JP2013148405A - 放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法及び放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去用の親水性樹脂組成物 - Google Patents

放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法及び放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去用の親水性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】従来技術の課題が解消され、簡単かつ低コストで、さらには電力等のエネルギー源を必要とせず、必要に応じて放射性廃棄物の減容化も可能な放射性ヨウ素及び放射性セシウムをともに除去処理できる方法の提供。
【解決手段】親水性樹脂組成物とゼオライトとを含んでなる親水性樹脂組成物を用いて放射性廃液及び/又は放射性固形物中の放射性ヨウ素・放射性セシウムをともに除去処理する方法であって、親水性樹脂組成物が、親水性セグメントを有し、且つ、構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基を有する、親水性ポリウレタン樹脂、親水性ポリウレア樹脂、親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂を含み、且つ、該親水性樹脂100質量部に対して、少なくとも、ゼオライトが1〜200質量部の割合で分散されてなる放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、原子力発電プラントや使用済核燃料施設から生ずる放射性廃液及び/又は放射性固形物中に存在する放射性ヨウ素・放射性セシウムをともに除去処理できる除去方法、及び該放射性ヨウ素・放射性セシウムのいずれも固定化する機能を示す親水性樹脂組成物に関する。
現在、広く普及している原子炉発電プラントにおいては、原子炉中での核分裂により相当の量の放射性副産物の生成を伴う。これら放射性物質の主なものは、放射性ヨウ素、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、放射性セリウム等の極めて危険な放射性同位元素を含む核分裂生成物および活性元素である。これらの中でも、放射性ヨウ素は184℃で気体になるため、核燃料の検査や交換の際に、更には、核燃料取扱い時の事故や原子炉暴走事故等の不慮の事由により、非常に放出され易いという危険性を有している。その対象となる放射性ヨウ素としては、長半減期のヨウ素129(半減期:1.57年×107)、短半減期のヨウ素131(半減期:8.05日)が主なものである。ここで、放射性を示さない普通のヨウ素は、人体に必須の微量元素であり、咽喉の近くの甲状腺に集められ、成長ホルモンの成分になる。このため、呼吸や水・食物を通して放射性ヨウ素を取りこむと、普通のヨウ素と同じように甲状腺に集められ、内部放射能被曝を増大させるため、特に厳格な放出放射能量の低減対策が施されなければならない。
また、放射性セシウムは、融点が28.4℃と常温付近で液状を示す金属の一つであり、放射性ヨウ素と同様に非常に放出され易いものである。この放射性セシウムは、比較的短半減期のセシウム134(半減期:2年)、長半減期のセシウム137(半減期:30年)が主なものである。特にセシウム137は、半減期が長いだけではなく、高エネルギーの放射線を放出し、且つ、アルカリ金属であるため、水への溶解性が大きいという性質を有している。さらに放射性セシウムは、呼吸や皮膚からも人体に吸収されやすく、ほぼ全身に均一に分散されるため、人への健康被害は深刻である。
このため、世界中で稼働している原子炉から不慮の事由等により偶発的に放射性セシウムが放出された場合は、原子炉で働く労働者や近隣の住民に対する放射能汚染のみならず、空気により運ばれる放射性セシウムにより汚染された食品や水を介して人間や動物へと、より広範な放射能汚染が引き起こされる。この点についての危険性は、チェルノブイリ原子力発電所の事故により明らかに実証済である。
このような事態に対し、生成された放射性ヨウ素の処理方法として、洗浄処理方式、繊維状の活性炭等を用いた固体吸着剤充填による物理・化学的処理方式(特許文献1、2参照)、イオン交換剤による処理(特許文献3参照)などが検討されている。
しかしながら、上記したいずれの方法も課題があり、これらの課題が解決された放射性ヨウ素の除去方法の開発が望まれている。まず、洗浄処理方式で実用化されているのはアルカリ洗浄法などがあるが、液体吸着剤による洗浄処理方式で処理し、これを液体のまま長期間貯蔵するのには、量的にも、また安全上も問題が多い。また、固体吸着剤充填による物理・化学的処理方式では、補足されたヨウ素は、他のガスとの交換の可能性に常に晒されており、また温度が上昇すると容易に吸着物を放出するという難点がある。更に、イオン交換剤による処理方式では、イオン交換剤の耐熱温度は100℃程度までであり、これより高温では十分な性能を発揮しないという課題がある。
一方、原子炉中での核分裂によって生成した放射性セシウムの処理方法として、無機イオン交換体や選択性イオン交換樹脂による吸着法、重金属と可溶性フェロシアン化物又はフェロシアン化物塩併用による共沈法、セシウム沈殿試薬による化学処理法などが知られている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、上述の処理方法は、いずれも循環ポンプや浄化槽さらには各吸着剤を内蔵した充填槽などの大掛かりな設備を必要とし、そしてそれらを稼働させるための多大なエネルギーを必要とする。また、2011年3月11日に発生した日本国の福島第一原発事故のように、電源が断たれたような場合にはこれらの設備は稼働できなくなるので、放射性ヨウ素や放射性セシウム等による汚染の危険度が増大する。そして、電源が断たれた場合は特に、原子炉の暴走事故により周辺地域へ拡散した放射性ヨウ素や放射性セシウム等に対しての除去方法が極めて困難な状況に陥り、放射能汚染を拡大しかねない状況となることが懸念される。したがって、このような事態が生じた場合においても対応が可能な放射性ヨウ素や放射性セシウムの除去技術の開発が急務である。また、放射性ヨウ素と放射性セシウムとを一緒に処理できる有効な除去技術が開発されれば極めて有用である。
