JP2013155066A - TiO2膜形成用組成物、TiO2膜付き物品、それらの製造方法およびTiO2膜 - Google Patents

TiO2膜形成用組成物、TiO2膜付き物品、それらの製造方法およびTiO2膜 Download PDF

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Abstract

【課題】膜厚を厚くしてもクラックが発生しにくいTiO膜を形成できるTiO膜形成用組成物、これを用いたTiO膜付き物品の製造方法を提供する。
【解決手段】平均凝集粒子径が1〜50nmであるTiO粒子の水系分散液と、Ti(OR)(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)およびそのオリゴマーのいずれか一方または両方からなるTiO前駆体とを、TiO粒子の割合が、TiO粒子の質量とTiO前駆体の質量(TiO換算)との合計(100質量%)のうち、68〜92質量%となるように配合してなり、かつ酸を含むTiO膜形成用組成物;該TiO膜形成用組成物を基材(ガラス基板10および第1の格子20)の表面に塗布し、熱処理してTiO膜(第2の格子30)を形成するTiO膜付き物品(波長選択回折格子1)の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、TiO膜形成用組成物、TiO膜付き物品、それらの製造方法およびTiO膜に関する。
高屈折率材料は、光学素子を小型化、高効率化できることから、光学材料として広く利用されている。高屈折率材料を用いた光学素子としては、たとえば、光学ドライブにおいて光ディスクからの情報の再生や光ディスクへの情報の記録を行う光ピックアップ(レーザ光源および受光部)における、波長選択回折格子等が挙げられる。
近年、光ディスクの大容量化を図るため、光ディスクのピットサイズを小さくすることが進められており、これに伴ってレーザ光の波長も短波長化している。具体的には、波長300〜450nmのレーザ光(以下、青色レーザ光と記す。)を出射する半導体レーザ光源を用いることが提案されている。そのため、波長選択回折格子における高屈折率材料からなる膜には、青色レーザ光に対する耐性が必要になる。
青色レーザ光に対する耐性を有する高屈折率材料としては、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するテトラフェニルシランを含む光硬化性組成物の硬化物が提案されている(特許文献1)。しかし、該光硬化性組成物の硬化物からなる膜は、有機物であるため、青色レーザ光に対する耐性は必ずしも充分とはいえない。
青色レーザ光に対する耐性が充分な高屈折率材料からなる膜としては、無機物からなる膜、たとえば、Ti(OR)(ただし、Rはアルキル基等である。)を用いたゾルゲル法によって形成されるTiO膜が挙げられる。
国際公開第2009/139476号
ところで、回折格子において特定の波長の光が完全に回折するためには、下式(II)の条件を満たす必要がある。
Δn・d/λ=整数 ・・・(II)。
ただし、Δnは、格子を形成する2つの材料の屈折率差であり、dは格子の高さ(深さ)であり、λは、回折させたい光の波長である。
通常の表面レリーフ型の回折格子においては、一方の材料が可視光線から近赤外線の領域にて透明な材料(屈折率:1.5〜2.5程度)であり、他方の材料が空気(屈折率:1)であるため、Δnは、0.5〜1.5程度となる。
一方、波長選択回折格子においては、回折させずに透過させたい光の波長における屈折率を、格子を形成する2つの材料で一致させる必要がある、すなわち、可視光線から近赤外線の領域にて透明な材料の中から、透過させたい光の波長における屈折率が同じであり、回折させたい光の波長における屈折率が異なる、2つの材料を選択する必要がある。そのため、格子を形成する2つの材料の屈折率がどうしても近いものとなってしまうため、回折させたい光の波長における屈折率差Δnは、せいぜい0.02〜0.1程度となってしまう。
以上の事情から、波長選択回折格子は、通常の表面レリーフ型の回折格子に比べ、格子の高さ(深さ)dを10倍以上とする必要がある。したがって、TiO膜を有する波長選択回折格子においては、TiO膜の膜厚を厚くする、具体的には500nm以上にする必要がある。しかし、Ti(OR)を用いたゾルゲル法によって形成されるTiO膜の膜厚を厚くした場合、収縮応力が大きくなるため、TiO膜にクラックが発生しやすくなる。具体的には、Ti(OR)を用いたゾルゲル法によって形成されるTiO膜の膜厚は、200nm程度が限界である。
また、波長選択回折格子における高屈折率材料の屈折率が高すぎると、波長選択回折格子の支持体である透明基板(通常はガラス)との屈折率差が大きくなりすぎるため、格子を形成する高屈折率材料からなる膜と透明基板との界面における反射率が高くなる問題がある。一方で、波長選択回折格子における高屈折率材料には、上述した事情から、屈折率の波長分散性(屈折率の波長による変化)が大きいこと、すなわちアッベ数が小さいことが求められる。しかし、屈折率は、アッベ数に反比例する傾向があるため、アッベ数が充分に小さい材料を選択すると、必然的に屈折率が高くなりすぎる。よって、ガラスよりもやや屈折率が高い高屈折率材料であって、かつアッベ数が充分に小さい新規な高屈折率材料があれば、波長選択回折格子における高屈折率材料として好適となる。
