以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図1(b)は第1の実施形態に係る半導体発光素子の模式的平面図である。図1(a)は第1の実施形態に係る半導体発光素子の模式的断面図であり、図1(b)のA1−A2線断面図である。
第1の実施形態に係る半導体発光素子110は、第1半導体層51、第2半導体層52、発光層53、第1電極層20及び第2電極層30、を備える。
第1半導体層51は第1導電形である。第2半導体層52は第2導電形である。発光層53は、第1半導体層51と第2半導体層52との間に設けられる。このように、第1半導体層51、第2半導体層52及び発光層53は積層される。第1半導体層51、第2半導体層52及び発光層53を構造体100ということにする。
以下では、例えば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。または、第1導電形はp形であり、第2導電形はn形でも良い。以下では、第1導電形がn形であり、第2導電形がp形である場合として説明する。
第1半導体層51は、例えばn形のInAlPによるクラッド層51bを含む。クラッド層51bは、例えばn形GaAsの基板51aの上に形成される。実施形態では、便宜上、基板51aは第1半導体層51に含まれるものとする。
第2半導体層52は、後述する金属部23と接する凸部521と、後述する複数の開口部21の底部において凸部521よりもZ方向に沿って後退した凹部522と、を有する。
第2半導体層52は、例えばp形のInAlPによるクラッド層52aを含む。また、クラッド層52aの上には、例えばp形のInGaAlPによる電流拡散層52bが設けられる。なお、電流拡散層52bの上には、必要に応じてコンタクト層が設けられていてもよい。実施形態では、便宜上、電流拡散層52b及び必要に応じて設けられたコンタクト層は第2半導体層52に含まれるものとする。
半導体発光素子110では、例えば、第1半導体層51のクラッド層51bと、発光層53と、第2半導体層52のクラッド層52aと、によってヘテロ構造が構成される。
第1電極層20は、第2半導体層52の第1半導体層51とは反対側に設けられる。すなわち、第1電極層20と第1半導体層51との間に第2半導体層52が配置される。
なお、実施形態では、説明の便宜上、構造体100の第2半導体層52の側を表面側または上側とし、構造体100の第1半導体層51の側を裏面側または下側とする。また、第1半導体層51から第2半導体層52に向かう方向をZ方向とする。
第1電極層20は、第2半導体層52と接する金属部23と、Z方向に沿って金属部23を貫通する複数の開口部21と、を有する。複数の開口部21のそれぞれの円相当直径は、10nm以上、5μm以下である。
ここで、円相当直径は、次の第1式で定義される。
円相当直径=2×(面積/π)1/2 (第1式)
ここで、面積は、開口部21の、Z方向からみたときの形状の面積である。
開口部21は、必ずしも円形とは限らない。したがって、実施形態では、上記の円相当直径の定義を用いて開口部21を特定する。
第1電極層20上には、パッド電極25が設けられている。パッド電極25には、例えばボンディングワイヤ(図示せず)が接続され、ボンディングワイヤからパッド電極25を介して第1電極層20に電流が供給される。
第2電極層30は、第1半導体層51と導通している。この例では、第2電極層30は、構造体100の裏面側に設けられている。すなわち、第2電極層30と発光層53との間に第1半導体層51が配置される。第2電極層30には、例えばAuが用いられる。
半導体発光素子110において、発光層53から放出された光(発光光)は、電流拡散層である第2半導体層52の第1電極層20が設けられた面(上面)から外部に取り出される。すなわち、第2半導体層52の第1電極層20が設けられた面が、光取り出し面となる。
実施形態に係る半導体発光素子110では、第2半導体層52の金属部23と接する凸部521のZ方向に沿った第1の厚さt1と、第2半導体層52の複数の開口部21に対応する凹部522のZ方向に沿った第2の厚さt2と、が異なっている。
図1に表した半導体発光素子110では、第1の厚さt1が、第2の厚さt2よりも厚い。
すなわち、第2半導体層52の第1電極層20の側の部分は、凹凸形状を有している。この凹凸形状の凸部に後述する金属部23が設けられる。凹部522は、複数の開口部21と連通している。
第2半導体層52にこのような凹凸形状が設けられることで、凹凸形状が設けられていない場合に比べて発光層53から放出された光の外部への取り出し効率が高まる。
すなわち、後述するように、金属部23と開口部21とを有する第1電極層20は、例えば第2半導体層52の上に金属部23となる金属膜を形成した後に、開口部21となる部分を除去して、開口部21と金属部23とを形成することにより形成される。
発明者の種々の実験によると、第2半導体層52の表面に金属膜を形成すると、第2半導体層52の金属膜と接する部分に光透過率の低い部分(低透過率部、すなわち、光吸収層)が形成されることが判明した。特に、第2半導体層52と金属膜とのオーミック接触を得るためのアニール時に、接触界面に低透過率部(光吸収層)が形成される。
第2半導体層52の上に金属膜を形成した後に、開口部21となる部分の金属膜を除去し、金属膜と接していた低透過率部を除去しない場合は、低透過率部が残存するため、半導体発光素子の光取り出し効率が低下することが判明した。
実施形態は、このような新たに見出された課題に着目したものである。そして、発明者の実験によると、第2半導体層52の上に金属膜を形成し、開口部21となる部分の金属膜を除去した後に、開口部21から露出した第2半導体層52をエッチバックし、第2半導体層52の低透過率部を除去することで、半導体発光素子の光取り出し効率が向上することが分かった。
実施形態の構成は、この実験に基づくものである。
すなわち、実施形態に係る半導体発光素子110においては、第2半導体層52の金属部23と接する凸部521のZ方向に沿った第1の厚さt1よりも、第2半導体層52の複数の開口部に対応する凹部522のZ方向に沿った第2の厚さt2が小さい。すなわち、凹部522において、上記の低透過率部が除去されており、この除去された厚さだけ、第2の厚さt2が第1の厚さt1よりも小さくなっている。
このように、凹部522には金属部23が接触しておらず、光吸収層が凹部522には設けられていない。これにより、凹部522では、発光層53から放出された光が光吸収層で吸収されずに外部へ出射していく。これにより、高い光取り出し効率が得られる。
さらに、半導体発光素子110では、第2半導体層52に凸部521及び凹部522による凹凸形状が設けられることから、第1電極層20を覆う封止樹脂(図示せず)がこの凹凸形状に入り込み、封止樹脂の密着性を高めることができる。
半導体発光素子110の具体的な一例を説明する。
半導体発光素子110は、例えばn形GaAsによる基板51aを備え、この基板51aの上に、例えばn形のInAlPによるクラッド層51bと、InGaPによる発光層53と、p形のInAlPによるクラッド層52aと、を含むヘテロ構造が形成される。ここで、基板51aには、GaAsのほか、サファイア、Si、SiN、SiC、ZnOなどが用いられる。
発光層53は、例えば障壁層および井戸層が交互に繰り返し設けられたMQW(Multiple Quantum Well)構成であってもよい。また、発光層53は、井戸層を挟む障壁層の組みが1組み設けられたSQW(Single Quantum Well)構成を含むものであってもよい。また、発光層53は、ダブルへテロ構造であってもよい。
そして、この発光層53の上に、例えばp形のInGaAlPによる電流拡散層52bが形成されている。これにより、発光層53の全体に電流を広げることができ、効率が向上する。ただし、実施形態はこれに限らず、電流拡散層52bは必要に応じて設けられ、場合によっては省略しても良い。
なお、これらの半導体の層構成は一例であり、実施形態はこれに限定されない。
電流拡散層52bの上には、必要に応じてコンタクト層が形成される。これにより、第2半導体層52と第1電極層20との間のオーミックコンタクト性が向上する。特に、電流拡散層52bが多元素、例えばInGaAlP、AlGaAsのような3元以上の元素からなる層である場合、このようなコンタクト層を設けることで、第1電極層20と電流拡散層52bとの間の良好なオーミック接触が得られる。
ここで、コンタクト層には、例えばGaAs及びGaPを用いることができる。ただし、実施形態はこれに限らず、コンタクト層に用いられる材料は、例えば、コンタクト層に隣接する電流拡散層52bの材料、及び、第1電極層20に用いられる材料に基づいて適切に選択される。