特公昭62−44239号公報 特開2008−116280号公報 特開2005−37133号公報 特開平4−118596号公報
したがって、本発明の主たる目的は、放射性ヨウ素及び放射性セシウムを一緒に除去処理できる簡便で有効な除去技術を提供することにあるが、さらに、その場合に、従来技術の問題点を解決し、簡単且つ低コストで、さらには電力等のエネルギー源を必要とせず、しかも、除去した放射性ヨウ素及び放射性セシウムを固体内部に取り込んで安定的に固定化することができ、必要に応じて放射性廃棄物の減容化も可能な、新規な放射性ヨウ素・放射性セシウムの同時除去技術を提供することにある。本発明の目的は、特に、上記した放射性ヨウ素及び放射性セシウムのいずれに対しても固定化できる機能を有し、これらを一緒に除去処理することが実現できる新規な親水性樹脂組成物を提供することにある。
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、放射性廃液及び/又は放射性固形物中の放射性ヨウ素・放射性セシウムをともに、親水性樹脂組成物とゼオライトとを含んでなる親水性樹脂組成物を用いて除去処理する放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法であって、上記親水性樹脂組成物が、親水性セグメントを有し、且つ、構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基を有する、親水性ポリウレタン樹脂、親水性ポリウレア樹脂、親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂を含み、且つ、該親水性樹脂100質量部に対して、少なくとも、ゼオライトが1〜200質量部の割合で分散されてなることを特徴とする放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法を提供する。
本発明の好ましい形態としては、下記のことが挙げられる。上記親水性セグメントが、ポリエチレンオキサイドセグメントであること。上記親水性樹脂が、少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリオール又は少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリアミンを原料の一部として形成された樹脂であること。上記ゼオライトが、下記の一般式(1)で表せる化合物であることである。
Figure 2013148405
[但し、式(1)中、M2+は、Ca2+、Mn2+、Ba2+又はMg2+のいずれかであり、M+は、Na+、K+又はLi+のいずれかであり、mは1〜18のいずれかの数、nは1〜70のいずれかの数である。]
本発明では、別の実施形態として、液中及び/又は固形物中の放射性ヨウ素・放射性セシウムのいずれをも固定できる機能を示す親水性樹脂組成物であって、親水性樹脂とゼオライトとを含み、該親水性樹脂が、少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリオール又は少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリアミンを原料の一部として形成された、親水性セグメントと、分子鎖中に第3級アミノ基を有してなる、水及び温水に不溶解性の樹脂であり、且つ、該親水性樹脂100質量部に対して、少なくとも、ゼオライトが1〜200質量部の割合で分散されていることを特徴とする放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去用の親水性樹脂組成物を提供する。
さらに本発明では、別の実施形態として、液中及び/又は固形物中の放射性ヨウ素・放射性セシウムのいずれをも固定できる機能を有する親水性樹脂組成物であって、親水性樹脂とゼオライトとを含み、該親水性樹脂が、有機ポリイソシアネートと、親水性成分である高分子量の親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物を反応させて得られた、親水性セグメントを有し、且つ、構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基を有する、親水性ポリウレタン樹脂、親水性ポリウレア樹脂、親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、且つ、該親水性樹脂100質量部に対して、少なくとも、ゼオライトが1〜200質量部の割合で分散されていることを特徴とする放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去用の親水性樹脂組成物を提供する。
上記したいずれかの本発明の親水性樹脂組成物の好ましい形態としては、上記親水性セグメントが、ポリエチレンオキサイドセグメントであること;上記ゼオライトは、下記の一般式(1)で表せる化合物であること、が挙げられる。
Figure 2013148405
[但し、式(1)中、M2+は、Ca2+、Mn2+、Ba2+又はMg2+のいずれかであり、M+は、Na+、K+又はLi+のいずれかであり、mは1〜18のいずれかの数、nは1〜70のいずれかの数である。]