本発明の目的は、膜厚を厚くしてもクラックが発生しにくいTiO膜を形成できるTiO膜形成用組成物、膜厚を厚くしてもクラックが発生しにくいTiO膜を有するTiO膜付き物品およびそれらの製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、物品の基材であるガラスよりもやや屈折率が高く、かつアッベ数が充分に小さいTiO膜を形成できるTiO膜形成用組成物、物品の基材であるガラスよりもやや屈折率が高く、かつアッベ数が充分に小さいTiO膜を有するTiO膜付き物品およびそれらの製造方法を提供することにある。
本発明のTiO膜形成用組成物は、平均凝集粒子径が1〜50nmであるTiO粒子の水系分散液と、Ti(OR)(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)およびそのオリゴマーのいずれか一方または両方からなるTiO前駆体とを、前記TiO粒子の割合が、前記TiO粒子の質量と前記TiO前駆体の質量(TiO換算)との合計(100質量%)のうち、68〜92質量%となるように配合してなり、かつ酸を含むことを特徴とする。
本発明のTiO膜形成用組成物は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
本発明のTiO膜形成用組成物は、水溶性有機溶媒をさらに含むことが好ましい。
本発明のTiO膜形成用組成物の製造方法は、平均凝集粒子径が1〜50nmであるTiO粒子の水系分散液と、Ti(OR)(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)およびそのオリゴマーのいずれか一方または両方からなるTiO前駆体とを、前記TiO粒子の割合が、前記TiO粒子の質量と前記TiO前駆体の質量(TiO換算)との合計(100質量%)のうち、68〜92質量%となるように酸の存在下に配合する、または前記TiO粒子と前記TiO前駆体とを前記割合となるように配合した後に酸をさらに配合することを特徴とする。
本発明のTiO膜付き物品の製造方法は、本発明のTiO膜形成用組成物を、基材の表面に塗布し、熱処理してTiO膜を形成することを特徴とする。
本発明のTiO膜付き物品の製造方法においては、1回の塗布によって膜厚が500nm以上のTiO膜を形成することが好ましい。
本発明のTiO膜付き物品の製造方法においては、前記塗布および熱処理を、複数回繰り返してもよい。
本発明のTiO膜付き物品は、本発明のTiO膜付き物品の製造方法によって得られたものであることを特徴とする。
前記TiO膜のヘイズは、膜厚1μmあたり、1%以下であることが好ましい。
本発明のTiO膜付き物品は、波長選択回折格子であることが好ましい。
本発明のTiO膜は、波長589nmの光に対する屈折率が、1.6〜1.7であり、下式(I)から求めたアッベ数が、10〜15であることを特徴とする。
ν=(n−1)/(n−n) ・・・(I)。
ただし、νは、アッベ数であり、nは、波長589nmの光に対する屈折率であり、nは、波長486nmの光に対する屈折率であり、nは、波長656nmの光に対する屈折率である。
本発明のTiO膜の膜厚は、500nm以上であることが好ましい。
本発明のTiO膜形成用組成物によれば、膜厚を厚くしてもクラックが発生しにくいTiO膜を形成できる。また、本発明のTiO膜形成用組成物によれば、物品の基材であるガラスよりもやや屈折率が高く、かつアッベ数が充分に小さいTiO膜を形成できる。
本発明のTiO膜形成用組成物の製造方法によれば、本発明のTiO膜形成用組成物を製造できる。
本発明のTiO膜付き物品は、厚い膜厚であってもクラックが発生しにくいTiO膜を有する。また、本発明のTiO膜付き物品は、物品の基材であるガラスよりもやや屈折率が高く、かつアッベ数が充分に小さいTiO膜を有する。
本発明のTiO膜付き物品の製造方法によれば、本発明のTiO膜付き物品を製造できる。
本発明のTiO膜付き物品の一つである波長選択回折格子の一例を示す断面図である。 波長選択回折格子において格子を形成する2つの材料の屈折率の波長分散性の一例を示すグラフである。 波長選択回折格子において格子を形成する2つの材料の屈折率の波長分散性の他の例を示すグラフである。
<TiO膜形成用組成物>
本発明のTiO膜形成用組成物は、TiO粒子の水系分散液と、Ti(OR)(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)およびそのオリゴマーのいずれか一方または両方からなるTiO前駆体とを配合してなる組成物であって、該組成物中に酸を含むものである。
本発明のTiO膜形成用組成物は、必要に応じて界面活性剤、水溶性有機溶媒、他の添加剤等をさらに含んでいてもよい。
(TiO粒子の水系分散液)
TiO粒子の水系分散液は、TiO粒子が水系分散媒中に分散したものである。
