JP2013147564A - モノアリルジグリシジルイソシアヌレート単独重合体及びこれを含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

モノアリルジグリシジルイソシアヌレート単独重合体及びこれを含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】変異原性の低減した新規な高分子性エポキシ化合物及びこれを含む耐水性が改善され且つ安全性の高い脂肪族ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)
【化1】
Figure 2013147564

で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MA−DGIC)単独重合体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、脂肪族ポリエステル樹脂の耐水性(耐加水分解性)の改善剤として有用な、新規化合物であるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート単独重合体及びこれを含む耐水性の改善された脂肪族ポリエステル樹脂組成物に関する。
ポリグリコール酸やポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルは、土壌や海中などの自然界に存在する微生物または酵素により分解されるため、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。また、脂肪族ポリエステルは、生体内分解吸収性を有しているため、手術用縫合糸や人工皮膚などの医療用高分子材料としても利用されている。
脂肪族ポリエステルの中でも、ポリグリコール酸は、酸素ガスバリア性、炭酸ガスバリア性、水蒸気バリア性などのガスバリア性に優れ、耐熱性や機械的強度にも優れているので、包装材料などの分野において、単独で、あるいは他の樹脂材料などと複合化して用途展開が図られている。
しかしながら、ポリグリコール酸を含む脂肪族ポリエステルは一般に加水分解性であり、特にポリグリコール酸はその傾向が強く、その加水分解に伴い、バリア性や強度が低下するという問題がある。
ポリグリコール酸を含む脂肪族ポリエステルの加水分解は、その末端カルボキシル基の存在により促進されることが知られている。したがって、脂肪族ポリエステルに、カルボジイミド化合物(特許文献1)あるいはエポキシ化物(特許文献2)等のカルボキシル基封止剤を配合して、脂肪族ポリエステルのカルボキシル末端基を封止して耐加水分解性(あるいは耐水性)を向上した脂肪族ポリエステル組成物(特許文献1および2)が知られている。また、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等のカルボキシル基封止剤に加えて、熱安定剤あるいは重合触媒不活性化剤を併用添加した脂肪族ポリエステル組成物(特許文献3および4)も知られている。更には、ポリグリコ−ル酸樹脂の加水分解性が残留グリコリド量と相関することも知られている(特許文献5)。
これらカルボキシル基封止剤のうち、特許文献2および4に開示されるようなエポキシ化合物については、変異原性(生物の遺伝情報伝達物質(DNAあるいは染色体)に変化を引き起こす物質(変異原)のそのような性質)が懸念され、これを配合した脂肪族ポリエステル樹脂については、例えば食品用包装材料として使用した際の安全性が懸念される。
特開2001−261797号公報 WO2006/104092号公報 WO2007/063941号公報 特開2005−314444号公報 WO2007/060981号公報
本発明の目的は、変異原性の低減した新規な高分子性エポキシ化合物としてのモノアリルジグリシジルイソシアヌレート単独重合体及びこれを含む耐水性が改善され且つ安全性の高い脂肪族ポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MA−DGIC)の重合により得られた新規物質である単独重合体(MA−DGIC単独重合体)が、脂肪族ポリエステルに対し耐水性向上効果を示すとともに従来脂肪族ポリエステルの耐水性向上剤として知られるエポキシ化合物の代表例であるトリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)に比べて著しく低い変異原性を有することを確認して本発明に到達したものである。すなわち、本発明は、下記一般式(1)
Figure 2013147564
で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MA−DGIC)単独重合体を与えるものである。
また本発明は、脂肪族ポリエステルに加えて、上記MA−DGIC単独重合体を耐水性改善剤として含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物を与える。
(モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MA−DGIC)単独重合体)
