ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1実施形態:
(1−1)プリンターの構成:
(1−2)検査処理:
(1−3)異常対応処理:
(2)変形例1:
(3)変形例2:
(4)変形例3:
(5)他の変形例:
(1)プリンターの構成:
図1は本発明の一実施形態にかかる検査装置を含む液滴吐出装置としてのプリンター1の構成を示すブロック図である。プリンター1は、吐出ヘッド10と主基板20とを備える。主基板20は、吐出可否データ生成回路21と駆動電圧生成回路22とを備える。吐出可否データ生成回路21は、吐出ヘッド10が備える複数の吐出機構のそれぞれについて液滴としてのインク滴を吐出させるか否かを指定した吐出可否データSIを生成する回路である。吐出可否データ生成回路21は、複数の吐出機構の順列に吐出可否データSIをシリアル結合されたノズル選択データを吐出ヘッド10に出力する。また、吐出可否データ生成回路21は、複数の吐出タイミングのそれぞれについて吐出可否データSIを生成し、吐出可否データSIを吐出タイミングの順に出力する。なお、吐出タイミングとは、印刷ジョブの実行期間中において吐出ヘッド10が備える複数の吐出機構が同時にインク滴を吐出するタイミングである。また、吐出可否データ生成回路21は、ラッチ信号LATと切替信号CHとを生成し、吐出ヘッド10に出力する。ラッチ信号LATは、吐出タイミングを規定するためのタイミング信号である。切替信号CHは、吐出タイミングを細分化した期間を規定するためのタイミング信号である。
駆動電圧生成回路22は、吐出ヘッド10が備える駆動素子としてのピエゾ素子12を駆動するための駆動電圧COMを生成する回路(駆動電圧源)である。駆動電圧生成回路22は、駆動電圧の電圧パターンを規定するデジタルデータに基づいて駆動電圧COMを生成するD/A変換部と、D/A変換された駆動電圧COMを増幅する増幅部とを備える。駆動電圧生成回路22から出力された駆動電圧COMは、吐出ヘッド10の印加スイッチPに入力される。
図2Aは吐出ヘッド10が備える吐出機構の構造を示す模式図であり、図2Bは吐出ヘッド10の一部の回路図である。図1に示すように吐出ヘッド10は、ヘッドIC11とピエゾ素子12とインク室13とノズル14と振動板15とを備える。吐出ヘッド10は、複数(不図示)の吐出機構を備え、図2Aに示すように複数の吐出機構のそれぞれがピエゾ素子12とインク室13とノズル14と振動板15とを含む。本実施形態において吐出機構は、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のそれぞれのインク色ごとに90個ずつ備えられ、合計で360(=N)個備えられている。ピエゾ素子12は、圧電素子である。駆動電圧COMをピエゾ素子12に印加することにより、ピエゾ素子12が機械的に歪み、インクが充填されたインク室13の壁面を構成する振動板15を振動させる。これにより、インク室内が加減圧され、インク室内のインクがインク滴となってノズル14から吐出される。印加スイッチPは、複数の吐出機構のそれぞれにおいて駆動電圧COMをピエゾ素子12に印加させるか否かを切り替えるスイッチである。すなわち、印加スイッチPは、吐出可否データSIにてインク滴を吐出させると指定されたノズル14に対応するピエゾ素子12に対して選択的に駆動電圧COMを印加させる。
図2Bに示すように、複数の吐出機構(一点鎖線)のそれぞれにおいて、駆動電圧COMが伝送される配線とピエゾ素子12と印加スイッチPとグランドとが直列に接続されている。印加スイッチPは、ピエゾ素子12とグランドとの間でソース−ドレインを直列に接続させている。従って、印加スイッチPがオンとなる場合には駆動電圧COMがピエゾ素子12に印加され、印加スイッチPがオフとなる場合には駆動電圧COMがピエゾ素子12に印加されない。また、印加スイッチPは、オンとなる状態においてソース−ドレイン間に素子固有の大きさの抵抗を有する。従って、印加スイッチPがオンとなっている期間においてピエゾ素子12から電流が流れると、当該電流に比例した電圧(以下、検査電圧)が印加スイッチPのソース−ドレイン間に生じる。
複数の吐出機構のそれぞれにおいて、ピエゾ素子12と印加スイッチPとの間に検査スイッチM1が接続されている。複数の吐出機構のそれぞれにおいて印加スイッチPと検査スイッチM1とは、印加スイッチ制御部11cの同一のデータ出力端子に接続されている。従って、複数の吐出機構のそれぞれにおいて印加スイッチPと検査スイッチM1とは同一の吐出可否データSIに基づく制御信号により制御される。図2Bに示すように、検査スイッチM1における印加スイッチPと接続しない方の端子が3個ずつ電気的に結合されており、3個の検査スイッチM1が共通して検査スイッチM2に接続されている。共通する検査スイッチM2に対して、印加スイッチPが検査スイッチM1を介して接続される3(=M)個の吐出機構によって破線で示すグループGが形成されている。すなわち、本実施形態においてグループGは3(=M)個の吐出機構によって構成される。検査スイッチM2はグループGごとに備えられ、複数の検査スイッチM2のそれぞれは共通する配線によりパルス変換部11eの検査端子Tに接続される。検査スイッチM2がオンとなり、かつ、当該検査スイッチM2に接続するS(3(=M)以下の自然数)個の検査スイッチM1がオンとなる場合には、S個の検査スイッチM1がそれぞれ接続するS個の印加スイッチPのソース−ドレイン間の検査電圧が結合した結合検査電圧MVがパルス変換部11eの検査端子Tに入力される。なお、検査スイッチM1,M2内の抵抗による電圧降下は無視することとする。結合とは、複数の検査電圧の電圧波形が結合検査電圧MVにて合成されていることを意味する。
図1に示すようにヘッドIC11は、スイッチ制御データ生成部11aと異常対応部11bと印加スイッチ制御部11cと印加スイッチPと検査スイッチ制御部11dと検査スイッチM1,M2とパルス変換部11eと周期計測部11fと電圧判定部11gと異常判定部11hとを備える。ヘッドIC11は、デジタル信号処理回路やアナログ信号処理回路やRAM等が単一の半導体集積回路に含まれるSOC(System on a chip)等である。
スイッチ制御データ生成部11aは、吐出可否データSIを後段の異常対応部11bに出力する。異常対応部11bは、吐出可否データSIが、後述する検査処理によって異常であると確定された異常吐出機構にインク滴を吐出させ、かつ、正常であると確定された正常吐出機構にインク滴を吐出させないことを示す場合に、吐出可否データSIを修正する。すなわち、異常対応部11bは、異常吐出機構の代わりに正常吐出機構にインク滴を吐出させるように、吐出可否データSIを修正して後段の印加スイッチ制御部11cに出力する。本実施形態において、異常対応部11bは、異常吐出機構の代わりに、当該異常吐出機構に隣接する正常吐出機構にインク滴を吐出させる。
図3Aは、ヘッドIC11において記録媒体に対向する面(ノズル面)におけるノズル14の配列を示す図である。本実施形態においてヘッドIC11はラインヘッドであり、記録媒体の搬送方向(印刷方向)に直交して複数のノズル14が配列するノズル列がインク色ごとに2列ずつ備えられている。各ノズル列において印刷方向の直交方向におけるノズル14の配列間隔は一定とされている。また、印刷方向の直交方向におけるノズル14の位置は、印刷方向に隣接するノズル列間で前記配列間隔の半分だけずれている。異常吐出機構に隣接する正常吐出機構とは、異常吐出機構と同一のインク色のインク滴を吐出し、かつ、印刷方向の直交方向において異常吐出機構が備えるノズル14(白丸)との距離が最短(配列間隔の半分)となるノズル14(二重丸)を備える2個の吐出機構である。