TiO粒子の平均凝集粒子径は、1〜50nmであり、2〜30nmが好ましく、3〜20nmがより好ましい。TiO粒子の平均凝集粒子径が1nm以上であれば、TiO粒子をゾルゲル法等の公知の方法によって簡便に製造できる。TiO粒子の平均凝集粒子径が50nm以下であれば、可視光線領域におけるTiO膜の透明性を維持できる。
TiO粒子の平均凝集粒子径は、TiO粒子の水系分散液について動的散乱法によって体積分布で測定される。
水系分散媒としては、水、または水と水溶性有機溶媒との混合媒体が挙げられ、通常は水が用いられる。
水溶性有機溶媒としては、後述する水溶性有機溶媒と同様のものが挙げられる。
TiO粒子の水系分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の無機酸化物粒子、添加剤(分散剤等)等を含んでいてもよい。
また、TiO粒子の水系分散液は、後述する酸をあらかじめ含んでいてもよい。
(TiO前駆体)
TiO前駆体は、TiO膜におけるTiOからなるマトリックスを形成する成分である。
TiO前駆体は、Ti(OR)およびそのオリゴマーのいずれか一方または両方からなり、RO−[Ti(OR)−O]−R(ただし、nの平均値(重合度)は1以上である。)で表される。nの平均値が1のものはTi(OR)、すなわちモノマーであり、nの平均値が1超のものはTi(OR)のオリゴマー(モノマーを含む混合物であってもよい。)である。
オリゴマーは、Ti(OR)の加水分解および縮合によって多量体となったものである。Ti(OR)をオリゴマーとすることによって、モノマーの場合に比べ、硬化収縮が抑えられる。
nの平均値(重合度)は、1〜20が好ましく、4〜10がより好ましい。nの平均値が20以下であれば、効率よく加水分解させることが可能である。
Ti(OR)におけるRは、炭素数1〜5のアルキル基であり、2〜4のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数が5以下であれば、効率よく加水分解させることが可能であり、また、加水分解生成物であるROHが揮発しやすい。4つのRは、同一のアルキル基でなくてもよい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
(酸)
酸は、TiO前駆体を加水分解させる触媒である。
酸としては、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸等)、有機酸(酢酸、ギ酸、シュウ酸等)が挙げられる。
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗膜のレベリング性を向上させる成分である。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等)、フッ素系界面活性剤(アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系)等が挙げられる。
(水溶性有機溶媒)
水溶性有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、エステル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物、含硫黄化合物等が挙げられ、TiO膜形成用組成物を塗布した際の膜厚のムラが少なく、TiO膜にクラックが発生しにくい点から、アルコール類、グリコールエーテル類が好ましく、モノアルコール類(エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等)と、ジオール類(1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール等)またはグリコールエーテル類(エチレングリコールモノエチルエーテル等)との混合溶媒がより好ましい。
(他の添加剤)
本発明のTiO膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤(TiO以外の無機ナノ粒子、TiO以外の元素からなる前駆体等)を含んでいてもよい。
(組成)
TiO粒子の割合は、TiO粒子の質量とTiO前駆体の質量(TiO換算)との合計(100質量%)のうち、68〜92質量%であり、75〜92質量%が好ましく、80〜90質量%がより好ましい。TiO粒子の割合が68質量%以上であれば、膜厚を厚くしてもクラックが発生しにくいTiO膜を形成できる。TiO粒子の割合が68質量%以上であれば、クラックの発生を抑え、厚膜を得ることができる。また、TiO粒子の割合が92質量%以下であれば、TiO粒子がTiO膜の表面に析出することがなく、粉を噴いた状態とならない。また、結晶性のTiO粒子がアモルファスのTiOからなるマトリックスに分散した透明なTiO膜を得ることができる。
酸の割合は、TiO前駆体の質量(TiO換算)の100質量部に対して、1〜7質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。
界面活性剤を含む場合、界面活性剤の割合は、TiO膜形成用組成物(100質量%)のうち、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜1 質量%がより好ましい。