本発明のMA−DGIC単独重合体は、例えば特開2000−344867号公報に合成例が示されるように、モノアリルイソシアヌレートとエピクロロヒドリンとの反応液の油層の濃縮ならびに精製により得られる公知物質であるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MA−DGIC)、の重合により得られる。重合方法としては溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法あるいは塊状重合法等の公知の重合法が用いられる。またその重合反応としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の公知の反応により実施することができる。
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MA−DGIC)をラジカル重合法で重合する場合、重合開始剤として過酸化物、アゾ化合物やレドックス開始剤等の公知の化合物を用いる。過酸化物のうち有機化酸化物としては、例えば2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレートなどのペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、m−トリオイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジ−n−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルジペルオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどのペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。重合を行う温度と重合開始剤の半減期温度を踏まえて、これらの開始剤から使用するものの選択を行う。
ラジカル重合法で実施する場合、重合度の調整のために連鎖移動剤を使用することも可能である。連鎖移動剤としては、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、トルエン、ベンゼン等の公知の化合物を用いることができる。またこれらのうち、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MA−DGIC)モノマーの溶解性が高いものは溶液重合法における溶媒としても用いることができる。
本発明のMA−DGIC単独重合体は、上記各種重合態様の選択あるいは組み合わせにより、重量平均分子量(Mw)として1000〜1000000の幅広い分子量のものが得られる。特に、ラジカル溶液重合法によれば、脂肪族ポリエステルの耐水性向上剤としての使用に適した、重量平均分子量(Mw)が1000〜50000、特に10000〜15000、多分散度(=Mw/数平均分子量(Mn))が1.5〜3.0、ガラス転移温度(Tg)が60〜100℃程度のものが、容易に形成可能である。
(脂肪族ポリエステル)
本発明のMA−DGIC単独重合体とともに、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を構成すべき脂肪族ポリエステルとしては、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリド(GL)及び乳酸の2分子間環状エステルであるラクチドを含むラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、カーボネート類(例えばトリメチレンカーボネート等)、エーテル類(例えば1,3−ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えばジオキサノン等)、アミド類(εカプロラクタム等)などの環状モノマー;グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;等の脂肪族エステルモノマー類の単独または共重合体が含まれる。なかでも、耐熱性の観点でヒドロキシカルボン酸の単独または共重合体が好ましく、特に耐熱性、ガスバリア性、機械的強度に優れるが耐水性向上の必要性の強いグリコール酸(グリコリドを含む)の単独または共重合体を含むポリグリコール酸樹脂が好ましく用いられる。
より詳しくは、本発明で使用するポリグリコール酸樹脂(以下、しばしば「PGA樹脂」という)は、−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸の単独重合体、すなわちポリグリコール酸(PGA、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリド(GL)の開環重合物を含む)に加えて、上記グリコール酸繰り返し単位を70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含むグリコール酸共重合体を含むものである。グリコール酸繰り返し単位の含有量が高いほど良好なバリア性が得られる。この限りで、PGA樹脂は、2種以上のグリコール酸(共)重合体を併用してもよい。
コモノマーとしては、上記した脂肪族ポリエステル樹脂を構成するモノマーのうちグリコール酸以外のもの、特にα−ヒドロキシカルボン酸、なかでも乳酸(あるいはそのラクチド)が好ましく用いられる。
