JP2013142167A - 粒状金属鉄の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む原料混合物を、移動炉床式加熱還元炉で加熱して粒状金属鉄を製造する際に、原料混合物にCaF2供給物質(例えば、蛍石など)を配合しない場合であっても、粒状金属鉄の歩留まり率を高め、粒状金属鉄の生産性を向上できる粒状金属鉄の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)粒状金属鉄を製造する際に副生するスラグ中のCaF2量を0.5%以下(0%を含む)に抑えると共に、(2)原料混合物に含まれるCaO量、MgO量およびSiO2量を調整することによって、前記スラグ中のCaO量、MgO量およびSiO2量から求められる該スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を0.40〜1.15の範囲とし、且つ前記スラグ中のMgO量を20%以下(0%を含まない)とする。
【選択図】図3
【解決手段】(1)粒状金属鉄を製造する際に副生するスラグ中のCaF2量を0.5%以下(0%を含む)に抑えると共に、(2)原料混合物に含まれるCaO量、MgO量およびSiO2量を調整することによって、前記スラグ中のCaO量、MgO量およびSiO2量から求められる該スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を0.40〜1.15の範囲とし、且つ前記スラグ中のMgO量を20%以下(0%を含まない)とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、粒状金属鉄の製造方法に関するものであり、詳細には、鉄鉱石等の酸化鉄含有物質と、石炭やコークス等の炭素質還元剤(以下、炭材ということがある)とを含む原料混合物を移動炉床式加熱還元炉で加熱し、該原料混合物中の酸化鉄を直接還元し、粒状金属鉄を製造する方法に関するものである。なお、本発明において、「粒状」とは、必ずしも真球状であることを意味するものではなく、楕円状、卵形状、あるいはそれらが若干扁平したものも含む意味である。
鉄鉱石や酸化鉄等の酸化鉄含有物質から鉄を生産する方法としては、高炉法が主流である。その一方で、比較的小規模で、多品種・少量生産向きの製鉄法として、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤とを含む原料混合物(あるいは該原料混合物を押し固めた簡易成形体、更にはペレットやブリケットなどに成形した炭材内装成形体)を移動炉床式の加熱還元炉(例えば、回転炉床炉など)に供給し、該原料混合物が該炉内を移動する間に、加熱バーナーによる燃焼熱や輻射熱で加熱することによって該原料混合物中の酸化鉄を炭素質還元剤で直接還元し、得られた金属鉄(還元鉄)を続いて浸炭・溶融させ、次いで副生するスラグと分離しつつ粒状に凝集させた後、冷却凝固させて粒状の金属鉄(還元鉄)を製造する直接還元製鉄法が開発されている(特許文献1〜3など)。この直接還元製鉄法では高炉等の大規模な設備が不要になるため、実用化に向けて研究が盛んに行われている。しかし工業的規模で実施するには、操業安定性や安全性、経済性、粒状金属鉄(製品)の品質などを含めて更に改善しなければならない課題も多い。
当該課題の一つとして、粒状金属鉄の生産性の向上が挙げられる。生産性が悪ければ工業的規模で実施することはまず不可能だからである。そこで本出願人は、粒状金属鉄を生産性よく製造できる技術を先に提案している(特許文献4〜6)。
これらのうち特許文献4では、金属鉄を溶融させたときに副生するスラグに含まれるCaO量、MgO量、およびSiO2量から求められる塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を1.3〜2.3の範囲とすると共に、スラグ中のMgO量を5〜13%の範囲に制御している。特許文献5では、上記塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を1.4〜2.3の範囲とすると共に、原料混合物に、Na2O供給物質、K2O供給物質およびLi2O供給物質よりなる群から選ばれる少なくとも1種を添加し、スラグ中のNa2O、K2OおよびLi2O含有量を所定値以上に制御している。特許文献6では、上記塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を1.3〜2.3の範囲とすると共に、原料混合物に、アルカリ金属を少なくとも一種含む融点が1400℃以下の複合酸化物を配合し、スラグ中のアルカリ酸化物の含有量を所定値以上に制御している。また、特許文献5、6には、スラグ中のMgO量を5〜22%の範囲に制御すれば、スラグの塩基度が比較的高い領域でもスラグの凝集能を改善でき、高歩留まりで粒状金属鉄を製造できることを開示している。
