JP2013155558A - 構造物の基礎構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液状化地盤2に構築される構造物(建物1)の地下外壁の周囲に非液状化層2aに達する止水壁3を設け、該止水壁および基礎底版1aとによって構造物の直下の液状化層2bを取り囲む排水ゾーン5を区画形成する。基礎底版と液状化層との間に透水層6を設けるとともに、地下外壁と止水壁との間に透水層に通じる鉛直ドレーン7を設けて、排水ゾーンにおいて発生する過剰間隙水を透水層および鉛直ドレーンを通して地表に排水可能とする。排水ゾーン内に透水層に通じる他の鉛直ドレーン8を設置しても良い。
【選択図】図1
Description
なお、上記の止水壁3は施工時に仮設的に設けられるとともに施工後もそのまま残置されるものであるが、従来のこの種の止水壁3は液状化地盤2の液状化やその結果としての建物1の沈下を防止したり抑制するための機能を有しているものではない。
しかし、杭基礎は直接基礎に比べてコスト高であるし、液状化による建物1自体の沈下を防止できても周囲地盤が大きく沈下してしまえばそれとの不陸が顕著に生じてしまって地震後の供用に支障を来す場合があり、その点では必ずしも万全とはいえるものではない。
以上のことから、比較的簡易にかつ低コストで施工可能な液状化対策手法、特に中低層建物を対象とする構造物の基礎として最適な構造が求められているのが実状である。
これは、上述したように非液状化層2aの上層に液状化層2bが存するような液状化地盤2に構築される中低層程度の建物1への適用例であって、その建物1の地下外壁の周囲に仮設的に設ける止水壁3を非液状化層2aに達するように設けることにより、その止水壁3および建物1の底面となっている基礎底版1aとによって建物1の直下の液状化層2bを取り囲んで周囲より隔絶した排水ゾーン5を形成し、液状化層2bが液状化を生じても建物1の直下地盤の側方流動を防止して従来のようにそれに起因する建物1の沈下を防止することを基本とするものである。
上記の止水壁3は適宜の構造が採用可能であり、通常は図4〜図5に示したように従来より施工中に仮設として設けられかつそのまま残置される一般的な構造のもので十分であるが、本発明においては上記のようにその止水壁3を非液状化層2aに達するように設けるとともに、少なくとも液状化時における直下地盤の側方流動を防止し得る強度を有するものとして施工する必要はある。
上記の透水層6は砂利等の透水材を全面的あるいは要所に部分的に敷設することにより形成すれば良い。また、上記の鉛直ドレーン7は図2に示すように建物1の地下外壁と止水壁3との間に全周にわたって連続的に形成するか、あるいは図3に示すように多数の鉛直ドレーン7を周方向の要所に断続的に形成することでも良いが、いずれにしても鉛直ドレーン7は透水層6と同様に砂利等の透水材の充填により形成するか、あるいは適宜のドレーン材を設置することで形成すれば良い。
さらに、必要に応じて、図2および図3に示しているように排水ゾーン5内にも他の鉛直ドレーン8を透水層6に通じるように設けることも好ましい。
通常の液状化に対する設計手法では、地盤の過剰間隙水圧比が1に達した状態を完全に液状化した状態(液体になった状態)として、これ以降の状態を考えることはないが、本発明では過剰間隙水圧比が1に達した後にせん断変形により剛性が回復する状態(以下、これを「ポスト液状化状態」という)を呈することに着目し、そのポスト液状化状態を安定に継続させることで構造物に対する支持力を維持し確保するという設計思想に基づくものである。
すなわち、図4に示すように、ポスト液状化状態に達した地盤に対して排水することなくさらにせん断力を作用し続けると、非可逆の塑性体積ひずみ(圧縮側)にダイレクタンシーによる可逆的な塑性体積ひずみ(膨張側)が追いつけず、地盤が完全な液体状態なる。この状態が噴砂や構造物の不同沈下が生じる地盤の破壊に達した状態である。