なお、第1半導体層51、発光層53及び第2半導体層52には、上記のほかに、例えばGaP、InGaAlP、AlGaAs、およびGaAsPなど、ならびに窒化物半導体が用いられる。また、第1半導体層51、発光層53及び第2半導体層52の製造方法には、例えば、有機化学金属気相成長(MOCVD)法、分子線エピタキシ(MBE)法、気相エピタキシ(VPE)法、及び液相エピタキシ(LPE)法などが用いられる。
次に、第1電極層20の一具体例について説明する。
第1電極層20には、p側の電極として、例えばAuとAu−Znとの多層金属膜が用いられる。第1電極層20には、金属部23をZ方向に貫通する複数の開口部21が設けられている。開口部21のそれぞれの大きさ及び配置は、規則的であっても、不規則的であってもよい。
複数の開口部21の大きさは、光透過性のほか、素子全面での電流広がりや放熱性等の観点から設定される。すなわち、開口部21が必要以上に大きくなると第1電極層20の光透過性は向上するものの、電気抵抗が高くなり第1電極層20の全体に電流が拡がりにくくなる。また、十分な放熱性によって輝度の向上や動作電圧の低下を図るうえでも、金属部23の面積は適切に設定される。すなわち、金属部23の面積は、過度には小さく設定されない。
電流を流す半導体層のドーピング濃度等にも依存するが、シミュレーション等の計算で得られる電流の流れる範囲は、第1電極層20の端から約5μmまでの範囲である。開口部21の直径が約5μm以上であると開口部21中において電流が流れない範囲が生じて、直列抵抗が十分に下がらず、順方向電圧を十分に下がらない場合がある。そのため、開口部21の円相当直径の上限は5μm以下である。開口部21の円相当直径は、1μm以下であることが望ましい。
また、実施形態においては、第1電極層20に上記の円相当直径を有する複数の開口部21を設けることで、輝度の向上を図ることができる。すなわち、複数の開口部21を有する第1電極層20は、金属で構成される。このため、電流拡散層を構成する半導体やITO(Indium Tin Oxide)などの酸化物透明電極と比較して、導電率が1桁から2桁以上高い。また、第1電極層20は、半導体や酸化物透明電極と比較して熱伝導性も高い。このため、第1電極層20を用いることで、ITOを用いた場合に比べて半導体発光素子の順方向電圧(Vf)が低くなる。この結果、発光層53への電流集中が緩和され、より均一に発光するとともに、輝度が向上する。
第1電極層20における光透過率(発光光の外部への透過率)が、開口率(第1電極層20の面積に対する開口部の面積)を上回る効果を得るためには、円相当直径を、発光層53で発生する光の中心波長の1/2以下程度が望ましい。例えば、可視光の場合には、開口部21の円相当直径は、300nm以下がよい。
一方、開口部21の円相当直径の下限に関しては、抵抗値の観点からは制約は無い。製造の容易性から、開口部21の円相当直径は、10nm以上であることが好ましい。30nm以上であることがさらに望ましい。
なお、第1電極層20の金属部23(開口部21が設けられていない部分)の任意の2点間は、少なくともパッド電極25などの電流供給源から連続している。これにより、通電性を確保し抵抗値を低く保つことができる。
なお、複数の電流供給源が設けられている場合には、各電流供給源のそれぞれに対応して第1電極層20の金属部23が連続していればよい。
また、半導体発光素子110の発光面から均一に発光させるためにも、金属部23が連続していることが望ましい。第1電極層20の抵抗値の観点からは、第1電極層20のシート抵抗が10Ω/□以下であることが好ましく、5Ω/□以下であることがより好ましい。シート抵抗が小さいほど半導体発光素子110の発熱は少ない。また、均一な発光、輝度の向上が顕著になる。
第1電極層20の厚さは、上記シート抵抗の観点から10nm以上である。一方、第1電極層20の厚さが厚いほどシート抵抗は下がる。発光層53で発生した光の透過率を確保する観点から、第1電極層20の厚さの上限は、50nm以下であることが好ましい。
第1電極層20の金属部23には、第2半導体層52との十分なオーミック接触を得られる材料を用いることが望ましい。金属部23には、十分な導電性および熱伝導性を有している材料を用いることが望ましい。金属部23には、吸収損失の観点からAg及びAuの少なくともいずれかをベース金属とする材料を用いることが好ましい。さらに、金属部23には密着性及び耐熱性確保の点からAl、Zn、Zr、Si、Ge、Pt、Rh、Ni、Pd、Cu、Sn、C、Mg、Cr、Te、Se及びTiからなる群から選択された少なくとも1つのまたはその群から選択された少なくとも2つを含む合金(または化合物)を用いることが望ましい。ただし、実施形態はこれに限らず、金属部23には、一般的に電極として用いられる任意の金属を用いることができる。
基板51aの裏面側には、例えばAuからなるn側の第2電極層30が形成されている。第2電極層30は、第1半導体層51と導通している。
次に、第2半導体層52の凸部521の形状について説明する。
すなわち、凸部521の形状には、円柱形状が用いられる。また、凸部521の形状には、Z方向で屈折率に勾配を持たせるために、側面に斜面を有する円錐、テーパ及び逆テーパのいずれかの形状を用いることができる。このような形状にすることにより、光が発光層53から外部に取り出される際に、半導体発光素子110の表面から外部媒質にかけて屈折率が不連続に変化することなく連続的に変化することになる。これにより、半導体発光素子110の表面と外部媒質との界面での光の反射を防ぎ、光を効率よく外部へ取り出すことが可能となる。
また、凹部522に対応した複数の開口部21のうち隣接する2つの開口部21の距離を次のようにすることが望ましい。
すなわち、複数の開口部21のうちで互いに隣り合う2つの開口部21の距離をdとし、複数の開口部21のそれぞれにおける距離dの平均をAdとし、発光層53から放出された光の波長をλとし、第2半導体層52の発光光に対する屈折率をn2とし、第2半導体層52に対して外側の媒質の発光光に対する屈折率をn0とした場合、以下の第2式が満たされる。
Ad≦λ×(2/(n2+n0)) (第2式)
ここで、複数の開口部21に対応して第2半導体層52の凹部522が形成されている場合の厳密結合波解析(RCWA)法による光学シミュレーションの結果を示す。
この計算においては、半導体発光素子110の外部媒質を空気(屈折率n0=1.0)とし、発光層53による光の発光波長を630nmとし、開口部21を有する第1電極層20の厚さを30nmとし、金属部23をAuとした。また、電流拡散層52b(第2半導体層52)の屈折率n2を3.3とし、凸部521の第1の厚さt1と凹部522の第2の厚さt2との差を300nmとした。
この条件において、平均Adを、(a)150nm、(b)300nm、(c)600nm、として計算を行った。平均Adが150nmのときは、上記の第2式が満たされる。平均Adが300nmの場合及び600nmのときは、上記の第2式が満たされない。
図2は、シミュレーション結果を示す図である。
図2(a)は平均Adを150nmにした場合を示し、同図(b)は平均Adを300nmにした場合を示し、図2(c)は平均Adを600nmにした場合を示す。
いずれの図においても、横軸は光の入射角を示し、縦軸は光の透過率を示している。ここで、図2(d)に表したように、入射角は、発光層53から第2半導体層52に向かう光のZ方向に対する角度である。また、いずれの図も、凹部522を有する半導体発光素子110と、凹部を有しない半導体発光素子190(参考例)と、のシミュレーション結果を示している。
図2(a)に表したように、平均Adが150nmとなるように半導体発光素子110の凹部522を形成することで、凹部522を形成しない半導体発光素子190よりも臨界角内(0°〜20°)での透過率が向上する。これは、平均Adが150nmの場合には、低次(0〜2次)での回折の発生により、臨界角内での透過率が向上したためである。
図2(b)に表した平均Adが300nmの場合及び図2(c)に表した平均Adが600nmの場合においては、回折次数が3次以上となり、発光層53から放出された光が凹部522により全反射する。全反射した光は臨界角外方向に回折されるため、結果的に素子外部へ透過しにくくなる。
このシミュレーション結果から、Ad≦λ×(2/(n2+n0))であることが好ましいことが分かる。
また、凸部521の第1の厚さt1と凹部522の第2の厚さt2との差は、発光層53から放出された光の波長以下であることが望ましい。これにより、回折効率を高くすることが可能になる。さらに、第1の厚さt1と第2の厚さt2との差は、発光波長と同程度(例えば発光波長のプラスマイナス50%以内)がさらに望ましい。これにより、回折効率をさらに高くすることが可能になる。