上記特許文献4では、粒状金属鉄の歩留まりを高めるために原料混合物中に蛍石を含有させている。しかし、自然環境保護の観点からは添加しないことが望まれる。一方、上記特許文献5、6では、原料混合物中に蛍石を添加しないことを推奨している。しかし、これらの文献では、粒状金属鉄の生産性を高めるために、原料混合物に、Na2O供給物質、K2O供給物質、Li2O供給物質、またはアルカリ金属を少なくとも一種含む融点が1400℃以下の複合酸化物を配合しているため、副生するスラグ量が増加し、粒状金属鉄の生産性を充分に向上できていないことがあった。
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む原料混合物を、移動炉床式加熱還元炉で加熱して粒状金属鉄を製造する際に、原料混合物にCaF2供給物質(例えば、蛍石など)を配合しない場合であっても、粒状金属鉄の歩留まり率を高め、粒状金属鉄の生産性を向上できる粒状金属鉄の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできる本発明に係る粒状金属鉄の製造方法とは、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む原料混合物を、移動炉床式加熱還元炉で加熱し、該原料混合物中の酸化鉄を前記炭素質還元剤により還元し、生成する金属鉄を副生するスラグと分離しつつ粒状に凝集させた後、冷却凝固させて粒状金属鉄を製造する方法である。そして、本発明の粒状金属鉄の製造方法は、(1)前記スラグ中のCaF2量を0.5%(質量%の意味。以下同じ)以下(0%を含む)に抑えると共に、(2)前記原料混合物に含まれるCaO量、MgO量およびSiO2量を調整することによって、前記スラグ中のCaO量、MgO量およびSiO2量から求められる該スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を0.40〜1.15の範囲とし、且つ前記スラグ中のMgO量を20%以下(0%を含まない)とする点に要旨を有している。
本発明に係る製造方法は、上記原料混合物として、例えば、(a)ドロマイト鉱石、(b)生石灰および/または石灰石、(c)MgOおよび/または炭酸マグネシウム、等を配合する工程を更に含むことが好ましい。
本発明によれば、原料混合物にCaF2供給物質を配合せず、スラグ中のCaF2量を0.5%以下に抑えた場合であっても、スラグの塩基度を適切な範囲に制御したうえで、スラグ中のMgO量を所定量以下に制御して含有させているため、粒状金属鉄を高歩留まりで、生産性良く製造できる。
まず、本発明を完成するに至った経緯を説明する。直接還元製鉄法で粒状金属鉄を製造するにあたり、原料混合物に含まれる脈石成分が多い場合には、副生するスラグ量が増大してその凝集性が悪化する。副生スラグの凝集性が低下すると、加熱還元により生成する粒状金属鉄が副生スラグと分離し難くなり、金属鉄の粒状化や塊状化が充分に進まず、粒状金属鉄がスラグを抱き込んだものとなったり、或いは極めて微細な粒状金属鉄が多量に生成し、副生スラグとの分離が困難となる。そのため製品として適正な粒度の粒状金属鉄の歩留まり率が低下し、粒状金属鉄の生産性が低下する。