TiO膜形成用組成物の固形分(TiO粒子およびTiO前駆体)の濃度は、TiO膜の膜厚を厚くしやすい点、およびTiO膜形成用組成物を塗布しやすい点から、3〜15質量%が好ましく、6〜9質量%がより好ましい。
(TiO膜形成用組成物の製造方法)
TiO膜形成用組成物は、TiO粒子の水系分散液と、TiO前駆体とを、TiO粒子の割合が前記割合となるように配合することによって製造できる。
酸は、TiO粒子の水系分散液またはTiO前駆体にあらかじめ含ませておいてもよく、TiO粒子とTiO前駆体とを配合した後に配合してもよい。TiO前駆体に加えると加水分解するため、TiO粒子の水系分散液にあらかじめ含ませておくことが好ましい。
界面活性剤は、TiO粒子の水系分散液またはTiO前駆体にあらかじめ含ませておいてもよく、TiO粒子とTiO前駆体とを配合した後に配合してもよい。
水溶性有機溶媒は、TiO粒子の水系分散液またはTiO前駆体にあらかじめ含ませておいてもよく、TiO粒子とTiO前駆体とを配合した後に配合してもよい。ゲル化させることなくTiO前駆体を均一に加水分解させるために、TiO前駆体にあらかじめ配合することが好ましい。
他の添加剤は、TiO粒子の水系分散液またはTiO前駆体にあらかじめ含ませておいてもよく、TiO粒子とTiO前駆体とを配合した後に配合してもよい。
(作用効果)
以上説明した本発明のTiO膜形成用組成物にあっては、TiO粒子の割合が、TiO粒子の質量とTiO前駆体の質量(TiO換算)との合計(100質量%)のうち、68〜92質量%である、すなわちそれ自体が応力を発生させることがないTiO粒子が、TiO膜のマトリクスとなるTiO前駆体よりも過剰に配合されているため、TiO膜形成用組成物を硬化させてTiO膜を形成する際の収縮応力を低減できる。その結果、膜厚を厚くしてもクラックが発生しにくいTiO膜を形成できる。
また、以上説明した本発明のTiO膜形成用組成物にあっては、TiO粒子の割合が、TiO粒子の質量とTiO前駆体の質量(TiO換算)との合計(100質量%)のうち、68〜92質量%である、すなわちTiO粒子が、TiO膜のマトリクスとなるTiO前駆体よりも過剰に配合されているため、これを用いて形成されるTiO膜においては、TiO粒子間に空隙が形成されやすいと考えられる。そのため、結晶またはアモルファス状態のTiOが有する充分に小さいアッベ数を維持しつつ、屈折率を低減できる。その結果、ガラスよりもやや屈折率が高い高屈折率材料であって、かつアッベ数が充分に小さいTiO膜を形成できる。
<TiO膜付き物品>
本発明のTiO膜付き物品は、後述する本発明のTiO膜付き物品の製造方法によって得られたものであり、本発明のTiO膜形成用組成物を用いて形成されたTiO膜を基材の表面に有するものである。
本発明のTiO膜付き物品は、光学素子として有用である。光学素子としては、回折格子、レンズアレイ、フォトニック結晶等が挙げられる。回折格子としては、波長選択回折格子、光軸補正素子、曲線状のパターンによって光を集光し発散するホログラム回折格子、同心円状の回折パターンを有する収差補正素子等が挙げられる。回折パターンは、光の透過領域の一部に設けてもよい。一部に回折パターンを有するものとしては、回折パターンを外周のみに設けた開口制限素子等が挙げられる。
(基材)
基材は、本発明のTiO膜形成用組成物が塗布される、塗布対象物である。基材としては、透明基板、該透明基板の表面に機能性膜(反射防止膜、接着層等)、格子等が形成された部材等が挙げられる。
透明基板としては、ガラス基板、プラスチック基板(アクリル樹脂基板等)が挙げられ、TiO膜付き物品の信頼性を確保する点、およびTiO膜を形成する際の熱処理における耐熱性の点から、ガラス基板が好ましい。透明基板の表面形状は、本発明のTiO膜付き物品の生産性の点から、平面が好ましい。
(TiO膜)
TiO膜は、本発明のTiO膜形成用組成物を用いて形成された膜である。TiO膜は、連続した膜であってもよく、格子等の不連続の膜(パターニングで形成された膜)であってもよい。
TiO膜の膜厚は、500nm以上が好ましく、600nm以上がより好ましく、700nm以上がさらに好ましい。TiO膜の膜厚が500nm以上であれば、TiO膜を波長選択回折格子の格子として好適に用いることができる。
TiO膜の膜厚は、接触式膜厚計を用いて測定される。
TiO膜のヘイズは、膜厚1μmあたり、1%以下が好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。TiO膜のヘイズが1%以下であれば、光学部品として好適に用いることができる。
TiO膜の膜厚1μmあたりのヘイズは、基材の表面に形成されたTiO膜についてヘイズメータを用いてヘイズを測定し、該ヘイズを測定した箇所のTiO膜の膜厚で除した値である。
TiO膜の波長589nmの光に対する屈折率は、1.6〜1.7が好ましく、1.60〜1.66がより好ましく、1.61〜1.65がさらに好ましい。TiO膜の波長589nmの光に対する屈折率が該範囲内であれば、基材とTiO膜との界面における反射を抑えつつ、高屈折率材料からなる膜として光学素子を小型化、高効率化できる。
