まず、本発明の具体的内容について触れる前に、本発明者が本発明に至った前段階としての考察について少し述べておく。
一般的に、水素ガスの分離方法としては、(1)石油プラントのオフガスからの水素回収などに用いられているように、ポリイミドやポリスルフォンなどの非多孔質有機膜を用いて気体の浸透−拡散現象を利用して水素を分離する方法、(2)水素分子が粒径が非常に小さいことを利用して、有機または無機の孔径制御された多孔質膜による主として分子ふるいにより水素を分離する方法、(3)パラジウムなどの金属膜への水素分子の吸着−膜中での水素原子への解離−水素原子の金属中の拡散−金属膜からの水素原子の脱溶解および再結合といった現象を利用して水素を分離する方法などが知られている。
しかしながら、これらの方法はいずれも上記したようなアルカリ式水素製造方法における反応器から導出されるアルカリ分子ないし粒子を同伴する水素含有ガスから、当該アルカリ分子ないし粒子を除去するにおいて、そのまま採択することはできないと考えられた。
すなわち、第一に、上記いずれの方法も、非多孔質膜ないし微細な孔路を有する多孔質膜を使用するため、アルカリ分子ないし粒子を同伴する水素含有ガスを処理すると、その上流側表面に、アルカリ分子ないし粒子が付着堆積するため、極めて短時間に目詰まり等を起こして分離膜として機能しなくなる。第二に、上記いずれの方法も、非多孔質膜ないし微細な孔路を有する多孔質膜を使用するため、当初よりその通気抵抗が大きく、ガスの透過ないし分離速度が非常に遅いことに加えて、上記したような分離膜表面へのアルカリ粒子の付着堆積が生じると、ガスの透過ないし分離速度は一層低下することとなるため、前記したようなアルカリ式水素製造方法の反応器より大量に発生する水素含有ガスの反応器直後の処理装置としての対応化は困難であると考えられる。さらに、第三に非多孔質有機膜を用いる方法に関しては、当該有機膜は、耐アルカリ性が十分とはいえないため、本発明が対象とするようなアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理には適さないと考えられる。
なお、本発明とは直接的には関係はないが、上記したような(1)〜(3)の水素ガスの分離方法は、本発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置により処理して、アルカリ分を除去清浄化した水素含有ガスに対しては、比較的有効に適応可能なものであると考えられ、本願発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置と組み合わせて、ガス下流側において用い、水素ガスを精製することは可能である。
また、本発明が対象とするアルカリ分子ないし粒子を同伴する水素含有ガスに含まれるアルカリ成分は、水に対して易溶性のものであるから、当該ガスを水槽内に単純に通気させることによっても、アルカリ分子ないし粒子を除去することが可能かとも考えられた。しかしながら、本発明者が行った実験結果によれば、このようにガスを水槽内に単純に通気させるのみでは、ガス中から十分にアルカリ分子ないし粒子を除去することができず、より効果的に除去する手法を開発するに至ったものである。
以下本発明をその実施形態に基づき詳細に説明する。
(第1発明のガス処理装置)
図1は、第1発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置の一実施形態の概略図である。
図1に示すように、第1発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000は、洗浄流体導入管路1210および洗浄流体導出管路1220にそれぞれ接続された密閉ケーシング1100を有している。
この密閉ケーシング1100には、また、ケーシング内に収容される洗浄液体1500の液面1510よりも重力方向上方側のケーシング1100壁面を気密に貫通してケーシング外部からケーシング内部に延長されたガス導入管1310が配されている。このガス導入管1310はケーシング内部において、ケーシング内部の重力方向下方側、すなわちケーシング底部側へと延長され、ガス導入口1320として開口している。なお、図1に示す実施形態においては、当該ガス導入管1310は、ケーシング底面付近において、ケーシングの水平面(XY方向)に沿って、面内全体にわたるように、管路を分岐させる、あるいは多段に折曲ないし螺旋屈曲させるなどして、管路を形成しており、この管路部に複数のガス導入口1320を開口し、ケーシングの底面付近においてケーシングのXY方向面内に略均一に被処理ガスを導出するような構成とされている。各ガス導入口1320の開口口径としては、特に限定されるものではないが、上記したようにケーシングの面内に略均一にガスを導出できるように、必要に応じて、個々の導入口までの距離等に応じて開口口径を変化させるなどの態様がなされ得る。なお、各ガス導入口1320は、裸穴としてもよいが、各導入口1320の開口口径がある程度大きな場合には、ガス導入口より導出されるガスをある程度放射状に分散させるために、通気抵抗があまり高くならない限度においてさらに適当なメッシュ材、多孔質体等よりなるディフューザーなど(図示せず)を配することも可能である。
この密閉ケーシング1100には、また、ケーシング内に収容される洗浄液体1500の液面1510よりも重力方向上方側にてガス導出口1420として開口しケーシング壁面を気密に貫通してケーシング内部からケーシング外部へと延長されたガス導出管路1410を有している。ガス導出口1420は、裸穴としてもよいが、当該ガス導出管路1410の下流側に吸引ポンプ等を配して、処理装置1000内よりガスを吸引するような態様によっては、ガス導出口1420に気−液分離膜(図示せず)を配することもできる。この気−液分離膜としては、ガス導出口1420を通過する際には、後述するように本処理装置1000内で水素含有ガスが水と接触してアルカリ粒子ないし分子が除去されているため、耐アルカリ性の高い金属ないしセラミックス製といったものに限られず、有機膜を採択することも可能である。
そして、当該密閉ケーシング1100内における、前記ガス導入口1320からガス導出口1420へと至る空間内には、耐アルカリ性充填材1600が配されており、前記ガス導入口1320からガス導出口1420へと至る拡散流路が形成されている。