本発明によれば、液中や固形物中に存在している放射性ヨウ素や放射性セシウムを一緒に除去処理できる有効で、しかも簡便な除去技術の提供が可能になる。より具体的には、本発明によれば、放射性ヨウ素と放射性セシウムを、簡便に且つ低コストで、更には電力等のエネルギー源を必要とせず、しかも、除去した放射性ヨウ素及び放射性セシウムを固体内部に取り組んで安定的に固定化することができ、必要に応じて放射性廃棄物の減容化も可能である、放射性ヨウ素及び放射性セシウムを一緒に除去処理できる新規な技術が提供される。また、本発明によれば、特に、放射性ヨウ素及び放射性セシウムのいずれに対しても固定化できる機能を有し、これらを一緒に除去処理することを実現可能にでき、その主成分が樹脂組成物であることから必要に応じて放射性廃棄物の減容化も可能な新規な親水性樹脂組成物が提供される。本発明のこれらの顕著な効果は、有機ポリイソシアネートと、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミン(以下「親水性成分」という)と、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物とを反応させて得られる親水性ポリウレタン樹脂、親水性ポリウレア樹脂、親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂に、ゼオライトを分散させて得られる親水性樹脂組成物を利用するという極めて簡便な方法で達成される。
水溶液中のヨウ素濃度と、実施例1〜3の親水性樹脂組成物で作製したフィルムの浸漬時間との関係を示す図。 水溶性中のセシウム濃度と、実施例1〜3の親水性樹脂組成物で作製したフィルムの浸漬時間との関係を示す図。 水溶液中のヨウ素濃度と、比較例1、2の非親水性樹脂組成物で作製したフィルムの浸漬時間との関係を示す図。 水溶液中のセシウム濃度と、比較例1、2の非親水性樹脂組成物で作製したフィルムの浸漬時間との関係を示す図。
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の除去方法を特徴づける本発明の親水性樹脂組成物は、親水性樹脂にゼオライトを分散させた組成物からなり、該親水性樹脂は、親水性成分を構成単位とする親水性セグメントと、少なくとも1個の第3級アミノ基を有する成分を構成単位とする第3級アミノ基含有セグメントを有していることを特徴とする。すなわち、本発明で使用する親水性樹脂は、その構造中に、親水性成分を構成単位とする親水性セグメントと、少なくとも1個の第3級アミノ基を有する成分を構成単位とする第3級アミノ基含有セグメントとを有しているものであればよい。これらのセグメントは、親水性樹脂の合成時に、鎖延長剤を使用しない場合は、それぞれランダムに、ウレタン結合、ウレア結合又はウレタン−ウレア結合等で結合されている。親水性樹脂の合成時に、鎖延長を使用する場合には、上記の結合とともに、これらの結合の間に鎖延長剤の残基である短鎖が存在するものになる。
本発明における「親水性樹脂」とは、その分子中に親水性基を有しているが、水や温水等には不溶解性の樹脂を意味しており、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース誘導体等の水溶性樹脂とは区別されるものである。その詳細については後述する。
本発明の親水性樹脂組成物は、親水性樹脂とゼオライトとを含んでなるが、該組成物を用いることで、放射性ヨウ素及び放射性セシウムを一緒に除去処理することが可能となった理由について、本発明者らは下記のように考えている。まず、本発明で使用する親水性樹脂は、親水性セグメントにより優れた吸水性を示すが、更に、その構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基が導入されることによって、イオン化した放射性ヨウ素との間にイオン結合が形成され、その結果、親水性樹脂中に定着されたものと考えられる。
しかし、水分の存在下では上記の如きイオン性結合は解離し易いことから、一定時間経過すれば再び放射性ヨウ素は樹脂から放出されるものと考えられ、本発明者らは、樹脂中における放射性ヨウ素の定着状態を固定化し除去することは難しいものと予想していた。しかしながら、本発明者らの検討によれば、実際には、イオン結合した放射性ヨウ素は長時間立っても樹脂中に定着されたままであることがわかった。この理由は定かではないが、本発明者らは、下記のように考えている。すなわち、本発明において用いる特定の親水性樹脂では、その分子内には疎水性部分も存在しており、該樹脂中の第3級アミノ基と放射性ヨウ素との間にイオン結合が形成された後、この疎水性部分が、親水性部分(親水性セグメント)及び上記イオン結合部分の周りを取り囲むようになるためではないかと推察している。このような理由から、本発明では、特有の構造を有する親水性樹脂を含む本発明の親水性樹脂組成物を用いることで、放射性ヨウ素が樹脂に固定化し、その除去が可能となったものと考えられる。
さらに、本発明では、ゼオライトを含む本発明の親水性樹脂組成物を用いることで、上記した放射性ヨウ素の除去に加えて、放射性セシウムの除去をも可能にし、放射性ヨウ素と放射性セシウムとを同時に除去処理することを達成する。以下、本発明で使用するゼオライトについて説明する。ゼオライトは、人工的に合成することも可能であるが、シリコンとアルミと酸素からなる、分子レベルの微細な孔を持った天然に産する結晶性化合物であり、種々の結晶構造を有するものが知られている。ゼオライトは、非常に大きな表面積を持つ細孔を有する特有の結晶構造を有することから、ガスやイオン等に対する高い吸着能や、様々な化学反応を助ける触媒能を示し、さらに、細孔の大きさによる分子の篩分けも可能であることから、広範な分野で使用されている。
天然のゼオライトは、下記一般式(1)で表されるアルミノケイ酸塩のなかで結晶構造中に上記したような空隙(細孔)を持つ鉱物であるが、本発明に使用可能である。
Figure 2013148405
[但し、式(1)中、M2+は、Ca2+、Mn2+、Ba2+又はMg2+のいずれかであり、M+は、Na+、K+又はLi+のいずれかであり、mは1〜18のいずれかの数、nは1〜70のいずれかの数である。]
