JP2013152449A - 振動素子および光走査装置ならびにこれを用いた画像形成装置および画像投影装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学ミラーを高速で往復振動させた場合でも、動的撓みを確実に防止する振動素子を提供する。
【解決手段】トーションバー31となる線材の一部を加工して櫂型の平面形状部51を形成する。次に、平面形状部51へ光学ミラーを設ける。このとき、トーションバー部と平面形状部のヤング率は同等または平面形状部のヤング率の方が大きい構成とする。
【選択図】図5
【解決手段】トーションバー31となる線材の一部を加工して櫂型の平面形状部51を形成する。次に、平面形状部51へ光学ミラーを設ける。このとき、トーションバー部と平面形状部のヤング率は同等または平面形状部のヤング率の方が大きい構成とする。
【選択図】図5
Description
本発明は、振動素子および光走査装置ならびにこれを用いた画像形成装置および画像投影装置に関する。
振動素子は、光源からの光を走査する手段として光走査装置において使用されることがある。一般に、光走査装置は、トーションバー、光学ミラー及び磁石からなる振動系の共振を利用して、小さな電力で大きな振幅の光走査を行う。
特許文献1に記載の振動素子は、光学ミラーの保持部に切欠を設け、当該切欠にトーションバーを圧入することで、製作されている。磁石は、接着剤で固定されている。
特許文献1の振動素子では、光を走査するために往復振動する光学ミラー部を支持するトーションバーの剛性が十分でなく、振動によって光学ミラー部が慣性力により撓むなどの動的な変形が生じてしまう。このような動的撓みは、ミラー部で反射した光の光学特性に大きな影響を与えることになるので、極力低減させる必要がある。
また、特許文献1の振動素子では、光を走査するために光学ミラー部が往復振動した際に、光学ミラーの保持部の内部でもトーションバーに捻り変形が生じ、保持部材とトーションバーとの間に摩擦が生じる。この摩擦により振動が不安定になってジッターの増大や異常振動の発生を招くおそれがある。また、トーションバーに接合部が形成されて光学ミラーと接合されている場合であっても、接合部分のトーションバーの剛性が低ければ、同様に接合部の内部でトーションバーに捻り変形が生じ、接合部の剥離や振動の不安定性を生じるおそれがある。さらに、保持部においてトーションバーの剛性が低い場合、外部からの衝撃などにより光学ミラー部のみが前後に傾倒する振動が生じ、走査線の副走査方向への変動や異常振動の原因となる。
そこで、本発明は、光学ミラーを高速で往復振動させた場合でも、動的撓みを確実に防止する振動素子を提供する。
また、本発明は、光学ミラーを高速で往復振動させた場合でも、異常振動などを生じずに安定した走査が可能な振動素子を提供することも可能である。
本発明は、たとえば、トーションバーの一部に揺動体を支持する平面形状部が設けられ、前記トーションバーのうち前記平面形状部のヤング率は、それ以外の部分のヤング率と同等またはそれより大きいことを特徴とする振動素子を提供する。
本発明では、光学ミラーを高速で往復振動させた場合でも、トーションバーの剛性が高く、光学ミラーの動的撓みを低減し、安定した振動特性を実現する振動素子を提供できる。
図1ないし図4を用いて振動素子について説明する。図1において振動素子30の細長いトーションバー31の一端には揺動体32が取り付けられており、他端は枠体21に取り付けられている。トーションバー31はねじり梁と呼ばれることもある。揺動体32は、第1の板部材33、第2の板部材34によって形成されている。揺動体32の内部には磁石35が設けられている。磁界発生部70は、磁石35が発生する磁界に対応した磁界を発生するコイルにより構成されている。磁石35は、揺動体32またはトーションバー31に取り付けられた第1磁界発生手段として機能する。また、磁界発生部70は、第1磁界発生手段が発生する磁界に対応した磁界を発生し、トーションバー31を変形させて揺動体32を回動させることで、光を光反射面によって走査させる第2磁界発生手段として機能する。なお、第1磁界発生手段がコイルにより構成されてもよい。同様に、磁界発生部70が磁石により構成されてもよい。
図2によれば、振動素子30は、さらに、ベース20およびカバー部材40を備えていることが示されている。揺動体32には、光源からの光が入射するまたは照射される光反射面311が形成されている。ベース20は、トーションバー31や磁界発生部70、カバー部材40を支持する支持構造体である。枠体21は、基板22上に設けられ、基板22の周縁部を取り囲み、ベース20の外周縁部を構成している。基板22上には磁界発生部70のシートコイルが設けられている。基板22は、保持部材23によって保持されている。カバー部材40は、光学的に透明な部材により形成されている。なお、カバー部材40のうち、光反射面311に対して入射する光が透過する部分だけが光学的に透明な部材により形成されていれば十分である。カバー部材40は、ベース20の枠体21の上に重ね合わされている。カバー部材40、枠体21、基板22および保持部材23は一体的に接合される。これらによって形成された内部空間Sには、棒状の細長いトーションバー31と、これに支持される揺動体32が収容されている。
図3によれば、揺動体32を、トーションバー31の長さ方向に直交した方向で切断して得られた切断面を示している。揺動体32は、トーションバー31の長さ方向の回りに回動する。ここでは、揺動体32の揺動による光反射面311の振れ角をαとしている。第1の板部材33および第2の板部材34は、それぞれの接合面332、342を介して密着接合されている。
図4によれば、理想揺動軸線ARに対して、トーションバー31の長手方向軸線O−Oが傾いている状態が示されている。本実施例に係るトーションバー31は、図7に示されるように、感光ドラム204の回転軸線に対して直交する軸線(以下、これを「理想揺動軸線AR」という)に沿って延在する。すなわち、理想揺動軸線ARは、図7では、紙面に対して垂直な方向に延在する。理想揺動軸線ARに対してトーションバー31の長手方向軸線O−Oが傾いていると、走査のずれが生じるため、本実施例では、後述する規制部材を採用する。図4に示すように、トーションバー31が片持ち梁として支持されるように、トーションバー31の基端側がベース20の枠体21とカバー部材40との間に固定される。トーションバー31の末端は内部空間S内に配置される磁界発生部70のシートコイルの中央部分にまで延在している。トーションバー31は、その末端側において揺動体32を固定して支持している。したがって、トーションバー31の末端側に支持される揺動体32は、トーションバー31の長手方向軸線(図2において、O−O線で表されている。)を中心として、トーションバー31の弾性捩れを伴いつつ揺動する。このことから、トーションバー31の長手方向軸線O−Oが、理想揺動軸線ARと一致させるようにトーションバー31を形成することが望ましい。図1から図3に示した実施例では、長手方向軸線O−Oが理想揺動軸線ARと一致しているものとして描かれている。