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図3(b)は第2の実施形態に係る半導体発光素子の模式的平面図である。図3(a)は第2の実施形態に係る半導体発光素子の模式的断面図であり、図3(b)のB1−B2線断面図である。
同図(a)は第2の実施形態に係る半導体発光素子の模式的断面図、同図(b)は第2の実施形態に係る半導体発光素子の模式的平面図である。
第2の実施形態に係る半導体発光素子110では、第2半導体層52が、第2半導体層52の第1半導体層51とは反対側に設けられた凸部521と、凹部522と、を有する。
凸部521は、凹部522よりもZ方向に沿って突出している。
凸部521では、Z方向から見たときの形状の円相当直径が10ナノメートル以上5マイクロメートル以下である。
凹部522には、第1電極層20の金属部23が埋め込まれている。
これにより、第1電極層20の金属部23が設けられていない部分では、Z方向からみたときの形状が10ナノメートル以上5マイクロメートル以下となる。この部分は、第1電極層20において開口部21になる。
第2の実施形態に係る半導体発光素子120においても、第1の実施形態に係る半導体発光素子110と同様に、第2半導体層52に凹凸形状が設けられていない場合に比べて発光層53で放出された光の外部への取り出し効率が高まる。
すなわち、既に説明したように、第2半導体層52の表面に金属膜を形成すると、第2半導体層52の金属膜と接する部分に光透過率の低い部分(低透過率部、すなわち、光吸収層)が形成される。特に、第2半導体層52と金属部23とのオーミック接触を得るためのアニール時に、接触界面に低透過率部(光吸収層)が形成される。
実施形態においては、第2半導体層52の凹部522金属部23を形成する。そして、第2半導体層52の凸部521には、金属部23を形成しない。これにより、凸部521には、低透過率部が形成されない。
すなわち、発明者の実験によると、第2半導体層52の一部に金属膜を形成し、第2半導体層52の別の一部に金属膜を形成しない場合には、金属膜を形成しない部分には、低透過率部が形成されないため、半導体発光素子の光取り出し効率が向上することが分かった。すなわち、後述するように、第2半導体層52の凸部521をマスク材などで覆った状態で、第2半導体層52の凹部522に金属部23を形成することで、選択的に凹部522に金属部23を形成できる。そして、凸部521は金属部23と接触しない状態が実現できる。
実施形態の構成は、この実験に基づくものである。
すなわち、実施形態に係る半導体発光素子110においては、第2半導体層52の金属部23と接する凹部522のZ方向に沿った第2の厚さt2よりも、第2半導体層52の凸部521のZ方向に沿った第1の厚さt1が大きい。このような構成により、凸部521において、上記の低透過率部が形成されない。
このように、凸部521には金属部23が接触しておらず、凸部521では、発光層53からで放出された光が光吸収層で吸収されずに外部へ出射する。これにより、高い光取り出し効率が得られる。
また、実施形態に係る半導体発光素子120では、第2半導体層52に凸部521及び凹部522による凹凸形状が設けられることから、第1電極層20を覆う封止樹脂(図示せず)がこの凹凸形状に入り込み、封止樹脂の密着性を高めることができる。
なお、第2の実施形態に係る半導体発光素子120においても、第2式を満たすことが好ましい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、例えば半導体発光素子110の製造方法である。
図4(a)は、第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャートである。
すなわち、本製造方法は、第1半導体層51を形成し、第1半導体層51の上に発光層53を形成し、発光層53の上に第2半導体層52を形成し、第2半導体層52の上に金属層を形成する工程(ステップS10)と、金属層の上にマスク材を形成し、マスク材に複数の開口を設けたマスクパターンを形成する工程(ステップS20)と、マスクパターンをマスクにして金属層をエッチングして、円相当直径が10ナノメートル以上、5マイクロメートル以下の複数の開口部21を有する電極層(第1電極層20)を形成し、残存するマスク材をマスクにして第2半導体層52をエッチングして、複数の開口部21に対応する位置に凹部522を形成する工程(ステップS30)と、を備える。
この半導体発光素子の製造方法によれば、第1電極層20の複数の開口部21を形成する処理から連続して、第2半導体層52に凹部522を形成することが可能となる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、例えば半導体発光素子120の製造方法である。
図4(b)は、第4の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャートである。
本製造方法は、第1半導体層51を形成し、第1半導体層51の上に発光層53を形成し、発光層53の上に第2半導体層52を形成する工程(ステップS11)と、第2半導体層52の上にマスク材を形成し、マスク材に複数のピラーを設けたマスクパターンを形成する工程(ステップS21)と、マスクパターンをマスクにして第2半導体層52をエッチングして、第2半導体層52に凹部522を形成し、Z方向に沿って凹部522よりも突出し、Z方向から見たときの形状の円相当直径が10ナノメートル以上5マイクロメートル以下の凸部521を形成する工程(ステップS31)と、凹部522に金属層を埋め込む工程(ステップS41)と、を備える。
この製造方法によれば、第2半導体層52に凹凸部を形成してから第1電極層20を形成するため、凸部521に金属層が形成されていない状態で、金属層と第2半導体層52とのオーミック接触のためのアニールを行うことができる。
第3及び第4の実施形態に係る製造方法によっても、第2半導体層52の金属層が設けられていない部分には光吸収層が設けられず、発光層53から放出された光の外部への取り出し放出効率を向上した半導体発光素子を製造することができる。
なお、上記の製造方法は、第1半導体層51と導通する第2電極層30を形成する工程が含むことができる。第2電極層30は、構造体100の裏面側に設けられていても、構造体100の表面側に設けられていてもよい。
また、第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法において、凹部522を形成する工程では、第1電極層20の複数の開口部21を形成する処理から連続的に行っているが、開口部21と凹部522の形成とを別工程で行ってもよい。
ここで、上記マスクパターンを形成する工程には、次の(A)〜(C)の方法が挙げられる。
(A)微粒子のマスクを利用する方法
マスクパターンの製造方法のひとつは、シリカ等の微粒子の例えば単粒子層をマスクとして利用するものである。その方法は、次の工程を備える。
すなわち、当該製造方法は、マスク材の上に有機組成層を形成し、有機組成層に微粒子の単粒子層のパターンを形成し、単粒子層のパターンをマスク材に転写して複数の開口を形成する。
図5は、微粒子のマスクを利用したマスクパターンの製造方法を例示するフローチャートである。
当該製造方法の具体的な一例は、先ず、金属層の上にレジスト組成物を塗布し、加熱して熱硬化反応させる。これによりレジスト層を形成する(ステップS101)。次に、このレジスト層の表面をRIE(Reactive Ion Etching)処理する。この処理により、レジスト層の表面が親水化され、以後の分散液塗布時の濡れ性を改善させることができる。表面が親水化された層は、この後の工程でシリカ粒子を捕捉するためのトラップ層として機能する。このようなトラップ層は、レジスト層の表面に有機ポリマーを塗布することなどにより形成させることもできる。
次に、例えば粒子径が200nmであるシリカ微粒子を含む分散液を、レジスト層の上に塗布して、分散液層を形成する。そして、加熱処理することで、シリカ微粒子の最下層の粒子が親水化処理したレジスト層に沈み込む。その後、室温冷却することでレジスト層が再度硬化し、微粒子最下層が基板表面に捕捉される(ステップS102)。ここでは、微粒子としてシリカ微粒子を用いたが、後述するようなエッチングの速度差を達成できるものであれば、無機または有機の任意の微粒子を用いることができる。また、微粒子の大きさは目的とする金属電極層の形状に応じて選択されるが、一般的には100nm〜5μmのものが選択される。