そこで本発明者らは、原料混合物を加熱したときに副生するスラグの凝集性を改善することを目指して検討した。その結果、スラグの融点を低下させれば、スラグの凝集性が向上すること、これにより加熱還元して得られた金属鉄の凝集性も高まるため、粒状金属鉄の歩留まり率が高くなり、生産性が向上することが明らかになった。そしてスラグの融点を低下させるには、上記スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を0.40〜1.15の範囲に制御したうえで、スラグ中のMgO量を20%以下(0%を含まない)に抑えればよいこと、これによりスラグの融点がおおむね1500℃以下となり、移動炉床式加熱還元炉を操業するときの一般的な温度である1550℃程度よりも低下できることが明らかになった。即ち、本発明では、スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]とスラグ中のMgO量を上記範囲に制御すれば、上記特許文献4のように原料混合物に蛍石を配合したり、上記特許文献5、6のように原料混合物に、Na2O供給物質、K2O供給物質、Li2O供給物質、またはアルカリ金属を少なくとも一種含む融点が1400℃以下の複合酸化物を配合しなくても、粒状金属鉄の歩留まり率を高めることができ、粒状金属鉄の生産性を向上できることを明らかにしている。
以下、本発明について説明する。
本発明に係る粒状金属鉄の製造方法は、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む原料混合物を、移動炉床式加熱還元炉で加熱し、該原料混合物中の酸化鉄を前記炭素質還元剤により還元し、生成する金属鉄を副生するスラグと分離しつつ粒状に凝集させた後、冷却凝固させて粒状金属鉄を製造するものである。そして、本発明は、
(1)スラグ中のCaF2量を0.5%以下(0%を含む)に抑えると共に、
(2)原料混合物に含まれるCaO量、MgO量およびSiO2量を調整することによって、
前記スラグ中のCaO量、MgO量およびSiO2量から求められる該スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を0.40〜1.15の範囲とし、且つ
前記スラグ中のMgO量を20%以下(0%を含まない)
とするところに特徴がある。
本発明に係る粒状金属鉄の製造方法は、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む原料混合物を、移動炉床式加熱還元炉で加熱し、該原料混合物中の酸化鉄を前記炭素質還元剤により還元し、生成する金属鉄を副生するスラグと分離しつつ粒状に凝集させた後、冷却凝固させて粒状金属鉄を製造するものである。そして、本発明は、
(1)スラグ中のCaF2量を0.5%以下(0%を含む)に抑えると共に、
(2)原料混合物に含まれるCaO量、MgO量およびSiO2量を調整することによって、
前記スラグ中のCaO量、MgO量およびSiO2量から求められる該スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を0.40〜1.15の範囲とし、且つ
前記スラグ中のMgO量を20%以下(0%を含まない)
とするところに特徴がある。
上記(1)、(2)の範囲は、本発明者らが種々実験を行った結果、導出されたものである。即ち、本発明者らは、スラグの塩基度(ここでは、スラグに含まれるCaO量とSiO2量から求められる比[CaO/SiO2]を意味している。)を1.3または0.6とし、スラグ中のMgO量を0〜15%、スラグ中のCaF2量を0〜10%としてスラグの液相線温度をFactSage(ソフトウェア名)で計算した。その結果、図1、図2に示す結果が得られた。図1および図2は、スラグ中のCaF2量およびMgO量がスラグの液相線温度に及ぼす影響を示すグラフであり、図1はスラグの塩基度を1.3としたときの結果、図2はスラグの塩基度を0.6としたときの結果を示している。
図1から明らかなように、スラグの塩基度が1.3の場合には、スラグ中のMgO量によらず、スラグ中のCaF2量が減少するに連れてスラグの液相線温度が急激に上昇する傾向が読み取れる。そのためスラグの液相線温度を1500℃以下にするには、スラグ中のCaF2量を1質量%以上としなければならないことが分かる。
これに対し、図2から明らかなように、スラグの塩基度が0.6の場合には、スラグ中のCaF2量およびMgO量によらず、スラグの液相線温度は1500℃以下になることが分かる。即ち、スラグの塩基度が0.6の場合には、スラグ中のCaF2量を0%としても、スラグの液相線温度は1500℃以下となることが分かる。