本実施例に係る揺動体32は、トーションバー31を挟んで相互に接合される同一寸法形状を有する2枚の矩形状板部材としての第1の板部材33および第2の板部材34を含んでいる。第1の板部材33および第2の板部材34は、それぞれの接合面332、342を介して密着接合されるとともに、接合面332、342のそれぞれは、トーションバー31の長手方向軸線O−Oと平行となるように設定される。また、第1の板部材33および第2の板部材34は、それぞれの接合面332、342が基板22に形成されたシートコイルの平面と略平行となるように、トーションバー31に対して接合される。
図2および図3に示されているように、光反射面311は、第1の板部材33の接合面332と表裏の関係に位置し、カバー部材40に対向している。この光反射面311は、アルミニウム(Al)や金(Au)などを第1の板部材33の表面に蒸着することによって形成されてもよいし、予めシリコンウエハのような鏡面加工された板状部材を第1の板部材33の表面に貼り付けることで形成されてもよい。光反射面311は、長手方向軸線O−Oと揺動体32の重心位置とを含む仮想平面に対して平行に配置される。第1の板部材33は、このように光反射面311を形成されることから光学ミラーを構成しているといえる。
本実施例における素子駆動部は、揺動体32またはトーションバー31に固定される磁石35、ベース20に設けられている磁界発生部70のシートコイルおよびシートコイルに交流電流を与える電源回路(不図示)を備えている。素子駆動部は、トーションバー31、揺動体32、磁石35で構成される振動系の共振周波数に対応した交流電流を磁界発生部70のシートコイルに流し、交番磁界を発生させる。それにより、揺動体32内部に配置された磁石35が揺動体32の光反射面311を揺動軸線回りに揺動、すなわち、振れ回すことができる。したがって、この振動系の振幅、すなわち、揺動体32の光反射面311の振れ角αの大きさは、磁界発生部70のシートコイルに与えられる電流量によって調整可能である。交流電流の波形は、正弦波以外に三角波やパルス出力などであってもよい。
〔平面形状部の製造方法〕
図5ないし図8を用いて長さ方向に直交した方向の断面が円形のトーションバー31に平面形状部を作る方法について説明する。本実施例では、断面の直径がφ0.24mmのトーションバー31を材料として使用した。平面形状部の加工方法としては、プレス加工や折り曲げ加工を採用した。
図5ないし図8を用いて長さ方向に直交した方向の断面が円形のトーションバー31に平面形状部を作る方法について説明する。本実施例では、断面の直径がφ0.24mmのトーションバー31を材料として使用した。平面形状部の加工方法としては、プレス加工や折り曲げ加工を採用した。
<櫂型トーションバー>
図5(A)は、プレス加工によって平面形状部51を形成されたトーションバー31を示している。平面形状部51は、櫂のような形状をしている。図5(B)は、プレス加工により形成された平面形状部51に対して第1の板部材33および第2の板部材34を取り付けた様子を示している。
図5(A)は、プレス加工によって平面形状部51を形成されたトーションバー31を示している。平面形状部51は、櫂のような形状をしている。図5(B)は、プレス加工により形成された平面形状部51に対して第1の板部材33および第2の板部材34を取り付けた様子を示している。
図5(A)の矢印はプレス加工による圧力を示している。トーションバー31の側面に対して2方向から加圧することで、平面形状部51が形成される。プレス加工に使用される2つのシャンクの加圧面はそれぞれ並行な平面である。プレス加工は、低コストで行うことができ、容易であることから、迅速に加工が可能であるといった利点がある。なお、平面形状部51を形成できるのであれば、プレス加工以外の加工方法が採用されてもよい。
平面形状部51の厚みtは、シャンクに付与される荷重により調節が可能である。ただし、平面形状部51の厚みtが薄くなりすぎると、加工境界部にクラックが入ったり、トーションバー31を駆動したときに加工境界部が破断したりすることがある。そこで、断面の直径がφ0.24mmのトーションバー31に対しては、厚みtは0.1mm以上とすると、これらの懸念が大幅に緩和される。つまり、プレス加工前のトーションバー31の厚みに対してプレス加工後の厚みを40%以上に制限すれば、十分であろう。
<ループ型トーションバー>
図6(A)は、折り曲げ加工によって平面形状部52を形成されたトーションバー31を示している。図6(A)が示すように、平面形状部52は、トーションバー31を3か所で折り曲げることで形成されている。そのため、平面形状部52はループ型をなしている。この例では、トーションバー31の平面形状部52は、三角形の形状をしているが、図8(A)や図8(B)が示すように、円形、多角形など、左右対称な形状であれば十分である。平面形状部52を左右対称とすることで、トーションバー31と揺動体32の左右の質量バランスが取りやすくなる。図6(B)は、折り曲げ加工により形成された平面形状部52に対して第1の板部材33および第2の板部材34を取り付けた様子を示している。
図6(A)は、折り曲げ加工によって平面形状部52を形成されたトーションバー31を示している。図6(A)が示すように、平面形状部52は、トーションバー31を3か所で折り曲げることで形成されている。そのため、平面形状部52はループ型をなしている。この例では、トーションバー31の平面形状部52は、三角形の形状をしているが、図8(A)や図8(B)が示すように、円形、多角形など、左右対称な形状であれば十分である。平面形状部52を左右対称とすることで、トーションバー31と揺動体32の左右の質量バランスが取りやすくなる。図6(B)は、折り曲げ加工により形成された平面形状部52に対して第1の板部材33および第2の板部材34を取り付けた様子を示している。
平面形状部52の形成方法としては、プレス加工が挙げられる。また、フォーミング加工が採用されてもよい。フォーミング加工は、スプリングバックに対応し、ツール方向を自由に設定できるため、製造上の利点が多い。なお、複数個所でトーションバー31を折り曲げる場合、1箇所目の折り曲げ方向が平面形状部52と平行となるように、1箇所目の折り曲げ方向を基準として2箇所目以降の折り曲げ方向を決定する。