次に、シリカ微粒子単粒子膜に対して、エッチングを行う(ステップS103)。このプロセスでシリカ微粒子がエッチングされ、粒子の半径が小さくなることで、隣接していた粒子間に隙間が生じる。このエッチングには、下地のレジスト層がほとんどエッチングされない条件を選択する。エッチングに速度差があることで、シリカ微粒子をエッチングして、粒子の間に隙間を形成させることができる。
次に、残ったシリカ微粒子をエッチングマスクとして利用し、下地のレジスト層をエッチングする(ステップS104)。これにより、初期にシリカ微粒子があった部位に、アスペクト比の高い柱状のレジストパターンが得られる。
次に、SOG(spin on glass)の溶液を、当該柱状レジストパターン上に塗布し、加熱する(ステップS105)。これによりレジストパターンがSOGに埋め込まれる。
次に、柱状レジストパターン上のSOGおよびシリカ微粒子をエッチングにより除去し、柱状レジストパターンとその隙間にSOGが充填された構造を形成する(ステップS106)。
次に、残った柱状のレジストパターンをエッチングする(ステップS107)。この工程によって、当該柱状レジストパターンを反転した構造のSOGのマスクパターンが形成される。
(B)ブロックコポリマーの自己組織化を利用する方法
マスクパターンの製造方法の別なひとつは、ブロックコポリマーの自己組織化による相分離を利用するものである。その方法は、次の工程を備える。
すなわち、当該製造方法は、マスク材の上にブロックコポリマーを含む組成物によりブロックコポリマー膜を形成し、ブロックコポリマー膜を相分離させてミクロ相分離パターンを形成する。このミクロ相分離パターンが上記マスクパターンとなる。
図6は、ブロックコポリマーの自己組織化を利用したマスクパターンの製造方法を例示するフローチャートである。
当該製造方法の具体的な一例は、先ず、金属層の上に、レジスト組成物を塗布し、加熱して熱硬化反応させる。これによりレジスト層を形成する(ステップS201)。なお、レジスト以外に、カーボン膜を用いることもできる。次に、SOG溶液を、レジスト層上に塗布したのち、加熱によりSOG層を形成する(ステップS202)。なお、SOG以外に、SiO2やSiNを用いることもできる。
次に、ポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマーを含む樹脂組成物の溶液を準備する。この溶液を当該SOG層の上に塗布してブロックコポリマー層を形成する(ステップS203)。さらに加熱することにより、ジブロックコポリマーを相分離させ、PSのマトリクス中にPMMAのドット状のミクロドメインが形成されたモルフォロジーを得る(ステップS204)。なお、PS−PMMAのほかのブロックコポリマーには、芳香環ポリマーとアクリルポリマーとの組み合わせから構成されるものが望ましい。その理由として、この2種のポリマーの間には、適当なガス種を用いたドライエッチング速度の違いがあるからである。
芳香環ポリマーには、例えばPS、ポリビニルナフタレン、ポリヒドロキシスチレン、これらの誘導体が挙げられる。アクリルポリマーには、例えばポリメチルメタクレレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、ポリフェニルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメタクリレートが挙げられ、これらの誘導体が含まれる。また、これらのメタクリレートの代わりに、アクリレートを用いても同様の性質を示す。これらの中では、PS−PMMAのブロックコポリマーを用いることが好ましい。すなわち、PS−PMMAのブロックコポリマーでは、合成が容易である。また、PS−PMMAのブロックコポリマーでは、各ポリマーの分子量の制御が容易である。
次に、ジブロックコポリマー層をエッチングして、ブロックコポリマーのPMMAのドット状のミクロドメインを選択的に除去する(ステップS205)。このとき、PSのマトリクス部はエッチングされない条件を選択する。この処理により除去されたPMMAのドット部分にSOG層が露出する。
次に、残ったPSをマスクに用いてSOG層をエッチングする(ステップS206)。このエッチングにより、露出したSOG層が選択的にエッチングされ、PSのマトリクスがSOG層に転写されて、ブロックコポリマーの相分離に応じたSOGのメッシュパターンが形成される。
次いで、このSOGメッシュパターンをマスクとして、下地のレジスト層をエッチングして、SOG/レジストのメッシュパターンを形成する(ステップS207)。
なお、ここでは、ブロックコポリマーの相分離パターンを中間マスク層としてのSOG層およびレジスト層に転写することによりメッシュ状のマスクを形成する方法を例として示したが、ブロックコポリマーのパターンをマスクとして直接金属層に転写する方法も可能である。また、中間マスク層としてほかの材料の組み合わせを用いることもできる。ただし、エッチング選択比の観点から、ブロックコポリマーをマスクとして直接金属電極層を加工するよりも、中間マスクを設けたほうが選択比が高いため、より好ましい。
(C)スタンパを利用する方法
マスクパターンの製造方法のさらに別のひとつは、スタンパを利用するものである。その方法は、次の工程を備える。
すなわち、当該製造方法は、マスク材に凹凸パターンを有するスタンパの凹凸パターンを押し付けて、マスク材に凹凸パターンを転写し、複数の開口を形成する。
図7は、スタンパを利用したマスクパターンの製造方法を例示するフローチャートである。
当該製造方法の具体的な一例は、先ず、金属層の上にレジスト組成物を塗布し、加熱して熱硬化反応させる。これによりレジスト層を形成する(ステップS301)。
次に、このレジスト層に、鋳型であるスタンパを用いて複数の開口部21の開口形状に対応した凹凸パターンをレジスト層に転写する(ステップS302)。
スタンパは、例えば石英上に電子線リソグラフィにて所望の構造を形成させることにより製造することができる。なお、スタンパの材料及びスタンパの凹凸パターンの形成手法はこれに限定されない。例えば、スタンパを前述した微粒子を用いた方法や、ブロックコポリマーを用いた方法により形成することも可能である。
次に、レジスト層にスタンパの凹凸パターンを必要に応じて加熱しながら押し付け、放熱後、離型する(ステップS303)。これにより、レジスト層にスタンパの凹凸パターンの逆パターンが転写させる。これにより、複数の開口を有するレジストのマスクパターンが形成される。
なお、上記(A)〜(C)の各製造方法は一例であり、これらに限定されるものではない。
次に、実施例の説明を行う。なお、以下の実施例で示される材料、数値、製造条件等は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
(第1の実施例)
図8は、第1の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を説明する模式的断面図である。
第1の実施例では、上記(A)の微粒子のマスクを利用して、第1の実施形態に係る半導体発光素子110−1を形成した。半導体発光素子110−1の発光波長は630nmである。
先ず、図8(a)に表したように、基板51aであるn形GaAs基板401上に、クラッド層51bであるn形InGaAlP層402を形成し、その上に発光層53であるInGaAlP層403を形成する。そして、InGaAlP層403の上にクラッド層52aであるp形InGaAlP層404及び電流拡散層52bであるp形GaP層405を順次成膜して、半導体多層膜406を形成する。
次いで、p形GaP層405の上に、第1電極層20となる金属多層膜407を真空蒸着法により形成する。金属多層膜407は、厚さ10nmのAu膜と、厚さ30nmのAu−Zn合金膜と、を含む。Au膜は、半導体多層膜406の上に形成され、Au−Zn合金膜は、Au膜の上に形成される。
さらに、n形GaAs基板401の裏面に第2電極層30となる電極層408を真空蒸着法により形成する。電極層408は、厚さ150nmのAu−Ge合金を含む。
その後、窒素雰囲気下で450℃、30分の条件によりシンタリングする。これにより、n形GaAs基板401と電極層408との間、及びp形GaP層405(電流拡散層)と金属多層膜407と間にオーミック接触を形成する。
次いで、金属多層膜407上に、i線用ポジ型熱硬化性レジストの溶液を塗布する。この溶液は、i線用ポジ型熱硬化性レジスト(THMR IP3250(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで1:1に希釈したものである。溶液は、2000rpm(rotation per minute)で回転塗布される。