本発明で使用されるグリコール酸(共)重合体(PGA樹脂)は、温度240℃及び剪断速度100sec−1の条件下で測定した溶融粘度が、100〜10,000Pa・s、より好ましくは300〜8,000Pa・s、特に好ましくは400〜5,000Pa・sの範囲内にあることが好ましい。
また、PGA樹脂は、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いるGPC測定における分子量(ポリメチルメタクリレート換算のMw(重量平均分子量))が3万〜80万、特に5万〜50万、の範囲であることが好ましい。分子量が小さ過ぎると、成形物としたときの強度が不足しがちである。逆に分子量が大き過ぎると、溶融押出し、成形加工が困難となる場合がある。
上述したようなPGA樹脂を含むポリエステルは、好ましくはグリコリド(すなわち、グリコール酸の環状二量体エステル)を含む環状エステルの触媒存在下での加熱・開環重合により製造される。触媒としては、各種環状エステルの開環重合触媒として使用されているものが用いられ、その具体例としては、例えば、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)などの金属化合物の酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコキシドなどが用いられる。
(配合量)
本発明のMA−DGIC単独重合体は、一般に脂肪族ポリエステル100重量部当り、0.05〜20重量部、特に0.1〜10重量部配合することが好ましい。0.05重量部未満では、添加の態様にもよるが耐水性改善効果が乏しく、20重量部を超えて添加すると、MA−DGICの分解ガス発生や樹脂の着色が生じる。
(その他添加剤)
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物には、脂肪族ポリエステルおよび本発明のMA−DGIC単独重合体に加えて、脂肪族ポリエステル樹脂組成物への慣用の添加剤を加えることができる。そのような添加剤には、脂肪族ポリエステル製造のための重合触媒の不活性化剤、モノカルボジイミドおよびポリカルボジイミド化合物を含むカルボジイミド化合物などのカルボキシル基封止剤および炭酸カルシウム、ステアリン酸アミド等の酸中和剤(アルカリ剤)を含む他の耐水性改善剤などが挙げられる。本発明のMA−DGIC単独重合体は、他の耐水性改善剤と同様に、組成物に配合当初の脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基に作用して耐水性を改善する作用も有するが、遊離(脂肪族ポリエステルと未反応)の状態で存在することにより、組成物の保存あるいは使用中に外部から侵入する水分を捕捉して脂肪族ポリエステルの加水分解を阻止する作用も有しており、他の耐水性改善剤との併用効果も大きい。
また、本発明のMA−DGIC単独重合体が、後者の遊離状態での耐水性向上効果をよりよく発現するためには、重合による製造直後の脂肪族ポリエステルと直接溶融混合するのでなく、一旦重合後の脂肪族ポリエステルに重合触媒不活性化剤を添加し、溶融混合して、エポキシ化合物の配合前に重合触媒を充分に失活させることにより、後から添加されるMA−DGIC単独重合体が残留触媒存在下で末端カルボキシル基との反応に消費されるのをできるだけ防止するのが好ましい。
重合触媒不活性化剤としては、上記した金属系の重合触媒に対して不活性化作用を有する化合物が用いられ、特に好ましいスズ系等の重金属系重合触媒に対して不活性化作用を有する、いわゆる重金属不活性化剤が好ましく用いられる。なかでも、脂肪族ポリエステルとの溶融混合、好ましくは押出、の温度として、例えばPGA樹脂の場合には約270℃において、溶融し、脂肪族ポリエステルと相溶性があり、熱分解せずに金属と錯体形成能のある化合物が好ましく用いられる。重合触媒不活性化剤の具体例としては、熱安定剤機能にも優れる、ペンタエリスリトール骨格構造(あるいはサイクリックネオペンタンテトライル構造)を有するリン酸エステルおよび少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのアルキルエステル基を有する(亜)リン酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(例えばWO2004/087813A1公報参照)が好ましく用いられる。その他、ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジン]ドデカン酸、N,N′−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどの−CONHNH−CO−単位を有するヒドラジン系化合物;3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール系化合物、更には、トリアジン系化合物などが用いられる。