一方、適切に排水しながら上記のせん断力を作用させると、非可逆の塑性体積ひずみ圧縮側)と可逆的な塑性体積ひずみ(膨張側)が常に釣り合い、ポスト液状化状態が安定に継続するから、本発明はそのような安定なポスト液状化状態を保持することで構造物の支持力を確保して構造物の沈下や傾斜といった液状化被害を低減するものである。
鉛直ドレーン7は液状化中および液状化後の地盤沈下に伴って生じる間隙水を地表に排水できる能力をもつように設計する。
そのためには、液状化後の地盤沈下量Dsによる必要排水量ΔVwを(1)式により算定し、それに基づき必要流量qw1を(2)式により算定する。
なお、地盤沈下量Dsはたとえば特開2007−9558号公報に示されている周知の計算法により算定すれば良い。また、沈下時間Δtは1日程度とすれば良い。
一方、鉛直ドレーン7による可能排水量qw2を(3)式により算定する。
ここで、動水勾配ivは、鉛直ドレーン7の下端深度H、鉛直ドレーン7の下端および上端にそれぞれ作用する水頭hw1、hw2により(4)式により算定する。
勿論、止水壁3の他にはその内部に透水層6と鉛直ドレーン7を設け、必要に応じてさらに他の鉛直ドレーン8を設けるだけの簡易な構造であるので、従来一般の各種の液状化防止対策工法のように液状化の発生自体を防止するために大掛かりな工事を必要とせず、したがって簡易に低コストで実施すること可能であるから、特に従来においては十分な液状化防止対策が困難であった既存あるいは新築予定の戸建て住宅や付帯設備等の比較的小規模の中低層程度の建物に対して適用するものとして最適である。
また、特許文献3、4には鉛直ドレーンについての開示があるがいずれも止水壁3に関する開示はないし、特許文献3は建物の基礎構造に関わるものですらなく、特許文献4に示される基礎構造も本発明における止水壁3に相当する要素はないし鉛直ドレーン7をマットスラブを貫通するように設けている点で本発明とは全く異なるものであり、これらも本発明の基礎構造とは全く異なる技術であることはいうまでもない。
たとえば、上記実施形態は中低層程度の建物1の基礎に適用した場合の一例であるが、本発明は中低層建物のみならず液状化地盤に構築される各種の構造物の基礎構造として広く適用可能であることは当然である。
また、止水壁3の構造やその施工手法、透水層6および鉛直ドレーン7の素材やそれらの透水係数等の諸元、形成パターン、施工手法その他についても、対象とする液状化地盤2の地質的状況、そこに構築される構造物の構造や自重や形態等の諸条件も考慮して、構造物の直下地盤に対して所望の側方流動防止性能と過剰間隙水に対する十分かつ効率的な排水性能が得られるように最適設計すれば良い。
1a 基礎底版
2 液状化地盤
2a 非液状化層
2b 液状化層
3 止水壁
4 支持杭
5 排水ゾーン
6 透水層
7 鉛直ドレーン
8 鉛直ドレーン
Claims (2)
- 非液状化層の上層に液状化層が存する液状化地盤に構築される構造物に適用される基礎の構造であって、
前記構造物の地下外壁の周囲に前記非液状化層に達する止水壁を設けて、該止水壁および前記構造物の基礎底版とにより該構造物の直下の液状化層を取り囲むことによって周囲より隔絶した排水ゾーンを区画形成し、
前記構造物の基礎底版とその直下の液状化層との間に透水層を設けるとともに、前記構造物の地下外壁と前記止水壁との間に前記透水層に通じる鉛直ドレーンを設けて、
前記液状化層の液状化により前記排水ゾーンにおいて発生する過剰間隙水を該排水ゾーンから前記透水層および前記鉛直ドレーンを通して地表に排水可能に構成してなることを特徴とする構造物の基礎構造。 - 請求項1記載の構造物の基礎構造であって、
前記排水ゾーン内に前記透水層に通じる鉛直ドレーンを設置してなることを特徴とする構造物の基礎構造。
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2012
- 2012-01-31 JP JP2012018490A patent/JP5822201B2/ja active Active
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