異常対応部11bは、印刷ジョブ内の吐出タイミングごとに、複数の吐出機構のそれぞれが異常であるか否かを示す判定テーブルD2を取得し、当該吐出タイミングにおいてインク滴を吐出させる吐出機構を吐出可否データSIに基づいて特定する。そして、インク滴を吐出させる吐出機構が異常吐出機構である場合には、当該異常吐出機構の代わりに、当該異常吐出機構に隣接する正常吐出機構にインク滴を吐出させる。なお、異常判定部11hは印刷ジョブ内の吐出タイミングごとに判定テーブルD2を更新している。従って、(A+1)番目の吐出タイミングにおいて、異常対応部11bは、A番目の吐出タイミングにおいて異常判定部11hによって異常とされた異常吐出機構の代わりに、正常吐出機構にインク滴を吐出させることとなる。なお、吐出可否データSIは吐出タイミングごとに吐出機構に出力されるため、印刷ジョブにおけるA番目の吐出タイミングにおいてA番目の吐出可否データSIに基づいて吐出機構のピエゾ素子12が制御されることとなる。
印加スイッチ制御部11cは、吐出可否データSIがシリアル結合されたノズル選択データをパラレル変換することにより、吐出可否データSIを吐出機構ごとに復元するシフトレジスタを含む。すなわち、印加スイッチ制御部11cは、複数の吐出機構のそれぞれに対応する複数のレジスタを有し、当該複数のレジスタにてノズル選択データを所定のクロックごとにシフトさせることにより、当該複数のレジスタにて吐出可否データSIを保持する。そして、印加スイッチ制御部11cは、ラッチ信号LATと切替信号CHに同期して、複数のレジスタのそれぞれに保持された吐出可否データSIに基づいて印加スイッチPが接続されたデータ出力端子における制御信号の信号レベルを1または0に制御する。これにより、複数の吐出機構のそれぞれにおいて、印加スイッチPのオン(制御信号:1)オフ(制御信号:0)が切り替えられ、ピエゾ素子12にインク滴を吐出させるか否かが切り替えられる。
図3Bは、駆動電圧COMと各スイッチP,M1,M2の動作を示すタイミングチャートである。本実施形態において、駆動電圧生成回路22は吐出タイミングごとに、インク滴を吐出するようにピエゾ素子12を駆動させる吐出パルスと、インク滴を吐出させない程度に振動板15が微振動するようにピエゾ素子12を駆動させる微振動パルスとを含む駆動電圧COMを生成する。なお、吐出パルスの出力期間と微振動パルスの出力期間とを除く期間において、駆動電圧生成回路22が生成する電圧パターンの電位は既知の基準電位VSとなる。吐出タイミングとは、ラッチ信号LATのパルスが立ち上がるタイミングの間の期間である。切替信号CHは、吐出タイミングの中間にて立ち上がり、吐出タイミングの前半と後半とを規定するタイミング信号である。なお、駆動電圧COMは、吐出タイミングの前半において吐出パルスを有し、吐出タイミングの後半において微振動パルスを有する。
印加スイッチ制御部11cは、インク滴を吐出させる吐出可否データSIが入力された場合、吐出機構の印加スイッチPおよび検査スイッチM1が吐出タイミングの前半においてオンとなり、吐出タイミングの後半においてオフとなるように、データ出力端子における制御信号の信号レベルを吐出可否データSIに基づいて制御する。すなわち、インク滴を吐出させる吐出機構に対応するデータ出力端子における制御信号の信号レベルを、吐出タイミングの前半において1とし、吐出タイミングの後半において0とする。これにより、吐出タイミングの前半において吐出パルスをピエゾ素子12に印加させ、インク滴を吐出させることができる。一方、印加スイッチ制御部11cは、インク滴を吐出させない吐出可否データSIが入力された場合、吐出機構の印加スイッチPおよび検査スイッチM1が吐出タイミングの前半においてオフとなり、吐出タイミングの後半においてオンとなるように、データ出力端子における制御信号の信号レベルを吐出可否データSIに基づいて制御する。すなわち、インク滴を吐出させない吐出機構に対応するデータ出力端子における制御信号の信号レベルを、吐出タイミングの前半において0とし、吐出タイミングの後半において1とする。これにより、吐出タイミングの後半において微振動パルスをピエゾ素子12に印加させ、インク滴を吐出させない程度に振動板15を振動させることができる。従って、インク滴を吐出しない吐出機構においてもインク室13におけるインクの滞留が防止できる。
図1に示すようにスイッチ制御データ生成部11aは、検査制御データSGを生成して検査スイッチ制御部11dに出力する。図2Bに示すように検査スイッチ制御部11dは、検査制御データSGのシリアルデータをパラレル変換して、検査制御データSGを当該複数のグループGに対応して備えられた検査スイッチM2に出力するシフトレジスタを含む。スイッチ制御データ生成部11aは、各吐出タイミングごとに検査対象のグループGを1個ずつ選択し、当該グループGに対応する検査スイッチM2のみをオンとするように検査制御データSGを生成する。従って、パルス変換部11eの検査端子Tには、検査対象のグループGを構成する3(=M)個以下のS個の吐出機構の印加スイッチPのソース−ドレイン間に生じた検査電圧が結合した結合検査電圧MVが入力される。スイッチ制御データ生成部11aは、同一のグループGを複数の吐出タイミングにわたって連続して検査対象として選択し得る。
図3Bの最下欄に示すように検査対象のグループGに対応する検査スイッチM2は、吐出パルスの出力期間の終期から吐出タイミングの前半の終了までの期間においてオンとなるように検査制御データSGに基づいて制御される。これにより、振動板15を強制的に振動させた吐出パルスの出力期間の直後における振動板15の残留振動の状態を示す結合検査電圧MVを得ることができる。すなわち、インク滴の吐出した吐出機構において、インク滴の吐出直後のピエゾ素子12の動作状態としての残留振動の状態を示す検査電圧をグループG単位で結合した結合検査電圧MVを得ることができる。なお、振動板15の残留振動によりピエゾ素子12の寄生容量が変化することによりピエゾ素子12とグランドとの間で電流が流れ、当該電流に比例した検査電圧が印加スイッチPのソース−ドレイン間に生じることとなる。一方、検査対象のグループGに属する吐出機構のうちインク滴を吐出させない吐出機構においては、検査スイッチM2がオンとなる期間において検査スイッチM1が常にオフとなるため、当該吐出機構の印加スイッチPにて生じた電圧が結合検査電圧MVのノイズ源となることが防止できる。同様に、検査対象でないグループGにおいては、検査スイッチM2が常にオフとされるため、検査対象でないグループGに属する吐出機構の印加スイッチPにて生じた電圧が結合検査電圧MVのノイズ源となることも防止できる。
パルス変換部11eは、検査端子Tに入力された結合検査電圧MVを増幅し、増幅後の結合検査電圧MVが閾値電圧よりも大きいか否かに応じて二値化することにより、検査パルスMPを生成する回路である。なお、印加スイッチPの一端がグランドに接続するため、検査端子Tの電位を印加スイッチPのソース−ドレイン間に生じた結合検査電圧MVとして取得できる。
図4Aは、結合検査電圧MVと検査パルスMPとを示すグラフである。パルス変換部11eは、結合検査電圧MVが振幅の中央に設定された閾値電圧以上となる期間において信号レベルが1となり、結合検査電圧MVが閾値電圧未満となる期間において信号レベルが0となる検査パルスMPを生成する。結合検査電圧MVは時刻tの経過とともに振幅が減衰する周期波形を有する。残留振動により結合検査電圧MVが振動する周期pは、振動板15の固有振動数に依存し、インク室に気泡が混入した場合の固有振動数は気泡が混入しない場合の固有振動数よりも大きくなる。従って、インク室に気泡が混入すると、結合検査電圧MVの周期pは短くなる。
周期計測部11fは、検査パルスMPが立ち上がってから、次に検査パルスMPが立ち上がるまでの期間を周期pとして計測する。周期計測部11fは、複数の周期pが計測できた場合には、複数の周期pの平均を、周期pとして電圧判定部11gに出力してもよい。電圧判定部11gは、判定条件データD1を参照して、周期pの正常範囲を取得し、当該正常範囲内に周期計測部11fから出力された周期pが属するか否かを判定する。電圧判定部11gは、正常範囲内に周期計測部11fから出力された周期pが属さない場合に結合検査電圧MVが異常であると判定する。一方、電圧判定部11gは、正常範囲内に周期計測部11fから出力された周期pが属する場合に結合検査電圧MVが正常であると判定する。