密閉ケーシング1100内に前記ガス導入口1320からガス導出口1420へと至る拡散流路を形成するための耐アルカリ性充填材1600は、当該処理装置1000内に収容される洗浄液体1500に対して、ガス導入口1320よりケーシング内部に導入された被処理ガスを、十分かつ効率よく接触させるために、ケーシング全体にわたってほぼ均一に拡散させることのできるものであれば、特に限定されるものではなく、粒状、リング状、繊維状等のバルク状のものや、プレート状、平膜状といったものなど各種の形態のものを使用することができる。
その好ましい一例としては、前記耐アルカリ性充填材1600として、平均粒径が異なる少なくとも2種以上のバルク状もの用い、前記ガス導入口1320からガス導出口1420に向かう方向に沿って、その平均粒径が大きなものから小さいものへと順次多段に配置し、前記ガス導入口からガス導出口に向かって形成される拡散流路を漸次小径化するようにする態様が挙げられる。図1に示す実施形態においては、平均粒径のそれぞれ異なる三種の充填材を使用し、これを平均粒径の大きなものから順次三層化(1610、1620、1630)して積層させている。このような態様を採択することによって、通気抵抗をあまり増大させることなく、ケーシング内部へと導入された被処理ガスをケーシング全体にわたってほぼ均一に拡散させることができる。
前記耐アルカリ性充填材の材質としては、接触するアルカリに対して耐性を示しかつ水素ガスに対して不活性なものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ガラス質(ケイ酸成分)をあまり多く含まない各種の大きさの天然石や土、各種金属素材、各種炭素材、各種セラミックス材等を用いることが可能である。このうち、ステンレス鋼、炭素材、セラミックス材から構成されるものであることが望ましく、特に、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS310Sのようなオーステナイト系ステンレス鋼;グラファイト、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブのような炭素材;窒化物系、炭化物系、酸化物系のようなセラミックス材が望ましい。また、前記耐アルカリ性充填材としては、上記したような材質のものを複数種組合せることも可能である。
大粒径の充填材としては、例えば、上記したようなステンレス鋼、グラファイト、セラミックス材を用いて、球状、リング状等に所定形状ないし不定形状に成形したものを、中粒径の充填材としては、各種金属素材、グラファイトや活性炭やカーボンファイバー、各種セラミックス材等を用いて、球状などの所定形状に成形ないし所定粒度の不定形状や短繊維状に切削、粉砕したものを、さらに小粒径の充填材としては、各種金属素材をパウダー状に加工したもの、カーボンナノフチューブや微細カーボン粒子、パウダー状のセラミックス粒子等をそれぞれ例示することができるが、もちろんこれらに何ら限定されるものではなく、また、粒径の大きさとしても、ここに説明するように三段階のものに限られず、より多段階のものを採択することも可能であるし、逆に二段階あるいは一段階のものとしても良い。
図1に示すような第1発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000におけるアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理は次のようにして行われる。すなわち、まずケーシング1100内に、洗浄流体導入管路1210より洗浄流体を流入させる。使用される洗浄流体としては、通常水を用いるが、条件によっては水蒸気や、その他の流体、例えば、アルカリをある程度中和するような弱酸性の成分を含む水溶液等を用いることも可能である。洗浄流体は、例えば、充填材1600の層全体を浸漬するようにケーシング内部に貯留される。しかしながら、ケーシング1100内に充填された充填材1600の表面を十分に濡らすことのできるものであれば、必ずしもこのように充填材1600の層全体を浸漬するようにケーシング内部に貯留する必要はなく、例えば、上方から、スプレー式に噴霧あるいは蒸気として噴霧し、充填材1600の表面を均一に濡らした状態でケーシング内部にほとんど貯留することなく、あるいは充填材1600の層の一部のみを浸漬するようにケーシング内部に貯留するような態様としてもよい。そして、洗浄流体は、所定量ないし所定時間以上がケーシング内部に滞留しないように、洗浄流体導出管路1220よりケーシング外部に導出する。洗浄流体導入および導出は、被処理ガスの処理操作を通じて連続的に行うことも可能であるが、ケーシング内に被処理ガスの処理に十分な量および質の洗浄流体を貯留できる場合には、断続的な操作とすることもできるし、あるいは、被処理ガスの処理操作時には洗浄流体を排出せず、被処理ガスの処理操作の終了後においてのみ排出するような態様とすることも可能である。
このようにして、ケーシング1100内に洗浄液体1500を配した状態で、ガス導入管1310を通じて被処理ガスであるアルカリ粒子同伴水素含有ガスG0を送り、ケーシング1100の底部付近において開口するガス導入口1320からケーシング1100内部へと導入する。ケーシング内部1100へと導入されたガスは、充填材1600によって形成された複雑な孔路を通過する間において、ケーシング全体に十分に拡散されて、充填材1600の少なくとも表面に存在する洗浄液体1500と接触することにより、アルカリ粒子同伴水素含有ガスG0に同伴されていたアルカリ分子ないしはアルカリ粒子は、洗浄液体に溶解され、ガスと分離される。このようにしてアルカリ分子ないしはアルカリ粒子を除去され清浄化された水素含有ガスG1は、ケーシング1100の上方に位置するガス導出口1420よりガス導出管路1410へと導出されて、下流側の装置ないし貯蔵タンク等へと送られるものである。
なお、ケーシング内部において、アルカリ粒子同伴水素含有ガスG0と接触して、アルカリ分を溶解した洗浄液体1500は、上記したように洗浄流体導出管路1220よりケーシング外部に導出され、このアルカリ成分を含む洗浄液体は、そのままアルカリ性溶液として、各種の用途に用いることができる他、アルカリ成分を分離回収する処理に付すこともできる。