次に、上記図2の結果を踏まえた上で、本発明者らは、原料混合物にCaF2供給物質(例えば、蛍石など)を配合せず、スラグ中のCaF2量を0%とした場合に、スラグの塩基度(ここでは、スラグに含まれるCaO量、MgO量、およびSiO2量から求められる比[(CaO+MgO)/SiO2]を意味している。)とスラグ中のMgO量がスラグの液相線温度に及ぼす影響を調べた。スラグの塩基度は0.20〜2.36とし、スラグ中のMgO量は0〜18.5%とし、スラグの液相線温度はFactSage(ソフトウェア名)で計算した。その結果、図3に示す結果が得られた。
図3から明らかなように、スラグ中のCaF2量が0%の場合には、スラグの塩基度を0.40〜1.15、スラグ中のMgO量を20%以下に制御することによって、スラグの液相線温度を1500℃以下とすることができることが分かる。
以下、本発明で規定している各範囲について説明する。
以下、本発明で規定している各範囲について説明する。
[(1)スラグ中のCaF2量:0.5%以下(0%を含む)]
本発明では、原料混合物に、蛍石などのCaF2供給物質を配合せず、スラグ中のCaF2量は0%であることを前提としている。但し、CaF2は、不可避的に混入してくることがあるため、上限を0.5%と規定した。スラグ中のCaF2量はできるだけ少ないことが推奨され、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下である。
本発明では、原料混合物に、蛍石などのCaF2供給物質を配合せず、スラグ中のCaF2量は0%であることを前提としている。但し、CaF2は、不可避的に混入してくることがあるため、上限を0.5%と規定した。スラグ中のCaF2量はできるだけ少ないことが推奨され、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下である。
[(2a)スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]:0.40〜1.15]
スラグの塩基度が0.40を下回ると、後述するようにスラグ中のMgO量を20%以下に抑えてもスラグの液相線温度が1500℃を超えて高くなるため、スラグの凝集性が悪くなり、その結果、粒状金属鉄の凝集性が阻害されて粒状金属鉄の歩留まり率が低下する。スラグの塩基度は、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.5以上である。但し、スラグの塩基度が1.15を超えると、スラグの液相線温度が急激に上昇する傾向があるため、上限は1.15とする。スラグの塩基度は、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.9以下である。
スラグの塩基度が0.40を下回ると、後述するようにスラグ中のMgO量を20%以下に抑えてもスラグの液相線温度が1500℃を超えて高くなるため、スラグの凝集性が悪くなり、その結果、粒状金属鉄の凝集性が阻害されて粒状金属鉄の歩留まり率が低下する。スラグの塩基度は、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.5以上である。但し、スラグの塩基度が1.15を超えると、スラグの液相線温度が急激に上昇する傾向があるため、上限は1.15とする。スラグの塩基度は、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.9以下である。
なお、本明細書において、「スラグの塩基度」とは、特に断らない限り、スラグ中のCaO量(質量%)、MgO量(質量%)およびSiO2量(質量%)から求められる(CaO+MgO)/SiO2の比を意味する。
[(2b)スラグ中のMgO量:20%以下(0%を含まない)]
スラグ中のMgO量が20%を超えると、上述したようにスラグの塩基度を適切な範囲に制御してもスラグの液相線温度が上昇する傾向にあるため、スラグの凝集性が悪くなり、その結果、粒状金属鉄の凝集性が阻害されて粒状金属鉄の歩留まり率が低下する。スラグ中のMgO量は好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは13%以下である。粒状金属鉄の歩留まり率を高めて生産性を更に向上させるという観点からすれば、MgO量は少ない方が良いが、MgOは鉄鉱石から不可避的に混入するため、MgOが0%の場合は除いている。