異常判定部11hは、吐出可否データ生成回路21から検査制御データSGを取得し、当該検査制御データSGに基づいて検査対象のグループGを特定する。また、異常判定部11hは、異常対応部11bから吐出可否データSIを取得し、当該吐出可否データSIに基づいて検査対象のグループGに属する3(=M)個の吐出機構のうち、インク滴の吐出を行った吐出機構であるS個の稼働吐出機構を特定する。異常判定部11hは、検査対象のグループGに属する吐出機構についての結合検査電圧MVの判定結果を判定テーブルD2に記録する。
図4Bは、異常判定部11hが記録する判定テーブルD2を示す図である。図4Bの判定テーブルD2において、吐出機構ごとに固有の番号n(最大値N)と、吐出タイミングに対応する吐出タイミングの番号Aとの組み合わせごとに検査の結果が記録される。図4Bの判定テーブルD2において、検査対象のグループGに属する3個の吐出機構以外の吐出機構に対応する番号nの欄には斜線を付している。また、検査対象のグループGに属する3個の吐出機構のうち、インク滴を吐出しなかった吐出機構の番号nの欄には休止の文字を付す。一方、検査対象のグループGに属する3個の吐出機構のうち、インク滴を吐出した吐出機構の番号nの欄には、結合検査電圧MVの判定結果であるOK(正常の場合)またはNG(異常の場合)の文字を付す。
異常判定部11hは、結合検査電圧MVが正常である場合、S個の稼働吐出機構のすべてが正常であると仮判定し、当該S個の吐出機構のすべてについて正常回数に1を加算する。そして、異常判定部11hは、正常回数が所定の正常閾値となった吐出機構について、当該吐出機構が正常であると確定する。本実施形態において正常閾値は2回とする。例えば、図4Bの判定テーブルD2において、31(=n)番の吐出機構について206,207(=A)番の吐出タイミングにおいて結合検査電圧MVが正常であると判定されており、207番の吐出タイミングにおいて正常回数が2回となる。従って、31番の吐出機構は、207番の吐出タイミングにおいて正常であると確定される。なお、図4Bの判定テーブルD2において、正常であると確定された吐出機構の番号nに対応する欄には○の文字を付す。
異常判定部11hは、検査対象のグループGにおける稼働吐出機構が1個であり、かつ、結合検査電圧MVが異常である場合、1個の稼働吐出機構が異常であると確定する。なお、本実施形態において吐出機構が異常であるとは、インク室13に気泡が存在することにより、インク滴の体積が正常な量よりも減少することを意味する。また、異常判定部11hは、検査対象のグループGにおける稼働吐出機構が2個以上(Sが2以上)であり、かつ、結合検査電圧MVが異常である場合、S個の稼働吐出機構のいずれかが異常であると仮判定し、当該S個の吐出機構のすべてを異常候補とする。例えば、図4Bの判定テーブルD2において、205番目の吐出タイミングにおいて31〜33番の3(=S)個の吐出機構がすべてインク滴を吐出させたが、結合検査電圧MVが異常であったため、3個の吐出機構がすべて異常候補とされている。なお、図4Bの判定テーブルD2において、異常候補された吐出機構の番号nに対応する欄には△の文字を、異常候補とされた吐出タイミングの番号Aを示す下付文字とともに付す。
異常判定部11hは、S個の稼働吐出機構のすべてを異常候補とし、かつ、当該S個の吐出機構のうち1個の吐出機構を除く(S−1)個の吐出機構が正常であると確定した場合、当該1個の吐出機構が異常であると確定する。図4Bの判定テーブルD2において、205番の吐出タイミングにおいて31〜33番の3(=S)個の吐出機構がすべて異常候補とされているが、その後、207番の吐出タイミングにおいて31,33番の吐出機構の正常回数が2回となっており、31,33番の2(=S−1)個の吐出機構が正常であると確定されている。この場合、異常判定部11hは、205番の吐出タイミングにおいて異常候補とされた31〜33番の3(=S)個の吐出機構のうち、207番の吐出タイミングにおいて正常と確定された31,33番の2(=S−1)個の吐出機構を除く32番の吐出機構が異常であると確定する。図4Bの判定テーブルD2において、異常であると確定された吐出機構の番号nに対応する欄には×の文字を付す。
異常判定部11hは、検査対象のグループGに属する3(=M)個の吐出機構のすべてについて正常または異常であると確定できた場合には、次のグループGを検査対象として選択することを許可する。これを受けてスイッチ制御データ生成部11aは、次の吐出タイミングにおいて、次のグループGに対応する検査スイッチM2を吐出パルスの直後にオンさせる検査制御データSGを生成する。一方、異常判定部11hは、検査対象のグループGに属する3(=M)個の吐出機構のすべてについて正常または異常であると確定できなかった場合には、次のグループGを検査対象として選択することを許可しない。これを受けてスイッチ制御データ生成部11aは、次の吐出タイミングにおいて、現在の検査対象のグループGに対応する検査スイッチM2を吐出パルスの直後にオンさせる検査制御データSGを引き続き生成する。従って、異常判定部11hは、S個の吐出機構を異常候補として特定した場合、異常候補とされたS個の吐出機構のうち1個の吐出機構を除く(S−1)個の吐出機構が正常であると判定されるまで、グループGについて結合検査電圧MVが正常であるか否かを判定する処理を繰り返すこととなる。
以上説明した本実施形態の構成において、ピエゾ素子12に駆動電圧COMを印加させる場合に、印加スイッチPのソース−ドレイン間は導通し、印加スイッチPのソース−ドレイン間には固有の抵抗が生じることとなる。従って、ピエゾ素子12の残留振動に応じて印加スイッチPのソース−ドレイン間に電流が流れ、当該電流に比例した検査電圧が生じる。すなわち、異常判定部11hは、ピエゾ素子12の残留振動に応じた検査電圧を得ることができ、当該検査電圧に基づいて吐出機構が異常であるか否かを判定することができる。検査スイッチM1は複数の吐出機構のそれぞれに備えられるため、検査スイッチM1に流れる電流量を抑制できる。従って、検査スイッチM1を小電流の素子で実現することができ、検査スイッチM1を含むヘッドIC11を小型化できる。さらに、吐出機構ごとに検査スイッチM1が備えられるため、グループGに属する吐出機構のうちインク滴を吐出させなかった吐出機構の印加スイッチPにて生じた電圧を検査スイッチM1にて遮断できる。さらに、グループGごとに検査スイッチM2が備えられるため、検査対象でないグループGに属する吐出機構におけるピエゾ素子12の残留振動により生じた電圧を検査スイッチM2にて遮断できる。従って、吐出機構の検査を妨げることなく検査対象でないグループGに属する吐出機構においてインク滴を吐出させることができ、任意の印刷ジョブを実行する期間においても吐出機構の検査を行うことができる。
さらに、複数の吐出機構のそれぞれにおいて、印加スイッチPと検査スイッチM1とは印加スイッチ制御部11cの同一のデータ出力端子から出力される制御信号により制御される。印加スイッチP1と検査スイッチM1とを制御するためのシフトレジスタを個別に備えなくても済み、ヘッドIC1を小型化できる。また、異常判定部11hと検査スイッチと印加スイッチPと印加スイッチ制御部11cとが単一の半導体集積回路に含まれる。これにより、プリンター1の小型化と低コスト化を実現できる。
また、複数の吐出機構のそれぞれにおいて、印加スイッチPの一端が既知の電位(グランド)とされ、当該印加スイッチPの他端がピエゾ素子12に接続する。そして、検査スイッチM1は、印加スイッチPの他端と検査端子Tとを導通させるか否かを切り替える。このように、印加スイッチPの一端を既知の電位としておけば、印加スイッチPの他端の電位を検査端子Tにて計測することにより、当該計測した電位と既知の電位との差により、印加スイッチPのソース−ドレイン間の検査電圧を得ることができる。特に、複数の吐出機構のそれぞれにおいて、印加スイッチPの一端を既知の電位としてのグランドに接続するため、グランド電位と印加スイッチPの他端における電位との差により検査電圧を容易に取得できる。