屈折率は、プリズムカプラを用いて測定される。30℃で波長404nm、633nmおよび791nmの屈折率を測定し、下式(III)で表されるCauchyの式を用いて特定の波長の光に対する屈折率を算出できる。
n(λ)=A+B/λ+C/λ ・・・(III)。
ただし、λは、光の波長であり、n(λ)は、波長λの光に対する屈折率であり、A、B、Cは、実験的に定められる定数である。
TiO膜のアッベ数は、10〜15が好ましく、10〜14がより好ましく、11〜14がさらに好ましい。TiO膜のアッベ数が該範囲内であれば、屈折率の波長分散性(屈折率の波長による変化)が大きくなり、波長選択回折格子における格子を形成する2つの材料の間で、回折させたい光の波長における屈折率差Δnを充分に大きくできる。
アッベ数は、下式(I)から算出される。
ν=(n−1)/(n−n) ・・・(I)。
ただし、νは、アッベ数であり、nは、波長589nmの光に対する屈折率であり、nは、波長486nmの光に対する屈折率であり、nは、波長656nmの光に対する屈折率である。
(波長選択回折格子)
図1は、本発明のTiO膜付き物品の一つである波長選択回折格子の一例を示す断面図である。
波長選択回折格子1は、第1の透明基板10と;第1の透明基板10の表面に形成された複数の凸条22からなる第1の格子20と;第1の格子20の凸条22間を埋める複数の凸条32ならびに該凸条32および第1の格子12を覆う平坦部34からなる第2の格子30と;第2の格子30の平坦部34を覆う第2の透明基板40とを有する。
第1の格子20および第2の格子30は、それぞれ光学的等方性材料で構成され、いずれか一方として本発明のTiO膜を適用できる。
第1の格子20に用いる材料および第2の格子30に用いる材料は、図2に示すように、屈折率の波長分散性がそれぞれ異なるように選択される。図2および後述する図3において、実線は波長分散性が相対的に大きい材料の屈折率を示し、破線は波長分散性が相対的に小さい材料の屈折率を示す。
図2の場合、λ=405nmの入射光に対しては、第1の格子20の材料と第2の格子30の材料との間に屈折率差があるため、図1に示すように回折(0次回折および±1次回折)が起きる。一方、λ=660nmおよびλ=780nmの入射光に対しては、第1の格子20の材料と第2の格子30の材料とでは屈折率がほとんど同じであるため、図1に示すように光は回折せずに透過する。
本発明のTiO膜は、波長分散性の大きな材料であるため、図2および後述する図3において、波長分散性の大きな方の材料(実線)として好適に用いることができる。その際、波長分散性の小さい材料については適宜選択すればよく、たとえば、SiO、Al、Y、ZrO、Ta、SiON等が挙げられる。波長分散性の小さい材料は、屈折率、波長分散性等を調節するために、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のTiO膜は、塗布によって形成される膜であるため、通常は、第2の格子30に適用される。この際、第1の格子20は、波長分散性の小さい材料を用いた公知の方法(フォトリソグラフィ法、金型もしくはガラス型を用いた2P法、インプリント法、射出成型法等)によって形成される。
第2の格子30が本発明のTiO膜からなる場合、TiO膜の膜厚は、図1中の符号tとなる。また、格子の高さ(深さ)は、凸条の高さ、すなわち図1中の符号dとなる。TiO膜の膜厚tの好ましい範囲は、上述した範囲と同様である。格子の高さ(深さ)dは、上述した式(II)の条件を満たすように、回折させたい光の波長、第1の格子20の材料の屈折率および第2の格子30の材料の屈折率に応じて適宜設定される。
なお、本発明のTiO膜付き物品の一つである波長選択回折格子は、図示例のものに限定はされない。
図示例においては、第1の格子20は凸条22のみから構成され、第2の格子30は凸条32および平坦部34から構成されているが、第2の格子30の平坦部34を省略してもよく、第1の格子20に平坦部を設けてもよい。
また、2つの透明基板のうちいずれか一方を省略してもよい。透明基板40は必ずしも必要ではなく、格子30の平坦部34がむき出しになっていても構わない。
さらに、透明基板を用いる場合は、透明基板の表面に反射防止膜が積層されていることが好ましい。反射防止膜はスパッタ等の公知の技術を用い積層することができる。
また、第1の格子20および第2の格子30は、図示例のバイナリ型に限定されず、ブレーズ型またはそれを階段状に近似した疑似ブレーズ型であってもよい。
また、一方の透明基板の内面側をエッチングやプレスによって凹凸形状に加工して凹凸部を形成し、該凹凸部に本発明のTiO膜を充填してもよい。
また、両方の透明基板の内面側にそれぞれ凹凸部を形成し、2つの透明基板の凹凸部の間に本発明のTiO膜を充填してもよい。この場合、2つの回折格子が積層された状態となるため、使用する波長ごとに異なる回折特性を持たせることができる。
また、第1の格子20に用いる材料および第2の格子30に用いる材料の屈折率の波長分散性は、図2の例に限定はされない。たとえば、第1の格子20に用いる材料および第2の格子30に用いる材料の屈折率の波長分散性が、図3に示すような関係を有する場合、λ=405nmの入射光に対しては透過し、λ=660nmやλ=780nmの入射光に対しては回折が起きる波長選択回折格子が得られる。