その後、溶液をホットプレート上で加熱する。加熱条件は、110℃、90秒間である。その後、無酸化オーブンにて、窒素雰囲気下で加熱する。加熱条件は、270℃、1時間である。これにより、レジストの溶液を熱硬化反応させた。図8(b)に表したように、得られたレジスト層409の膜厚はおよそ240nmであった。
次に、RIE装置によりレジスト層409の表面の親水化処理を行った。RIEの処理条件において、O2の流量は30sccm、圧力は13.3Pa、RFパワーは100Wである。
次に、粒子径が400nmであるシリカ微粒子を含む分散液を、アクリルポリマーを含む組成物にて5重量パーセント(wt%)に希釈し、1μmメッシュのフィルタでフィルタリングを行って、塗布用のシリカ微粒子分散液を得る。
このシリカ微粒子分散液を、レジスト層409上に回転塗布したのち、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下で加熱する。加熱条件は、150℃、1時間である。その後、室温冷却することで、図8(c)に表したように、当該親水化処理したレジスト層409の上にシリカ微粒子410の規則配列単粒子層が得られる。
次に、図8(d)に表したように、シリカ微粒子の規則配列単粒子層に対して、RIE処理を行った。RIEの処理条件において、CF4の流量は30sccm、圧力は1.3Pa、RFパワーは100Wである。このRIE処理によって、シリカ粒子のシュリンク(収縮)が行われる。この工程の後、電子顕微鏡にて観測したところ、シリカ微粒子410の粒子径はおよそ120nm、粒子間の隙間はおよそ280nmであった。
さらに、図8(e)に表したように、シリカ微粒子410をエッチングマスクとして、下地のレジスト層409をRIE処理する。RIEの処理条件として、O2の流量は30sccm、圧力は0.3Pa、RFパワーは100Wである。これにより、アスペクト比の高い柱状のレジストパターン409Aが得られた。
次に、図8(f)に表したように、SOG(OCD−12000T(商品名)、東京応化工業株式会社製)に対して0.2μmメッシュのフィルタによるフィルタリングを行って、回転塗布を行った。これによりレジストパターン409A及びシリカ微粒子410がSOG層411により充填される。
この後、SOG層411をホットプレート上で加熱する。加熱条件は、110℃、90秒間である。さらに、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下で加熱する。加熱条件は、250℃、1時間である。
次に、当該工程によって形成されたSOG層411およびSOG層411で覆われたシリカ微粒子410をRIE処理する。RIEの処理条件として、CF4は30sccm、圧力は1.3Pa、RFパワーは100Wである。この処理によって柱状のレジストパターン409A上のSOG層411及びシリカ微粒子410を除去する。これにより、図8(g)に表したように、柱状のレジストパターン409Aとその隙間にSOGマスク411Aが充填された構造が形成される。
次に、残った柱状のレジストパターン409AをRIE処理する。RIEの処理条件として、O2の流量は30sccm、圧力は0.3Pa、RFパワーは100Wである。この工程によって、図8(h)に表したように、柱状のレジストパターン409Aを反転した構造のSOGマスク411Aを金属多層膜407上に作成する。
次に、SOGマスク411Aをマスクとして、イオンミリング(加速電圧500V、イオン電流40mA、入射角0°)することで、金属多層膜407に開口部を形成する。図8(i)に表したように、金属多層膜407に開口部を形成することで、電極層407Aが完成する。そして、さらにイオンミリングを続けることでp形GaP層405(電流拡散層)に凹部412を形成する。
このとき金属多層膜407に形成された隣接する凹部412の間の平均距離は400nmであった。また、p形GaP層405(電流拡散層)に形成された凹部412の深さは100nmであった。
次いで、残ったSOGマスク409Aを希フッ酸(5wt%)処理により除去し、さらに電極層407Aの一部にAuからなる丸型のパッド電極(図示せず)を形成する。これにより、第1の実施例に係る半導体発光素子110−1が完成する。
比較例1−1として、第1の実施例と同様の半導体発光素子であるが、開口部を有する電極層407A及びp形GaP層405(電流拡散層)の凹部412が形成されておらず、丸型のパッド電極のみを有する半導体発光素子を製造する。
また、比較例1−2として、第1の実施例と同様の半導体発光素子であるが、p形GaP層405(電流拡散層)に凹部412が形成されていない半導体発光素子を製造する。
第1の実施例に係る半導体発光素子110−1、比較例1−1及び1−2に係る半導体発光素子をチップサイズ1mm×1mmにダイシング加工し、ベアチップの状態でチップテスタにより輝度測定を行った。
各半導体発光素子を最大輝度で比較した。比較例1−1に係る半導体発光素子の最大輝度を1とした場合、比較例1−2に係る半導体発光素子の最大輝度は1.2、第1の実施例に係る半導体発光素子110−1の最大輝度は1.4倍であった。また、100mAにおける順方向電圧を比較した場合、比較例1−2に係る半導体発光素子及び第1の実施例に係る半導体発光素子110−1の順方向電圧は、比較例1−1に係る半導体発光素子と比較して、ともに0.3V低い値を示した。
(第2の実施例)
図9は、第2の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を説明する模式的断面図である。
第2の実施例では、上記(B)のブロックコポリマーの自己組織化を利用する方法によって、第1の実施形態に係る半導体発光素子110−2を形成する。半導体発光素子110−2の発光波長は630nmである。
先ず、図9(a)に表したように、第1の実施例と同様に、n形GaAs基板501、n形InGaAlP層502、InGaAlP層503、p形InGaAlP層504及びp形GaP層505を順次成膜して、半導体多層膜506を形成する。さらに、第1の実施例と同様、半導体多層膜506の上に金属多層膜507を形成し、n形GaAs基板501の裏面に電極層508を形成する
その後、窒素雰囲気下450℃、30分の条件によりシンタリングする。これにより、n形GaAs基板501と電極層508と間、及びp形GaP層505と金属多層膜507との間にオーミック接触を形成する。
次いで、金属多層膜507の上に、i線用ポジ型熱硬化性レジストの溶液を塗布する。この溶液は、i線用ポジ型熱硬化性レジスト(THMR IP3250(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで1:1に希釈したものである。溶液は、3000rpmで回転塗布される。
その後、溶液をホットプレート上で加熱する。加熱条件は、110℃、90秒間である。その後、無酸化オーブンにて、窒素雰囲気下で加熱する。加熱条件は、250℃、1時間である。これにより、レジストの溶液を熱硬化反応させた。図9(b)に表したように、得られたレジスト層509の膜厚はおよそ170nmであった。
次に、レジスト層509の上に、SOG溶液(OCD−5500T(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで1:3に希釈した溶液を塗布する。溶液は、3000rpmで回転塗布される。その後、溶液をホットプレート上で加熱する。加熱条件は、110℃、90秒である。その後、無酸化オーブンにて、窒素雰囲気下で加熱する。加熱条件は、250℃、1時間である。この加熱によって、厚さ30nmのSOG層510が形成される。
次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒として、PS−PMMAのジブロックコポリマー(P6000(商品名)、PS分子量260、000、PMMA分子量65、300、ポリマーソース社製)が2wt%になるように調製する。また、PGMEAを溶媒として、PSのホモポリマー(分子量2000)が、2wt%になるように調製する。
次に、ブロックコポリマー溶液とPSホモポリマー溶液を重量比8:2になるように混合させることでブロックコポリマーを含有する樹脂組成物の溶液を準備する。
次いで、この溶液をSOG層510の上に2500rpmで塗布してブロックコポリマー層を形成する。そして、ホットプレート上で加熱する。加熱条件は、110℃、90秒である。さらに、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下で加熱する。加熱条件は、180℃、8時間である。これにより、図9(c)に表したように、ジブロックコポリマーを相分離させ、PSのマトリクス511A中にPMMAのドット状のミクロドメイン511Bが形成されたモルフォロジーを得た。