スラグ中のMgO量が20%を超えると、上述したようにスラグの塩基度を適切な範囲に制御してもスラグの液相線温度が上昇する傾向にあるため、スラグの凝集性が悪くなり、その結果、粒状金属鉄の凝集性が阻害されて粒状金属鉄の歩留まり率が低下する。スラグ中のMgO量は好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは13%以下である。粒状金属鉄の歩留まり率を高めて生産性を更に向上させるという観点からすれば、MgO量は少ない方が良いが、MgOは鉄鉱石から不可避的に混入するため、MgOが0%の場合は除いている。
上述したスラグの塩基度とスラグ中のMgO量は、原料である酸化鉄含有物質と炭素質還元剤の配合量を適切に調整することによって制御できる。酸化鉄含有物質や炭素質還元剤は、通常、CaO、MgOおよびSiO2などの脈石を含んでいるため、これらがCaO供給物質、MgO供給物質およびSiO2供給物質となるからである。
なお、酸化鉄含有物質の代表例である鉄鉱石や、炭素質還元剤の代表例である石炭やコークスは天然物であり、種類に応じてCaO、MgO、SiO2の各含有量も変化する。そのため、それらの配合量を一律に規定することは困難であるが、鉄鉱石等の成分組成と、石炭等の成分組成を考慮し、適切に調整することが好ましい。
また、後述するように、炉床上に敷く床敷材として炭素質粉末を用いる場合は、該炭素質粉末の成分とその量も考慮して、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤の配合量を調整することによって、上記スラグの塩基度や該スラグ中のMgO量を制御すればよい。
本発明では、上記原料混合物として、前述した酸化鉄含有物質および炭素質還元剤のほかに、これら以外の「他のCaO供給物質」(酸化鉄含有物質および炭素質還元剤から見れば、外添物質)を更に配合してもよい。この場合は、当該「他のCaO供給物質」の成分組成とその配合量も考慮して上記酸化鉄含有物質と炭素質還元剤の量を調整することによって、最終的に、スラグ中のCaO量を調整し、スラグの塩基度を制御すればよい。
上記「他のCaO供給物質」の種類は特に制限されないが、例えば、生石灰(CaO)や石灰石(主成分はCaCO3)などが挙げられる。生石灰と石灰石は、夫々単独で配合してもよいし、併用して配合してもよい。
また、本発明では、上記原料混合物として、前述した酸化鉄含有物質および炭素質還元剤のほかに、これら以外の「他のMgO供給物質」(酸化鉄含有物質および炭素質還元剤から見れば、外添物質)を更に配合してもよい。この場合は、当該「他のMgO供給物質」の成分組成とその配合量も考慮して酸化鉄含有物質と炭素質還元剤の量を調整することによって、最終的に、スラグ中のMgO量を調整し、スラグの塩基度を制御すればよい。
上記「他のMgO供給物質」の種類は特に制限されないが、例えば、MgO粉末や天然鉱石や海水などから抽出されるMg含有物質、或いは炭酸マグネシウム(MgCO3)などが挙げられる。好ましくはMgO粉末や炭酸マグネシウムであり、これらは夫々単独で配合してもよいし、併用して配合してもよい。
また、本発明では、上記原料混合物として、CaOとMgOの供給物質を更に配合してもよい。CaOとMgOの供給物質としては、例えば、ドロマイト鉱石を配合すればよい。ドロマイト鉱石は、「他のMgO供給物質」でもあり、且つ「他のCaO供給物質」でもある。
次に、図4を参照しながら、本発明に係る移動炉床式加熱還元炉を用いた粒状金属鉄の製造方法を詳細に説明する。図4は、本発明の製造方法に好ましく用いられる移動炉床式加熱還元炉の一例を示しているが、本発明はこれに限定する趣旨ではない。
図4は、移動炉床式加熱還元炉のうち、回転炉床式の加熱還元炉Aの一構成例を示す概略説明図である。なお、炉の内部構造を示すために、炉の一部を切り欠き、内部を示している。
回転炉床式の加熱還元炉Aには、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む原料混合物1が、原料投入ホッパー3を通して、回転炉床4上へ供給される。
上記酸化鉄含有物質としては、通常、鉄鉱石(例えば、マグネタイト鉱石など)や酸化鉄などが用いられる。上記炭素質還元剤としては、通常、石炭やコークスなどが用いられる。上記原料混合物1としては、バインダーとして少量の多糖類(例えば、小麦粉等の澱粉など)を更に配合してもよい。