また、第1の格子20に用いる材料および第2の格子30に用いる材料の屈折率の波長分散性が、3以上の波長で少しずつ違った屈折率差を示すような関係を有していてもよい。また、第1の格子20に用いる材料および第2の格子30に用いる材料の一方の材料が、複屈折性を有する材料であってもよい。また、屈折率が一致する波長は、可視光線の領域での有無を含めて自由に選択してよい。
(TiO膜付き物品の製造方法)
本発明のTiO膜付き物品は、本発明のTiO膜形成用組成物を、基材の表面に塗布し、熱処理してTiO膜を形成することによって製造できる。
塗布方法としては、スプレーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、メニスカスコート法、ダイコート法等が挙げられる。
熱処理としては、本発明のTiO膜形成用組成物の塗膜を乾燥させた後、焼成する処理が好ましい。
乾燥温度は、50〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。乾燥時間は、0.1〜1時間が好ましい。
焼成温度は、200〜450℃が好ましく、300〜420℃がより好ましい。焼成時間は、0.1〜2時間が好ましい。
(波長選択回折格子の製造方法)
本発明のTiO膜付き物品の具体的な製造方法を、図示例の波長選択回折格子を例にとり説明する。
なお、以下の例においては、第2の格子30が本発明のTiO膜であり、第1の格子20が、TaSiO膜である。
まず、第1の透明基板10(ガラス基板)の表面に、SiOおよびTaからなるスパッタ膜を形成し、その後、ドライエッチング法によって格子状に加工して第1の格子20を形成する。
次いで、第1の格子20付き透明基板10(基材)の第1の格子20側の表面に、本発明のTiO膜形成用組成物を塗布し、熱処理して第2の格子30を形成する。必要に応じて、塗布および熱処理は複数回繰り返してもよい。必要に応じて、第2の格子30を研磨しても構わない。
(作用効果)
以上説明した本発明のTiO膜付き物品にあっては、本発明のTiO膜形成用組成物を用いて形成されたTiO膜を基材の表面に有するため、TiO膜の膜厚を厚くしてもクラックが発生しにくい。また、該TiO膜は、ガラスよりもやや屈折率が高く、かつアッベ数が充分に小さいため、基材とTiO膜との界面における反射を抑えつつ、高屈折率材料からなる膜としてTiO膜付き物品(光学素子)を小型化、高効率化できる。
本発明のTiO膜形成用組成物を用いて形成されたTiO膜は、波長589nmの光に対する屈折率が1.6〜1.7となり、かつアッベ数が10〜15となる。波長589nmの光に対する屈折率およびアッベ数が該範囲となるTiO膜は、新規な高屈折率材料であり、波長選択回折格子における高屈折率材料として好適となる。また、従来にはない屈折率およびアッベ数を有する材料が新たに提供されることによって、材料の選択肢が増え、各種光学素子の設計の自由度が高くなる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
例1〜7は実施例であり、例8〜10は比較例である。
(膜厚)
ガラス基板上のTiO膜の一部を、剃刀を用いて剥離させ、触針式膜厚計(Veeco社製、DEKTAK150)を用いて段差(膜厚)を測定した。
(屈折率)
例1〜6で得られたTiO膜付き物品のTiO膜上に、例1〜6のTiO膜形成用組成物をさらに重ね塗りすることによって、膜厚1μm以上のTiO膜を形成した。次いで、プリズムカプラ(Metricon社製、Model2010)を用い、ガラス基板上のTiO膜の波長404nm、633nmおよび791nmの光に対する屈折率を30℃にて測定した。さらに、前記式(III)を用いて、波長589nmの光に対する屈折率nを算出した。
(アッベ数)
さらに、前記式(III)を用いて、波長486nmの光に対する屈折率nと、波長656nmの光に対する屈折率nを算出した。次いで、前記式(I)を用いてアッベ数νを算出した。
(クラックの評価)
TiO膜の2mm×2mmの範囲を顕微鏡で確認し、視野中にクラックがなければ○、クラックが1個以上存在すれば×と評価した。
(ヘイズ)
ガラス基板上のTiO膜について、ヘイズメータ(東洋精機社製、商品名:ヘイズガードプラス)を用いてヘイズを測定し、該ヘイズを測定した箇所のTiO膜の膜厚で除して膜厚1μmあたりのヘイズを求めた。
(TiO粒子の水系分散液)
TiO粒子(a−1)の水系分散液:堺化学社製、商品名:SAD−01W、平均一次粒子径:約5nm、平均凝集粒子径:5nm、TiO含有量:15.0質量%、分散媒:水、比重:1.15。
TiO粒子(a−2)の水系分散液:石原産業社製、商品名STS−01、平均一次粒径:約7nm、平均凝集粒子径:100nm、TiO含有量:30.5質量%、分散媒:水、比重:1.33。
(TiO前駆体)
TiO前駆体(b−1):関東化学社製、商品名:チタニウムテトラ−n−ブトキシド、モノマー、濃度:100質量%。