このように第一発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置は、アルカリ粒子同伴水素含有ガスを効率よく水等の洗浄液体と接触させ、湿式にてアルカリ粒子同伴水素含有ガス中よりアルカリ成分を効果的に除去可能である。
(第2発明のガス処理装置)
図2は、第2発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置の一実施形態の概略図である。
本発明の第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置は、図2に示すように、水素含有ガス導入口2320と水素含有ガス導出口2420とを備えた密閉ケーシング2100内に、当該水素含有ガス導入口2320から水素含有ガス導出口2420に至るケーシング2100内部に形成されるガス流通路を横断方向に区画する気−液分離膜2600を備える。さらに、気−液分離膜2600に対しガス流通路上流側(水素含有ガス導入口2320側)より水ないし蒸気を噴霧する水ないし蒸気噴霧機構2500とを備えている。
水ないし蒸気噴霧機構2500は、ケーシング2100の壁面を気密に貫通してケーシング外部よりケーシング内部へと延長された水ないし蒸気導出管路2510を備え、ケーシング内部においてこの水ないし蒸気導出管路2510に支持され、その先端部で開口する水ないし蒸気噴霧ノズル2520を有している。水ないし蒸気噴霧ノズル2520は、気−液分離膜2600のガス流通路上流側(水素含有ガス導入口2320側)表面全体に、水ないし蒸気を噴霧することができるように指向して配置され、必要に応じて、1つの水ないし蒸気導出管路2510の先端部に複数個配置することが可能である。
なお、この第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置において、ケーシング2100内部に形成されるガス流通路を横断方向に区画する気−液分離膜2600と、そのガス流通路上流側に配される水ないし蒸気噴霧機構2500とは、ケーシング2100内に少なくとも1組配置されればよいが、図2に示す実施形態におけるように、当該水素含有ガス導入口2320から水素含有ガス導出口2420に至るケーシング2100内部に形成されるガス流通路に対し、前記気−液分離膜2600と前記蒸気噴霧機構2500とを1ユニットとして複数段設置することも可能である。
ケーシング2100内における、前記気−液分離膜2600のガス流通路上流側(水素含有ガス導入口2320側)の重力方向下面(図中、底面)にはまた、液溜部2700が形成されており、水ないし蒸気噴霧ノズル2520より噴霧され、気−液分離膜2600の表面を伝わって流下してきた水が、ある程度貯留できるような構造とされており、この液溜部2700の底にケーシング2100外部へ処理水を排出するためのドレン2710が設けられている。ドレン2710を解放し、系外へ処理水を排出する際には、液溜部2700に貯留された処理水が完全になくならないように、すなわち、残留する水の層によりケーシング内部の気密性を保持して排出すれば、当該ドレンよりガスを漏洩させることなく、ガス処理操作時においても、ケーシング内2100内に蓄積してくる処理水を系外へ取り出すことが可能である。
使用される気−液分離膜2600としては、被処理ガスに含まれる水分およびケーシング内で噴霧される水ないし水蒸気を通過させることなく、水素ガス成分を通過させることができ、かつ耐アルカリ性のものであれば、特に限定されることなく各種のものを用いることができる。このような気−液分離膜としては、セラミックス製または金属製のものが用いられ得る。例えば、パラジウム膜のような非多孔質分離膜を用いることも可能ではあるが、通気抵抗が大きく分離効率が悪いため、多孔質分離膜、特に表面張力型気液分離膜を用いることが望ましい。
また、気−液分離膜2600に対して、ケーシング外部に配置された放熱フィンや水冷機構等の冷却機構(図示せず)を伝熱的に接続し、気−液分離膜2600を冷却することで、気−液分離膜2600のガス流通路上流側(水素含有ガス導入口2320側)表面で、接触する水蒸気を効果的に凝縮させ、液化させることも可能である。
また図2に示す実施形態においては、気−液分離膜2600を略鉛直方向に配置した縦型のものとしているが、気−液分離膜2600を略水平方向に配置した横型のものとして構成することも可能である。
図2に示すような第2発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置2000におけるアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理は次のようにして行われる。すなわち、まずケーシング2100内において、気−液分離膜2600のガス流通路上流側(水素含有ガス導入口2320側)表面に、水ないし蒸気噴霧機構2500より水ないし水蒸気を噴霧しておく。なお、第1の発明と同様に、条件によっては水ないし水蒸気以外の流体、例えば、アルカリをある程度中和するような弱酸性の成分を含む水溶液等を用いることも可能である。気−液分離膜2600のガス流通路上流側表面上には、この操作によって、水の薄い層が形成される。水ないし水蒸気の噴霧は被処理ガスの処理操作を通じて連続的に行うことも可能であるが、気−液分離膜2600の表面上に被処理ガス中に同伴されていたアルカリ分子ないし粒子が固形化して付着しスケール化しない程度に、気−液分離膜2600の表面を濡らすことができれば、断続的な操作とすることもできる。