次に、ジブロックコポリマー層をRIE処理する。RIEの処理条件において、O2の流量は5sccm、Arの流量は25sccm、圧力は13.3Pa、RFパワーは100Wである。これにより、図9(d)に表したように、ブロックコポリマーのPMMAのドット状のミクロドメイン511Bを選択的に除去する。
次に、残ったPSをマスクにして、SOG層510にRIE処理を行った。RIEには、CF4とCHF3との混合ガスを用いた。RIEの処理条件において、CF4の流量は10sccm、CHF3の流量は20sccm、圧力は0.7Pa、RFパワーは100Wである。これにより、SOGのメッシュパターンを形成する。
さらに、下地のレジスト層509をRIE処理する。RIEの処理条件として、O2の流量は30sccm、圧力は0.3Pa、RFパワーは100Wである。このエッチングにより、図9(e)に表したように、SOG/レジストのメッシュパターン511を形成する。
次に、形成されたSOG/レジストのメッシュパターン511をマスクとして、第1の実施例と同様に下層の金属多層膜507をミリングして金属多層膜507に開口部を形成する。図9(f)に表したように、金属多層膜507に開口部を形成することで、電極層507Aが完成する。そして、ミリングを続けることでp形GaP層505に凹部512を形成する。
このとき金属多層膜507に形成された隣接する開口部の間の平均距離は100nmであった。また、p形GaP層505に形成された凹部512の深さは100nmであった。
次いで、残ったSOG層510を希フッ酸(5wt%)により除去し、さらにアッシング処理によりレジスト層509を除去する。
さらに、電極層507Aの一部にAuからなる丸型のパッド電極(図示せず)を形成する。これにより、第2の実施例に係る半導体発光素子110−2が完成する。
比較例2−1として、第2の実施例と同様の半導体発光素子であるが、開口部を有する電極層507A及びp形GaP層505の凹部512が形成されておらず、丸型のパッド電極のみを有する半導体発光素子を製造する。
第2の実施例に係る半導体発光素子110−2、比較例1−1及び2−1に係る半導体発光素子をチップサイズ1mm×1mmにダイシング加工し、ベアチップの状態でチップテスタにより輝度測定を行った。
各半導体発光素子を最大輝度で比較した。比較例1−1に係る半導体発光素子の最大輝度を1とした場合、比較例2−1に係る半導体発光素子の最大輝度は1.2、第2の実施例に係る半導体発光素子110−2の最大輝度は1.6倍であった。
第2の実施例に係る半導体発光素子110−2では、電極層の開口部間の距離は第1の実施例よりも狭い。このため、第2の実施例に係る半導体発光素子110−2では、第1の実施例に係る半導体発光素子110−1に比べて低次の回折効果による光の取り出し効率が向上した。これにより、輝度が向上した。
(第3の実施例)
図10は、第3の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を説明する模式的断面図である。
第3の実施例では、上記(C)のスタンパを利用する方法を用いて、第1の実施形態に係る半導体発光素子110−3を製造する。半導体発光素子110−3の発光波長は630nmである。
先ず、図10(a)に表したように、第1の実施例と同様に、n形GaAs基板601上に、n形InGaAlP層602、InGaAlP層603、p形InGaAlP層604及びp形GaP層605を順次成膜して、半導体多層膜606を形成する。さらに、第1の実施例と同様に、金属多層膜607及び電極層608を形成する。
次いで、金属多層膜607の上に、i線用ポジ型熱硬化性レジストの溶液を塗布する。この溶液は、i線用ポジ型熱硬化性レジスト(THMR IP3250(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで1:1に希釈したものである。溶液は、3000rpmで回転塗布される。その後、溶液をホットプレート上で加熱する。加熱条件は、110℃、90秒間である。これにより、レジストの溶液を熱硬化反応させた。図10(b)に表したように、得られたレジスト層609の膜厚はおよそ170nmであった。
次に、鋳型である石英のスタンパ610を準備する。スタンパ610の凹凸パターンは電子線リソグラフィによりパターニングして形成する。凹凸パターンには、高さ120nm、直径60nmのピラーが100nm周期の最密充填配列で並べられている。このとき、スタンパ610の表面にパーフルオロポリエーテル等のフッ素系離型剤のコーティングを施し、スタンパ610の表面エネルギーを低くするようにしてもよい。このコーティング処理によりスタンパ610の離型性が向上する。
次いで、図10(c)に表したように、レジスト層609にスタンパ610の凹凸パターンを押し付ける。スタンパ610は、ヒータプレートプレス(N4005−00型(商品名、エヌピーエー製)を用いてレジスト層609に押し付けられる。プレス条件として、加熱温度は128℃、圧力は60kN、加圧時間は1時間である。その後、スタンパ610を室温に戻し、垂直に離型する。これにより、レジスト層609にスタンパ610の凹凸パターンの反転パターンを形成する。図10(d)に表したように、反転パターンは、周期的な開口が配列されたレジストパターン609Aになる。
次いで、図10(e)に表したように、このレジストパターン609Aをエッチングマスクとして、第1の実施例と同様に、金属多層膜607及びp形GaP層605のミリングを行った。金属多層膜607に開口部を形成することで、電極層607Aが完成する。そして、図10(f)に表したように、ミリングを続けることでp形GaP層605に凹部612を形成する。
このとき、金属多層膜607に形成された隣接する開口部の間の平均距離は100nmであった。また、p形GaP層605に形成された凹部612の深さは300nmであった。
次いで、残ったレジストパターン609Aをアッシング処理により除去する。さらに電極層507Aの一部にAuからなる丸型のパッド電極(図示せず)を形成する。これにより、第3の実施例に係る半導体発光素子110−3が完成する。
比較例3−1として、第3の実施例と同様の開口部を有する電極層607Aを具備するが、p形GaP層605に凹部612が形成されてない半導体発光素子を製造する。
第3の実施例に係る半導体発光素子110−3、比較例3−1及び比較例1−1に係る半導体発光素子をチップサイズ1mm×1mmにダイシング加工し、ベアチップの状態でチップテスタにより輝度測定を行った。
各半導体発光素子を最大輝度で比較した。比較例1−1に係る半導体発光素子の最大輝度を1とした場合、比較例3−1に係る半導体発光素子の最大輝度は1.2、第3の実施例に係る半導体発光素子110−3の最大輝度は1.7倍であった。
第3の実施例に係る半導体発光素子110−3では、電極層の開口部間の距離は第2の実施例と同程度であるが、凹部612の深さが第2の実施例に係る半導体発光素子110−2の凹部512の深さと比較して深い。そのため、より回折効果が強められ、輝度が向上した。
(第4の実施例)
図11は、第4の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を説明する模式的断面図である。
第4の実施例では、上記(A)の微粒子のマスクを利用して、第2の実施形態に係る半導体発光素子120−4を形成する。半導体発光素子120−4の発光波長は630nmである。
先ず、図11(a)に表したように、基板51aであるn形GaAs基板701の上に、クラッド層51bであるn形InGaAlP層702を形成し、その上に発光層53であるInGaAlP層703を形成する。そして、InGaAlP層703の上にクラッド層52aであるp形InGaAlP層704及び電流拡散層52bであるp形GaP層705を順次成膜して、半導体多層膜706を形成する。
次いで、n形GaAs基板701の裏面に、第2電極層30となる電極層707を真空蒸着法により形成する。電極層707は、厚さ150nmのAu−Ge合金を含む。
次に、p形GaP層705の上にレジスト層708を形成する。レジスト層708の膜厚は240nmである。その後、RIE処理によってレジスト層708の表面の親水化処理を行った。
次いで、図11(b)に表したように、第1の実施例と同様な粒子径が400nmのシリカ微粒子を含む分散液をレジスト層708の上に回転塗布する。その後、分散液を無酸化オーブンにて、窒素雰囲気下で加熱する。加熱条件は、150℃、1時間である。
その後、分散液を室温冷却することで、図11(c)に表したように、親水化処理したレジスト層708の上にシリカ微粒子の規則配列単粒子層を得る。