また、上述したように、上記原料混合物1としては、(a)ドロマイト鉱石、(b)生石灰および/または石灰石、(c)MgOおよび/または炭酸マグネシウム、等を配合してもよい。
上記原料混合物1を供給するときの形態は特に限定されず、上記酸化鉄含有物質および上記炭素質還元剤などを適度に混合したものを供給すればよい。また、上記酸化鉄含有物質および上記炭素質還元剤などを押し固めて得られた簡易成形体を供給するか、または上記酸化鉄含有物質および上記炭素質還元剤などをペレットやブリケットなどに成形した炭材内装成形体を供給してもよい。
ここで、原料混合物1等を加熱還元炉Aに供給するときの手順を具体的に説明する。前記原料混合物1の供給に先立って、原料投入ホッパー3から回転炉床4上に炭素質粉末2を床敷として供給して敷き詰めておき、その上に上記原料混合物1を供給するのがよい。
上記酸化鉄含有物質と炭素質還元剤以外に配合され得るMgO供給物質やCaO供給物質の添加法にも格別の制限はなく、原料混合物の調整段階で配合したり、床敷材と共に、或いはこれとは独立に回転炉床上へ予め装入しておき、或いは原料混合物の供給と同時もしくは原料混合物の供給後に上方から別途供給する方法、等を適宜採用できる。
図4に示した例では、1つの原料投入ホッパー3を炭素質粉末2の供給と、上記原料混合物1を供給するために共用する例を示しているが、ホッパーを2つ以上用いて上記炭素質粉末2と上記原料混合物1を別々に供給することも勿論可能である。
なお、床敷材として炉床上に供給される炭素質粉末2の使用は必ずしも必須ではなく、供給を省略してもよいが、炉床上に炭素質粉末2を床敷材として供給すれば、炉内の還元ポテンシャルがより効率的に高められ、金属化率の向上と硫黄含有量の低減の両作用をより一層効果的に発揮させることができるので好ましい。
こうした床敷材としての作用をより確実に発揮させるには、炉床上へ2mm程度以上の厚みで炭素質粉末2を敷いておくことが望ましい。炭素質粉末2を床敷材としてある程度の厚みを持った層状に敷き詰めておけば、この床敷層が原料混合物と炉床耐火物の緩衝材となり、或いは副生スラグ等に対する炉床耐火物の保護材となり、炉床耐火物の寿命延長にも役立つ。但し、上記床敷層の厚みは、7.5mm程度以下に抑えることが望ましい。床敷層が厚くなり過ぎると、原料混合物が炉床上の床敷層内へ潜り込んでしまい、還元の進行が阻害される等の問題を生じることがある。
上記床敷材として用いる炭素質粉末の種類は特に限定されず、通常の石炭やコークス等を粉砕し、好ましくは適度に粒度調整したものを使用すればよい。石炭を使用する場合は、流動性が低く且つ炉床上で膨れや粘着性を帯びることのない無煙炭を使用することが好適である。上記床敷材として装入する炭素質粉末は、上記原料混合物1に配合されている炭素質還元剤よりも硫黄含有量が少ないものを用いることが好ましい。
図4に戻って説明する。図4に示した加熱還元炉Aの回転炉床4は、反時計方向に回転されている。回転炉床4の回転速度は、加熱還元炉Aの大きさや操業条件によって異なるが、通常は8分から16分程度で1周する速度である。加熱還元炉Aにおける炉体8の壁面には加熱バーナー5が複数個設けられており、該加熱バーナー5の燃焼熱あるいはその輻射熱によって炉床部に熱が供給される。加熱バーナー5は、炉の天井部に設けてもよい。
耐火材で構成された回転炉床4上に装入された上記原料混合物1は、該回転炉床4上で加熱還元炉A内を周方向へ移動する中で、加熱バーナー5からの燃焼熱や輻射熱によって加熱される。そして当該加熱還元炉A内の加熱帯を通過する間に、当該原料混合物1内の酸化鉄は還元された後、副生する溶融スラグと分離しながら、且つ残余の炭素質還元剤による浸炭を受けて溶融しながら粒状に凝集して粒状金属鉄10となり、回転炉床4の下流側ゾーンで冷却固化された後、スクリューなどの排出装置6によって炉床上から順次排出される。このとき副生したスラグも排出されるが、これらはホッパー9を経た後、任意の分離手段(例えば、篩目や磁選装置など)により金属鉄とスラグの分離が行われる。なお、図4中、7は排ガス用ダクトを示している。
以上の通り、本発明では、(1)スラグ中のCaF2量を0.5%以下に抑えた場合であっても、(2a)スラグの塩基度、および(2b)スラグ中のMgO量を適切な範囲に制御することによって、スラグの液相線温度を1500℃以下に低下させることができる。その結果、溶融したスラグの凝集を促進できるため、溶融した還元鉄の凝集も促進され、粒状金属鉄の凝集性が良好となり、粒状金属鉄の歩留まり率が高くなり、粒状金属鉄の生産性を向上できる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、下記実施例では、小型の実験用加熱還元炉を用いて試験を行った結果を示す。