このようにして、気−液分離膜2600のガス流通路上流側表面上に水の薄い層が形成された状態で、水素含有ガス導入口2320から被処理ガスであるアルカリ粒子同伴水素含有ガスG0をケーシング2100内部へと導入する。ケーシング内部2100へと導入されたガスは、ケーシング2100内で水素含有ガス導出口2420に至るガス流路を区画する気−液分離膜2600表面に衝突し、これを通過する際、アルカリ粒子同伴水素含有ガスG0に同伴されていたアルカリ分子ないしはアルカリ粒子は、当該気−液分離膜2600を通過することができず、気−液分離膜2600のガス流通路上流側に留まるとともに、気−液分離膜2600のガス流通路上流側表面上に存在する水の薄い層に溶解され、この水と共に流動して(下降して)気−液分離膜2600表面より、ケーシング2100の重力方向下方側(図中、ケーシング底面側)に移動する。このため、気−液分離膜2600表面はガス分離操作時を通じて、分離したアルカリ成分が堆積するようなことなく清浄化された状態を保つ。このようにして気−液分離膜2600を通過し、アルカリ分子ないしはアルカリ粒子を除去され清浄化された水素含有ガスG1は、気−液分離膜2600の下流側に位置する水素含有ガス導出口2420よりケーシング2100外部へと導出されて、下流側の装置ないし貯蔵タンク等へと送られるものである。
なお、ケーシング内部において、アルカリ粒子同伴水素含有ガスG0と接触して、アルカリ分を溶解した処理水は、上記したようにドレン2710よりケーシング外部に導出され、このアルカリ成分を含む処理水は、第1発明の場合と同様に、そのままアルカリ性溶液として、各種の用途に用いることができる他、アルカリ成分を分離回収する処理に付すこともできる。
このように第二発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置は、アルカリ粒子同伴水素含有ガスを気−液分離膜の性能を低下させることなく、アルカリ粒子同伴水素含有ガス中よりアルカリ成分を効率よく除去可能である。また、気−液分離膜を用いるため、下流側から真空ポンプ等の減圧装置を用いてガス流を吸引することが可能である。
(第3発明のガス処理装置)
図3は、第3発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置の一実施形態の概略図である。
本発明の第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置は、図3に示すように、水素含有ガス導入口3320と水素含有ガス導出口3420とを備えた密閉ケーシング3100内において、当該水素含有ガス導入口3320と水素含有ガス導出口3420と間のガス流路上において、この流路を通過するガス流れと干渉し得る位置に、被処理ガスである水素含有ガスが同伴するアルカリ分子ないしはアルカリ粒子と同種のアルカリの結晶からなる種結晶3500を配置しているものである。
ケーシング3100内のガス流路上への種結晶3500の配置方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、図3に示すようにケーシング3100上方壁面からワイヤー等の支持部材3510により懸架して保持するものであっても、あるいはケーシング3100の底部壁面から上部に台座を有する支持脚等によって支持するような形態であってもよい。なお、種結晶3500の支持部材3510ないし支持脚等も、ガス流路上に置かれるものであるため、ガス流れを阻害しないようになるべく小面積のものとすることが望ましい。
また、図3に示す実施形態においては、種結晶3500が配置された位置の重力方向直下には、前記ケーシング3100の底面側より重力方向上方側へと突出する壁面3610を有する液溜部3600が形成されている。この液溜部3600は、被処理ガスである水素含有ガス中に含まれる水分が、種結晶3500に接触することで種結晶が部分的に潮解し、液化して滴下した際にこれを溜め置くことができるものである。この液溜部3600の底部には、ケーシング3100外部へアルカリ溶解物を排出するためのドレン3620を必要に応じて設けることができる。
配置される種結晶3500の大きさとしては、被処理ガス中に存在する微細なアルカリ分子ないしはアルカリ粒子に比べて十分に大きなものであり、ガス中の微細なアルカリ分子ないしはアルカリ粒子を、接触ないし引力によって付着させ結晶成長することのできるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、2〜3mm程度以上のものであれば十分であるが、これより大きなものとすることも可能である。また、種結晶3500は、もちろん複数個配置することは可能である。
図3に示すような第三発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置3000におけるアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理は、非常に簡素なものであり、前記種結晶3500をケーシング3100内に配置した状態で、被処理ガスであるアルカリ粒子同伴水素含有ガスを通過させれば良い。当該処理装置内部をアルカリ分子ないしはアルカリ粒子を同伴する水素含有ガスが通過する際に、ガス中に存在する微細なアルカリ分子ないしはアルカリ粒子は、これらの分子ないし粒子に比べて十分に大きな同種のアルカリの種結晶3500に、衝突することによりあるいは引力により効率よく捕捉されて固体化(結晶成長)するため、水素含有ガスからアルカリ分子ないしはアルカリ粒子を乾式にて効率良く除去することができる。さらに、第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置は、上記したように乾式のものであるため、下流側から真空ポンプ等の減圧装置を用いてガス流を吸引することが可能である。
なお、アルカリ分子ないしはアルカリ粒子を同伴する水素含有ガスが水蒸気を含む場合には、種結晶3500として配置してあるアルカリの結晶に水蒸気が接触することにより、アルカリ結晶の一部潮解が生じる場合があるが、上記したように液溜部3600を設けておけば、生じたアルカリ溶解液が、処理装置の水素含有ガスの導出口よりガス流れの下流側に搬送されてしまうこともない。
(第4発明のガス処理方法)
第4発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスは、上記したような第1発明〜第3発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置を、アルカリ式水素製造方法において適用し、発生した水素含有ガス中に同伴されるアルカリ分子ないしアルカリ粒子を効率良く除去し、脱アルカリされた水素含有ガスとして回収するものである。
