JP2013154433A - ロボット - Google Patents
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Abstract
【課題】ロボットの構成部材に温度センサを取り付けることなく、正確な温度補正を行える構造を実現する。
【解決手段】入力エネルギ算出部61により減速機12に入力される入力エネルギを算出し、出力エネルギ算出部62により減速機12から出力される出力エネルギを算出する。次いで、伝達効率算出部63で、入力エネルギと出力エネルギとの比である減速機12の伝達効率を算出し、この伝達効率から減速機の温度を算出する。そして、減速機12の温度からロボットの構成部材の熱変形量を算出し、温度補正を行う。
【選択図】図3
【解決手段】入力エネルギ算出部61により減速機12に入力される入力エネルギを算出し、出力エネルギ算出部62により減速機12から出力される出力エネルギを算出する。次いで、伝達効率算出部63で、入力エネルギと出力エネルギとの比である減速機12の伝達効率を算出し、この伝達効率から減速機の温度を算出する。そして、減速機12の温度からロボットの構成部材の熱変形量を算出し、温度補正を行う。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えば、産業用ロボットなど、モータの回転を減速機により減速して駆動するロボットに関する。
製品を製造する場合において、部品の搬送、組立や塗装などに多くのロボットを使用している。ロボットとしては、垂直多関節型、スカラー型、直交座標型等、様々な方式がある。ロボットの動力源としてはモータが使用されており、このモータの発熱によってロボットが温度上昇する。また、ロボットにはベルトや軸受等の機構部品があり、これらの摩擦でも温度上昇する。温度上昇が起きれば、ロボットの構成部材の寸法が変化して位置決め精度が低下する。
例えば、ロボットアームなどの産業用ロボットでは、アームにより把持した可搬物を正確に目標位置に移動することが求められる。即ち、高い位置決め精度が求められる。但し、ロボットの運転を開始すると、モータやブレーキ等の発熱や、駆動機構や関節の摩擦など、様々な要因でロボット自身が発熱する。そして、発熱により温度上昇が起こり、アームの構造体やベルトの長さ等が徐々に変化して、位置決め位置が徐々に変化していく。このため、高い位置決め精度が要求される場合には、所定時間のロボットの暖機運転が必要となり、生産性の低下を招いていた。
このような事情に鑑み、従来、位置決め精度の温度補正のために、ロボット自体或いは外部に別途温度センサを設けた構造が知られている。例えば、特許文献1には、アームの温度を測定する温度センサを設ける構成が開示されている(特許文献1)。特許文献1に記載された技術では、制御部が所定の基準温度におけるアームの寸法(長さL1,L2等)と、温度センサによって測定されるアームの温度とに基づいて、アームの駆動に使用する制御データを補正する。そして、温度変化によって作業具の位置制御に誤差が出ないようにしている。
また、特許文献2には、周囲温度を検出する温度センサを設け、その温度センサによる周囲温度を教示JOB毎に記憶し、この周囲温度と再生時の周囲温度との差により再生位置を補正する方法が開示されている。
特許文献3には、ロボットの温度を検出する温度検出器によってアーム長を演算し補正する構成が開示されている。
特許文献4には、温度検出器と温度変化によるアーム歪みを蓄積する記憶部により誤差補正する位置補正装置が開示さている。
特許文献5には、温度検出手段を設け、その検出温度から各アームの現在長を求める。教示された位置データと各アームの現在長とに基づいて各軸の移動量を算出し、各軸を駆動するようにした産業用ロボットの位置補正方式が開示されている。更に、各軸サーボモータの2乗電流平均値を各々所定周期毎検出し、各軸の移動量へ反映させて各軸を駆動するようにした位置補正方式も述べられている。
特許文献6にはモーターエンコーダに設けた温度センサを用いた温度補正する方法が開示されている。
上述したような従来技術の場合、以下のような問題がある。即ち、一つ或いは複数の温度センサをロボットの構成部材に取り付ける構成(特にロボット内部に温度検出器を設ける構成)の場合、その検出器、処理回路、及び配線スペースが必要となり、ロボットの小型化に向かない。また、温度センサとその配線のコストが発生し、メンテナンス性が良くない。