TiO前駆体(b−2)の溶液:日本曹達社製、商品名:B−10、チタニウムテトラ−n−ブトキシドのオリゴマー、分子量:2086、nの平均値:約10、濃度:96質量%、溶媒:n−ブタノール。
(界面活性剤)
界面活性剤(c−1):ビックケミージャパン社製、商品名:BYK331、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン。
〔例1〕
室温下、マグネチックスターラで撹拌しながら、200mgのTiO前駆体(b−2)の溶液に1.8mLのエタノール、7.2mLの1,2−ブタンジオール、3.6mLのTiO粒子(a−1)の水系分散液を加えた。該溶液を40℃で16時間撹拌した後、6μLの界面活性剤(c−1)を加えた。得られた溶液を孔径5μmのシリンジフィルタでろ過し、TiO膜形成用組成物を得た。このときの固形分濃度は7.0質量%であった。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成して、ガラス基板上にTiO膜を形成し、TiO膜付き物品を得た。TiO膜の膜厚、屈折率、アッベ数、ヘイズを測定した。結果を表1に示す。
〔例2〕
室温下、マグネチックスターラで撹拌しながら、200mgのTiO前駆体(b−2)の溶液に1.6mLのエタノール、6.5mLの1,2−ブタンジオール、0.9mLのTiO粒子(a−1)の水系分散液を加えた。該溶液を40℃で16時間撹拌した後、6μLの界面活性剤(c−1)を加えた。得られた溶液を孔径5μmのシリンジフィルタでろ過し、TiO膜形成用組成物を得た。このときの固形分濃度は7.2質量%であった。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成して、ガラス基板上にTiO膜を形成し、TiO膜付き物品を得た。TiO膜の膜厚、屈折率、アッベ数、ヘイズを測定した。結果を表1に示す。
〔例3〕
室温下、マグネチックスターラで撹拌しながら、320mgのTiO前駆体(b−1)に1.8mLのエタノール、7.2mLの1,2−ブタンジオール、3.6mLのTiO粒子(a−1)の水系分散液を加えた。該溶液を40℃で16時間撹拌した後、6μLの界面活性剤(c−1)を加えた。得られた溶液を孔径5μmのシリンジフィルタでろ過し、TiO膜形成用組成物を得た。このときの固形分濃度は7.1質量%であった。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成して、ガラス基板上にTiO膜を形成し、TiO膜付き物品を得た。TiO膜の膜厚、屈折率、アッベ数、ヘイズを測定した。結果を表1に示す。
〔例4〕
室温下、マグネチックスターラで撹拌しながら、320mgのTiO前駆体(b−1)に1.6mLのエタノール、6.5mLの1,2−ブタンジオール、0.9mLのTiO粒子(a−1)の水系分散液を加えた。該溶液を40℃で16時間撹拌した後、6μLの界面活性剤(c−1)を加えた。得られた溶液を孔径5μmのシリンジフィルタでろ過し、TiO膜形成用組成物を得た。このときの固形分濃度は7.2質量%であった。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成して、ガラス基板上にTiO膜を形成し、TiO膜付き物品を得た。TiO膜の膜厚、屈折率、アッベ数、ヘイズを測定した。結果を表1に示す。
〔例5〕
例1における1,2−ブタンジオールの替わりにエチレングリコールを用い、TiO膜形成用組成物を得た。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成して、ガラス基板上にTiO膜を形成し、TiO膜付き物品を得た。TiO膜の膜厚、屈折率、アッベ数、ヘイズを測定した。結果を表1に示す。
〔例6〕
例1における1,2−ブタンジオールの替わりにエチレングリコールモノエチルエーテルを用い、TiO膜形成用組成物を得た。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成して、ガラス基板上にTiO膜を形成し、TiO膜付き物品を得た。TiO膜の膜厚、屈折率、アッベ数、ヘイズを測定した。結果を表1に示す。
〔例7〕
例1で得られたTiO膜付き物品のTiO膜の表面に、例1のTiO膜形成用組成物の2mLを滴下し、700rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成した。該工程を9回繰り返し、膜厚5μmのTiO膜を形成した。
〔例8〕
室温下、マグネチックスターラで撹拌しながら、200mgのTiO前駆体(b−2)の溶液に1.8mLのエタノール、7.2mLの1,2−ブタンジオール、0.6mLのTiO粒子(a−1)の水系分散液を加えた。該溶液を40℃で16時間撹拌した後、6μLの界面活性剤(c−1)を加えた。得られた溶液を孔径5μmのシリンジフィルタでろ過し、TiO膜形成用組成物を得た。このときの固形分濃度は4.9質量%であった。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成したところ、TiO膜にクラックが発生した。
〔例9〕