ここで、その前提となるアルカリ式水素製造方法についてまず説明する。基本的には、前記特許文献1および特許文献2に記載するように、長周期表の1族、2族の金属(アルカリ金属ないしアルカリ土類金属)のうち、少なくとも1つの金属元素と遷移金属のうち、少なくとも1つの金属元素と、他の元素と結合している酸素元素とを密閉ケーシング内で300℃以上、好ましくは約500℃で加熱することによって、水素が発生する。なお、この反応において、水素源として水ないし水蒸気を反応系内に導入しなくとも、水素の発生自体は起こるが、効率よく用い水素を製造する上においては、水ないし水蒸気を反応系内に導入する。
図4は、このようなアルカリ式水素製造方法を実施するための反応装置構成の基本態様の一例を示す模式図である。この反応装置においては、密封反応容器1内には、反応剤を収容する上部が解放された反応剤収容槽6が設けられている。また反応容器1の上部側の壁面を気密に貫通して、反応容器内部に延長され、前記反応剤収容槽6の上部近傍部位において開口する水供給パイプ5が取り付けられており、この水供給パイプを通して、反応容器内部に水ないし水蒸気を供給する。また、この反応装置において、反応容器1の上面には、発生ガス排出管3が設けられ、この発生ガス排出管3は、必要に応じて、減圧装置としての真空ポンプ4に接続されている。
さらに、反応容器1の下方側外周部には、加熱装置としての面状発熱体2が設置されており、反応容器1の下方側を350℃以上、特に500℃程度の温度に加熱することができる構成とされている。なお加熱装置としては、任意のものを用いることができ、前記した面状発熱体2以外にも、その他の電熱式のものとすることも、あるいは高周波誘導式、ガス加熱式や、その他、他の各種プラント、例えば、火力発電、原子力発電、コークス炉などといったものからの、余熱を利用する方式とすることも可能である。
前記反応容器1の少なくとも内壁は、表面に酸化被膜を作る金属材料で構成される。例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等の板状構造体となり得る単体金属、あるいは、ステンレス鋼、ニッケル合金(インコネル)、チタン合金(航空機用)、アルミニウム合金(ジェラルミン)、銅合金(黄銅、青銅、白銅)等の合金、更には、鉄に亜鉛(Zn)、スズ(Sn)をメッキしたトタン、ブリキ等が含まれる。ステンレス鋼としては、耐食性の観点から、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS310S等のようなオーステナイト系ステンレス鋼、SUS329J1、SUS329J4L等のようなオーステナイト・フェライト二相系ステンレス鋼が挙げられるが、性能面と経済性等も観点からオーステナイト系ステンレス鋼が好ましい。
これらは、その表面に酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、酸化銅(CuO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニッケル(NiO)の酸化膜をそれぞれ形成する。
また、合金としてのステンレス鋼は酸化クロムの不動態膜、ニッケル合金は酸化ニッケル(NiO)チタン合金は酸化チタン(TiO2)、アルミニウム合金は酸化アルミニウム(Al2O3)、銅合金又は酸化銅、トタンは酸化亜鉛(ZnO)、ブリキは酸化スズ(SnO2)の膜をそれぞれ形成する。
また、反応容器1の材料は、金属ではなく、酸化物で構成されたセラミックス材、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、又は酸化ジルコニウム(ZrO2)等を主成分とするものでもよい。
これらの金属材料により反応容器1が構成されていると、当該反応容器1自体が水素発生反応に寄与しているが、反応容器1を水素発生反応に寄与しない前述の材料以外の材料、例えば炭素(C)、あるいはコンクリートブロック等で形成されている場合には、反応容器内に前述の金属材料又はセラミック材を収納すれば良い。なお、前記金属材料で形成された反応容器1の内壁には酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする水性塗料又は酸化鉄(Fe2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化マンガン(MnO2)、酸化銅(CuO)、酸化ケイ素(SiO2)を均等に配分した塗料を塗布すると水素の発生量は増大することが確認されている。
なお反応に寄与する、遷移金属としては、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)が好ましく、これらの金属に第10族のニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)のうち、少なくとも一種を加えると、反応が活発になる。具体的には、Cr、NiおよびFeを含有するオーステナイト系ステンレス鋼、代表的にはSUS304(Cr18%−Ni8%−Fe残)が蒸気したように最適である。なお、金属元素供給体の役割は、主として反応器1の内壁自体が果たし得るものではあるが、必要に応じて、反応容器1内、特に反応剤収容槽6内に、フィン材等の形態として、金属板を配し金属元素供給体として機能させることも可能である。
一方、反応容器1内の反応剤収容槽6に収容される反応剤Aとしては、周期表1、2族に属する金属、すなわち、アルカリ金属またはアルカリ土類金属元素を含む溶融物を比較的低温、例えば、1000℃以下、より好ましくは500℃程度以下にて形成し得る化合物が用いられ、具体的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水酸化物と金属酸化物との固体混合物などが用いられる。具体的には、水酸化物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化ストロンチュウム(Sr(OH)2)のうち、いずれか1つであり、特に水酸化物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)が好ましい。これら水酸化物は親水性であり、300℃以上で溶融して液体となり、1300℃以上で蒸気となる。固体混合物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)のうちの一種と酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(Cr2O3)との一種との混合物が好ましい。これら固体の場合には、500℃程度に加熱すると脱水反応して、それぞれチタン酸ナトリウム(Na2TiO3)、チタン酸カリウム(K2TiO3)、マグネシウム酸ナトリウム(Na2MgO2)、マグネシウム酸カリウム(K2MgO2)、クロム酸ナトリウム(Na2Cr2O7)、クロム酸カリウム(K2Cr2O7)となる。これらの化合物も親水性である。これらの反応剤は、1種のみの使用で十分あるが、必要に応じて複数種組合せて用いることも可能である。