<L型トーションバー>
図7(A)は、折り曲げ加工によって平面形状部53を形成されたトーションバー31を示している。図7(A)が示すように、平面形状部53は、トーションバー31を1か所で折り曲げることで形成されている。そのため、平面形状部53はL型をなしている。ここでは、ループ形状ではない形状を総括してL型と呼ぶことにする。たとえば、図8(C)が示すように、複数個所で折り曲げて形成されているものの、全体としてループ形状でない形状は、本明細書においてL型形状と呼ぶことにする。なお、L型のトーションバーの場合、そのままでは揺動体32の左右のバランスがとれない。そこで、平面形状部53には、錘54が追加されている。図7(B)が示すように、錘54は、L型の曲げられた部分の反対側に配置されている。これにより、トーションバー31および揺動体32の左右のバランスがとれるようになる。なお、図8(D)が示すように、錘54は複数であってもよい。これは、トーションバー31および揺動体32の左右のバランスがとれれば、十分だからである。図7(B)は、折り曲げ加工により形成された平面形状部53に対して第1の板部材33および第2の板部材34を取り付けた様子を示している。
図7(A)は、折り曲げ加工によって平面形状部53を形成されたトーションバー31を示している。図7(A)が示すように、平面形状部53は、トーションバー31を1か所で折り曲げることで形成されている。そのため、平面形状部53はL型をなしている。ここでは、ループ形状ではない形状を総括してL型と呼ぶことにする。たとえば、図8(C)が示すように、複数個所で折り曲げて形成されているものの、全体としてループ形状でない形状は、本明細書においてL型形状と呼ぶことにする。なお、L型のトーションバーの場合、そのままでは揺動体32の左右のバランスがとれない。そこで、平面形状部53には、錘54が追加されている。図7(B)が示すように、錘54は、L型の曲げられた部分の反対側に配置されている。これにより、トーションバー31および揺動体32の左右のバランスがとれるようになる。なお、図8(D)が示すように、錘54は複数であってもよい。これは、トーションバー31および揺動体32の左右のバランスがとれれば、十分だからである。図7(B)は、折り曲げ加工により形成された平面形状部53に対して第1の板部材33および第2の板部材34を取り付けた様子を示している。
<性能評価>
図9は、各種のトーションバーについて信頼性試験を実行して得られた経時的な周波数シフトを示している。各トーションバーとも共振周波数が2000Hzになるように設計し、駆動周波数も2000Hz前後に設定した。振幅角は±40度に固定された。各トーションバーとも、2000時間連続で駆動した。
図9は、各種のトーションバーについて信頼性試験を実行して得られた経時的な周波数シフトを示している。各トーションバーとも共振周波数が2000Hzになるように設計し、駆動周波数も2000Hz前後に設定した。振幅角は±40度に固定された。各トーションバーとも、2000時間連続で駆動した。
図9において、円形トーションバーとは、従来技術のトーションバーである。すなわち、2枚の光学ミラーの一方の面にそれぞれ溝を形成し、その溝が形成された面同士を貼り合せ、最後に溝に断面円形のトーションバーを圧入して作成された振動素子のことである。櫂型トーションバーとは、図5(B)に示した振動素子である。ループ型トーションバーとは、図6(B)に示した振動素子である。L型トーションバーとは、図7(B)に示した振動素子である。
図9が示すように、円形トーションバーについては、共振周波数が低周波数側に十数Hzのシフトが発生した。共振周波数が低周波数側へ大きくシフトしたときの振動素子では、円形トーションバーと光学ミラーとを接合している接着剤が白化して破壊されていた。この現象により、円形トーションバーのバネ定数に変化が起こり、共振周波数が低周波数側へシフトしたと考えられる。
図9が示すように、櫂型トーションバーについては、共振周波数が低周波数側に数Hzのシフトが発生したにすぎず、従来の円形トーションバーと比較して、シフト量が大幅に改善していることがわかる。なお、櫂型トーションバーを駆動しているときに、異常振動は認められなかった。
図9が示すように、ループ型トーションバーについても、共振周波数が低周波数側に数Hzのシフトが発生したにすぎず、従来の円形トーションバーと比較して、シフト量が大幅に改善していることがわかる。ただし、ループ型トーションバーでは、ループ形状のバラツキにより回転重心がずれてしまうことがある。よって、ループ形状のバラツキができるだけ小さくなるように、ループ形状を加工することが要求される。
図9が示すように、L型トーションバーについても、共振周波数が低周波数側に数Hzのシフトが発生したにすぎず、従来の円形トーションバーと比較して、シフト量が大幅に改善していることがわかる。ただし、L型トーションバーでは、錘54の質量と配置位置のバラツキにより、回転重心のズレが発生しうる。よって、錘54の質量と配置位置のバラツキができるだけ小さくなるように、錘54を加工して位置決めすることが要求される。
このように、本実施例はトーションバー31に円形材料を用い、光学ミラーに対する接合部の形状を平面形状部にすることを特徴としている。接合部を平面形状部とすることで、経時変化で発生する剥離や固定位置のズレが抑制され、その結果として共振周波数のシフト量が改善される。また、接合部を平面形状部とするための加工は容易であり、振動素子を低コストで製作できるようになる。振動素子を低コスト化できれば、それを採用する光走査装置及び画像投影装置並びに画像形成装置も低コスト化できるだろう。
〔振動素子の製造方法〕
本実施例の振動素子30の製造方法について説明する。具体的には、平面形状部の剛性を高くする振動素子30の製造方法について説明する。
本実施例の振動素子30の製造方法について説明する。具体的には、平面形状部の剛性を高くする振動素子30の製造方法について説明する。
図10(A)は、加工前の断面が円形の線材60を示している。線材60は、振動部(トーションバー31)の一部となる円形断面の線状材料である。線材60の断面の直径はφである。ここでは、一例として、φを0.24mmとしている。なお、平面形状部61を形成する工程の前に、線材60の真直度矯正工程が実行されてもよい。真直度矯正工程を実行しておくことで、線材60から形成されるトーションバー31の精度がさらに向上することになる。
図10(B)が示すように、上述したプレス加工などを用いて、線材60に平面形状部61が形成される。図10(B)によれば、線材60を2つの方向(径方向)から加圧することで、線材60の一部を平面形状部61に変形させている。上述したように、平面形状部61の厚みtは、線材60の直径φの40%以上とする。