これら重合触媒不活性化剤は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、好ましくは0.003〜3重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の割合で配合される。0.003重量部未満では、重合触媒不活性化剤による不活性化を十分に行うことができないため、成形加工時にグリコリドの発生が起こり、耐水性が損なわれてしまう。また3重量部を超えて用いる場合、重合触媒不活性化剤自身がプロトン源あるいは塩基として働くため脂肪族ポリエステルの加水分解が却って促進されてしまう。
上述した重合後の脂肪族ポリエステルに対する重合触媒不活性化剤の配合および重合触媒不活性化剤を配合した脂肪族ポリエステルに対するMA−DGIC単独重合体の配合のための溶融混合は、好ましくは230〜280℃、より好ましくは240〜270℃の温度範囲で、3〜20分間、行なうことが好ましい。溶融混合手段は、基本的には任意であり、攪拌機、連続式混練機等も用いられるが、短時間処理が可能であり、その後の冷却工程への移行も円滑に行われる押出機(たとえば、同方向回転二軸混練押出機)中での加熱溶融(混合)が好ましい。
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において、組成を表すために用いる「%」、[部]および「ppm」は、特に断らない限り、重量基準とする。以下の記載を含めて、本明細書中に記載した物性(値)は、以下の方法による測定値に基づく。
<MA−DGIC単独重合体の分析>
(1)NMR測定
サンプル約10mgを重水素置換クロロホルム1mlに溶解し、測定を行った。測定条件は以下のとおり。
・装置:Brucker社製「400 UltraShield」
・積算回数:32回
(2)分子量
サンプル約10mgをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で10mlにメスアップし測定を行った。測定条件は以下に示す。
・装置:ShodexGPC−104(検出器:RI,カラム:HFIP−606M×2)
・溶媒:CFCOONaを5mM濃度で含むHFIP。
分子量の標準物質としてPMMAを用い、分子量を算出した。
(3)示差走査熱量分析(DSC)
サンプル約10mgをアルミナパンに封入し、示差走査熱量測定装置(メトラー社製「DSC0822e」)を用いて20℃/分で0℃から240℃まで昇温させた。この昇温時に観測される比熱の変化からガラス転移温度を算出した。
(4)残留MA−DGICモノマー量
内部標準物質として4−クロロベンゾフェノン(CBP)を0.2g/Lの濃度で含むDMSOを、樹脂試料約100mgに対して2mL加えて溶解させた。続いて10mLのメタノールを加えてポリマー成分を析出させた後、ろ過を行いそのろ液についてガスクロマトグラフィー(GC)による測定を行った。予めMA−DGICについて、標準試薬を用いてGC測定を行い、ピークリテンションタイムを把握し且つピーク面積による定量曲線を作成して、その後、樹脂試料についてのMA−DGICの定量を行った。測定条件を以下に示す。
・装置:島津製作所製「GC−2010」
・カラム温度:150℃で5分保持後、20℃/分で270℃まで昇温して、270℃で8分間保持
・気化室温度:180℃
・検出器:FID(水素炎イオン化検出器)、温度:300℃。
<PGA樹脂の分析>
(結晶化シートの作成)
試料PGA樹脂組成物(ペレット)を、プレス機により280℃、10MPaの条件で加圧し、得られたシートを急冷することで厚さ約100μmの非晶シートを得た。続いて、この非晶シートを80℃のオーブン中で30分間保持して、結晶化シートを得、以下の測定試験の樹脂試料とした。
(5)分子量
上記結晶化シートより切り取った約10mgの樹脂試料をジメチルスルホキシド(DMSO)0.5mlで150℃において加熱溶解し、室温まで冷却した。その溶液をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で10mlにメスアップし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行った。測定条件を以下に示す。
・装置:ShodexGPC104(検出器:RI,カラム:HFIP−606M×2)
・溶媒:CFCOONaを5mM濃度で含むHFIP
分子量の標準物質としてPMMAを用い、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を算出した。
(6)COOH末端濃度
樹脂試料約100mgをDMSO10mlで150℃において加熱溶解し、溶解完了後室温まで急冷する。その溶液に約0.1%のブロモチモロブルー/ジメチルスルホキシド溶液を10μL加えた後、0.001規定の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)を加えていき、色彩色差計(コニカミノルタ センシング株式会社製 「CR−400」)にてb値が変化しなくなった時点を終点とした。そのときの滴下量より、PGA樹脂1t(トン)当りの等量(eq/t)として、カルボン酸濃度を算出した。
(7)耐水性
上記の結晶化シートを恒温恒湿器中で温度50℃、相対湿度90%の環境に放置した。所定の時間ごとに試料を取り出し、GPC測定により重量平均分子量の時間変化曲線を得た。得られた曲線から重量平均分子量が7万にまで低下する時間(分子量7万時間)を算出し、耐水性の指標とした。