また、モータのエンコーダに設けられている温度センサを利用する構成の場合、温度変化でアーム長に最も影響するアーム筐体部分との温度勾配が大きいので、温度検出精度が低い。また、各軸サーボモータの2乗電流平均値から温度補正する構成の場合、サーボモータ温度とロボット構造体に温度差が生じ易い、したがって、いずれの構成の場合も、正確な温度補正を行いにくい。
本発明は、このような事情に鑑み、ロボットの構成部材に温度センサを取り付けることなく、正確な温度補正を行える構造を実現すべく発明したものである。
本発明は、モータと、前記モータの駆動により移動する移動部材と、潤滑剤が封入され、前記モータの回転を減速して前記移動部材に伝達する減速機と、前記減速機に入力される入力エネルギを算出する入力エネルギ算出手段と、前記減速機から出力される出力エネルギを算出する出力エネルギ算出手段と、前記入力エネルギ算出手段により算出した入力エネルギと前記出力エネルギ算出手段により算出した出力エネルギとの比である前記減速機の伝達効率から、前記減速機の温度を算出する減速機温度算出手段と、前記減速機温度算出手段により算出した前記減速機の温度から、ロボットを構成する構成部材の熱変形量を算出し、算出した前記構成部材の熱変形量から、前記移動部材を移動させる目標位置を算出して、前記移動部材を移動させる軌道を生成する軌道生成手段と、前記軌道生成手段により生成された軌道に沿って、前記移動部材を移動させるように前記モータを制御する制御部と、を備えた、ことを特徴とするロボットにある。
本発明によれば、ロボットの構成部材との温度差が小さい減速機の伝達効率から減速機の温度を算出し、この温度に基づいて温度補正を行うため、ロボットの構成部材に温度センサを取り付けることなく、正確な温度補正を行える。
<ロボットの1例>
本発明の対象となるロボットの1例の概略構成について、図1を用いて説明する。ロボット100は、移動部材であるロボットアーム201を駆動する複数の駆動源であるモータ202〜206と、これら各モータ202〜206を制御する制御装置101とを備える。これら各モータ202〜206は、ロボットアーム201の各関節部分などのロボットの駆動部分に配置される。
本発明の対象となるロボットの1例の概略構成について、図1を用いて説明する。ロボット100は、移動部材であるロボットアーム201を駆動する複数の駆動源であるモータ202〜206と、これら各モータ202〜206を制御する制御装置101とを備える。これら各モータ202〜206は、ロボットアーム201の各関節部分などのロボットの駆動部分に配置される。
即ち、モータ202は、ロボットアーム201全体を架台207に対して旋回させる。モータ203は、第1アーム部201aを架台207に対して図の上下方向に回動させる。モータ204は、第2アーム部201bを第1アーム部201aに対して回動させる。モータ205は、第3アーム部201cを第2アーム部201bに対して回動させる。モータ206は、第3アーム部201cの先端部分を基端部分に対して回動させる。これらロボットアーム201全体、第1ないし第3アーム部201aないし201c、第3アーム部の先端部分が、それぞれモータの駆動により移動する移動部材に相当する。
このように構成されるロボット100は、例えば、棒状のワークW1を円柱状のワークW2に形成された孔に挿入する作業を次のように行う。まず、ユーザがこのような指示を入力すると、制御装置101がロボットアーム201の手先の軌道を計算する。そして、各モータ202〜206を駆動し、ロボットアーム201が動作して、ワークW1を円柱状のワークW2に形成された孔に挿入する。
このようなロボットの駆動部分は、一般的にベルトやプーリ、ギア、減速機等の伝達機構により構成されている。産業ロボットの減速機には小型軽量で高減速比が可能な波動歯車減速機が多く用いられている。本発明では、特に波動歯車減速機のような減速機を備えたロボットで、発熱によるロボットの構成部材(アームの構造体やベルト)の熱変形があっても位置決め精度を確保するものである。なお、ロボットの方式は、垂直多関節型、スカラー型、直交座標型等、何れの方式でも適用可能である。
<第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態について、図2ないし図4を用いて説明する。なお、図2の例は、ロボットの駆動部分として、第1から第3の関節を持つ3自由度のロボットの形態で説明するが、ロボットの自由度は3に限るものではない。また、駆動部分は、関節に限らず、例えば図1のモータ202で旋回する部分、その他、モータにより移動部材を直動させる部分やワークを掴む動作をする部分などが相当する。
