JP2013151762A - 表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷延鋼板の表面に、最表層がZnとPとSiの非晶質酸化物層であるZnを基地とする防錆膜を形成する。
【選択図】なし
Description
特許文献1には、CやSなどの成分組成が規定された鋼板を、0.5〜10vol%の水素を含む窒素ガスからなる還元性雰囲気中で連続焼鈍することにより、CやSなどの成分を表層に穏やかに偏析させることで、きわめて薄い緻密な炭化物や硫化物の層を生成させた冷延鋼板が開示されている。
特許文献2には、連続焼鈍工程の下流側で、例えば酸洗によって鋼板表面の酸化皮膜を除去した後、水洗により自動還元時間(鋼板表面に生成する酸化皮膜の安定性を示す指標で、脱気した中性塩浴中での酸化皮膜の崩壊時間のこと)を40秒以上とした酸化皮膜を再生成させた鋼板が開示されている。
特許文献3および4には、北米や北欧の道路において散布される融雪塩に起因する塩素イオンの存在下で、乾湿が繰り返される極めて厳しい環境下において優れた耐孔あき性を有する自動車用鋼板が開示されている。
特許文献5には、ケイ酸リチウムを主体とする水溶液を鋼板に塗布・乾燥してバリヤー皮膜を形成した鋼板が開示されている。
特許文献6には、リン酸イオンまたはリン酸化合物を表面処理鋼板に塗布・乾燥して化成処理皮膜を形成した鋼板が開示されている。
特許文献7には、鋼板の成分組成を規定した上で、Pを含む溶液を焼鈍後の冷延鋼板に接触させることによって、鋼板表面にPを含むバリヤー皮膜を形成させた鋼板が開示されている。
特許文献8には、鋼板の成分組成を規定した上で、Siを含む溶液を焼鈍後の冷延鋼板に接触させることによって、鋼板表面にSiを含むバリヤー皮膜を形成させた鋼板が開示されている。
特許文献1および特許文献2に記載の鋼板は、無塗油状態で1〜14日間屋内放置しても発錆することがないとされているが、塩分を比較的多く含む厳しい暴露環境においては、付着塩分による湿潤状態の持続や塩素イオンなどの影響により皮膜劣化が進行し、表層に形成された炭化物や硫化物、酸化物では十分な初期防錆性が得られなかった。
(1)鋼板の最表層にPやSiを含有する高いバリヤー型の酸化物をZnと複合化させることによって形成されたZn、PおよびSiの非晶質酸化物層は、鋼板の防錆性を大きく向上させる。
(2)しかしながら、バリヤー型の酸化物をZnと複合化させる際、酸化物形成に必要なPやSiを含む処理液に、あらかじめZnイオンやZn化合物を混合させておく方法で形成されたZnとPとSiの酸化物層では、防錆性向上の効果が小さい。
(3)この点、まずZnを鋼板表面に析出させて金属Zn層を形成し、ついでPおよびSiを含む処理液を鋼板に接触させて、金属Zn層の表面に存在するZnと処理液を十分に反応させて形成したZn、PおよびSiを含む非晶質酸化物層は優れた防錆性を示す。
(4)さらに、Ca、Zr、Ti、V、Mn、AlおよびMgのうちから選ばれる1種または2種以上を含有させることによって、防錆性は一層向上する。
1.鋼板の表面にZnを基地とする防錆膜を有する表面処理鋼板であって、該防錆膜の最表層がZnとPとSiの非晶質酸化物層からなり、全Zn量が100〜7000mg/m2であることを特徴とする表面処理鋼板。
まず、本発明の表面処理鋼板における防錆膜について説明する。
鋼板上に塩分が存在する場合、塩類による結露水や表層水膜の電気伝導度の増加、同水膜中における錯体形成による鉄イオン拡散の促進、塩素イオンの吸着による酸化皮膜の破壊、化学的凝縮作用による湿潤状態の持続(結露)などの複合効果により、鋼板が腐食しやすくなる。特に、沿岸地域のように、飛来海塩の影響により塩分が付着しやすく、昼夜の気温の変化により乾湿が繰り返される環境下では、極めて短時間で腐食が生じ易い。
Pは、腐食環境において非晶質酸化物層より極微量が溶出し、腐食により溶出した鉄イオンと緻密な化合物を形成することで緻密な保護層となり腐食を抑制するものと思われる。
Pが、Zn:100に対して2未満の場合、十分な耐食性が得られない。一方、Pが、Zn:100に対して30を超える場合、曲げなどにより容易に皮膜が剥離する結果を招く。