ゼオライトは、先に述べたように触媒や吸着材料として広く利用されているが、これらに加えて、ゼオライトに含まれる正イオンは別のイオンに簡単に交換できるので高いイオン交換性を示し、しかも樹脂には不向きな高温等の条件でも使用可能であることから、イオン交換材料としても有用である。本発明では、先に述べたゼオライトのもつ高い吸着機能に加えて、特に、ゼオライトのもつイオン交換性を利用することで、液中及び/又は固形物中に存在する放射性セシウムを除去する。ここで、ゼオライトのもつイオン交換性について、具体的に説明する。ゼオライトのもつイオン交換性は、下記に述べるように、ゼオライトの骨格を形成する結晶構造に起因して発現される。ゼオライトの骨格(結晶格子)を作る成分の一つであるケイ素(Si)は4価であるので、2価の負イオンである酸素とはSiO2という組成で電荷のバランスがとれるが、もう一つの成分であるアルミニウム(Al)は3価であるので、AlがSiの代わりに骨格に入ると、正の電荷が1個不足し、陽イオンの欠損ができる。そのため、ゼオライトには別の陽イオンが含まれており、この生じた欠損部分に、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)等の陽イオンを取り込んで、荷電のバランスを取っている。この取り込まれたゼオライト中に含まれる陽イオンは、水溶液中で他の陽イオンと互いに入れ替わる性質があるため、ゼオライトは、高いイオン交換性を示す。ここで、ゼオライトのもつ陽イオン交換の優先順位は下記の通りである。
<イオン交換順位>
セシウム(Cs)>ルビジウム(Rb)>NH4>バリウム(Ba)>ストロンチウム(Sr)>Na>Ca>鉄(Fe)>Al>マグネシウム(Mg)>リチウム(Li)
上記したように、セシウムやストロンチウムのイオン交換順位が高いことから、ゼオライトのもつイオン交換性を、放射性セシウム等の放射性物質の除去に利用できるとされており、この点は公知である。本発明では、上記した放射性ヨウ素を除去することができる特有の構造を有する親水性樹脂に、上記した放射性セシウム等の放射性物質を除去することができるゼオライトを分散させた本発明の親水性樹脂組成物を用いることで、放射性ヨウ素と放射性セシウムを一緒に除去処理することを可能にできる技術を提供する。
本発明を特徴づける放射性ヨウ素を除去することができる特有の構造を有する親水性樹脂は、有機ポリイソシアネートと、親水性成分である高分子量の親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物とを反応させて得られる。すなわち、本発明で使用する親水性樹脂の構造中に、親水性セグメントと第3級アミノ基を導入するために使用する化合物は、分子中に少なくとも1個の活性水素含有基(反応性基)を有し、且つ、その分子鎖中に第3級アミノ基を有するものが挙げられる。少なくとも1個の活性水素含有基を有する化合物としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、酸ハライド基、カルボキシエステル基、酸無水物基等の反応性基を有する化合物が挙げられる。
上記の如き反応性基を有する第3級アミノ基含有化合物の好ましい例としては、例えば、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2013148405
[式(2)中の、R1は、炭素数20以下のアルキル基、脂環族基、又は芳香族基(ハロゲン、アルキル基で置換されていてもよい)であり、R2及びR3は、−O−、−CO−、−COO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−SO2−等で連結されていてもよい低級アルキレン基であり、X及びYは、−OH、−COOH、−NH2、−NHR1(R1は上記と同じ定義である)、−SH等の反応性基であり、X及びYは、同一でも異なってもよい。また、X及びYは、上記の反応性基に誘導できるエポキシ基、アルコキシ基、酸ハライド基、酸無水物基、又はカルボキシルエステル基でもよい。]
Figure 2013148405
[式(3)中の、R1、R2、R3、X及びYは前記式(2)におけるものと同じ定義であるが、但し2つのR1同士は環状構造を形成するものであってもよい。R4は−(CH2)n−(該式中のnは0〜20の整数)である。]
Figure 2013148405
[式(4)中の、X及びYは前記式(2)におけるものの定義と同じであり、Wは窒素含有複素環、窒素と酸素含有複素環、又は窒素と硫黄含有複素環を表す。]
上記の一般式(2)、(3)及び(4)で表される化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。例えば、N,N−ジヒドロキシエチル−メチルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−エチルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−イソプロピルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−n−ブチルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−t−ブチルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−m−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−m−クロロアニリン、N,N−ジヒドロキシエチルベンジルアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−N’,N’−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン、N−ヒドロキシエチル−ピペラジン、N,N−ジヒドロキシエチル−ピペラジン、N−ヒドロキシエトキシエチル−ピペラジン、1,4−ビスアミノプロピル−ピペラジン、N−アミノプロピル−ピペラジン、ジピコリン酸、2,3−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジン−ジメタノール、2−(4−ピリジル)−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,6−ジアミノトリアジン、2,5−ジアミノトリアゾール、2,5−ジアミノオキサゾールなどが挙げられる。