次に、本発明の第1の実施形態について、図2ないし図4を用いて説明する。なお、図2の例は、ロボットの駆動部分として、第1から第3の関節を持つ3自由度のロボットの形態で説明するが、ロボットの自由度は3に限るものではない。また、駆動部分は、関節に限らず、例えば図1のモータ202で旋回する部分、その他、モータにより移動部材を直動させる部分やワークを掴む動作をする部分などが相当する。
図2において、1はロボットを制御する制御装置である。制御装置1は、指令生成部2、IF部3および、サーボ制御部4を備えている。指令生成部2は、例えばロボットによりワークを目標位置に移動させる場合などに、各モータにより移動させる各移動部材のそれぞれの目標位置や軌道、移動速度などを作成し、IF部3を介してサーボ制御部4に渡す。サーボ制御部4は、指令を元に各軸の関節の制御量、即ち、モータの駆動量を算出し、ロボット本体5を制御する。
ロボット本体5は、複数の回転制御、或いは直動可能な駆動部分である関節から構成される。10は第1の関節、11はサーボ制御部4により算出した駆動量に基づく駆動回路からの駆動電流に比例したトルクを発生するモータである。12はモータ11からのトルクを伝達効率E1で増幅する減速機であり、本実施形態では波動歯車減速機である。
13は減速機12で増幅されたトルクを回転支持する軸受部や駆動力を他の関節に伝達するフレーム(アーム部)等の関節機構であり、移動部材に相当する。即ち、減速機12の出力側に配置された部材である。したがって、モータ11の回転は、減速機12で減速されて移動部材である関節機構13に伝達される。本実施形態では、減速機12は、潤滑剤であるグリスが封入されている。同様に第2の関節20と第3の関節30にもモータ21、31、減速機22、32、関節機構23、33がそれぞれ備わる。
本実施形態では、上述の制御装置1とロボット本体5によりロボットを構成する。ここで、制御装置1は、図1の制御装置101に、ロボット本体5は図1のロボットアーム201にそれぞれ相当する。本実施形態の場合、従来構造と異なり、温度補正用の温度センサを設けることなく、ロボットの温度算出を行って位置決め精度の温度補正を行う。このために、減速機の温度を算出し、この温度を利用するようにしている。以下、この点について説明する。
図3は、第1の関節10で温度検出を行う場合を説明するブロック図である。なお、第2の関節20、第3の関節30で行う場合も同様である。第1の関節10は、モータ11に接続した回転速度検出手段であるエンコーダ14を有する。エンコーダ14は、モータ11の回転軸の回転角度、或いは回転速度に対応した信号を発生する。15は、制御部であるPIDコントローラ16の指令によって、モータ11を駆動する電流ドライバである。PIDコントローラ16は、後述する軌道生成部65の信号とエンコーダ14の信号との差分を演算し、適切なゲイン、積分特性、微分特性を発生する関節のコントローラである。
61は減速機12への入力エネルギを算出する入力エネルギ算出部(入力エネルギ算出部)である。入力エネルギは、モータ11から減速機12に入力される入力トルクと、エンコーダ14から角速度(回転速度)を求めて積を演算すれば算出できる。減速機12への入力トルクは、トルクセンサ等で構成する入力トルク検出手段であるモータトルク検出部66で検出する。なお、モータ11に電流フィードバック等が施され、電流値とトルクの関係が既知であれば、電流ドライバ15でのモータ11の電流値をトルク換算した換算値で代用し、入力エネルギ算出部61へ入力してもよい。
62は減速機12から出力される機械的なエネルギを算出する出力エネルギ算出部(出力エネルギ算出手段)である。出力エネルギ算出部62は、関節機構13の自重、関節機構13により搬送する搬送物の重さ、関節機構13の移動軌跡、関節機構13の移動速度および加速度から、減速機12の出力エネルギを算出する。ロボットは予め決められた軌跡を運動するので、その際の運動エネルギや位置エネルギ等により減速機12の出力エネルギを求めることができる。ここで、関節機構13により搬送する搬送物の重さとは、例えば、ロボットアームの場合、関節機構13よりも先端側のアーム部や関節機構などのロボットの構成部材とアームにより把持するワークとを含む。
63は減速機12の伝達効率算出を行う伝達効率演算部である。減速機12の伝達効率E1は、出力エネルギ算出部62で求めた出力エネルギを、入力エネルギ算出部61で求めた入力エネルギで割ることにより求める。即ち、減速機12の伝達効率は、入力エネルギと出力エネルギとの比である。