ここで、トーションバー31については、上述したように平面形状部61を形成するが、トーションバー31のうち平面形状部61のヤング率は、それ以外のトーションバー31の部分と同等またはそれより大きくしてもよい。これにより、トーションバー31に支持される揺動体(本実施例では光学ミラー)を高速で往復振動させた場合でも、揺動体32の動的撓みを低減し、安定した振動特性を実現する振動素子を提供することができる。これは、トーションバー31の剛性が高く、また平面形状部61の剛性(ヤング率)を他の部分と比べて相対的に高めているためである。
たとえば、トーションバー31の材質として後述する時効硬化型の材料(具体的には、トーションバー31を構成する線材60の材質を時効硬化型の材料)としてもよい。加工硬化した線材60に平面形状部61を形成して最終的に時効硬化処理すると、平面形状部61のヤング率は、それ以外の部分のヤング率と同等またはそれよりも大きくなる。すなわち、線材60を含むトーションバー31の本体部分と、その本体部分の一部にプレス加工等で形成された平面形状部61との間で予め構造的な形状差をつけておくことにより、その後の時効硬化処理において平面形状部61のヤング率を本体部よりも大きくすることが可能となる。
また、上述した事例では線材60の材質として時効硬化型の材料を用いて説明したが、本発明はこれに限定されることはない。その他の材料、具体的には、線材60を金属材料で形成した場合にも本発明を適用できる。すなわち、金属材料を含む線材60の少なくとも一部に平面形状部61をプレス加工等で形成するにあたり、平面形状部61の寸法(幅や厚み、形状等の寸法)を調整することにより、平面形状部61のヤング率を調整するようにしてもよい。
なお、トーションバー31を構成する線材60の材質として後述する時効硬化型の材料を用いた場合においては、平面形状部61を形成する部分には、平面形状部61の加工前に、時効硬化処理の温度以上で熱処理を実施してもよい。すなわち、平面形状部61を形成する工程においては、線材60の少なくとも一部(平面形状部61を形成する部分)に時効硬化処理温度以上での熱処理を施した後、当該熱処理した部分に平面形状部61を形成するようにしてもよい。このように時効硬化処理温度以上の温度で熱処理することで、その部分の伸びが大きくなるため形状加工が容易となり、クラック等を抑制することができる。具体的な加熱方法としては、たとえば、スポットレーザー加熱や電磁誘導加熱等による部分的な加熱方法が挙げられる。このように、平面形状部61を形成するにあたり前処理として熱処理を施す場合、熱処理における温度条件は、時効硬化処理後の平面形状部61のヤング率がそれ以外の部分のヤング率と同等またはそれよりも大きくなるようにする。すなわち、平面形状部61を加工し易くする程度の必要最低限の熱処理であればよい。これにより、必要以上の熱処理を施したことで生じる平面形状部61のヤング率の低下を有効に抑制することができる。
また、上述した事例では線材60の材質として時効硬化型の材料を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、その他の材料、具体的には、線材60を金属材料で形成した場合にも適用できる。すなわち、金属材料を含む線材60の少なくとも一部に対し、線材60の少なくとも表面応力を調整する軟化処理(たとえば、焼きなまし(焼鈍)処理)を施し、その軟化状態で平面形状部61を形成するにあたり、平面形状部61の寸法(幅や厚み、形状等の寸法)を調整してもよい。これにより、平面形状部61のヤング率を調整するようにしてもよい。
〔トーションバー部の加工手順〕
本実施例における、トーションバー31へ平面形状部61を形成するプロセス方法について説明する。
〔トーションバー部の加工手順〕
本実施例における、トーションバー31へ平面形状部61を形成するプロセス方法について説明する。
まず、トーションバー31には丸線材を用いているが、たとえば、ダイス加工で丸線材からトーションバー31を製作する。この加工は、所望のトーションバー外形形状を確定する際に発生する第1の加工硬化処理である。
次に、トーションバー31の先端部や中間部に平面形状部61を製作する。たとえば、プレス加工などにより平面形状部61を製作する。この加工は、平面形状部61にとっては第2の加工硬化処理となる。よって、この工程でトーションバー部とのヤング率を同等以上にすることができる。
また、トーションバー31の一部に設ける平面形状部61へ、部分的にスポットレーザー等の手段を用い、時効硬化処理温度以上(本実施例では700℃以上)の熱処理を施してもよい。これにより、熱処理した部分の伸びが大きくなるため加工が容易となる。
次に、トーションバー31と平面形状部61の時効硬化処理を行う。本実施例で用いた時効硬化材料の時効処理温度は550℃〜575℃が適切である。
このようなプロセスによって、平面形状部61はトーションバー部以上のヤング率となる。
なお、平面形状部51を形成した後に、振動特性を向上させるために行う熱処理は時効硬化であるが平面形状部51に施されてもよい。熱処理によって、トーションバー31のヤング率が向上するとともに、平面形状部61の歪みを減少させることができる。平面形状部61の形成工程の前に熱処理工程を実行してしまうと、平面形状部61の形成工程の後に線材60の加工性が低下したり、歪みが大きくなったりする。よって、平面形状部61の形成工程の後に熱処理工程が実行することで、加工性の低下と歪を抑制できるようになる。
振動素子の種類としては、揺動体32が1つだけの単一型振動素子と、揺動体32が複数の複数型振動素子とがある。とりわけ、単一型振動素子では、トーションバー31の一端にトーションバー31の保持部が形成され、他端に揺動体32の接合部である平面形状部61が形成される。よって、保持部と平面形状部61とを同時にプレス加工して形成することで、回転軸方向への位置ズレが低減される。その結果、ユニット組込み時の位置出し精度も向上する。
図10(B)は、複数の平面形状部61を形成した線材60を示している。ここでは、線材60の両方の先端部だけでなく、その中間部にも平面形状部61が形成されている。中間部に形成された平面形状部61の領域内の中央を、線材60の長さ方向に直交した方向で切断する。これにより、切断後に残された平面形状部61は、上述した保持部または反射面を有する反射部材を接合するための接合部となる。このように、平面形状部61の中央で線材60を分断することで、線材60の廃棄物をゼロにすることができる。このように、複数の中間部に平面形状部61を形成することで、一本の線材60から多数のトーションバー31を形成できるようになる。