異常対応部11bは、吐出可否データSIが、異常吐出機構にインク滴を吐出させ、正常吐出機構にインク滴を吐出させないことを示す場合に、異常吐出機構の代わりに正常吐出機構にインク滴を吐出させる。すなわち、異常対応部11bは、正常にインク滴を吐出できない異常吐出機構の代わりに、正常にインク滴を吐出できる正常吐出機構にインク滴を吐出させる。これにより、異常吐出機構が存在する場合でも異常なインク滴が吐出されることが防止できる。また、A番目の吐出可否データSIに基づいてインク滴を吐出させる場合に異常吐出機構が検出された場合に、同一の印刷ジョブ内の(A+1)番目の吐出可否データSIに基づいてインク滴を吐出させる際(次の吐出タイミング)には、異常吐出機構の代わりに正常吐出機構にインク滴を吐出させることができる。従って、印刷画像の劣化を抑えることができる。また、印刷ジョブを中止させる必要もない。さらに、異常判定部11hと異常対応部11bとが吐出ヘッド10に備えられるため、異常吐出機構の代わりに正常吐出機構にインク滴を吐出させるための吐出可否データSIを生成しなくてもよい。従って、異常吐出機構の代わりに正常吐出機構にインク滴を吐出させる吐出可否データSIを生成するように、異常吐出機構の判定結果を吐出ヘッド10外の主基板等に通知する必要がなく、当該通知のための信号線を設けなくても済む。
さらに、検査電圧取得手段としてのパルス変換部11eは、360(=N)個の吐出機構のうち3(=M=L)個以下のS個の吐出機構がインク滴を吐出する場合に、検査端子Tから結合検査電圧MVを取得する。従って、異常判定部11hは、結合検査電圧MVに基づいてS個の吐出機構が異常であるか否かを一括して判定できる。検査電圧が結合される吐出機構の数の最大でも3(=M=L)個に抑えられるため、検査電圧の結合数が過多となり、結合検査電圧MVの判定精度が低下することが防止できる。
また、360(=N)個の吐出機構は、3(=M)個の吐出機構で構成されるグループGに分割される。そして、パルス変換部11eは、検査対象のグループGに属する3(=M)個の吐出機構のうち3(=M=L)個以下のS個の吐出機構がインク滴を吐出する場合に、検査端子Tから結合検査電圧MVを取得する。任意の印刷ジョブの実行中の吐出タイミングにおいて、360(=N)個の吐出機構のうち3(=M=L)個以下のS個の吐出機構がインク滴を吐出する可能性は低い。しかし、任意の印刷ジョブの実行中の吐出タイミングにおいても、検査対象のグループGを構成する3(=M)個の吐出機構のうちインク滴を吐出する吐出機構の数(S)は、必ず3(=M=L)個以下となる。従って、検査対象のグループGに属する3(=M)個の吐出機構のうち3(=M=L)個以下のS個の吐出機構がインク滴を吐出する場合に、検査端子Tから結合検査電圧MVを取得することにより、S個の吐出機構が異常であるか否かを早期に判定できる。すなわち、多数の吐出機構を備える(Nが大きい)プリンター1にて、同時にインク滴の吐出を行う吐出機構が不特定となる任意の印刷ジョブの実行する場合であっても、早期に吐出機構の検査を完了させることができる。
ここで、S個の吐出機構における検査電圧のすべてが一様に正常な電圧パターンを示せば、S個の吐出機構における検査電圧を結合した結合検査電圧MVも正常な電圧パターンを示すと考えることができる。従って、異常判定部11hは、結合検査電圧MVが異常でない場合、S個の吐出機構のすべてが正常であると判定することができる。本実施形態では、異常判定部11hは、結合検査電圧MVが異常でない場合、S個の吐出機構のすべてが正常であると仮判定し、正常回数に1を加算する。
一方、Sが2以上であり、かつ、S個の吐出機構の検査電圧を結合した結合検査電圧MVが異常である場合、S個の吐出機構のうちどの吐出機構の検査電圧が異常であったかを一意に特定できない。従って、Sが2以上であり、かつ、結合検査電圧MVが異常である場合は、S個の吐出機構のいずれかが異常であると仮判定して、S個の吐出機構のすべてを異常候補としておく。異常判定部11hは、単一のグループGについて結合検査電圧MVが異常であるか否かを複数回判定する。そして、異常判定部11hは、異常候補とされたS個の吐出機構のうち1個の吐出機構を除く(S−1)個の吐出機構が正常であると判定した場合、当該1個の吐出機構が異常であると判定する。これにより、異常な吐出機構が単独でインク滴を吐出するまで、同一のグループGについて結合検査電圧MVが異常であるか否かを判定する処理を繰り返さなくてもよい。
ここで、結合検査電圧MVが正常であると判定された回数が多くなるほど、結合検査電圧MVが正常であることの信頼度が高くなる。本実施形態のように、異常判定部11hは、結合検査電圧MVが正常であると仮判定された回数である正常回数が所定の正常閾値(2回)以上となった場合に、吐出機構が正常であると確定することにより、信頼度の高い検査を行うことができる。
(1−2)検査処理:
図5は、吐出ヘッド10のヘッドIC11が実行する検査処理のフローチャートである。検査処理は、印刷ジョブの実行中において吐出タイミングごと実行されるループ処理である。なお、検査処理が実行可能な印刷ジョブは特に限定されず、任意の印刷画像を形成する印刷ジョブにおいて検査処理が実行できる。スイッチ制御データ生成部11aは検査対象のグループGを選択する(S100)。例えば、スイッチ制御データ生成部11aは、グループGに属する吐出機構の番号nの小さい順にグループGを選択してもよい。また、前回の印刷ジョブの際にすべてのグループGについての検査処理が完了していなかった場合には、判定テーブルD2を参照して、前回の印刷ジョブの際に検査処理が未完了のグループGを選択するようにしてもよい。次にスイッチ制御データ生成部11aは、検査対象のグループGに対応する検査スイッチM2のみをオンとさせる検査制御データSGを生成し、検査スイッチ制御部11dに出力する(S105)。
次に、スイッチ制御データ生成部11aは吐出可否データSIを吐出可否データ生成回路21から取得する(S110)。すなわち、スイッチ制御データ生成部11aは、吐出機構が今回インク滴を吐出するための吐出可否データSIを取得する。吐出可否データSIが取得されると、異常対応部11bは異常対応処理(後述)を実行させる。この異常対応処理において、異常対応部11bは吐出可否データSIを修正し、ステップS115以降は修正後の吐出可否データSIを対象として各処理が行われる。
スイッチ制御データ生成部11aは、吐出可否データSIに基づいて、検査対象のグループGに属する3(=M)個の吐出機構のうち、インク滴を吐出させる吐出機構であるS個の稼働吐出機構を特定する(S115)。そして、ステップS115の後にラッチ信号LATが立ち上がると、検査対象のグループGに属するS個の稼働吐出機構を含め、吐出可否データSIにてインク滴を吐出するように指定されたすべての吐出機構からインク滴が吐出される。
パルス変換部11eと周期計測部11fとは、結合検査電圧MVを取得し、当該結合検査電圧MVが振動する周期pを計測する(S120)。すなわち、パルス変換部11eの検査端子Tには、吐出パルスの出力期間の直後において、検査スイッチM1,M2を介してS個の稼働吐出機構の印加スイッチPから結合検査電圧MVが入力される。そして、パルス変換部11eが結合検査電圧MVを検査パルスMPに変換し、当該検査パルスMPに基づいて周期pを計測する。次に、電圧判定部11gは、周期pが異常であるか否かを判定する(S125)。すなわち、電圧判定部11gは、判定条件データD1に規定された正常範囲に属さない場合には周期pが異常であると判定し、正常範囲に属する場合には周期pが正常であると判定する。
周期pが異常である場合(S125:Y)、異常判定部11hは、検査対象のグループGに属する稼働吐出機構が1(S=1)個であったか否かを判定する(S130)。そして、検査対象のグループGに属する稼働吐出機構が1個であった場合(S130:Y)、異常判定部11hは、当該1個の稼働吐出機構が異常であると確定し、判定テーブルD2(図4B)に記録する(S135)。一方、検査対象のグループGに属する稼働吐出機構が1個でなかった場合(S130:N)、異常判定部11hは、当該S個の稼働吐出機構のすべてが異常であると仮判定し、当該S個の稼働吐出機構のすべてが異常候補であると判定テーブルD2に記録する(S140)。すなわち、異常判定部11hは、Sが2以上であり、かつ、結合検査電圧MVが異常である場合、S個の稼働吐出機構のいずれかが異常であると判定するに留め、異常な吐出機構を一意に特定しない。