これら反応剤のうち、300℃以上で溶融し液体となる場合には、その液面から、2種類の金属が含まれる固体の場合にはその固体表面からナノオーダー以下の微細なアルカリ粒子ないしアルカリ分子が反応容器内に飛散する。
このような反応装置構成において、反応容器を350℃以上、特に500℃前後に加熱すると、反応容器1の内壁から水素が発生してくる。このとき、反応容器1内に空気中の酸素が存在すると、この酸素が反応容器内壁に当初から存在した酸化膜とは別の新たな酸化膜を生じ、反応を短時間で停止させてしまう。また、反応容器1内が常圧だと発生した水素が内壁付近に滞溜して反応を妨げるが、真空ポンプにより減圧すると、発生した水素がその内壁から除去され、反応が活性化する。
なお、少なくとも操作開始前には、前記反応容器1内からは完全に空気、特に真空ポンプ4からの作動により空気中の酸素が除去される必要がある。これにより反応容器1内が実質無酸素状態とはなるが、水素が反応容器1の内壁から発生してくると、完全な真空ではなくなるので、真空ポンプ4を常時作動させておいて、反応容器1内を−0.5〜−1気圧の減圧状態に保つことが望ましい。
図4に示す反応装置構成においては、反応容器を350℃以上、特に500℃前後に加熱した後、前記水供給パイプ5より水(または水蒸気)を反応容器1内に供給する。反応容器1内と導入された水は、直ちに120℃程度の水蒸気となり、反応容器1内において水蒸気は、反応剤収容槽6に収容される反応剤の融液液面ないしは固体表面から飛散するアルカリ分子ないしアルカリ粒子を伴って、反応容器1内を上昇し、反応容器1の内壁に接触して水分子が電離、分解して水素を放出する。したがって、発生する水素の量は反応容器内に水を供給しない場合と比べて大きく増大する。
反応容器1内で発生した水素含有ガスは、発生ガス排出管3を通じて反応容器1内から導出されるが、この反応器から導出される水素含有ガスは、反応により生成した水素ガスと共に、反応容器内を飛散する未反応のアルカリ分子ないしアルカリ粒子や水蒸気も同伴している。特に、前記したように反応操作時に、真空ポンプ4を常時作動させておいて、反応容器1内を減圧状態とした場合には、同伴される未反応のアルカリ分子ないしアルカリ粒子や水蒸気量が増大する。
なお、このような反応場において水素が発生する原理は、正確には今だ解明できていないが、引用文献1および引用文献2においても記載しているように、本発明者らが行った実験における水素発生装置の具体的データによると、水分子の分解に起因する水素発生のみならず、酸化膜、酸化物材料、更には酸素を含む反応剤中の酸素及び水の中の酸素が崩壊して水素が発生するものと思われる。反応容器1内に図4に示すように、水を供給してやると、生成ガス中には、供給水に含まれる水素原子量から反応収支的に算出される理論的水素分子(水素ガス)量を大きく超える量の水素に加えて、本来、脱気した反応場にほとんど存在しないはずの窒素も多く質量分析器で検出される半面、水分子や反応剤の水酸化物あるいは金属酸化物として反応場に存在していた酸素は、生成ガス中には質量分析器ではほとんど検出されないため、酸素から水素と窒素が発生していると推測される。酸素が崩壊して窒素や水素となるときは、著しい吸熱反応が起こり、一度崩壊したら、その反応は停止してしまうものと思われるが、崩壊後に生じた重水素の原子核同士が融合するD-D反応あるいは水素の原子核同士が融合するP-P反応が生じて発熱反応が生じ、これらがバランスして反応が継続するものと思われる。また、特に水又は水蒸気を供給した場合には、水の中に7000分の1で含まれる重水がこの核反応に作用していることも考えられる。
しかして、第4発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理方法は、上記したようなアルカリ式水素製造法に基づき、金属または金属酸化物により形成された反応容器内に、アルカリ物質を収納し、当該反応容器を加熱して前記アルカリ物質を融解させ、当該反応容器に水ないし水蒸気を供給し、反応容器内において水を分解させることにより発生する水素含有ガスを、反応容器外に導出した際に、当該水素含有ガスに同伴されるアルカリ分子ないしはアルカリ粒子を、反応容器よりガス下流側において、前記第1のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置、前記第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置および前記第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置の少なくとも1つを、前記反応容器から導出される発生ガス回収流路中に配して処理することにより、除去するものである。
なお、第4発明において、前記反応容器よりガス流れ下流側における発生ガス回収流路における、アルカリ粒子同伴水素含有ガス処理装置以外の各種の機器構成としては、特に限定されるものではなく、任意のものであって、各種の態様が含まれ得る。
例えば、前記反応容器から導出される発生ガス回収流路中には、ガス冷却および熱回収のための熱交換器、コールドトラップのような水蒸気分離装置、上記したように反応容器内を真空ないし減圧に保つための真空ポンプ等の減圧装置、圧力調整弁などの圧力調整機器、各種計測機器、さらには、本発明に係るアルカリ粒子同伴水素含有ガス処理装置の前処理段階として、物理的に乾式にてアルカリ粒子を捕捉するための、バグフィルターやサイクロンフィルターなどの乾式捕集装置あるいは単純構成の水槽、後処理としての水素ガス分離膜や乾燥剤等を使用したガス乾燥器、最終的ないし一次的に水素ガスを収納するためのタンク、水素ガスを液化するための冷却機構および液化水素タンク等を、その機能に応じて所定箇所に配置可能である。