図11(A)は、切断によって形成されたが片持ち型のトーションバー31を示している。片持ち型のトーションバー31では、線材60の両先端部に平面形状部61が形成される。一方の平面形状部61がミラー面の接合面として機能し、他方の平面形状部61がトーションバー保持部として機能する。図12(A)は、片持ち型のトーションバー31を備えた振動素子を示している。
図11(B)は、切断によって形成されたが両持ち型のトーションバー31を示している。線材60の両方の先端部だけでなく、その中間部にも平面形状部61が形成されている。線材60の両端部に設けられた平面形状部61は、保持部として機能する。また、線材60の中央部に設けられた平面形状部61は、ミラー面の接合面として機能する。図12(B)は、両持ち型のトーションバー31を備えた振動素子を示している。
ところで、平面形状部61の切断工程においては、図10(B)に示すように複数の振動素子用の平面形状部61を形成され線材60が、1つの振動素子ごとに切断される。平面形成工程と切断工程の順序はどちらが先でもよい。たとえば、線材60を1つの振動素子に応じた長さに切断した後で、平面形状部61が形成されてもよい。
以上の工程により線材60を加工することで、トーションバー31を容易に、特性バラツキも少なく、かつ、大量に生産することができる。これは、本実施例が、高コストで長時間にわたる成膜工程を使用せずに、接合部である平面形状部61を形成できるからである。
<揺動体の接合方法>
図12(A)や図12(B)に示すような振動素子を製作するための、平面形状部61に揺動体32を接合する方法について説明する。
図12(A)や図12(B)に示すような振動素子を製作するための、平面形状部61に揺動体32を接合する方法について説明する。
接合工程では、線材60に設けられた平面形状部61を、揺動体32をなすことになる第1の板部材33および第2の板部材34で挟み込んで接合する。第1の板部材33の接合面の反対側の面には光反射面311が形成される。第2の板部材34にもミラー面が形成されてもよい。このように、線材60の平面形状部61を一対の反射部材で挟み込んで、一対の反射部材が線材60に接合される。このとき、揺動体32の接合面332、342に、平面形状部61の幅および厚みと一致する溝を設けてもよい。この場合、接合面332、342および平面形状部61の接合面積が増加するため、これらを密着させやすくなる。接合手段として、たとえば、接着剤や直接接合などが考えられるが、他の接合手段が採用されてもよい。
図12(A)および図12(B)に示した2種類の振動素子について経時的な信頼性の確認を行った。信頼性試験では、共振周波数を2000Hz、駆動周波数も2000Hz前後に設定した。また、振幅角を±40degに固定し、2000時間連続で振動素子を駆動した。その結果、共振周波数が低周波数側に数Hzのシフトしたものの、信頼性が良好であることを確認できた。また、異常振動も発生しなかった。
また、この時、光学ミラーとしてSiを用いたが、動的撓みδは1×10−5mm以下と良好であった。
このように、本実施例では、光学ミラーを高速で往復振動させた場合でも、トーションバーの剛性が高く、光学ミラーの動的撓みを低減し、安定した振動特性を実現する振動素子を提供することができる。
なお、平面形状部61の形成方法としては、引張り加工やしごき加工が採用されてもよい。また、平面形状部61が形成された後で、時効硬化処理(熱処理)が施されてもよい。時効硬化処理とは、平面形状部61に対する熱処理と、それ以外の線材60の未変形部分(平面形状部61の周囲の部分)に対する熱処理とがそれぞれ異なる温度条件下で実行される処理をいう。時効硬化処理によって、熱処理前と比べて、トーションバー31のヤング率が向上する。
上述した実施例では、線材60の断面形状を円形として説明したが矩形であってもよい。
〔材料など〕
次に、振動素子30を構成するトーションバー31、揺動体32、磁石35などの材料について以下に述べる。
次に、振動素子30を構成するトーションバー31、揺動体32、磁石35などの材料について以下に述べる。
トーションバー31を構成する材料としては、たとえば、加工硬化処理および時効硬化処理が施された加工硬化および時効硬化型のコバルト(Co)−ニッケル(Ni)基合金が好適である。ここでいうCo−Ni基合金とは、CoおよびNiを含有する金属合金である。Co−Ni基合金は、好ましくは、積層欠陥エネルギーを低下させるクロム(Cr)と、マトリクスの固溶強化や、偏析により転位を固着して時効および加工硬化能の向上に寄与する溶質元素としてモリブデン(Mo)、鉄(Fe)などを含む。本実施例では、Co−Ni基合金として、Co−Ni−Cr−Mo合金やCo−Ni−Fe−Cr合金などを例示することができる。また、これらの合金は、溶質元素として同様の働きをするニオブ(Nb)、面心立方格子相を安定化させて積層欠陥エネルギーを低下させるマンガン(Mn)、マトリクスの強化と積層欠陥エネルギーの低下に寄与するタングステン(W)などを含むことができる。さらに、これらの合金は、鋳塊組織の微細化や強度向上に寄与するチタン(Ti)、熱間加工性を改善するボロン(B)およびマグネシウム(Mg)、マトリクスに固溶してCr、Mo、Nbなどと炭化物を形成し、粒界を強化する炭素(C)などを含むことができる。
Co−Ni−Cr−Mo合金を用いた場合、その主要組成の重量比は、Co:20.0〜50.0%、Ni:20.0〜45.0%、Cr/Mo:20.0〜40.0%(Cr:18〜26%、Mo:3〜11%)であることが好ましい。特に、Co:31.0〜37.3%、Ni:31.4〜33.4%、Cr:19.5〜20.5%、Mo:9.5〜10.5%とするのがさらに好ましい。
このCo−Ni基合金をトーションバー31の製品形状に加工するとともに、当該加工に伴って硬化処理を施して内部残留歪みを与えた後、時効硬化処理を施すことによって所望のトーションバー31を得ることができる。
より具体的には、溶製後に熱間鍛造や均質化熱処理などの工程を経て得られた少なくともCo及びNiを含むマトリクスに置換型の溶質元素を含有する出発原料から、冷間圧延による加工硬化処理を経てCo−Ni−Cr−Mo合金材料を得る。この合金材料は、圧延方向に<100>の集合組織が形成され、圧延方向と直交する方向に<110>の集合組織が形成される。したがって、本実施形態のトーションバー31として採用する場合、プレス加工、レーザー加工、ダイス加工、ワイヤーカット、超塑性加工などによって圧延方向と直交する方向がトーションバー31の長手方向となるように切り出して製品形状に