酸化鉄含有物質として鉄鉱石を用い、炭素質還元剤として石炭を用い、これらを混合して原料混合物を得た。鉄鉱石の成分組成を下記表1に、石炭の成分組成を下記表2に示す。下記表2において、分析値の「その他」とは固形炭素質を意味する。
上記原料混合物には、酸化鉄含有物質(鉄鉱石)と炭素質還元剤(石炭)の他にバインダー、スラグ組成調整用副原料を配合して配合物を得た。上記バインダーとしては、小麦粉を配合した。上記スラグ組成調整用副原料としては、MgOとCaOの供給物質としてドロマイト鉱石(主成分はCaCO3・MgCO3で、詳細な成分組成を下記表3に示す。)、CaO供給物質として石灰石を配合した。配合割合を下記表4に示す。なお、下記表4のNo.6については、上記原料混合物に、更にCaF2供給物質として蛍石を配合した。
得られた配合物に適量の水を添加し、タイヤ型造粒機を用いて直径約19mmの生ペレットに造粒した。得られた生ペレットを乾燥機に供給し、180℃で1時間加熱して付着水を完全に除去して原料成形体を得た。
次に、得られた原料成形体を小型の実験用加熱還元炉内へ供給して加熱還元した。炉床上には、床敷材として下記表2に示す成分組成の石炭(炭素質粉末)を5mm程度の厚みで敷いた。炉内温度は1450℃に調整した。
加熱還元炉の炉床上に供給された原料成形体中の酸化鉄は、約10分かけて炉内で加熱される間に固体状態を維持しながら還元され、生成した還元鉄は、還元後に残っている炭素質粉末による浸炭を受けながら融点降下して相互に凝集した。このとき副生するスラグも、部分的、もしくはほぼ完全に溶融して相互に凝集し、溶融状態の粒状金属鉄と溶融スラグに分離した。その後、これら溶融状態の粒状金属鉄と溶融スラグを冷却して融点以下に降温(具体的には、1100℃程度までに冷却)して凝固させ、固体状態の粒状金属鉄またはスラグとして炉外へ排出した。
また、得られた粒状金属鉄と副生したスラグの成分組成を下記表5に示す。また、スラグ中のCaO量、MgO量およびSiO2量からスラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を算出し、結果を下記表5に示す。また、配合物の成分組成に基づいて求められるFe量に対して、凝集して粒状金属鉄として得られたFeの歩留まり率(%)を算出し、結果を下記表5に示す。また、副生したスラグ量を、得られた粒状金属鉄(製品として回収される粒状金属鉄)1トン(ton−ng)あたりに換算したスラグ量(kg)を下記表5に示す。
また、上記原料成形体を加熱し、粒状金属鉄を製造したときの生産性指数を次の手順で算出した。
まず、粒状金属鉄の生産性は、下記式(1)で示されるように、単位時間(時間)における有効炉床単位面積(m2)あたりの粒状金属鉄の生産量(ton)によって評価する。
生産性(ton/m2/時間)=粒状金属の生産量(ton/時間)/有効炉床面積(m2) ・・・(1)
生産性(ton/m2/時間)=粒状金属の生産量(ton/時間)/有効炉床面積(m2) ・・・(1)
上記式(1)において、粒状金属鉄の生産量(ton/時間)は、下記式(2)で示される。
粒状金属鉄の生産量(粒状金属ton/時間)=原料成形体の供給量(塊成物ton/時間)×原料成形体1トンあたりから製造される粒状金属鉄の質量(粒状金属鉄ton/原料成形体ton)×製品回収率 ・・・(2)
粒状金属鉄の生産量(粒状金属ton/時間)=原料成形体の供給量(塊成物ton/時間)×原料成形体1トンあたりから製造される粒状金属鉄の質量(粒状金属鉄ton/原料成形体ton)×製品回収率 ・・・(2)
上記式(2)において、製品回収率は、得られた粒状金属鉄の総量に対して直径が3.35mm以上の粒状金属鉄の割合[直径が3.35mm以上の粒状金属鉄の質量/粒状金属鉄の総量×100]で算出する。
本実施例では、本発明による効果を定量的に評価するために、下記表5に示したNo.6を標準原料成形体とし、この標準原料成形体の生産性を1.000としたときの各原料成形体の生産性を相対値(生産性指数)で示している。