次に、図11(d)に表したように、第1の実施例と同様に、シリカ単粒子膜に対して、CF4によるRIEを行うことによりシリカ粒子のシュリンク処理を行う。シリカ微粒子709の粒子径はおよそ120nm、粒子間の隙間はおよそ280nmである。
続いて、シリカ微粒子709をエッチングマスクに用いて、下地のレジスト層708をO2によるRIE処理する。これにより、図11(e)に表したように、アスペクト比の高い柱状のレジストパターン708Aを得る。
次に、図11(f)に表したように、誘導結合プラズマ(ICP)−RIE装置により、残存するシリカ粒子709とレジストパターン708Aとをマスクとして、p形GaP層705のエッチングを行う。エッチング条件として、Cl2の流量は5sccm、Arの流量は15sccm、圧力は0.7Pa、バイアスは100W、ICPは30Wである。このエッチングにより、p形GaP層705に凹部710を形成する。
次いで、図11(g)に表したように、p形GaP層705の凹部710に、金属多層膜711を真空蒸着法により形成する。金属多層膜711は、厚さ10nmのAu膜と、厚さ30nmのAu−Zn合金膜と、を含む。金属多層膜711は、p形GaP層705の凸部には設けられない。金属多層膜711は、凸部に対応して開口部が設けられた電極層711Aとなる。
続いて、残ったレジストパターン708Aをアッシング処理により除去することで、図11(h)に表したように、電極層711Aの開口部を、p形GaP層705の凸部が貫通した形状が構成される。
このとき、電極層711Aに形成された隣接する開口部の間の平均距離は400nm、p形GaP層705に形成された凸部の高さは100nmであった。
その後、窒素雰囲気下で450℃、30分の条件によりシンタリングする。これにより、n形GaAs基板701と電極層707との間、p形GaP層705と電極層711Aとの間にオーミック接触を形成する。
さらに電極層711Aの一部にAuからなる丸型のパッド電極(図示せず)を形成する。これにより、第4の実施例に係る半導体発光素子120−4が完成する。
第4の実施例に係る半導体発光素子120−4、比較例1−1及び1−2に係る半導体発光素子をチップサイズ1mm×1mmにダイシング加工し、ベアチップの状態でチップテスタにより輝度測定を行った。
各半導体発光素子を最大輝度で比較した。比較例1−1に係る半導体発光素子の最大輝度を1とした場合、比較例1−2に係る半導体発光素子の最大輝度は1.2、第4の実施例に係る半導体発光素子120−4の最大輝度は1.3倍であった。
(第5の実施例)
図12は、第5の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を説明する模式的断面図である。
第5の実施例では、上記(B)のブロックコポリマーの自己組織化を利用する方法によって、第2の実施形態に係る半導体発光素子120−5を形成する。半導体発光素子120−5の発光波長は630nmである。
先ず、図12(a)に表したように、第4の実施例と同様に、n形GaAs基板801の上に、n形InGaAlP層802、InGaAlP層803、p形InGaAlP層804及びp形GaP層805を順次成膜して、半導体多層膜806を形成する。
また、n形GaAs基板801の裏面に第2電極層30となる電極層807を真空蒸着法により形成する。電極層807は、厚さ150nmのAu−Ge合金を含む。
次いで、p形GaP層805の上にレジスト層808を形成する。レジスト層808の厚さは170nmである。さらに、その上にSOG層809を形成する。図12(b)に表したように、SOG層809の厚さは30nmである。
次に、PS−PMMAブロックコポリマー(PS分子量:265,000、PMMA分子量:630,000)をPGMEAで4.0wt%の濃度に希釈した溶液と、PMMAホモポリマー(分子量=2000)及びPSホモポリマー(Mn=分子量)をそれぞれPGMEAで4.0wt%の濃度に希釈する。
次に、各溶液を0.2μmメッシュを用いてろ過し、さらに重量比4(PS−PMMA):6(PMMA):1(PS)になるよう秤量することでブロックコポリマーを含有する樹脂組成物溶液を調製する。
次に、この溶液をSOG層上809上に3000rpmで回転塗布する。そして、ホットプレート上で加熱する。加熱条件は、110℃、90秒間である。その後、オーブンに入れ、窒素雰囲気下で250℃、8時間の条件で相分離アニールを行う。図12(c)に表したように、得られた相分離パターンは、PMMAのマトリクス810B中にPSにドット状のミクロドメイン810Aが存在するモルフォロジーであった。
次に、第2の実施例と同様に、得られたジブロックコポリマー層を酸素とアルゴンの混合ガスを用いたRIE処理する。これにより、図12(d)に表したように、PMMAマトリクス810Bを除去し、PSドット810Cを露出させる。
その後、PSドット810Cをマスクに用いてSOG層809にRIE処理を行った。RIEには、CF4とCHF3との混合ガスを用いた。これにより、図12(e)に表したように、SOGの円柱パターンを形成し、さらに下地のレジスト層808を酸素を用いたRIE処理でエッチングして、SOG/レジストのピラーパターンを形成する。
次に、図12(f)に表したように、形成されたSOG/レジストのピラーをマスクとして、第4の実施例と同様に下層のp形GaP層805をICP−RIE処理し、p形GaP層805に凹部811を形成する。
その後、エッチングされたp形GaP層805の凹部811に、金属多層膜812を真空蒸着法により形成する。図12(g)に表したように、金属多層膜812は、厚さ10nmのAu膜と、厚さ30nmのAu−Zn合金膜と、を含む。金属多層膜812は、p形GaP層805の凸部には設けられない。金属多層膜812は、凸部に対応して開口部が設けられた電極層812Aとなる。
続いて、残ったSOGマスクを希フッ酸により除去する。また、レジストマスクをアッシング処理により除去する。これにより、図12(h)に表したように、電極層812Aの開口部を、p形GaP層805の凸部が貫通した形状が構成される。
このとき、電極層812Aに形成された開口部の径は50nm、隣接する開口部の間の平均距離は150nmであった。また、p形GaP層805に形成された凸部の高さは100nmであった。
その後、窒素雰囲気下で450℃、30分の条件によりシンタリングする。これにより、n形GaAs基板801と電極層807と間、p形GaP層805と電極層812Aとの間にオーミック接触を形成する。
さらに電極層812Aの一部にAuからなる丸型のパッド電極(図示せず)を形成する。これにより、第5の実施例に係る半導体発光素子120−5が完成する。
比較例5−1として、第5の実施例と同様の開口部を有する電極層812Aを有するが、p形GaP805には凸部が形成されていない半導体発光素子を製造する。
第5の実施例に係る半導体発光素子120−5、比較例1−1及び5−1に係る半導体発光素子をチップサイズ1mm×1mmにダイシング加工し、ベアチップの状態でチップテスタにより輝度測定を行った。
各半導体発光素子を最大輝度で比較した。比較例1−1に係る半導体発光素子の最大輝度を1とした場合、比較例5−1に係る半導体発光素子の最大輝度は1.2、第5の実施例に係る半導体発光素子120−5の最大輝度は1.4倍であった。
(第6の実施例)
図13は、第6の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を説明する模式的断面図である。
第6の実施例では、上記(C)のスタンパを利用する方法を用いて、第2の実施形態に係る半導体発光素子120−6を製造する。半導体発光素子120−6の発光波長は630nmである。
先ず、図13(a)に表したように、第4の実施例と同様に、n形GaAs基板901上に、n形InGaAlP層902、InGaAlP層903、p形InGaAlP層904及びp形GaP層905を順次成膜して、半導体多層膜906を形成する。また、第4の実施例と同様に、n形GaAs基板901の裏面に第2電極層30となる電極層907を真空蒸着法により形成する。
次いで、図13(b)に表したように、p形GaP層905上に、第3の実施例と同様なレジスト層908を形成する。レジスト層908の膜厚はおよそ170nmであった。さらに、図13(c)に表したように、レジスト層908に、鋳型である石英のスタンパ909の凹凸パターンを押し付ける。スタンパ909は、ヒータープレートプレスを用いてレジスト層908に押し付けられる。これにより、図13(d)に表したように、レジスト層908にスタンパ909の凹凸パターンを転写し、レジストのピラーパターン908Aを形成する。