64は減速機12の温度算出を行う減速機温度算出部(減速機温度算出手段)である。減速機12の伝達効率は温度によって異なる。逆に効率が求まると従属的に温度が求まる。ここで、減速機12は軸受や内部の摩擦等により、所定の伝達効率Eをもつ。また、減速機12内にはグリス等の潤滑材が封入されている。減速機12に封入されているグリス等の潤滑剤は、粘度が温度で変化し、攪拌抵抗が変化する。したがって、減速機12の伝達効率Eは温度によって変化する。逆に、減速機12の伝達効率Eが分かれば、減速機12の温度算出が可能になる。特にこの伝達効率Eの変化率が大きいのが、本実施形態の減速機である波動歯車減速機である。
この効率と温度の関係は、例えば、株式会社ハーモニックドライブシステムズのハーモニックドライブ(登録商標)のカタログや技術資料からも読み取れるが、予め、実験的に求めてもよい。
65は関節機構13を移動させる軌道を生成する軌道生成手段である軌道生成部である。軌道生成部65は、減速機温度算出部64で求めた減速機12の温度から、ロボットを構成する構成部材の熱変形量を算出する。そして、算出した構成部材の熱変形量から、関節機構13を移動させる目標位置を算出して、関節機構を移動させる軌道を生成する。例えば、予め定められた軌道に対し、構成部材の熱変形量から関節機構13の関節角度を補正するなどして軌道を補正する。
ここで、ロボットを構成する構成部材とは、アーム部やベルトなど温度補正で考慮すべきロボットの構成部材を指す。また、軌道生成部65は、第2の関節20、第3の関節30についても軌道を補正するが、その温度補正を行うための温度は、第1の関節10の減速機の伝達効率から求めた温度を使用するようにしても良い。或いは、それぞれの関節の減速機の伝達効率を算出し、それぞれ温度を求めるようにして良い。この場合、構成部材の熱変形量は、その構成部材に近い減速機の温度から求めるようにしても良いし、各減速機の温度の平均値から温度補正の対象となる構成部材全ての熱変形量を求めるようにしても良い。
一般的に、アルミ合金や鉄鋼等の物質は温度上昇によって膨張し、この膨張の割合として物質固有の熱膨張率がある。熱膨張率は、温度の上昇によって物体の長さ・体積が膨張する割合を単位温度当たりで示したものである。温度の上昇に対応して長さが変化する割合を線膨張率といい、体積の変化する割合を体積膨張率という。線膨張率をαとすれば、物質の熱による伸びは以下の関係式となる。
ΔL=α・L・ΔT(ΔL:伸び、L:物体の長さ、ΔT:温度上昇)
ΔL=α・L・ΔT(ΔL:伸び、L:物体の長さ、ΔT:温度上昇)
よって、ロボットの温度が分かれば、ロボットの膨張長さが算出できる。本実施形態では、減速機の伝達効率から減速機の温度を算出し、この減速機の温度をロボットの温度としている。そして、ロボットの構成部材の熱変形量を求め、ロボット軌道を補正するようにしている。
このような本実施形態の温度補正の制御の流れについて、図4を用いて説明する。ロボットに対する移動命令を開始すると(S1)、減速機の伝達効率から減速機の温度を算出する(S2)。次に、算出した減速機の温度に対応した熱膨張から、軌道の補正量を求め(S3)、求められた補正量を目標位置へ付加し、新たな目標位置とする(S4)。最後に、軌道生成処理を行い、ロボットは生成された軌道に従って移動する(S5)。なお、上記のS1〜S5の処理は図2における指令生成部2が行うものである。
本実施形態によれば、ロボットの構成部材との温度差が小さい減速機の伝達効率から減速機の温度を算出し、この温度に基づいて温度補正を行うため、ロボットの構成部材に温度センサを取り付けることなく、正確な温度補正を行える。例えば、従来構造のようにエンコーダやモータなどの温度を検出した場合と比較すると、減速機はこれらよりも構成部材の近くに配置されるものである。したがって、減速機の温度を算出することにより、構成部材の熱変形量をより正確に求めることができ、温度補正を正確に行える。特に波動歯車減速機の場合、減速機の主要部品をボルトでロボット移動部材に直接取り付け、且つ、移動部材と減速機の間はグリス等の潤滑材で満たされているので、より正確に温度を算出できる。
また、ロボットへの温度検出器の実装が不要となり、温度検出器、処理回路、配線が不要となり、コストが安い温度補正が可能になる。また、高精度を必要とする事前の暖機運転が不要になり、生産性が向上する。