(実施例1:製造例)
モノマーであるMA−DGIC(四国化成工業社製;融点62−72℃、白色粉末)50g、連鎖移動剤としてトルエン50gをセパラブルフラスコに添加し、攪拌しながらMA−DGICを溶解させた。次いで、窒素バブリングを5分程度行い溶液中の酸素を除去した。その後、セパラブルフラスコを密封した状態でウォーターバスに浸漬・載置し60℃まで昇温した。60℃到達後、重合開始剤としてジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート50%メタノール溶液を10g添加し、12時間保持して、重合を行なった。
重合終了後、反応液重量に対して5倍量のメタノールを少量ずつ滴下していき、ポリマー成分を析出させ減圧濾過により溶液成分を除去した。回収したポリマー成分を再びトルエンに溶解し、同様の操作を3回繰り返してポリマー成分の洗浄を行った。洗浄操作終了後、80℃で減圧乾燥を行い、残存する溶媒成分を除去した。
得られたポリマー成分をクロロホルムに溶解してH−NMR測定を行い、以下の結果を得た。
Figure 2013147564
上記結果より、得られたポリマーがMA−DGIC単独重合体であることを確認した。
MA−DGIC単独重合体は54%の収率で得られ、その重量平均分子量(Mn)は15500、ガラス転移温度は85℃、残存MA−DGICモノマー量は0.02%と測定された。
(実施例2:PGA樹脂組成物の製造)
グリコリドに対して二塩化スズ二水和物触媒30ppmとn−ドデシルアルコール0.3モル%を添加して、約170℃で7時間重合して得られたグリコール酸単独重合体(PGA)(Mw=17万、グリコリド含量0.2%)100重量部に対して、上記実施例1(製造例)で得られたMA−DGIC単独重合体を1重量部添加し、2軸混練機(株式会社東洋精機製「ラボプラストミル」)にて240℃、30rpmで5分間溶融混練した。得られた混練塊を、プレスシート化して、末端COOH濃度測定および耐水性試験を行った。
(比較例1)
上記実施例2において、MA−DGIC単独重合体を添加せずに、グリコール酸単独重合体(PGA)のみで実施例2の混練以後の操作を行い、末端COOH測定および、耐水性試験を行った。
結果をまとめて、次表1に示す。
Figure 2013147564
上記表1に示すとおり、MA−DGIC単独重合体を配合しない比較例1に比べて、実施例2においては、カルボキシル(COOH)基濃度が低減され、対応して、温度50℃、相対湿度90%の促進環境下での、実用下限強度に相当する重量平均分子量(Mw)7万までの低下時間が26時間から44時間に増大しており、顕著な耐水性改善効果が見られる。
(参考例1)
実施例2では、おそらくは、PGAの末端カルボキシル(COOH)基とMA−DGIC単独重合体のエポキシ基(グリシジル基)との反応による結合により、混練物の初期Mwが、比較例1のそれに比べてかなり増加している。したがって、分子量7万時間の増大が、耐水性試験開始時の分子量増大に依存しているとも考えられる。この例では、この影響を除くために、実施例2における重合条件を変更して、分子量が増大したPGAを得、混練後のMwが実施例2と同等となるようにして、比較例1の操作を繰り返した。その結果、上記表1に併せて表示するように、分子量7万時間は、31時間となり、比較例1及び実施例2との対比により、分子量7万時間の増大が、本質的に、耐水性試験前の分子量増大よりは、MA−DGIC単独重合体の配合によるカルボキシル(COOH)基の低減に由来するものであることが分る。
(実施例3:変異原性試験)
変異原性の有無をみるために、上記実施例1で得られたMA‐DGIC単独重合体についてAmes試験を行いサルモネラ菌の変異原性発現濃度を求めた結果、mmo−sat 5mg/plate(+s9)(つまりサルモネラ菌sat(=salmonella typhimurium)の代謝活性化系存在下(+S9mix) において5mg/plateの濃度)においても変異原性の発現は見られなかった(陰性)。なお、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)ではmmo−sat 333μg/plate(+s9)における変異原性の発現(陽性)が確認されており、MA‐DGIC単独重合体の変異原性はTGICのそれと比較して非常に弱いものであった。
上述したように、本発明によれば、変異原性の低減した新規な高分子性エポキシ化合物としてのモノアリルジグリシジルイソシアヌレート単独重合体及びこれを含む耐水性が改善され且つ安全性の高い脂肪族ポリエステル樹脂組成物が提供される。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2013147564
    で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート単独重合体。
  2. 請求項1に記載のモノアリルジグリシジルイソシアヌレート単独重合体を耐水性改善剤として含む、脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
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