室温下、マグネチックスターラで撹拌しながら、320mgのTiO前駆体(b−1)に1.8mLのエタノール、7.2mLの1,2−ブタンジオール、0.4mLのTiO粒子(a−1)の水系分散液を加えた。該溶液を40℃で16時間撹拌した後、6μLの界面活性剤(c−1)を加えた。得られた溶液を孔径5μmのシリンジフィルタでろ過し、TiO膜形成用組成物を得た。このときの固形分濃度は5.6質量%であった。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成したところ、TiO膜にクラックが発生した。
〔例10〕
室温下、マグネチックスターラで撹拌しながら、200mgのTiO前駆体(b−2)の溶液に1.6mLのエタノール、6.5mLの1,2−ブタンジオール、0.4mLのTiO粒子(a−2)の水系分散液を加えた。該溶液を40℃で16時間撹拌した後、6μLの界面活性剤(c−1)を加えた。得られた溶液を孔径5μmのシリンジフィルタでろ過し、TiO膜形成用組成物を得た。このときの固形分濃度は4.9質量%であった。1mLのTiO膜形成用組成物を6cm×6cmのガラス基板の表面に500rpmでスピンコートし、100℃で1時間乾燥し、次いで400℃で1時間焼成して、ガラス基板上にTiO膜を形成し、TiO膜付き物品を得た。TiO膜の膜厚、ヘイズを測定した。結果を表1に示す。
Figure 2013155066
本発明のTiO膜形成用組成物を用いた例1〜6においては、透明性を維持したまま、クラックのない、膜厚が500nm以上のTiO膜を形成できた。また、屈折率およびアッベ数が、1.6≦n≦1.7かつ10≦ν≦15を満たしていた。
本発明のTiO膜形成用組成物を用いることによって、クラックのない膜厚が500nm以上のTiO膜が形成される。該TiO膜は、従来の材料にはない屈折率と、屈折率の波長分散性との関係を示す。該TiO膜を有する物品は、光学素子、たとえば、回折格子、光軸補正素子等として有用である。また、該TiO膜を有する物品は、青色レーザ光に対する耐性が要求される分野に好適に利用できる。
1 波長選択回折格子
10 第1の透明基板
20 第1の格子
22 凸条
30 第2の格子
32 凸条
34 平坦部
40 第2の透明基板
d 格子の高さ(深さ)
t 膜厚

Claims (12)

  1. 平均凝集粒子径が1〜50nmであるTiO粒子の水系分散液と、
    Ti(OR)(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)およびそのオリゴマーのいずれか一方または両方からなるTiO前駆体とを、
    前記TiO粒子の割合が、前記TiO粒子の質量と前記TiO前駆体の質量(TiO換算)との合計(100質量%)のうち、68〜92質量%となるように配合してなり、かつ
    酸を含む、TiO膜形成用組成物。
  2. 界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載のTiO膜形成用組成物。
  3. 水溶性有機溶媒をさらに含む、請求項1または2に記載のTiO膜形成用組成物。
  4. 平均凝集粒子径が1〜50nmであるTiO粒子の水系分散液と、
    Ti(OR)(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)およびそのオリゴマーのいずれか一方または両方からなるTiO前駆体とを、
    前記TiO粒子の割合が、前記TiO粒子の質量と前記TiO前駆体の質量(TiO換算)との合計(100質量%)のうち、68〜92質量%となるように酸の存在下に配合する、または
    前記TiO粒子と前記TiO前駆体とを前記割合となるように配合した後に酸をさらに配合する、TiO膜形成用組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のTiO膜形成用組成物を、基材の表面に塗布し、熱処理してTiO膜を形成する、TiO膜付き物品の製造方法。
  6. 1回の塗布によって膜厚が500nm以上のTiO膜を形成する、請求項5に記載のTiO膜付き物品の製造方法。
  7. 前記塗布および熱処理を、複数回繰り返す、請求項5または6に記載のTiO膜付き物品の製造方法。
  8. 請求項5〜7のいずれか一項に記載のTiO膜付き物品の製造方法によって得られた、TiO膜付き物品。
  9. 前記TiO膜のヘイズが、膜厚1μmあたり、1%以下である、請求項8に記載のTiO膜付き物品。
  10. 波長選択回折格子である、請求項8または9に記載のTiO膜付き物品。
  11. 波長589nmの光に対する屈折率が、1.6〜1.7であり、
    下式(I)から求めたアッベ数が、10〜15である、TiO膜。
    ν=(n−1)/(n−n) ・・・(I)。
    ただし、νは、アッベ数であり、nは、波長589nmの光に対する屈折率であり、nは、波長486nmの光に対する屈折率であり、nは、波長656nmの光に対する屈折率である。
  12. 膜厚が、500nm以上である、請求項11に記載のTiO膜。
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