加工する。また、これらの加工に伴って、硬化処理を施して内部残留歪みを与えた後、真空中または還元雰囲気にて時効硬化処理を施すことによって所望のトーションバー31を得ることができる。この時効硬化処理は、400℃〜700℃の温度で数十分から数時間程度(たとえば、550℃で2時間)行うのが最適であるが、処理時間を短縮するために、たとえば、強磁場中での熱処理を用いることも有効である。
加工する。また、これらの加工に伴って、硬化処理を施して内部残留歪みを与えた後、真空中または還元雰囲気にて時効硬化処理を施すことによって所望のトーションバー31を得ることができる。この時効硬化処理は、400℃〜700℃の温度で数十分から数時間程度(たとえば、550℃で2時間)行うのが最適であるが、処理時間を短縮するために、たとえば、強磁場中での熱処理を用いることも有効である。
これにより、高強度かつ振動減衰能が低く、しかも弾性限界の高い良好な振動特性を有するトーションバー31を得ることができる。このような非磁性で加工硬化及び時効硬化型のCo−Ni−Cr−Mo合金としては、たとえば、Co:35%、Ni:32%、Cr:20%、Mo:10%の組成を有するセイコーインスツル株式会社のSPRON510(商品名:SPRONは、登録商標である。)を挙げることができる。
このようにして、共振周波数が尖鋭且つ振動が共振周波数に対して線対称となるような特性、すなわちQ値が高く(たとえば、1000以上)且つバネ特性の非線形性が非常に小さなトーションバー31を得ることができる。このようなトーションバー31は、振動変形による最大歪みが3×10−3mm程度まで大きくなっても不安定性を生じることがなく、消費電力が少ない振動素子30を実現することができる。したがって、本実施例における画像形成装置200は、所望の疲労特性および振動特性を確保しつつ小型化することが可能であり、ジッターなどの不安定性を低減させて安定したレーザー光の走査が可能であり、走査角の高精度な制御が可能となる。
なお、本実施例では、非磁性を示すCo−Ni基合金にてトーションバー31を形成しているが、これは、揺動体32をトーションバー31とともに揺動させる手段として、磁石と交番磁界を用いた場合、安定した駆動を実現することができるからである。したがって、素子駆動部207として、交番磁界以外の手段、たとえば、圧電素子などを利用することも可能である。トーションバー31の材料としては、バネ材料として一般的に用いられるSUS 301、302、304、316、631、632などのステンレス鋼、バネ鋼(SUP)、ピアノ線(SWP)、バネ用炭素鋼のオイルテンパー線(SWO)などを採用し得る。さらには、バネ用シリコンクロム鋼のオイルテンパー線(SWOSC)、バネ用ベリリウム銅合金(C1700、C1720)、バネ用チタン銅合金(C1990)、バネ用リン青銅(C5210)、バネ用洋白(C7701)なども採用することができる。
揺動体32を構成する材料としては、アルミナ、ジルコニア、ベリリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、サファイア、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、ガラス、樹脂などの非磁性体を利用することができる。さらに、これらの表面を鏡面化することによって該表面を光反射面311として利用することも可能である。
揺動体32を構成する第1の板部材33の上面に形成される光反射面311については、上述したように、反射率を向上させるために、AlやAuなどを蒸着やスパッタといった真空蒸着法によって形成してもよい。また、たとえば、チタン(Ti)、Al、銅(Cu)、銀(Ag)、Auなどの金属膜が用いられてもよい。
しかしながら、金属膜は、その表面が比較的傷付き易く、また、酸化し易い。よって、金属膜のみで光反射面311を形成すると、徐々に反射率が低下してしまう。そこで、金属膜を保護するための保護膜が必要となる場合がある。また、金属膜単層では光反射面311として所望の反射率が得られない恐れもある。したがって、保護膜に増反射膜としての機能を持たせ、光反射面311全体としての反射率を高めることができれば、金属膜を保護しつつ、光の利用効率をあげることができる。
増反射膜は、たとえば、誘電体の低屈折率材料と高屈折率材料を組み合わせて積層することで形成される。低屈折率材料としては、たとえば、SiO2やMgF2がある。高屈折率材料としては、TiO2、Nb2O5、ZrO2、Ta2O5などがある。但し、Al2O3のような中間屈折率材料を積層してもよい。なお、増反射膜の材料をこれらのみに限る必要はなく、適宜最適な材料を選択することができる。
また、揺動体32とともにトーションバー31に取り付けられる磁石35は、できるだけ小型軽量であって高い保持力を有することが好ましく、Nd−Fe−B系やSm−Co系の希土類磁石などが好適である。しかしながら、磁石35は、アルニコ磁石、Fe−Co−V合金磁石、Cu−Ni−Fe合金磁石、Cu−Ni−Co合金磁石、Fe−Cr−Co磁石、Pt−Co磁石などであってもよい。さらには、磁石35は、ハードフェライト(BaフェライトやSrフェライト)などの焼結磁石やボンド磁石の他にスパッタ法などで形成した薄膜磁石であってもよく、材質や製造方法または形状などで特に制限されるものはない。
〔画像形成装置〕
上述した振動素子30の揺動体32に光反射面311を形成することで、振動素子30は光走査装置として機能する。光走査装置は、たとえば、画像形成装置や画像投影装置としてさらに応用できる。ここでは、まず、画像形成装置について説明する。
上述した振動素子30の揺動体32に光反射面311を形成することで、振動素子30は光走査装置として機能する。光走査装置は、たとえば、画像形成装置や画像投影装置としてさらに応用できる。ここでは、まず、画像形成装置について説明する。
図13に本実施例における電子写真方式の画像形成装置200を示す。感光ドラム204は、静電潜像やトナー画像を担持する像担持体である。感光ドラム204は、帯電部によって一様に帯電したあとに、露光部210によって光を照射され、静電潜像を形成される。静電潜像は、現像部によってトナー画像へと現像される。トナー画像は転写部によって記録媒体上に転写される。さらに、定着部においてトナー画像は記録媒体上に定着する。
露光部210は、光走査装置220、周知のコリメータ光学系202及びfθレンズ203を備えている。光走査装置220は、画像情報に対応したパルス状のレーザー光Lを発振するためのレーザー光源201や上述した振動素子30を備えている。振動素子30が備える揺動体32の光反射面311が揺動することで、感光ドラム204の回転軸線と平行な方向にレーザー光Lが移動する。