また、これらの第3級アミノ化合物のエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等も本発明に使用できる。その付加物としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。なお、下記いずれかの式中のmは1〜60のいずれかの整数を、nは1〜6のいずれかの整数を表す。
Figure 2013148405
Figure 2013148405
Figure 2013148405
Figure 2013148405
Figure 2013148405
Figure 2013148405
Figure 2013148405
Figure 2013148405
本発明を特徴づける親水性樹脂の合成に用いられる有機ポリイソシアネートとしては、従来のポリウレタン樹脂の合成における公知のものがいずれも使用でき、特に制限されない。好ましいものとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素添加MDI、イソホロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等、或いはこれらの有機ポリイソシアネートと低分子量のポリオールやポリアミンを末端イソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマー等も使用することができる。
上記した有機ポリイソシアネートとともに、本発明を特徴づける親水性樹脂の合成に用いられる親水性成分としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等を有する重量平均分子量(GPCで測定した標準ポリスチレン換算値。以下同じ。)が400〜8,000の範囲の親水性を有する化合物が好ましい。末端が水酸基で、親水性を有するポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリテトラメチレングリコール共重合ポリオール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合ポリオール、ポリエチレングリコールアジペートポリオール、ポリエチレングリコールサクシネートポリオール、ポリエチレングリコール/ポリε−ラクトン共重合ポリオール、ポリエチレングリコール/ポリバレロラクトン共重合ポリオール等が挙げられる。
末端がアミノ基で、親水性を有するポリアミンとしては、例えば、ポリエチレンオキサイドジアミン、ポリエチレンオキサイドプロピレンオキサイドジアミン、ポリエチレンオキサイドトリアミン、ポリエチレンオキサイドプロピレンオキサイドトリアミン等が挙げられる。その他、カルボキシル基やビニル基を有するエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
本発明においては、親水性樹脂に耐水性を付与するため、上記の親水性成分とともに、親水鎖を有しない他のポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸等を併用することも可能である。
本発明を特徴づける親水性樹脂の合成の際に必要に応じて使用される鎖延長剤としては、例えば、低分子ジオールやジアミン等の従来公知の鎖延長剤がいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
以上の原料成分を用いて得られる親水性セグメントと、第3級アミノ基を分子鎖中に有する親水性樹脂は、重量平均分子量は、3,000〜800,000の範囲のものであること好ましい。更に好ましい重量平均分子量は、5,000〜500,000の範囲である。
本発明に特に好適に用いられる親水性樹脂中における第3級アミノ基の含有量(当量)としては、0.1〜50eq/kgの範囲が好ましく、更に好ましくは0.5〜20eq/kgである。第3級アミノ基の含有量が0.1eq/kg未満、すなわち分子量10,000当たり1個未満では、本発明の所期の目的である放射性ヨウ素の除去性の発現が不十分となり、一方、第3級アミノ基の含有量が50eq/kg超、すなわち分子量10,000当たり500個超では樹脂中の親水性部分の減少による疎水性が強くなり、吸水性能に劣るようになるので好ましくない。
また、本発明に特に好適に用いられる親水性樹脂の親水性セグメントの含有量としては、30〜80質量%の範囲が好ましく、更には50〜75質量%の範囲が好ましい。親水性セグメントの含有量が30質量%未満では、吸水性能に劣り放射性ヨウ素の除去性が低下するので好ましくない。一方、80質量%を超えると、耐水性に劣るようになるので好ましくない。
本発明の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法に用いられる本発明の親水性樹脂組成物は、上述した親水性樹脂に、先に述べたゼオライトを分散させることによって得られる。具体的には、上述した親水性樹脂に、ゼオライトと分散溶媒を入れ、所定の分散機によって分散操作を行うことにより製造することができる。上記分散に使用する分散機としては、通常顔料分散に用いる分散機であれば問題なく使用することができる。例えば、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、パールミル(以上、アイリッヒ社製)、サンドミル、ビスコミル、アトライターミル、バスケットミル、湿式ジェットミル(以上、ジーナス社製)等が挙げられるが、分散性と経済性を鑑みて選択し、設定するのが好ましい。また、メディアとしては、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ等を用いることができる。
本発明の親水性樹脂組成物における親水性樹脂とゼオライトとの分散割合は、親水性樹脂100質量部に対してゼオライトを1〜200質量部の割合で配合したものを用いるとよい。ゼオライトが1質量部未満では、放射性セシウムの除去効果が不十分になるおそれがあり、200質量部を超えると組成物の機械物性が弱くなるとともに、耐水性に劣るようになり、放射能汚染水中で形状を保てなくなるおそれがあるので好ましくない。また、本発明の親水性樹脂組成物における親水性樹脂とゼオライトの組成比の決定に際しては、前記したゼオライトのイオン交換順位に従って、ゼオライト中からイオン交換後のイオンが水溶液中に溶出するので、二次汚染の発生を防ぐためには、この点についても考慮する必要がある。