なお、上記で求める減速機の伝達効率は温度と関連して変化することを述べた。この要因として減速機に封入されているグリス等の粘度が温度で変化し、攪拌抵抗も変化し効率が変わる。言い換えれば、グリス等の潤滑剤の温度を測ることと等しい。よって、熱モデルを作成する場合、減速機のグリス等の潤滑剤を封入した部分の温度を一定温度とすれば計算時間が短縮できる。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図5及び図6を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、減速機の温度算出をすることでロボットの構成部材の熱変形分の補正を行っていた。減速機近傍の温度は第1の実施形態の算出方法で略正確に知ることができる。しかしながら、アームなどのロボットの構成部材が置かれている環境温度が異なると、第1の実施形態では温度補正の精度を十分に高くできない。即ち、構成部材のうち、温度算出できる減速機近傍から離れた部分との誤差が大きくなる。そこで、本実施形態では、ロボットの周囲の空気の温度と、ロボットの取付架台の温度との少なくとも何れかの温度を検出する周囲温度検出手段を有する。そして、指令生成部2内の軌道生成部は、周囲温度検出手段により検出した周囲温度と、減速機温度算出部により算出した減速機の温度とから、ロボットの構成部材の熱変形量を算出する。
本発明の第2の実施形態について、図5及び図6を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、減速機の温度算出をすることでロボットの構成部材の熱変形分の補正を行っていた。減速機近傍の温度は第1の実施形態の算出方法で略正確に知ることができる。しかしながら、アームなどのロボットの構成部材が置かれている環境温度が異なると、第1の実施形態では温度補正の精度を十分に高くできない。即ち、構成部材のうち、温度算出できる減速機近傍から離れた部分との誤差が大きくなる。そこで、本実施形態では、ロボットの周囲の空気の温度と、ロボットの取付架台の温度との少なくとも何れかの温度を検出する周囲温度検出手段を有する。そして、指令生成部2内の軌道生成部は、周囲温度検出手段により検出した周囲温度と、減速機温度算出部により算出した減速機の温度とから、ロボットの構成部材の熱変形量を算出する。
一般に物質の温度は発熱と放熱のバランスで決まる。正確に温度算出するためには、放熱側の環境温度や物性値を知る必要がある。環境温度としては、ロボット周囲の温度と、ロボットを設置している架台(例えば図1の207)の温度が主である。そこで、本実施形態では、この環境温度の一方或いは両方の温度を測定する温度検出器、即ち環境温度検出手段を設けている。
図5は本実施形態の全体ブロック図であり、71と72は環境温度検出手段である。71はロボットの周囲(例えばロボットアームの場合はアームの回り)の空気温度を測定する空気温度検出器である。また72はロボットが設置されている架台の温度を測定する架台温度検出器である。空気温度検出器71は、ロボットが配置される固定の部分に支持され、ロボットに直接配置されてはいない。また、架台温度検出器72は、架台に設けられている。
それぞれの温度検出器71、72で検出された信号は、制御装置1の指令生成部2に送られる。具体的には、図3に示した軌道生成部65に送られる。軌道生成部65では、減速機の温度と温度検出器71、72で検出した温度とから、ロボットの構成部材の熱変形量を算出し、各関節機構の軌道を補正する。例えば、架台に近い構成部材は、減速機の温度と架台温度検出器72により検出温度に基づいて熱変形量を求め、それ以外の構成部材については、減速機の温度と空気温度検出器71により検出温度に基づいて熱変形量を求める。
図6はこのような軌道補正の制御のフローチャートである。第1の実施形態の図4に示したフローチャートとの差異はS13である。S13は、減速機温度に対応した熱膨張と環境温度から、ロボットの構成部材の熱変形量を算出し熱変形補正量を求める。予め環境温度と減速機温度と構成部材の熱変形との関係を実験的に、或いは解析的に求めておけば、より精度が向上する。