第4発明において、前記反応容器よりガス流れ下流側に形成される発生ガス回収流路に前記第1のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000を配置する態様においては、図5に示すように当該発生ガス回収流路に、真空ポンプ(ドライポンプ)、吸引ファン等の減圧装置25を設置する場合は、第1のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000は湿式のものであるため、減圧装置25より下流側に配置することが望ましい。なお、上記したように、第1のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000のガス導出口1420に気−液分離膜(図示せず)を配したものとすれば、このような減圧装置25より上流側に配置することも可能である。第1のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000は湿式のものであるため、反応容器より導出された高温の水素含有ガスを、処理装置の前段で冷却しなくとも、当該処理装置1000において処理する際に併せて冷却および熱回収は可能であるが、必要に応じて、その上流側において熱交換器(図示せず)等を配して熱回収を行うことは可能である。また、当該処理装置1000より上流側に、必要に応じて、ガスを単純に水中に通気し同伴されるアルカリ分子ないしアルカリ粒子をある程度除去するための水槽(図示せず)を設けることが可能である。さらに、例えば、当該処理装置1000を減圧装置25より下流側に配置する場合等に、減圧装置25より上流側にバグフィルターやサイクロンフィルターなどの乾式捕集装置(図示せず)を配置して、アルカリ分子ないしアルカリ粒子をある程度捕捉し、当該処理装置1000より上流側の発生ガス回収流路内、特に、減圧装置25内の流路内部にアルカリ分子ないしアルカリ粒子が付着することを防止することもできる。
第4発明において、前記反応容器よりガス流れ下流側に形成される発生ガス回収流路に前記第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置2000を配置する態様においては、図6に示すように当該発生ガス回収流路に、真空ポンプ(ドライポンプ)、吸引ファン等の減圧装置25を設置する場合でも、第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置2000は気−液分離膜を備えるものであるため、減圧装置25より上流側に配置することが可能である。もちろん、減圧装置25より下流側に配置することもできる。この場合においても、必要に応じて、上流側に熱交換器や、バグフィルターやサイクロンフィルターなどの乾式捕集装置(図示せず)を配置することが可能である。
第4発明において、前記反応容器よりガス流れ下流側形成される発生ガス回収流路に前記第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置3000を配置する態様においては、図7に示すように当該発生ガス回収流路に、真空ポンプ(ドライポンプ)、吸引ファン等の減圧装置25を設置する場合でも、第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置3000は乾式のものであるため、減圧装置25より上流側に配置することが可能である。もちろん、減圧装置25より下流側に配置することもできる。この場合においても、必要に応じて、上流側にバグフィルターやサイクロンフィルターなどの乾式捕集装置(図示せず)を配置することが可能であり、熱交換器は、上流側ないし下流側のいずれに配置することも可能である。また、第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置3000においては、被処理ガスのアルカリ粒子同伴水素含有ガス中に含まれる水蒸気ないし水分によって、種結晶3500が潮解することが生じ得るため、その影響を低減させるために上流側に例えば、前記したようなコールドトラップのような水蒸気分離装置を配することが望ましい。
第4発明において、前記反応容器よりガス流れ下流側形成される発生ガス回収流路に、第1のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000、第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置2000および前記第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置3000のうち、2つ以上組合せて併用使用することは可能である。特に、前記第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置3000は、第1のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000ないしは第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置2000の上流側に配置して併用するとより効果的である。また第1のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置1000を減圧装置25より下流側に配置する場合には、減圧装置25より上流側に第3のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置3000および/または第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置2000を配置して併用するといった態様が望ましいものとして挙げることができる。
次に、本発明の第4発明における装置構成として、より具体的な例を第2のアルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置2000を水素発生装置に適用した場合を例にして、以下に説明する。