本発明の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法を実施するにあたっては、上記した構成からなる本発明の親水性樹脂組成物を下記のような形態で使用することが好ましい。すなわち、親水性樹脂組成物の溶液を、離型紙や離型フィルム等に、乾燥後の厚みが5〜100μm、好ましくは10〜50μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥させて得られたフィルム状にしたものが挙げられる。この場合には、使用時に、離型紙や離型フィルム等から剥離して、放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去フィルムとして使用する。また、その他、各種基材に、先に説明した原料から得られる樹脂溶液を塗布又は含浸して使用してもよい。この場合の基材としては、金属、ガラス、木材、繊維、各種プラスチック等が使用できる。
上記のようにして得られた、本発明の親水性樹脂組成物製の、フィルム又は各種基材に塗布したシートを、放射性廃液や、放射性固形物を予め水で除染した廃液などに浸漬することにより、これらの液中に存在する放射性ヨウ素及び放射性セシウムの両方を選択的に除去することができる。また、放射能で汚染された固形物等に対しては、本発明の親水性樹脂組成物製のフィルムやシートで固形物等を覆うことによって、放射性ヨウ素及び放射性セシウムの拡散を防ぐことができる。
本発明の親水性樹脂組成物製のフィルムやシートは水には溶けないため、除染後に、容易にその廃液から取りだすことができる。このように、放射性ヨウ素・放射性セシウムの両方を除去するのに特別な設備も電力も必要とせず、簡単にかつ低コストで除染することができる。さらには、吸水した水分を乾燥させ100〜170℃に加熱すれば、樹脂が軟化して体積の収縮が起こり放射性廃棄物の減容化の効果も期待できる。
次に、具体的な製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の各例における「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
[製造例1](第3級アミノ基含有−親水性ポリウレタン樹脂の合成)
攪拌機、温度計、ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、ポリエチレングリコール(分子量2,040)150部、N−メチルジエタノールアミン20部、ジエチレングリコール5部を、200部のメチルエチルケトン(以下、MEKと略記)と150部のジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記)との混合溶剤中に溶解し、60℃でよく撹拌した。そして、撹拌しながら、74部の水素添加MDIを112部のMEKに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で6時間反応させて、本発明で規定する親水性樹脂溶液を得た。この樹脂溶液は、固形分35%で、530dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この溶液から形成した親水性樹脂フィルムは、破断強度24.5MPa、破断伸度が450%であり、熱軟化温度は115℃であった。
[製造例2](第3級アミノ基含有−親水性ポリウレア樹脂の合成)
製造例1で使用したのと同様の反応器に、ポリエチレンオキサイドジアミン(ハンツマン社製「ジェファーミンED」(商品名);分子量2,000)150部、メチルイミノビスプロピルアミン30部及び1,4−ジアミノブタン4部を、DMF200部に溶解し、内温を20〜30℃でよく撹拌した。そして、撹拌しながら、83部の水素添加MDIを100部のDMFに溶解した溶液を徐々に滴下して、反応させた。滴下終了後、次第に内温を上昇させ、50℃に達したところで更に6時間反応させた後、195部のDMFを加え、本発明で規定する親水性樹脂溶液を得た。この樹脂溶液は、固形分35%で、230dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この樹脂溶液から形成した親水性樹脂フィルムは、破断強度が27.6MPa、破断伸度が310%であり、熱軟化温度は145℃であった。
[製造例3](第3級アミノ基含有−親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂の合成)
製造例1で使用したのと同様の反応容器に、ポリエチレンオキサイドジアミン(ハンツマン社製「ジェファーミンED」(商品名);分子量2,000)150部、N,N−ジメチル−N’,N’−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン30部及びトリエチレングリコール6部を、DMF140部に溶解した。そして、内温20〜30℃でよく撹拌しながら、70部の水素添加MDIを200部のMEKに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で6時間反応させた後、MEK135部を加え、本発明で規定した親水性樹脂溶液を得た。この樹脂溶液は、固形分35%で、280dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この樹脂溶液から形成した親水性樹脂フィルムは、破断強度が14.7MPa、破断伸度が450%であり、熱軟化温度は107℃であった。
[製造例4](比較例で使用する第3級アミノ基非含有−非親水性ポリウレタン樹脂の合成)