周期pが正常である場合(S125:N)、異常判定部11hは、検査対象のグループGに属するS個の稼働吐出機構のすべてが正常であると仮判定する(S145)。すなわち、異常判定部11hは、判定テーブルD2において、当該S個の稼働吐出機構のそれぞれについて正常回数に1を加算する。なお、グループGが最初に検査対象として選択された段階で、当該グループGに属するすべての構吐出機構について正常回数は0にリセットされる。異常判定部11hは、正常回数が正常閾値(2)と等しい構吐出機構が正常であると確定し、判定テーブルD2に記録する(S150)。
さらに、異常判定部11hは、同時に異常候補とされたS個の吐出機構のうち、(S−1)個の吐出機構が正常と確定されているか否かを判定する(S155)。図4Bに示すように、判定テーブルD2において異常候補とされた吐出タイミングの番号が吐出機構に対応付けられているため、同時に異常候補とされたS個の吐出機構が特定できる。同時に異常候補とされたS個の吐出機構のうち、(S−1)個の吐出機構が正常と確定されている場合(S155:Y)、異常判定部11hは、正常と確定された(S−1)個の吐出機構を除く残りの1個の吐出機構が異常であると確定し、判定テーブルD2に記録する(S160)。一方、同時に異常候補とされたS個の吐出機構のうち、(S−1)個の吐出機構が正常と確定されていない場合(S155:N)、異常判定部11hは、そのままステップS165へ移行する。以上説明したように、判定テーブルD2は、吐出タイミングごと、すなわち吐出可否データSIが出力されるごとに、更新される。
次に異常判定部11hは、検査対象のグループGに属するすべての吐出機構について判定結果が確定したか否かを判定する(S165)。そして、検査対象のグループGに属するすべての吐出機構について判定結果が確定していない場合(S165:N)、異常判定部11hは、ステップS100において次のグループGを検査対象として選択させることなく、ステップS105に戻る。すなわち、異常判定部11hは、スイッチ制御データ生成部11aに次のグループGを検査対象として選択することを禁止させ、同一のグループGについての処理(S105〜)を繰り返して実行させる。一方、検査対象のグループGに属するすべての吐出機構について判定結果が確定した場合(S165:Y)、異常判定部11hは、すべてのグループGを検査対象として選択したか否かを判定する(S170)。そして、すべてのグループGを検査対象として選択していない場合(S170:N)、異常判定部11hは、ステップS100に戻る。すなわち、異常判定部11hは、スイッチ制御データ生成部11aに次のグループGを検査対象として選択することを許可し、次のグループGについての処理(S105〜)を実行させる。一方、すべてのグループGを検査対象として選択した場合(S170:Y)、異常判定部11hは、検査処理を終了させる。検査処理を終了するよりも先に印刷ジョブが完了した場合には、その時点における判定テーブルD2を保持し、次の印刷ジョブにおいて検査処理を続行させてもよい。
(1−3)異常対応処理:
図6Aは、異常対応部11bが実行する異常対応処理のフローチャートである。異常対応処理は、図5の検査処理において吐出可否データSIが取得されるごとに実行される処理である。図5のステップS110にて吐出可否データSIが取得されると、異常対応部11bは、前回の吐出タイミングにおいて更新された判定テーブルD2を取得する。すなわち、図5のステップS110にて(A+1)番目の吐出タイミングの吐出可否データSIが取得されたとすると、異常対応部11bは、A番目の吐出タイミングにて更新された判定テーブルD2を取得する。
異常対応部11bは、今回の吐出可否データSIに基づいてインク滴を吐出すべき稼働吐出機構を特定し、当該稼働吐出機構のうち1個を選択する(S210)。次に、異常対応部11bは、選択した稼働吐出機構が判定テーブルD2にて異常であると確定された異常吐出機構であるか否かを判定する(S230)。そして、選択した稼働吐出機構が判定テーブルD2にて異常であると確定された異常吐出機構でない場合(S230:N)、選択した稼働吐出機構についての吐出可否データSIを修正することなく、ステップS250を実行する。すなわち、異常対応部11bは、すべての稼働吐出機構を選択したか否かを判定する(S250)。そして、すべての稼働吐出機構を選択していない場合(S250:N)、ステップS210に戻り、次の稼働吐出機構を選択する。なお、異常対応処理において、未検査の吐出機構(異常とも正常とも確定されていない吐出機構)は、異常でないこととする。
一方、選択した稼働吐出機構が判定テーブルD2にて異常であると確定された異常吐出機構である場合(S230:Y)、異常対応部11bは、選択した稼働吐出機構に隣接する隣接吐出機構のすべてが判定テーブルD2にて異常であると確定された異常吐出機構であるか否かを判定する(S260)。すなわち、図3Aに示すように異常対応部11bは、異常吐出機構と同一のインク色のインク滴を吐出し、かつ、印刷方向の直交方向において異常吐出機構が備えるノズル14(白丸)との距離が最短(配列間隔の半分)となるノズル14(二重丸)を備える2個の吐出機構が双方とも異常吐出機構であるか否かを判定する。そして、隣接吐出機構のすべてが異常吐出機構である場合(S260:Y)、異常対応部11bは、吐出可否データSIを修正することなく、ステップS250を実行する。
一方、隣接吐出機構の少なくとも1個が異常吐出機構でない場合(S260:N)、異常対応部11bは、異常吐出機構でない隣接吐出機構のすべてがインク滴を吐出させる稼働吐出機構であるか否かを判定する(S270)。そして、異常吐出機構でない隣接吐出機構の少なくとも1個が稼働吐出機構でない場合(S270:N)、異常対応部11bは、選択した稼働吐出機構についての吐出可否データSIと、異常吐出機構でも稼働吐出機構でもない隣接吐出機構についての吐出可否データSIとを交換する。これにより、選択した異常な稼働吐出機構の代わりに、正常な隣接吐出機構にインク滴を吐出させることができる。なお、異常吐出機構でも稼働吐出機構でもない隣接吐出機構が複数存在する場合には、異常対応部11bは、これらのいずれの隣接吐出機構と吐出可否データSIを交換してもよい。
一方、異常吐出機構でない隣接吐出機構のすべてが稼働吐出機構である場合(S270:Y)、異常対応部11bは、吐出可否データSIを修正することなく、ステップS250を実行する。なお、異常吐出機構の代わりに正常吐出機構にインク滴を吐出させることができない場合(S260:Y,S270:Y)、異常対応部11bは、当該稼働吐出機構からインク滴が吐出されないように吐出可否データSIを修正してもよい。さらに、異常吐出機構の代わりに正常吐出機構にインク滴を吐出させることができない場合(S260:Y,S270:Y)、異常対応部11bは、隣接吐出機構が満たすべきノズル14の存在範囲を広げてもよい。
本実施形態においては、グループGを構成する3(=M)個の吐出機構のすべてが吐出している場合でも、結合検査電圧MVに基づく異常判定を行うこととした。しかしながら、結合検査電圧MVにおける結合電圧の結合数をL(L<M)個に制限することにより、結合検査電圧MVが振動する周期pの判定精度を向上させてもよい。以下、結合検査電圧MVにおける結合電圧の結合数をL個に制限する実施形態について説明する。