Siが、Zn:100に対して、2未満の場合、十分な耐食性が得られない。一方、Siが、Zn:100に対して30を超える場合、皮膜が厚くなり、曲げなどにより容易に皮膜が剥離する結果を招く。
Zn、PおよびSiを含む非晶質酸化物層には、Ca、Zr、V、Mn、AlおよびMgのうちから選ばれる1種または2種以上の成分を含有させることで、耐食性のより一層の向上を図ることができる。Ca、Zr、V、Mn、AlおよびMgのうちから選ばれる1種または2種以上の合計が、Zn:100に対して0.1未満の場合、向上効果がみられない。一方、Ca、Zr、V、Mn、AlおよびMgのうちから選ばれる1種または2種以上の合計が、Zn:100に対して3.5を超える場合、皮膜が厚くなり、曲げなどにより皮膜が剥離しやすくなる。従って、非晶質酸化物層における添加成分の割合は、質量比でZn:100に対して、Ca、Zr、V、Mn、AlおよびMgのうちから選ばれる1種または2種以上の合計で0.1〜3.5の範囲とした。好ましくは0.1〜2.0の範囲である。
本発明の素材である冷延鋼板の製造方法については特に制限はなく、常法に従えば良い。
また、金属Znと反応させるSi量は、単位面積:1m2あたり10〜100mgの範囲とする。単位面積当たりのSi量が10mg未満の場合、十分な耐食性が得られないという問題がある。一方、単位面積当たりのSi量が100mgを超える場合、曲げなどにより皮膜が剥離しやすくなるという問題がある。
ついで、Zn析出させた前記鋼板に表1に示す処理液を塗布した後、乾燥させ、非晶質酸化物層(一部の比較例は、結晶質酸化物層、以下、同じ)を形成した。なお、乾燥は、乾燥炉を用いて到達鋼板温度(PMT):110℃(炉温:390℃、7.7秒保持)の条件で行った。
Zn析出量
金属Zn層形成後、処理液を接触させる前の鋼板の一部を切り出し、湿式分析(酸で溶解し、溶解液中のZn量を検量線法にてICP分析)により、Zn析出量を求めた。本発明に従う非晶質酸化皮膜(比較例を含む)は、処理液を塗布することによって形成されるため、処理の前後で皮膜中のZn量は変化することはないことから、非晶質酸化物層形成後の全Zn量([金属Zn層中のZn量]+[非晶質酸化物層中のZn量])は、Zn析出量に等しい。よって、Zn析出量を非晶質酸化物層形成後の全Zn量とした。
防錆膜を含むように鋼板の表層部分をFIB加工により切り出し、断面の任意の3箇所をTEM観察して非晶質酸化物層および金属Zn層の厚さをそれぞれ測定し、平均値を求めた。
非晶質酸化物層中のZnの含有量は、上記した全Zn量([金属Zn層中のZn量]+[非晶質酸化物層中のZn量])から[金属Zn層中のZn量]を差し引いて求めた。なお、[金属Zn層中のZn量]は、上記した金属Zn層の厚さとZnの比重(7.13g/cm3)から算出した。
非晶質酸化物層中のPおよびSiの含有量を、あらかじめ湿式分析(酸で溶解し、溶解液中のP量およびSi量を検量線法にてICP分析)して求めた検量線との比較により、蛍光X線分析で測定した。
非晶質酸化物層中のCa、Zr、Ti、V、Mn、AlおよびMgの成分の含有量を、あらかじめ湿式分析(酸で溶解し、溶解液中のCa、Zr、Ti、V、Mn、AlおよびMgのそれぞれの含有量を検量線法にてICP分析)して求めた検量線との比較により、蛍光X線分析で測定した。
非晶質酸化物層中のZn含有量を100したときの割合を、PおよびSiについてそれぞれ質量比で求めた。
非晶質酸化物層中のZn含有量を100したときの割合を、Ca、Zr、Ti、V、Mn、AlおよびMgについてそれぞれ質量比で求めた。
鋼板表面の酸化物層をX線回折により同定した。FeおよびZn以外の結晶性化合物を示すピークが存在していなければ酸化物層を非晶質であると判断した。
鋼板を70mm×70mmの寸法にせん断し、4つの端面と皮膜面の片方をシールし、赤錆発生試験を行った。試験要領および評価基準は次のとおりである。