BDセンサ205は感光ドラム204の回転軸方向の両端に設けられており、レーザー光Lが入射したときに制御装置206へ検出信号を送出する。制御装置206は、BDセンサ205の検出信号に基づいて、素子駆動部207を駆動するための制御信号を出力する。素子駆動部207は、制御信号にしたがって振動素子30を駆動する。とりわけ、制御装置206は、振動素子30の揺動体32の揺動による光反射面311の振れ角αが感光ドラム204の表面の所定範囲内に収まるように、一対のBDセンサ205からの検出信号に基づいて素子駆動部207の出力電流をフィードバック制御する。
画像信号に応じてレーザー光源201から出射するパルス状のレーザー光Lは、コリメータ光学系202を通って振動素子30の揺動体32の光反射面311に入射する。この光反射面311にて反射したレーザー光は、fθレンズ203を介して感光ドラム204の表面に照射される。振動素子30の揺動体32の光反射面311が揺動軸線、すなわちトーションバー31の長手方向軸線O−O、の回りに揺動(振動)する。これにより、レーザー光Lが感光ドラム204の回転軸線と平行な方向に走査される。さらに、感光ドラム204も回転することで、画像情報、すなわち、静電潜像が感光ドラム204の表面に形成されることになる。
本実施例の画像形成装置200は上述した振動素子30を採用している。つまり、振動素子30は、トーションバー31に平面形状部51、52、53、61を形成し、そこに揺動体32を接合することで、作成されているため、長期にわたって共振周波数のシフトが小さく、かつ、安定して動作する。よって、画像形成装置200が形成する画像の品質も長期にわたって安定することになる。
〔画像投影装置〕
実施例にかかる振動素子30を、オーバーヘッドプロジェクターなどの画像投影装置300に適用した実施例について図14を用いて説明する。本実施例においては、画像形成装置200に適用した実施例と同一の機能を有する構成要素については同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。
実施例にかかる振動素子30を、オーバーヘッドプロジェクターなどの画像投影装置300に適用した実施例について図14を用いて説明する。本実施例においては、画像形成装置200に適用した実施例と同一の機能を有する構成要素については同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。
画像投影装置300は、光源301、光走査装置220、光源301からの光を所定方向に変更させる光偏向装置302およびこの光偏向装置302により偏向した光が照射されるスクリーン304を備えている。光走査装置220は、スクリーン304に対して水平方向に光を走査し、光偏向装置302は、スクリーン304に対して垂直方向に光を走査する。このようにして、2次元走査が実現される。この光偏向装置302による光の偏向速度は、振動素子30の揺動体32の振動周期よりも相対的に遅くすることができる。よって、光偏向装置302は、制御装置206によって制御されるガルバノミラーで実現できる。
RGB三原色を含む光源301から出射する光は、振動素子30および光偏向装置302により2次元走査され、スクリーン304に画像として投射される。振動素子30の主要部を構成する揺動体32の光反射面311の振れ角αは、制御装置206から出力される制御信号に基づいて素子駆動部207により調整される。また、光偏向装置302も同様に、制御装置206からの出力に基づき、揺動体32の理想揺動軸線に対して直行する軸線回りの振れ角が制御される。制御装置206には、スクリーン304に投影される画像情報が入力部303から伝達され、光源301からスクリーン304に至る光路の距離に関する情報が測距部305から入力される。制御装置206は、これら入力部303および測距部305からの情報に応じた投影画角や拡大率などの設定、像の大きさやその縦横比に基づき、振動素子30および光偏向装置302の走査角をそれぞれ変更する。なお、画像の拡大率は、走査角を変更せずとも光源301に対する通電のオン/オフ制御によっても可能である。しかしながら、走査角を変更することによって光源301のオフ時間を減らすことで、高輝度の画像をスクリーン304に投影することができる。
本実施例の画像投影装置300も、加工硬化および時効硬化型のCo−Ni基合金からなるトーションバー(不図示)に揺動体を固定しているため、小型化に加えてジッターなどの不安定性を低減でき、走査角を変更した場合でも安定した動作が可能である。また、振動減衰率の歪み振幅依存性が小さいため、走査角を大きくした場合の急激な消費電力の増加も起こらない。さらに、光の有効利用によって光源301の駆動電力を低減することができる。これらのことから、小型化と併せて、素子駆動部207や電源の容量を低減させることが可能となり、小型で投影画角の大きな高性能の画像投影装置300を実現することができる。
とりわけ、本実施例の画像投影装置300は上述した振動素子30を採用している。つまり、振動素子30は、トーションバー31に平面形状部51、52、53、61を形成し、そこに揺動体32を接合することで、作成されているため、長期にわたって共振周波数のシフトが小さく、かつ、安定して動作する。よって、画像投影装置300が投影する画像の品質も長期にわたって安定することになる。
〔振動素子のその他の応用例〕
振動素子30は、たとえば、電位センサなどに適用することも可能である。上述した電子写真方式の画像形成装置200において、安定した品質の画像を得るためには、感光ドラム204の像担持面を均一の電位となるように帯電させる必要がある。このため、電位センサを用いて感光ドラムの帯電電位を測定し、その結果を利用して感光ドラム204の電位を均一に保持するように帯電部に印加する電圧のフィードバック制御が実行される。電位センサは、揺動体32の平面形状部61に一対の検知電極を配置して構成される。これら一対の検知電極と、一対の検知電極と対向状態で配置される電位測定対象面(感光ドラム204の像担持面)との間の距離が、揺動体32の振動により変化する。そして、検知電極と感光ドラム204との間の静電容量を変えることで、検知電極に信号が現れる。この電位センサでは、トーションバー31の振れ剛性や揺動体32の形態などを適切に設計することで、揺動体32を大きな周波数にて容易に揺動させることができる。しかも、揺動体32を小型化しても複数対の検知電極を揺動体32の平面形状部61に設けて各検知電極からの信号を適切に処理することが容易である。このため、装置を小型化しても感光ドラムの表面の電位を高い信頼性を持って高感度且つ高い測定精度にて測定することができる。