図6Bは、結合検査電圧MVにおける結合電圧の結合数をL個に制限する場合の検査処理のフローチャート(一部)を示す。なお、図6Bは図5の検査処理と異なる処理のみ示す。グループGを構成する3個の吐出機構のうち稼働吐出機構を特定すると(図5:S115)、異常判定部11hは、稼働吐出機構が2(=L)個以下であるか否かを判定し(S118)する。そして、稼働吐出機構が2個以下でない場合、異常判定部11hは、ステップS105(図5)に戻る。すなわち、結合検査電圧MVが振動する周期pが異常であるか否かを判定することなく、次の吐出タイミングの吐出可否データSIの出力を待つ。一方、稼働吐出機構が2個以下である場合、異常判定部11hは、ステップS120以降(図5)の処理を実行し、結合検査電圧MVが振動する周期pが異常であるか否かを判定する。このように、周期pが異常であるか否かを判定する結合検査電圧MVにおける稼働吐出機構の数を所定するL個に制限すれば、結合検査電圧MVにおける検査電圧の結合数を少なくすることができ、周期pの判定精度を向上させることができる。
(2)変形例1:
図7Aは変形例1の吐出ヘッド10が備える吐出機構の構造を示す模式図であり、図7Bは変形例1の吐出ヘッド10の一部の回路図である。図7Aに示すように、変形例1では、各吐出機構が通常部と予備部とノズル14とを備えている。通常部は、ピエゾ素子12aとインク室13aと振動板15aとを備え、インク室13aはノズル14に連通する。予備部は、予備ピエゾ素子12bと予備インク室13bと予備振動板15bとを備え、インク室13bもノズル14に連通する。吐出機構において通常部と予備部とは、図7Aの紙面において中央のノズル14に関して左右対称な構造を有している。インク室13aと予備インク室13bとはノズル14と連通しているため、インク室13aと予備インク室13bとのそれぞれからノズル14にインクが供給される。
図7Bにおいて、単一の吐出機構(一点鎖線)においてピエゾ素子12aと予備ピエゾ素子12bとが備えられており、ピエゾ素子12aと予備ピエゾ素子12bとのそれぞれがグランドと駆動電圧生成回路22との間において直列に接続されている。また、ピエゾ素子12aと予備ピエゾ素子12bのそれぞれとグランドとの間において印加スイッチP1と予備印加スイッチP2とが直列に接続されている。従って、印加スイッチP1がオンとなればピエゾ素子12aに駆動電圧COMが印加され、予備印加スイッチP2がオンとなれば予備ピエゾ素子12bに駆動電圧COMが印加される。印加スイッチP1と予備印加スイッチP2とは、切替回路Cを介して印加スイッチ制御部11cと接続し、印加スイッチ制御部11cと切替回路Cとによってオンオフが切り替えられる。印加スイッチP1とピエゾ素子12aとの間から検査電圧を出力するか否かを切り替える検査スイッチM1が接続される。印加スイッチP1と検査スイッチM1とは、切替回路Cの同一の端子に接続され、互いに同様にオンオフが切り替えられる。一方、予備印加スイッチP2に対応する検査スイッチM1は設けていない。
図8は、変形例1の駆動電圧COMと各スイッチP1,P2,M1,M2の動作を示すタイミングチャートである。ラッチ信号LATと切替信号CHと駆動電圧COMとは、前記実施形態と同様である。切替回路Cは、印加スイッチ制御部11cのデータ出力端子から印加スイッチP1と予備印加スイッチP2とのそれぞれに出力する制御信号を、ピエゾ素子12aの残留振動が正常であるか否かに応じて入れ替えるスイッチである。
ピエゾ素子12aの残留振動が正常である場合、印加スイッチ制御部11cと切替回路Cとは、印加スイッチP1を吐出可否データSIに基づいて制御する。すなわち、前記実施形態と同様に、インク滴を吐出させることを示す吐出可否データSIが出力された場合には吐出タイミングの前半のみにて印加スイッチP1をオンさせ、インク滴を吐出させないことを示す吐出可否データSIが出力された場合には吐出タイミングの後半のみ印加スイッチP1をオンさせる。さらに、ピエゾ素子12aの残留振動が正常である場合、印加スイッチ制御部11cと切替回路Cとは、予備印加スイッチP2を吐出可否データSIに非依存の微振動データVI(図7B)に基づいて制御する。すなわち、吐出可否データSIに依存することなく、常時、吐出タイミングの後半のみ予備印加スイッチP2をオンさせる。
一方、ピエゾ素子12aの残留振動が異常である場合、印加スイッチ制御部11cと切替回路Cとは、予備印加スイッチP2を吐出可否データSIに基づいて制御する。さらに、ピエゾ素子12aの残留振動が異常である場合、印加スイッチ制御部11cと切替回路Cとは、印加スイッチP1を吐出可否データSIに非依存の微振動データVIに基づいて制御する。すなわち、吐出可否データSIに依存することなく、常時、吐出タイミングの後半のみ印加スイッチP1をオンさせる。
図7Bに示すように、変形例1では3個の吐出機構によってグループGが構成され、グループGに含まれる3個の検査スイッチM1を介して出力された検査電圧が結合検査電圧MVとして結合される。結合検査電圧MVは、グループGごとに備えられた検査スイッチM2がオンとなる場合にパルス変換部11eに出力される。図8に示すように検査スイッチM2は、前記実施形態と同様に、当該検査スイッチM2に対応するグループGが検査対象として選択されている場合において、吐出タイミングの前半における吐出パルスの直後にオンさせられる。なお、本実施形態においても、結合検査電圧MVは残留振動に応じて印加スイッチP1の両端に生じる電圧である。
図9Aは、変形例1にかかる検査処理のフローチャート(一部)である。図9Aでは前記実施形態の検査処理(図5)から変更がある処理のみ示している。前記実施形態と同様に残留振動により結合検査電圧MVが振動する周期pが異常であるか否かを判定する(S125)。そして、結合検査電圧MVが振動する周期pが異常である場合(S125:Y)、異常判定部11hは、検査対象のグループGに属する吐出機構のすべてが異常であると確定(判定)する(S300)。検査対象のグループGに属する吐出機構のすべてが異常であると確定すると、異常判定部11hは、ステップS170を実行する。すなわち、すべての吐出機構が異常であると確定したグループGについての検査を終了させ、次のグループGを検査対象として選択する(図5:S100)。一方、結合検査電圧MVが振動する周期pが正常である場合(S125:N)、異常判定部11hは、前記実施形態と同様に稼働吐出機構のすべてについて正常回数に1を加算し(S145)、正常回数が2回となった稼働吐出機構が正常であると確定する(S150)。そして、異常判定部11hは、検査対象のグループGに属する吐出機構のすべてが正常であると確定されたか否かを判定する(S310)。そして、検査対象のグループGに属する吐出機構のすべてが正常であると確定されていない場合(S310:N)、異常判定部11hは、ステップS105に戻り、現在の検査対象のグループGについての検査を再度実行させる。一方、検査対象のグループGに属する吐出機構のすべてが正常であると確定されている場合、異常判定部11hは、ステップS100に戻り、次のグループGについての検査を実行させる。
図9Bは、変形例1にかかる異常対応処理のフローチャートである。変形例1においても異常対応処理は、印刷ジョブの実行中において、検査処理中(図5のステップS110の後)に実行される処理である。図5のステップS110にて吐出可否データSIが取得されると、異常対応部11bは、前回の吐出タイミングにおいて更新された判定テーブルD2を取得する(S400)。次に異常対応部11bは、処理対象の吐出機構を選択する(S410)。そして、異常対応部11bは、処理対象の吐出機構が異常であると確定されたか否かを判定する(S420)。
処理対象の吐出機構が異常であると確定されていた場合(S420:Y)、異常対応部11bは、処理対象の吐出機構について予備ピエゾ素子12bの駆動によりインク滴を吐出させるように切替回路Cを切り替える(S430)。すなわち、予備印加スイッチP2に吐出可否データSIに基づく制御信号を出力させ、印加スイッチP1に吐出可否データSIに非依存の微振動データVIに基づく制御信号を出力させるように切り替えるための異常対応信号を切替回路Cに出力する。一方、処理対象の吐出機構が異常であると確定されていなかった場合(S420:N)、異常対応部11bは、処理対象の吐出機構について切替回路Cを切り替えるための異常対応信号を出力することなく、次の吐出機構を処理対象として選択する(S440,S410)。すなわち、印加スイッチP1に吐出可否データSIに基づく制御信号を出力させるとともに、予備印加スイッチP2に吐出可否データSIに非依存の微振動データVIに基づく制御信号を出力させる。