ここで、スタンパ909の凹凸パターンは電子線リソグラフィによりパターニングして形成する。凹凸パターンには、深さ120nm、直径50nmの凹部が150nm周期の最密充填配列で並べられている。
次に、凹凸パターンが転写されたレジストのピラーパターン908Aをエッチングマスクとして、第4の実施例と同様に、p形GaP層905にICP−RIE処理を施す。これにより、図13(e)に表したように、p形GaP層905に凹部910を形成する。
その後、エッチングされたp形GaP層905の凹部910に、金属多層膜911を真空蒸着法により形成する。図13(f)に表したように、金属多層膜911は、厚さ10nmのAu膜と、厚さ30nmのAu−Zn合金膜と、を含む。金属多層膜911は、p形GaP層905の凸部には設けられない。金属多層膜911は、凸部に対応して開口部が設けられた電極層911Aとなる。
続いて、残ったレジストマスクをアッシング処理により除去する。これにより、電極層911Aことで、金属電極層の開口部を、p形GaP層905の凸部が貫通した形状が構成される。
このとき、電極層911Aに形成された開口部の径は50nm、隣接する開口部の間の平均距離は150nmであった。また、p形GaP層905に形成された凸部の高さは300nmであった。
その後、窒素雰囲気下で450℃、30分の条件によりシンタリングする。これにより、n形GaAs基板901と電極層907と間、p形GaP層905と電極層911Aとの間にオーミック接触を形成する。
さらに電極層911Aの一部にAuからなる丸型のパッド電極(図示せず)を形成する。これにより、第6の実施例に係る半導体発光素子120−6が完成する。
第6の実施例に係る半導体発光素子120−6、比較例1−1及び3−1に係る半導体発光素子をチップサイズ1mm×1mmにダイシング加工し、ベアチップの状態でチップテスタにより輝度測定を行った。
各半導体発光素子を最大輝度で比較した。比較例1−1に係る半導体発光素子の最大輝度を1とした場合、比較例3−1に係る半導体発光素子の最大輝度は1.2、第6の実施例に係る半導体発光素子120−6の最大輝度は1.5倍であった。
(第7の実施例)
第7の実施例では、第3の実施例と同様な製造方法により、発光波長の異なる半導体発光素子110−7を製造する。第7の実施例に係る半導体発光素子110−7の発光波長は440nmである。
第7の実施例に係る半導体発光素子110−7では、第3の実施例に係る半導体発光素子110−3と半導体多層膜の材質及び構成が異なる。
すなわち、半導体発光素子110−7で適用される半導体多層膜は、n形GaN基板の上に、MOCVD法によりバッファ層であるn形GaN層、クラッド層であるn形GaN層、発光層であるInGaN/GaNからなるMQW層、クラッド層であるp形AlGaN層、及びコンタクト層であるp形GaN層が順次形成された構成になっている。
続いて、真空蒸着法によりp形コンタクト層の上に、Ni(厚さ5nm)/Au(厚さ30nm)を含むp側電極層を形成する。
また、n形GaN基板の裏面にはTi(厚さ10nm)/Au(厚さ100nm)を含むn側電極層を形成させ、所望の形状に加工する。最後に熱処理を行うことで、各電極層と半導体層との接触面にオーミック接触を形成する。
次に、p側電極層の上に第3の実施例と同様なレジスト層を形成する。その後、レジスト層に鋳型である石英スタンパを用いて凹凸パターンを転写する。スタンパの凹凸パターンは電子線リソグラフィによりパターニングして形成する。スタンパに形成された凹凸パターンには、高さ120nm、直径60nmのピラーが100nm周期の最密充填配列で並べられている。
スタンパにより形成されたレジストのパターンをエッチングマスクとして、図1の実施例と同様に、当該p側電極層およびコンタクト層であるp形GaN層のミリングを行った。
このときp側電極層に形成された隣接する開口部の間の平均距離は100nmであった。また、コンタクト層であるp形GaN層の凹部深さは30nmであった。
次いで、残ったレジストマスクをアッシング処理により除去する。さらにp側電極層の一部にTi/Auからなる丸型のパッド電極を形成する。これにより、第7の実施例に係る半導体発光素子110−7が完成する。
比較例7−1として、第7の実施例と同様な半導体発光素子であるが、開口部を有するp側電極層及びコンタクト層の凹部が形成されておらず、コンタクト層上に丸型のパッド電極のみを有する半導体発光素子を製造する。
また比較例7−2として、第7の実施例と同様の半導体発光素子であるが、コンタクト層上に凹部が形成されていない半導体発光素子を製造する。
第7の実施例に係る半導体発光素子110−7、比較例7−1及び7−2に係る半導体発光素子をチップサイズ300μm角にダイシング加工し、ベアチップの状態でチップテスタにより輝度測定を行った。
各半導体発光素子を最大輝度で比較した。比較例7−1に係る半導体発光素子の最大輝度を1とした場合、比較例7−2に係る半導体発光素子の最大輝度は1.1、第7の実施例に係る半導体発光素子110−7の最大輝度は1.3倍であった。
(第8の実施例)
図14は、第8の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を説明する模式的断面図である。
第8の実施例では、上記(C)のスタンパを利用する方法を用いて、第1の実施形態に係る半導体発光素子110−8を製造する。半導体発光素子120−6の発光波長は440nmである。また、半導体発光素子110−8では、第2電極層30が第1電極層20と同じ上側に設けられている。
先ず、図14(a)に表したように、サファイア基板1001の上に、バッファ層としてのn形GaN層1002を形成する。次に、n形GaN層1002の上に、n形GaN層1003、InGaN/GaNからなるMQW層1004、p形AlGaN層1005、p形GaN層1006を順に成膜して、半導体多層膜1007を形成する。
続いて、p形GaN層の上に、真空蒸着法により金属多層膜1008を形成する。金属多層膜1008は、厚さ5nmのNiと、厚さ30nmのAgと、を含む(図10(a)参照)。
次に、図14(b)に表したように、第3の実施例と同様に、スタンパを利用して金属多層膜1008の上にレジストパターン1009を形成する。続いて、第1の実施例と同様にして、イオンミリングにより金属多層膜1008に開口部1010を形成する。開口部1010が形成された金属多層膜1008は、p側電極1008Aになる。図14(c)に表したように、さらにイオンミリングを続けてp形GaN層1006に凹部を形成する。このとき形成された開口部1010の径は120nm、隣接する開口部の間の平均距離は200nmであった。また、凹部の深さは100nmであった。
次に、図14(d)に表したように、リソグラフィ法により金属多層膜1008の一部の面にレジスト層1011を形成した後、ICP−RIEによりn形GaN層1003が露出するまでエッチングを行う。その後、図14(e)に表したように、残存するレジスト層1011をアッシングにより除去する。
続いて、n形GaN層1003の露出した一部の面にn側電極1012を形成する。また、p側電極1008Aの一部の面にパッド電極1013を形成する。
最後に、急速高温アニールを行い、電極層と半導体との間にオーミック接触を形成する。これにより、図14(f)に表したように、第8の実施例に係る半導体発光素子110−8が完成する。
比較例8−1として、第8の実施例と同様の半導体発光素子であるが、開口部を有したp側電極およびp形GaN層に凹部が形成されず、p形GaN層上に丸型のパッド電極のみを有する半導体発光素子を作製する。
また、比較例8−2として、第8の実施例と同様の半導体発光素子であるが、p形GaNコンタクト層に開口部1010(凹部)が形成されていない半導体発光素子を製造する。
第8の実施例に係る半導体発光素子110−8、比較例8−1及び8−2に係る半導体発光素子をチップサイズ500μm角にダイシング加工し、ベアチップの状態でチップテスタにより輝度測定を行った。
各半導体発光素子を最大輝度で比較した。比較例8−1に係る半導体発光素子の最大輝度を1とした場合、比較例8−2に係る半導体発光素子の最大輝度は1.3、第8の実施例に係る半導体発光素子110−8の最大輝度は1.5倍であった。
なお、上記に実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、第1の導電形をn形、第2の導電形をp形として説明したが、第1の導電形をp形、第2の導電形をn形としても実施可能である。
以上説明したように、実施形態に係る半導体発光素子およびその製造方法によれば、高輝度の半導体発光素子が得られる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。