振動素子30は、たとえば、電位センサなどに適用することも可能である。上述した電子写真方式の画像形成装置200において、安定した品質の画像を得るためには、感光ドラム204の像担持面を均一の電位となるように帯電させる必要がある。このため、電位センサを用いて感光ドラムの帯電電位を測定し、その結果を利用して感光ドラム204の電位を均一に保持するように帯電部に印加する電圧のフィードバック制御が実行される。電位センサは、揺動体32の平面形状部61に一対の検知電極を配置して構成される。これら一対の検知電極と、一対の検知電極と対向状態で配置される電位測定対象面(感光ドラム204の像担持面)との間の距離が、揺動体32の振動により変化する。そして、検知電極と感光ドラム204との間の静電容量を変えることで、検知電極に信号が現れる。この電位センサでは、トーションバー31の振れ剛性や揺動体32の形態などを適切に設計することで、揺動体32を大きな周波数にて容易に揺動させることができる。しかも、揺動体32を小型化しても複数対の検知電極を揺動体32の平面形状部61に設けて各検知電極からの信号を適切に処理することが容易である。このため、装置を小型化しても感光ドラムの表面の電位を高い信頼性を持って高感度且つ高い測定精度にて測定することができる。
このように、本実施例は、たとえば、トーションバーの一部に揺動体を支持する平面形状部が設けられ、前記トーションバーのうち前記平面形状部のヤング率は、それ以外の部分のヤング率と同等またはそれより大きいことを特徴とする振動素子を提供する。
また、本実施例は、トーションバーと、トーションバーの一部に平面形状部を設け取り付けられた揺動体と、揺動体またはトーションバーに取り付けられた第1磁界発生手段と、第1磁界発生手段が発生する磁界に対応した磁界を発生し、トーションバーを変形させて揺動体を回動させる第2磁界発生手段とを有し、トーションバーのうち平面形状部とは異なる部分のヤング率と平面形状部のヤング率は同等または平面形状部の方が大きいことを特徴とする振動素子を提供する。
なお、本実施例は、下記に示す振動素子の製造方法にも適用できる。
たとえば、本実施例は、線材の一部を加工して平面形状部を形成する形成工程と、平面形状部に揺動体を接合する接合工程とを有することを特徴とする振動素子の製造方法を提供する。
また、形成工程は、線材の長さ方向に対して直交した2つの方向から線材の一部に、プレス加工、引張り加工、または、しごき加工を施すことで、平面形状部を形成する工程を含むようにしてもよい。
さらに、形成工程は、線材に複数の平面形状部を形成する工程と、複数の平面形状部のうち少なくとも1つの平面形状部の中央を、線材の長さ方向に直交した方向に切断する工程とを含むようにしてもよい。
また、形成工程は、線材の先端部または線材の中間部に平面形状部を形成する工程を含むようにしてもよい。
さらに、形成工程は、線材の少なくとも一部に時効硬化処理温度以上での熱処理を施した後、当該熱処理した部分に平面形状部を形成してもよい。
また、形成工程は、平面形状部を左右対称な形状に形成する工程を含むようにしてもよい。
さらに、形成工程の後で、かつ、接合工程の前に、線材の平面形状部とその周囲に時効硬化処理を施す工程をさらに有してもよい。
また、形成工程は、線材の一部を櫂型の形状に加工することで、平面形状部を形成する工程を含むようにしてもよい。
さらに、形成工程は、線材の一部をループ形状に加工することで、平面形状部を形成する工程を含むようにしてもよい。
また、形成工程は、線材の一部をL型に加工することで、平面形状部を形成する工程を含むようにしてもよい。
さらに、形成工程は、L型に加工された線材の一部の反対側に錘を配置する工程をさらに有してもよい。
Claims (7)
- トーションバーの一部に揺動体を支持する平面形状部が設けられ、前記トーションバーのうち前記平面形状部のヤング率は、それ以外の部分のヤング率と同等またはそれより大きいことを特徴とする振動素子。
- トーションバーと、
前記トーションバーの一部に平面形状部を設け取り付けられた揺動体と、
前記揺動体またはトーションバーに取り付けられた第1磁界発生手段と、
前記第1磁界発生手段が発生する磁界に対応した磁界を発生し、前記トーションバーを変形させて前記揺動体を回動させる第2磁界発生手段とを有し、
前記トーションバーのうち前記平面形状部とは異なる部分のヤング率と前記平面形状部のヤング率とは同等または前記平面形状部のヤング率の方が大きいことを特徴とする振動素子。 - 前記トーションバーは、時効硬化型の合金材料により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の振動素子。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の振動素子を備えたことを特徴とする光走査装置。
- トーションバーと、
前記トーションバーの一部に平面形状部を設け取り付けられた揺動体と、
前記揺動体に設けられた光反射面と、
前記光反射面に光を照射する光源と、
前記揺動体またはトーションバーに取り付けられた第1磁界発生手段と、
前記第1磁界発生手段が発生する磁界に対応した磁界を発生し、前記トーションバーを変形させて前記揺動体を回動させることで、前記光を前記光反射面によって走査させる第2磁界発生手段とを有し、
前記トーションバーは、線材の一部に形成された平面形状部を有し、前記揺動体は、当該平面形状部に接合され、
前記トーションバーの前記平面形状部のヤング率は、前記トーションバーにおけるそれ以外の部分のヤング率と同等またはそれより大きいことを特徴とする光走査装置。 - 請求項4または5に記載の光走査装置を備え、当該光走査装置によって走査された光によってスクリーンに画像を投影することを特徴とする画像投影装置。
- 請求項4または5に記載の光走査装置と、像担持体とを備え、当該光走査装置によって走査された光によって当該像担持体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
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JP2015041075A (ja) * | 2013-08-23 | 2015-03-02 | ミツミ電機株式会社 | 光走査装置及び光走査ユニット |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013152448A (ja) | 2013-08-08 |
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