以上説明した変形例1の構成において、結合検査電圧MVが振動する周期pが異常である場合、検査電圧が異常である吐出機構(ピエゾ素子12a)を一意に特定することなく、結合検査電圧MVが取得されたグループGに属する吐出機構のすべてが異常であると確定する。これにより、単一のグループGについて処理が繰り返される回数を抑制することができ、検査処理を早期に完了させることができる。また、吐出機構のすべてが異常であると確定されたグループGにおいては、予備ピエゾ素子12bの駆動により同一のノズル14から正常なインク滴を吐出させることができるため、インク滴によって形成される印刷画像の劣化を抑制できる。
また、図8に示すように、異常であると確定されていない吐出機構のそれぞれにおいて吐出タイミングごとに予備ピエゾ素子12bに微振動パルスを印加するとともに異常であると確定された吐出機構のそれぞれにおいて吐出タイミングごとにピエゾ素子12aに微振動パルスを印加している。これにより、異常であると確定されたか否かに拘わらず、いずれの吐出機構においてもインク滴の吐出に寄与していないピエゾ素子12aまたは予備ピエゾ素子12bを微振動させることができ、インクの滞留が防止できる。さらに、異常判定部11hは印刷ジョブ内の吐出タイミングごとに判定テーブルD2を更新するとともに、異常対応部11bは(A+1)番目の吐出タイミングにおいてA番目の吐出タイミングにおいて異常判定部11hによって異常とされた吐出機構についてピエゾ素子12aの代わりに予備ピエゾ素子12bによってインク滴を吐出させることとなる。従って、異常なインク滴の吐出を抑制し、印刷画像の劣化を抑制できる。
(3)変形例2:
変形例1のように予備ピエゾ素子12bを備える構成において、第1実施形態のようにグループG内において残留振動が異常な吐出機構を一意に特定してもよい。すなわち、第1実施形態のようにグループG内において残留振動が異常な吐出機構を一意する場合、異常対応部11bは、当該特定した吐出機構についてのみピエゾ素子12aの代わりに予備ピエゾ素子12bによってインク滴を吐出させるように切替回路Cを切り替えてもよい。
(4)変形例3:
図10Aは、変形例3の吐出ヘッド10の一部の回路図である。変形例3において
駆動電圧生成回路22と印加スイッチPとピエゾ素子12とグランドとが直列に接続されている。変形例3では、印加スイッチP1がピエゾ素子12aよりもグランド側ではなく、駆動電圧生成回路22側に接続されている。印加スイッチPの一端が駆動電圧生成回路22と接続されており、印加スイッチPの他端が検査スイッチMを介してパルス変換部11eの検査端子Tに接続されている。検査スイッチMがオンとなる場合に印加スイッチPの他端とパルス変換部11eの検査端子Tとが同電位となる。検査スイッチMは吐出機構ごとに備えられており、検査スイッチ制御部11dが検査制御データSGに基づいて吐出機構ごとに検査スイッチMを切り替える。本実施形態において、スイッチ制御データ生成部11aは、単一の検査対象の吐出機構に対応する検査スイッチMのみをオンとし、それ以外の吐出機構に対応する検査スイッチMはすべてオフとする。すなわち、変形例3では、グループGごとに検査を行うのではなく、吐出機構ごとに検査を行う。
図10Bは、変形例3の駆動電圧COMとスイッチP,Mの動作を示すタイミングチャートである。変形例3において、単一の吐出タイミングが切替信号CHによって第1〜4期間に分割されている。各吐出タイミングにおいて同一の駆動電圧COMが生成され、駆動電圧COMは既知の電圧パターンである。第1期間において、駆動電圧COMは大ドットを形成する大インク滴を吐出するための吐出パルスを含む。第2期間において、駆動電圧COMは中ドットを形成する中インク滴を吐出するための吐出パルスを含む。第3期間において、駆動電圧COMは小ドットを形成する小インク滴を吐出するための吐出パルスを含む。第4期間において、駆動電圧COMはピエゾ素子12を微振動させるための微振動パルスを含む。なお、インク滴の体積は、大インク滴が最も大きく、小インク滴が最も小さい。また、各吐出パルスおよび微振動パルスの出力期間を除く期間において、駆動電圧COMは基準電位VSとなる。
吐出機構にて大インク滴を吐出させる場合、第1期間において印加スイッチPがオンとなる。また、吐出機構にて大インク滴を吐出させ、かつ、検査対象として選択された場合、第1期間における吐出パルスの出力期間の直後において検査スイッチMがオンとなる。吐出機構にて中インク滴を吐出させる場合、第2期間において印加スイッチPがオンとなる。また、吐出機構にて中インク滴を吐出させ、かつ、検査対象として選択された場合、第2期間における吐出パルスの出力期間の直後において検査スイッチMがオンとなる。吐出機構にて小インク滴を吐出させる場合、第3期間において印加スイッチPがオンとなる。また、吐出機構にて小インク滴を吐出させ、かつ、検査対象として選択された場合、第3期間における吐出パルスの出力期間の直後において検査スイッチMがオンとなる。吐出機構にてインク滴を吐出させない場合、第4期間において印加スイッチPがオンとなる。
ここで、吐出パルスの出力期間の直後において検査スイッチMがオンとなる場合、駆動電圧COMは基準電位VSとなる。従って、検査スイッチMがオンとなる期間におけるパルス変換部11eの検査端子Tの電位から基準電位VSを減算することにより、印加スイッチPのソース−ドレイン間に生じた検査電圧を取得できる。また、残留振動により生じる検査電圧は交流成分であるためコンデンサ等によって基準電位VSに相当する直流成分を除去することにより検査電圧を得てもよい。すなわち、駆動電圧COMにおける基準電位VSは、必ずしも電位の大きさまで既知でなくてもよく、一定の直流成分であることが既知であれば残留振動により印加スイッチPのソース−ドレイン間に生じた検査電圧を抽出できる。以上説明した構成によれば、検査対象として選択した吐出機構ごとに残留振動の状態を示す検査電圧を取得でき、当該検査電圧に基づいて検査対象として選択した吐出機構ごとに残留振動が異常であるか否かを判定できる。また、選択した吐出機構が大インク滴と中インク滴と小インク滴のいずれを吐出させる場合でも、検査電圧を取得できる。
パルス変換部11eは、検査端子Tに入力された検査電圧を二値化することにより、検査パルスMPを生成する。パルス変換部11eは、検査端子Tの電位から基準電位VSを減算した検査電圧を増幅する増幅回路と、増幅回路にて増幅した検査電圧を二値化する二値化回路とを備える。二値化回路は、検査電圧が所定の閾値電圧以上となる期間において信号レベルが1となる検査パルスMPを生成する。変形例3において、パルス変換部11eは、3個の第1〜3増幅回路A1〜A3とスイッチ(不図示)とを備える。第1期間においてスイッチは検査電圧を第1増幅回路A1に入力させ、第2期間においてスイッチは検査電圧を第2増幅回路A2に入力させ、第3期間においてスイッチは検査電圧を第3増幅回路A3に入力させる。第1〜3増幅回路A1〜A3における増幅率は、第1増幅回路A1が最も小さく、第3増幅回路A3が最も大きい。すなわち、吐出するインク滴の体積が小さいほど検査電圧MVの増幅率を大きくする。吐出するインク滴の体積が小さいほど増幅前の検査電圧MVの振幅が小さくなるが、増幅率を大きくすることにより、増幅後の検査電圧MVの変化範囲に閾値電圧が含まれるようにすることができる。従って、吐出するインク滴の体積が小さいほど検査電圧MVの増幅率を大きくすることにより、吐出するインク滴の体積が小さくても、検査電圧MVに応じた検査パルスMPが生成することができる。