製造例1で使用したのと同様の反応容器を窒素置換し、平均分子量約2,000のポリブチレンアジペート150部と1,4−ブタンジオール15部とを、250部のDMF中に溶解した。そして、60℃でよく攪拌しながら、62部の水素添加MDIを171部のDMFに溶解したものを徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で6時間反応させて、比較例で使用する樹脂溶液を得た。この樹脂溶液は、固形分35%で、3.2MPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この溶液から得られた非親水性樹脂フィルムは、破断強度が45MPa、破断伸度が480%であり、熱軟化温度は110℃であった。
[製造例5](比較例で使用する第3級アミノ基含有−非親水性ポリウレタン樹脂の合成)
製造例1で使用したのと同様の反応容器を窒素置換し、平均分子量約2,000のポリブチレンアジペート150部、N−メチルジエタノールアミン20部、ジエチレングリコール5部を、200部のMEKと150部のDMFとの混合溶剤中に溶解した。そして、60℃でよく撹拌しながら、74部の水素添加MDIを112部のMEKに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で6時間反応させて比較例で用いる樹脂溶液を得た。この樹脂溶液は、固形分35%で、510dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この溶液から形成した非親水性樹脂フィルムは、破断強度が23.5MPa、破断伸度が470%であり、熱軟化温度は110℃であった。
上記製造例1〜5で得られた各樹脂について、その特性を表1に示した。具体的には、親水性の評価、重量平均分子量、及び重量平均分子量1,000当たりの第3級アミノ基当量(eq/kg)は下表1のとおりであった。
Figure 2013148405
<実施例1〜3、比較例1〜2>
製造例1〜5の各樹脂溶液と、ゼオライト(サン・ゼオライト工業(株)製)とを、表2に示した各配合(質量基準で表示)で、高密度アルミナボール(3.5g/ml)を使用してボールミル分散で24時間分散した。そして分散後の内容物を、ポリエステル樹脂製の100メッシュのふるいを通して取り出して、樹脂溶液とゼオライトとを含んでなる液状の各樹脂組成物を得た。
Figure 2013148405
[評価]
(樹脂フィルムの作製)
上記した実施例1〜3及び比較例1、2の液状の核樹脂組成物をそれぞれ用い、下記のようにして各樹脂フィルムを作製した。具体的には、離型紙上に、上記各樹脂組成物を塗布した後、110℃で3分加熱乾燥して溶剤を揮散させて、約20μmの厚さの各樹脂フィルムを作製した。次に、このようにして得た各樹脂フィルムを用い、下記の方法で、ヨウ素イオン及びセシウムイオンの除去に対する効果を評価した。
(評価試験用のヨウ素溶液及びセシウム溶液の作製)
評価試験用のヨウ素溶液は、イオン交換処理した純水にヨウ化カリウムを、ヨウ素イオン濃度が200mg/L(200ppm)となるよう溶解し調製した。また、評価試験用のセシウム溶液は、イオン交換処理した純水に塩化セシウムを、セシウムイオン濃度が200mg/L(200ppm)となるよう溶解し調製した。なお、ヨウ素イオン及びセシウムイオンが除去できれば、当然に、放射性ヨウ素及び放射性セシウムの除去ができる。
<実施例1の樹脂組成物についての評価結果>
実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルム20gを、先に評価試験用に調製したヨウ素溶液50mlとセシウム溶液50mlの混合溶液中に浸漬し(25℃)、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度をイオンクロマトグラフ(東ソー製;IC2001)で測定した。測定結果を表3に示したが、表3に示した通り、経過時間毎に、溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度がともに減少することが確認された。表3中に経過時間毎の溶液中のこれらのイオンの除去率を合わせて記載した。また、得られた経時変化の結果をグラフ化して、図1及び図2に示した。
Figure 2013148405
<実施例2の樹脂組成物についての評価結果>
実施例2の親水性樹脂組成物で作製した樹脂フィルム20gを用いた以外は、実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルムを用いたのと同様にして、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度を測定した。得られた結果を、先に説明した実施例1の場合と同様に、表4と、図1及び図2に示した。
Figure 2013148405
<実施例3の樹脂組成物についての評価結果>
実施例3の親水性樹脂組成物で作製した樹脂フィルム20gを用いた以外は、実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルムを用いたのと同様にして、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度を測定した。得られた結果を、先に説明した実施例1の場合と同様に、表5と、図1及び図2に示した。
Figure 2013148405
<比較例1の樹脂組成物についての評価結果>
比較例1の非親水性樹脂組成物で作製した樹脂フィルム20gを用いた以外は、実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルムを用いたのと同様にして、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度を測定した。得られた結果を、先に説明した実施例1の場合と同様に、表6と、図3及び図4に示した。
Figure 2013148405
<比較例2の樹脂組成物についての評価結果>
比較例2の非親水性樹脂組成物で作製した樹脂フィルム20gを用いた以外は、実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルムを用いたのと同様にして、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度を測定した。得られた結果を、先に説明した実施例1の場合と同様に、表7と、図3及び図4に示した。