本実施形態によれば、ロボット周辺の環境温度が変化しても正確に熱変形が算出でき、ロボットの位置決めを精度良く行うことができる。例えば、特許文献2には、周囲温度センサを用いて教示時と再生時の補正する手段が開示されている。しかしながら、ロボットアームは運転開始後から時々刻々、温度変化している。特に運転開始直後、ロボットは温度変化率が大きくて特許文献2の構成での補正では不十分なことが多い。これに対して本実施形態の場合には、このような温度変化に対しても十分な補正が可能である。また、本実施形態の場合、温度検出器71、72は、ロボットの構成部材に設けていないため、構成部材への温度検出器の実装を実装する必要がない、このため、処理回路や配線を構成部材に設ける必要がなく、コストアップを抑えられる。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
減速機の効率を利用して温度算出して補正することができるので、ロボット全般に適用できる。特に波動歯車減速機を使用するロボットに有効である。
1、101・・・制御装置、5、100・・・ロボット、11、21、31、202、203、204、205、206・・・モータ、12、22、32・・・減速機、13、23、33・・・関節機構部(移動部材)、16・・・PIDコントローラ(制御部)、61・・・入力エネルギ算出部(入力エネルギ算出手段)、62・・・出力エネルギ算出部(出力エネルギ算出手段)、63・・・伝達効率算出部、64・・・減速機温度算出部(減速機温度算出手段)、65・・・軌道生成部(軌道生成手段)、66・・・モータトルク検出部(入力トルク検出手段)71・・・空気温度検出器(周囲温度検出手段)、72・・・架台温度検出器(周囲温度検出手段)
Claims (7)
- モータと、
前記モータの駆動により移動する移動部材と、
潤滑剤が封入され、前記モータの回転を減速して前記移動部材に伝達する減速機と、
前記減速機に入力される入力エネルギを算出する入力エネルギ算出手段と、
前記減速機から出力される出力エネルギを算出する出力エネルギ算出手段と、
前記入力エネルギ算出手段により算出した入力エネルギと前記出力エネルギ算出手段により算出した出力エネルギとの比である前記減速機の伝達効率から、前記減速機の温度を算出する減速機温度算出手段と、
前記減速機温度算出手段により算出した前記減速機の温度から、ロボットを構成する構成部材の熱変形量を算出し、算出した前記構成部材の熱変形量から、前記移動部材を移動させる目標位置を算出して、前記移動部材を移動させる軌道を生成する軌道生成手段と、
前記軌道生成手段により生成された軌道に沿って、前記移動部材を移動させるように前記モータを制御する制御部と、を備えた、
ことを特徴とするロボット。 - 前記入力エネルギ算出手段は、前記減速機に入力される前記モータのトルクを検出する入力トルク検出手段と、前記モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、を有し、前記入力トルク検出手段により検出したトルクと前記回転速度検出手段により検出した回転速度とから前記減速機に入力される入力エネルギを算出する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のロボット。 - 前記入力トルク検出手段は、前記モータの電流値から換算することにより前記モータのトルクを検出する、
ことを特徴とする、請求項2に記載のロボット。 - 前記出力エネルギ算出手段は、前記移動部材の自重、前記移動部材により搬送する搬送物の重さ、前記移動部材の移動軌跡、前記移動部材の移動速度及び加速度から、前記減速機の出力エネルギを算出する、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載のロボット。 - ロボットの周囲の空気の温度と、ロボットの取付架台の温度との少なくとも何れかの温度を検出する周囲温度検出手段を有し、
前記軌道生成手段は、前記周囲温度検出手段により検出した周囲温度と、前記減速機温度算出手段により算出した前記減速機の温度とから、前記構成部材の熱変形量を算出する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載のロボット。 - 前記減速機温度算出手段は、前記減速機の潤滑剤を封入した部分の温度を一定として、前記減速機の温度を算出する、
ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載のロボット。 - 前記減速機は、波動歯車減速機である、
ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載のロボット。
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