検査電圧MVは時刻tの経過とともに振幅が減衰する周期波形を有する。そして、時刻tの経過とともに残留振動が減衰し、増幅後の検査電圧MVの振幅が所定の閾値電圧を含まなくなった場合には、検査パルスMPの信号レベルが変化しなくなる。変形例3において、ヘッドIC11は周期計測部11f(図1)の代わりに減衰期間計測部(不図示)を備え、減衰期間計測部は吐出パルスの出力期間の終了時刻から、最後に検査パルスMPの信号レベルが変化した時刻までの期間を減衰期間として特定する。電圧判定部11gは、第1〜第3期間のそれぞれについて減衰期間の正常範囲を判定条件データD1から読み出し、減衰期間計測部が計測した減衰期間が正常範囲に属する場合には検査電圧が正常であると判定する。なお、小インク滴が吐出される第3期間においては、大インク滴と中インク滴とが吐出される第1,2期間よりもピエゾ素子12(振動板15)の振幅が小さいため、減衰期間が最も短くなる。ただし、第1〜3増幅回路A1〜A3の増幅率がそれぞれ異なるため、必ずしも第1期間における減衰期間の正常範囲よりも、第3期間における減衰期間の正常範囲が短い値側に設定されるとは限らない。なお、インク室13内のインクの粘度が高くなるほど減衰期間が短くなるため、減衰期間が正常範囲に属することはインク室13内のインクの粘度が正常であることを意味する。すなわち、変形例3において、吐出機構が異常であるとは、インク室13内のインクの粘度が異常であることを意味する。変形例3においては、吐出機構ごとに検査電圧が正常であるか否かが電圧判定部11gによって判定されるため、異常判定部11hは吐出機構ごとに検査電圧(減衰期間)の判定結果を判定テーブルD2に記録していく。
図11Aは、変形例3において記録される判定テーブルD2の例を示す。図11Aでは31〜33番の吐出機構が順に検査対象として選択されている。異常判定部11hは、第1〜第3期間のいずれにおいて検査電圧が取得された場合でも、検査電圧が正常であると判定されると、判定テーブルD2において正常回数に1を加算する。すなわち、正常回数は、第1〜第3期間における検査電圧がそれぞれ正常と判定された回数を合計した値を意味する。そして、異常判定部11hは、正常回数が2となった段階で、吐出機構が正常であると確定する。異常判定部11hは、第1〜第3期間のいずれにおいて検査電圧が取得された場合でも、検査電圧が異常であると判定されると、判定テーブルD2において検査対象の吐出機構が異常であると確定する。すなわち、変形例3において正常回数についての正常閾値は2回とされ、異常回数についての異常閾値は1回とされている。正常回数についての正常閾値を2回とすることにより、正常であるとの確定に慎重を期すことができ、異常な吐出機構の検出漏れを防止できる。
異常判定部11hは、検査対象の吐出機構について正常または異常であると確定すると、次の吐出機構を検査対象として選択することをスイッチ制御データ生成部11aに許可する。これにより、スイッチ制御データ生成部11aは次の吐出機構を検査対象として選択し、当該吐出機構においてのみ検査スイッチMをオンとする検査制御データSGを生成する。なお、必ずしも検査対象の吐出機構について検査結果が確定するまで、当該吐出機構についてのみ検査しなくてもよく、当該吐出機構がインク滴を吐出させない吐出タイミングにおいて別の吐出機構を暫定的に検査対象として選択してもよい。例えば図11Aにおける208番の吐出タイミングにおいて、未検査である33番の吐出機構を暫定的に検査対象として検査電圧が正常であるか否かを判定してもよい。そして、32番の吐出機構がインク滴を吐出する209番の吐出タイミングにおいて、32番の吐出機構を検査対象として検査電圧が正常であるか否かを判定してもよい。
図11Bは、変形例3において記録される判定テーブルD2の別の例を示す。図11Bにおいて、検査対象とされている吐出機構の欄に記載された数値は、正常回数でなく総合指標値を表す。異常判定部11hは、第1期間において取得した検査電圧が正常である場合、正常回数に1回を加算するのではなく、正常回数に1回に重み係数2を乗算した指標値として2(=2×1)を総合指標値に加算する。異常判定部11hは、第2期間において取得した検査電圧が正常である場合、正常回数に1回に重み係数1を乗算した指標値として1(=1×1)を総合指標値に加算する。さらに、異常判定部11hは、第3期間において取得した検査電圧が正常である場合、正常回数に1回に重み係数0.5を乗算した指標値として0.5(=0.5×1)を総合指標値に加算する。すなわち、異常判定部11hは、検査電圧が正常であると判定された回数に、インク滴の大きさが大きいほど値の大きい重み係数を乗算した指標値を合計した総合指標値を算出する。そして、異常判定部11hが所定の正常閾値である2以上となった場合に、検査対象の吐出機構が正常であると確定する。
図11Bの例では、大インク滴を吐出させた場合に検査電圧が正常となった正常回数が1回以上(第1閾値以上)であれば、吐出機構が正常であると確定されることとなる。また、中インク滴を吐出させた場合に検査電圧が正常となった正常回数が2回以上であれば、吐出機構が正常であると確定される。さらに、小インク滴を吐出させた場合に検査電圧が正常となった正常回数が4回以上(第2閾値以上)であれば、吐出機構が正常であると確定される。すなわち、図11Bの例では、吐出したインク滴の体積が小さいほど、吐出機構が正常であると確定するための正常回数の閾値を大きくしている。
上述のように小インク滴を吐出した場合には、検査電圧が最も大きい増幅率によって増幅されるため、小インク滴を吐出した場合には微小のノイズ電圧が検査電圧に混在した場合でも、検査パルスMPに当該ノイズ電圧に対応するパルスが表れ得る。すなわち、検査電圧を取得した際に吐出したインク滴が小さいほど、検査パルスMPにノイズ成分が表れる可能性が高く、当該検査パルスMPに基づく検査電圧の判定結果の信頼性が低くなる。反対に、検査電圧を取得した際に吐出したインク滴が大きいほど、検査パルスMPにノイズ成分が表れる可能性が低く、当該検査パルスMPに基づく検査電圧の判定結果の信頼性が高くなる。従って、インク滴の大きさが大きいほど値の大きい重み係数を乗算した指標値を合計した総合指標値に基づいて吐出機構が正常であるか否かを判定することにより、信頼性の高い検査電圧の判定結果を重視して、吐出機構が正常であるか否かを判定できる。
変形例3においては、異常対応処理(図6)を以下のように変更してもよい。すなわち、異常吐出機構でない隣接吐出機構のすべてが稼働吐出機構である場合(S270:Y)、異常対応部11bは、異常吐出機構でないいずれかの隣接吐出機構において吐出させるインク滴の体積を大きくするように当該隣接吐出機構についての吐出可否データSIを修正してもよい。また、変形例3において、異常吐出機構において予備ピエゾ素子12bにインク滴を吐出させてもよい。
(5)他の変形例:
変形例3のように吐出機構ごとに検査スイッチMを制御することにより吐出機構ごとの検査を行う構成において、異常であると確定された吐出機構において予備ピエゾ素子12bにインク滴を吐出させてもよい。また、異常判定部11hは、異常回数の閾値である異常閾値を2以上の値にし、吐出機構が異常であるとの判定にも慎重を期してもよい。
前記実施形態では検査装置がインク滴を吐出させる吐出機構を検査する例を示したが、インク滴以外の液滴を吐出させる吐出機構を検査してもよい。すなわち、吐出機構は吐出させた液滴によって平面構造物や立体構造物を形成してもよく、液滴は平面構造物や立体構造物を構成する何らかの材料であってもよい。さらに、吐出機構は液滴の着弾位置における加工処理(洗浄、エッチング等)を行うための処理液を吐出させてもよい。さらに、前記実施形態では任意の印刷ジョブの実行中に検査処理を行うこととしたが、プリンター1は所定の検査画像を印刷させつつ検査処理を行ってもよい。また、検査処理と異常対応処理とを並行して行うこととしたが、プリンター1は、検査処理のみを実行し、異常な吐出機構が存在する場合に印刷ジョブを中止させてもよい。さらに、液滴は、圧電素子の機械変化による加圧によって吐出されるものに限られず、気泡の発生による加圧によって吐出されてもよい。さらに、残留振動の周期pや減衰期間以外の検査パラメーターを結合検査電圧に基づいて取得してもよい。むろん、残留振動の周期pや減衰期間以外の検査パラメーターに基づいて、インク室13の気泡混入やインクの粘度異常以外の異常を検査してもよい。