図8、9において、水素発生装置M1は、直立に配置された複数の円筒形の密閉性の反応容器10、10…10を有し、これら反応容器10はこれらの支持ケース11の上板上に縦型に配置されている。前記支持ケースは加熱炉の役割をし、その底部には、水素バーナ12が設けられ、この水素バーナ12によって前記反応容器10の底部が350℃以上、特に500℃前後の温度に加熱される。前記支持ケース11及び水素バーナ12が反応容器10を加熱するための加熱装置をなしている。加熱装置としては、電気ヒータを使用することも可能であり、水素バーナにプロパンガスを混入することも可能である。
各反応容器10には、水供給装置13から、水又は水蒸気が所定量供給される。前記水供給装置13は、水が貯溜される水タンク14(図9)と、この水タンク14からの水を各反応容器10に分配する分配筒15と、この分配筒15からの水を各反応容器10に供給する水供給パイプ16、16…16とこの水供給パイプ16に設けられ、反応容器10を減圧することによって吸引され送り込まれる水量を調整するニードルバルブ等の調整弁17、17…17とからなっている。前記水供給パイプ16の先端は、図9、11に示すように反応容器10の底部まで伸びている。
一方、前記反応容器10の上板からは、反応容器10内で発生した水素(H2)と、反応しなかった未分解の水蒸気(H2O)、並びにガス流に同伴されるアルカリ粒子ないしアルカリ分子を排出する排出管18、18…18が集合筒19を介して、前記水素から、アルカリ粒子ないしアルカリ分子および水蒸気を分離するための前記アルカリ粒子同伴水素含有ガスの処理装置2000内に伸びている。前記排出管18の集合筒19の手前には、その開閉度を調整して反応容器10の減圧状態を調整するために減圧装置25の吸引圧力を調整するための圧力調整弁23が設けられている。前記処理装置2000からは、さらに、分離された水素(H2)を送給するための水素パイプ24が伸び、この水素パイプ24は、水素発生系内から空気(空気中の酸素)を排出するとともに、常時系内を減圧状態とする真空ポンプ(ドライポンプ)、吸引ファン等の減圧装置25に終端し、系内の空気、発生水素は減圧装置25から排出され、水素は水素タンク26(図8)に貯溜される。この貯溜された水素の一部は前記水素バーナ12に送られて、反応容器10の底部10aを加熱する。前記処理装置2000の底面からは、内部に貯溜した水を取り出すドレン管27が伸び、このドレン管27は前記水タンク14まで伸びており、バルブ28を開くことによって、ドレンはポンプ29、フィルタ30を経て水タンク14に戻される(図9)。前記ドレンには、反応容器10の底部に収納された反応剤の微細粒子が溶け込んでいるが、その微細粒子は反応容器10内に戻されるのでこれにより反応剤の減少を補足できる。
前記水タンク14と分配管15の中間に、図10に示すように高周波誘導加熱装置30を設け、水タンク14からの水を先ず加熱して飽和水蒸気とし、これを更に誘導加熱して500℃程度の加熱水蒸気とし、これを反応容器10の底部に送り込むようにすれば、より反応が活発になる。
次に、反応容器10の詳細について、図11を参照して説明する。
前記反応容器10は、円筒形の本体40を有し、この本体40は、例えば、ステンレス鋼のSUS304、316、430あるいは鉄、Ni等の材料からなっている。また、セラミック材でもよい。この内壁には、酸化ケイ素(SiO2)を含む塗料膜41が形成されていてもよい。前記本体40の外周面の底部近傍には、支持フランジ42が形成され、この支持フランジ42は、前記支持ケース11の天面11aに接触して安定して反応容器10を直立に支持しており、前記反応容器10の支持ケースの天面11aから下側に突出した底部10aが水素バーナ12によって500℃前後に加熱される。前記反応容器10内の底板上にはアルミナのケース43が設置され、このケース43内に前記したようなアルカリ反応剤44が収納されている。
前記反応容器10の上端は着脱自在の開閉蓋45が設けられ、この開閉蓋45はフェルール46によって開閉自在とされ、この開閉蓋45に前記水供給パイプ16が固定されるとともに排出管18が固定され、前記水供給パイプ16の先端は反応容器10の底部まで前記アルミナケース43の側面に沿って伸びている。前記本体40の側面には、圧力容器10の圧力を測定する圧力計47及び温度を測定する温度計48が設けられている。
前記圧力容器10は縦型に設置されると、自重で支持ケースの天板11aに安定して設置されるし、圧力容器10内で発生した水素及び水蒸気は軽いので上方に昇り易く、したがって、それらがスムーズに排出管18から排出されて反応空間S2も大きくなる。前記反応容器10内は、作動開始時に減圧装置25の作用により系内の空気が完全に排出される。その後、水又は水蒸気が注入され、真空状態ではなくなるが、−0.5〜−1気圧に常時減圧され、この状態では、圧力容器内の水蒸気の一部(10%以下)が反応して水素が生じる。未反応(未分解)の水蒸気は、未反応の反応剤の微粒子とともに減圧装置25の作用により直ちに吸い出されて処理装置2000においてトラップされる。水素は減圧装置25を通って、水素タンク26に送られる。
すなわち、図10に示すように、水タンク14の水は、加熱蒸気発生器30で加熱蒸気とされるか、あるいはそこを通らずに調整弁17を介して流量が調整された後に反応容器10内に送られる。系内は減圧状態で減圧装置としての真空ポンプ25によって吸引されているので反応容器10内の発生した水素および残留水蒸気とこれらに同伴されるアルカリ粒子ないしアルカリ分子は、処理装置2000で分離され、水素のみが下流側へと送られる。前記反応容器10の中間部10bはいわゆる広い反応空間S1であり、この反応空間S1は300〜350℃の温度に低下している必要がある。上端部10cは開閉蓋45のパッキンの耐熱上100℃以下にする必要があり、そのために中間部10bと上端部10cは空気中に露出していることが好ましい。
なお、アルカリ式水素製造法の反応容器としては、上記に例示したものに何ら限定されることなく、各種のものを使用可能であり、例えば、上記したような縦型の反応容器とは異なり、横型(水平)に配置したもの等とすることももちろん可能である。