%未満であり、減肉は観察されなかった。よって本構成の効果を確認できたといえる。一方で(1)や(2)の電位降下は長時間での劣化を引き起こす可能性もあり、実施例1のように第一の領域に酸化剤排出用のマニホールドを設けるほうが望ましいと予想される。
実施例3では、実施例1と同様に、第一の領域近傍に燃料供給用マニホールド、酸化剤排出用マニホールドを設けた構成であり、さらに、アノード端部と枠体内周縁の間の隙間をなくしたものである。これによりカソードへのメタノール透過量が25%低減し、カソード端部への電位も実施例1と比べて高いものとなった。耐久性試験では2500時間発電が完了し、カソード端部、電極内部いずれの電解質の分子量の減少率も5%未満であり、減肉は観察されなかった。実施例1と3の比較により、アノード端部と枠体の隙間は極力小さくするのが望ましいことがわかる。
実施例4は、実施例1と同様に第一の領域近傍に燃料供給用マニホールド、酸化剤排出用マニホールドを設けた構成であり、さらに、カソード端部と枠体内周縁の間の隙間をなくしたものである。実施例4のカソード局所電位は、実施例1と同等かそれよりも低い。耐久性試験では2500時間発電が完了し、カソード端部、電極内部いずれの電解質の分子量の減少率は10〜15%であり、実施例1の方が低い結果となった。実施例1と4の比較から、カソード端部と枠体内周縁の間には一定の隙間を設け、ガス拡散性を確保することが望ましいことがわかる。
実施例5は、同サイズのアノードとカソードの位置をずらしたもので、燃料供給用マニホールド近傍ではカソード端部がアノード端部より外側に位置するのに対し、燃料排出用マニホールド近傍ではアノード端部がカソード端部よりも外側に配置された構成となっている。燃料排出用マニホールド近傍(3)では、実施例1から3と比べて電位が低くなっているものの、絶対値としては高く、2500時間発電後の電解質劣化も10%未満であった。
実施例6では、膜電極接合体を構成する材料がプロトン交換電解質からアニオン交換電解質に変わっているが、電極や枠体の位置関係は実施例1と同じである。このような構成では、酸型と同様に、カソード端部近傍の電位が向上し、電解質劣化の少ない、安定発電が可能となる。
以下、燃料電池発電システムの一例を示す。
図12は、実施例の膜電極接合体を用いた燃料電池を実装した携帯用情報端末(燃料電池発電システム)を示す模式図である。
本図において、携帯用情報端末1200は、2つの部分を燃料カートリッジ1206のホルダーを兼ねたヒンジ1207で連結された折たたみ式の構造をとっている。液体燃料としてはメタノール水溶液やエタノール水溶液を用いることができる。
1つの部分は、タッチパネル式入力装置が一体化された表示部1201、アンテナ1202を内蔵している。
もう1つの部分は、燃料電池1203、並びにプロセッサ、揮発及び不揮発メモリ、電力制御部、燃料電池及び二次電池ハイブリッド制御、燃料モニタなどの電子機器及び電子回路などを実装したメインボード1204、リチウムイオン二次電池1205を内蔵している。
このようにして得られる携帯用情報端末は、燃料電池1203の寿命が長いため、長く使うことができる。
また、実施例1から6の燃料電池は、複数のセルを積層させて使用することができる。この際、積層した燃料電池スタックの向きとしては、セル面内方向を発電装置底面と平行にして設置することも、セル面内を発電装置底面に対して垂直となるように配置することもできる。垂直になるように配置する際、液体燃料をスタック下部から上部に流すと、アノード反応で生成するガスの排出性を高めることができ、また、酸化剤ガスをスタック上部から下部へ向けて流すと、カソードで生成した、あるいはアノードから透過した液体の排出性を高めることができる。この際、実施例1、3〜7における、カソードの端部が前記アノード側に配置された前記枠体の内周縁よりも外側に位置する第一の領域を発電装置内の底部に近いように配置することで、発電中の電解質劣化を防ぐことができる。
101 導電性プレート
102 アノードガス拡散層
103、403、503 アノード触媒電極層
104、404、504 固体高分子電解質膜
105、405、505 カソード触媒電極層
106 カソードガス拡散層
107、108 ガスケット
109、409、509 アノード側枠体
110、410、510 カソード側枠体
111 燃料ガス流路
112 酸化剤ガス流路
113、513 酸化剤ガス供給用マニホールド
114、514 酸化剤ガス排出用マニホールド
115、515 燃料供給用マニホールド
116、516 燃料排出用マニホールド

Claims (12)

  1. 固体高分子電解質膜の両面に配置された一対のアノード及びカソードと、固体高分子電解質膜の表面に配置され、前記アノードおよび前記カソードの周囲を覆う非イオン伝導性の枠体と、前記アノードおよび前記カソードと対向するように配置され、反応ガス流路を備える導電性プレートとを備えた直接アルコール型燃料電池において、
    前記カソードの端部が前記アノード側に配置された前記枠体の内周縁よりも外側に位置する第一の領域と、前記カソードの端部と前記アノードの端部の位置が同じか、前記アノードの端部よりも内側に位置する第二の領域を有するように前記アノード、カソード、及び、枠体が配置され、
    前記固体高分子膜および前記導電性プレートに設けられた燃料供給用マニホールドと近接する前記カソードの端部を前記第一の領域としたことを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  2. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、前記固体高分子膜および前記導電性プレートに設けられた燃料排出用マニホールドと近接する前記カソードの端部が前記第二の領域としたことを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  3. 請求項1または2に記載の直接アルコール型燃料電池において、前記固体高分子膜および前記導電性プレートに設けられた酸化剤ガス排出用マニホールドと近接する前記カソードの端部を前記第一の領域としたことを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の直接アルコール型燃料電池において、前記固体高分子膜および前記導電性プレートに設けられた酸化剤ガス供給用マニホールドと近接する前記カソードの端部を前記第二の領域としたことを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  5. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、燃料と酸化剤ガスとが膜電極接合体を介して、対向流で供給されることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  6. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、前記枠体はガスおよび液体透過抑制能を有するフィルム層と、フィルムと電解質膜を接合するための接着層からなることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  7. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、
    前記カソードの端部と前記カソード側に配置された枠体との間には隙間が存在していることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  8. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、前記アノードの端部と前記アノード側に配置された枠体とが接していることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  9. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、前記アノードと前記カソードの面積が同じであり、前記アノード面内の幾何的な重心と前記カソード面内の幾何的な重心の位置が面内方向で異なっていることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  10. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、前記アノードよりも前記カソードの面積が大きいことを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  11. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、イオン伝導性電解質膜がプロトン交換基を有するポリアリーレンであることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  12. 請求項1に記載の直接アルコール型燃料電池において、イオン伝導性電解質膜がアニオン交換基を有するポリアリーレンであることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015088326A (ja) * 2013-10-30 2015-05-07 ダイハツ工業株式会社 燃料電池のセパレータ構造

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