Figure 2013148405
本発明の活用例としては、放射性廃液及び/又は放射性固形物中の放射性ヨウ素及び放射性セシウムを、簡単且つ低コストで、さらには電力等のエネルギー源を必要とせずに除去できるため、この新しい放射性ヨウ素・放射性セシウムの同時除去方法を実施することで、近時、問題となっている廃液中や固形物中に混在している放射性物質を、簡便に、経済的に除去することが可能になるので、その実用価値は極めて高い。さらに、本発明の技術では、特有の構造を有する親水性樹脂とゼオライトとを含んでなる親水性樹脂組成物に、除去した放射性ヨウ素及び放射性セシウムを取り込んで安定的に固定化することができ、さらに、その主成分が樹脂組成物であることから、必要に応じて放射性廃棄物の減容化も可能であるので、放射性物質の除去処理後に生じる大量の放射性廃棄物における問題も軽減でき、その利用が期待される。

Claims (8)

  1. 放射性廃液及び/又は放射性固形物中の放射性ヨウ素・放射性セシウムをともに、親水性樹脂組成物とゼオライトとを含んでなる親水性樹脂組成物を用いて除去処理する放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法であって、
    上記親水性樹脂組成物が、親水性セグメントを有し、且つ、構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基を有する、親水性ポリウレタン樹脂、親水性ポリウレア樹脂、親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂を含み、且つ、
    該親水性樹脂100質量部に対して、少なくとも、ゼオライトが1〜200質量部の割合で分散されてなることを特徴とする放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法。
  2. 前記親水性セグメントが、ポリエチレンオキサイドセグメントである請求項1に記載の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法。
  3. 前記親水性樹脂が、少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリオール又は少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリアミンを原料の一部として形成された樹脂である請求項1又は2に記載の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法。
  4. 前記ゼオライトが、下記の一般式(1)で表せる化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法。
    Figure 2013148405
    [但し、式(1)中、M2+は、Ca2+、Mn2+、Ba2+又はMg2+のいずれかであり、M+は、Na+、K+又はLi+のいずれかであり、mは1〜18のいずれかの数、nは1〜70のいずれかの数である。]
  5. 液中及び/又は固形物中の放射性ヨウ素・放射性セシウムのいずれをも固定できる機能を有する親水性樹脂組成物であって、
    親水性樹脂とゼオライトとを含み、
    該親水性樹脂が、少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリオール又は少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリアミンを原料の一部として形成された、親水性セグメントと、分子鎖中に第3級アミノ基を有してなる、水及び温水に不溶解性の樹脂であり、且つ、
    該親水性樹脂100質量部に対して、少なくとも、ゼオライトが1〜200質量部の割合で分散されていることを特徴とする放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去用の親水性樹脂組成物。
  6. 液中及び/又は固形物中の放射性ヨウ素・放射性セシウムのいずれをも固定できる機能を示す親水性樹脂組成物であって、
    親水性樹脂とゼオライトとを含み、
    該親水性樹脂が、有機ポリイソシアネートと、親水性成分である高分子量の親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物を反応させて得られた、親水性セグメントを有し、且つ、構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基を有する、親水性ポリウレタン樹脂、親水性ポリウレア樹脂、親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、且つ、
    該親水性樹脂100質量部に対して、少なくとも、ゼオライトが1〜200質量部の割合で分散されていることを特徴とする放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去用の親水性樹脂組成物。
  7. 前記親水性セグメントが、ポリエチレンオキサイドセグメントである請求項5又は6に記載の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去用の親水性樹脂組成物。
  8. 前記ゼオライトが、下記の一般式(1)で表せる化合物である請求項5〜7のいずれか1項に記載の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去用の親水性樹脂組成物。
    Figure 2013148405
    [但し、式(1)中、M2+は、Ca2+、Mn2+、Ba2+又はMg2+のいずれかであり、M+は、Na+、K+又はLi+のいずれかであり、mは1〜18のいずれかの数、nは1〜70のいずれかの数である。]
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