下記表5から次のように考察できる。まず、No.4〜6は、本発明で規定するいずれかの要件を満足していない例である。これらのうちNo.4、5は、原料混合物に蛍石を配合せず、またスラグ中のMgO量を20%以下に抑えているが、スラグの塩基度が本発明で規定している範囲を外れているため、スラグの液相線温度が高くなり、スラグの凝集性が悪かった。そのため、Feの凝集が阻害され、Feの歩留まり率が低下し、生産性指数も低下した。また、副生するスラグ量が200kg/ton−ngを超えて多くなり、生産性が悪かった。No.6は、原料混合物に蛍石を配合した従来例であり、粒状金属鉄の歩留まり率が高く、生産性は良好であるが、原料混合物として蛍石を用いているため、環境への負荷が大きい。
一方、No.1〜3は本発明で規定する要件を満足している例であり、原料混合物に蛍石を配合せず、スラグ中のCaF2量を検出限界以下とした場合であっても、スラグの塩基度と、スラグ中のMgO量を本発明で規定する範囲内とすることによって、Feの歩留まり率を100%以上とすることができ、生産性指数も0.950以上とすることができた。また、副生するスラグ量も150kg/ton−ng前後に抑えることができ、生産性を向上できた。
以上の通り、本発明によれば、原料混合物に蛍石を配合しなくても、粒状金属鉄の生産性を、No.6(原料混合物に蛍石を配合する)と同程度に引き上げることができるため、地球環境への負荷を低減できる。
A 回転炉床式の加熱還元炉
1 原料混合物
2 炭素質粉末
3 原料投入ホッパー
4 回転炉床
5 加熱バーナー
6 排出装置
7 排ガス用ダクト
8 炉体
9 ホッパー
10 粒状金属鉄
1 原料混合物
2 炭素質粉末
3 原料投入ホッパー
4 回転炉床
5 加熱バーナー
6 排出装置
7 排ガス用ダクト
8 炉体
9 ホッパー
10 粒状金属鉄
Claims (4)
- 酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む原料混合物を、移動炉床式加熱還元炉で加熱し、該原料混合物中の酸化鉄を前記炭素質還元剤により還元し、生成する金属鉄を副生するスラグと分離しつつ粒状に凝集させた後、冷却凝固させて粒状金属鉄を製造する方法において、
(1)前記スラグ中のCaF2量を0.5%(質量%の意味。以下同じ)以下(0%を含む)に抑えると共に、
(2)前記原料混合物に含まれるCaO量、MgO量およびSiO2量を調整することによって、
前記スラグ中のCaO量、MgO量およびSiO2量から求められる該スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2]を0.40〜1.15の範囲とし、且つ
前記スラグ中のMgO量を20%以下(0%を含まない)
とすることを特徴とする粒状金属鉄の製造方法。 - 前記原料混合物として、ドロマイト鉱石を配合する工程を更に含む請求項1に記載の製造方法。
- 前記原料混合物として、生石灰および/または石灰石を配合する工程を更に含む請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記原料混合物として、MgOおよび/または炭酸マグネシウムを配合する工程を更に含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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JP2012002503A JP2013142167A (ja) | 2012-01-10 | 2012-01-10 | 粒状金属鉄の製造方法 |
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US10683562B2 (en) | 2015-05-28 | 2020-06-16 | Kobe Steel, Ltd. | Reduced iron manufacturing method |
-
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- 2012-01-10 JP JP2012002503A patent/JP2013142167A/ja active Pending
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