人工海塩をイオン交換水で溶解し、濃度:0.035質量%の水溶液とし、シール後の鋼板に噴射し、乾燥させて、塩分:100mg/m2を付着させた。ついでこの鋼板を環境試験機に入れ、乾燥(温度:60℃、相対湿度:35%):3時間→湿潤(温度:40℃、相対湿度95%):3時間を1サイクルとする腐食試験を行った。なお、乾燥→湿潤または湿潤→乾燥の移行時間は1時間とし、1日で3サイクルの乾湿を繰り返し、赤錆の発生した面積が、暴露面積の5%に達するまでの日数を調査し、以下のように評価した。
◎:30日以上
○:10日以上30日未満
△:5日以上10日未満
×:5日未満
試料を折り曲げ(OT曲げ)、曲げ部をSEM観察することにより皮膜の状態を調査した。皮膜にクラックは認められるものの鋼板に付着している状態である場合は◎、皮膜にクラックは認められるものの鋼板にほとんど付着している状態である場合は○、皮膜が破壊され若干浮き上がった状態である場合は△、皮膜が破壊され浮き上がった状態である場合は×、で評価した。
これに対し、試料No.2、4、13、28および29の比較例は、非晶質酸化物層中のPまたはSiの含有量が少なく、試料No.32は、非晶質酸化物層の厚さが10nm未満と薄く、そして試料No.33は、酸化物層が結晶質であることから、十分な初期防錆性を示さなかった。
試料No.3、5および15の比較例は、非晶質酸化物層中のPまたはSiの含有量と、非晶質酸化物層中のZnを100としたときのPおよびSiの割合が小さいため、密着性を満足しなかった。
試料30および31の比較例は、金属Zn層が存在しない、または非常に薄い場合で、鋼板表面にあらかじめZnを析出させることなく、直接Zn、PおよびSiを含む処理液を接触させたものであるが、発明例と比較して初期防錆性に著しく劣っていた。
また、試料No.15は非晶質酸化物層の厚さが1000nmを超えているため、曲げにより容易に皮膜が剥離した。
なお、参考までに、金属Zn層のみで酸化物層を有しない従来例を試料No.34として同表中に併記したが、その初期防錆性は5日で△レベルであった。また、特許文献7および8に従う鋼板表面にPやSiを含むバリヤー皮膜を形成させた従来例を試料No.35〜37として同表中に併記したが、その初期防錆性は5日で△レベルであった。
Claims (5)
- 鋼板の表面にZnを基地とする防錆膜を有する表面処理鋼板であって、該防錆膜の最表層がZnとPとSiの非晶質酸化物層からなり、全Zn量が100〜7000mg/m2であることを特徴とする表面処理鋼板。
- 前記非晶質酸化物層中におけるZn、P、Siの割合が、質量比でZn:100に対して、P:2〜30およびSi:2〜30を満足することを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板。
- 前記非晶質酸化物層の厚さが、10〜1000nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理鋼板。
- 冷延鋼板の表面に、Znを電解により金属Zn換算で100〜7000mg/m2析出させて金属Zn膜を形成し、ついでPおよびSiを含む処理液を接触させ、該金属Zn膜と単位面積:1m2当たり10〜100mgのPと10〜100mgのSiとを反応させることにより、該金属Zn膜の最表層に、質量比でZn:100に対して、P:2〜30およびSi:2〜30を含むZnとPとSiからなる非晶質酸化物層を形成することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
- 前記処理液中に、さらに、Ca、Zr、Ti、V、Mn、AlおよびMgのうちから選ばれる1種または2種以上を含有させ、前記金属Zn膜と単位面積:1m2当たり1〜20mgのCa、Zr、Ti、V、Mn、AlおよびMgのうちから選ばれる1種または2種以上とを反応させることにより、前記非晶質酸化物層中に、質量比でZn:100に対して、Ca、Zr、Ti、V、Mn、AlおよびMgのうちから選ばれる1種または2種以上:0.1〜3.5を含むことを特徴とする請求項4に記載の表面処理鋼板の製造方法。
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